特許第5867049号(P5867049)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5867049
(24)【登録日】2016年1月15日
(45)【発行日】2016年2月24日
(54)【発明の名称】ゴム補強用ガラス繊維とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 25/10 20060101AFI20160210BHJP
   C08J 5/08 20060101ALI20160210BHJP
   D06M 13/513 20060101ALI20160210BHJP
   D06M 15/263 20060101ALI20160210BHJP
   D06M 15/693 20060101ALI20160210BHJP
   D06M 15/41 20060101ALI20160210BHJP
【FI】
   C03C25/02 N
   C08J5/08CEQ
   D06M13/513
   D06M15/263
   D06M15/693
   D06M15/41
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-273128(P2011-273128)
(22)【出願日】2011年12月14日
(65)【公開番号】特開2013-124199(P2013-124199A)
(43)【公開日】2013年6月24日
【審査請求日】2014年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108671
【弁理士】
【氏名又は名称】西 義之
(72)【発明者】
【氏名】岩野 隆史
(72)【発明者】
【氏名】小林 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】小浜 峯一
(72)【発明者】
【氏名】大柿 克彦
【審査官】 増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−203890(JP,A)
【文献】 特開2010−270326(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/074353(WO,A1)
【文献】 特開平10−297943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノシラン、エポキシシラン、スチレン−マレイン酸樹脂半エステル及びポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有する水系組成物からなるガラス繊維集束剤が塗布され、乾燥されたガラス繊維に、
レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物、レゾルシン−モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物、レゾルシン−クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物から選ばれる1種であるフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物と、
ゴムラテックスと、
を含有する塗布液からなる被覆層が設けられているゴム補強用ガラス繊維。
【請求項2】
前記ガラス繊維集束剤の水系組成物の固形分を合わせた質量を100%基準として、アミノシラン5〜50質量%、エポキシシラン1〜15質量%、スチレン−マレイン酸樹脂半エステル30〜85質量%、ポリオキシエチレンアルキルエーテル5〜60質量%の範囲で含むことを特徴とする請求項1に記載のゴム補強用ガラス繊維。
【請求項3】
前記ガラス繊維集束剤が、アミノシラン、エポキシシラン、スチレン−マレイン酸樹脂半エステル及びポリオキシエチレンアルキルエーテルを固形分として1.0〜5.0質量%含有する請求項1又は請求項2に記載のゴム補強用ガラス繊維。
【請求項4】
アミノシラン、エポキシシラン、スチレン−マレイン酸樹脂半エステル及びポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有する水系組成物からなるガラス繊維集束剤をガラス繊維に塗布し、乾燥し、次いで、
レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物、レゾルシン−モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物、レゾルシン−クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物から選ばれる1種であるフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物と、
ゴムラテックスと、
を含有する塗布液を被覆し被覆層を設けることを特徴とするゴム補強用ガラス繊維の製造方法。
【請求項5】
