(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記遮蔽部材が円板状に形成され、前記一対の遮蔽部材の上部に前記カバーの両端部が載置されることにより、前記カバー及び前記ノズルが前記遮蔽部材によって支持されていることを特徴とする請求項1に記載の重合性モノマーの凝縮装置。
前記ノズルが前記ロール部の周方向における前記カバーの中間部に配置され、前記ロール部の径方向における前記凝縮空間の間隔が、前記ノズルより前記ロール部の回転方向前方側で広く、回転方向後方側で狭くなっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の重合性モノマーの凝縮装置。
前記ロール部と協働して一対の電極を構成する電極部材をさらに備え、前記電極部材が前記ロール部の回転方向において前記カバーより前方側に配置され、前記ロール部の外周面と前記電極部材との間にプラズマ放電が行われる処理空間が形成され、この処理空間に前記重合性モノマーが付着した前記樹脂フィルムが通されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の重合性モノマーの凝縮装置。
【背景技術】
【0002】
この発明に係る凝縮装置の適用対象たる樹脂フィルムは、例えば液晶表示の偏光板に用いられている。
図6に偏光板の一例が示されている。この偏光板1は、偏光フィルム2と、この偏光フィルム2の両面に積層された一対の保護フィルム(樹脂フィルム)3,3とを有している。一対の保護フィルム3,3は、偏光フィルム2の両面にそれぞれ接着剤4を介して接着されている。
【0003】
偏光フィルム2は、例えばポリビニルアルコールを主成分とする樹脂によって構成されている。一方、保護フィルム3は、例えばトリアセテートセルロースを主成分とする樹脂によって構成されている。また、接着剤4としては、ポリビニルアルコール系接着剤やポリエーテル系接着剤等の水系接着剤が用いられている。
【0004】
偏光フィルム2は、水系接着剤4との接着性が良好であるが、保護フィルム3は、水系接着剤4との接着性が悪い。そこで、保護フィルム3を偏光フィルム2に接着するに際しては、保護フィルム3の表面(接着面)3aを予め処理して接着剤4に対する接着性を向上させている。
【0005】
保護フィルム3等の樹脂フィルムの表面を処理するための装置が特許文献1に開示されている。この装置では、ロールの外周面の一部に樹脂フィルムが巻回される。そして、ロールを回転させることにより、保護フィルムが移送される。また、ロールの外部には、カバーが配置されている。このカバーにより、樹脂フィルム及びそれが巻回されたロールの外周部が覆われている。この結果、ロールの外周面及び樹脂フィルムとカバーとの間には、ロールの外周面に沿って周方向及び軸線方向に延びる凝縮空間が形成されている。
【0006】
また、カバーには、凝縮空間に臨むノズルが設けられている。このノズルからは、アクリル酸(AA)等の重合性モノマーの蒸気が樹脂フィルムに向かって吹き出される。吹き出された重合性モノマーの蒸気の一部は、樹脂フィルムの表面に凝縮して付着する。重合性モノマーが付着した樹脂フィルムは、プラズマ処理工程においてプラズマ処理される。これにより、保護フィルムの表面の接着性が良好なものとされる。
【0007】
ところで、ノズルの長手方向の中間部から吹き出した重合性モノマーの蒸気は、ロールの軸線方向へ流れることがなく、ロールの周方向へ流れるだけであり、周方向に流れた重合性モノマーの蒸気は、凝縮空間の周方向の端部から外部に流出する。
【0008】
しかるに、ノズルの両端部から吹き出した重合性モノマーの蒸気は、ロールの周方向へ流れるのみならず、ロールの軸線方向へも流れる。そして、上記蒸気は、ロールの周方向における凝縮空間の両端部及びロールの軸線方向における凝縮空間の両端部から外部に流出する。
【0009】
このように、ノズルの長手方向の中間部から吹き出した重合性モノマーの蒸気が、ロールの周方向へのみ流れて凝縮空間の周方向の端部から流出するだけであるのに対し、ノズルの両端部から凝縮空間の両端部に吹き出された重合性モノマーの蒸気は、ロールの周方向のみならず、軸線方向へも流れ、凝縮空間の周方向の両端部及び軸線方向の両端部から外部に流出する。このため、凝縮空間の両端部では、中間部よりも重合性モノマーの蒸気の密度が低下し、樹脂フィルムに対する重合性モノマーの付着量が、樹脂フィルムの幅方向の両端部で低下してしまう。この結果、保護フィルムの両端部の接着性が中間部より低下してしまうという問題があった。
