特許第5866444号(P5866444)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5866444
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20160204BHJP
   H02M 1/00 20070101ALI20160204BHJP
   F28D 15/02 20060101ALI20160204BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20160204BHJP
   H01L 23/427 20060101ALI20160204BHJP
【FI】
   H02M7/48 M
   H02M1/00 R
   H02M7/48 E
   F28D15/02 L
   F28D15/02 M
   H05K7/20 R
   H01L23/46 B
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-522331(P2014-522331)
(86)(22)【出願日】2012年6月29日
(86)【国際出願番号】JP2012066744
(87)【国際公開番号】WO2014002263
(87)【国際公開日】20140103
【審査請求日】2014年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 洋介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 伸広
【審査官】 武市 匡紘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−211956(JP,A)
【文献】 特開平11−341813(JP,A)
【文献】 特開2012−002388(JP,A)
【文献】 特開2001−175943(JP,A)
【文献】 特開平07−180982(JP,A)
【文献】 特開平03−060388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42−7/98
H01M 1/00−1/44
B60L 1/00−3/12
B60L 7/00−13/00
B60L 15/00−15/42
F28D 15/00−15/02
H01L 23/00−23/58
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱源を含む電気回路と、
前記発熱源を冷却し、放熱フィンが設けられ、冷媒が封入されたヒートパイプ冷却器と、
前記発熱源と前記放熱フィンとを別々の空間に仕切る仕切り板と、
前記仕切り板で仕切られる前記放熱フィンのある空間の温度に基づいて、前記冷媒が凍結しているか否かを判定する凍結判定手段と、
前記凍結判定手段により前記冷媒が凍結していると判定された場合、出力を制限する出力制限手段とを備え、
前記電気回路を構成する少なくとも一つの機器が前記ヒートパイプ冷却器を加熱するように配置されたこと
を特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記機器が前記ヒートパイプ冷却器に対して空気の対流の風上に配置されたこと
を特徴とする請求項に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記冷媒が凍結する温度以下の場合、熱を排出する排気口を塞ぐ開閉手段
を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記開閉手段は、バイメタルシャッターであること
を特徴とする請求項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
発熱源を含む電気回路を備え、前記発熱源を、放熱フィンが設けられ、冷媒が封入されたヒートパイプ冷却器により冷却する電力変換装置を制御する制御装置であって、
前記発熱源と前記放熱フィンとを別々の空間に仕切る仕切り板で仕切られる前記放熱フィンのある空間の温度に基づいて、前記冷媒が凍結しているか否かを判定する凍結判定手段と、
前記凍結判定手段により前記冷媒が凍結していると判定された場合、出力を制限する出力制限手段とを備え、
