(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
外部電源からケーブルを介して電力の供給を受けて動作する電動式作業機械が作業する作業場において、無人で走行する車両の走行を禁止する走行禁止領域を設定するにあたり、
コンピュータに、
前記電動式作業機械の位置に関する情報と、前記ケーブルを支持する支持体の位置に関する情報と、前記電動式作業機械から前記支持体までのケーブルの長さとに少なくとも基づいて、前記ケーブルの位置を推定する手順と、
推定された前記ケーブルの位置に基づいて、前記走行禁止領域を設定する手順と、
前記電動式作業機械の位置と前記支持体の位置とを通る線であって、前記ケーブルの長さと同じ長さの線である推定線に基づき前記ケーブルの位置を推定する手順と、
を実行させ、
さらに、前記電動式作業機械の移動距離が予め定めた移動距離閾値を超えた場合毎に、前記推定線を算出するものであって、前記電動式作業機械の位置と前記支持体の位置とを通る線であって、前記ケーブルの長さと同じ長さの線が曲線であった場合に、前記電動式作業機械の位置と前記支持体の位置とを結んだ直線に対して、前記曲線の頂点の位置が前回算出した推定線の頂点の位置と同じ側にある曲線を、前記推定線とする手順を実行させる、無人走行車両の走行禁止領域設定用コンピュータプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0021】
<無人走行車両の走行禁止領域設定システムの適用現場>
図1は、本実施形態に係る管理装置が適用される現場を示す図である。本実施形態において、無人走行車両の走行禁止領域設定システム100に含まれる管理装置10は、作業場としての鉱山の採掘場1を走行したり作業したりする無人走行車両の走行禁止領域を設定する際に用いられる。なお、無人走行車両の走行禁止領域設定システム100は、適用対象が鉱山に限定されるものではなく、例えば、造成、プラント、工場、空港又は港湾等の建設現場等において使用される機器の走行禁止領域を設定する場合であっても適用することができる。
【0022】
採掘場1は、採掘側1Gと、入口側1Iと、側部1Ba、1Bbとで囲まれている。なお、本実施形態に示す採掘場1は、あくまで一例であり、実際には様々な形態の採掘場がある。採掘場1においては、鉱石等を採掘する採掘機械としてのショベル2及び鉱石又は鉱石の採掘時に発生した土砂若しくは岩石等を運搬する運搬車両としてのダンプトラック3等が作業をしている。ダンプトラック3は、後述するように、無人で走行及び排土等が可能な無人走行車両である。また、後述するように、ショベル2は、電気によって駆動される電気駆動式の機械である。このため、ケーブル7を介して電源としての外部電源部(例えば、送電線)6から電力の供給を受ける。このように、ショベル2は、電源からケーブル7を介して電力の供給を受けて動作する電気式作業機械に相当する。また、本実施形態において、ショベル2は、無人で採掘及び走行等が可能である。
【0023】
ダンプトラック3は、ショベル2が採掘した鉱石又は鉱石の採掘時に発生した土砂若しくは岩石等を荷台に積み込んで運搬する。本実施形態において、ダンプトラック3は、無人で走行することができる。また、ダンプトラック3は、鉱山の採掘場1で使用される機械(鉱山機械)であるので、主として未舗装路を走行する。本実施形態において、ショベル2は、中継支持体としての電力中継台車4が有するケーブル7を介して外部電源部6から電力の供給を受ける。中継支持体とは、後述する支持体(支持柱5)と電動式作業機械(ショベル2)との間に配置されて、ケーブル7を移動可能に支持する装置であって、自走できてもよいし、他の手段によって移動できるものであってもよい。電力中継台車4は、採掘場1にケーブル7が引き込まれる位置に立設してケーブル7を支持する支持体としての支持柱5とショベル2との間でケーブル7の長さを調整するとともに、無人で走行できる装置である。以下においては、必要に応じて、電力中継台車4よりもショベル2側のケーブル7を第1ケーブル7Aといい、電力中継台車4よりも支持柱5側のケーブル7を第2ケーブル7Bという。なお、本実施形態において、電力中継台車4は必ずしも必要ではない。
【0024】
ショベル2は、ショベル制御装置2Pによって制御される。ダンプトラック3は、ダンプ制御装置3Pによって制御される。また、電力中継台車4は、中継台車制御装置4Pによって制御される。ショベル制御装置2P、ダンプ制御装置3P及び中継台車制御装置4Pは、例えば、MCU(Micro Control Unit)である。ショベル2、ダンプトラック3及び電力中継台車4は、GPS(Global Positioning System:全方位測位システム)衛星8a、8b、8cからの電波を受信し、自己位置を把握する機能を有している。ショベル2、ダンプトラック3及び電力中継台車4が把握した自己位置は、管理装置10に送られて、これらを制御したり管理したりするために用いられる。
【0025】
ショベル2、ダンプトラック3及び電力中継台車4は、GPS衛星8a、8b、8cからの電波を受信するために、それぞれGPS用アンテナ2A、3A、4Aを有している。また、ショベル2、ダンプトラック3及び電力中継台車4は、管理装置10と無線で情報のやり取りをするために、それぞれ、無線通信用アンテナ2B、3B、4Bを有している。管理装置10は、無線通信用アンテナ2B、3B、4B、管理装置側無線通信用アンテナ18A及び通信装置18を介した無線通信によって、ショベル制御装置2P、ダンプ制御装置3P及び中継台車制御装置4Pと直接情報のやり取りをする。なお、管理装置10は、通信回線を介してショベル制御装置2P、ダンプ制御装置3P及び中継台車制御装置4Pと情報のやり取りをしてもよい。
【0026】
本実施形態において、ダンプトラック3及び電力中継台車4は、無人で走行等が可能であり、管理装置10によって動作が制御されるものである。また、ショベル2は、作業者の操作により運転されて動作が制御される。
【0027】
採掘場1内において、ショベル2が採掘した鉱石等は、ダンプトラック3によって採掘場1の外部に運び出される。このため、ダンプトラック3は、採掘場1に通じる通路9を通って採掘場1内に進入し、採掘場1内をショベル2の位置まで走行する。ショベル2によって鉱石等が積み込まれたダンプトラック3は、採掘場1内から通路9を通って鉱石の集積場又は排土場へ走行する。本実施形態において、ダンプトラック3は、無人で走行等するため、管理装置10が予め設定した走行経路PLに沿って走行する。