前記ガラス繊維集束剤のpHを7以上11以下としたことを特徴とする、請求項4に記載のゴム補強用ガラス繊維の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムベルト、タイヤ等のゴム製品の補強用に用いるガラス繊維とその製造方に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ゴム補強用のガラス繊維はゴムとの馴染みを良くし、ゴムベルトやタイヤ等のゴム製品との接着を良くするために、フェノール類−ホルムアルデヒド樹脂ゴムラテックスを被覆して用いられている。フェノール類とは、モノヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシベンゼンあるいはクロロフェノールなどである。このフェノール類−ホルムアルデヒド樹脂ゴムラテックス分散液のガラス繊維束への浸透を良好に行うために、紡糸時、ガラス繊維をガラス繊維束として巻き取る際、集束剤がガラス繊維に塗布される。
【0003】
例えば、特許文献1には、アミノシランとカルボキシル化スチレン−ブタジエンラテックスを含有することを特徴とするゴム補強用ガラス繊維集束剤が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、アミノシランとカチオン性重合体エマルジョンを含有することを特徴とするゴム補強用ガラス繊維集束剤が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、アミンシランと水素化ニトリルゴムを含有することを特徴とするゴム補強用ガラス繊維集束剤が開示されている。
【0006】
ゴム補強用ガラス繊維を製造する工程においては、まず、紡糸時にガラス溶融窯下のブッシングノズルから突出した多数のガラス繊維フィラメントにアプリケーターで集束剤を塗布したのち、集束シューによりガラス繊維束として束ねられ巻き取られる。ここでガラス繊維束を巻き取ったものをケーキと称し、乾燥工程を経てフェノール類−ホルムアルデヒド樹脂ゴムラテックス分散液で処理する工程へ送られる。
【0007】
紡糸時に、ガラス繊維に集束剤を塗布しながら、該ガラス繊維を巻き取ったもの(以後ケーキと記す)を、加熱乾燥又は非加熱乾燥する。次に、乾燥したケーキからガラス繊維束を解舒してフェノール類−ホルムアルデヒド樹脂ゴムラテックス分散液で該ガラス繊維束を被覆処理する。
【0008】
加熱乾燥とは、100℃以上の熱風下で数時間かけて乾燥させる方法である。非加熱乾燥とは、常温で湿度調整された環境下で数日かけて乾燥させる方法である。
【0009】
加熱乾燥においては、短時間で乾燥が完了し、ケーキが保持する水分率が低くなることから、加熱乾燥後は、ケーキの水分率の大きな変化もなくガラス繊維の引張強さなどの品質が安定する。しかし、熱をかけるためにガラス繊維を被覆している集束剤が固くなり、ガラス繊維束を構成するガラス繊維同士の結束が強固となるため、フェノール類−ホルムアルデヒド樹脂ゴムラテックス分散液がガラス繊維束に含浸し難くなる。また、ガラス繊維束の柔軟性が低下してガラス繊維フィラメントが破損し易くなる結果、毛羽の発生が多くなり、フェノール類−ホルムアルデヒド樹脂ゴムラテックス分散液の含浸工程の作業性が低下する。
【0010】
非加熱乾燥においては、熱をかけないためにガラス繊維を被覆している集束剤が柔らかく、ガラス繊維束を構成するガラス繊維同士の結束が弱いため、フェノール類−ホルムアルデヒド樹脂ゴムラテックス分散液がガラス繊維束に含浸し易くなる。しかし、非加熱乾燥時のケーキの内層に位置するガラス繊維束の引張強さがケーキの外層部と比較して低下する。これは、ケーキの乾燥速度が加熱乾燥と比較して遅いため、マイグレーションによるケーキ内の集束剤の移動も遅く、集束剤を構成する各成分のガラス表面への吸着能力の差の影響が現れ、ケーキ内層から外層にかけて、集束剤全体のガラス繊維への付着量の差だけではなく、集束剤を構成する各成分の分布にも差が出たためと考えられる。以上のように、乾燥が進むと時間と共に、水分率、集束剤の付着量や組成及びガラス繊維束の引張強さが変化し、フェノール類−ホルムアルデヒド樹脂ゴムラテックス分散液で処理できる期間が制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平2−157142号公報
【特許文献2】特開平2−204347号公報
【特許文献3】特開平10−297943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ゴム補強用ガラス繊維を製造する工程において、ケーキの乾燥時、ケーキ表面から水が蒸発するとき、ケーキの内層部の水分がケーキ表層に移動する。この時集束剤の組成成分も水と共にケーキ表層に移動し、ケーキの乾燥と共に、ケーキの内層部と外層部とに集束剤量に差が生じる。この現象をマイグレーションと言う。
【0013】