【0010】
このような問題を解決するために、特許文献2には、凝縮空間等の処理空間の両端部、つまりロールの軸線方向における処理空間の両端部を遮蔽部材によって閉じるという技術が開示されている。この特許文献2に記載のものによれば、重合性モノマーの蒸気等の処理ガスがロールの軸線方向へ流れることを阻止し、ロールの周方向へのみ流すことができる。したがって、樹脂フィルムの両端部の接着性が中間部の接着性より低下するという問題を解決することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1〜
図5は、この発明の一実施の形態を示す。この実施の形態は、この発明を樹脂フィルムFの表面処理装置10に適用したものである。樹脂フィルムFは、例えば
図6に示す偏光板1の保護フィルム3として用いられ、トリアセテートセルロースを主成分とする。表面処理装置10は、樹脂フィルムFの表面の、ポリビニルアルコール系接着剤やポリエーテル系接着剤等の水系接着剤に対する接着性を向上させる処理を行なう。装置10は、凝縮部(重合性モノマーの凝縮装置)20、及びプラズマ処理部30を備えている。
【0017】
凝縮部20は、重合性モノマーの蒸気を含むガスを樹脂フィルムFの表面に凝縮させて付着させるためのものであり、回転ロール21を有している。回転ロール21は、筒部21a及び一対の端板21b,21bを主な構成要素としている。筒部21aは、断面円形の金属製又は樹脂製の筒体からなるものであり、その全長にわたって一定の外径を有している。筒部21aは、その軸線を水平方向に向けて配置されている。筒部21aの外周面には、金属製の円筒22が嵌合固定されている。円筒22は、筒部21aより短くなっており、円筒22の両端面は、筒部21aの両端面に対して同一距離だけ内側(中央側)に離間させられている。円筒22の外周面には、誘電体からなる誘電層(図示せず)が設けられている。端板21bは、金属又は樹脂からなるものであり、円板状をなし、筒部21aの両端開口部にそれぞれ嵌合固定されている。端板21bの外側の端面は、筒部21aの端面と同一平面上に配置されている。筒部21a、端板21b及び円筒22によってロール部が構成されている。
【0018】
端板21bの外側の端面の中央部には、軸部21cが形成されている。この軸部21cは、その軸線を筒部21aの軸線と一致させて配置されている。軸部21bは、電動モータその他の回転駆動源(図示せず)によって回転駆動され、それによって回転ロール21が
図1及び
図2において時計方向へ回転駆動される。回転ロール21は、前記の構造のものに限定されるものではなく、例えば全体を中実な構造にしてもよい。
図3においては、一対の端板21b,21bの軸部21c,21cどうしが別々になっているが、これら軸部21c,21cが一体に連なっていてもよい。例えば、回転ロール21の内部に軸体を設け、この軸体の両端部が、端板21bを貫通して外側に突出することで、この突出した部分が軸部21cを構成するようにしてもよい。
【0019】
円筒22の外周面のうちの上部には、この処理装置10によって処理されるべき樹脂フィルムFが巻回されている。この場合、樹脂フィルムFは、処理すべき面、つまり接着性を向上させるべき面を円筒22の径方向外側に向けて巻回される。樹脂フィルムFの幅(
図3において左右方向の長さ)は、円筒22の長さより短くなっている。樹脂フィルムFの両端は、円筒22の両端面から互いに同一距離だけ内側に離間させられている。樹脂フィルムFの両端部は、筒部21aの両端部から互いに異なる距離だけ離間させてもよい。なお、回転ロール21が
図2の時計方向へ回転駆動されると、円筒22の外周面と樹脂フィルムFとの間に発生する摩擦抵抗によって樹脂フィルムFが同方向へ移送される。
【0020】
筒部21aの上側には、樹脂その他の材料からなるカバー23が配置されている。カバー23は、断面略四半分の円筒状に形成されており、筒部21aと平行に、しかも周方向の中央部が筒部21aの真上に位置するように配置されている。したがって、カバー23の周方向の半分が、筒部21aの真上の箇所から筒部2a回転方向後方側に位置し、他の半分が筒部21aの回転方向前方側に位置している。カバー23は、必ずしもこのように配置する必要が無く、筒部21aの回転方向後方側の部分と前方側の部分との周方向の長さが互いに異なる長さになるように配置してもよい。
