(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5866617
(24)【登録日】2016年1月15日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】疎水性表面の水輸送特性を改善する方法
(51)【国際特許分類】
C09K 3/00 20060101AFI20160204BHJP
C09K 17/18 20060101ALI20160204BHJP
【FI】
C09K3/00 R
C09K17/18 H
【請求項の数】28
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2009-547274(P2009-547274)
(86)(22)【出願日】2008年1月23日
(65)【公表番号】特表2010-539246(P2010-539246A)
(43)【公表日】2010年12月16日
(86)【国際出願番号】US2008000818
(87)【国際公開番号】WO2008091597
(87)【国際公開日】20080731
【審査請求日】2011年1月11日
(31)【優先権主張番号】60/897,047
(32)【優先日】2007年1月24日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/010,325
(32)【優先日】2008年1月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509207807
【氏名又は名称】エトクス ケミカルズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】パーマー チャールズ フランシス ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ウィッカー カルヴィン エム ジュニア
【審査官】
▲吉▼澤 英一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−157819(JP,A)
【文献】
特開2001−261841(JP,A)
【文献】
特開平10−164975(JP,A)
【文献】
国際公開第03/050061(WO,A1)
【文献】
特開2000−144180(JP,A)
【文献】
特開2005−187415(JP,A)
【文献】
特開2006−117774(JP,A)
【文献】
特開2005−007382(JP,A)
【文献】
特開平11−256160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
C09K 17/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式の化合物を使用することを含む、農業用土壌およびゴルフコースの土壌からなる群から選択される土壌を通じての水の浸透率を改善する方法:
【化1】
(式中、R及びR'はそれぞれ独立にH、C
1-24アルキル基、アリール基、C
1-24アルキルアリール基、アリール(C
1-24)アルキル基、-C(=O)-R
1(エステル基)、C(=O)-NHR
1(ウレタン基)、又はC(=O)-O-R
1(カルボネート基)(式中、R
1はC
1-24アルキル基、アリール基、C
1-24アルキルアリール基、C
1-24アリールアルキル基から成る群から選択される)から成る群から選択される;Aは4-12個の炭素原子を有するアルキレンオキシド基及び8-12個の炭素原子を有するアリールエポキシド基から成る群に由来する有機部分を示す;
x=10-100;y=1-50;及びz=0-50;但し、R及びR'が同時にH又はエーテル官能基を示すことはない。)
【請求項2】
RがC1-24アルキル基を示し、かつR'は-C(=O)-R1(エステル基)(式中、R1はC1-24アルキル基である)を示す請求項1に記載の方法。
【請求項3】
x=10-50;y=1-10;及びz=0-10である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
x=10-30;y=1-10;及びz=0-10である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
x=14-28;y=1-8;及びz=0-8である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
x=14-26;y=1-5;及びz=0-5である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
x=18-21;y=1-2;及びz=0-5である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
水、乳化剤、植物栄養剤、スプレーパターン指示剤、及びそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1つの成分をさらに含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
乳化剤がランダム及びブロックEO-POコポリマー、ランダム及びブロックEO-PO-EOコポリマー、ランダム及びブロックPO-EO-POコポリマー並びにそれらの混合物から成る群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
乳化剤がR-EOx-POy-及びR-POy-EOx(式中、R= C1-24アルキル基又はアルキルアリール基、(C1-C24)-(C=O)-)及びそれらの混合物から成る群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
乳化剤がR-SO3-M+、R-(CH2CH2O)xSO3-M+、(RO)xP(=O)O-M+、RCO2-M+、又はROSO3-M+、及びそれらの混合物から成る群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
乳化剤が、式中Rがアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、C(=O)-R、又はC(=O)NH-Rを示す、R-(CH2CH2O)xOH及びそれらの混合物から成る群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
乳化剤が、式RR'R''R'''N+X-(式中、R、R'、R''、R'''は同一又は異なっていてもよく、アルキル基、アリール基又はアルキルアリール基から成る群から選択される)を有する第四級アミン界面活性剤、及びそれらの混合物から成る群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記化合物が液体、ペレット、又は微粒子から成る群から選択される物理的形態で存在する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記土壌が農業用土壌である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記土壌がゴルフコースの土壌である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
