(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5866670
(24)【登録日】2016年1月15日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】動力工具用レギュレータ
(51)【国際特許分類】
B25B 23/14 20060101AFI20160204BHJP
B21J 15/28 20060101ALI20160204BHJP
【FI】
B25B23/14 630A
B25B23/14 610G
B21J15/28 E
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-78311(P2013-78311)
(22)【出願日】2013年4月4日
(62)【分割の表示】特願2010-516951(P2010-516951)の分割
【原出願日】2008年7月10日
(65)【公開番号】特開2013-151061(P2013-151061A)
(43)【公開日】2013年8月8日
【審査請求日】2013年4月4日
(31)【優先権主張番号】0701727-0
(32)【優先日】2007年7月13日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】502212604
【氏名又は名称】アトラス・コプコ・インダストリアル・テクニーク・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100064388
【弁理士】
【氏名又は名称】浜野 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】エルスマーク,カール,ヨハン,ラルス
(72)【発明者】
【氏名】イエングレン,ヘンリック ペアー ヨハン
【審査官】
村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−075880(JP,A)
【文献】
特開2000−015342(JP,A)
【文献】
特開平11−058100(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第0264034(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 23/14
B21J 15/28
B30B 15/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つ又はそれ以上の部品(3,4)を結合してジョイント(5)にするために締め具(1)を締め付ける動力工具(6)用のレギュレータであって、
前記レギュレータ(9)が、締め具(1)を締め付ける時に動力工具(6)を、締め具(1)が所定の目標トルク(T
target)で締め付けられるように調節するレギュレータにおいて、
レギュレータ(9)が、動力工具(6)への出力信号(i
q)を算出するように構成され、
前記出力信号(i
q)が、動力工具(6)によって締め具(1)に及ぼされるトルク(T)と、締め具(1)がその軸線(10)を中心に回転する角度(φ)との積に基づくものであり、
前記出力信号(i
q)が、所定の目標トルク(T
target)を得るために締め具(1)の締め付けを制御するために用いられ、
目標トルク(T
target)に達するための目標エネルギ(E
target)が、締め付け動作中に測定される
トルク増加率に基づいて推定されるジョイント(5)の
結合力の測定値(k
j)に依存し、
目標エネルギ(E
target)が、次式(f3)に従ってジョイント(5)の
結合力の前記測定値(k
j)により調整されることを特徴とするレギュレータ。
【請求項2】
動力工具(6)のモータ(7)の運動エネルギ(Erot)が、次式(f5)に従って、動力工具(6)のモータ(7)及びギヤ(8)の慣性及び角速度に依存する
ことを特徴とする請求項1に記載のレギュレータ。
【請求項3】
動力工具(6)を操作するオペレータ(12)からの運動エネルギ(Eoperator)が、オペレータ(12)に依存する
ことを特徴とする請求項2に記載のレギュレータ。
【請求項4】
エラーエネルギ(E
error)が、次式(f2)の関係に従う
ことを特徴とする請求項3に記載のレギュレータ。
【請求項5】
レギュレータ(9)からの出力信号(i
q)が、次式(f7)に従って、動力工具(6)のモータ(7)におけるトルク定数(k
m)、ジョイントの
結合力に依存する測定値(k
j)及び動力工具(6)のギヤ(8)のギヤ比(N)に依存する
ことを特徴とする請求項4に記載のレギュレータ。
