(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
空隙を形成して対向配置したE字形外磁体(1)とI字形内磁体(4)とで単一の閉磁気回路を構成し、E字形外磁体(1)は鉄心(11),(12),(13)と固定側磁極(111),(112),(113)を具え、鉄心の1つに1次側コイル(21)を具えて単相交流電源と電気的に接続して1次側閉電気回路(2)を配備し、もう1つの鉄心に2次側コイル(31)を具えて容量又は抵抗或はそれらの合体の電気素子(32)と電気的に直列接続して2次側閉電気回路(3)を配備して、固定側磁気・電気回路部(I)を構成し、I字形内磁体(4)は溝(41),(42),(43)で形成された可動側磁極(411),(412),(413)を具えて、それぞれに、可動側磁極を貫通する磁束によって生じる誘導電流による磁界を発生して、磁束に磁気的な拘束状態を作用する3次側コイル(51),(61),(71)でなる3次側閉電気回路(5),(6),(7) を配備して、可動側磁気・電気回路部(II) を構成することを特徴とする電磁誘導駆動装置。
可動側磁気・電気回路部(II)を、側面で左右に分離してそれぞれを独立した分離体(IIa),(IIb)を形成し、左右分離体の可動側磁極(411),(412),(413)の対向をずらして、並列に配置して一体化し、分離体 (IIa),(IIb)それぞれのI字形内磁体(4)の可動側磁極(411),(412),(413)に、3次側コイル(51),(61),(71)でなる3次側閉電気回路(5),(6),(7)を配備することを特徴とする請求項2記載の電磁誘導駆動装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
「従来の方法と装置」は、空隙を形成して対向配置したE字形外磁体(1)とI字形内磁体(_4)との間で、それぞれが単一で同位相の磁気回路を形成する3つの鉄心(11),(12),(13) 及び磁極(111),(112),(113)を具えて、1つの磁極に1次側コイル(21)を具え、該コイルを単相交流電源(22)と電気的に接続して1次側閉電気回路(2)を構成し、もう1つの磁極に2次側コイル(31)を具え、該コイルにコンデンサー(321)又は抵抗(322)或はそれらの合体の電気素子(32)と電気的に直列接続して2次側閉電気回路(3)を構成し、E字形外磁体(1)とI字形内磁体(4)とによって形成した単一の閉磁気回路の空隙中に、導電性の非磁性材料によって形成され、閉磁気回路に対向しない縁部(81),(81’)を両側に具える板状導電体(8)を配備することを特徴としていた。
「従来の方法と装置」の駆動方法は、
図12a ,
図12bに示すように、対向配置したE字形外磁体(1)とI字形内磁体(4)とによって、3つの空隙(G1),(G2),(G3) を具える単一の閉磁気回路を形成し、閉磁気回路の空隙(G1),(G2),(G3) 中に、導電性の非磁性材料によって形成され、閉磁気回路に対向しない縁部(81),(81’)を両側に具える板状導電体(8)を配備し、板状導電体(8)を貫通する磁束φ1,φ2,φ3の間に互いに位相差を発生したとき、各磁束が板状導電体(8)を貫通する各位置の板状導電体(8)の内面に於いて、一方の縁部(81)を板状導電体(8)の移動方向に流れ、板状導電体(8)を貫通している一方の隣の磁気回路を横切って、他方の縁部 (81’)を一方の縁部(81)に対して逆移動方向に流れ、再び、板状導電体(8)を貫通している他方の隣の磁気回路を横切って一周する誘導電流I 31,I32,I33を発生する。磁束φ1,φ2,φ3と誘導電流I31,I32,I33との間で、フレミング左手の法則によって、板状導電体(8)に電磁駆動力Fp32,Fp31,Fp21,Fp23,Fp12,Fp13が発生する。それらの総合の電磁駆動力Fpは、数式(1)に示すように、E字形外磁体(1)の固定側磁極(111),(112),(113) 磁束を貫通する磁束φ1,φ2,φ3 間の位相差の如何に関らず、又時間に関係なく、一定無振動の優れた特性を具えていた。
「従来の方法と装置」は、一定無振動の駆動力特性をもつため運転が低騒音で、又、起動電流に突入電流の発生が無いため機械的なショックが少なく、又、電源電圧の波形のカッティングの電子的な制御にも駆動力に振動が少ないため、運転が低騒音であるという優れた性能を具えていたが、次のような問題点があった。
【0007】