【0021】
筒部21aの外周面と対向するカバー23の内面は、筒部21aの軸線を曲率中心とする円弧面によって構成されている。しかも、カバー23の内面を構成する円弧面の曲率半径は、円筒22の半径より大径になっている。したがって、カバー23の内面は、筒部21aから径方向外側に離間させられているのみならず、円筒22の半径とカバー23の内面の曲率半径との差の分だけ円筒22の外周面から径方向外側(上側)へ離間させられている。
【0022】
カバー23は、筒部21aの全長と同一の長さを有している。カバー23は、その長手方向(筒部21aの軸線方向)の両端面が筒部21aの両端面と同一平面上に位置するように配置されている。カバー23の両端面は、必ずしも筒部21aの両端面と同一平面上に位置させる必要がなく、筒部21aの両端面に対し筒部21aの軸線方向前方に突出した位置に位置させてもよい。
【0023】
カバー23が筒部21a及び円筒22の上側に離間して配置されることにより、筒部21aの両端部外周面及び円筒22の外周面の各上部とカバー23との間には、筒部21aの外周面に沿って延びる断面円弧状の空間が形成されている。この空間が凝縮空間24である。凝縮空間24の周方向の両端部は、筒部21a及びカバー23の周方向の両端部において外部に開放されている。凝縮空間24の軸線方向の両端部は、筒部21a及びカバー23の軸線方向の両端部において外部に開放可能になっている。
【0024】
なお、カバー23は、回転ロール21に対して上下方向へ移動可能に配置されており、シリンダ機構等の移動手段(図示せず)によって上下方向へ移動可能に支持されている。そして、シリンダのロッドを適宜に進退移動させることにより、所望の位置に移動させられるようになっている。
【0025】
カバー23には、ノズル部(ノズル)25が一体に設けられている。ノズル部25は、カバー23の周方向の中央部に配置されている。ノズル部25は、カバー23の長手方向に沿って延びている。つまり、ノズル部25は、筒部21aの軸線と平行に延びている。ノズル部25の長さは、カバー23の長さと同一に設定されており、筒部21aの軸線方向にはカバー23と同一位置に配置されている。したがって、ノズル部25の長手方向の両端面は、カバー23の長手方向の両端面と同一位置に位置している。
【0026】
カバー23の周方向の中央部は、ノズル部25の一部として兼用されており、当該中央部の凝縮空間24に臨む内面には、ノズル部25の吹き出し口25aが形成されている。吹き出し口25aは、筒部21aの軸線と平行に延びている。吹き出し口23の長さは、ノズル部25の長さよりは短いが、樹脂フィルムFの幅より所定の長さだけ長く設定されている。しかも、吹き出し口25aは、筒部21aの軸線方向には樹脂フィルムFと同一位置に配置されている。したがって、吹き出し口25aの長手方向の両端部は、樹脂フィルムFの幅方向の両端部に対して筒部21aの軸線方向へそれぞれ同一距離だけ外側に位置させられている。
【0027】
ノズル部25には、重合性モノマーの蒸気を含むガス(以下、モノマーガスという。)がモノマーガス供給源(図示せず)から供給される。重合性モノマーは、不飽和結合及び所定の官能基を有することが望ましく、親水性を有するものであることがより望ましい。そのような重合性モノマーとしては、例えばアクリル酸(CH
2=CHCOOH;図にはAAと表記)がある。また、モノマー供給源から供給されるモノマーガスは、重合性モノマーの蒸気だけで構成してもよく、重合性モノマーの蒸気に窒素ガス(N
2)、アルゴンガス(Ar)、ヘリウムガス(He)等の不活性ガスを混合させてもよい。この実施の形態では、モノマーガスとしてアクリル酸(AA)の蒸気に窒素ガスを混合したガスが採用されている。上記重合性モノマーとして、アクリル酸に代えて、メタクリル酸等を用いてもよい。機能性膜など、他の膜を作る場合には、その膜に応じたモノマーを上記重合性モノマーとして用いればよく、そのような重合性モノマーとして、例えばアルコキシドやアミド化合物が挙げられる。
【0028】