【請求項6】
締め具(1)がネジ又はネジ付きボルトである
ことを特徴とする請求項1〜5に記載のレギュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネジ、ボルト及びリベットのような締め具用のレギュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
ネジ山が設けられたネジやボルトを、対応するネジ山を有する孔の中に配置する時、電動レンチのような工具が使用され得る。堅固なジョイントを得るために、ネジやボルトは、所定のトルクで締め付けられる必要がある。例えば、自動車の製造のような大量生産では、多数のネジやボルトを使用する時に、ネジやボルトを短時間で所定のトルクまで締め付けることが重要である。
【0003】
短時間で所定のトルクを得るために、レギュレータが工具に接続され、工具を調節する。
【0004】
締め具を締め付ける時に用いられる公知のレギュレータは、PIDレギュレータである。このようなPIDレギュレータは、次式(f1)に従って出力信号u(t)を出力する。
式中e(t)は、出力信号における偏差であり、システム内のリアクションから得られる。値K
pが大きいと、レギュレータの速度が上がるが、安定性の低下を招く。値K
Iは、出力信号の定常偏差を取り除くが、その値が大きすぎると、安定性を低下させる。固定値K
Dを使用することによって安定性が向上することになる。しかし、しばしば、固定値K
pを見つけることが困難なことがあり、特に、出力信号のノイズレベルが高い時には困難である。K
p、K
I及びK
Dの値は、一般理論から選択され、当業者には公知である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、PIDレギュレータを使用することの一つの問題点は、値K
I及びK
Pによる補正のために十分な時間をとる必要があるので、短い時間で、満足なトルクに達することが困難であることにある。結果的に、効率性が低下し、従って、工具内で熱が発生する。また、モータへの電流の大きな加速力及び変動が原因となって、動力工具にかかる負荷や歪みが増加することになり、工具の耐久性を低下させ、工具を操作するオペレータに対するエルゴノミクス(ergonomics)を乏しくすることになる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によって解決するべき課題は、締め具を締め付ける時の効率を向上させるレギュレータによって解決される。
【0007】
本発明によって解決するべき他の課題は、所定のトルク又は力まで最短時間で締め具を正確に締め付ける動力工具用のレギュレータを提供することにある。
【0008】
本発明によって解決するべきさらに別の課題は、締め具を締め付けるために工具を操作するオペレータに対するエルゴノミクスを改善することにある。
【0009】
本発明によって解決するべき他の課題は、締め具を締め付けるための動力工具に係る負荷や歪みを低減させることにある。
【0010】
これは、請求項1によるレギュレータによって達成される。
【0011】
上述した目的は、目標トルク値を得るためにモータトルクを生じさせる瞬間モータ電流を調節するためシステム内でエネルギ寄与を使用することによって達成される。締め具を締め付けるための運動エネルギを用いて、動力工具のモータへ電流を供給する動力工具を制御することによって、所定のトルクに対応する一定量のエネルギを締め具内に得ることができ、それによって、時間、効率、負荷又はエルゴノミクスのパラメータの幾つかに関する締め付け特性が改善される。
【0012】
時間
正確な目標トルク値を得るために、モータは、目標トルクの時点でゼロ速度まで速度を落とさなければならない。可能な限り長い時間、高い速度で動作することを許容することによって、即ち、制動を可能な限り遅らせることによって、目標トルクへの到達時間が最小限に抑えられる。
【0013】
効率
モータ7及びギヤ8の運動エネルギを有効に利用することによって、モータエネルギは、必要以上のエネルギが使用されることがないように調節される。その結果、熱に変換されるエネルギの量が非常に少なくなり、短い時間との組み合わせで、総消費電力が減る。
【0014】
負荷
締め具を締め付ける時に実質的に線形のトルクが展開され、モータを制動するために調整される電流が滑らかで低いレベルであるので、動力工具上にかかる加速力及びトルクが、ギヤのような、工具内の構成部品の耐久性の臨界になる範囲で変動しなくなる。また、有利な状態においては、ギヤにかかるモータからのトルクが最小化され得る。
【0015】
エルゴノミクス
