【実施例】
【0034】
以下に、本発明のフォトマスクおよびそれを用いて製造するカラーフィルタに関して実施例を述べる。
先ず、突起状パターンである固定スペーサを形成する前のカラーフィルタの構成部分の製造方法について、具体例により説明する。
【0035】
透明基板上にブラックマトリックスを形成する。その後、赤色層、青色層、緑色層の各色のカラーフィルタ層を形成する。
次いで、前面に保護膜としてオーバーコート層を形成する。オーバーコートには熱硬化性の透明樹脂を使用し、ダイコート法により塗布、減圧下で乾燥させた後230℃で30分間ベークを実施した。
【0036】
着色層を形成する着色レジストとしては以下の組成のものを使用した。
着色レジストに使用する顔料として、下記のものを用いた。
[赤色顔料1(R−1)]
赤色顔料1(C.I. Pigment Red 254、BASF社製「IRギャップHOR RED B-CF」;R−1)を使用した。
[赤色顔料2(R−2)]
赤色顔料2(C.I. Pigment Red 177、BASF社製「CROMOPHTAL RED A2B」;R−2)を使用した。
[緑色顔料1(G−1)]
緑色顔料(C.I. Pigment Green 36、東洋インキ製造社製「LIONOL GREEN 6YK」;G−1)500部、塩化ナトリウム1300部、およびジエチレングリコール(東京化成社製)270部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)に仕込み、70℃で3時間混練した。次に、この混合物を約5リットルの温水に投入し、約70℃に加熱しながらハイスピードミキサーで約1時間撹拌してスラリー状とした後、濾過、水洗して塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除き、80℃で24時間乾燥し、496部のソルトミリング処理顔料を得た。
[黄色顔料1(Y−1)]
黄色顔料(C.I. Pigment Yellow 138、BASF社製「PALIOTOL YELLOW K0961HD」)200
部、塩化ナトリウム1500部、およびジエチレングリコール(東京化成社製)270部ステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)に仕込み、60℃で6時間混練した。次に、この混合物を約5リットルの温水に投入し、約70℃に加熱しながらハイスピードミキサーで約1時間撹拌してスラリー状とした後、濾過し、水洗して塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除き、80℃で24時間乾燥し、196部のソルトミリング処理
顔料を得た。
[青色顔料1(B−1)]
青色顔料1(C.I. Pigment Blue 15:6、東洋インキ製造社製「LIONOL BLUE ES」を使用した。
[紫色顔料1(V−1)]
紫色顔料1(C.I. Pigment Violet 23、東洋インキ製造社製「LIONOGEN VIOLET RL」を使用した。
[アクリル樹脂溶液の調製]
実施例で用いたアクリル樹脂溶液の調製について説明する。樹脂の分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
反応容器にシクロヘキサノン370部を入れ、容器に窒素ガスを注入しながら80℃に加熱して、同温度で下記モノマーおよび熱重合開始剤の混合物を1時間かけて滴下して、重合反応を行った。
メタクリル酸 20.0部
メチルメタクリレート 10.0部
n−ブチルメタクリレート 35.0部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 15.0部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 4.0部
パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート 20.0部(東亜合成株式会社製「アロニックスM110」)
滴下終了後、さらに80℃で3時間反応させた後、アゾビスイソブチロニトリル1.0部をシクロヘキサノン50部に溶解させたものを添加し、さらに80℃で1時間反応を続行して、アクリル樹脂の溶液を得た。このアクリル樹脂の重量平均分子量は、約40000であった。
室温まで冷却した後、樹脂溶液約2gをサンプリングして180℃で20分間加熱乾燥し、不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が20重量%になるようにシクロヘキサノンを添加して、アクリル樹脂溶液を調製した。
[顔料分散体の調製]
下記表1に示す組成(重量比)の混合物を均一に撹拌混合した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミルで2時間分散した後、5μmのフィルタで濾過し、顔料分散体RP−1、GP−1、BP−1を作製した。
【0037】
【表1】
【0038】
[着色組成物の調製]
下記表2に示す組成(重量比)の混合物を均一になるように攪拌混合した後、1μmのフィルタで濾過して、各色の着色組成物であるRR−1(赤色)、GR−1(緑色)、BR−1(青色)を得た。
【0039】
【表2】
【0040】
上記表2の組成要素の具体例を以下に示した。
モノマー:トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学社製「NKエステルATMPT」)