フェノール類−ホルムアルデヒド樹脂ゴムラテックス分散液で処理できる期間が制限されず、毛羽の発生が少なく、フェノール類−ホルムアルデヒド樹脂ゴムラテックス分散液がガラス繊維束に含浸し易く、ケーキの水分率の大きな変化もなくガラス繊維の引張強さやゴムとの接着強さなどの品質が安定するゴム補強用ガラス繊維集束剤は開示されていない。すなわち、加熱乾燥しても毛羽の発生が少なく、フェノール類−ホルムアルデヒド樹脂ゴムラテックス分散液がガラス繊維束に含浸し易く、接着強さが良好なゴム補強用ガラス繊維集束剤が見出されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものである。
【0015】
すなわち、本発明は、(1)アミノシラン、エポキシシラン、スチレン−マレイン酸樹脂半エステル及びポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有する水系組成物からなるガラス繊維集束剤が塗布され、乾燥されたガラス繊維に、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物、レゾルシン−モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物、レゾルシン−クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物から選ばれる1種であるフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物と、ゴムラテックスと、を含有する塗布液からなる被覆層が設けられているゴム補強用ガラス繊維である。
【0016】
また、本発明は、(2)前記ガラス繊維集束剤の水系組成物の固形分を合わせた質量を100%基準として、アミノシラン5〜50質量%、エポキシシラン1〜15質量%、スチレン−マレイン酸樹脂半エステル30〜85質量%、ポリオキシエチレンアルキルエーテル5〜60質量%の範囲で含むことを特徴とする上記(1)に記載のゴム補強用ガラス繊である。
【0017】
また、本発明は、(3)前記ガラス繊維集束剤が、アミノシラン、エポキシシラン、スチレン−マレイン酸樹脂半エステル及びポリオキシエチレンアルキルエーテルを固形分として1.0〜5.0質量%含有する上記(1)又は(2)に記載のゴム補強用ガラス繊維である。
【0018】
また、本発明は、(4)アミノシラン、エポキシシラン、スチレン−マレイン酸樹脂半エステル及びポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有する水系組成物からなるガラス繊維集束剤を塗布し、乾燥し、次いで、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物、レゾルシン−モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物、レゾルシン−クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物から選ばれる1種であるフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物と、ゴムラテックスと、を含有する塗布液を被覆し被覆層を設けることを特徴とするゴム補強用ガラス繊維の製造方法である。
【0019】
さらに、本発明は、(5)前記ガラス繊維集束剤のpHを7以上11以下としたことを特徴とする、(4)に記載のゴム補強用ガラス繊維の製造方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明のゴム補強用ガラス繊維に用いるガラス繊維集束剤を用いれば、ケーキを加熱乾燥しても、毛羽の発生も少なく作業性が良好であり、フェノール類−ホルムアルデヒド樹脂ゴムラテックス分散液がガラス繊維束に含浸し易いガラス繊維を得ることができる。また、本発明のゴム補強用ガラス繊維に用いるガラス繊維集束剤で被覆したガラス繊維(ケーキ)は、加熱乾燥することにより、フェノール類−ホルムアルデヒド樹脂ゴムラテックス分散液で処理できる期間が制限されず、ケーキの水分率の大きな変化もなくガラス繊維の引張強さなどの品質が安定する。また、本発明の、該ガラス繊維集束剤を塗布したガラス繊維に、フェノール類−ホルムアルデヒド樹脂ゴムラテックス分散液を被覆し被覆層を設けたゴム補強用ガラス繊維は母材ゴムとの接着が良好である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明を実施するための形態について詳細に説明する。ゴム補強用としての機能を十分に発揮するために、ガラス繊維は、紡糸時、ガラス繊維をガラス繊維束として巻き取ってケーキと成す際、ガラス繊維集束剤がガラス繊維に塗布される。さらに、このガラス繊維にフェノール類−ホルムアルデヒド樹脂ゴムラテックス分散液を塗布し被覆層を形成させる。
【0022】
ガラス繊維は、その種類を特に限定されないが、使用用途の広さなどの面からE−ガラス(無アルカリガラス)が好ましい。また、その他の種類では、高強度ガラスが挙げられる。
【0023】
本発明において用いられるガラス繊維集束剤は、アミノシラン、エポキシシラン、スチレン−マレイン酸樹脂半エステル及びポリオキシエチレンアルキルエーテルとを含有する水系組成物である。