下記式の化合物を使用することを含む、芝又は他の植物表面の結露を防止する方法:
【化2】
式中、R及びR'はそれぞれ独立にH、C
1-24アルキル基、アリール基、C
1-24アルキルアリール基、アリール(C
1-24)アルキル基、-C(=O)-R
1(エステル基)、C(=O)-NHR
1(ウレタン基)、又はC(=O)-O-R
1(カルボネート基)(式中、R
1はC
1-24アルキル基、アリール基、C
1-24アルキルアリール基、C
1-24アリールアルキル基から成る群から選択される)から成る群から選択される;Aは4-12個の炭素原子を有するアルキレンオキシド基及び8-12個の炭素原子を有するアリールエポキシド基から成る群に由来する有機部分を示す;
x=10-100;y=1-50;及びz=0-50;但し、R及びR'が同時にH又はエーテル官能基を示すことはない。
【請求項18】
水、乳化剤、植物栄養剤、スプレーパターン指示剤、及びそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1つの成分をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
以下の工程を含む撥水性土壌の湿潤率を高める方法:
(i)(a)下記の式の化合物
【化3】
式中、R及びR'はそれぞれ独立にH、C
1-24アルキル基、アリール基、C
1-24アルキルアリール基、アリール(C
1-24)アルキル基、-C(=O)-R
1(エステル基)、C(=O)-NHR
1(ウレタン基)、又はC(=O)-O-R
1(カルボネート基)(式中、R
1はC
1-24アルキル基、アリール基、C
1-24アルキルアリール基、C
1-24アリールアルキル基から成る群から選択される)から成る群から選択される;Aは4-12個の炭素原子を有するアルキレンオキシド基及び8-12個の炭素原子を有するアリールエポキシド基から成る群に由来する有機部分を示す
;x=10-100;y=1-50;及びz=0-50;但し、R及びR'が同時にH又はエーテル官能基を示すことはない;
(b)界面活性剤;及び
(c)水性又は非水性溶媒;
を含む水性湿潤剤組成物を製造する工程;及び
(ii)式Iの化合物が土壌の湿潤率に測定可能な増加をもたらすように、前記撥水性土壌に上記湿潤剤組成物を密に接触させる工程。
【請求項20】
以下の式を有する化合物を含む、農業用土壌およびゴルフコースの土壌からなる群から選択される土壌を通じての水の浸透率を改善するために用いられる組成物:
【化4】
式中、R及びR'はそれぞれ独立にH、C
1-24アルキル基、アリール基、C
1-24アルキルアリール基、アリール(C
1-24)アルキル基、-C(=O)-R
1(エステル基)、C(=O)-NHR
1(ウレタン基)、又はC(=O)-O-R
1(カルボネート基)(式中、R
1はC
1-24アルキル基、アリール基、C
1-24アルキルアリール基、C
1-24アリールアルキル基から成る群から選択される)から成る群から選択される;Aは4-12個の炭素原子を有するアルキレンオキシド基及び8-12個の炭素原子を有するアリールエポキシド基から成る群に由来する有機部分を示す;
x=10-100;y=1-50;及びz=0-50;但し、R及びR'が同時にH又はエーテル官能基を示すことはない。
【請求項21】
RがC1-24アルキル基を示し、かつR'は-C(=O)-R1(エステル基)(式中、R1はC1-24アルキル基である)を示す請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
x=18-21;y=1-2;及びz=0-5である、請求項20または21に記載の組成物。
【請求項23】
液体、ペレット、又は微粒子から成る群から選択される物理的形態である請求項20〜22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
撥水性土壌の湿潤率を高めるために用いられる(a)〜(c)を含む水性湿潤剤組成物:
(a)下記の式の化合物
【化5】
式中、R及びR'はそれぞれ独立にH、C
1-24アルキル基、アリール基、C
1-24アルキルアリール基、アリール(C
1-24)アルキル基、-C(=O)-R
1(エステル基)、C(=O)-NHR
1(ウレタン基)、又はC(=O)-O-R
1(カルボネート基)(式中、R
1はC
1-24アルキル基、アリール基、C
1-24アルキルアリール基、C
1-24アリールアルキル基から成る群から選択される)から成る群から選択される;Aは4-12個の炭素原子を有するアルキレンオキシド基及び8-12個の炭素原子を有するアリールエポキシド基から成る群に由来する有機部分を示す;
x=10-100;y=1-50;及びz=0-50;但し、R及びR'が同時にH又はエーテル官能基を示すことはない;
(b)界面活性剤;及び
(c)水性又は非水性溶媒。
【請求項25】
RがC1-24アルキル基を示し、かつR'は-C(=O)-R1(エステル基)(式中、R1はC1-24アルキル基である)を示す請求項24に記載の水性湿潤剤組成物。
【請求項26】
x=18-21;y=1-2;及びz=0-5である、請求項24または25に記載の水性湿潤剤組成物。
【請求項27】
下記式の化合物を使用することを含む、ゴルフ場の芝表面のドライスポットを改善し予防するための方法:
【化6】
式中、R及びR'はそれぞれ独立にH、C
1-24アルキル基、アリール基、C
1-24アルキルアリール基、アリール(C
1-24)アルキル基、-C(=O)-R
1(エステル基)、C(=O)-NHR
1(ウレタン基)、又はC(=O)-O-R
1(カルボネート基)(式中、R
1はC
1-24アルキル基、アリール基、C
1-24アルキルアリール基、C
1-24アリールアルキル基から成る群から選択される)から成る群から選択される;Aは4-12個の炭素原子を有するアルキレンオキシド基及び8-12個の炭素原子を有するアリールエポキシド基から成る群に由来する有機部分を示す;
x=10-100;y=1-50;及びz=0-50;但し、R及びR'が同時にH又はエーテル官能基を示すことはない。
【請求項28】
以下の式を有する化合物を含む、ゴルフ場の芝表面のドライスポットを改善し予防するために用いられる組成物:
【化7】
式中、R及びR'はそれぞれ独立にH、C
1-24アルキル基、アリール基、C
1-24アルキルアリール基、アリール(C
1-24)アルキル基、-C(=O)-R
1(エステル基)、C(=O)-NHR
1(ウレタン基)、又はC(=O)-O-R
1(カルボネート基)(式中、R
1はC
1-24アルキル基、アリール基、C
1-24アルキルアリール基、C
1-24アリールアルキル基から成る群から選択される)から成る群から選択される;Aは4-12個の炭素原子を有するアルキレンオキシド基及び8-12個の炭素原子を有するアリールエポキシド基から成る群に由来する有機部分を示す;
x=10-100;y=1-50;及びz=0-50;但し、R及びR'が同時にH又はエーテル官能基を示すことはない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年1月24日出願の米国仮出願No. 60/897,047、発明の名称「疎水性土壌の水輸送特性を改善する方法」に基づく35 U.S.C. セクション119による優先権を主張するものであり、その開示の全てを参照により本明細書に含める。