[1.入力電流、電力損失が大きく、効率が良くない] E字形外磁体(1)の固定側磁極(111),(112),(113) とI字形内磁体(4)との間に、電磁駆動力Fpを発生するための板状導電体(8)が介在するために、空隙の長さが大きくなり、1次側閉電気回路(2)に於いて、磁束Φ1を発生するための励磁電流が大きくなり、1次側閉電気回路 (2)の一次側電流I1が大きくなることが、ジュール熱損失による電力損失の増大と発熱量の増大による温度上昇の要因になっていた。
「従来の方法と装置」の駆動力発生方法は、
図12a ,
図12bに示すように、 E字形外磁体(1)とI字形内磁体(4)の閉磁気回路間の空隙(G1),(G2),(G3) に介在する板状導電体(8)に、フレミングの左手法則による電磁駆動力Fpを作用させるものであった。
【0008】
一方、板状導電体(8)は電磁駆動力Fpにより移動速度Vで移動すると、磁束φ1,φ2,φ3 と交差し、「アラゴの円盤」原理の逆状態で、制動力Fnが発生する。板状導電体(8)が磁束φ1,φ2,φ3 と鎖交しながら移動するとき、板状導電体(8)内に於いて、固定側磁極(111),(112),(113) とI字形内磁体(4)の可動側継鉄(40) 間の空隙に於いて、板状導電体(8)が磁束φ3,φ2,φ1と鎖交しながらVの速度で移動するとき、固定側磁極 (111),(112),(113) それぞれの移動の方向前後の端部に対向する領域の板状導電体(8)に於いて、移動方向側の磁極の端部と対向する領域では鎖交する磁束量は増大し、逆移動方向側の磁極の端部と対向する領域では減少し、この変化量が、誘導電圧となり、
図12cに示すように、隣り合う磁極の端部に対向する領域の板状導電体(8)内に移動速度Vに比例した渦電流Δ
I32, ΔI21, ΔI13が生じる。渦電流ΔI32, ΔI21, ΔI13によるジュール熱損失Winは、数式(9)で示すように、移動速度Vの二乗に比例する。ジュール熱損失Winは板状導電体(8)の 温度上昇の原因となり、電気的諸元に於いてジュール熱損失として扱われ、効率や省エネの評価の要素となる。
【0009】
[2.回転数が低い] 渦電流ΔI32, ΔI21, ΔI13と磁束φ1,φ2,φ3との間にフレミングの左手法則により電磁力Fn3r,Fn3l,Fn2r,Fn2l,Fn1r,Fn1lを発生し、これらの総合の電磁力Fnが制動力となり、I字形内磁体(4)の移動を抑制し、装置の移動(回転)を低下させる要因となっていた。
総合の逆電磁力Fnは移動速度Vに比例し、Φ3=Φ2=Φ3,θ23=120°のとき、時間tに関係なく一定で、無振動となる。電磁駆動力Fpと制動力Fnとの総和が装置の総合駆動力Fmとなる。数式(1)で示すように、電磁駆動力Fpは移動速度Vに関係なく一定であるのに対して、数式(9)で示すように、総合の制動力Fnは移動速度Vに比例するため、「従来の方法と装置」の移動速度Vに対する総合駆動力Fmは、V=0のときが最大で、Vが大きくなると共に逆比例・漸減する特性を具えている。板状導電体(8)が直径Dの円筒状導体に変形すると、円筒状導体の回転トルクTmは、Tm=Fm・D/2(g・cm)となる。板状導電体(8)と磁路・鉄心と回転軸とが一体の装置では、回転トルクTmを回転軸から負荷に伝達するが、上述のように、「従来の方法と装置」 は駆動力の振動が少なく、低騒音運転である優れた性能を具えていたが、入力電流と電力損失が大きい、回転数が低い等、効率についての問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電磁誘導駆動装置は、「従来の方法と装置」の原理の改良によって、「従来の方法と装置」の特徴である無振動トルク発生による低騒音運転の特徴を堅持して、消費電力の低減、回転数の増大等による効率向上を目的とするものである。
【0011】
「従来の方法と装置」の原理は、
図12aに示すように、 E字形外磁体(1)の固定側磁極 (111),(112),(113) から板状導電体(8)を貫通してI字形内磁体(4)を通り、再び、板状導電体(8)を貫通して固定側磁極(111),(112),(113) に戻る閉磁気回路を構成しているのに対し、本発明装置は、
図2a,
図2bに示すように、板状導電体(8)は介在しなく、I字形内磁体(4)の可動側継鉄(40)に溝(41),(42),(43)によって固定側磁極(111),(112),(113)に対向した可動側磁極(411),(412),(413)を形成して、可動側磁極(411),(412),(413) それぞれに3次側閉電気回路(5),(6),(7)を配備している点で、「従来の方法と装置」と相異する。
