【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人科学技術振興機構、熊本県地域結集型研究開発プログラム、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
マグネシウム合金として、Mg-Al系、Mg-Al-Zn系、Mg-Th-Zn系、Mg-Th-Zn-Zr系、Mg-Zn-Zr系、Mg-Zn-Zr-RE(RE:希土類元素)系等の成分系が知られているが、これら合金は鋳造法で製造しても十分な強度が得られず、急速凝固粉末冶金法で製造しても強度は得られるものの、靭性や耐食性が不十分であるという欠点を有している。
【0003】
具体例として機械的強度および延性が良好なマグネシウム合金として、Mg-Al-Zn-Y合金が提案されているが、耐食性が不十分であった。(例えば特許文献1参照)
【0004】
高強度かつ高耐食性を有するマグネシウム合金を作製する従来の手法としては、単ロール法、急速凝固法により特定の形態の材料を製造することが行われている(例えば特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、非特許文献1,2参照)。
【0005】
しかし、前記したマグネシウム合金材は、特定の製造方法においては、高い機械的性質と高い耐食性が得られるものの、急速凝固装置等の特殊な設備が必要であり生産性も低いという問題があり、更に適用できる部材が限られるという問題があった。
【0006】
そこで、前記特許文献1、特許文献2のような特殊な設備あるいはプロセスを用いずに、生産性の高い通常の溶解鋳造から塑性加工(例えば押出)を実施しても実用上有用な機械的性質が得られるものが提案されている。(例えば特許文献6,7参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のマグネシウム合金材は、以下に示すような改良すべき余地があった。すなわち、従来のマグネシウム合金材は、軽量化の目的で自動車用等への応用を進めるためには、高い強度を保ちながら耐食性をさらに向上させることが要求されていた。
【0009】
本発明の一態様は、特殊な装置およびプロセスを使用する事なしに、機械的性質および耐食性に優れたマグネシウム合金およびその製造方法を提供する事を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、Znを含有し、GdおよびTbの少なくとも一つの元素を合計でRE原子%含有し、Al、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Dy、Ho、Er、TmおよびYbからなる群から選択された少なくとも一つの元素を合計でX原子%含有し、残部がMgからなり、下記式(1)〜(4)を満たすマグネシウム合金を作製し、
前記マグネシウム合金に熱処理を行うことを特徴とするマグネシウム合金の製造方法である。
(1)0.2≦[Zn(原子%)]≦5.0
(2)0.2≦[RE(原子%)]≦5.0
(3)2[Zn(原子%)]−3≦[RE(原子%)]
(4)0.05[RE(原子%)]≦[X(原子%)]<0.75[RE(原子%)]
【0011】
また、本発明の一態様において、
前記熱処理は、623〜773Kの温度範囲で0.5〜100時間の条件で行われることが好ましい。
【0012】
また、本発明の一態様において、
前記熱処理を行う前に、前記マグネシウム合金を溶体化する溶体化処理を行うことが好ましい。
【0013】
また、本発明の一態様において、
前記熱処理を行った後のマグネシウム合金は長周期積層構造または最密原子面積層欠陥を含む相を有することが好ましい。なお、最密原子面積層欠陥は、最密原子面に沿って溶質原子であるZnと希土類元素が積層方向に連続した二原子層の濃化した溶質原子濃化二原子層を含み、前記溶質原子濃化二原子層が積層方向に周期性を有さないものである。
【0014】
また、本発明の一態様において、
前記長周期積層構造または最密原子面積層欠陥を含む相を有するマグネシウム合金に塑性加工を行うことにより、前記長周期積層構造または最密原子面積層欠陥を含む相の少なくとも一部を湾曲又は屈曲させることも可能である。
【0015】
本発明の一態様は、Znを含有し、GdおよびTbの少なくとも一つの元素を合計でRE原子%含有し、Al、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Dy、Ho、Er、TmおよびYbからなる群から選択された少なくとも一つの元素を合計でX原子%含有し、残部がMgからなり、下記式(1)〜(4)を満たすことを特徴とするマグネシウム合金である。
(1)0.2≦[Zn(原子%)]≦5.0
(2)0.2≦[RE(原子%)]≦5.0
(3)2[Zn(原子%)]−3≦[RE(原子%)]
(4)0.05[RE(原子%)]≦[X(原子%)]<0.75[RE(原子%)]