【0028】
本実施形態において、ショベル2は、外部電源部6から電力の供給を受けるため、採掘場1内にケーブル7が配置されている。ケーブル7の上をダンプトラック3又はショベル2が通過すると、ケーブル7の耐久性低下を招くおそれがあるので、ケーブル7を基準とした所定範囲は、ショベル2及びダンプトラック3等の車両の走行を禁止する走行禁止領域DAとする。本実施形態では、ケーブル7を中心として両側に所定距離だけ離れ、かつケーブル7に沿った境界線BLで囲まれる領域を、走行禁止領域DAとする。そして、採掘場1の走行禁止領域DA以外の領域を、ショベル2及びダンプトラック3等の車両の走行が可能である走行可能領域PAとする。このようにして、ショベル2及びダンプトラック3等は、走行可能領域PAのみを走行し、走行禁止領域DAには進入しないようにする。また、管理装置10は、ダンプトラック3の走行経路PLを生成する場合、採掘場1の走行禁止領域DAを除き、走行可能領域PA内に走行経路PLを生成する。なお、電力中継台車4は、走行禁止領域DAへの進入及び走行は可能である。
【0029】
<管理装置>
図2は、本実施形態に係る管理装置を示す機能ブロック図である。管理装置10は、処理装置11と、表示装置16と、入力装置17と、通信装置18とを含む。処理装置11は、演算部12と、記憶部13と、入出力部(I/O)15とを含む。処理装置11は、例えば、コンピュータである。演算部12は、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。記憶部13は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ等である。入出力部15は、処理装置11と、処理装置11の外部に接続する表示装置16、入力装置17及び通信装置18との情報の入出力に用いられる。
【0030】
演算部12は、ケーブル位置推定部12Aと、禁止領域設定部12Bと、中継位置移動情報生成部12Cと、走行経路生成部12Dとを含む。ケーブル位置推定部12Aは、ショベル2の位置に関する情報としての機器位置情報と、ケーブル7を支持する支持柱5の位置に関する情報と、ショベル2から支持柱5までのケーブル7の長さとに少なくとも基づいて、ケーブル7の位置を推定する。なお、ケーブル位置推定部12Aは、ショベル2と支持柱5との間における少なくとも二箇所の位置に関する情報と、ショベル2から支持柱5までのケーブル7の長さとに少なくとも基づいて、ケーブル7の位置を推定することもできる。
【0031】
禁止領域設定部12Bは、ケーブル位置推定部12Aが推定したケーブル7の位置に基づいて、車両の走行を禁止する走行禁止領域DAとして設定する。中継位置移動情報生成部12Cは、電力中継台車4とショベル2との間のケーブル7(第1ケーブル7A)に沿った方向を、電力中継台車4が移動する方向とする。走行経路生成部12Dは、採掘場1の位置に関する情報(採掘場位置情報)と、走行禁止領域DAの位置に関する情報(走行禁止領域位置情報)とに基づいて、ダンプトラック3が採掘場1内を走行する際の走行経路PLを生成する。ケーブル位置推定部12A、禁止領域設定部12B、中継位置移動情報生成部12C及び走行経路生成部12Dの機能は、コンピュータである処理装置11がケーブル位置推定部12A等の機能を実現するための無人走行車両の走行禁止領域設定用コンピュータプログラムを記憶部13から読み込んで実行することにより実現される。記憶部13は、前記コンピュータプログラム及びデータベース(DB)14等を記憶する。データベース14は、ショベル2、ダンプトラック3及び電力中継台車4等の運行管理に用いる情報が記述されたデータベースである。
【0032】
表示装置16は、例えば、液晶ディスプレイ等であり、ショベル2、ダンプトラック3及び電力中継台車4の運行管理を行う際に必要な情報を表示する。入力装置17は、例えば、キーボード、タッチパネル又はマウス等であり、ショベル2、ダンプトラック3及び電力中継台車4の運行管理を行う際に必要な情報を入力する。通信装置18は、管理装置側無線通信用アンテナ18Aを有しており、上述したショベル制御装置2P、ダンプ制御装置3P及び中継台車制御装置4Pと、無線通信により情報のやり取りをする。次に、ショベル2の構造を説明する。
【0033】
<ショベルの構造>
図3は、本実施形態に係るショベルの構造の一例を示す模式図である。上述したように、ショベル2は電気駆動式パワーショベルである。ショベル2は、作業者が搭乗して運転することにより、動作が制御される。ショベル2は、ショベル制御装置2Pと、電動機制御装置21と、一対の履帯22と、2つの走行用電動機23と、旋回用電動機24と、油圧生成用電動機25と、油圧ポンプ26と、GPS用アンテナ2Aと、無線通信用アンテナ2Bとを含む。
【0034】
ショベル2は、2つの走行用電動機23によってそれぞれの履帯22を駆動することにより走行する。また、旋回用電動機24は、ショベル2の上部旋回体を旋回させる。油圧生成用電動機25は、油圧ポンプ26を駆動して、ショベル2が有する作業機(ブーム、アーム及びバケットを含む装置)の駆動に必要な油圧を生成する。電動機制御装置21は、電力中継台車4を介して
図1に示す外部電源部6から電力の供給を受ける。そして、電動機制御装置21は、ショベル制御装置2Pからの指令により、走行用電動機23と、旋回用電動機24と、油圧生成用電動機25とに電力を供給してこれらを駆動する。
【0035】
ショベル制御装置2Pは、電動機制御装置21を制御して、走行用電動機23、旋回用電動機24及び油圧生成用電動機25の駆動又は回生を制御する。ショベル2の制動及びショベル2が有する上部旋回体の停止によって、走行用電動機23及び旋回用電動機24は電力を発生する(回生)。ショベル制御装置2Pは、電動機制御装置21を制御して、走行用電動機23及び旋回用電動機24が発生した電力を、電力中継台車4を介して電力の供給系統に戻す。また、ショベル制御装置2Pは、無線通信用アンテナ2Bを介して、
図1に示す管理装置10と情報のやり取りをしたり、GPS用アンテナ2Aから得られたGPS衛星8a、8b、8cからの電波によって自己位置を求めて管理装置10へ送信したりする。このように、ショベル制御装置2Pは、ショベル2の位置に関する情報を検出する作業機械位置検出装置としての機能を有する。また、ショベル制御装置2Pは、自身が検出したショベル2の位置に関する情報を送信する作業機械通信装置としての機能も有する。