【発明の効果】
【0012】
磁束φ1,φ2,φ3と、これらの磁束によって板状導電体(8)内に発生する誘導電流とによる電磁駆動力Fpの発生方法から発展して、I字形内磁体(4)に可動側磁極(411),(412),(413)を形成し、可動側磁極(411),(412),(413)に3次側閉電気回路(5),(6),(7)を配備して、3次側閉電気回路(5),(6),(7)に発生する誘導電流,I31,I32,I33によって、可動側磁極(411),(412),(413)を貫通する磁束に拘束状態を発生させ、固定側磁極(111),(112),(113) -可動側磁極(411),(412),(413)間の吸引磁力τを外力F0の作用で破断することによる
破断力τ’と、誘導電流I31,I32,I33と磁束φ1,φ2,φ3間に作用する電磁力ψとによって駆動力を発生する、本発明の「電磁誘導駆動方法と装置」を使用するときは、以下のような効果がある。
【0013】
[1〕「従来の方法と装置」の板状導電体(8)が不要となったことで、板状導電体(8)の誘導電流によるジュール熱損失分が削減し、また空隙(G1),(G2),(G3) の長さを小さく出来ることで、磁束φ1の発生に必要な一次側閉電気回路(2)の励磁電流分が小さくて済み、その結果、入力電流が低減して、電気回路のジュール熱損失も低減する。磁束φ1,φ2,φ3に拘束状態を発生させ、吸引磁力τを破断する外力F0を発生させる電力が必要であるが、
図10の図表に示すように、「従来の方法と装置」に比して、全体的には入力が半減する。
〔2〕「従来の方法と装置」に於いては、前述したように、板状導電体(8)が固定側磁極(111),(112),(113)からの磁束φ1,φ2,φ3と鎖交しながら移動するとき、渦電流ΔI32, ΔI21, ΔI13により制動力Fnが発生した。本発明の電磁誘導駆動装置は、「従来の方法と装置」に於ける板状導電体(8)が不要となるため、数式(9)で示すように、移動速度Vに比例した制動力Fn発生の負のエネルギーが削減することで、駆動力発生の効率が向上し、回転数も増大す
る。
〔3〕「従来の方法と装置」が具えていた、優れた無振動トルクの特性を堅持する。 「従来の方法と装置」の電磁駆動力Fpは、数式(1),(9)で示すように、固定側電気磁気・電気回路(I)の固定側磁極(111),(112),(113)の磁束φ1,φ2,φ3の位相差の如何に関らず、又時間tに関係なく一定・無振動の優れた特性を具えていたが、本発明の電磁誘導駆動装置は、二次側閉電気回路(3)のコンデンサー(321) の容量調整によって無振動の特性を具える事ができる。
〔4〕負荷電流特性は、電源電圧一定のとき、「従来の方法と装置」と同様に負荷の大小に拘わらず、ほぼ一定の特性を具える。
〔5〕二次側閉電気回路(3)の位相制御用コンデンサー(321)は、モールドフィルム型、電解型いずれでも、電気特性は変わらない。
〔6〕効率の向上によって、位相制御用、力率改善用のコンデンサーの容量が小さくなり、装置本体に内蔵することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の「電磁誘導駆動装置」は固定側磁気・電気回路部(I)は「従来の方法と装置」と同じで、可動側磁気・電気回路部(II)を改善したものである。
【0017】
〔理論の前提〕 次のように前提する。
〔1〕閉磁気回路は空隙(G1),(G2),(G3)を含んでいるため,磁気回路の磁束密度が鉄心の磁気飽和曲線の湾曲点以下に於いては,ほぼ線形回路と見なすことが出来る。鉄心内部の磁気抵抗に対して空隙の磁気抵抗は十分に大であると見なし得るので,磁路の磁気抵抗は空隙のそれで代表することが出来る。
〔2〕数式に於いて,重ねの法則が適用でき,かつ,1次側コイル(21)への印加電圧が一定電圧・一定周波数の正弦波とすれば,固定側磁気・電気回路部(I),可動側磁気・電気回路部(II)の電圧・電流・起磁力・磁束等の電気的および磁気的諸量は,すべて同一周波数の正弦波となり,それらは複素ベクトルによって表現することが出来る。
〔3〕
図2は、
図1の構成を説明の便宜上、平面に展開したものである。
図1aのA-A’線に沿って装置を切断して展開すると
図2aに一致する。
〔4〕
図1と同じ符号は、同じ部分を示す。
〔5〕