上記の態様によれば、Al、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Dy、Ho、Er、TmおよびYbからなる群から選択された少なくとも一つのX元素を上記の範囲内で含有させることにより、高い強度を保ちながら耐食性を向上させたマグネシウム合金を得ることができる。
【0016】
また、本発明の一態様において、
GdおよびTbの両方の元素を合計でRE原子%含有することも可能である。
【0017】
また、本発明の一態様において、
前記マグネシウム合金は、長周期積層構造または最密原子面積層欠陥を含む相およびhcp構造マグネシウム相を有する結晶組織を具備することが好ましい。
【0018】
また、本発明の一態様において、
前記長周期積層構造または最密原子面積層欠陥を含む相の少なくとも一部が湾曲又は屈曲していることも可能である。
【0019】
なお、本発明の一態様に係るマグネシウム合金は、高温雰囲気で使用される部品、例えば、自動車用部品、特に内燃機関用ピストン、バルブ、リフター、タペット、スプロケット灯等に使用されることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様を適用することで、特殊な装置およびプロセスを使用する事なしに、機械的性質および耐食性に優れたマグネシウム合金およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0023】
(実施の形態1)
本実施の形態によるマグネシウム合金は、Znを含有し、GdおよびTbの少なくとも一つの元素を合計でRE原子%含有し、Al、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Dy、Ho、Er、TmおよびYbからなる群から選択された少なくとも一つのX元素を合計でX原子%含有し、残部がMgからなり、下記式(1)〜(4)を満たすものである。
(1)0.2≦[Zn(原子%)]≦5.0
(2)0.2≦[RE(原子%)]≦5.0
(3)2[Zn(原子%)]−3≦[RE(原子%)]
(4)0.05[RE(原子%)]≦[X(原子%)]<0.75[RE(原子%)]
【0024】
Zn含有量およびRE含有量を上記の範囲とする理由は、マグネシウム合金に長周期積層構造または最密原子面積層欠陥を含む相を形成可能とするためである。なお、最密原子面積層欠陥は、最密原子面に沿って溶質原子であるZnと希土類元素が積層方向に連続した二原子層の濃化した溶質原子濃化二原子層を含み、前記溶質原子濃化二原子層が積層方向に周期性を有さないものである。
【0025】
X元素の含有量を上記の範囲とした理由は次のとおりである。
X含有量が0.05×[RE(原子%)]未満であると、耐食性の向上が得られないからである。
X含有量が0.75×[RE(原子%)]超であると、長周期積層構造または最密原子面積層欠陥を含む相以外のMgとXからなる化合物が形成され,耐食性に悪影響をあたえるからである。
【0026】
また、上記のマグネシウム合金は、長周期積層構造または最密原子面積層欠陥を含む相およびhcp構造マグネシウム相を有する結晶組織を具備することが好ましい。
【0027】
本実施の形態のマグネシウム合金では、前述した範囲の含有量を有するZnとREとX元素以外の成分がマグネシウムとなるが、合金特性に影響を与えない程度の不純物や他の元素を含有しても良い。
【0028】
本実施の形態によれば、Al、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Dy、Ho、Er、TmおよびYbからなる群から選択された少なくとも一つのX元素を上記の範囲内で含有させることにより、高い強度を保ちながら耐食性を向上させたマグネシウム合金を得ることができる。例えば、長周期積層構造または最密原子面積層欠陥を含む相を有する合金は二相合金であるため、ガルバニック腐食が起こり易いことが解決すべき点として指摘されていたが、上記のX元素を上記の範囲内で微量添加することで高強度および高靭性を有しつつ耐食性を著しく向上させることができる。
【0029】
また、上記のマグネシウム合金は、GdおよびTbのいずれか一方の元素をRE原子%含有するものを含むが、GdおよびTbの両方の元素を合計でRE原子%含有することが好ましい。具体的には、Gdを主元素とした合金(即ちGdをTbより多く含む合金)については、Tbを微量添加することが好ましく、Tbを主元素とした合金(即ちTbをGdより多く含む合金)については、Gdを微量添加することが好ましい。これにより、極めて高い耐食性を有する合金を実現することができる。
【0030】
また、上記のマグネシウム合金は、長周期積層構造または最密原子面積層欠陥を含む相の少なくとも一部が湾曲又は屈曲していることが好ましい。これにより、より高強度のマグネシウム合金を得ることができる。
【0031】
(実施の形態2)