【0036】
本実施形態において、電動機で駆動されるショベル2の要素は、上述したものに限定されるものではない。例えば、ショベル2は、履帯22の駆動のみに電動機を用いてもよいし、作業機の駆動のみに電動機を用いてもよいし、上部旋回体の旋回のみに電動機を用いてもよい。また、ショベル2は、履帯22と、作業機と、上部旋回体との少なくとも1つの駆動に電動機を用いてもよい。例えば、作業機の駆動に電動機を用いた場合、ブームが下がるときに電動機を駆動して、電力を発生させることができる。
【0037】
本実施形態において、ショベル制御装置2Pは、作業者の操作に従ってショベル2を走行させたり、ショベル2に鉱石又は土砂等を掘削させたりする。なお、管理装置10がショベル制御装置2Pを遠隔制御することにより、ショベル2の動作が制御されてもよい。また、ショベル制御装置2Pは、管理装置10の記憶部13からショベル2の走行又は掘削に関する情報を取得するとともに、GPS衛星8a、8b、8cからの電波により自身の位置を認識しながら、ショベル2を走行させたりショベル2に掘削させたりするものであってもよい。
【0038】
<ダンプトラックの構造>
図4は、本実施形態に係るダンプトラックの構造の一例を示す模式図である。ダンプトラック3は、ダンプ制御装置3Pと、複数(本実施形態では4個)の車輪31と、それぞれの車輪31を駆動する電動機32と、内燃機関33と、発電機34と、電動機制御装置35と、GPS用アンテナ2Aと、無線通信用アンテナ2Bとを含む。ダンプトラック3の駆動形式は、車輪31の内周側に電動機32が配置される、いわゆるインホイールモータ形式であるが、これに限定されるものではない。また、ダンプトラック3は、すべての車輪31に電動機32を備えているが、例えば、後輪2輪又は前輪2輪のみに電動機32を備えていてもよい。ダンプトラック3は、4個の車輪31のうち、少なくとも2輪が操舵輪となるが、すべての車輪31が操舵輪となってもよい。それぞれの電動機32は、内燃機関33によって駆動される発電機34が生み出した電力によって駆動される。
【0039】
発電機34が生み出した電力(交流電力)は、インバータを有する電動機制御装置35に入力されてから、複数の電動機32に供給されてこれらを駆動する。ダンプ制御装置3Pは、電動機制御装置35を制御して、それぞれの電動機32の駆動又は回生を制御する。電動機制御装置35は、集電装置36とも接続されている。電動機制御装置35は、集電装置36を介して架線TLから電力の供給を受けて、電動機32を駆動することもできる。また、ダンプトラック3が制動する場合に電動機32を発電機として用いることにより、電動機32はダンプトラック3を制動しつつ、電力を発生させる(回生)ことができる。このときに発生した電力は、例えば、ダンプトラック3に搭載されるキャパシタ又は二次電池等の蓄電装置に充電される。
【0040】
ダンプ制御装置3Pは、無線通信用アンテナ2Bを介して、
図1に示す管理装置10と情報のやり取りをする。また、ダンプ制御装置3Pは、内燃機関33が発電機34を駆動することによって得られた電力によって電動機32を駆動する。また、ダンプ制御装置3Pは、無線通信用アンテナ3Bを介して、
図1に示す管理装置10と情報のやり取りをしたり、GPS用アンテナ3Aから得られたGPS衛星8a、8b、8cからの電波によって自己位置を求めて管理装置10へ送信したりする。このように、ダンプ制御装置3Pは、ダンプトラック3の位置に関する情報を検出する無人車両位置検出装置としての機能を有する。また、ダンプ制御装置3Pは、自身が検出したダンプトラック3の位置に関する情報を送信する無人車両通信装置としての機能も有する。
【0041】
本実施形態において、ダンプ制御装置3Pは、管理装置10からの指令に従ってダンプトラック3を走行させたり、積荷である鉱石等を下ろしたりする。このように、ダンプ制御装置3Pは、管理装置10によって遠隔操作される。また、ダンプ制御装置3は、管理装置10の記憶部13から走行経路PLを取得するとともに、GPS衛星8a、8b、8cからの電波により自身の位置を認識しながら、走行経路PLに従ってダンプトラック3を走行させるものであってもよい。
【0042】
<電力中継台車の構造>
図5−1は、本実施形態に係る電力中継台車の構造の一例を示す模式図である。電力中継台車4は、走行装置40と、台車43と、第1ケーブルドラム44Aと、第2ケーブルドラム44Bと、中継台車制御装置4Pと、ケーブル7が接続される送電中継部45と、GPS用アンテナ4Aと、無線通信用アンテナ4Bと、通信装置46と、を含む。走行装置40は、左右一対の履帯41と、電力によって動力を発生して履帯41を駆動させる左右一対の走行用電動機42とを有している。走行装置40は、台車43と連結されている。走行装置40は、走行用電動機42に履帯41が駆動させることにより、電力中継台車4を走行させる。走行装置40は、履帯41を用いる履帯式が好ましいが、タイヤを用いる等、履帯式以外であってもよい。このように、電力中継台車4は、走行装置40によって走行し、移動することができる。
【0043】
第1ケーブルドラム44Aは、第1ケーブル7Aの巻取り及び送り出しが可能な装置であり、第2ケーブルドラム44Bは、第2ケーブル7Bの巻取り及び送り出しが可能な装置である。第1ケーブルドラム44A及び第2ケーブルドラム44Bは、いずれも台車43に搭載されている。第1ケーブルドラム44A及び第2ケーブルドラム44Bは、円筒形状の軸部を有しており、内部が中空構造となっている。前記軸部の一部には、前記軸部の内部と外部とを連通する開口部が形成されている。また、第1ケーブルドラム44Aと第2ケーブルドラム44Bとは、これらが第1ケーブル7Aと第2ケーブル7Bとの巻取り又は送り出しを行う場合に、軸部の軸方向における巻取り範囲を規制するガイド部を有している。前記ガイド部は、円板形状の部材であり、軸部の両端付近に設けられている。前記円板の中心軸は、前記軸部の中心軸と一致している。第1ケーブル7A及び第2ケーブル7Bは、いずれも一端が、前記軸部の開口部から軸部の内部に入り込んでいる。このような構造により、第1ケーブルドラム44Aと第2ケーブルドラム44Bとは、第1ケーブル7Aと第2ケーブル7Bとを巻き取ることができるとともに、送り出すこともできる。