図3aに示すように、1次側コイル(21)に単相交流電圧が印加されると、励磁電流が流れ、交流磁束φ1が発生する。交流磁束φ1は固定側磁極(111)から空隙(G1)を貫通し、可動側磁極(411)-可動側継鉄(40)を経由し、可動側磁極(412),(413)に分かれて、元の固定側磁極(111)に戻る。2次側閉電気回路(3)に於いては、固定側磁極(113)を通る磁束φ3によって2次側コイル(31)に誘起する誘導電圧によって2次側電流I2が流れ、コンデンサー(321)に蓄積される。1次側閉電気回路(2)での励磁電流の作用とは逆に、コンデンサー(321)が一定容量になり放電することによって、2次側コイル(31)に発生した磁束φ3は、固定側磁極(113)から空隙(G3)を貫通し、可動側磁極(413)-可動側継鉄(40) を経由して可動側磁極(412)(411)に分かれて、元の固定側磁極(113)に戻る。各磁極を通る3つの交流磁束φ1,φ2,φ3は、1次側閉電気回路(2)に於ける励磁電流による交流磁束φ1と2次側閉電気回路(3)に於けるコンデンサー(321)の充放電電流による磁束φ3との合成となる。本発明装置の説明図面に於ける電気的諸量及び磁気的諸量の関係を
図3の等価回路で具現する。
〔6〕磁束φ1,φ2,φ3、電流I1,I2等の磁気的・電気的諸量の数式を、適宜、Φ`1,Φ`2,Φ`3, I`1,I`2のような複素ベクトル記号で扱う。
【0018】
〔磁気インピーダンスZ`m〕
図3cに示すように、空隙G0が介在する閉磁気回路に_巻数N0のコイル(30)が配備され、磁束Φ`0が貫通し、このコイルに電気イン ピーダンスZ`eの電気素子が接続されて閉電気回路が形成されているとき、単相交流の角周波数、空隙の磁気抵抗をω,R0とすると、閉磁気回路の外周空間に発生する起磁力(電流I0x巻数N0)と閉磁気回路内に生じる磁位差(磁束Φ`0x磁気抵抗R0)とが釣り合うことで、数式(2)に示すように、閉磁気回路に閉電気回路を形成するコイルが配備されているときの閉磁気回路は、磁気抵抗成分Rm.とリアクタンス成分Xmを具えるため、閉磁気回路の磁気抵抗の概念を、磁気インピーダンスZ`mとして扱うことができる。可動側磁極(411),(412),(413)の磁路近辺の磁気抵抗は空隙(G1),(G2),(G3)の磁気抵抗成分だけではなく、前述のように、リアクタンス成分を含むため、等価の磁気インピーダンスの概念を用いる。
図3a,
図3bに示すように、閉磁気回路を通る磁束φ1,φ2,φ3は可動側磁極(411),(412),(413)の移動により様子が変わるが、装置の閉磁気回路を
図3dに示すような等価の磁気・電気回路に置き換えて説明する。
【0019】
〔位相差θ〕
図3aに於いて、1次側閉電気回路(2)の1次側電流I1と2次側閉電気回路(3)のコンデンサー(321) の充放電からなる二次側電流I2との間に時間的な
ずれが生じることにより、E字形外磁体(1)の固定側磁極(111),(112),(113)からI字形内磁体(4)の可動側磁極(411),(412),(413)を貫通する3つの交流磁束φ1,φ2,φ3の間に「位相差」が生じる。このことを理論式で説明する。
E字形外磁体(1)磁路端部の固定側磁極(111),(112),(113)とI字形内磁体(4)の可動側磁極(411),(412),(413)の間の空隙(G1),(G2),(G3) で形成される閉磁気回路に於いて、固定側継鉄(10)から鉄心(11),(12),(13) 、固定側磁極(111),(112),(113)、空隙(G1), (G2),(G3) 、可動側磁極(411) , (412),(413)を経由して可動側継鉄(40)に至る磁束をそれぞれΦ`1,Φ`2,Φ`3とすると磁束Φ`1は,1次側コイル(21) を、磁束Φ`3は2次側コイル(31)を貫通する。この状態に於いて,1次側閉電気回路(2) 、2次側閉電気回路(3)それぞれの電気的インピーダンスをZ`e1, Z`e2、また 1次側コイル(21)、2次側コイル(31)それぞれの巻数をN1,N2、また1次側閉電気回路(2) ,2次側閉電気回路(3)それぞれに流れる電流をI`1,I`2とする。 また,空隙(G1),( G2),(G3) 近辺に於ける等価の磁気インピーダンスをZ`m1,Z`m2,Z`m3とすると、2次側コイル(31)の外周空間に発生する起磁力(電流*巻数) と閉磁気回路内に生じる磁位差(磁束*磁気抵抗)との釣り合いで、キルヒホッフの法則によって、磁気・電気回路を前提で述べている線形回路として取り扱うと、数式(3)に示すような関係が成立し,電流I`2を消去すると、磁束Φ`1,Φ`2,Φ`3間の実効値比、位相差θ23,θ13は、数式(4)に示すような関係になり, 固定側磁気・電気回路部(I)と可動側磁気・電気回路部(II)の諸元が整うことにより、磁束Φ`1,Φ`2,Φ`3に位相差θ23,θ13が生じる。そして、2次側閉電気回路(3)の電気素子(32)によって、磁束Ф`2-Ф`3,Ф`1-Ф`3の位相差をθ23=120°,θ13=240°、実効値をФ3=Ф2=Ф1となるように磁気・電気回路諸量間の条件を所定の値に設定することにより、磁束Φ`1,Φ`2,Φ`3は理想の3相波形となる。次に、駆動原理を説明する