ノズル部25に供給されたモノマーガスは、ノズル部25の内部に設けられた整流路(図示せず)において筒部21aの軸線方向におけるノズル部25内の各部の流量が均一になるように整流される。整流されたモノマーガスは、吹き出し通路25bを通って吹き出し口25aに送られる。そして、モノマーガスが吹き出し口25aから凝縮空間24内に吹き出される。この場合、モノマーガスは、筒部21aの径方向内側に向かって吹き出され、樹脂フィルムFに吹き付けられる。そして、重合性モノマーの蒸気の一部が、樹脂フィルムF上において凝縮して樹脂フィルムFに付着する。
【0029】
凝縮空間24内に吹き出したモノマーガス(樹脂フィルムに付着した重合性モノマーを除く)は、凝縮空間24内を筒部21a及び円筒22の各外周面、樹脂フィルムFの表面並びにカバー23の内面に沿って流れる。そして、モノマーガスが凝縮空間24の周方向の両端部から外部に流出する。勿論、モノマーガスは、凝縮空間24の軸線方向の両端部からも外部へ流出しようとする。しかし、凝縮空間24の軸線方向における両端部は、左右一対の遮蔽機構40,40によって外部との間がほとんど遮断されている。したがって、モノマーガスが凝縮空間24の軸線方向の両端部から流出することはほとんどない。
【0030】
二つの遮蔽機構40,40は、
図3に示すように、左右対称に形成されている。そこで、
図3の左側に配置された遮蔽機構40だけを説明することとし、右側の遮蔽機構については、左側の遮蔽機構40と同様な部分に同一符号を付してその説明を省略する。
【0031】
遮蔽機構40は、遮蔽板(遮蔽部材)41を有している。遮蔽板41は、円板からなるものであり、その中央部には、支持孔41aが貫通状態で形成されている。この支持孔41aには、回転ロール21の軸部21cが挿通されている。そして、遮蔽板41は、軸部21cに軸受42を介して回転可能に支持されている。
【0032】
遮蔽板41は、筒部21a及び端板21bの端面(ロール部の端面)に対して筒部21aの軸線方向へ所定の距離だけ外側へ離間して配置されている。したがって、遮蔽板41は、回転ロール21が回転したとき、回転ロール21と一緒に回転することがなく、回転ロール21に対して停止状態を維持することができる。
【0033】
遮蔽板41の外周面の半径は、カバー23の内面の曲率半径と同じ大きさに設定されている。カバー23の曲率半径は、必ずしもそのような大きさにする必要がなく、カバー23の内面の曲率半径より小さくしてもよく、逆に大きくしてもよい。小さくする場合には、筒部21aの半径より大きくすることが望ましい。大きくする場合には、カバー23の外面の曲率半径より小さくすることが望ましい。つまり、遮蔽板41の外周面の半径は、筒部21aの外周面の半径とカバー23の外面の曲率半径と間の寸法に定めることが望ましい。
【0034】
遮蔽板41の外周面の曲率半径がカバー23の内面の曲率半径とほぼ同一であるので、遮蔽板41と筒部21a及び端板21bの各端面との間、及び遮蔽板41とカバー23の端面の小径側の端縁との間には、筒部21aの軸線を中心として環状に延びる隙間43が形成されている。この隙間43は、凝縮空間24に連通している。したがって、筒部21aの軸線方向における凝縮空間24の端部からモノマーガスが流出すると、そのモノマーガスは隙間43に入り込む。隙間43に入り込んだモノマーガスは、遮蔽板41に突き当たって同方向への流れが止められる。そして、モノマーガスの一部は、隙間43内を遮蔽板41に沿ってその径方向外側(上側)へ向かって流れようとし、残りの一部は遮蔽板41に沿ってその径方向内側(下側)へ向かって流れようとする。
【0035】
筒部21aの軸線方向におけるノズル部25の端面には、支持部材44がボルト等の固定手段(図示せず)によって固定されている。支持部材44は、筒部21aの軸線を中心として円弧状に延びており、カバー23とほぼ同一の周方向長さを有している。しかも、支持部材44は、カバー23と周方向においてほぼ同一位置に配置されている。したがって、支持部材44の周方向の両端面は、カバー23の周方向の両端面とほぼ同一位置に位置させられている。支持部材44は、ノズル部25に一体に設けてもよい。つまり、支持部材44は、ノズル部25を介してカバー23に一体に設けてもよい。あるいは、支持部材44をカバー23の端部に一体に設けてもよい。
【0036】