【0044】
第1ケーブル7Aと第2ケーブル7Bとは、第1ケーブルドラム44Aの軸部の内部と第2ケーブルドラム44Bと34の軸部の内部とに入り込んでいる側の端部がそれぞれの軸部の端一方の部から軸部の外部に引き出され、台車43が保持する送電中継部45に接続されている。このように、第1ケーブル7Aと第2ケーブル7Bとが接続される送電中継部45は、第1ケーブル7Aと第2ケーブル7Bとを中継する。なお、送電中継部45は、単に第1ケーブル7Aと第2ケーブル7Bとの間において電気的な中継のみを行う装置であってもよいし、電力中継台車4を制御する中継台車制御装置4Pが送電中継部45を兼ねていてもよい。
【0045】
第1ケーブルドラム44Aと第2ケーブルドラム44Bとは、ケーブル駆動用電動機が連結されている。前記ケーブル駆動用電動機は、第1ケーブルドラム44Aと第2ケーブルドラム44Bとを、それぞれの中心軸を回転軸として回転させる。このような構造により、第1ケーブルドラム44Aと第2ケーブルドラム44Bとは、それぞれ第1ケーブル7Aと第2ケーブル7Bとの巻取り及びや送り出しを行うことができる。
【0046】
第1ケーブルドラム44Aと第2ケーブルドラム44Bとは、いずれも履帯41を駆動する走行用電動機42の入出力軸に、第1ケーブルドラム44A及び第2ケーブルドラム44Bの回転軸が直交し、かつ前記回転軸同士が電力中継台車4の前後方向に対して平行となるように配置される。第1ケーブル7Aは、送電中継部45に接続されている側の端部とは反対側の端部がショベル2と電気的に接続されており、ショベル2との間で電力をやり取りする。第2ケーブル7Bは、送電中継部45に接続されている側の端部とは反対側の端部が、外部電源部6と電気的に接続されており、外部電源部6との間で電力をやり取りする。第1ケーブルドラム44と第2ケーブルドラム44Bとは、電力中継台車4の前後方向に対してそれぞれの回転軸が平行になるように配置されている。そして、第2ケーブル7Bと第1ケーブル7Aとは、電力中継台車4の前後方向において、互いに反対方向に向かって延出する。
【0047】
中継台車制御装置4Pは、走行用電動機42の動作を制御して電力中継台車4を走行又は停止させたり、前記ケーブル駆動用電動機を駆動させることにより、第1ケーブルドラム44Aと第2ケーブルドラム44Bとに第1ケーブル7Aと第2ケーブル7Bとの巻取り又は送り出しを行わせたりする。また、中継台車制御装置4Pは、通信装置46及び無線通信用アンテナ4Bを介して、
図1に示す管理装置10と情報のやり取りをする。さらに、中継台車制御装置4Pは、GPS用アンテナ4Aから得られたGPS衛星8a、8b、8cからの電波によって自己位置を求め、通信装置46及び無線通信用アンテナ4Bを介して管理装置10へ送信する。このように、中継台車制御装置4Pは、中継支持体の位置に関する情報を検出する中継支持体位置検出装置としての機能を有する。通信装置46は、中継台車制御装置4Pが検出した電力中継台車4の位置に関する情報を送信する中継支持体通信装置としての機能を有する。
【0048】
中継台車制御装置4Pは、管理装置10から得られた情報に基づいて電力中継台車4を走行等させたり、ケーブル7の巻取り又は送り出しを行ったりする。なお、電力中継台車4の構造は、このようなものに限定されるものではなく、ケーブル7の巻取り又は送り出しを行うドラムは1つであってもよい。
【0049】
本実施形態において、中継台車制御装置4Pは、管理装置10からの指令に従って電力中継台車4を走行させたり、ケーブル7を巻き取ったり送り出したりする。このように、中継台車制御装置4Pは、管理装置10によって遠隔操作される。また、中継台車制御装置4Pは、管理装置10の記憶部13から電力中継台車4の走行に関する情報を取得するとともに、GPS衛星8a、8b、8cからの電波により自身の位置を認識しながら、電力中継台車4走行させるものであってもよい。
【0050】
<中継支持体の変形例>
図5−2は、本実施形態に係る中継支持体の変形例を示す斜視図である。中継支持体としての移動中継支柱4Sは、支柱47と、ケーブル支持体48と、絶縁体48Sと、引上げ用フック48Fと、台座49とを含む。支柱47は、一方の端部が台座49に固定されており、他方の端部がケーブル支持体48に取り付けられている。ケーブル支持体48は、棒状の部材であり、両端部に絶縁体48Sが取り付けられている。絶縁体48Sは、
図1に示すケーブル7を支持するとともに、ケーブル7と、ケーブル支持体48、支柱47及び台座49との間を電気的に絶縁する。引上げ用フック48Fは、ケーブル支持体48の中央部近傍に取り付けられている。
【0051】
移動中継支柱4Sは、
図1に示す採掘場1に設置されて、支持柱5とショベル2との間でケーブル7を支持する。移動中継支柱4Sを移動させる場合、例えば、移動中継支柱4Sの引上げ用フック48Fを介して移動中継支柱4Sをクレーン等が引き上げて、採掘場1の異なる場所に移動させる。このように、中継支持体は、上述した電力中継台車4のように自走可能な装置に限定されるものではなく、移動中継支柱4Sのように他の移動手段によって移動できるものであってもよい。
【0052】
本実施形態において、移動中継支柱4Sは、移動中継支柱4Sの位置に関する情報を検出する中継支持体位置検出装置と、中継支持体位置検出装置が検出した移動中継支柱4Sの位置に関する情報を送信する中継支持体通信装置とを搭載していてもよい。前記中継支持体位置検出装置は、GPS用アンテナから得られたGPS衛星8a、8b、8cからの電波によって自己位置を求める。そして、前記中継支持体通信装置は、前記中継支持体位置検出装置が検出した移動中継支柱4Sの位置に関する情報を、通信用アンテナを介して
図2に示す管理装置10に送信する。管理装置10のケーブル位置推定部12Aは、取得した移動中継支柱4Sの位置に関する情報を用いて、ケーブル7の位置を推定する。
【0053】
また、移動中継支柱4Sは、前記中継支持体位置検出装置及び前記中継支持体通信装置を搭載していなくてもよい。この場合、作業者が移動中継支柱4Sを移動させる毎に移動中継支柱4の位置に関する情報を、例えば、GPS衛星8a、8b、8cから取得する。そして、作業者は、取得した移動中継支柱4の位置に関する情報を、管理装置10の記憶部13に保存することにより更新する。次に、本実施形態に係る無人走行車両の走行禁止領域設定方法(走行禁止領域の設定方法)を説明する。
