【実施例1】
【0021】
図2(a)から
図2(c)は、実施例1に係るカプラの図である。
図2(a)は、平面図、
図2(b)は、
図2(a)のA−A断面図、
図2(c)は、
図2(a)のB−B断面図である。ポートP1から入力した高周波信号が、ポートP2とP4に等分配され出力される。各線路の長さを高周波信号の波長λの1/4とすることにより、ポートP2とP4とから出力される高周波信号の位相差は90°となる。ポートP3は、50Ω抵抗Rにて終端される終端回路42に接続される。
図2(a)に示すように、第1結合線路10と第2結合線路20とが近接して設けられている。第1結合線路10とポートP1との間、第1結合線路10とポートP2との間は線路11により電気的に接続されている。第2結合線路20とポートP4との間、第2結合線路20とポートP3との間は線路21により電気的に接続されている。
【0022】
図2(b)および
図2(c)のように、例えばSiCからなる基板30上に、例えばポリイミドからなる絶縁膜32が形成されている。絶縁膜32上に、例えばAu、AlまたはCu等の金属からなる第1線路12および第2線路22が形成されている。第1線路12および第2線路22を覆うように絶縁膜32上に例えばポリイミドからなる絶縁膜34が形成されている。絶縁膜34上に例えばAu、AlまたはCu等の金属からなる第1線路14および第2線路24が形成されている。第1線路14および第2線路24を覆うように絶縁膜34上に例えばポリイミドからなる絶縁膜36が形成されている。絶縁膜34内には、上下に貫通するビア金属16、18、26および28が形成されている。ビア金属16、18、26および28は、例えばAu、AlまたはCu等の金属からなる。第1線路12と14との一端において、第1線路12と14とはビア金属16により電気的に接続されている。第1線路12と14との他端において、第1線路12と14とはビア金属18により電気的に接続されている。同様に、第2線路22と24の両端において、第2線路22と24とはそれぞれビア金属26および28により電気的に接続されている。各線路の両端以外においては、各線路間は絶縁されている。
【0023】
なお、基板30上には例えば窒化物半導体層が形成されていてもよい。また、窒化物半導体層を用いたトランジスタ等の半導体素子が形成されていてもよい。窒化物半導体とは、例えば、GaN、AlN、InN、GaInN、AlGaN、InAlGAN。InAlNである。基板30はSiC以外にもSi、サファイアまたはGaN等を用いることができる。さらに、基板30はGaAs等の半導体基板でもよい。さらに、基板30は、セラミックスまたは樹脂等の絶縁性基板でもよい。
【0024】
図2(a)から
図2(c)の第1線路12および第2線路22は、
図1のそれぞれ結合線路50および結合線路52に相当する。第1線路14および第2線路24は、
図1のそれぞれエキストラ線路56および54に相当する。このように、
図2(a)から
図2(c)に模式的に示したカプラは2エキストラライン方式カプラに相当する。これにより、第1結合線路10と第2結合線路20との電磁結合を強くすることができる。さらに、ランゲカプラのように、大きなパターンサイズを要しない。
【実施例2】
【0025】
図3は、実施例2に係るカプラの平面図である。
図4は、実施例2に係るカプラの一部の斜視図である。
図5は、実施例2に係るカプラの斜視図である。
図4および
図5において絶縁膜は図示していない。
図4においては、一層目の線路を図示し、第1線路12と第2線路22を異なるハッチングを用い図示している。
図4においては、一層目と二層目の線路を図示し、第1線路12と14とを異なるハッチングを用い図示し、第2線路22と24とを白抜きを用い図示している。
【0026】
図3から
図5に示すように、第1結合線路10および第2結合線路20は、それぞれ第1スパイラル形状および第2スパイラル形状を有している。第1結合線路10は、
図2(a)から
図2(c)のように、複数の第1線路12および14が上下に積層されている。第1スパイラル形状の内側に位置する端部(以下内端という)と外側に位置する端部(以下外端という)とにおいて複数の第1線路12および14が電気的に接続されている。第2結合線路20は、複数の第2線路22および24が上下に積層されている。第2スパイラル形状の内端と外端とにおいて複数の第2線路22および24が電気的に接続されている。第1結合線路10と第2結合線路20とは、第1スパイラル形状および第2スパイラル形状内に互いに平行して配置されている。
【0027】
第1結合線路10の外端および内端はそれぞれポートP1およびポートP2に電気的に接続されている。第2結合線路20の外端および内端はそれぞれポートP4およびポートP3に電気的に接続されている。第1結合線路10の内端とポートP2、および第2結合線路20と内端とポートP3とは、例えば第1線路12、14および第2線路22、24を形成する配線とは別の層の配線を用い電気的に接続されている。
【0028】
第1スパイラル形状と第2スパイラル形状とは、第1スパイラル形状および第2スパイラル形状の中心40に対し点対称である。これにより、第1結合線路10と第2結合線路20とが交互に配置される。さらに、第1結合線路10におけるポートP1からP2への方向と、第2結合線路20におけるポートP4からP3への方向とが同じ方向であり、第1結合線路10と第2結合線路20とが平行して配置されている。これにより、第1結合線路10と第2結合線路20との電磁結合を強固にすることができる。
【0029】
また、図示しないが、ポートP2はポートP4と平行にポートP4側に引き出す線路に接続されている。このためには、たとえば線路11の下層の配線レイヤを使用すればよい。また、同様に図示しないが、ポートP3は