【0024】
アミノシランは、その種類を特に限定しないが、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、3−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン及びN−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩が望ましい。特に、汎用的に使用され入手が容易でコスト的に利点のある、3−アミノプロピルトリエトキシシランが好適に使用でき、サイラエースS330(チッソ社製、固形分98質量%)として入手できる。
【0025】
エポキシシランは、その種類を特に限定しないが、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン及び3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランが望ましい。特に、汎用的に使用され入手が容易でコスト的に利点のある、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好適に使用でき、KBM−403(信越化学工業社製、固形分100質量%)として入手できる。
【0026】
スチレン−マレイン酸樹脂半エステルはスチレンとマレイン酸をモル比で5:1〜1:5の比率で反応させた数平均分子量2,000〜200,000の共重合物であり、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などの塩として水に可溶である。該スチレン−マレイン酸樹脂半エステルは耐熱性が高く、ガラス繊維の保護被膜が均一に形成できるため、ガラス繊維の強度保持の点で好適に使用され、例えば、アラスター703S(荒川化学工業社製、固形分30質量%)として入手できる。
【0027】
本発明のゴム補強用ガラス繊維に用いる集束剤においては、アミノシラン、エポキシシラン、スチレン−マレイン酸樹脂半エステル以外に通常の集束剤に用いられる平滑剤等の各種副資材を用いることが好ましく、ガラス繊維束に耐摩耗性を与え、毛羽の発生を防ぐためにポリオキシエチレンアルキルエーテルが好適に使用され、例えば、エマルゲン1108(花王社製、固形分100質量%)として入手できる。
【0028】
本発明の、フェノール類−ホルムアルデヒド樹脂ゴムラテックスで塗布被覆され所望のゴム補強用ガラス繊維を得るには、水系組成物中のアミノシラン(例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン)、エポキシシラン(例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、スチレン−マレイン酸樹脂半エステル及びポリオキシエチレンアルキルエーテルの各々固形分を合わせた質量を100%基準として、質量百分率で表して、アミノシランは集束剤中に固形分で5〜50質量%含むことが好ましい。5質量%よりも少ないとガラス繊維とスチレン−マレイン酸樹脂半エステル及びフェノール類−ホルムアルデヒド樹脂ゴムラテックスとの濡れを良くすることができず、所望のゴム補強用ガラス繊維を得ることができない。一方、50質量%を超えると、ガラス繊維束が柔らかく成り過ぎ、作業性上好ましくない。より好ましくは10〜40質量%である。さらに好ましくは15〜30質量%である。水系組成物中で、アミノシランは、ケイ素原子上のアルコキシ基などの加水分解性基の加水分解によりシラノールを生じる。
【0029】
エポキシシランは集束剤中に固形分で1〜15質量%であることが好ましい。1質量%よりも少ないと加熱乾燥後にガラス繊維が毛羽立ちやすく使用が困難となる。一方、15質量%を超えると、ガラス集束剤が硬く成り過ぎて柔軟性が失われ脆弱となり毛羽立ちやすくなり、また、ガラス繊維束へのフェノール類−ホルムアルデヒド樹脂ゴムラテックス分散液の含浸性も損なわれ、所望のゴム補強用ガラス繊維の特性が得られない。より好ましくは2〜10質量%である。さらに好ましくは3〜7質量%である。水系組成物中で、エポキシシランは、ケイ素原子上のアルコキシ基などの加水分解性基の加水分解によりシラノールを生じる。
【0030】
スチレン−マレイン酸樹脂半エステルは集束剤中に固形分で30〜85質量%であることが好ましい。30質量%よりも少ないと加熱乾燥後のガラス繊維の強度が低下しやすい。一方、85質量%を超えると、ガラス繊維が硬くなり、屈曲疲労性が低下してしまう。より好ましくは35〜80質量%である。さらに好ましくは40〜70質量%である。
【0031】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルは集束剤中に固形分で5〜60質量%の範囲で含むことが好ましい。5質量%よりも小さいと耐磨耗性向上効果が小さく毛羽が発生しやすい。一方、60質量%を超えると、ガラス繊維集束剤の安定性が低下し、ガラス繊維への塗布が困難となりガラス繊維集束剤として使用できない。より好ましくは10〜50質量%である。さらに好ましくは15〜40質量%である。