【0054】
<走行禁止領域の設定方法>
図6は、本実施形態に係る走行禁止領域の設定方法を示すフローチャートである。
図7は、本実施形態に係る走行禁止領域の設定方法を示す説明図である。本実施形態に係る走行禁止領域の設定方法は、
図1に示す無人走行車両の走行禁止領域設定システム100において、管理装置10が実現する。すなわち、
図2に示す管理装置10の演算部12は、記憶部13に保存されている無人走行車両の走行禁止領域設定用コンピュータプログラムを読み込んで実行することにより、本実施形態に係る走行禁止領域の設定方法を実現する。次の説明において、電力中継台車4は1台であるが、電力中継台車4の台数は1台に限定されるものではない。本実施形態に係る走行禁止領域の設定方法を実行するにあたり、管理装置10は、ステップS101において、初期値に変更があった場合(ステップS101、Yes)、処理をステップS102へ進め、初期値に変更がなかった場合(ステップS101、No)、処理をステップS103へ進める。
【0055】
初期値に変更があった場合(ステップS101、Yes)、ステップS102において、管理装置10に対して初期値が設定される。初期値は、作業者が管理装置10の入力装置17を操作することにより、入力装置17が記憶部13に入力する。初期値の変更には、初期値が存在しない状態から管理装置10へ初期値を入力する場合も含まれる。
【0056】
本実施形態において、初期値は、例えば、採掘開始前におけるショベル2の位置、電力中継台車4の位置、支持柱5の位置、支持柱5からショベル2までのケーブル7の長さ及びケーブル7の位置等である。初期値は、採掘開始前に一度設定されると、通常はその採掘場における採掘が終了するまでは変更されず、異なる採掘場にショベル2等が移動した場合には、新たに設定される。なお、採掘場において、ショベル2等の位置が大きく移動したり、ケーブル7又は電力中継台車4を交換したりしたような場合には、初期値が設定し直されることがある。
【0057】
例えば、
図7に示すように、ショベル2の位置、電力中継台車4の位置、支持柱5の位置、ケーブル7の位置等は、x−y座標を用いて表される。この例において、ショベル2の位置の初期値(初期位置)をPa0(x、y)、支持柱5の位置の初期値(初期位置)をPb0(x、y)、電力中継台車4の位置の初期値(初期位置)をPc0(x、y)とする。支持柱5とショベル2との間には電力中継台車4が配置されているので、ケーブル7の長さの初期値(初期長さ)L0は、第1ケーブル7Aの長さの初期値(初期長さ)L0Aと第2ケーブル7Bの長さの初期値(初期長さ)L0Bとの和である。すなわち、L0=L0A+L0Bである。ケーブル7の初期位置は、例えば、採掘開始前におけるケーブル7の位置を、支持柱5からショベル2までの間において所定間隔で計測した座標の集合体である。これらの座標の集合体を、例えば所定の関数(2次関数又は3次関数等)で近似してケーブル7の初期位置としてもよい。電力中継台車4を介してショベル2へ電力を供給する場合、ケーブル7の初期位置は、第1ケーブル7Aと第2ケーブル7Bとのそれぞれについて求められ、設定される。ショベル2の初期位置Pa0(x、y)及び電力中継台車4の初期位置Pc0(x、y)等は、現地で実際に計測した値を用いてもよいし、ショベル2及び電力中継台車4等が有するGPSアンテナ2A、4A等を介して取得したショベル2及び電力中継台車4等の位置情報を用いてもよい。
【0058】
ステップS102で初期値が設定された場合又はステップS101において本実施形態に係る走行禁止領域の設定方法の実行開始時における初期値に変更がない場合、管理装置10は、処理をステップS103に進める。ステップS103において、管理装置10のケーブル位置推定部12Aは、ケーブル位置の更新要求があった場合(ステップS103、Yes)、ステップS104を実行する。ステップS103において、ケーブル位置の更新要求がない場合(ステップS103、No)、管理装置10は、本実施形態に係る走行禁止領域の設定方法を再び最初から実行する。
【0059】
ケーブル位置の更新要求があった場合とは、本実施形態に係る走行禁止領域の設定方法において、ケーブル7の位置の更新を要求するフラグ(更新要求フラグ)が生成された場合である。更新要求フラグは、例えば、ショベル2と電力中継台車4との少なくとも一方の移動距離が予め定めた移動距離閾値を超えた場合に生成される。このような場合、ケーブル7の移動量が大きいため、
図1に示す走行禁止領域DAを設定し直す必要があると判断できる。このため、このような場合、管理装置10は、ケーブル7の位置を更新するとともに、走行禁止領域DAを設定し直す。
【0060】
図7において、ショベル2が初期位置Pa0(x、y)から矢印m1で示す方向に移動し、電力中継台車4が初期位置Pc0(x、y)から矢印m2で示す方向に移動距離閾値を超えて移動したとする。移動後におけるショベル2の位置をPa1(x、y)とし、電力中継台車4の位置をPc1(x、y)とする。支持柱5の位置は変化しないので、Pb0(x、y)である。この場合、ケーブル位置の更新要求があるので(ステップS103、Yes)、ケーブル位置推定部12Aは、ステップS104において、ショベル2及び電力中継台車4の位置情報を取得する。この場合、例えば、ケーブル位置推定部12Aは、通信装置18を介してショベル2及び電力中継台車4に、自身の位置情報を送信するように指令を送信する。すると、ショベル2のショベル制御装置2P及び電力中継台車4の中継台車制御装置4Pは、GPS衛星8a、9b、9cから電波を取得し、自身の位置(位置情報)を算出して、無線通信用アンテナ2B、4Bから管理装置10の管理装置側無線通信用アンテナ18Aへ送信する。ケーブル位置推定部12Aは、通信装置18を介してショベル2及び電力中継台車4の位置情報を取得する。ショベル2の位置情報は、移動後における座標Pa1(x、y)であり、電力中継台車4の位置情報は、移動後における座標Pc1(x、y)である。電力中継台車4が、第1ケーブル7A又は第2ケーブル7Bの少なくとも一方の長さを変更した場合、ケーブル位置推定部12Aは、通信装置18を介して電力中継台車4の中継台車制御装置4Pからケーブル7の長さL1も取得する。この例においては、ショベル2及び電力中継台車4の移動後における第1ケーブル7Aの長さをL1A、第2ケーブル7Bの長さをL1B、ケーブル7の長さをL1(=L1A+L2A)とする。