図2(a)と同様に終端回路に接続されている。終端回路は50Ωの終端抵抗を介して接地された回路である。終端抵抗は、例えばスパイラルの中心に位置する下層に設けておくことができる。この終端抵抗の一端をビアホールを通じてポートP3と接続し、他端を接地電位に接続する。終端抵抗としては、半導体エピタキシャル層からなるエピタキシャル抵抗を利用することができる。また接地電位としては、基板裏面の接地電位が利用できる。基板裏面の接地電位は、ビアホールを通じて基板表面側に引き出し、これを終端抵抗の前記他端に接続すればよい。
【0030】
実施例2に係るカプラのシミュレーションを行った。シミュレーションに用いたパラメータは以下である。スパイラル形状のサイズL1およびL2を262.5μm、第1線路12および14の幅W1を10μm、第2線路22および24の幅W2を10μm、第1線路と第2線路との間隔W12を12.5μmとした。基板30を膜厚が75μmのGaAs、第1線路12、14および第2線路22、24をそれぞれ膜厚が3μmのAuとした。第1線路12と14との間、および第2線路22と24との間を膜厚が3μmのポリイミドとした。
【0031】
図6は、実施例2のシミュレーション結果を示す図である。S21、S31およびS41は、それぞれ、ポートP1からP2、ポートP1からP3、およびポートP1からP4に通過する信号を示している。横軸は、信号の周波数、縦軸は、信号の大きさおよび位相を示している。
図6に示すように、S21とS41とは、22GHzから32GHzの周波数において大きさがほぼ一致している。また、S21とS41との位相差はほぼ90°である。このように、ポートP1に入力した高周波信号は、ポートP2とポートP4とに当分配され、かつ位相差が90°である。すなわち、実施例1のカプラは、90°ハイブリット回路を構成している。さらに、S31の大きさは−10dB以下であり、ポートP1とP3とは十分アイソレートされている。
【0032】
以上のように、実施例1によれば、第1結合線路10は、複数の第1線路12および14が上下に積層され、第1結合線路10の両端において複数の第1線路12および14が電気的に接続されている。すなわち、複数の第1線路12および14のそれぞれ一端と他端が上下で電気的に接続されている。同様に、第2結合線路20は、複数の第2線路22および24が上下に積層され、第2結合線路20の両端において複数の第2線路22および24が電気的に接続されている。第1結合線路10と第2結合線路20とは平行して配置してなる。これにより、
図2(a)において説明したように、2エキストラライン方式カプラに相当する構成を実現でき、第1結合線路10と第2結合線路20との電磁結合を大きくできる。
【0033】
さらに、実施例2のように、第1結合線路10と第2結合線路20とをスパイラル形状とすることにより、カプラをより小型化することができる。
【0034】
さらに、実施例2の
図3のように、第1スパイラル形状および第2スパイラル形状において、第1スパイラル形状の外端から内端に向かう方向と、第2スパイラル形状の外端から内端に向かう方向と、が同じ方向となるように、第1結合線路10と第2結合線路20とが交互に配置されている。例えば、
図3において、最も左側の線路は、第1結合線路10であり、外端から内端に向かう方向は、下から上方向である。次に左側の線路は、第2結合線路20であり、外端から内端に向かう方向は、下から上方向である。さらに、左側から3番目の線路は、第1結合線路10であり、外端から内端に向かう方向は、下から上方向である。このように、第1結合線路10と第2結合線路20とは交互に配置されている。さらに、外端から内端に向かう方向は、第1結合線路10と第2結合線路20とで同じ方向である。これにより、第1結合線路10と第2結合線路20との電磁結合をさらに大きくし、かつパターンサイズを小さくできる。
【0035】
さらに、第1スパイラル形状と第2スパイラル形状とは、第1スパイラル形状および第2スパイラル形状の中心40に対し点対称に配置されることが好ましい。これにより、第1結合線路10と第2接合線路20のそれぞれの線路長を同じにすることができる。
【0036】
さらに、第1結合線路10と第2結合線路20とは長さが同じであることが好ましい。これにより、第1結合線路10と第2接合線路20の周波数特性をそろえることができる。また、第1結合線路10と第2結合線路20との長さは、第1結合線路10と第2結合線路20とが電磁結合する高周波信号の1/4波長であることが好ましい。さらに、第1結合線路10と第2結合線路20との幅は同じであることが好ましい。これにより。90°ハイブリッド回路の特性を向上できる。
【0037】
複数の第1線路12、14は、第1スパイラル形状の内端または外端以外において互いに絶縁されており、複数の第2線路22、24は、第2スパイラル形状の内端または外端以外において互いに絶縁されていることが好ましい。
【0038】
複数の第1線路および複数の第2線路の例として、それぞれ2層の場合を例に説明したが、第1線路および第2線路は、それぞれ3層以上積層されていてもよい。しかしながら、製造上の容易性等を考慮すると、第1線路および第2線路は、2層であることが好ましい。
【0039】
以上のように、実施例1および実施例2に係るカプラは、第1結合線路10の一端(ポートP1)および他端(ポートP2)並びに第2結合線路20の一端(ポートP4)を入出力端としている。第2結合線路20の他端(ポートP3)が終端回路42に接続されている。これにより、90°ハイブリッド回路を構成することができる。なお、第2結合線路20のポートP4に終端回路42が接続され、ポートP3が入出力端でもよい。
【0040】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。