【0002】
本発明は、疎水性表面の水輸送特性を改善するために望ましい性質を有する新規の非イオン性界面活性剤に関する。この発明はまた一般的に言うと疎水性表面、疎水性基質の処理に関するものであり、とりわけ疎水性土壌の処理に関するものである。当該発明は疎水性表面及び疎水性土壌の水輸送特性を改善する新しい方法に関する。
【0003】
本発明はまた、ある種のランダム及びブロックポリプロピレンオキシド誘導体を使用して土壌の保水性を高め長期間そこに植物栄養分を供給する方法に関する。さらに、本発明は一般的に言うと疎水性/撥水性土壌を通じての水及び/又は水性組成物の浸透を増加させるための、ある種のランダム及びブロックポリプロピレンオキシド誘導体の使用に関する。より詳しく言うと、本発明はそのような土壌の親水性を迅速に改善するための、ある種のランダム及びブロックポリプロピレンオキシド誘導体の使用に関する。
【0004】
本発明はさらに、疎水性土壌の水輸送特性を改善する新しい方法に関する。本発明者らはある種の疎水性・水不溶性のポリマー、又はそれらの混合物を疎水性の土壌又は芝生に加えることにより、水が土壌面に浸みこみ土壌の処理層に浸透する能力が改善されるであろうことを見出した。
【0005】
本発明はまた、さらに渇水ストレス及び土壌キャッピングを緩和し、土壌中の水分維持を改善するための芝生及び土壌の処理方法に関する。当該発明はさらに、中粒子及び粗粒子土壌を通じての水の輸送を促進する方法に関する。
【背景技術】
【0006】
発明の背景及び先行技術の説明
土壌粒子は、それを通して水が流れることができる多数の水管(channel)又は毛細管を含み、その毛細管又は孔の直径に基づいて等級分けできることが知られている。水管が土壌孔であるかどうかにかかわらず、水は水管を通じて流されるので、水が水管表面を湿潤させることができれば、水管を通じての毛細管水流量は大きくなると考えられる。水及び毛細管表面の境界面においては、しかしながら、水と毛細管表面の間に長い範囲に渡ってファンデルワールス相互作用が存在する。ファンデルワールス相互作用は通常、水の本体中200オングストローム未満にしか及ばないが、それにもかかわらず水が毛細管表面を湿らせる能力を低下させて、それにより水と毛細管表面の間の接触角度を大きくし、そこを通る水流を妨げる。ファンデルワールス相互作用のマイナスの影響は家庭の水道管内の水流の場合は無視できるものであるが、微細な土壌孔を通しての水流を考える際にはこの相互作用は大きな影響を及ぼす。
【0007】
農学者と農業者は、砂、天然土、園芸用土及び様々な擬似土や無土壌植物栽培基質のようなあらゆるタイプの植物生育培地を扱わなければならないが、本質的に全ての農業従事者の悩みの種は、疎水性/撥水性の土壌である。撥水性の土壌は水の土壌マトリックス中への浸透を遅らせ、しばしば土壌基質の上部層全面を本質的に水不浸透性にしてしまう。降雨又は灌漑の状況において、水、及び農薬(この用語は化学肥料も含む)を含む水性組成物が吸収されずに表面上を流れて元の所及び/又は移動式容器中に流去してしまうような環境上の悲惨な結果が、表面土壌の撥水性によって起こりうる。さらに、あまり目立たないが、撥水性の土壌に通常伴う「フィンガー」を通じて水性農薬が流れることによる深刻な結果も起こり、それはすなわちその流れが土地の地下水面に農薬組成物を速やかに移動させ、それにより地下水汚染のリスクを増大させうるということである。
【0008】
土壌の疎水性/撥水性は土壌の最初の水分含量と相関関係にあるだけでなく、土壌の粒子サイズ(砂地は粘土よりも撥水しやすい)及びそこに含まれる有機物のタイプに関係する。この有機物は、植物くずから浸出した疎水性有機物質、不可逆的に乾燥した有機物質、及び微生物の副産物を提供することなどによる多くの点において土壌中に撥水性を引き起こす。
【0009】
水が土壌マトリックス中に均一に浸み込むか、又は透過する以前に、土壌粒子上には水の連続的な被膜ができるにちがいない。言い換えると、土壌は水が流れる前にまず湿潤されるにちがいない。つけ加えると、土壌を均一に湿潤させることは、その土壌中で生育すべき植物や種子の健全な生育にとって最高の重要性を持つ。従って、農業従事者はしばしば様々な湿潤剤界面活性組成物を土壌に直接使用しがちである。
【0010】
広範囲の土壌で撥水性が生じていること、又そのことの重大性に次第に多くの研究者が気付き始めてはいるが、それはまだ土壌学の中では放置された分野である (Dekker et al., International Turfgrass Society Research Journal, Volume 9, 2001, pages 498-505)。
【0011】
撥水性の土壌中では土壌中の水分含量及び撥水性の程度の両方に場所によって大きなばらつきが生じうることが長年認識されてきた。農業従事者は湿潤剤界面活性組成物の使用を通じて土壌撥水性問題に対処してきた。化学物質及び製剤の間で有効性の度合いは大きくばらついてきた。しばしば、撥水性を改良し、及び/又は浸透性を増大させるのに必要な界面活性剤の量がもたらす成果は一定しないか、あるいは、成果を改善しようとして使用する湿潤剤の割合を高くすると、そのように高い割合が植物にとってしばしば有害となる。
【0012】
疎水性の土壌は、ゴルフ場や他の芝生エリアで、苗床や温室、及び露地において問題を引き起こすことがある。ゴルフ場の管理者は、彼らのグリーン上の局所的なドライスポットに関する問題をよく報告している。これらのドライスポットは夏の数か月間、特に渇水期において、芝生管理上の深刻な問題となる。頻繁に灌水しても、これらスポットの土は湿り気に抵抗し、その結果、死んでいるか又はひどくしおれた芝生のパッチができる。与えた水は芝生を湿らせるが、土壌表面に十分に浸透して根の領域に到達することはない。
【0013】
苗床作業をする人は時にポット及び温室下地中で湿潤しにくい培地に遭遇することがある。有機質土壌を扱う農民は、土壌の湿潤に時間がかかり過ぎて収穫の生産性が損なわれるという不平を述べることが多い。柑橘類の生産地、鉱山残土が堆積した場所、及び火災にあった森林や草原でも疎水性の土壌がよく問題になっている。
【0014】
水が容易に土壌に浸透し湿らせることができない場合、植物が利用できる水分が減り、種子の発芽率、種苗の発生、及び作物の生存力や生産力も減少する。土壌中に十分な水が無いと植物への必須栄養素の利用度も低下し、さらに生長や生産力が制限される。その上、土壌に浸透できない水は表面を流れて土壌の侵食を増大させる。撥水性はしばしば局所的に生じる。その結果、土壌が均一に湿らずドライスポットが生じる。
【0015】
疎水性の土壌中では、土壌粒子はろうに非常によく似た水をはじく物質で覆われているように見える。芝草における局所的ドライスポットの研究において、土壌粒子は真菌の菌糸体(増殖構造)と見られる酸性の複合有機物質で覆われていることが分かった。
【0016】
非イオン性界面活性剤、又は界面活性湿潤剤は、水の表面張力を低下させて、水分子の拡散を可能にする。撥水性土壌に高濃度で散布した場合、界面活性剤は降雨及び散水からの水が土壌面に浸透する能力を改善し、それにより浸潤率を高めることができる。しかしながら、ほとんどの非イオン性界面活性剤は水溶性が非常に高いため、降雨や散水が繰り返されるとすぐに除去されてしまう。さらに、ほとんどの非イオン性界面活性剤は、容易に酸化されるか又は微生物薬剤による攻撃を受ける1つ以上のヒドロキシル末端基を有し、それらの作用は両方とも処理の耐久性を低下させる。