前記電気回路を構成する少なくとも一つの機器が前記ヒートパイプ冷却器を加熱するように配置されたこと
特徴とする電力変換装置の制御装置。
【請求項6】
発熱源を含む電気回路を備え、前記発熱源を、放熱フィンが設けられ、冷媒が封入されたヒートパイプ冷却器により冷却する電力変換装置を制御する制御方法であって、
前記発熱源と前記放熱フィンとを別々の空間に仕切る仕切り板で仕切られる前記放熱フィンのある空間の温度に基づいて、前記冷媒が凍結しているか否かを判定し、
前記冷媒が凍結していると判定した場合、出力を制限することを含み、
前記電気回路を構成する少なくとも一つの機器が前記ヒートパイプ冷却器を加熱するように配置されたこと
特徴とする電力変換装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートパイプ冷却器を用いた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電力変換装置には、スイッチング素子として半導体素子が用いられる。この半導体素子の冷却方法の一つとして、ヒートパイプ両端の温度差により、熱エネルギーがヒートパイプに封入された冷媒液(以下、冷媒という。)を介して高温部から低温部へ移動する作用を利用して冷却するヒートパイプ冷却器を用いた冷却方法が知られている。
【0003】
ヒートパイプ冷却器を寒冷地域の屋外などの寒冷環境下で用いる場合、ヒートパイプ内の低温側温度が冷媒凝固点以下になると低温側の冷媒が凍結する。ヒートパイプ冷却器は、冷媒が凍結すると、熱エネルギーの移動が著しく妨げられ、十分に冷却効果を発揮することができない。従って、ヒートパイプ冷却器の冷媒が凍結した状態で、電力変換装置を運転した場合、半導体素子が十分に冷却できずに、許容温度超過で破壊する恐れがある。このため、ヒートパイプの冷媒を凍結させないように様々な工夫がなされている。この工夫の一例としてヒートパイプ冷却器にヒータを取り付けた電力変換装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、ヒートパイプ冷却器にヒータを取り付けた電力変換装置では、運転中におけるヒートパイプ冷却器の冷却能力が低下するため、ヒータにより冷媒が解凍するまで、運転することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−276742号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、ヒートパイプ冷却器の冷媒が凍結していても、運転開始することのできる電力変換装置を提供することにある。
【0007】
本発明の観点に従った電力変換装置は、発熱源を含む電気回路と、前記発熱源を冷却し、放熱フィンが設けられ、冷媒が封入されたヒートパイプ冷却器と、前記発熱源と前記放熱フィンとを別々の空間に仕切る仕切り板と、前記仕切り板で仕切られる前記放熱フィンのある空間の温度に基づいて、前記冷媒が凍結しているか否かを判定する凍結判定手段と、前記凍結判定手段により前記冷媒が凍結していると判定された場合、出力を制限する出力制限手段とを備え、前記電気回路を構成する少なくとも一つの機器が前記ヒートパイプ冷却器を加熱するように配置されたことを備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る電力供給システムの構成を示す構成図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る電力変換装置1に実装されたヒートパイプ冷却器の構成を示す構成図である。
図3図3は、本発明の第2の実施形態に係る電力変換装置に実装されたヒートパイプ冷却器の構成を示す構成図である。
図4図4は、本発明の第3の実施形態に係る電力変換装置に実装されたヒートパイプ冷却器の構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電力供給システム10の構成を示す構成図である。図2は、本実施形態に係る電力変換装置1に実装されたヒートパイプ冷却器9の構成を示す構成図である。図2中に示す矢印は、自然対流を示している。なお、図中における同一部分には同一符号を付してその詳しい説明を省略し、異なる部分について主に述べる。以降の実施形態も同様にして重複した説明を省略する。