工具内で熱に変換されるエネルギの量が非常に少ないので、工具を操作するオペレータに対するエルゴノミクスが改善される。締め付け時間の最短化によって、トルク増加時間が短くなり、従って、工具の変位が小さくなる。この結果、堅固なジョイントにおけるエルゴノミクスがより良いものになる。
【0016】
低いエネルギ損失及びレギュレータからの出力信号の少ない変動のために、所定のトルクからの逸脱を小さくすることができる。これは、物理的法則に基づくレギュレータを使用することによる。所定のトルクに達するために必要なモータトルクの量が、締め付けの間に継続的に演算されるので、結果的に、たとえ締め具の特性が変化したとしても、正確な制動電流が使用されることになる。
【0017】
本発明の他の利点及び特徴は、添付図面を参照した本発明の幾つかの実施例の詳細な説明から明らかにされ得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】締め具を締め付けるための工具の概略部分断面図であり、工具はレギュレータに接続されている。
【
図2】従来技術に従ったPIDレギュレータを使用する締め具の締め付けのダイヤグラムである。
【
図3】従来技術に従ったPIDレギュレータを使用する締め具の締め付けのダイヤグラムである。
【
図4】本発明によるレギュレータを使用する締め具の締め付けのダイヤグラムである。
【
図5】本発明によるレギュレータを使用する締め具の締め付けのダイヤグラムである。
【
図6】従来のPIDレギュレータと本発明によるレギュレータとを使用する締め具の締め付けのダイヤグラムである。
【
図7】本発明に係るレギュレータを使用する締め具の締め付けのための別の締め付けシナリオのダイヤグラムである。
【
図8】本発明によるレギュレータを使用する締め具の締め付けのダイヤグラムである。
【
図9】本発明によるレギュレータのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
始めに
図1を参照すると、
図1には締め具1が示されている。この締め具1は、ネジ又はねじ付きボルトであり得、内ネジが設けられた孔2又はねじ付きナット(図示せず)に締め付けられ、二つ又はそれ以上の部品3,4を一体化して、典型的にはジョイント5と称される固定部材にする。締め具1は、電動レンチのような工具6に接続されている。前記工具6には、電気モータ7及びギヤ8が設けられている。工具6はレギュレータ9に接続され、レギュレータ9は、締め具1を、その軸線10を中心に角度φ、回転させることによって締め具1を締め付ける時に工具6を調節する。図面では締め具1は、ヘッド11が設けられたネジ又はボルトであり、ヘッド11は締め付け位置において、二つの部品3,4の一方の上に配置される。また、締め具1は、ねじ付きピン(図示せず)に締め付けられるねじ付きナットであってもよい。また、工具は、リベット打ち工具であってもよく、その場合、目標トルクT
targetは、目標力F
targetに置き換えられ、角度φは、移動距離δに置き換えられる。工具6は、ロボットアーム(図示せず)上に配置されてもよく、また、オペレータ12によって保持されてもよい。
【0020】
ここで
図2を参照すると、
図2には従来技術によるPIDレギュレータを使用する締め具1の締め付けのダイヤグラムが示されている。PIDレギュレータは、当業者には周知である。
図2における曲線13は、締め具1を、その軸線10を中心に角度φで連続的に締め付けている間に展開される典型的なトルク負荷を示している。トルク負荷曲線13には、フリーランニング期間Aがあり、この期間Aでは、締め具1を前進させるために必要とされるトルクは小さい。この期間Aに続いて、締め具1のヘッド11を部品3に対してクランプする期間Bがあり、ここで、部品3及び4は係合させられ、トルクは実質的に線形に増加する。所定のトルク目標値に達した時に期間Bは終わる。
【0021】
図2には、角度φの関数としてのi
qとして電流曲線14が示されている。目標トルクT
targetに達するために、電気モータ7への電流i
qは、公知のPIDレギュレータを用いて電流曲線14に従って調節される。期間Aにおいては、モータを駆動させるために必要な電流i
qは小さい。しかし、電気モータ7の慣性のために、期間Bにおいては、モータ7に制御電流を供給しなければならない。
図2によれば、期間Bにおける制御電流は、モータ7を制動する制動電流である。PIDレギュレータによって調節された制動電流は、
図2に示すように変動し得る。ブレーキ電流の変動及び高いピークにより、工具6、特に工具6のギヤ8に高い負荷又は歪みがもたらされ、工具の耐久性が低くなり、工具を操作するオペレータ12に対するエルゴノミクスが乏しくなる。
【0022】