【0017】
また、管理されている芝及び芝生表面の芝葉上の結露を予防することも多くの場合望ましい。露の中の水滴は芝草の真菌病の発生に必要な水分を供給する。露の形成が抑えられれば、芝葉はより速く乾燥させられ、それにより真菌病の発生を最小限に抑えることができる。
【0018】
乾期には、芝生は乾燥ストレスの影響を受ける場合がある。これは様々な形で現われることがあるが、極端な場合、芝生が枯れてしまうこともある。軽土壌上で育った芝草、例えば根域が砂のゴルフグリーンやリンクスゴルフコースは、一般に悪い土壌条件で生育した芝生がそうであるように特に乾燥ストレスを受けやすい。奇妙なことに、乾燥ストレスは乾燥した条件中で起きるだけではなく、比較的湿度のある季節でも、例えば根の破断、表面近くに埋められた異物、又は灌水システムの一般的な非効率性によって起きる。
【0019】
土壌もまた乾燥ストレスを受けることがある。例えば重土壌における乾燥ストレスの最初のサインの1つは表面亀裂が土壌上に現われることである。乾燥ストレスがその様々な形態の全てにおいて有害であって、その回避又は軽減が好都合であることは十分に理解されるであろう。
【0020】
いわゆる土壌キャッピング、すなわち、土壌表面の堅い外皮は土壌の上を雨滴が叩くことにより生じる場合がある。キャッピングは、特にそれが種苗の発生を妨げたり低下させることがある軽土壌での苗床においては、様々な問題を引き起こすことが考えられ、その結果、まだら状で不均一な芝生になりかねない。土壌キャッッピングを回避することができるか、又は少なくともその作用を弱めることができれば望ましいと考えられる。
【0021】
さらに、干上がった川、地下水面の低下、及び水使用の頻繁な制限によって明らかなように、多くの場所で水は常に減少し続ける資源となっている。また、水不足の時に制限を強いられるのは多くは水のアメニティー・ユーザー(例えばゴルフ場など)である。従って、芝生や土壌が一般的にその水保全が改善されて水の効率のよい使用や水の浪費が最小限になるように処理することができれば非常に有利となる。
【0022】
水はますます高価な商品となっているので、水保全がアメリカ及び他の国々の主要な問題であることも周知である。芝生、特にゴルフ場にあるような管理された芝生、運動場、オフィスの公園及び同様の場所は大量の水を使用する。米国ゴルフコース管理者協会(GCSAA)による過去の調査では、回答者らは、平均77.7エーカーの灌漑面積を有するアメリカの18ホールのゴルフ場を潅漑するには毎年平均2850万ガロンの水が必要であることを示した。もちろん、この調査は灌水の需要に地域による違いがあることを示しており、アメリカ中西部では年間8800万ガロンの水が必要であり、一方中部大西洋側の州では平均で1000万ガロンの水が必要であった。
【0023】
管理された芝生エリアで直面する他の問題の中に、撥水性の土壌条件によって引き起こされる局所的なドライスポットがある。この疎水性の土壌状態の原因としてはいくつかの可能性があるが、研究者らは一般に植物及び/又は微生物の分解によって引き起こされた土壌粒子上の有機被膜の形成がその問題の原因であると認めている。この状態は、ゴルフ場、芝地、又は他の芝生エリア中に、問題のある芝草が不規則に点在するエリアが存在することによって特徴づけられる。
【0024】
局所的なドライスポットの症状は界面活性剤又は表面活性剤で処置される。この状態を処置するのに用いられる界面活性剤として界面活性剤ポリマーがある。界面活性剤ポリマーは一般に、本来疎水性のモノマーの大きなセグメント又は「ブロック」を含んでおり、それが本来親水性の大きなブロックに結合している。このような界面活性剤ポリマーは一般に「ブロックコポリマー」と呼ばれ、ポリマーに界面活性な性質をもたらす。界面活性剤分子の疎水性部分が土壌上の撥水性有機被膜に引きつけられ、一方界面活性剤の親水性部分が水と容易に接触できる状態を維持することにより、水が表面を流出せずに土壌断面中へ移動することを可能にしていると一般に認められている。
【0025】
現在、数多くの界面活性剤が局所的なドライスポットに対処するために市販されている。そのような製品は多くは土壌加湿剤又は湿潤剤として販売される。湿潤剤は、スプレー混合液の一定量の飛沫がカバーする目的のエリアを広げるための物質である。土壌加湿剤及び湿潤剤を使用する際の管理手順としては一般に、全体的な保護管理プログラムの一部として、薬剤を局所的な問題のエリアに必要なだけ直接散布することが挙げられる。
【0026】
界面活性剤に加えて、架橋ポリアクリルアミドを含む超吸収性架橋ポリマーも局所的なドライスポットを処置するために使用されてきた。土壌が湿気を帯びると架橋ポリマーは水分を吸収し土壌の中でそれを保持する。理論的には、土壌が普通に乾燥した後も長い間、このポリマーは蓄えた水を植物に放出し続ける。これらの架橋ポリマーはその重量の何倍もの水を吸収し保持することができる。
【0027】
US 6,481,153、US 6,591,548、及びUS 6,675,529は、フミン酸再分配(除去)化合物を含む土壌添加物製剤、及びこれらの製剤の使用によって砂質土壌中の撥水性を減少させる方法を開示している。このフミン酸再分配化合物は、置換コハク酸塩、ポリカルボン酸塩、及びフミン酸ワックス被膜の表面張力を低下させるための物質を含んでいる。
【0028】
US 6,857,225及びUS 6,948,276は、「酸素含有の多官能価塩基化合物とそれに結合した少なくとも3個の界面活性分枝を持ち、各界面活性分枝が親水性成分と疎水性成分の両方を含む」多重分枝湿潤剤を含む、撥水性を減少させるための土壌添加物製剤について記述している。この製剤はまた、疎水性の砂粒子からのフミン酸ワックス被膜の表面張力を能動的に低下させる二次化合物を含んでいる。US 6,857,225特許は、添加物製剤の使用により局所的なドライスポット形成を減少させる方法についてである。
【0029】
US 6,948,276は、撥水性を長期間低下させるように砂質土壌に処置するための多重分枝再生湿潤剤に関する。芝生添加物のある種の新規製剤は、高度に管理された芝生エリア及び/又は芝地内のドライスポットを減らすために、適正な量の水分が根系と接触するような方式で作用する。この発明の製剤は多重分枝界面活性化合物を含み、その各分枝中の疎水性成分及び親水性成分は両方とも酸素含有の多官能価塩基化合物に結合していて、この製剤は上記のような局所的ドライスポットを通して有効な水分浸透を可能にし、そこでの芝の生育を維持させる。重要なのは、このような化合物の個々の分枝がその基部である多官能価化合物から解離していくと考えられるために、この多重分枝湿潤剤により持続的な期間に渡って水分浸透の維持がもたらされるということである。このような分枝はそれ自身が疎水性及び親水性の両方の成分を含み、それにより湿潤剤として作用するので、初期の界面活性剤化合物が分解した後も、長期間の湿潤及び水分浸透は少なくとも維持される。このような化合物及びその製剤で砂質土壌を処置する方法も、この発明において意図されている。
【0030】
このように、湿潤率が高く、撥水性土壌に素早く浸透していける湿潤剤組成物は引き続き研究されており、長きに渡り必要性が感じられている。あるいは、湿潤率が高い湿潤剤組成物を使用すれば、降雨時、及び/又は灌水での適用時に根の領域により効果的な湿潤が得られ、それにより、より良い植物生育がもたらされ、表面留去は減少するであろう。繰り返しの浸水に対して耐久性があり、急速な酸化や微生物の攻撃に対して抵抗性がある土壌にするための親水的処置に関する必要性も引き続き存在する。また、処理薬剤はそれにさらされる植物の生命にとって有害であってはならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