カバー23及びノズル部25と対向する支持部材44の端面は、カバー23及びノズル部25の端面に気密に接触させられている。支持部材44の内面、つまり筒部21aの径方向内側を向く面は、筒部21aの軸線を中心とする円弧面によって構成されている。この円弧面の曲率半径は、遮蔽板41の外周面の半径と同一に設定されている。
【0037】
支持部材44は、遮蔽板41の外周面の上部に載置されている。ここで、支持部材44の内面の曲率半径が遮蔽板41の外周面の半径と同一に設定されているから、支持部材44の内面は、その周方向の全長にわたって遮蔽板41の外周面に接触させられている。互いに接触する支持部材44の内面と遮蔽板41の外周面との間は、Oリング等のシール部材45によって気密に封止されている。これにより、隙間43のうちの上側の開放部が閉じられている。したがって、仮にモノマーガスが筒部21aの軸線方向における凝縮空間24の端部から隙間43に流入したとしても、そのモノマーガスが隙間43の上部から外部に流出することはない。
【0038】
端板21bの遮蔽板41と対向する端面には、凹部46が形成されている。凹部46は、筒部21aの軸線を中心として環状に延びている。一方、端板21bと対向する遮蔽板41の端面には、凸部47が形成されている。凸部47は、筒部21aの軸線を中心として環状に延びている。しかも、凸部47は、回転ロール21が回転したときに凸部47の外面が凹部46の内面に接触することがないよう、凹部46に隙間をもって挿入されている。ただし、凸部47の外面と凹部46の内面との間の隙間の大きさは、それらが接触することを防止することができる範囲において可及的に小さな寸法に抑えられている。この結果、凹部46の内面と凸部47の外面との間にいわゆるラビリンス通路が形成される。このラビリンス通路は、遮蔽板41の径方向外側から内側(上側から下側)へ向かって流れるモノマーガスに対して一種の抵抗となる。したがって、凝縮空間24から隙間43に入り込んだモノマーガスは、遮蔽板41の径方向内側(下側)へ向かって流れることがほとんどない。なお、この実施の形態においては、凹部46及び凸部47がそれぞれ2個形成されているが、1個だけ形成してもよく、3個以上形成してもよい。
【0039】
このように、筒部21aの軸線方向おける凝縮空間24の両端部は、外部との間が遮蔽機構40によってほとんど遮断されている。したがって、吹き出し口25aの両端部から吹き出したモノマーガスは、筒部21aの軸線方向へ流れることがなく、吹き出し口25aの中間部から吹き出したモノマーガスと同様に、筒部21a及び円筒22の各外周面、樹脂フィルムFの表面並びにカバー23の内面に沿って周方向へ流れるだけである。よって、凝縮空間24の内部では、モノマーガスの密度がほぼ一定になる。この結果、凝縮して樹脂フィルムに付着するモノマーガスの付着量を、樹脂フィルムの幅方向の各部においてほぼ同一にすることができる。
【0040】
次に、プラズマ処理部30について説明する。プラズマ処理部30は、上記凝縮部20の回転ロール21と対をなす回転ロール31を有している。回転ロール31は、回転ロール21と同一構造及び同一寸法を有している。したがって、回転ロール31は、回転ロール21の筒部21a、端板21b、軸部21c及び円筒22にそれぞれ対応した筒部31a、端板31b、軸部31c及び円筒32を有している。勿論、回転ロール31の円筒の外周面にも、誘電層が設けられている。また、回転ロール31は、軸部31cが回転駆動されることにより、回転ロール21と同方向へ回転させられる。なお、筒部21a,31aが金属で形成される場合には、回転ロール21の円筒22及び回転ロール31の円筒32を省略してもよい。その場合には、筒部21a,31aの外周面に誘電層が設けられ、その上に樹脂フィルムFが巻回される。
【0041】
回転ロール31は、回転ロール21と平行に配置されている。したがって、回転ロール21と回転ロール31との間隔は、それらの軸線を含む平面上において最も狭くなっている。その最狭部の間隔(この実施の形態では円筒22と回転ロール31の円筒との間の最狭部の間隔)は、通常0.5〜数mmに設定される。最狭部及びそこから上下方向へ所定の距離だけ離間した範囲が処理空間33になっている。回転ロール21,31は、それらの軸線方向において同一位置に配置されている。したがって、処理空間33は、回転ロール21,31の全長にわたって形成されている。
