【実施例】
【0042】
以下に本発明の実施例について説明するが、これに限定されるものではない。
[スーパーオキシド消去作用]
(実施例1)
(1)微細藻類Skeletonemaの培養
駿河湾深層水水産利用施設沖に設置された取水管より、深度397mの海洋深層水を汲み上げ、孔径3μmのカートリッジフィルターで除菌ろ過したものを培養海水とした。約4トン容の水槽に3.5トンの培養海水を満たし、ここに駿河湾深層水中より採取したSkeletonemaを初期密度750細胞/mlで接種した。培養温度は20℃、光条件は室内太陽光を基準とし、10,000ルクスに満たない場合は9:00〜17:00までの間ナトリウムランプを点灯した。
【0043】
(2)抽出物の調整
Skeletonema培養液を中空糸膜ろ過方式で濃縮した後、さらに遠心分離を用いて藻体を捕集した。得られた藻体を−30℃で凍結した後、凍結乾燥した。凍結乾燥物は0.5mm以下に粉砕した。粉砕後、藻体粉砕物の乾燥質量に対し、質量基準で20倍となるように蒸留水で分散した。分散液を超音波破砕装置により周波数20kHz、出力100Wで3分間破砕し、遠心分離(1000rpm、5分)して上澄みを取り出すことで実施例1の藻体の水抽出物を得た。
【0044】
(実施例2)
上述の実施例1と同様の方法で、駿河湾海洋深層水中より採取したAsterionellaを培養し、実施例2の藻体の水抽出物を得た。
【0045】
(実施例3)
上述の実施例1と同様の方法で、駿河湾海洋深層水中より採取したLeptocylindrusを培養し、実施例3の藻体の水抽出物を得た。
【0046】
(試験例1)
実施例1、実施例2、及び、実施例3で得られた藻体の水抽出物の抗酸化活性(活性酸素消去活性)を確認するため、スーパーオキサイド消去作用の評価を行った。
スーパーオキサイド消去作用の測定は、SOD Assay Kit−WST (DOJINDO MOLECULAR TECHNOLOGIES, INC., Lot No. VT677)を用いて行った。試料溶液の調製は、キットに準じて行った。
まず、上述の各実施例の藻体の水抽出物 20μl,WST working solution 200μl,およびEnzyme working solution 20μlを96穴プレートで混合後、37℃で20min反応させた後に450nmで吸光値を測定し、スーパーオキサイド消去率(%)を求めた。
結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
(試験結果)
表1から明らかな通り、Skeletonema水抽出物は高いスーパーオキサイド消去作用を示した。また、Asterionella、Leptocylindrusの水抽出物も高いスーパーオキサイド消去作用を示した。
【0049】
[DPPHラジカル消去能]
(比較例1)
ニンジンの可食部をエタノール抽出し、藻体抽出試料と同様の測定を行った。
ニンジン可食部生重20gに対し、エタノール80gを加えてホモジナイズを行った。そして、減圧乾固した後、50ml蒸留水に溶解し、比較例1のニンジンの抽出物を得た。
【0050】
(試験例2)
0.1MのDPPH(1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl)溶液(50%エタノール水溶液)に、上述の実施例1〜3の藻体の水抽出物及び比較例1の抽出物を添加し、DPPHラジカルをどの程度消去できるかで判定した。
【0051】
具体的には、96穴マイクロプレートに、20μLの上述の実施例1〜3の藻体の水抽出物(又は比較例1の抽出物)、Trolox希釈系列、及び、250μLのDPPH溶液を加え、室温で20分間撹拌後、マイクロプレートリーダーで520nmにおける試料の吸光度(Asample)を測定した。
【0052】
また、コントロールとして、被検試料の代わりに200mMの2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)緩衝液(pH6.0)を添加した場合の吸光度(Acontrol)を測定した。