【0011】
電力供給システム10は、電力変換装置1、制御装置2、及び直流電源11を備える。電力供給システム10は、交流電源を備える交流電力系統15に連系する。
【0012】
直流電源11は、電力変換装置1に直流電力を供給する。直流電源11は、電力変換装置1に直流電力を供給できるものであれば何でも良い。例えば、直流電源11は、2次電池、光起電力(PV, photovoltaic)セル(太陽電池)、又は燃料電池などである。
【0013】
電力変換装置1は、直流電源11から供給される直流電力を交流電力系統15と同期する交流電力に変換する。電力変換装置1は、交流電力系統15に交流電力を供給する。
【0014】
制御装置2は、インバータ回路3にゲート信号GTを出力して、電力変換装置1から出力される交流電力を制御する。
【0015】
連系トランス12は、電力変換装置1に内蔵されるか、又は電力変換装置1の外部に配置される。連系トランス12は、インバータ回路3から、交流フィルタ5を介して出力される交流電力を交流電力系統15に連系させるための機器である。
【0016】
交流電流検出器13は、電力変換装置1の出力電流Iivを計測するための検出器である。交流電流検出器13は、検出した出力電流Iivを制御装置2に検出信号として出力する。交流電流検出器13は、電力変換装置1の内部に設けられている。連系トランス12が電力変換装置1に内蔵される場合は、交流電流検出器13は、連系トランス12と交流電力系統15との間の電路に配置する。連系トランス12が電力変換装置1の外部に配置される場合は、交流電流検出器13は、交流フィルタ5と連系トランス12との間の電路に配置する。
【0017】
交流電圧検出器14は、電力変換装置1の出力電圧Vrを計測するための検出器である。交流電圧検出器14は、検出した電力変換装置1の出力電圧Vrを制御装置2に検出信号として出力する。
【0018】
電力変換装置1は、インバータ回路3、平滑コンデンサ4、交流フィルタ5、直流電圧検出器6、直流電流検出器7、温度センサ8、ヒートパイプ冷却器9、交流電流検出器13、及び交流電圧検出器14を備える。また、電力変換装置1は、連系トランス12を備える場合もある。
【0019】
インバータ回路3は、スイッチング素子である半導体素子31で構成されている。インバータ回路3は、PWM(パルス幅変調, Pulse Width Modulation)制御される電気回路である。インバータ回路3は、制御装置2から出力されるゲート信号Gtによりスイッチング素子が駆動(スイッチング)される。これにより、インバータ回路3は、電力変換を行う。
【0020】
平滑コンデンサ4は、インバータ回路3の直流側に設けられている。平滑コンデンサ4は、インバータ回路3のスイッチング素子の駆動により変動する直流電圧を平滑化する。
【0021】
交流フィルタ5は、リアクトル51及びコンデンサ52で構成されたフィルタ回路である。交流フィルタ5は、インバータ回路3から出力される高調波を除去する。
【0022】
直流電圧検出器6は、インバータ回路3の直流側に印加される直流電圧Vdcを計測するための検出器である。直流電圧検出器6は、検出した直流電圧Vdcを制御装置2に検出信号として出力する。
【0023】
直流電流検出器7は、インバータ回路3の直流側に入力される直流電流Idcを計測するための検出器である。直流電流検出器7は、検出した直流電流Idcを制御装置2に検出信号として出力する。
【0024】
温度センサ8は、インバータ回路3を構成する半導体素子31を冷却するためのヒートパイプ冷却器9の放熱フィン93側又は放熱フィン93の近傍に設けられている。ヒートパイプ冷却器9は、放熱フィン93が設けられている上部の方が低温になる。従って、温度センサ8は、冷媒が凍結し易い放熱フィン93側に設けることが望ましい。温度センサ8は、ヒートパイプ冷却器9に封入されている冷媒が凍結しているか否かを判定するための温度Tdを検出する。温度センサ8は、検出した温度を制御装置2に検出信号として出力する。
【0025】
ヒートパイプ冷却器9は、ベース板91、ヒートパイプ92、及び複数の放熱フィン93を備えている。ヒートパイプ冷却器9は、インバータ回路3を構成する発熱源である半導体素子31を冷却する。