【0032】
本発明のゴム補強用ガラス繊維に用いる集束剤は、水を加えて固形分を1.0〜5.0質量%に調整した水系組成物とするのが望ましい。固形分が1.0質量%より小さいと、該集束剤を塗布したガラス繊維束の結束性が不十分となり、毛羽が発生し易くなる。5.0質量%より大きいと該集束剤を塗布したガラス繊維束の結束性が強すぎ、フェノール類−ホルムアルデヒド樹脂ゴムラテックス塗布液がガラス繊維間に浸透し難くなる。より好ましくは1.3〜3.5質量%である。さらに好ましくは1.5〜3.0質量%である。
【0033】
本発明のゴム補強用ガラス繊維に用いる集束剤のpHは7.0〜11.0に調整するのが好ましい。pHが7.0より小さいとフェノール類−ホルムアルデヒド樹脂ゴムラテックスを塗布後のゴム補強用ガラス繊維の引張強度が低下する。一方pHが11を超えると、ガラス繊維集束剤の安定性が失われガラス繊維への塗布が困難となる。より好ましくはpH7.5〜10である。さらに好ましくはpH8.0〜9.5である。
【0034】
前記ガラス繊維集束剤を、溶融紡糸時に常法によりガラス繊維に塗布してから、所定の集束本数で集束して巻取り、例えば径9μmのガラス繊維フィラメントを200本程度に集束して巻取り、乾燥して所望のガラス繊維を得る。このとき、該ガラス繊維集束剤が、該ガラス繊維集束剤で塗布被覆し乾燥させたガラス繊維全体に対して、固形分として0.1〜0.8質量%被覆即ち付着していることが好ましい。詳しく述べると集束剤付着量即ち強熱減量(強熱減量(%)=(M1−M2)/M1×100、(M1:集束剤で被覆し乾燥したガラス繊維の質量、M2:前記ガラス繊維を600℃で15分間焼いて集束剤を除いた後のガラス繊維の質量))が0.1〜0.8質量%であることが好ましい。0.1質量%よりも小さいとガラス繊維の集束及び保護が十分にできずガラス繊維が損傷を受けて毛羽の発生が増加するために、所望のゴム補強用ガラス繊維が得られない。一方、0.8質量%を超えると、ガラス繊維同士の集束が高すぎてフェノール類−ホルムアルデヒド樹脂ゴムラテックスがガラス繊維束中に含浸しにくくなり好ましくない。より好ましくは0.15〜0.6質量%である。さらに好ましくは0.2〜0.5質量%である。
【0035】
該ガラス繊維束を巻き取ったケーキを135℃で12時間乾燥させ、所望のガラス繊維を得る。該フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物は、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物、レゾルシン−モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物、レゾルシン−クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物から選ばれる1種を用いることができる。
【0036】
さらにガラス繊維は、フェノール類−ホルムアルデヒド樹脂ゴムラテックス塗布液を塗布し被覆層を形成させることが望ましい。この被覆層が形成されることによりガラス繊維は、その表面を保護されかつ内部まで固定され、ゴム母材との接着性が発現される。
【0037】
ここで本発明でいうゴム母材とは、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、水素化ニトリルゴム、EPDMゴムの1種または2種以上のゴムに加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、接着助剤等を混合したゴム組成物等補強用ガラス繊維を用いて補強されるゴム母材をいう。
【0038】
ガラス繊維に上記ガラス繊維集束剤を塗布する方法は、特に限定されないが、ガラス溶融窯下のブッシングノズルから突出した多数のガラス繊維フィラメントにアプリケーターで集束剤を塗布する方法が一般的である。ここで、アプリケーターとは、カーボンローラと集束剤の槽とを備えた装置であり、このカーボンロ−ラーの一部が回転しながら集束剤に接触するので、カーボンローラーの表面は集束剤で常時濡れている。そして、このカーボンローラーにガラス繊維を接触させることにより、集束剤をガラス繊維に転移させる。
【0039】
また、ガラス繊維上にフェノール類−ホルムアルデヒド樹脂ゴムラテックスの被覆層を形成させる方法は、特に限定されないが、このガラス繊維束を数本引き揃えフェノール類−ホルムアルデヒド樹脂ゴムラテックス塗布液の入った槽にこのガラス繊維束を浸漬させた後取出し、余分なフェノール類−ホルムアルデヒド樹脂ゴムラテックス塗布液を除いた後、乾燥する方法が一般的である。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
【0041】
実施例1
(ガラス繊維集束剤の調製)
3−アミノプロピルトリエトキシシラン及び3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの加水分解水溶液に、スチレン−マレイン酸樹脂半エステル水溶液と水を添加し、本発明のゴム補強用ガラス繊維に用いるガラス繊維集束剤を調製した。