図3には、公知のPIDレギュレータを使用した時に工具6に及ぼされるトルク負荷曲線15が示されている。
図3から明らかなように、工具6に及ぼされるトルク負荷は、期間Bの間に、激しく変動する。
【0023】
PIDレギュレータに関する上述した欠点は、PIDレギュレータをさらに改良することで、低減されるか、又は取り除かれる。
【0024】
図4は、本発明によるレギュレータ9を使用する締め具の締め付けのダイヤグラムを示している。
図4には、
図2に関して記述したような典型的なトルク負荷曲線130が示されている。
期間Aの最初に、回転速度φ’が、実質的に一定レベルまで急速に増加する。期間Bの先頭に達した時、トルク及びモータ7へのブレーキ電流の増加の代わりに、回転速度φ’は低下する。所定の目標トルクT
targetに達した時、モータ7の回転は停止し、従って、
図4に示すように、回転速度φ’はゼロになる。
【0025】
また、
図4には、電流曲線140が角度φの関数として示されている。目標トルクT
targetに達するために、電気モータ7への電流i
qは、本発明に係るレギュレータ9を用いて電流曲線140に従って調節される。
図2に関して説明したように、期間Aにおいてモータを駆動させるために必要とされる電流i
qは小さい。しかし、電気モータ7の慣性のために、期間Bにおいてモータ7には制御電流が供給される必要がある。
図4に示した実施例によれば、期間Bにおける制御電流は、モータ7を停止させる制動電流である。本発明によるレギュレータによって調節された制動電流は、
図4に示した曲線140をたどる。モータ7を停止するために調節された電流は、従来技術において説明した解決手段と比べて、滑らかでピーク値が低く、従って、工具6にかかる加速力及びトルクが、工具のギヤ8のような構成部品の耐久性の臨界になる範囲で変動しなくなる。これは
図5から明らかである。
図5には、本発明に係るレギュレータ9を使用した時に、工具6に及ぼされるトルク負荷曲線150が示されている。
図5から明らかなように、工具6に及ぼされるトルク負荷は、公知のPIDレギュレータを使用した時に工具6に及ぼされるトルク負荷に比べると、期間Bの間、その変動が小さく、かつ、そのピーク値が低い。
【0026】
図6には、電流曲線14,140が、角度φの関数としてのi
q及びφ’として示されており、電流曲線14,140は、PIDレギュレータを用いた従来の締め付けと、本発明による締め付け方法との間の差を示している。目標トルクT
targetに達するために、電気モータ7への電流i
qは、本発明によるレギュレータ9を使用して電流曲線140に従って調節される。
図2に関して説明したように、期間Aにおいて、モータを駆動させるために必要な電流i
qは小さい。制動電流140の大きさは、ブレーキ期間Bの最初から計算される同じ締め付け速度に対するPIDレギュレータを使用する制動電流14と比べると小さい。より遅い時点で制動が開始され得るので、締め付け時間は低減することになる。高い電流ピークレベルが、高い消費電力を生じさせるのに対して、小さい大きさを持つ滑らかな電流プロファイルは、効率を高くする。本発明に係るレギュレータ9を使用してモータ7を制動するために調節された電流は、滑らかで低いレベルであり、従って、工具6にかかる加速力及びトルクは、ギヤ8のような工具の構成部品の耐久性の臨界になる範囲で変動しなくなる。
【0027】
図7には、電流曲線14,140,140’が、角度φの関数としてのi
q及びφ’として示されており、電流曲線14,140,140’は、本発明に係る調節方法を使用して締め具を締め付けるための別の締め付けシナリオのダイヤグラムを示している。本発明に係るレギュレータは、どのくらいの量の制動電流が対応するかに応じて、締め付け期間における異なる段階で制動を開始することを可能にする。初めの例では、
図6に示すようにポイントBで制動が開始されるまでは、代替速度(alternative speed)が維持され、PIDレギュレータに対する時間と同様の締め付け時間を得る。しかし、制動電流140はより滑らかであり、トータルでのエネルギ消費量は少なくなる。
【0028】
第二の例では、締め付け時間が最も重要な特性として選択される締め付け方法が説明される。比較的高いブレーキ電流140’を許容することによって、(ブレーキポイントBとCとを比較して)遅い時点で制動を開始することを可能にし、スナッグレベル(snug level)からトルク目標レベルまでの時間を短縮する。タイムステップ毎に正確な制動電流が演算されるので、たとえ制動時点の前に使用されていなくても、それは制動を開始すべき時の設定(configuration)の問題である。計算された制動電流i