発明の目的
疎水性土壌を処理するのに有用な新規の非イオン性界面活性剤を提供することが本発明の第一の目的である。
【0032】
経済的な量の土壌改良剤を使用することにより、中粒子及び粗粒子土壌を通じての水の輸送を促進する方法を提供することが本発明の別の目的である。
【0033】
上記の土壌改良剤がさらに土壌からの流出率の低さを特徴とし、それによりその組成物がさらにコスト効率のよいものとなるような方法を提供することが本発明のさらに別の目的である。
【0034】
疎水性土壌の水輸送特性を改善する方法を提供することも本発明の目的である。
【0035】
さらに、本発明の別の目的は、ある種のランダム及びブロックポリプロピレンオキシド誘導体を提供することである。
【0036】
本発明のさらに別の目的はある種のランダム及びブロックポリプロピレンオキシド誘導体を提供して、水及び/又は水性組成物の疎水性/撥水性の土壌を通じての浸透を増加させることである。
【0037】
本発明の特別な目的は、ある種の疎水性で水に不溶性のポリマー又はそれらの混合物を疎水性の土壌又は芝生に提供して、水が土壌表面に浸透し、土壌の処理された層中に浸透する能力を改善させることである。
【0038】
本発明のさらに別の目的は、乾燥ストレス及び土壌キャッピングを緩和し、土壌中の水分維持を改善するために芝生及び土壌を処理する方法を提供することである。
【0039】
本発明の他の目的及び態様についてさらに以下で説明する。
【課題を解決するための手段】
【0040】
発明の要約
本発明は式Iの化合物に関するものである:
【0041】
【化1】
式中、R及びR'はそれぞれ独立にH、C
1-24アルキル基、アリール基、C
1-24アルキルアリール基、C
1-24アリールアルキル基、-C(=O)-R
1(エステル基)、C(=O)-NHR
1(ウレタン基)、又はC(=O)-O-R
1(カルボネート基)(式中、R
1はC
1-24アルキル基、アリール基、C
1-24 アルキルアリール基、C
1-24アリールアルキル基から成る群から選択される)から成る群から選択される;Aは4-12個の炭素原子を有するアルキレンオキシド基及び8-12個の炭素原子を有するアリールエポキシド基から成る群から選択される;x=1-300;y=0-200;z=0-200;但し、R及びR'が同時にH又はエーテル官能基を示すことはない。
【0042】
本発明はまた、有効な量の上記に定義される式Iの化合物を使用することにより、疎水性表面を通じての水の浸透率を改善し、芝、他の植物表面又は他の疎水性表面上の結露を防止する方法に関するものである。
【0043】
本発明はさらに、以下の工程を含む撥水性土壌の湿潤率を高める方法を提供する:
(i)(a)式Iの化合物
【0044】
【化2】
式中、R及びR'はそれぞれ独立にH、C
1-24アルキル基、アリール基、C
1-24アルキルアリール基、C
1-24アリールアルキル基、-C(=O)-R
1(エステル基)、C(=O)-NHR
1(ウレタン基)、又はC(=O)-O-R
1(カルボネート基)(式中、R
1はC
1-24アルキル基、アリール基、C
1-24 アルキルアリール基、C
1-24アリールアルキル基から成る群から選択される)から成る群から選択される;Aは4-12個の炭素原子を有するアルキレンオキシド基及び8-12個の炭素原子を有するアリールエポキシド基から成る群から選択される;x=1-300;y=0-200;z=0-200;但し、R及びR'が同時にH又はエーテル官能基を示すことはない;
(b) 界面活性剤;及び
(c)水;
を含む水性湿潤剤組成物を製造する工程;及び
(ii)上記の撥水性土壌に有効な量の上記湿潤剤組成物を密に接触させる工程。
【0045】
本発明はまた、迅速に親水性を増大させて撥水性の土壌マトリックス中への水の浸透を増加させる方法を提供する。この方法は、撥水性土壌に式Iの化合物を含む有効な量の湿潤剤組成物を使用することから成る。
【0046】
本発明はまた、有効な量の式Iの化合物を使用することを含む、ゴルフ場の芝表面のドライスポットを改善し予防するための方法を提供する。
【0047】
本発明の組成物により、先行技術において先に達成されているものよりも、撥水性土壌中の浸透(湿潤)率の予想以上に著しい増加が示される。
【発明を実施するための形態】
【0048】
発明の詳細な説明
本発明の第一の態様として、式Iの化合物が提供される:
【0049】
【化3】
式中、R及びR'はそれぞれ独立にH、C
1-24アルキル基、アリール基、C
1-24アルキルアリール基、アリール(C
1-24)アルキル基、-C(=O)-R
1(エステル基)、C(=O)-NHR
1(ウレタン基)、又はC(=O)-O-R
1(カルボネート基)(式中、R
1はC
1-24アルキル基、アリール基、C
1-24 アルキルアリール基、C
1-24アリールアルキル基から成る群から選択される)から成る群から選択される;Aは4-12個の炭素原子を有するアルキレンオキシド基及び8-12個の炭素原子を有するアリールエポキシド基から成る群から選択される;x=1-300;y=0-200;z=0-200;但し、R及びR'が同時にH又はエーテル官能基を示すことはない。式Iの化合物はランダム又はブロックコポリマーでもよい。
【0050】
特に重要なのは、x=10-100; y=0-50; 及びz=0-50の化合物であり、より好ましくは、x=10-30; y=0-10; 及びz=0-10の化合物、さらに最も好ましくは、x=18-21; y=1-2; 及びz=0-50の化合物である。特に好ましい化合物は、x≒19; y≒2; 及びz=0のものである。
【0051】
式Iの化合物は、ポリオキシプロピレンオキシドC
1-C
24アルキルエーテルを100℃から130℃の間の温度、より好ましくは120℃で、水溶液中、水酸化カリウムの存在下で、必要な量の1,2プロピレンオキシドと反応させることにより製造する。最初の反応の後、残存揮発物質を120℃で30分間、減圧下で撹拌して除去する。次いで、必要ならば所望のエトキシ化度に応じて、140℃でエチレンオキシドを任意で加えて反応を完全に行わせてもよい。残存揮発物質を再度120℃で30分間、減圧下で撹拌して除去した。その後、温度を60℃に下げ、リン酸を加えて30分間撹拌する。得られた生成物は典型的にはおよそ1200-1800の範囲のMWを有する粘性の透明な油で、典型的には40.0-48.0の範囲のヒドロキシル価を有する。
【0052】
その後、上記の透明な油を80℃-90℃の間の温度に加熱し、次いでp-トルエンスルホン酸の存在下で脂肪酸を加える。この混合液を、180-190℃で35-40時間、窒素噴霧下で水蒸留液を除去しながら加熱する。生成物エステルをその後85-90℃まで冷却し、炭酸ナトリウムを加えて1時間撹拌する。続いて、50%の過酸化水素を加え、1時間撹拌を続けた。100-110℃に加熱した後、減圧し、水を除去した。得られた塊を50-60℃に冷却し、濾過して懸濁固体を除去する。生成物は、所望の酸価、ヒドロキシル価、及びけん化価を有する粘性の透明な液体である。
【0053】