【0061】
次に、ステップS105へ進み、ケーブル位置推定部12Aは、移動後におけるショベル2の位置情報としての座標Pa1(x、y)と、移動後における電力中継台車4の位置情報としての座標Pc1(x、y)と、支持柱5の位置情報としての座標Pb0(x、y)と、移動後におけるケーブル7の長さL1(=L1A+L1B)とに基づいて、ショベル2等の移動後におけるケーブル7の位置を推定する。ケーブル7の位置を推定する手法は、例えば、ショベル2等の移動後における3個の座標Pa1(x、y)と、Pb0(x、y)と、Pc1(x、y)とを通る関数を、例えば、補間(例えば、スプライン補間)により求める方法がある。このとき、移動後におけるショベル2の座標Pa1(x、y)と支持柱5の座標Pb0(x、y)との間におけるケーブル7の長さは、L1になるという条件を与える。移動の前後でケーブル7の長さが変化しない場合は、移動後におけるケーブル7の長さL1としては、移動前の値が用いられる。
【0062】
ケーブル位置推定部12Aは、ケーブル7の長さがL1になるという条件の下で、3個の座標Pa1(x、y)と、Pb0(x、y)と、Pc1(x、y)とを通る関数を求める。
図7の二点鎖線で示すケーブル7は、3個の座標Pa1(x、y)と、Pb0(x、y)と、Pc1(x、y)とを通るとともに、長さがL1になる。このため、ケーブル位置推定部12Aは、二点鎖線のケーブル7を表す関数を、移動後におけるケーブル7の位置として、記憶部13に記憶されているケーブル7の位置を置き換える。このようにして、ケーブル位置推定部12Aは、ショベル2等が移動した後におけるケーブル7の位置を推定し、移動前におけるケーブル7の位置を更新する。
【0063】
なお、
図7の点線で示すケーブル7aは、3個の座標Pa1(x、y)と、Pb0(x、y)と、Pc1(x、y)を通るが、ケーブル7aの長さL2がL1とは異なる(この例ではL2>L1)なので、移動後におけるケーブル7の位置としては除外される。この場合、ケーブル位置推定部12Aは、推定したケーブル7aの長さL2と、推定に用いたケーブル7の長さL1との差が所定の閾値を超えた場合に、長さがL2となるようなケーブル7aを、ショベル2等の移動後におけるケーブル7の候補としては除外する。このように、ケーブル位置推定部12Aは、移動前におけるケーブル7の長さL1を拘束条件として用いることにより、移動後におけるケーブル7の位置をより正確に推定することができる。
【0064】
(ケーブルの位置を推定する手法の第1変形例)
図8は、本実施形態に係る走行禁止領域の設定方法において、ケーブルの位置を推定する手法の第1変形例を示す説明図である。上述した例において、ケーブル位置推定部12Aは、ショベル2の位置に関する情報と、電力中継台車4の位置に関する情報と、支持柱5の位置に関する情報とを用いて推定した。すなわち、ケーブル位置推定部12Aは、ショベル2と支持柱5との間における三箇所の位置に関する情報(ケーブル7の両端部の位置、すなわち、ショベル2の位置及び支持柱5の位置情報を含む)を用いてケーブル7の位置を推定した。本変形例において、ケーブル位置推定部12Aは、ショベル2と支持柱5との間における二箇所の位置情報(ケーブル7の両端部の位置、すなわち、ショベル2の位置及び支持柱5の位置を含む)を用いてケーブル7の位置を推定する。
【0065】
本変形例において、ショベル2が
図8の矢印mで示す方向に移動したとする。ケーブル位置推定部12Aは、移動後におけるショベル2の位置情報としての座標Pa1(x、y)と、支持柱5の位置情報としての座標Pb0(x、y)と、移動後におけるケーブル7の長さL1とに基づいて、ショベル2等の移動後におけるケーブル7の位置を推定する。ケーブル7の位置を推定する手法は、例えば、ショベル2等の移動後における2個の座標Pa1(x、y)と、Pb0(x、y)とを通る関数を、例えば、補間(例えば、スプライン補間)により求める方法がある。このとき、移動後におけるショベル2の座標Pa1(x、y)と支持柱5の座標Pb0(x、y)との間におけるケーブル7の長さは、L1になるという条件を与える。移動の前後でケーブル7の長さが変化しない場合は、移動後におけるケーブル7の長さL1としては、移動前の値が用いられる。
【0066】
ケーブル位置推定部12Aは、ケーブル7の長さがL1になるという条件の下で、2個の座標Pa1(x、y)と、Pb0(x、y)とを通る関数を求める。
図8の二点鎖線で示すケーブル7は、2個の座標Pa1(x、y)と、Pb0(x、y)とを通るとともに、長さがL1になる。このため、ケーブル位置推定部12Aは、二点鎖線のケーブル7を表す関数を、移動後におけるケーブル7の位置として、記憶部13に記憶されているケーブル7の位置を置き換える。このようにして、ケーブル位置推定部12Aは、ショベル2等が移動した後におけるケーブル7の位置を推定する。
【0067】
なお、
図8の点線で示すケーブル7aは、2個の座標Pa1(x、y)と、Pb0(x、y)とを通るが、ケーブル7aの長さL2がL1とは異なる(この例ではL2>L1)。このため、ケーブル位置推定部12Aは、ケーブル7aを、ショベル2の移動後におけるケーブル7としては除外する。また、
図8の点線で示すケーブル7bは、2個の座標Pa1(x、y)と、Pb0(x、y)とを通り、かつケーブル7bの長さはL1であり、推定に用いたケーブル7の長さL1と等しい。しかし、移動前におけるケーブル7は、x−y座標系において上に凸の形状になっているが、移動後におけるケーブル7bは、x−y座標系において下に凸の形状になっている。すなわち、ショベル2の移動前におけるケーブル7を示す関数の座標Pa0(x、y)と座標Pb0(x、y)との間における形状は、x−y座標系において上に凸であるのに対し、移動後におけるケーブル7bを示す関数の座標Pa1(x、y)と座標Pb1(x、y)との間における形状は下に凸に変化している。このように、ショベル2が移動した後のケーブル7bを表す関数の形状が、ケーブル7bの2つの座標間において、移動前のケーブル7を示す関数に対して正反対に変化した場合も、そのようなケーブル7bは、ショベル2の移動後におけるケーブル7としては除外される。
【0068】
(ケーブル位置を推定する手法の第2変形例)
図9−1から