【0026】
ベース板91には、半導体素子31が接合されている。ヒートパイプ92は、下部がベース板91に埋まるように挿し込まれている。ヒートパイプ92の内部には、揮発性の液体冷媒が封入されている。冷媒は、純水、凍結を防止するための化学成分が純水に混入された液体、又はフロン等の化学物質などである。ヒートパイプ92の上部には、複数の放熱フィン93が設けられている。
【0027】
次に、ヒートパイプ冷却器9により半導体素子31が冷却される原理について説明する。
【0028】
ベース板91は、半導体素子31から発生した熱を吸収する。ベース板91は、半導体素子31から吸収した熱をヒートパイプ92に伝導させる。このとき、ヒートパイプ92の下部(高温側)に溜まっている液体状態の冷媒は、ヒートシンク91から伝導した熱により温められて、蒸気になる。蒸気になった冷媒は、温度の低いヒートパイプ92の上部(低温側)に移動する。
【0029】
温められた蒸気状態の冷媒がヒートパイプ92の上部(低温側)に移動すると、ヒートパイプ92の上部の温度(低温側)が周囲の温度より高くなる。ヒートパイプ92の上部の温度が周囲の温度より高くなると、ヒートパイプ92の上部(低温側)に設けられた放熱フィン93から熱エネルギーが放出される。
【0030】
蒸気状態の冷媒は、放熱フィン93が冷却されることにより、冷却される。放熱フィン93を冷却することにより温められた冷却風は、電力変換装置1の上部に設けられた放熱用の排気口EXから外部に排出される。冷媒は、冷却されると、蒸気から液体に戻る。液体に戻った冷媒は、温度差によりヒートパイプ9内部を伝わり、ヒートパイプ92の上部(低温側)からヒートパイプ92の下部(高温部)に戻る。これらの一連の動作を繰り返すことにより、ヒートパイプ冷却器9は、半導体素子31を冷却する。
【0031】
制御装置2は、交流電流検出器13により検出された電力変換装置1の出力電流Iiv、交流電圧検出器14により検出された電力変換装置1の出力電圧Vr、直流電圧検出器6により検出された直流電圧Vdc、直流電流検出器7により検出された直流電流Idc、温度センサ8により検出された温度Tdに基づいて、電力変換装置1の出力電力を制御する。
【0032】
制御装置2は、電流指令演算部21、リミッタ22、電流制御部23、ゲート信号生成部24、及び凍結状態判定部25を備えている。
【0033】
電流指令演算部21は、出力電流Iiv、出力電圧Vr、直流電圧Vdc、及び直流電流Idcに基づいて、電流指令値Ir0を演算する。電流指令値Ir0は、インバータ回路3の出力電流Iivに対する指令値である。電流指令演算部21は、演算した電流指令値Ir0をリミッタ22に出力する。
【0034】
凍結状態判定部25は、温度センサ8により検出された温度Tdに基づいて、ヒートパイプ冷却器9の冷媒が凍結しているか否かを判定する。冷媒が凍結している状態とは、ヒートパイプ冷却器9が充分に冷却機能を発揮できない状態を意味する。凍結状態判定部25には、冷媒が凍結していると判断される最高温度が基準温度として予め設定されている。凍結状態判定部25は、温度センサ8により検出された温度Tdが予め設定されている基準温度よりも低い場合、冷媒が凍結していると判定する。凍結状態判定部25は、温度センサ8により検出された温度Tdが予め設定されている基準温度よりも高い場合、冷媒が凍結していないと判定する。
【0035】
凍結状態判定部25は、冷媒が凍結していると判定した場合、電流指令演算部21により演算された電流指令値Ir0に制限を掛けるための信号をリミッタ22に出力する。凍結状態判定部25は、冷媒が凍結していないと判定した場合、電流指令演算部21により演算された電流指令値Ir0に制限を掛けないための信号をリミッタ22に出力する。なお、凍結状態判定部25は、リミッタ22による制限を掛ける場合又はリミッタ22による制限を掛けない場合のいずれか一方で、何ら信号を出力しないようにしてもよい。
【0036】
リミッタ22には、ヒートパイプ冷却器9の冷媒が凍結している場合に出力可能な最大電流値が上限値として設定されている。この出力可能な最大電流値とは、冷媒が凍結状態のヒートパイプ冷却器9が、インバータ回路3を構成する半導体素子31を充分に冷却することのできるインバータ回路3の最大の出力電流値である。換言すれば、出力可能な最大電流値とは、冷媒が凍結状態のヒートパイプ冷却器9で、半導体素子31が過熱による破壊をすることなく、インバータ回路3が出力し続けられる最大の電流値である。