上述したように、ポリオキシプロピレンオキシドC
1-C
24アルキルエーテルのアルコキシル化の後、中間生成物として形成されたアルコキシル化アルコールをエステル化にかける。この目的で使用するカルボン酸成分は、1から24個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖の飽和及び不飽和脂肪酸から選択される。脂肪酸鎖は水酸基で置換されていてもよい。
【0054】
脂肪酸エステル化剤の代表的な例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、12-ヒドロキシステアリン酸、アラキドン酸、ガドレイン酸、ベヘン酸、二量体脂肪酸、上記脂肪酸の二量体、及びエルカ酸が挙げられる。オレイン酸、ステアリン酸及びイソステアリン酸、並びにそれらの工業用混合物が好ましい。
【0055】
油脂化学において一般的なように、これらの酸は天然油脂、例えば、パーム油、パームナッツ油、ヤシ油、オリーブ油、ヒマワリ油、菜種油又は牛脂の加圧加水分解で得られる工業用カットの形態で存在してもよい。12から18個の炭素原子を含む飽和脂肪酸が好ましく、16から18個の炭素原子を含むものが特に好ましい。
【0056】
ポリオキシプロピレンオキシドC
1-C
24アルキルエーテルのアルコキシル化により誘導され中間生成物として形成されたアルコキシル化生成物のエステル化もそれ自体周知の方法によって行うことができる。この目的に適した酸性触媒は、例えば、メタンスルホン酸、ブタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、及び/又はスルホコハク酸である。
【0057】
さらに、上記エステル化反応は、例えば140から275℃、好ましくは150から185℃の高温で、反応水を平衡状態から連続的に除去しながら行うことが望ましい。使用する脂肪酸の量はポリオキシプロピレンオキシドC
1-C
24アルキルエーテルアルコキシレート1モルに対して1.0から1.2、好ましくは1.0から1.1モルの脂肪酸になるように選択すべきである。これにより確実に、水酸基のエステル化が実質的に定量的に行われる。必要ならば、最終反応生成物中の遊離脂肪酸の残存含有物をアルカリ金属水酸化物溶液で中和してもよい。
【0058】
別の態様として、本発明は疎水性表面及び疎水性土壌の水輸送特性を、水輸送の改善に有効な量の式Iの化合物を上記表面又は上記土壌に使用することにより改善する方法に関する:
【0059】
【化4】
式中、R及びR'はそれぞれ独立にH、C
1-24アルキル基、アリール基、C
1-24アルキルアリール基、アリール(C
1-24)アルキル基、-C(=O)-R
1(エステル基)、C(=O)-NHR
1(ウレタン基)、又はC(=O)-O-R
1(カルボネート基)(式中、R
1はC
1-24アルキル基、アリール基、C
1-24 アルキルアリール基、C
1-24アリールアルキル基から成る群から選択される)から成る群から選択される;Aは4-12個の炭素原子を有するアルキレンオキシド基及び8-12個の炭素原子を有するアリールエポキシド基から成る群から選択される;x=1-300;y=0-200;z=0-200;但し、R及びR'が同時にH又はエーテル官能基を示すことはない。式Iの化合物はランダム又はブロックコポリマーでもよい。
【0060】
特に重要なのは、x=10-100; y=0-50; 及びz=0-50の化合物であり、より好ましくは、x=10-30; y=0-10; 及びz=0-10の化合物、さらに最も好ましくは、x=18-21; y=1-2; 及びz=0-50の化合物である。特に好ましい化合物は、x≒19; y≒2; 及びz=0のものである。
【0061】
式Iのポリマーはそれ自体は疎水性で水不溶性であるが、疎水性の表面又は土壌にそれらを親水性にするために直接使用してもよい。また、水中エマルジョン若しくは別の都合の良い溶媒から、又は当技術分野で使用が容易な周知の手段によって都合が良いように使用することもできる。
【0062】
式Iのポリマーは多くの乳化剤のうちのいずれを用いて水中に乳化してもよい。好ましい乳化剤としては非イオン界面活性剤が挙げられ、特に非イオン性エチレンオキシド/プロピレンオキシド・ブロックコポリマーが好ましい。表面張力を低下させる添加剤を任意で加えて疎水性の表面又は土壌に確実に適当な湿潤を与えるようにすることもできる。土壌に用いる乳化剤は芝生又は植物の生命に障害を与えないように選択すべきである。
【0063】
式Iのポリマーのエマルジョンは、処理する表面上にこのエマルジョンを浸すか、スプレーするか、又はこすりつける等の多くの方法のうちのいずれかによって疎水性の表面又は土壌に都合の良いように使用することができる。乾燥させて水性賦形剤を除去した後、本発明のポリマーの被膜は処理表面上に残り、それを親水性にする。この親水性被膜は繰り返しの水洗に対して耐久性がある。
【0064】
疎水性の表面又は土壌の上に式Iのポリマーの薄い被膜ができることはそれらを親水性にするのに適切である。より大量の式Iのポリマーを疎水性表面に使用してより厚い被膜を作っても、必ずしも親水性を改善するものではない。
【0065】
疎水性の表面又は土壌に適切な湿潤度をもたらすのに必要な本発明のポリマー被膜又はエマルジョンの量は、求める親水性のレベル及び被覆の深さによって様々に変わると考えられる。処理した土壌中の水分移動は処理の深さに応じて改善されるであろう。従って、水及び乳化剤で希釈する式Iのポリマーの量は、根の領域の深さ及び求める深さまで浸透していくのに必要な希釈エマルジョンの量を考察することにより最良になるように決定されるであろう。その後、水及びエマルジョンの量がポリマーを求める深さまで運び土壌粒子表面を処理するのに十分な量になるように、本発明のポリマーのエマルジョンの濃度及び量を調節してもよい。
【0066】
乳化剤は疎水性の表面又は土壌に使用するための希釈した形態と同様に濃縮形態においても式Iのポリマーに最良の安定性が得られるように選択してもよい。式Iのポリマーは水エマルジョン中に、土壌又は疎水性表面への使用にあたって2%以下の活性成分になるように希釈することができる。希釈溶液は土壌表面の処理が芝生の根の領域全体を取り囲むような深さに届かせるのに十分な割合で土壌に使用することができる。
【0067】
処理した疎水性の表面は急速に水に対して湿潤性を持つようになり、処理した表面が水を運ぶ(水が処理面を垂直方向に上昇するようにさせる)ようになるであろう。土壌の場合、水が土壌に浸透する能力が大幅に高められる。芝のような処理表面上の結露も防止される。
【0068】
本発明はとりわけ、式Iの化合物を含む湿潤剤組成物が水及び水性組成物の疎水性/撥水性土壌の固体マトリックスを通じての輸送又は浸透を著しくかつ予想以上に増大させることを開示するものである。さらに、これらの組成物が広い範囲の濃度で非常に効果的であることが見出されており、そのことは灌水シナリオの中でこれらの組成物が使用される際に、例えば、流出の減少及び水溶性肥料の送達の両方の面で、農地管理学及び/水文学的に最大の利益を達成する上で非常に重要である。
【0069】
さらに、本発明の式Iの化合物は砂質エリア、土壌、又は砂及び土壌の両方を含むエリア(芝地、グリーン、牧草地、ビーチ、乾燥した砂漠様エリアなど)を処理して効果的な水分浸透が得られるような疎水性土壌用添加物として製剤化される。本発明の製剤は、単回使用(及び/又は7から10日間隔での分割使用)製剤として対象の芝地又はグリーンに土壌添加物製剤を散布することを含む処理によって、長期の湿潤を提供し、芝地又はグリーン上の局所的ドライスポット形成を減少させるために使用することもでき、上記土壌添加物製剤は上述の式Iの化合物を含む。