【0042】
詳しくは、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(チッソ社製、商品名サイラエースS330、固形分98質量%)の4.5質量部と、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名KBM−403、固形分100質量%)の1.2質量部とを、水300質量部に添加して、室温で20分間撹拌した。そして、これに、スチレン−マレイン酸樹脂半エステル水溶液(三洋化成社製、商品名アクロバインダーBG−7、固形分25質量%)、38.5質量部及びポリオキシエチレンアルキルエーテル(花整王社製、商品名エマルゲン1108、固形分100質量%)7.8質量部を加え、全体として1000重量部になるように水を添加し、ガラス繊維集束剤を調製した。この時のガラス繊維集束剤のpHは8.8であり、固形分は2.5質量%であった。
【0043】
ガラス繊維集束剤中の各成分の含有割合は、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、スチレン−マレイン酸樹脂半エステル及びポリオキシエチレンアルキルエーテルを合わせた固形分質量を100%基準とする質量百分率で表して、3−アミノプロピルトリエトキシシランが17.6質量%、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが4.8質量%、スチレン−マレイン酸樹脂半エステルが46.2質量%及びポリオキシエチレンアルキルエーテルが31.4質量%である。尚、ガラス繊維集束剤中の3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、スチレン−マレイン酸樹脂半エステル及びポリオキシエチレンアルキルエーテルの各々の質量は各々の固形分濃度から固形分に換算して求めた。また、3−アミノプロピルトリエトキシシラン及び2−アミノエタノールポリマーとアジリジンのトリメトキシシラン塩の各々の質量は、未加水分解物として求めた。その結果を表1に示す。
【0044】
(ガラス繊維被覆用塗布液の調製)
レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物に、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体のエマルジョンとスチレン−ブタジエン共重合体のエマルジョンとクロロスルホン化ポリエチレンとアンモニア水と水を添加し、本発明のゴム補強用ガラス繊維に用いるガラス繊維被覆用塗布液を調製した。
【0045】
詳しくは、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液(レゾルシンとホルムアルデヒドとのモル比、1.0:1.0で反応させたもの、固形分10質量%)、300質量部と、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体のエマルジョン(日本エイアンドエル株式会社製、商品名ピラテックス、固形分41.0質量%)、400質量部と、スチレン−ブタジエン共重合体のエマルジョン(旭化成株式会社製、品名、L−1432、固形分、48質量%)100質量部と、クロロスルホン化ポリエチレン(住友精化社製、商品名CSM450、固形分40質量%)50質量部、PH調整剤としてアンモニア水(濃度、25.0質量%)50質量部を加え、全体として1000重量部になるように水を添加し、ガラス繊維被覆用塗布液を調製した。
【0046】
ガラス繊維被覆用塗布液中の各成分の含有割合は、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体とスチレン−ブタジエン共重合体とクロロスルホン化ポリエチレンを合わせた固形分質量を100%基準とする質量百分率で表して、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物が11.5質量%、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体が62.6質量%、スチレン−ブタジエン共重合体が18.3質量%、クロロスルホン化ポリエチレンが7.6質量%である。
【0047】
尚、ガラス繊維被覆用塗布液中のレゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体とスチレン−ブタジエン共重合体の質量は固形分濃度から固形分に換算して求めた。ほぼ、このままの含有割合でゴム補強用ガラス繊維の被覆層となる。
【0048】
(ゴム補強用ガラス繊維の作製)
前述の手順で作製したガラス繊維集束剤を用い、径9μmのガラス繊維フィラメント200本を集束させて紡糸して得た10kg質量のケーキを、135℃12時間乾燥した。このときの集束剤付着量は0.38質量%であった。該ケーキ3個からガラス繊維束3本を引き揃えた後、前述の手順で作製したガラス繊維被覆用塗布液の入った槽にガラス繊維束を浸漬して取出し、その後、温度280℃下で、22秒間乾燥させて被覆層を設け、1本のゴム補強用ガラス繊維を作製した。この時の固形分付着率、即ち、被覆層の質量割合は、ゴム補強用ガラス繊維の全質量に対して19.0質量%であった。