図9−4は、本実施形態に係る走行禁止領域の設定方法において、ケーブルの位置を推定する手法の第2変形例を示す説明図である。本変形例において、ケーブル位置推定部12Aは、中継支持体としての電力中継台車4が移動したことによる電力中継台車4の位置変化の履歴を、電力中継台車4の位置に関する情報(中継点位置情報)として用いる。
図9−1から
図9−4は、ショベル2の移動にともなって電力中継台車4は第2ケーブル7Bを送り出しながら移動している例を示している。初期値は、ショベル2の初期位置は座標Pa0(x、y)であり、支持柱5の初期位置は座標Pb0(x、y)であり、電力中継台車4の初期位置は座標Pc(x、y)である。
【0069】
図9−2から
図9−3に示すように、ショベル2の位置は、座標Pa0(x、y)からPa1(x、y)、Pa2(x、y)、Pa3(x、y)の順に変化する。電力中継台車4の位置は、座標Pc0(x、y)からPc1(x、y)、Pc2(x、y)、Pc3(x、y)の順に変化する。これにともない、第2ケーブル7Bは、延長分7Be1、7Be2、7Be3が送り出される。第2ケーブル7Bの長さは、初期長さL0Bに、電力中継台車4の位置が変化するにしたがって、延長分L1B、L2B、L3Bを順次加算した値になる。この例では、第1ケーブル7Aの長さは変化しないが、この長さも変化してもよい。
【0070】
ショベル2が座標Pa3(x、y)まで移動したときのケーブル7の位置を推定する場合、ケーブル位置推定部12Aは、電力中継台車4が移動した履歴、すなわち、電力中継台車4が移動したときの異なる座標Pc0(x、y)、Pc1(x、y)、Pc2(x、y)、Pc3(x、y)を用いる。例えば、ケーブル位置推定部12Aは、4個の座標Pc0(x、y)、Pc1(x、y)、Pc2(x、y)、Pc3(x、y)を通る関数を、例えば、補間(例えば、スプライン補間)により求め、これをショベル2等が移動した後におけるケーブル7の位置とする。この場合、座標Pc0(x、y)からPc3(x、y)までにおけるケーブル7Bの長さ(L1B+L2B+L3B)を拘束条件とするが、この点については上述した実施形態と同様である。
【0071】
また、ケーブル位置推定部12Aは、電力中継台車4の移動によって得られた4個の座標Pc0(x、y)、Pc1(x、y)、Pc2(x、y)、Pc3(x、y)と、支持柱5の座標Pb0(x、y)と、移動後におけるショベル2の座標Pa3(x、y)とを通る関数を、例えば、補間(例えば、スプライン補間)により求め、これをショベル2等が移動した後におけるケーブル7の位置とする。この場合、座標Pb0(x、y)からPa3(x、y)までにおけるケーブル7Bの長さ(L0B+L1B+L2B+L3B+L0A)を拘束条件とするが、この点については上述した通りである。本変形例においては、電力中継台車4が移動した履歴を用いて、ショベル2等が移動した後におけるケーブル7の位置が推定される。このため、ケーブル7を推定する際に使用できる位置情報(電力中継台車4の移動にともなう座標)を増やすことができるので、移動後におけるケーブル7の位置の推定精度が向上する。
【0072】
ショベル2等の移動後におけるケーブル7の位置が更新されたら、管理装置10は、処理をステップS106に進める。ステップS106において、管理装置10の禁止領域設定部12Bは、ケーブル位置推定部12Aが推定したケーブル7の位置に基づいて、車両(本実施形態ではショベル2及びダンプトラック3等)の走行を禁止する走行禁止領域DAとして設定する。例えば、禁止領域設定部12Bは、ショベル2等の移動後におけるケーブル7の位置の周囲における所定領域を、
図1に示すような走行禁止領域DAとして設定する。一例として、禁止領域設定部12Bは、ショベル2等の移動後におけるケーブル7の位置を中心として、両側に所定距離だけ離れ、かつケーブル7に沿った2本の境界線を生成する。そして、禁止領域設定部12Bは、前記2本の境界線で囲まれる領域を、走行禁止領域DAとして設定して、記憶部13に保存する。次に、ステップS107に進み、禁止領域設定部12Bは、記憶部13に記憶されていたこれまでの走行禁止領域DAを、ステップS106で新たに設定した走行禁止領域DAに置き換えることにより、走行禁止領域DAを更新する。走行禁止領域DAが更新されたら、管理装置10は、本実施形態に係る走行禁止領域の設定方法を再び最初から実行する。
【0073】
走行禁止領域DAが更新されたら、管理装置10の走行経路生成部12Dは、新たな走行禁止領域DAを記憶部13から読み出して、
図1に示す採掘場1におけるダンプトラック3の走行経路PLを生成する。このとき、走行経路生成部12Dは、採掘場1の全領域から走行禁止領域DAを除外した領域を走行可能領域PAとし、走行可能領域PAに走行経路PLを生成する。管理装置10は、新たに生成された走行経路PLに基づいて、採掘場1でダンプトラック3を走行させる。なお、走行経路生成部12Dは、走行経路PLを生成するときにおいて、例えば、採掘場1の走行可能領域PAに故障車両が停止しているような場合、前記故障車両の周囲の所定領域を走行禁止領域DAとして設定した上で、走行経路PLを生成する。このようにすることで、採掘場1の実情により即した走行経路PLを生成できるので、採掘作業及び運搬作業を円滑に進めることができる。
【0074】
このように、上述した実施形態、第1変形例及び第2変形例において、ケーブル位置推定部12Aは、ショベル2と支持柱5との間における少なくとも二箇所の位置に関する情報と、ショベル2と支持柱5との間のケーブル7の長さとに少なくとも基づいて、ショベル2等が移動した後におけるケーブル7の位置を推定する。このようにすることで、ショベル2又は電力中継台車4等が移動した場合には、現地でケーブル7の位置を再計測しなくてもケーブル7の位置を求めることができるので、作業の手間を軽減することができる。また、採掘場1の走行禁止領域DAを必要十分な大きさに抑えることができるので、走行可能領域PAを大きくすることができる。その結果、ダンプトラック3の旋回が必要な場合でも、旋回半径を大きくすることもできるので、ダンプトラック3のタイヤの摩耗を抑制できるので、ダンプトラック3のランニングコストを抑制することができる。
【0075】
図10は、本比較例に係る走行禁止領域の設定方法を示す説明図である。本比較例は、ショベル2及びケーブル7が採掘場1内で移動すると考えられる範囲に基づいて、走行禁止領域DAを設定する。このようにすると、ショベル2及びケーブル7の移動を考慮して、その分余裕を持って走行禁止領域DAが設定される必要があるので、走行禁止領域DAは大きくなり、走行可能領域PAは小さくなる。したがって、ダンプトラック3の走行経路PLを設定する際の自由度が低くなり、無理な走行経路PLを設定せざるを得ない場合もある。
