【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
【0041】
実施例1
(ガラス繊維集束剤の調製)
3−アミノプロピルトリエトキシシラン及び3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの加水分解水溶液に、スチレン−マレイン酸樹脂半エステル水溶液と水を添加し、本発明のゴム補強用ガラス繊維に用いるガラス繊維集束剤を調製した。
【0042】
詳しくは、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(チッソ社製、商品名サイラエースS330、固形分98質量%)の4.5質量部と、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名KBM−403、固形分100質量%)の1.2質量部とを、水300質量部に添加して、室温で20分間撹拌した。そして、これに、スチレン−マレイン酸樹脂半エステル水溶液(三洋化成社製、商品名アクロバインダーBG−7、固形分25質量%)、38.5質量部及びポリオキシエチレンアルキルエーテル(花整王社製、商品名エマルゲン1108、固形分100質量%)7.8質量部を加え、全体として1000重量部になるように水を添加し、ガラス繊維集束剤を調製した。この時のガラス繊維集束剤のpHは8.8であり、固形分は2.5質量%であった。
【0043】
ガラス繊維集束剤中の各成分の含有割合は、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、スチレン−マレイン酸樹脂半エステル及びポリオキシエチレンアルキルエーテルを合わせた固形分質量を100%基準とする質量百分率で表して、3−アミノプロピルトリエトキシシランが17.6質量%、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが4.8質量%、スチレン−マレイン酸樹脂半エステルが46.2質量%及びポリオキシエチレンアルキルエーテルが31.4質量%である。尚、ガラス繊維集束剤中の3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、スチレン−マレイン酸樹脂半エステル及びポリオキシエチレンアルキルエーテルの各々の質量は各々の固形分濃度から固形分に換算して求めた。また、3−アミノプロピルトリエトキシシラン及び2−アミノエタノールポリマーとアジリジンのトリメトキシシラン塩の各々の質量は、未加水分解物として求めた。その結果を表1に示す。
【0044】
(ガラス繊維被覆用塗布液の調製)
レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物に、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体のエマルジョンとスチレン−ブタジエン共重合体のエマルジョンとクロロスルホン化ポリエチレンとアンモニア水と水を添加し、本発明のゴム補強用ガラス繊維に用いるガラス繊維被覆用塗布液を調製した。
【0045】
詳しくは、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液(レゾルシンとホルムアルデヒドとのモル比、1.0:1.0で反応させたもの、固形分10質量%)、300質量部と、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体のエマルジョン(日本エイアンドエル株式会社製、商品名ピラテックス、固形分41.0質量%)、400質量部と、スチレン−ブタジエン共重合体のエマルジョン(旭化成株式会社製、品名、L−1432、固形分、48質量%)100質量部と、クロロスルホン化ポリエチレン(住友精化社製、商品名CSM450、固形分40質量%)50質量部、PH調整剤としてアンモニア水(濃度、25.0質量%)50質量部を加え、全体として1000重量部になるように水を添加し、ガラス繊維被覆用塗布液を調製した。
【0046】
ガラス繊維被覆用塗布液中の各成分の含有割合は、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体とスチレン−ブタジエン共重合体とクロロスルホン化ポリエチレンを合わせた固形分質量を100%基準とする質量百分率で表して、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物が11.5質量%、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体が62.6質量%、スチレン−ブタジエン共重合体が18.3質量%、クロロスルホン化ポリエチレンが7.6質量%である。
【0047】
尚、ガラス繊維被覆用塗布液中のレゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体とスチレン−ブタジエン共重合体の質量は固形分濃度から固形分に換算して求めた。ほぼ、このままの含有割合でゴム補強用ガラス繊維の被覆層となる。
【0048】
(ゴム補強用ガラス繊維の作製)