【0020】
〔吸引磁力τの発生〕固定側磁極(111),(112),(113) と可動側磁極(411),(412),(413) を貫通する3つの磁束をそれぞれΦ1, Φ2, Φ3、それらの波高値をΦ1,Φ2,Φ3、磁束Φ2 と磁束Φ3との位相差をθ23とすると、キルヒホッフの法則によって数式(5)に示すようになり、固定側磁極(111),(112),(113) と可動側磁極(411),(412),(413) が相対向する面の面積をA0、空隙(G1),(G2),(G3)の磁気透磁率をμ、固定側磁極(111),(112),(113)と可動側磁極(411),(412),(413)が吸引するそれぞれの吸引磁力τをτ3,τ2,τ1、そしてτ3,τ2,τ1を重畳して合成した総合の吸引磁力
をτとすると、数式(6)に示すようになる。
総合吸引磁力τは時間tに関係なく一定値の成分Τcを保持して、振幅Τaで電源周波数fの2倍の周波数で振動し、Φ3=Φ2=Φ1、θ32=120°のとき、振幅Τaがゼロとなり、時間tに関係なく一定・無振動となる。
図7aはシミュレーションの波形を示す。このとき、
図4aに示すように、吸引磁力τ3,τ2,τ1は固定・可動側の磁極間で同心軸に垂直方向に作用している。
【0021】
〔磁束φの拘束状態〕
図4bに示すように、固定側磁極(111),(112),(113)と可動側磁極(411),(412),(413)が対向する状態に於いて、可動側磁極(411),(412),(413)に配備された3次側コイル(51),(61),(71)には各磁極を貫通する磁束φ1,φ2,φ3によって誘導電圧が発生し、3次側閉電気回路(5),(6),(7)に誘導電流,I31,I32,I33が流れる。
図4b,
図4cに示すように、この誘導電流I31,I32,I33の流れる方向に右ネジの法則により磁束Φ’,Φ2’,Φ3’が発生し、3次側コイル(51),(61),(71)の電路方向・同心円状に包囲する。磁束Φ’,Φ2’,Φ3’により、各可動側磁極(411),(412),(413)内の磁束量が増大し、磁束密度が増大して、磁束φ1,φ2,φ3は磁極内部方向に磁気圧力を受ける。この磁気圧力によって、可動側磁極(411),(412),(413)を通る磁束φ1,φ2,φ3は拘束状態を作用される。この拘束状態に於いて、前述の吸引磁力τ3,τ2,τ1が作用しているため、可動側磁極(411), (412) , (413)を固定側磁極(111),(112),(113)との対向位置から
ずれて移動させるには外力F0が必要になる。
【0022】
〔吸引磁力τの破断〕固定側磁極(111),(112),(113)と可動側磁極(411),(412),(413)との対向状態に於いて、磁束φ1,φ2,φ3が空隙(G1),(G2),(G3)を介して可動側磁極(411),(412),(413)を貫通し、可動側磁極(411),(412),(413)に配備された3次側コイル(51),(61),(71)を貫通するとき、前述のように、3次側閉電気回路(5) (6) (7)に誘導電流I31,I32,I33が流れ、可動側磁極(411),(412),(413)内の磁束は拘束状態になる。吸引磁力τ3,τ2,τ1は可動側磁極面垂直方向に作用しているが、
図5aで示すように、 I字形内磁体(4)の移動方向に外力F0を受けると、前述の拘束状態の作用と吸引磁力τ3,τ2,τ1の作用とにより、固定側磁極(111),(112),(113)-可動側磁極(411),(412),(413)間の磁束φ1,φ2,φ3に、逆移動方向の抗力が作用する。
図5b-1は可動側磁極(411),(412),(413)が固定側磁極111),(121),(131)と対向している状態で,磁束φ1,φ2,φ3は可動側磁極(411),(412),(413)に垂直方向に貫通する状態を示す。
図5b-2は外力F0により可動側磁極(411),(412),(413)が移動する状態で、前述の拘束状態の作用と吸引磁力τの作用とにより、磁束φ1,φ2,φ3は可動側磁極(411),(412),(413)面垂直方向から移動方向に引き伸ばされ、抗力を作用する状態を示す。この抗力は前述の数式(6)の総合吸引磁力τに比例し、Φ3=Φ2=Φ1,θ32=