本実施の形態によるマグネシウム合金の製造方法について説明する。
まず、Znを含有し、GdおよびTbの少なくとも一つの元素を合計でRE原子%含有し、Al、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Dy、Ho、Er、TmおよびYbからなる群から選択された少なくとも一つのX元素を合計でX原子%含有し、残部がMgからなり、下記式(1)〜(4)を満たすマグネシウム合金を作製する。このマグネシウム合金は、溶解鋳造によって作製しても良いし、急速凝固によって作製しても良い。
(1)0.2≦[Zn(原子%)]≦5.0
(2)0.2≦[RE(原子%)]≦5.0
(3)2[Zn(原子%)]−3≦[RE(原子%)]
(4)0.05[RE(原子%)]≦[X(原子%)]<0.75[RE(原子%)]
【0032】
次に、このマグネシウム合金に溶体化する溶体化処理を行った後に、623〜773Kの温度範囲で0.5〜100時間の時効を行う熱処理を施す。これにより、マグネシウム合金に長周期積層構造または最密原子面積層欠陥を含む相を形成することができる。
【0033】
なお、ここで言う溶体化処理とは、鋳造時に不可避的に形成される第二相を母相になるべく固溶(溶体化)させる処理を言う。
【0034】
次に、長周期積層構造または最密原子面積層欠陥を含む相を析出させたマグネシウム合金に塑性加工を行う。この塑性加工の方法としては、例えば押出し、ECAE(equal−channel−angular−extrusion)加工法、圧延、引抜及び鍛造、これらの繰り返し加工、FSW加工などを用いる。
【0035】
押出しによる塑性加工を行う場合は、押出し温度を250℃以上500℃以下とし、押出しによる断面減少率を5%以上とすることが好ましい。
【0036】
ECAE加工法は、試料に均一なひずみを導入するためにパス毎に試料長手方向を90°ずつ回転させる方法である。具体的には、断面形状がL字状の成形孔を形成した成形用ダイの前記成形孔に、成形用材料であるマグネシウム合金鋳造物を強制的に進入させて、特にL状成形孔の90°に曲げられた部分で前記マグネシウム合金鋳造物に応力を加えて強度及び靭性が優れた成形体を得る方法である。ECAEのパス回数としては1〜8パスが好ましい。より好ましくは3〜5パスである。ECAEの加工時の温度は250℃以上500℃以下が好ましい。
【0037】
圧延による塑性加工を行う場合は、圧延温度を250℃以上500℃以下とし、圧下率を5%以上とすることが好ましい。
【0038】
引抜加工による塑性加工を行う場合は、引抜加工を行う際の温度が250℃以上500℃以下、前記引抜加工の断面減少率が5%以上であることが好ましい。
【0039】
鍛造による塑性加工を行う場合は、鍛造加工を行う際の温度が250℃以上500℃以下、前記鍛造加工の加工率が5%以上であることが好ましい。
【0040】
上記のようにマグネシウム合金に塑性加工を行った塑性加工物は、常温において長周期積層構造または最密原子面積層欠陥を含む相を備えた結晶組織を有し、この長周期積層構造または最密原子面積層欠陥を含む相の少なくとも一部は湾曲又は屈曲している。この湾曲又または屈曲は、長周期積層構造または最密原子面積層欠陥を含む相がキンキングしていることであっても良い。キンキングとは、強加工された長周期積層構造または最密原子面積層欠陥を含む相が特に方位関係を持たず、相内で折れ曲がり(bent)を生じ、長周期積層構造または最密原子面積層欠陥を含む相が微細化されることである。
【0041】
また、前記塑性加工物はhcp構造マグネシウム相を有する。
前記塑性加工物については、塑性加工を行う前のマグネシウム合金材に比べてビッカース硬度及び降伏強度がともに上昇する。
【0042】
本実施の形態によれば、マグネシウム合金に長周期積層構造または最密原子面積層欠陥を含む相を有する結晶組織を形成するため、強度及び靭性ともに実用に供するレベルにある高強度高靭性なマグネシウム合金を得ることができる。そして、上記のX元素を上記の範囲内で微量添加することで高強度および高靭性を有しつつ耐食性を著しく向上させることができる。
また、耐食性については、塑性加工の前後でほとんど変化が無い。つまり、塑性加工の前のマグネシウム合金および塑性加工後のマグネシウム合金はともに高い耐食性を有している。
【0043】
(実施の形態3)
本実施の形態によるマグネシウム合金は、実施の形態2と同様の方法により長周期積層構造または最密原子面積層欠陥を含む相を形成したマグネシウム合金材を用意し、このマグネシウム合金材を切削することによって作られた複数の数mm角以下のチップ形状の切削物を作製し、この切削物に塑性加工による固化を行ったものである。
【0044】
本実施の形態においても実施の形態2と同様の効果を得ることができる。
【0045】