【0037】
リミッタ22は、凍結状態判定部25により冷媒が凍結していると判定された場合、設定されている上限値で、電流指令演算部21により演算された電流指令値Ir0を制限する。リミッタ22は、制限した電流指令値Ir1を電流制御部23に出力する。一方、リミッタ22は、凍結状態判定部25により冷媒が凍結していないと判定された場合、電流指令演算部21により演算された電流指令値Ir0を制限しない電流指令値Ir1を電流制御部23に出力する。この場合、リミッタ22から出力される電流指令値Ir1は、電流指令演算部21により演算された電流指令値Ir0と同じになる。
【0038】
電流制御部23には、電流指令演算部21からリミッタ22介して電流指令値Ir1が入力される。電流制御部23は、インバータ回路3の出力電流が電流指令値Ir1に追従するように、出力電流Iivを制御するための電圧指令値Vivrを演算する。電圧指令値Vivrは、インバータ回路3の出力電圧に対する指令値である。電流制御部23は、演算した電圧指令値Vivrをゲート信号生成部24に出力する。
【0039】
ゲート信号生成部24は、電流制御部23により演算された電圧指令値Vivrに基づいて、ゲート信号Gtを生成する。ゲート信号生成部24は、生成したゲート信号Gtをインバータ回路3に出力する。ゲート信号Gtは、インバータ回路3のスイッチング素子を駆動させる。これにより、インバータ回路3の出力電圧が制御される。
【0040】
本実施形態によれば、以下の作用効果を得ることができる。
【0041】
ヒートパイプ冷却器9の冷媒が凍結していても、ベース板91が設けられており、ある程度冷却することができる。また、電力変換装置1の内部は冷媒が凍結する程の低温状態であることから、インバータ回路3の半導体素子31の許容温度以下に抑えることができる。
【0042】
従って、電力変換装置1は、ヒートパイプ冷却器9の冷媒が凍結しているか否かを判定し、冷媒が凍結していると判定した場合は、電流指令値Ir1の上限をリミッタ22により制限することで、ヒートパイプ冷却器9の冷媒が凍結状態でも、安全に運転することができる。このように、電力変換装置1は、太陽光発電用パワーコンディショナー(PCS, Power Conditioning System)のように、小さい出力でも早い起動が要求される電力変換装置に適している。
【0043】
また、運転開始後は、半導体素子31又は電力変換装置1に実装されている各種機器などによりヒートパイプ冷却器9が温められことで、冷媒が解凍される。電力変換装置1は、温度センサ8を用いて冷媒が解凍されたことを検出することで、リミッタ22による電流指令値Ir1の制限を解除する。これにより、電力変換装置1は、リミッタ22による制限のない出力をする通常の運転に切り替えることができる。
【0044】
(第2の実施形態)
図3は、本発明の第2の実施形態に係る電力変換装置1Aに実装されたヒートパイプ冷却器9の構成を示す構成図である。図3中に示す矢印は、自然対流を示している。
【0045】
本実施形態は、図2に示す第1の実施形態に係る電力変換装置1を図3に示す電力変換装置1Aに代えた点以外は、第1の実施形態と同様である。
【0046】
電力変換装置1Aは、図2に示す第1の実施形態に係る電力変換装置1において、交流フィルタ5のリアクトル51をヒートパイプ冷却器9の放熱フィン93の下側に配置し、仕切り板DVを設けたものである。その他の点は、電力変換装置1Aは、第1の実施形態に係る電力変換装置1と同様の構成である。
【0047】
リアクトル51は、ヒートパイプ冷却器9に対して、電力変換装置1の内部で発生する下部から上部に向けて流れる自然対流の風上に設けられている。リアクトル51は、ヒートパイプ冷却器9を温めるための発熱源となる。
【0048】
仕切り板DVは、空気の汚染度などを区分けするために、発熱源である半導体素子31とリアクトル51との間を仕切るために設けられている。
【0049】
次に、リアクトル51の配置位置によるヒートパイプ冷却器9への作用について説明する。
【0050】