120°のときは、時間tに関係なく一定・無振動になる。
図5b-3はさらに可動側磁極(411),(412),(413)が移動した状態を示し、外力F0が抗力よりも強まると、磁束(磁力線)は限界に達し,破断し、機械的エネルギーとして放出し、装置の駆動力となると共に、可動側磁気・電気回路部(II)は慣性力M0のエネルギーとして蓄積し、外力F0として作用する。
図5b-3はさらに可動側磁極(411),(412),(413)が移動して固定側磁極(111),(112),(113)と対向して、
図5b-1の状態になることを示す。
【0023】
〔電磁力ψの発生〕
図6aに於いて、固定側磁極(111),(112),(113)を通る磁束をφ3,φ2,φ1それぞれ磁束の波高値をΦ3,Φ2,Φ1、磁束φ3,φ2間の位相差をθ32、電源周波数をfとすると、φ3,φ2,φ1 は、閉磁気回路に於いてキルヒホッフの法則が成立するから、数式(5)のようになる。
図6b,
図6cに於いて、固定側磁極(111),(112),(113)及び可動側磁極(411),(412),( 413) の各磁極間の距離をβ、可動側磁極(411),(412),(413)が距離Xの移動をした時点に於いて、磁束φ1,φ2,φ3が3次側閉電気回路(5),(6),(7)のコイル(51),(61),(71)を貫通するとき、各コイル内の右領域の磁束をφ3r,φ2r,φ1r、左領域の磁束をφ3l,φ2l,φ1l、また各コイルが貫通する磁束φ3r,φ2r,φ1r,φ3l,φ2l,φ1lによって3次側閉電気回路(5)(6)(7)に発生する誘導電流I33,I32,I31は、数式(7)のようになる。3次閉電気回路(5)(6) (71)の誘導電流I33,I32,I31が磁束φ3r,φ2r,φ1r,φ3l,φ2l,φ1lと鎖交することで、フレミングの左手の法則よって決まる方向に電磁力ψが発生し、3次閉電気回路(5),(6),(7)右側の電磁力をψ3r,ψ2r,ψ1r、左側の電磁力をψ3l,ψ2l,ψ1l とし、それぞれの電磁力を重畳して合成した総合電磁力をψとすると数式(8)のようになる。 総合電磁力ψは、可動側磁極(411),(412),(413)の移動位置Xがβ<X<L aに於いて、数式(8)から分かるように、時間tに関係なく一定値の成分Ψcと、波高値がΨaで、周波数が電源周波数f の2倍の振動する成分とを具え、Φ3=Φ2=Φ1,θ32=120°のとき、無振動で一定となる。
図7 aはシミュレーション波形の例を示す。 総合電磁力ψは、可動側磁極(411),(412),(413)の移動位置Xがβ<X<L aに於いて、数式(8)から分かるように、時間tに関係なく一定値の成分Ψcと、波高値がΨaで、周波数
が電源周波数f の2倍の振動する成分とを具え、Φ3=Φ2=Φ1,θ32=120°のとき、無振動で一定となる。
図7 aはシミュレーション波形の例を示す。
【0024】
〔吸引磁力τと電磁力ψの関係〕固定側磁極(111),(112),(113) と可動側磁極(411),(412),(413)が対向する状態を基準点として、可動側磁極(411),(412),(413)の移動位置Xを横軸にし、縦軸に総合吸引磁力τ、総合電磁力ψ、可動側磁気・電気回路部(II)の慣性力M0の大きさを、縦軸に、発生経過を横軸にして表すと
図7cのようになる。可動側磁極(411),(412),(413)の移動位置Xが0<X<βのとき、即ち、可動側磁極(411),(412),(413)が固定側磁極(111),(112),(113)に対向しているとき、吸引磁力τ1,τ2,τ3は可動側磁極(411),(412),(413)垂直方向に作用するが、移動斜め方向には作用しないために、可動側磁極(411),(412),(413)の移動は生じない。即ち、始動しない。
β<X<(β+La)のときは電磁力ψが駆動力として作用するため、可動側磁極(411),(412),(413)の移動が生じ
る。
【0025】
〔外力F0による吸引磁力τの破断〕
図5bに示すように、吸引磁力τ1,τ2,τ3を斜め方向に引き伸ばして破断するような外力F0を可動側磁極(411),(412),(413)に与えると、吸引磁力τ1,τ2,τ3の破断による