【0076】
本実施形態、第1変形例及び第2変形例は、ショベル2又は電力中継台車4等が移動した場合には、ケーブル7の位置を推定し、その周囲の所定領域を走行禁止領域DAとして再設定するので、走行禁止領域DAを必要最小限にすることができる。その結果、採掘場1の走行可能領域PAが大きくなるので、ダンプトラック3の走行経路PLを設定する際の自由度が向上する。このため、本実施形態、第1変形例及び第2変形例は、旋回半径、ダンプトラック3同士のすれ違い又は待避場所に余裕を持たせた走行経路PLを設定しやすくなるという利点がある。
【0077】
上記説明において、ダンプトラック3は無人で走行する場合を例とした。しかし、ダンプトラック3が有人、すなわち、ダンプトラック3に搭乗した運転者によって操作されるものであってもよい。この場合、管理装置10は、例えば、生成した走行経路PLをダンプトラック3の運転席に設けられたモニターに表示させて、ダンプトラック3が走行経路PLに沿って走行するようにダンプトラック3の運転者を誘導する。
【0078】
<中間支持体の移動方向生成>
図11は、本実施形態に係る中継支持体の移動方向を生成する方法のフローチャートである。
図12は、本実施形態に係る中継支持体の移動方向を生成する方法の説明図である。
図2に示す管理装置10の中継位置移動情報生成部12Cの機能を説明する。中継位置移動情報生成部12Cは、中継支持体としての電力中継台車4と電気式作業機械としてのショベル2の間に存在するケーブル7(第1ケーブル7A)に沿った方向を、電力中継台車4が移動する方向とする。ショベル2が移動した場合、電力中継台車4も移動させることがあるが、このときに、ケーブル7に沿った方向(
図12の矢印m2で示す方向)へ電力中継台車4を移動させることにより、ケーブル7に与えられる負荷を低減できるので好ましい。次に、中継支持体の移動方向を生成する方法の手順を説明する。
【0079】
電力中継台車4は、例えば、ショベル2が移動した場合、これに追従するために移動する。本実施形態に係る中継支持体の移動方向を生成する方法を実行するにあたり、ステップS201において、
図2に示す管理装置10の中継位置移動情報生成部12Cは、ショベル2が移動していた場合、処理をステップS202へ進める(ステップS201、Yes)。ショベル2が移動していない場合、中継位置移動情報生成部12Cは、処理をステップS204へ進める(ステップS201、No)。ステップS204の内容は後述する。
【0080】
ステップS202において、中継位置移動情報生成部12Cは、ステップS202の処理時点におけるケーブル7の位置(ケーブル位置)を記憶部13から読み出して取得する。また、中継位置移動情報生成部12Cは、通信装置18を介してショベル制御装置2Pから、ステップS202の処理時点におけるショベル2の位置を取得する。次に、ステップS203に進み、中継位置移動情報生成部12Cは、電力中継台車4が移動する際に目標とする位置(目標位置)と、そのときに必要なケーブル7の長さ(ケーブル長)L1Aとを設定する。目標位置及びケーブル長は、ショベル2が座標Pa0(x、y)からPa1(x、y)へ移動し(
図12の矢印m1で示す方向)、かつ電力中継台車4が座標Pc0(x、y)から目標位置の座標Pc1(x、y)へ移動したときにおいて、例えば、移動後におけるケーブル7(
図12の二点鎖線)の曲率が最も大きくなるように設定される。目標位置及びケーブル長の設定方法は、これに限定されるものではない。
【0081】
目標位置及びケーブル長が設定されたら、ステップS204へ進み、中継位置移動情報生成部12Cは、目標位置に向かって電力中継台車4を移動させるとともに、ステップS203で設定したケーブル長となるように、第1ケーブルドラム44Aを制御する。次に、ステップS205へ進み、中継位置移動情報生成部12Cは、現時点における位置情報を取得する。この位置情報は、ショベル2の位置に関する情報と、電力中継台車4の位置に関する情報である。そして、ステップS206に進み、管理装置10のケーブル位置推定部12Aは、ステップS205で取得された位置情報に基づいて、現時点におけるケーブル7の位置を推定し、記憶部13に記憶させることで、ケーブル7の位置を更新する。
【0082】
次に、ステップS207へ進み、管理装置10は、電力中継台車4が目標位置(座標Pc1(x、y))に到達したらステップS208へ進み(ステップS207、Yes)、目標位置に到達していないときにはステップS201に戻り、以降の手順を実行する。電力中継台車4が目標位置に到達した場合(ステップS207、Yes)、ステップS208において、
図2に示す管理装置10の禁止領域設定部12Bは、更新されたケーブル7の位置に基づき、走行禁止領域DAを新たに設定し、記憶部13に記憶させることで走行禁止領域DAを更新する。このように、管理装置10は、ケーブル7に沿って電力中継台車4を移動させることにより、ケーブル7の負荷を低減してケーブル7の耐久性低下を抑制することができる。
【0083】
以上、本実施形態及びその変形例は、電源からケーブルを介して電力の供給を受ける電気式作業機械と前記ケーブルを支持する支持体との間における少なくとも二箇所の位置に関する情報と、前記電気式作業機械から前記支持体までのケーブルの長さと、に少なくとも基づいて、前記ケーブルの位置を推定する。そして、推定された前記ケーブルの位置に基づいて、採掘場等の作業場で運用される機械が走行することを禁止する走行禁止領域を設定する。このようにすることで、走行禁止領域を必要十分な範囲に抑制することができるので、作業場における走行禁止領域を小さくし、走行可能領域を大きくすることができる。その結果、作業場において使用される機器の走行経路を設定する際の自由度が向上したり、前記機器が動くことのできる範囲を広くして、前記機器に対する負荷を低減したり、余裕を持って前記機器を運用したりすることができる。特に、近年の鉱山においては、電気駆動式パワーショベルが使用される場合が増えてきており、ケーブルが採掘場内を引き回されることが多くなってきている。本実施形態及びその変形例は、ケーブルを介して電気駆動式パワーショベルが使用されるような鉱山等に好適である。