前述の手順で作製したガラス繊維集束剤を用い、径9μmのガラス繊維フィラメント200本を集束させて紡糸して得た10kg質量のケーキを、135℃12時間乾燥した。このときの集束剤付着量は0.38質量%であった。該ケーキ3個からガラス繊維束3本を引き揃えた後、前述の手順で作製したガラス繊維被覆用塗布液の入った槽にガラス繊維束を浸漬して取出し、その後、温度280℃下で、22秒間乾燥させて被覆層を設け、1本のゴム補強用ガラス繊維を作製した。この時の固形分付着率、即ち、被覆層の質量割合は、ゴム補強用ガラス繊維の全質量に対して19.0質量%であった。
【0049】
実施例2〜5
表1に記載した固形分比率になるよう3−アミノプロピルトリエトキシシラン(チッソ社製、商品名サイラエースS330、固形分98質量%)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名KBM−403、固形分100質量%)、スチレン−マレイン酸樹脂半エステル水溶液(荒川化学工業社製、商品名アラスター703S、固形分30質量%)及びポリオキシエチレンアルキルエーテル(花王社製、商品名エマルゲン1108、固形分100質量%)を用いて実施例1と同じような手順でガラス繊維集束剤を調製した。この時のガラス繊維集束剤のpHはそれぞれ8.8、8.8、9.0、8.7であり、固形分はそれぞれ2.5質量%、2.5質量%、2.6質量%、2.5質量%であった。
【0050】
次いで、実施例1に示した手順でガラス繊維を得て、実施例1と同様のガラス繊維被覆用塗布液を調製し、実施例1と同様の手順で作業を行い、ゴム補強用ガラス繊維を作製した。
【0051】
実施例6
表1に記載した固形分比率になるよう3−アミノプロピルトリエトキシシラン(チッソ社製、商品名サイラエースS330、固形分98質量%)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名KBM−403、固形分100質量%)、スチレン−マレイン酸樹脂半エステル水溶液(荒川化学工業社製、商品名アラスター703S、固形分30質量%)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(花王社製、商品名エマルゲン1108、固形分100質量%)及びpH調製のため試薬1級酢酸を用いて実施例1と同じような手順でガラス繊維集束剤を調製した。この時のガラス繊維集束剤のpHは5.9であり、固形分は2.6質量%であった。
【0052】
次いで、実施例1に示した手順でガラス繊維を得て、実施例1と同様のガラス繊維被覆用塗布液を調製し、実施例1と同様の手順で作業を行い、ゴム補強用ガラス繊維を作製した。
【0053】
比較例1
表1に記載した固形分比率になるよう3−アミノプロピルトリエトキシシラン(チッソ社製、商品名サイラエースS330、固形分98質量%)、アクリル酸エステル−スチレン共重合物のエマルジョン(吉村油化学社製、商品名ユカレジンKE602、固形分35質量%)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(花王社製、商品名エマルゲン1108、固形分100質量%)及び試薬1級酢酸を用いて実施例1と同じような手順でガラス繊維集束剤を調製した。この時のガラス繊維集束剤のpHは5.9であり、固形分は2.5整理質量%であった。
【0054】
次いで、実施例1に示した手順でガラス繊維を得て、実施例1と同様のガラス繊維被覆用塗布液を調製し、実施例1と同様の手順で作業を行い、ゴム補強用ガラス繊維を作製した。
【0055】
比較例2
表1に記載した固形分比率になるよう3−アミノプロピルトリエトキシシラン(チッソ社製、商品名サイラエースS330、固形分98質量%)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名KBM−403、固形分100質量%)及びスチレン−マレイン酸樹脂半エステル水溶液(荒川化学工業社製、商品名アラスター703S、固形分30質量%)を用いて実施例1と同じような手順でガラス繊維集束剤を調製した。この時のガラス繊維集束剤のpHは8.8であり、固形分は2.5質量%であった。
【0056】
次いで、実施例1に示した手順でガラス繊維を得て、実施例1と同様のガラス繊維被覆用塗布液を調製し、実施例1と同様の手順で作業を行い、ゴム補強用ガラス繊維を作製した。
【0057】
比較例3
表1に記載した固形分比率になるよう3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名KBM−403、固形分100質量%)、スチレン−マレイン酸樹脂半エステル水溶液(荒川化学工業社製、商品名アラスター703S、固形分30質量%)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(花王社製、商品名エマルゲン1108、固形分100質量%)及びpH調製のため試薬1級酢酸を用いて実施例1と同じような手順でガラス繊維集束剤を調製した。この時のガラス繊維集束剤のpHは5.9であり、固形分は2.5質量%であった。
【0058】
次いで、実施例1に示した手順でガラス繊維を得て、実施例1と同様のガラス繊維被覆用塗布液を調製し、実施例1と同様の手順で作業を行い、ゴム補強用ガラス繊維を作製した。
【0059】
比較例4