【0042】
樹脂フィルムFは、処理空間33内を2回にわたって通過する。すなわち、樹脂フィルムFは、凝縮部20において重合性モノマーが付着された後、回転ロール21に巻回された状態で、つまり回転ロール21の円筒22の外周面に接触した状態で処理空間33内を上側から下側へ通過する。その後、樹脂フィルムFは、二つのアイドルロール34,35を通過した後、回転ロール31の円筒の外周面に巻回された状態で処理空間33を下側から上側へ通過する。なお、回転ロール31の円筒に対する樹脂フィルムFの巻回位置は、円筒22に対する樹脂フィルムFの巻回位置と
図1において左右対称な位置になっている。
【0043】
処理空間33の下側には、ノズル36が配置されている。ノズル36は、筒部21a,31aと同一の長さを有しており、筒部21a,31aと平行に、かつ筒部21a,31aの軸線方向には筒部21a,31aと同一位置に配置されている。したがって、ノズル36の長手方向の両端面は、筒部21a,231aの両端面と同一位置に位置させられている。ノズル36の処理空間33に臨む上面には、ノズル36の長手方向に延びる吹き出し口36aが形成されている。吹き出し口36aの長さは、樹脂フィルムFの幅より長くなっており、吹き出し口36aの長手方向の両端部は、円筒22及び回転ロール31の円筒に巻回された樹脂フィルムFの幅方向の両端部に対し筒部21a,31aの軸線方向へ互いに同一距離だけ外側に位置させられている。
【0044】
ノズル36には、不活性ガス供給源(図示せず)から不活性ガスが供給される。不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム等があるが、この実施の形態では、窒素が採用されている。ノズル36に供給された不活性ガスは、ノズル36の内部に設けられた整流路(図示せず)において整流された後、ノズル36に設けられた通路36bを通って吹き出し口36aから処理空間33内に吹き出される。これにより、処理空間33の内部が、ほぼ大気圧である不活性ガスの雰囲気とされている。
【0045】
処理空間33の上側には、ダミーノズル37が配置されている。ダミーノズル37は、不活性ガスの吹き出しに関連する吹き出し口等の構造を有していない点を除き、ノズル36と同一形状、同一寸法を有し、ノズル36と上下対称に配置されている。ダミーノズル37に代えて、ノズル36と同様のノズルを処理空間33の上側に設けてもよい。その場合、処理空間33内にその下側及び上側から不活性ガスを供給したり、処理空間33内にその上側からのみ不活性ガスを供給したりできる。
【0046】
回転ロール21,31のうちの一方の回転ロール21の円筒22には、電源38の高圧端子が接続されている。他方の回転ロール31の円筒は、接地されている。勿論、円筒22を接地し、回転ロール31の円筒32に電源38の高圧端子を接続してもよい。電源38からの電圧供給により、円筒22,32間に電界が形成され、処理空間33がほぼ大気圧の放電空間になる。電源38からの供給電圧及び円筒22,32間の電界は、例えばパルス状になっている。パルスの立ち上がり時間及び立ち下がり時間は、10μs以下であることが望ましく、電界強度は、10〜1000KV/cmであることが望ましく、周波数は、0.5〜100kHzであることが望ましい。印加電圧及び電界は、パルス状の間欠波に限られず、正弦波等の連続波であってもよい。
【0047】
電源38からの電圧供給により、回転ロール21,31の円筒22,32間において放電が行われる。この放電により、処理空間33内の窒素ガスがプラズマ化されるとともに、樹脂フィルムFに付着した重合性モノマーが活性化され、二重結合の開裂、重合等が発生する。また、樹脂フィルムFへの窒素ガスの接触や、窒素ガスからの紫外線(337nm)の照射により、樹脂フィルムFの表面の分子のC−C、C−O、C−H等の結合が切断される。この結合切断部にアクリル酸等の重合性モノマーの重合物が結合(グラフト結合)し、あるいは重合性モノマーから分解したCOOH基等が結合すると考えられる。これにより、樹脂フィルムFの表面に接着性促進層が形成され、樹脂フィルムFの水系接着剤に対する接着性が向上する。
【0048】