破断力の作用で可動側磁極(411),(412),(413)が移動する。以後は、可動側磁極(411),(412),(413)が固定側磁極(111),(112),(113)に対向する位置に移動しても、外力F0無しで、総合電磁力τとI字形内磁体(4)の慣性力M0とが外力F0の役割をして、可動側磁極(411),(412),(413)の移動が連続する。
始動に作用する外力F0を与える方法としては、手動で行う、装置に外力F0の発生機能を具える、外力F0の発生装置を配備する等が考えられるが、手動や別個の外力F0発生装置による外力F0が不要となる駆動方法を次に詳述する。
【0026】
〔基本構造2の駆動原理〕前述の「基本構造1の駆動原理」は、可動側磁極(411),(412),(413)を固定側磁極(111),(112),(113)と対向する状態から移動させるには外力F0が必要である。
図9は、本発明の基本構造2を示すものであって、手動や別個の外力F0発生装置による外力F0
が不要となる移動方法を提供する。
図9aは本発明の基本構造2の正面図、
図9bは
図9 aの側面図、
図9cは
図9bのC-C’から見た平面図である。固定側磁気・電気回路部(I)の構成は「基本構造1」と同じである。可動側磁気・電気回路部(IIa),(IIb)は、「基本構造1」の可動側磁気・電気回路部(II)が側面方向に相似形状に2分割して構成し、それぞれが移動方向と直角方向に並列配置し、かつ、それぞれの可動側磁極(411),(412),(413)の位置を移動方向に所定間隔だけ,
ずらして配備し、それらを一体化している。この構成により、可動側磁気・電気回路部(IIa),(IIb)のいずれか一方が、常に、固定側磁極(111),(112),(113) と可動側磁極((411),(412),(413)が対向しない状態になり、前述のように無振動の電磁力ψが 作用するため、此れが外力F0及び駆動力となって可動側磁気・電気回路部(IIa),(IIb)の移動が連続する。
【実施例1】
【0027】
〔基本構造1の1実施例〕
図1a,
図1bは、本発明の基本構造1の1実施例を示すもので、
図2a,
図2bは、1実施例の理解を容易にするための角形平面状の展開図面で、E字形外磁体(1)とI字形内磁体(4)とで構成する1対の閉磁気回路を示している。
図2bは
図2aのB-B’線に沿って見た平面図である。図面に於いて同じ符号は、同じ部分を示している。
図1aは、固定側磁気・電気回路部(I)と可動側磁気・電気回路部(II)を1対として、2対が円筒状に直列に配列されている例を示す。固定側磁気・電気回路部(I)のE字形外磁体(1)は、固定側継鉄(10)から3本の鉄心(11),(12),(13) を突設して、鉄心先端を拡大し、内周面が円弧の固定側磁極(111),(112),(113)を形成している。可動側磁気・電気回路部(II)のI字形内磁体(4)は、可動側継鉄(40)の外周部に溝(41),(42),(43) を配備して可動側磁極(411),(412),(413)を形成し、外周面は固定側磁極(111),(112),(113)内周面と同心円になるようにして、E字形外磁体(1)-I字形内磁体(4)間の空隙(G1),(G2),(G3) には「従来の方法と装置」の板状導電体(8)を介在しないで、可動側磁極(411),(412),(413)に3次側閉電気回路(5),(6),(7)を配備している。
【0028】
1次側閉電気回路(2)には、単相交流電源(22)を通じることにより、磁束Ф1によって1次側コイル(21)に誘導する誘起電圧と、回路内の抵抗r1に於ける電圧降下との和が、常に電源電圧V1と平衡を保つように、1次側電流I1が流れる。2次側閉電気回路(3)には、コンデンサー(321)、抵抗(322)、又はそれらの合体の電気素子(32)の電気インピ−ダンスZ`e2による電圧降下との和が常に零を保つように、2次側電流 I2が流れる。E字形外磁体(1)とI字形内磁体(4)及び空隙(G1),(G2),(G3) とで形成される閉磁気回路於いて、〔基本構造1の駆動原理〕で詳述しているように、固定側磁極(111),(112),(113)-可動側磁極(411),(412),(413)間を貫通する磁束φ1,φ2 ,φ3間に位相差θ23,θ12,θ31が生じる。