ヒートパイプ冷却器9の冷媒が凍結している状態で、電力変換装置1を始動した場合、最初は、リミッタ22による制限がされた電流指令値Ir1により運転される。電力変換装置1の始動後、インバータ回路3から出力される電流によりリアクトル51が加熱する。リアクトル51の加熱により温められた空気が上昇することで、電力変換装置1Aの下部から上部に向かって対流が発生する。この温められた空気の対流により、リアクトル51の上方に設けられたヒートパイプ冷却器9が温められる。ヒートパイプ冷却器9が温められることにより、封入されている凍結状態の冷媒の解凍が促進される。電力変換装置1Aが、ヒートパイプ冷却器9の冷媒が解凍されたと判定すると、リミッタ22による電流指令値Ir1の制限が解除される。これにより、電力変換装置1Aは、リミッタ22による制限がされない通常の運転に切り替わる。
【0051】
ここで、リアクトル51の発熱によって温められる空気の温度は、半導体素子31の温度と比較すれば充分に小さい。従って、リアクトル51により温められた空気でも、ヒートパイプ冷却器9の放熱フィン93を冷却する効果にほとんど影響はない。
【0052】
本実施形態によれば、第1の実施形態による作用効果に加え、以下の作用効果を得ることができる。
【0053】
ヒートパイプ冷却器9を加熱するように、リアクトル51を電力変換装置1の内部で発生する空気の対流の風上に配置することで、ヒートパイプ冷却器9の凍結状態の冷媒の解凍を促進することができる。
【0054】
このように、ヒートパイプ冷却器9を加熱する機器として、リアクトル51のように電気回路を構成する機器を用いることで、ヒータのような電力損失がなく、ヒータのようにヒートパイプ冷却器9の冷却機能を阻害するほどに加熱する恐れもない。
【0055】
(第3の実施形態)
図4は、本発明の第3の実施形態に係る電力変換装置1Bに実装されたヒートパイプ冷却器9の構成を示す構成図である。図4中に示す矢印は、自然対流を示している。
【0056】
本実施形態は、図3に示す第2の実施形態に係る電力変換装置1Aを図4に示す電力変換装置1Bに代えた点以外は、第2の実施形態と同様である。
【0057】
電力変換装置1Bは、図3に示す第2の実施形態に係る電力変換装置1Aにおいて、排気口EXを塞ぐようにシャッター16を設けたものである。その他の点は、電力変換装置1Bは、第2の実施形態に係る電力変換装置1Aと同様の構成である。
【0058】
シャッター16は、電力変換装置1Bの内部の温度に応じて排気口EXを開閉するバイメタルシャッターである。バイメタルシャッターは、熱膨張率の異なる2種類の金属を用いて、温度に応じて自動的に開閉する機器である。シャッター16は、ヒートパイプ冷却器9の冷媒が凍結していると推定される温度では、排気口EXを塞ぎ、ヒートパイプ冷却器9の冷媒が凍結していないと推定される温度では、排気口EXを空ける。
【0059】
次に、シャッター16によるヒートパイプ冷却器9への作用について説明する。
【0060】
ヒートパイプ冷却器9の冷媒が凍結している状態で、電力変換装置1Bを始動した場合、最初は、リミッタ22による制限がされた電流指令値Ir1により運転される。電力変換装置1Bの始動後、電力変換装置1Bの内部に実装されているリアクトル51を含む各種機器が発熱する。これにより、電力変換装置1Bの内部温度が上昇する。電力変換装置1Bの内部温度が上昇すると、温められた空気が排気口EXから出ようとする。
【0061】
電力変換装置1Bの内部温度がヒートパイプ冷却器9の冷媒が凍結する温度である場合、シャッター16が排気口EXを塞いでいるため、放熱されない。従って、電力変換装置1Bの内部温度は更に上昇する。これにより、ヒートパイプ冷却器9の冷媒の解凍が促進される。
【0062】
電力変換装置1Bの内部温度が上昇し、ヒートパイプ冷却器9の冷媒が完全に解凍される温度に達すると、シャッター16は、排気口EXを開ける。これにより、電力変換装置1Bの内部は、放熱される。電力変換装置1Bは、ヒートパイプ冷却器9の冷媒が解凍されたと判定すると、リミッタ22による電流指令値Ir1の制限を解除する。これにより、電力変換装置1Bは、リミッタ22による制限がされない通常の運転に切り替わる。
【0063】
本実施形態によれば、第2の実施形態による作用効果に加え、以下の作用効果を得ることができる。
【0064】