【0070】
式Iの化合物を含む製剤、及び砂質エリアを当該製剤で処理する方法は、よって、単に砂質エリアで水分浸透の効果を得るために利用することもできる。上記のやり方で、砂質エリア(例えば、ビーチ)を水が浸透して、例えば降雨後に見苦しい水たまりになるのを防ぐように改良したり、或いは乾燥した砂漠様エリアに用いて、それ以外では生育できない植物生命体の根系を維持するために水が浸透できるようにすることが可能である。
【0071】
本発明の製剤は選択された処理エリアに対して液体、ペレット、又は粒状のいずれの形態で使用してもよい。本発明の製剤は、組成物という意味では、式Iの化合物を少なくとも1つ含む必要がある。
【0072】
式Iの化合物はこのように界面活性剤自体の疎水基により撥水性土壌の疎水性表面に必要な水分吸着をもたらす優れた能力を示し、それにより有益な湿潤性をもたらし、疎水性土壌に水輸送性をもたらす。吸着された水滴はいずれも、他の粒子状物質によってさらに吸着されるか、又は他の水滴との凝集により砂及び/又は土壌中に吸収されることになる。このように、上記の湿潤剤は効果的に相当かつ必要な量の水分が表土を浸透するのを可能にし、比較的長期間、地下根に対して変動せず継続的に有用な水分供給がなされる。
【0073】
上記の土壌添加物製剤は、1つの可能な好ましい態様として、もっぱら上記式Iの湿潤剤のみを含んでもよいが、或いは、湿潤剤が上記式Iの湿潤剤を0.1-99重量%、好ましくは1-99重量%、より好ましくは約5-95重量%、より好ましくは約10-90重量%の割合で含み、残りは以下に記すような添加物の混合物を含んでもよい。
【0074】
しかしながら、対象となる表土エリア中に上記湿潤剤を最初に浸透させることを最も確実にするためには、式Iの前述の湿潤剤と共存可能であって、表土表面の表面張力をさらに低下させるような少なくとも1個の第二の化合物を製剤中に含むことが好ましい。表面張力が低下することにより、土壌断面中に湿潤剤がより迅速に浸透できるようになる。そのような第二の化合物は、式Iの前述の湿潤剤と組み合わせて使用できるような、アルコキシル化、好ましくはエトキシル化アルコール系界面活性剤でもよく、例えば分枝又は非分枝C
6-C
60アルコールエトキシレート又はアルコキシル化、好ましくはエトキシル化C
8-C
40脂肪酸でもよい。
【0075】
アルコキシル化された第二の化合物は分枝又は非分枝の形態でもよい。この目的に好ましいタイプのアルコールアルコキシレートの例としては、直鎖又は分枝鎖で、二級又は一級ヒドロキシル基を含むタイプのC
6-C
60アルキル又はアルキルアリールEO/PO界面活性剤が挙げられ、それには以下の一般式:
【0076】
【化5】
(式中、bは0から500を示し;cは0から500を示し、R
3は、H又は1から4個の炭素原子を有するアルキル基を示す)
で表されるポリアルキレンオキシド化合物から選択される少なくとも1つの界面活性剤を95から1重量%で含む界面活性剤混合物が含まれ、上記ポリアルキレンオキシドは300から51,000の範囲の分子量を有する;また、上記の例として以下の一般式:
【0077】
【化6】
(式中、xは1から50を示し;yは0から50を示し;R
4は分枝鎖又は直鎖のアルキル基、アルケニル基、アリール基、又は任意でアルキル置換基(当該アルキル基は最大60個の炭素原子を有する)を有するアリール基を示し;R
5はH 及び1から2個の炭素原子を有するアルキル基から選択され;また、R
6はH 及び1から30個の炭素原子を有するアルキル基から選択される)
で表される化合物を含む、第二選択の別の界面活性剤も挙げられる。適当な第二の界面活性剤としては、さらに以下の一般式:
【0078】
【化7】
(式中、xは1から50を示し;yは1から50を示し;aは1から2を示し;bは1から2を示し;R
4は最大60個の炭素原子を有するアルキル基若しくはアルケニル基、又は任意でアルキル置換基(当該アルキル基は最大60個の炭素原子を有する)を有するアリール基を示し;R
5はH 及び1から2個の炭素原子を有するアルキル基から選択され;また、R
6はH 及び1から30個の炭素原子を有するアルキル基から選択される)
で表されるカルボン酸エステル及びジカルボン酸エステルが挙げられる。
【0079】
追加される第二の化合物は、表面張力を低下させることが当業者に広く知られているシリコン界面活性剤又はフッ素系界面活性剤でもよい。
【0080】
式Iの化合物と組み合わせて使用される好ましい界面活性剤/乳化剤は、ランダム及びブロックEO-POコポリマー、ランダム及びブロックEO-PO-EOコポリマー、ランダム及びブロックPO-EO-POコポリマー、R-EO
x-PO
y-及びR-PO
y-EO
x、R-(CH
2CH
2O)
xOH、R-SO
3-M
+、R-(CH
2CH
2O)
xSO
3-M
+、(RO)
xP(=O)O
-M
+、RCO
2-M
+、又はROSO
3-M
+、RR'R''R'''N
+X
-(式中、R=C
1-24アルキル基又はアルキルアリール基、(C
1-C
24)-(C=O)-、R;R'、R''、R'''は同一又は異なっていて、アルキル基、アリール基又はアルキルアリール基から成る群から選択される)、及びそれらの混合物から成る群から選択される。
【0081】
式Iの化合物はまた、ゴルフ場の芝表面のドライスポットの発生を防止することができ、さらに、ゴルフ場の芝表面に担体と共に上記化合物を散布することにより既に発生しているドライスポットを改善し縮小することができる。
【0082】
式Iの化合物がドライスポットを防止又は改善できる理由は以下のようであると考えられる:上記化合物が撥水性土壌に散布されると、ポリマーのポリオキシプロピレン部分の酸素原子が水分子と水素結合して水の撥水性土壌中への浸透を加速し、これがドライスポットの発生が長時間持続して予防される理由と考えられる。
【0083】
本発明の組成物は、農芸化学的な水散布技術又は乾燥散布技術の熟練者に周知の方法で不活性賦形剤材料に加えるか、及び/又は賦形剤及び添加物と混和するかのいずれかにより、固体形態、例えば粉末又は顆粒の形態で利用されることも想定されている。このように、上記組成物は固体形態で撥水性土壌に加えることもでき、必要ならば組成物の制御放出も行うことができる。
【実施例】
【0084】
実施例I
再湿潤剤の製造
ポリオキシプロピレンオキシド・モノブチルエーテル(MW 340) 4181に対して、45%の水酸化カリウム水溶液 を71の割合で混合し、120℃に加熱した。酸素をパージし水分を除去した後、1,2-プロピレンオキシドを9900の割合で加え、完全に反応させた。残存揮発物質を120℃で30分間、減圧下で撹拌して除去した。その後、エチレンオキシドを920の割合で、140℃で加え、完全に反応させた。残存揮発物質を再び120℃で30分間、減圧下で撹拌して除去した。温度を60℃に下げ、リン酸を44の割合で加え、30分間撹拌した。生成物は、およそ1200 MW(ヒドロキシル価47.4)の粘性の透明な油であった。
【0085】