【0049】
実施例2〜5
表1に記載した固形分比率になるよう3−アミノプロピルトリエトキシシラン(チッソ社製、商品名サイラエースS330、固形分98質量%)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名KBM−403、固形分100質量%)、スチレン−マレイン酸樹脂半エステル水溶液(荒川化学工業社製、商品名アラスター703S、固形分30質量%)及びポリオキシエチレンアルキルエーテル(花王社製、商品名エマルゲン1108、固形分100質量%)を用いて実施例1と同じような手順でガラス繊維集束剤を調製した。この時のガラス繊維集束剤のpHはそれぞれ8.8、8.8、9.0、8.7であり、固形分はそれぞれ2.5質量%、2.5質量%、2.6質量%、2.5質量%であった。
【0050】
次いで、実施例1に示した手順でガラス繊維を得て、実施例1と同様のガラス繊維被覆用塗布液を調製し、実施例1と同様の手順で作業を行い、ゴム補強用ガラス繊維を作製した。
【0051】
実施例6
表1に記載した固形分比率になるよう3−アミノプロピルトリエトキシシラン(チッソ社製、商品名サイラエースS330、固形分98質量%)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名KBM−403、固形分100質量%)、スチレン−マレイン酸樹脂半エステル水溶液(荒川化学工業社製、商品名アラスター703S、固形分30質量%)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(花王社製、商品名エマルゲン1108、固形分100質量%)及びpH調製のため試薬1級酢酸を用いて実施例1と同じような手順でガラス繊維集束剤を調製した。この時のガラス繊維集束剤のpHは5.9であり、固形分は2.6質量%であった。
【0052】
次いで、実施例1に示した手順でガラス繊維を得て、実施例1と同様のガラス繊維被覆用塗布液を調製し、実施例1と同様の手順で作業を行い、ゴム補強用ガラス繊維を作製した。
【0053】
比較例1
表1に記載した固形分比率になるよう3−アミノプロピルトリエトキシシラン(チッソ社製、商品名サイラエースS330、固形分98質量%)、アクリル酸エステル−スチレン共重合物のエマルジョン(吉村油化学社製、商品名ユカレジンKE602、固形分35質量%)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(花王社製、商品名エマルゲン1108、固形分100質量%)及び試薬1級酢酸を用いて実施例1と同じような手順でガラス繊維集束剤を調製した。この時のガラス繊維集束剤のpHは5.9であり、固形分は2.5整理質量%であった。
【0054】
次いで、実施例1に示した手順でガラス繊維を得て、実施例1と同様のガラス繊維被覆用塗布液を調製し、実施例1と同様の手順で作業を行い、ゴム補強用ガラス繊維を作製した。
【0055】
比較例2
表1に記載した固形分比率になるよう3−アミノプロピルトリエトキシシラン(チッソ社製、商品名サイラエースS330、固形分98質量%)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名KBM−403、固形分100質量%)及びスチレン−マレイン酸樹脂半エステル水溶液(荒川化学工業社製、商品名アラスター703S、固形分30質量%)を用いて実施例1と同じような手順でガラス繊維集束剤を調製した。この時のガラス繊維集束剤のpHは8.8であり、固形分は2.5質量%であった。
【0056】
次いで、実施例1に示した手順でガラス繊維を得て、実施例1と同様のガラス繊維被覆用塗布液を調製し、実施例1と同様の手順で作業を行い、ゴム補強用ガラス繊維を作製した。
【0057】
比較例3
表1に記載した固形分比率になるよう3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名KBM−403、固形分100質量%)、スチレン−マレイン酸樹脂半エステル水溶液(荒川化学工業社製、商品名アラスター703S、固形分30質量%)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(花王社製、商品名エマルゲン1108、固形分100質量%)及びpH調製のため試薬1級酢酸を用いて実施例1と同じような手順でガラス繊維集束剤を調製した。この時のガラス繊維集束剤のpHは5.9であり、固形分は2.5質量%であった。
【0058】
次いで、実施例1に示した手順でガラス繊維を得て、実施例1と同様のガラス繊維被覆用塗布液を調製し、実施例1と同様の手順で作業を行い、ゴム補強用ガラス繊維を作製した。
【0059】
比較例4
比較例1と同じガラス繊維集束剤を用い、ガラス繊維を処理して常温で3日間乾燥してガラス繊維を得た。次に実施例1と同様のガラス繊維被覆用塗布液を調製し、実施例1と同様の手順で作業を行い、ゴム補強用ガラス繊維を作製した。