光開始剤:2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン(BASF社製「イルガキュア 907」)
増感剤:4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(保土ヶ谷化学社製「EAB−F」)
有機溶剤:シクロヘキサノン
【0041】
〔着色層形成およびオーバーコート層形成〕
以上のようにして得た着色組成物を用いて、透明基板上にあらかじめ形成された膜厚2.0μmブラックマトリックスにより区画された領域に各色の画素を形成した。
即ち、透明基板に、赤色の着色組成物であるRR−1をダイコートにより仕上り膜厚1.5μmとなるように塗布した。次いで、90℃で3分間乾燥した後、画素形成用のストライプ状フォトマスクを通して高圧水銀灯の光を100mJ/cm
2照射し、アルカリ現像液にて60秒間現像した。その後、230℃で30分間のベイキングにより硬膜し、赤色画素を得た。このとき、ブラックマトリックス上の赤色層の膜厚は0.65μmとなった。なお、仕上り膜厚とは、230℃で30分間の硬膜後の膜厚あるいは色層の高さを意味する。
次に、同様にして、緑色の着色組成物であるGR−1をダイコートにより仕上り膜厚が1.5μmとなるように塗布し、90℃で5分間乾燥した後、フォトマスクを通して露光し、現像した後、230℃で30分間硬膜することで、緑色画素を得た。このとき、赤色層上の緑色層の膜厚は0.6μmとなった。
更に、赤色の画素、緑色の画素を形成した場合と全く同様にして、青色の着色組成物であるBR−1をダイコートにより仕上り膜厚が1.5μmとなるように塗布し、90℃で5分間乾燥した後、フォトマスクを通して露光し、現像した後、230℃で30分間で硬膜することで、緑色画素、赤色画素と隣接した位置に、仕上り膜厚が1.8μmの青色画素を形成した。このとき、緑色層上の青色層の膜厚は0.5μmとなった。
このようにして、透明基板に赤、緑、青3色の画素を有するカラーフィルタが得られた。なお、アルカリ現像液は以下の組成を有する。
炭酸ナトリウム 1.5重量%
炭酸水素ナトリウム 0.5重量%
陰イオン系界面活性剤(花王・ペリレックスNBL) 8.0重量%
水 90.0重量%
これら3色の画素を形成したカラーフィルタ上に、液晶表示装置の設計により、オーバーコート層ないし透明電極層を形成し、その上に後述の方法によりスペーサを形成する。
【0042】
〔固定スペーサの形成〕
実施例1については、ブラックマトリクス、着色層、オーバーコート層を有する基板にネガ型フォトレジストをスピンナーで塗布し、仕上り膜厚が3.5μmとなるように塗布量を調整してフォトレジスト膜を形成した。減圧乾燥、プレベークを行った後、フォトマスク基材に50μmの窪み部段差とi線透過率が15.0%である半透光膜(ハーフトーン膜)遮光部と、透光部を有する本発明によるフォトマスクを用いて露光を行った。外観で判別出来るようにメインスペーサ用のマスク開口部は一辺が8μmの正方形、ハーフトーン膜を形成したサブスペーサ用の開口部は内接円の直径が14μmの正八角形とした。メインスペーサ用のマスクの高い表面と被露光面とのギャップ量は50μm、露光照度40mW/cm
2、露光量100mJ/cm
2の近接露光を行った。上記フォトマスクの設計条件と露光ギャップ量を表3の実施例1の欄に示す。
メインスペーサは透光部を介した照射で、メインスペーサより高さの低いサブスペーサは半透光膜(ハーフトーン膜)を介した照射で露光を行い、無機アルカリ現像液にて現像し、クリーンオーブンにて230℃30分間の焼成した結果、表4の実施例1に示す固定スペーサのサイズと柱状形状の状態評価を得た。
実施例2〜8、比較例1〜9については、表3に示すようにフォトマスクの各種の設計条件、すなわち窪み部の段差、マスク開口サイズ、ハーフトーン透過率の条件、のいずれかに関して実施例1とは異なるマスクを使用し、露光ギャップの大きさを変える以外は、実施例1と同様の方法で固定スペーサを形成した。
【0043】
【表3】
【0044】
比較例はいずれも従来の方法により作製されたフォトマスクを用いた一例である。
実施例および比較例にて作製したカラーフィルタのメインスペーサおよびサブスペーサの高さ、線幅の測定(μm単位)およびサブスペーサの形状を確認した結果を表4に示す。スペーサの線幅は顕微鏡にて平面視野で測定した際の下底線幅である。また、メインスペーサの高さバラツキ3σはカラーフィルタ面内20ポイントを測定した際の高さのバラツキである。サブスペーサの形状は走査型電子顕微鏡にて60°の角度より観察し、凹みや干渉縞の有無により判定を行った。○印は形状が良好であること、×印は形状が不良であることを示す。
【0045】
【表4】
【0046】
上記の結果より、本実施例、比較例におけるフォトマスクの設計条件および露光ギャップの範囲では、高さの異なる複数種類の突起状パターンを同一面側に同時に形成するためのフォトマスクパターンを同一平面上に設けた場合に、それを用いて形成する高い方の突起状パターンの高さのバラツキが大きくなるか、または、低い方の突起状パターンの形状が不良となり、フォトマスクのパターン形成面に高低差を設けて形成することによって、上記の不具合を克服できることが実証された。
本発明のフォトマスクを使用することで、従来の方法ではサブスペーサの形状不良ないしメインスペーサの高さバラツキが生じたことを改善し、良好なカラーフィルタを提供するとともに、これを組み込んだ液晶表示素子において、低温発泡による表示不良を起こさずに耐荷重特性を向上させることができる。