この透明な油を80℃に加熱し、その後、この油14830に対して、ステアリン酸2740及びp-トルエンスルホン酸27を加えた。この混合液を、窒素噴霧下で37時間、水蒸留液を除去しながら、180-190℃に加熱した。エステル生成物を85-90℃まで冷却し、炭酸ナトリウムを88の割合で加え、1時間撹拌した。50%過酸化水素を9の割合で加え、1時間撹拌を続けた。100-110℃に加熱した後、減圧を施し、水を除去した。塊を50-60℃まで冷却し、濾過して懸濁固体を除去した。生成物は、0.9 mg KOH/gの酸価、8.5 mg KOH/gのヒドロキシル価、及び31.8 mg KOH/gのけん化価を有する粘性の透明な液体であった。
実施例II
再湿潤剤の製造
実施例Iの生成物と類似の別の再湿潤剤を、エチレンオキシドを加えないこと以外は実施例Iと同じ手順で製造した。生成物エステルは、10.49の酸価、22.1のヒドロキシル価、及び80.5のけん化価を有するものであった。
実施例III
疎水性の表面に親水性を与えるための実施例Iの生成物の使用
1) 2.1%の実施例Iの生成物及び97.9%の無水イソプロパノールから成る溶液を製造した。
【0086】
(実施例Iの生成物はいかなる割合でもIPAに溶解する。)
2) 仕上げ加工していないポロプロピレン布に浸漬法によって上記溶液を付着させ、この布が取り込んだ湿潤分を100%とした(実施例III-2)。対照として(実施例III-1)、仕上げ加工していない布片を、何も溶解させていないイソプロピルアルコール(IPA)に漬けた。
3) 続いて、上記の布を風通しのあるところに24時間吊り下げてアルコールを蒸発させたところ、被験布上では2重量%の実施例Iのポリマーが残り、対照では何も残らなかった。
4) その後、上記の布の表面に水滴を静かに載せ、水滴が完全に吸収されるまでに必要な時間を観察することにより、布の湿潤性を試験した。
【0087】
【表1】
実施例III-1から、処理していないポリプロピレン布が非常に疎水性で、水が全く湿潤しないことが確認された。実施例III-2は、処理した布が急速に湿潤性となることを示している。
実施例IV-1〜 IV-7
実施例Iの生成物の水中エマルジョン
様々な界面活性剤を実施例Iの生成物と混和し、周囲条件下及び凍結−解凍条件下で混合物の安定性を観察することにより評価した。その後、これらの混合物を2重量%になるように水中に混合し、水エマルジョンの安定性を観察した。混合物とそれらの安定性を表2に表示する。
材料
Ethal LA-23 ポリオキシエチレン(POE)23 ラウリルアルコール
Ethal TDA-6 POE 6 トリデシルアルコール
Ethox 2672 メトキシポリオキシエチレングリコール360 モノラウレート
POP(3)CSA ポリオキシプロピレン(POP)3 セチル-ステアリールアルコール
Ethox 1437 POP(2)POE(4)デシルアルコール
Ethox 1449 POP(7.2)POE(5.8)デシルアルコール
Ethox 2400 POP(2)POE(9)トリデシルアルコール
Ethox 2440 POP(5)POE(5)オクチル/デシルアルコール
Ethox 2680 POE(7)POP(3)オクチル/デシルアルコール
Ethox L-61 POE-POP-POEブロックポリマー(10% EO、分子量2000)
Ethox L-62 POE-POP-POEブロックポリマー(20% EO、分子量2200)
Ethox L-64 POE-POP-POEブロックポリマー(40% EO、分子量3000)
Ethal NP-9 POE 9 ノニルフェノール
【0088】
【表2】
表2は、実施例Iのポリマーがいくつかの界面活性剤により乳化されうるが、Ethox L-62(実施例IV-7)により貯蔵安定性と乳化安定性の最良の組み合わせがもたらされたことを示している。
実施例IV-8〜IV-15
実施例Iの生成物の水中エマルジョン
様々な界面活性剤を実施例Iの生成物と混和し、低温条件下及び凍結−解凍条件下で混合物の安定性を観察することにより評価した。混合物とそれらの安定性を表3に表示する。
【0089】
これらの混合物をその後、2重量%になるように水中に混合し、実施例IIIで使用したものと同じ仕上げ加工していないポリプロピレン布に、布が取り込む湿潤分が1%となるように浸漬法によって付着させた。その後、上記の布を風通しのあるところに24時間吊り下げて乾燥させた。
【0090】
処理した布の親水性を表1のように水滴が吸収される時間を測定することにより評価した。
【0091】
【表3】
表3は、実施例Iの生成物と様々な界面活性剤から形成されたいくつかのエマルジョンで処理したポリプロピレン布が水湿潤性となることを示している。実施例IV-8及びIV-14が優れた効果を示した。
実施例V
親水性処理の耐久性
表3に示す混合物を作成し、以下に概要を示す手順により試験した。耐久性試験の結果を表5に示す。
1) 実施例Iの生成物と界面活性剤の混合物をイソプロピルアルコール中に2%含有量になるように溶解する。本発明の材料及び乳化剤をイソプロピルアルコールを用いて塗布するのは、水での分散液からの不均質な塗布によっておこりうる耐久性のばらつきを排除するためである。
2) 6枚の13cm x 13cm ポリプロピレン織地布片上に1% wpu(2%固体の付着)になるように塗布する。
3) フード内の気流で12時間乾燥させる。
4) 布上に水滴を載せ、布中に完全に吸収されるまでの時間を測定する。
5) 被験布片を保存する。
6) 残りの布片すべてを周囲環境の水道水に浸して60秒間撹拌してすすぐ。
7) それらをフード内の気流で乾燥させる。
8) 1枚の布上に水を載せ、吸収時間を測定する。
9) 被験布片を1枚保存する。
10) 残りの布片に2度目のすすぎを行う。
11) それらをフード内の気流で乾燥させる。
12) 2度すすいだ布片の1枚に水滴試験を行い、保存する。
13) 残りの布片に3度目のすすぎを行う。
14) それらをフード内の気流で乾燥させる。
15) 3度すすいだ布片の1枚に水滴試験を行い、保存する。
16) 4回目、5回目、及び6回目のすすぎ及び試験として、工程13、14及び15を繰り返す。
【0092】
【表4】
【0093】
【表5】
実施例V-A、B及びCの結果から、実施例Iの生成物と3種の界面活性剤混合物との混合により湿潤性が得られ、それは複数回の水洗に耐久性があることが示されている。L-62を用いた混合物は他の2種よりも若干良い。
【0094】
実施例V-Dの結果は、L-62乳化界面活性剤が効果の耐久性に貢献しないことを示している。実施例V-Eは、一般の工業用加湿剤で処理したポリプロピレン布が迅速な湿潤を示すものの、その親水性は反復の水洗に対して耐久性がないことを示している。
【0095】
本出願中に引用されているすべての特許、特許出願、及び公開は、それらの出願で引用されている全ての参考文献を含めて、個々の特許、特許出願、及び公開がそれぞれ個々に表示されているのと同じ範囲で全ての目的に全ての内容が参照によって本出願に組み込まれている。
【0096】
本発明の多くの態様を上記に開示し、それらに現在の好ましい態様が含まれているが、この開示及び以下に添付する請求の範囲内において他の多くの態様及び変更が可能である。従って、提示されている好ましい態様及び実施例の詳細はそれらに限定されるものと解釈すべきではない。ここに使用される用語は限定するものではなく単に説明のためのものであり、様々な変更や数多くの同等のものが、開示されている発明の趣旨又は範囲から外れることなく作成されうることを理解すべきである。