図4に示すように、可動側磁極(411),(412),(413)が固定側磁極(111),(112),(113)と対向するときは、空隙(G1),(G2),(G3) を貫通する磁束φ1,φ2,φ3は可動側磁極(411),(412),(413)を同心軸と垂直方向に通り、固定側磁極(111),(112),(113)内周面と可動側磁極(411),(412),(413)外周面との間に発生する吸引磁力τ1, τ2, τ3によって、固定側磁極(111),(112),(113)と可動側磁極(411),(412),(413)は互いに同心軸直角方向に引っ張りあっている。同時に、磁束φ1,φ2 ,φ3によって 3次側 閉電気回路(5),(6),(7)に流れる誘導電流I33,I32,I31は可動側磁極(411),(412),(413)の磁束φ1,φ2 ,φ3に拘束状態を作用し、可動側磁極(411),(412),(413)を貫通する磁束は隣の磁極に移乗するのを阻止される。
【0029】
図5に示すように、I字形内磁体(4)に移動方向と同方向に外力F0を与えると、空隙(G1),(G2),(G3) を通る磁束φ1,φ2 ,φ3は強制的に引き伸ばされ、固定側磁極(111),(112),(113)と可動側磁極(411),(412),(413)間に可動側磁極の移動方向に吸引磁力τの抗力が生じる(
図5b-2)。この抗力が外力F0に耐えられなく破断すると、抗力の蓄積エネルギーが放出され、この放出エネルギーがI字形内磁体(4) を移動する機械的エネルギーとなる(
図5b-3)。可動側磁極(411),(412),(413)が移動を始めると、3次側閉電気回路(5),(6),(7)に流れる誘導電流I 33,I32,I31と磁束φ1,φ2 ,φ3との間で電磁力τが発生し駆動力となる。同時に、I字形内磁体(4)は移動により慣性力M0が作用する。電磁力ψの一部と慣性力M0が外力F0として、次の拘束状態に於ける磁束を破断して、移動の機械的エネルギーを発生させて、I字形内磁体(4)の移動・回転が連続する。
【実施例2】
【0030】
〔基本構造2の1実施例〕
図1a,
図8は、本発明の基本構造2の1実施例を示すもので、
図1aは正面図、
図8は
図1aのA-A’から見た側面図である。固定側磁気・電気回路部(I)、支持筐体部(III)の構成は「基本構造1の1実施例」と同じであるので、説明を省略する。
可動側磁気・電気回路部(II)に於いては、相似形状の可動側磁気・電気回路部(IIa),(IIb)で構成され、それぞれ、I字形内磁体(4)は磁性材料によって作られており、E字形外磁体(1)の固定側磁極(111),(112),(113)の内弧と同心に配備された同筒状の可動側継鉄(40)で構成される。
可動側継鉄(40)の外周は、溝(41),(42),(43)によって、E字形外磁体(1)の固定側磁極(111),(112), (113)に対向して可動側磁極(411),(412),(413)が形成されている。これらの可動側磁極(411),(412),(413)に3次側コイル(51),(52),(53)が配備されて、3次側閉電気回路(5),(6),(7)が形成される。相似形状の可動側磁気・電気回路部(IIa),(IIb)は、
図8に示すように、移動方向と直角方向に並列、かつ、それぞれの可動側磁極(411),(412),(413)の位置を移動方向に所定の間隔
ずらして配備し、それらを一体化している。E字形外磁体(1)とI字形内磁体(4)の同心軸となる継鉄(40)の中心部に回転軸(43)が装着され、軸受(92)に支持される。支持筐体部(III)は基本構造1の1実施例の
図1bと同様である。本発明の駆動原理は以下のようになる。
【0031】
可動側磁気・電気回路部(IIa),(IIb)は、それぞれに於いて、3次側閉電気回路(51),(52),(53)の誘導電流I33,I32,I31によって、可動側磁極(411),(412),(413)を通る磁束φ1,φ2,φ3は拘束状態を発生し、誘導電流I33,I32,I31と磁束φ1,φ2,φ3によって電磁力ψを発生し、固定側磁極(111),(112),(113)-可動側磁極(411),(412),(413)間で吸引磁力τによる磁気抗力が作用し、電磁力ψとI字形内磁体(4)の慣性力M0が外力F0となって拘束状態の磁束φ1,φ2,φ3を破断することで
破断力τ’が発生し、電磁力ψと
破断力τ’が駆動力として可動側継鉄(40)を経由して回転軸(43)に伝達する。
【実施例3】
【0032】
〔基本構造2の他の実施例〕
図9d は基本構造2の他の実施例を示し、
図9eは側面図である。
図9cに示す3次側コイル(51),(52),(53),(51’ ),(52’),(53’)はコイルの材質、総断面積が同じであれば、コイル巻数に関係なく電気磁気的特性は変わらないため、コイルの巻数を1とした短絡環にし、可動側磁極(411),(412),(413)に装着しても良い。
図9d,
図9eは前記の短絡環を連結して一体成形したものを示す。