上記構成を有する処理装置10の凝縮部(凝縮装置)20によれば、ノズル部25の吹き出し口25aから凝縮空間24内に吹き出したモノマーガスは、筒部21aの軸線方向における凝縮空間24の両端部から外部に向かって流れることがほとんどなく、吹き出し口25aの長手方向のいずれの箇所から吹き出されたモノマーガスも筒部21aの周方向へ流れるだけである。したがって、凝縮空間24内におけるモノマーガスの濃度を筒部21aの軸線方向における各部で均一にすることができる。よって、モノマーガスを樹脂フィルムFの幅方向の各部において均一に付着させることができる。その結果、プラズマ処理部30で処理された樹脂フィルムFの水系接着剤に対する接着性を、樹脂フィルムFの幅方向の各箇所において均一に向上させることができる。
【0049】
また、表面処理装置10の保守点検の際には、カバー23及びノズル部25が回転ロール21から上方へ移動させられる。このとき、遮蔽板41が回転ロール21に取り付けられているから、遮蔽板41がカバー23と一緒に移動することがない。したがって、カバー23を上方へ移動させた後、遮蔽板41をカバー23から取り外すという手間を省くことができる。また、表面処理装置10の保守点検後にカバー23を元の位置に戻す際には、カバー23を遮蔽板41,41に支持部材44,44を介して載置するだけでよく、遮蔽板41をカバー23に取り付ける必要がない。よって、表面処理装置10の保守点検に要する手間を大幅に軽減することができる。
【0050】
さらに、カバー23が遮蔽板41に支持部材44を介して接し、しかも遮蔽板41が回転ロール21に設けられているから、カバー23及び遮蔽板41の位置が、回転ロール21を基準として決定される。したがって、カバー23及びノズル部25を回転ロール21に対して容易にかつ精度良く位置決めすることができる。よって、凝縮空間24の間隔の精度、つまり筒部21a及び円筒22の各外周面とカバー23の内面との間隔の精度、及び筒部21aの径方向における吹き出し口25aの位置精度を向上させることができる。
【0051】
なお、この発明は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲において各種の変形例を採用することができる。
例えば、上記の実施の形態(
図1〜
図5)においては、ノズル部25(ノズル)とカバー23が一体になり、カバー23の周方向の中央部がノズルの一部を構成しているが、これに代えて、
図7に示すように、ノズル25とカバー23を別体に形成してもよい。その場合には、カバー23を一対のカバー片23a,23bにて構成するとよい。これらカバー片23a,23bは、上記実施の形態(
図1〜
図5)のカバー23における、ノズル部25よりも周方向の両側の部分に相当する。そして、各カバー片23a,23bを、ノズル25の側面にボルト26等によって固定すればよい。そのように構成した場合には、ノズル25及び一対のカバー片23a,23bによって凝縮空間24が形成され、ノズル25の凝縮空間24に臨む部分が、カバーの一部(周方向の中央部)として兼用される。
【0052】
また、上記の実施の形態(
図1〜
図5)においては、凝縮空間24の間隔を、ノズル25に関して回転ロール21の回転方向の後方側に位置する部分と前方側に位置する部分とで同一にしているが、これに代えて、
図8に示すように、凝縮空間24におけるノズル25よりも回転ロール21の回転方向の前方側の部分24aの間隔(厚み)を、凝縮空間24におけるノズル25よりも上記回転方向の後方側の部分24bの間隔(厚み)より広くしてもよい。例えば、
図8においては、ノズル25よりも上記回転方向の前方側(
図8の右)のカバー片23aの内周面とロール電極21の外周面との間隔を、ノズル25よりも上記回転方向の後方側(
図8の左)のカバー片23bの内周面とロール電極21の外周面との間隔より広くすることで、凝縮空間24の前方側部分24aの厚みを後方側部分24bの厚みより大きくしてある。後方側のカバー片23bの内周面の曲率半径は、前方側のカバー片23aの内周面の曲率半径より小さい。そのようにした場合には、前方側部分24aのモノマーガスの流量が、後方側部分24bのモノマーガスの流量より多くなるので、樹脂フィルムFに対する重合性モノマーの付着効率を向上させることができる。
電極部材の形状は、ロール形状に限られず、平板形状であってもよく、ロール21の外周面に沿う凹円筒面を有する形状であってもよい。