ブランクとして、DPPH溶液の代わりに同量の緩衝液を添加した場合の吸光度(Ablank)をそれぞれ測定した。
【0053】
DPPHラジカル消去能(%)は次式に従って求めた。
消去能(%)=[{Acontrol−(Asample−Ablank)}/Acontrol]×100
別途、Troloxの濃度を横軸、吸光度変化量を縦軸として検量線を描き、各試料のTrolox換算濃度を求めた。
結果を表2に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
(試験結果)
表2から明らかな通り、Skeletonemaの水抽出物は高いDPPHラジカル消去率を示した。また、Asterionella、Leptocylindrusの水抽出物も高いDPPHラジカル消去能を示した。それぞれ、一般的に抗酸化作用を有するニンジンの抽出部よりも優れたDPPHラジカル消去能を示している。このことから、実施例1〜3の水抽出物が良好な抗酸化作用を有していることがわかる。
【0056】
[チロシナーゼ活性阻害作用]
(実施例4)
(1)微細藻類Skeletonemaの培養
駿河湾深層水水産利用施設沖に設置された取水管より、深度397mの海洋深層水を汲み上げ、孔径3μmのカートリッジフィルターで除菌ろ過したものを培養海水とした。約4トン容の水槽に3.5トンの培養海水を満たし、ここに駿河湾深層水中より採取したSkeletonemaを初期密度750細胞/mlで接種した。培養温度は20℃、光条件は室内太陽光を基準とし、10,000ルクスに満たない場合は9:00〜17:00までの間ナトリウムランプを点灯した。
【0057】
(2)抽出物の調整
Skeletonema培養液を中空糸膜ろ過方式で濃縮した後、濃縮液を遠心分離して藻体を捕集した。得られた藻体を−30℃で凍結した後、凍結乾燥した。凍結乾燥物は0.5mm以下に粉砕した。粉砕後、藻体粉砕物の乾燥質量に対し、質量基準で20倍となるように蒸留水で分散した。分散液を超音波破砕装置により周波数20kHz、出力100Wで3分間破砕し、遠心分離(1000rpm、5分)して上澄みを取り出すことでSkeletonema抽出物(脱塩無)を得た。
次に、Skeletonema抽出物(脱塩無)に付着した塩分を除くため、蒸留水にて2回洗浄し、得られた藻体を−30℃で凍結した後、凍結乾燥した。凍結乾燥物は0.5mm以下に粉砕し、蒸留水に分散した。分散液を超音波破砕装置により周波数20kHz、出力100Wで3分間破砕し、遠心分離(1000rpm、5分)して上澄みを取り出すことで実施例4の水抽出物(脱塩有)を得た。
【0058】
(実施例5)
上述の実施例4と同様の方法で、駿河湾海洋深層水中より採取したAsterionellaを培養し、実施例5の藻体の水抽出物を得た。
【0059】
(実施例6)
上述の実施例4と同様の方法で、駿河湾海洋深層水中より採取したLeptocylindrusを培養し、実施例6の藻体の水抽出物を得た。
【0060】
(実施例7)
上述の実施例4と同様の方法で、駿河湾海洋深層水中より採取したEucampiaを培養し、実施例7の藻体の水抽出物を得た。
【0061】
(試験例3)
抽出液の美白機能をチロシナーゼ活性阻害により評価した。
具体的には、96穴マイクロプレートに、上述の実施例4〜7の藻体の水抽出物100μLを入れ、次に120U/mLのチロシナーゼ(シグマ製)100μLを添加し、37℃で10分間プレインキュベートを行った。ここに2.5mMのL−DOPA(L-dioxyphenylalanin)100μLを添加した後、さらに37℃で5分間インキュベートを行い、マイクロプレートリーダーにて490nmにおける吸光度(Bsample)を測定した。
別途、L−DOPAの代わりに0.1Mリン酸緩衝液(pH6.8)を加えたものの吸光度(Bblank)、被検溶液の代わりに0.1Mリン酸緩衝液(pH6.8)を加えたものの吸光度(Bcontrol)を同様の操作にて測定を行った。