比較例1と同じガラス繊維集束剤を用い、ガラス繊維を処理して常温で3日間乾燥してガラス繊維を得た。次に実施例1と同様のガラス繊維被覆用塗布液を調製し、実施例1と同様の手順で作業を行い、ゴム補強用ガラス繊維を作製した。
【0060】
(各ガラス繊維の毛羽発生量の評価)
ケーキからガラス繊維200本集束したガラス繊維束を解舒して、3本引き揃えてガイドを通してガラス繊維被覆用塗布液塗布工程に導く際、ガイドに付着する毛羽量を目視観察し、毛羽が多い(×)、毛羽が少ない(○)を観察した。
【0061】
(毛羽発生量の評価結果)
毛羽発生量の評価結果を表2に示す。エポキシシランとポリオキシエチレンアルキルエーテルを含むガラス繊維集束剤で処理された実施例1
〜6のガラス繊維は、エポキシシラ整ンを含まない比較例1及びエポキシシランが過剰に含まれている比較例3、又はポリオキシエチレンアルキルエーテルを含まない比較例2と比較し、毛羽発生量が少なく、ガラス繊維被覆用塗布液塗布工程の作業性は良好であった。比較例4の毛羽発生量が少ないのは、常温乾燥、換言すると非加熱乾燥のためである。
【0062】
(各ゴム補強用ガラス繊維の引張強さの評価試験)
10kgのケーキから、ガラス繊維束を1kg解舒した部位及び5kg解舒した部位(ケーキ中央部)から得られた引張り強さ測定に供するゴム補強用ガラス繊維を、クランプ間距離150mmのクランプに装着し、引張り速度を250mm/分とし、ゴム補強用ガラス繊維が破断するまでの最大の抵抗値を引張り強さとした。各部位毎に10本のゴム補強用ガラス繊維の抵抗値を測定し、その平均値を各部位のゴム補強用ガラス繊維の引張り強さとした。
【0063】
(引張強さの評価結果)
引張強さの評価結果を表2に示す。実施例1、2、3、4、5及び6の1kg地点の引張強さは、各々、108、104、105、108、103及び98Nであった。実施例6の引張強さが小さかったのは、pHが5.9で他より低くかったためである。一方、比較例1〜4の1kg地点の引張強さは、各々、83、86、88及び96Nであった。比較例1
〜3の引張強さが小さかったのは毛羽発生によるガラス繊維の破損の影響があったためと考えられる。比較例4は、集束剤の毛羽の発生が少なくガラス繊維の破損が軽微であったためと考えられる。
【0064】
実施例1、2、3、4、5及び6の5kg地点の引張強さは、各々、112、103、102、102、101及び91Nであった。一方、比較例1
〜4の5kg地点の引張強さは、各々、79、85、85及び78Nあり、実施例1
〜5と比較すると小さかった。比較例1は集束剤のpHが5.9と低かったこととエポキシシランを添加していないため毛羽発生によるガラス繊維の破損の影響があったためと考えられる。比較例2はポリオキシエチレンアルキルエーテルを含まないため毛羽発生によるガラス繊維の破損の影響があったためと考えられる。比較例3はエポキシシランが過剰に含まれているためガラス集束剤が硬く成り過ぎ、フェノール類−ホルムアルデヒド樹脂ゴムラテックスがうまく被覆されていないため、ガラス繊維の破損の影響があったためと考えられる。比較例4はマイグレーションによる影響によるものと考える。
【0065】
(各ゴム補強用ガラス繊維とクロロプレンゴムの接着強さの評価試験)
接着強さの評価試験を説明する前に、試験に使用したゴムを説明する。
【0066】
母材としてのクロロプレンゴム、100質量部に対して、カーボンブラック、40質量部と、亜鉛華、5質量部と、ステアリン酸、0.5質量部と、硫黄、0.4質量部と、加硫促進剤、2.5質量部と、老化防止剤、1.5質量部とを配合した。
【0067】
試験片はクロロプレンゴムからなる3mm厚、25mm幅のゴムシート上に前記ゴム補強用ガラス繊維を20本並べ、その上から布をかぶせ、温度、150℃下、196ニュートン/cm2の条件で端部を除き押圧し、35分間加硫させつつ成形して、接着強さ評価のための試験片を得た。この試験片の接着強さの測定を、端部において各々のゴムシートとゴム補強用ガラス繊維を個別にクランプにて挟み、剥離速度を50mm/minとし、整ゴムシートからゴム補強用ガラス繊維を剥がす際の最大の抵抗値を測定し、DRY接着強さとした。一方、同様にして得た試験片を2時間沸騰水中に浸漬した後、上記と同様にして接着強さの測定を行いWET接着強さとした。接着強さが大きいほど接着力に優れる。
【0068】
(接着強さの評価結果)
接着強さの評価結果を表2に示す。実施例1、2、3、4、5及び6のDRY接着強さは、各々、350、342、365、330、342及び335N/25mmですべてゴム破壊であり、接着強さは良好であった。また、実施例1、2、3、4、5及び6のWET接着強さは、各々、345、331、370、328、325及び281N/25mmですべてゴム破壊であり、接着強さは良好であった。実施例1
〜6全てにおいて接着強さは良好であった。
【0069】
比較例1、2、3及び4のDRY接着強さは、各々、278、350、342及び341N/25mmですべてゴム破壊であり、接着強さは良好であった。また、比較例1、2、3及び4のWET接着強さは、各々、193、332、315及び323N/25mmであった。比較例2、3及び4の接着強さは良好であったが、比較例1のWET接着強さの低下はガラス繊維と集束剤との結合が水の進入によって弱くなったためである。
【表1】
【表2】