qが予め設定した制動敷居値のためのトランジション(transition)を超えた時に、その設定が生じる。
i
q>i
qmax
ここで、i
qmaxは、設定パラメータである。
理想的な状態の間は、制動電流i
qは、
図7に示されているように、目標トルクになるまで、制動の間中、一定レベルになる。ここでは、i
q=i
qmaxである。これは、後述するi
q(f7)の定義付けとシステムにおけるエネルギ寄与(energy contributions)の定式化の結果である。
【0029】
図8には、制動電流i
qと、ギヤに作用するトルク負荷Tとが、時間tの関数として示されており、本発明によるレギュレータを使用するオペレータによって選択され得る締め付け速度に関する異なる締め付けシナリオの特性が示されている。締め付け時間が重要でない場合には、制動電流が滑らかである締め付けプロセスを選択することが可能であり、その場合、ギヤに作用する適用トルク負荷Tが前記制動の間、最小化され得る。また、この場合には、システム内の歯車装置を使わないことになる。曲線は、以下のように説明される。
【0030】
ブレーキ電流i
qは、比較的に小さく、結果として、締め付けDの間は実質的に正のトルクがギヤに作用する。一方、大きなブレーキ電流は、締め付けFの間、実質的に負のトルクがギヤに作用する状況をもたらす。締め付けEにあるような有利な制動電流を使用すると、結果として生じるギヤにかかるトルクは、最小化され得る。言い換えれば、正確な制動電流を使用すると、モータからギヤに伝達されるトルクが最小化される。
【0031】
図9によれば、レギュレータ9は、システム中のエネルギ寄与を考慮することによって演算ステップE
calcから獲得される出力信号i
qを演算する。これらは、演算されるか又は予め決められた目標エネルギE
target、モータ7及びギヤ8における運動回転エネルギE
rot、ジョイント5における位置結合エネルギE
joint及びオペレータ12からのオペレータエネルギE
operatorである。
【0032】
上述の関係及び
図9のブロック図から次式(f2)が得られる。
エネルギE
errorは、目標トルクに達するために工具6内のモータ7に加えられるべきエネルギ量である。式f2によれば、それは、上述したエネルギ寄与の合計として決められる。
【0033】
E
operatorは、工具を使用するオペレータの慣性だけでなく、工具からの慣性も含む。また、オペレータは、アクティブな反力も使用し得る。目標トルクまでジョイントを締め付ける時間が柔らかいジョイントの方が堅いジョイントより長いので、堅固な堅いジョイントでは、E
operatorの影響は、フレキシブルで柔らかいジョイントに比べると小さい。工具がロボットアームの形態の固定具に設けられている場合には、E
operatorは、固定具に伝達されるエネルギとして解釈され得る。
【0034】
以下の関係が決められる。
k
jは、多数のテスト運転又は試験サンプリングから獲得したジョイント特性からの測定値であり、ジョイントの剛性に依存する。また、k
jは、締め具1の締め付け中の測定からも獲得され得る
Jは、モータ7及びギヤ8の慣性であり、φ’mはモータ角速度である。
i
qは、モータ7を調節する電流であり、k
mはモータ7におけるトルク定数であり、φ
targetは、締め具1がジョイントに締め付けられるべき予定角度であり、φ
jは締め具1がジョイントに締め付けられた実際の角度である。Nは、工具6のギヤ8のギヤ比である。i
q及びk
mの積によってモータトルクが得られる。(φ
target-φ
j)×Nの関係によって、φ
targetに達するための残りの角度が得られる。
上記関係から次式(f7)が得られる。
Tはジョイントにおける実際のトルクである。
【0035】
結果的に、レギュレータ9は、工具6のモータ7を制動するためのエネルギE
errorに依存する出力信号i
qを算出する。
【0036】
図9におけるG
sysは、システムの伝達関数である。
【0037】
上述した関係は、また、リベットジョイントにも適用することができる。しかし、リベットジョイントの場合には、上述したE
target及びE
jointは、各々次式によるE
target及びE
rivetに置き換えられる。
k
rは、多数のテスト運転又は試験サンプリングから得られるジョイント特性からの測定値であり、ジョイントの剛性に依存する。k
rは、また、リベットの締め付けの間の測定から獲得され得る。F
targetは、リベットジョイントに対する所定の目標力である。
Fは、リベットジョイントの実際の力である。
δは、リベットを圧縮する距離である。
リベッティングのための工具を制動するエネルギE
errorは、以下のエネルギ寄与の合計である。