【0060】
(各ガラス繊維の毛羽発生量の評価)
ケーキからガラス繊維200本集束したガラス繊維束を解舒して、3本引き揃えてガイドを通してガラス繊維被覆用塗布液塗布工程に導く際、ガイドに付着する毛羽量を目視観察し、毛羽が多い(×)、毛羽が少ない(○)を観察した。
【0061】
(毛羽発生量の評価結果)
毛羽発生量の評価結果を表2に示す。エポキシシランとポリオキシエチレンアルキルエーテルを含むガラス繊維集束剤で処理された実施例16のガラス繊維は、エポキシシラ整ンを含まない比較例1及びエポキシシランが過剰に含まれている比較例3、又はポリオキシエチレンアルキルエーテルを含まない比較例2と比較し、毛羽発生量が少なく、ガラス繊維被覆用塗布液塗布工程の作業性は良好であった。比較例4の毛羽発生量が少ないのは、常温乾燥、換言すると非加熱乾燥のためである。
【0062】
(各ゴム補強用ガラス繊維の引張強さの評価試験)
10kgのケーキから、ガラス繊維束を1kg解舒した部位及び5kg解舒した部位(ケーキ中央部)から得られた引張り強さ測定に供するゴム補強用ガラス繊維を、クランプ間距離150mmのクランプに装着し、引張り速度を250mm/分とし、ゴム補強用ガラス繊維が破断するまでの最大の抵抗値を引張り強さとした。各部位毎に10本のゴム補強用ガラス繊維の抵抗値を測定し、その平均値を各部位のゴム補強用ガラス繊維の引張り強さとした。
【0063】
(引張強さの評価結果)
引張強さの評価結果を表2に示す。実施例1、2、3、4、5及び6の1kg地点の引張強さは、各々、108、104、105、108、103及び98Nであった。実施例6の引張強さが小さかったのは、pHが5.9で他より低くかったためである。一方、比較例1〜4の1kg地点の引張強さは、各々、83、86、88及び96Nであった。比較例13の引張強さが小さかったのは毛羽発生によるガラス繊維の破損の影響があったためと考えられる。比較例4は、集束剤の毛羽の発生が少なくガラス繊維の破損が軽微であったためと考えられる。
【0064】
実施例1、2、3、4、5及び6の5kg地点の引張強さは、各々、112、103、102、102、101及び91Nであった。一方、比較例14の5kg地点の引張強さは、各々、79、85、85及び78Nあり、実施例15と比較すると小さかった。比較例1は集束剤のpHが5.9と低かったこととエポキシシランを添加していないため毛羽発生によるガラス繊維の破損の影響があったためと考えられる。比較例2はポリオキシエチレンアルキルエーテルを含まないため毛羽発生によるガラス繊維の破損の影響があったためと考えられる。比較例3はエポキシシランが過剰に含まれているためガラス集束剤が硬く成り過ぎ、フェノール類−ホルムアルデヒド樹脂ゴムラテックスがうまく被覆されていないため、ガラス繊維の破損の影響があったためと考えられる。比較例4はマイグレーションによる影響によるものと考える。
【0065】
(各ゴム補強用ガラス繊維とクロロプレンゴムの接着強さの評価試験)
接着強さの評価試験を説明する前に、試験に使用したゴムを説明する。
【0066】
母材としてのクロロプレンゴム、100質量部に対して、カーボンブラック、40質量部と、亜鉛華、5質量部と、ステアリン酸、0.5質量部と、硫黄、0.4質量部と、加硫促進剤、2.5質量部と、老化防止剤、1.5質量部とを配合した。
【0067】
試験片はクロロプレンゴムからなる3mm厚、25mm幅のゴムシート上に前記ゴム補強用ガラス繊維を20本並べ、その上から布をかぶせ、温度、150℃下、196ニュートン/cm2の条件で端部を除き押圧し、35分間加硫させつつ成形して、接着強さ評価のための試験片を得た。この試験片の接着強さの測定を、端部において各々のゴムシートとゴム補強用ガラス繊維を個別にクランプにて挟み、剥離速度を50mm/minとし、整ゴムシートからゴム補強用ガラス繊維を剥がす際の最大の抵抗値を測定し、DRY接着強さとした。一方、同様にして得た試験片を2時間沸騰水中に浸漬した後、上記と同様にして接着強さの測定を行いWET接着強さとした。接着強さが大きいほど接着力に優れる。
【0068】
(接着強さの評価結果)
接着強さの評価結果を表2に示す。実施例1、2、3、4、5及び6のDRY接着強さは、各々、350、342、365、330、342及び335N/25mmですべてゴム破壊であり、接着強さは良好であった。また、実施例1、2、3、4、5及び6のWET接着強さは、各々、345、331、370、328、325及び281N/25mmですべてゴム破壊であり、接着強さは良好であった。実施例16全てにおいて接着強さは良好であった。
【0069】
比較例1、2、3及び4のDRY接着強さは、各々、278、350、342及び341N/25mmですべてゴム破壊であり、接着強さは良好であった。また、比較例1、2、3及び4のWET接着強さは、各々、193、332、315及び323N/25mmであった。比較例2、3及び4の接着強さは良好であったが、比較例1のWET接着強さの低下はガラス繊維と集束剤との結合が水の進入によって弱くなったためである。

【表1】

【表2】