【0062】
チロシナーゼ阻害活性(%)は次式に従って求めた。
阻害活性(%)=[{Bcontrol−(Bsample−Bblank)}/Bcontrol]×100
測定した上述の実施例4〜7の藻体の水抽出物のチロシナーゼ阻害活性(%)を表3に示す。
【0063】
【表3】
【0064】
(試験結果)
表3に示すように、上述の実施例4〜7の藻体の水抽出物は、安定してチロシナーゼ活性阻害作用を有することが判る。これにより、該抽出物は美白機能を有する素材となることが判る。また、表3から明らかな通り、AsterionellaおよびLeptocylindrusの水抽出物はいずれも高いチロシナーゼ活性阻害能を示した。
【0065】
[メラニン産生阻害作用]
(試験例4)
抽出液の美白機能をB16メラノーマ細胞により評価した。
直径60mmの細胞培養用シャーレに、ウシ胎児血清10%含有MEM(minimum essential medium)培地中で前培養したB16メラノーマ細胞を2.5×10
4cells/mLとなるよう、0.1%コウジ酸を含む同培地中に接種した。CO
2濃度5%、37℃で24時間培養後、培地を除去し、リン酸緩衝液(PBS緩衝液)を用いて洗浄した。ここに、1.0%テオフィリン、及び、1.0%の上述の実施例5,6の藻体の水抽出物を含む同培地を加え72時間培養した。培養終了後、トリプシン処理によって細胞を剥離し、得られた細胞を遠心分離し、培地を除去後PBS緩衝液で洗浄し、細胞の色相を観察した。以下の基準に基づいて美白効果を評価した。
なお、実施例の水抽出物を用いる代りに、PBS緩衝液を加えたものをコントロールとした。また、1.0%Asterionella抽出物を用いる代りに、コウジ酸を用いて陽性コントロールとした。
【0066】
(試験結果)
上述の実施例5,6の藻体の水抽出物の美白機能の評価結果を、表4に示す。また、コントロール(PBS緩衝液)、及び、陽性コントロール(コウジ酸)を用いた美白機能の評価結果を、表4に示す。
なお、表4に示す美白効果は下記の基準により評価した。
(美白効果評価基準)
「5」: コントロールと同程度又はそれ以上の黒色
「1」〜「4」: 数字が小さいほど白色に近い色調
「0」: 白色
【0067】
【表4】
【0068】
(試験結果)
表4から明らかなように、上述の実施例5,6の藻体の水抽出物はB16メラノーマ細胞のメラニン色素産生を抑制し、細胞を白化する効果を有することが示された。これにより、実施例5,6の藻体抽出物は美白機能を有する素材であることが判る。また、表4から明らかなように、実施例5,6の藻体抽出物はB16メラノーマ細胞のメラニン色素産生を抑制し、細胞を白化する効果を有することが示された。これにより、実施例5,6の藻体抽出物は美白機能を有する素材であることが判る。
【0069】
次に、本実施の形態で説明する抗酸化剤及び美白剤を用いた、飲食物及び医薬部外品の参考例として、健康食品入浴剤の配合例を示す。
[参考例1]
(健康食品の製造)
上述の実施例4と同様の方法を用いて得られたLeptocylindrus藻体粉末1g、乳糖99g、乾燥コーンスターチ2g、タルク1.8g、ステアリン酸カルシウム0.2gを混和した。そして、一錠の重量0.5gで打錠し、健康食品として約200錠の錠剤を作製した。この健康食品によれば、抗酸化作用に優れたLeptocylindrus藻体を含むことにより、優れた抗酸化活性を有する。
【0070】
[参考例2]
(入浴剤の製造)
硫酸ナトリウム:52重量部、炭酸水素ナトリウム:42重量部、上述の実施例4と同様の方法を用いて得られたLeptocylindrus抽出液粉末:5重量部、香料1重量部、色素:適量を攪拌混合して入浴剤を作製した。この入浴剤によれば、美白作用に優れるLeptocylindrus抽出物を含むことにより、メラニン生成抑制による美白効果を有する。
【0071】
なお、本発明は上述の実施形態例において説明した構成に限定されるものではなく、その他本発明構成を逸脱しない範囲において種々の変形、変更が可能である。