なお、上記の実施の形態1〜3に係るマグネシウム合金は、高温雰囲気で使用される部品、例えば、自動車用部品、特に内燃機関用ピストン、バルブ、リフター、タペット、スプロケット灯等に使用することができる。
【実施例】
【0046】
Arガス雰囲気中で高周波溶解によってMg97Zn1Gd1.9X0.1 (at%)のインゴットを作製し、このインゴットからφ10×60mmの形状に切り出すことにより鋳造材のサンプル(A.C.)を作製した。X元素は、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Alのいずれかである。
【0047】
また、この切り出した鋳造材に溶体化処理を行った溶体化処理材のサンプル(S.T.)を作製した。溶体化処理条件は、793Kの温度で2時間の処理時間とした。
【0048】
また、上記の溶体化処理後に、時効処理を行った時効処理材のサンプル(H.T.)を作製した。詳細には、773Kの温度で10時間の時効処理を行ったサンプルを作製し、673Kの温度で10時間の時効処理を行ったサンプルを作製した。
【0049】
これらのサンプルに塩水浸漬試験を行った。塩水浸漬試験は、大気開放した温度が298Kの0.17 M NaCl aq.の塩水にサンプルを浸漬させ、そのサンプルの腐食速度を測定する試験である。その試験結果を
図1に示す。
図1の横軸は、Mg97Zn1Gd1.9X0.1(at%)における添加したX元素であり、縦軸は腐食速度である。ただし、
図1の横軸のGdは、Mg97Zn1Gd2(at%)のサンプルを示している。
【0050】
図1により以下のことが確認された。
鋳造まま材(A.C.)では、どの合金も耐食性は低いが、Al添加材のみ高耐食性を示している。
また、溶体化処理材(S.T.)では、X元素がY、Dy、Ho、Tm、Yb、Alのサンプルは高耐食性を示している。
また、773Kの時効処理材(H.T.)では、X元素がAl、Tb、Dy、Tm、Ybのサンプルは高耐食性を示している。
また、673Kの時効処理材(H.T.)では、X元素がAl、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbのサンプルはMg−Zn−Gd三元系よりも高耐食性を示している。
【0051】
図2(A)および
図3(A)には、773Kの時効処理材(H.T.)のX線回折図形を示す。詳細には、
図2(A)は、773Kの時効処理材(H.T.)において長周期積層構造相(LPSO相)が形成されている合金群を示し、
図3(A)は、773Kの時効処理材(H.T.)においてLPSO相が消失しMg
17RE
2化合物が形成されている合金群を示している。また、
図2(B)および
図3(B)は、Mg97Zn1Gd2 (at%)の三元合金の顕微鏡写真を示している。
図2(C)は、X元素がAlのサンプルの顕微鏡写真を示し、
図3(C)は、X元素がNdのサンプルの顕微鏡写真を示している。
【0052】
図2(A)および
図3(A)に示すように、773Kの時効処理材(H.T.)で耐食性が低くなった合金には、LPSO相が観察されず、Mg−RE化合物が形成されていることがわかり、これが耐食性低下の原因であると考えられる。
【0053】
図4は、高耐食性を示したMg97Zn1Gd1.9Al0.1合金の773Kの時効処理材の動電位分極曲線を示す図である。塩水浸漬時間の増加に伴い、アノード電流密度の低下が確認され、その耐食性の向上が電気化学的にも確認された。
【0054】
図5は、高耐食性を示したMg97Zn1Gd1.9Al0.1合金の773Kの時効処理材の腐食電位、孔食電位および孔食電流密度の経時変化を示す図である。
図6は、Mg97Zn1Gd2の三元系合金の773Kの時効処理材の腐食電位、孔食電位および孔食電流密度の経時変化を示す図である。
図6に示すように、三元系合金では糸状腐食の進展が開始されるが、
図5に示すように、Alを添加した合金ではAl添加による皮膜改質効果が確認された。
【0055】
Mg−Zn−Gdの三元系合金にAlを添加することは、合金の耐食皮膜形成に有効であるが、Al−RE系化合物を形成し、Gdを消費してしまうため、LPSO相の形成を阻害する。そこで、RE(希土類元素)およびAlの添加量を、LPSO相を保持することができ、且つ耐食性を付与できる量とすることによって機械的性質および耐食性に優れたマグネシウム合金を実現することができる。
【0056】
なお、特許文献1に記載された発明は、Mg-Al-Zn-Y合金を含んでいるが、Alの添加量が0〜15原子%と広く、急速凝固プロセスによって固溶限を拡大した場合にしか、良い特性が得られない。これに対し、本発明は、AlのMgに対する固溶限が急速凝固時よりも小さい鋳造プロセスによっても強度と延性と耐食性を兼ね備えるため、LPSO相以外のMg−RE化合物、Al−RE化合物の生成量が少なく、機械的特性、特に延性に悪影響を与えずに耐食性を高めることができる。言い換えると、Al、RE等の耐食性を向上させる元素を添加しても、LPSO相を保持することができる。