電力変換装置1Bの内部温度がヒートパイプ冷却器9の冷媒が凍結する温度以下で、排気口EXを塞ぐシャッター16を設けることで、ヒートパイプ冷却器9の凍結状態の冷媒の解凍を促進することができる。
【0065】
なお、各実施形態において、電力変換装置1〜1Bは説明した構成に限らない。各実施形態では、制御装置2を電力変換装置1〜1Bと別の構成として説明したが、制御装置2は、電力変換装置1〜1Bに組み込まれていてもよい。
【0066】
各実施形態において、電力供給システム10に連系トランス12が無くてもよい。電力変換装置1〜1Bには、連系トランス12の有無に関係なく、連系トランス又は連系リアクトルのいずれか一方が設けられていてもよいし、両方設けられていてもよい。これらの連系トランス及び連系リアクトルは、交流フィルタ5のリアクトル51と一体化されていてもよい。交流電圧検出器14は、系統母線15の系統電圧Vrを計測できれば、何処に設けてもよい。電力変換装置1〜1Bの直流側に直流電圧を調整するチョッパ回路又は直流リアクトルが設けられていてもよい。
【0067】
各実施形態では、温度センサ8を放熱フィン93に設けたが、電力変換装置1の何処に設けてもよい。例えば、温度センサ8は、ヒートシンク91に設けてもよい。即ち、温度センサ8は、ヒートパイプ冷却器9の冷媒が凍結しているか否かを判定できる温度を測定できればよい。また、温度センサ8は、必ずしも温度を計測できなくてもよい。例えば、温度センサ8は、ヒートパイプ冷却器9の冷媒が凍結する温度よりも高いか低いかを示す接点信号を出力するだけでもよい。
【0068】
各実施形態において、電力変換装置1〜1Bは、自然対流による自然風冷を行うものとして説明したが、冷却ファンを用いた強制風冷を採用してもよい。強制風冷により生じる対流を、自然風冷における自然対流と同様に考慮することで、強制風冷による電力変換装置1〜1Bを同様に構成することができる。
【0069】
各実施形態において、リミッタ22による電流指令値Ir0の制限は、温度に合わせて段階的又は比例的などで制限をしてもよい。また、冷媒の解凍後のリミッタ22による電流指令値Ir0の制限解除についても同様である。
【0070】
各実施形態において、ヒートパイプ冷却器9の冷媒が凍結していると判定される場合に、電力変換装置1〜1Bの出力電流を制限する構成としたが、電力変換装置1〜1Bからの出力を制限するのであれば、出力電力又は出力電圧などの電流以外の電気量で制限してもよい。
【0071】
各実施形態では、電力変換装置1〜1Bは、直流電力を交流電力に変換するインバータとして説明したが、交流電力を直流電力に変換するコンバータでもよい。また、コンバータによる構成で、ヒートパイプ冷却器9の冷媒が凍結している場合に、直流側の出力を制限するようにしてもよい。
【0072】
第2の実施形態及び第3の実施形態では、発熱源としてリアクトル51を用いたが、これに限らない。電気回路(インバータ回路3)を構成する機器であり、電力変換装置1A,1Bの運転により発熱し、ヒートパイプ冷却器9の冷媒の解凍後、ヒートパイプ冷却器9の冷却機能を阻害しない程度に発熱するものであれば、何でもよい。例えば、連系トランス又は連系リアクトルを電力変換装置1A,1Bに実装し、これらを発熱源としてもよい。
【0073】
第3の実施形態では、リアクトル51をヒートパイプ冷却器9の冷媒を温めるように配置し、排気口EXにシャッター16を設けたが、リアクトル51の配置は考慮しなくてもよい。シャッター16を設けるだけでも、凍結状態の冷媒の解凍を促進することができる。
【0074】
第3の実施形態では、シャッター16をバイメタルシャッターとしたが、これに限らない。ヒートパイプ冷却器9の冷媒が凍結する温度で、排気口EXを塞ぐ機器であれば、何でも良い。排気口EX自身に、このような塞ぐ機能を持たせても良い。また、バイメタルシャッターのように自身で開閉するものに限らず、温度センサなどの信号に応じて開閉する機器でもよい。また、制御装置2に、このような機器に対して、開閉するための指令を出力する機能を持たせてもよい。
【0075】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明によれば、ヒートパイプ冷却器の冷媒が凍結していても、運転開始することのできる電力変換装置を提供することができる。
図1
図2
図3
図4