(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱可塑性樹脂に無機フィラーを混合して溶融混練した前記熱可塑性樹脂をシート状に押し出すことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の樹脂成形品の成形方法。
前記熱可塑性樹脂の230℃におけるメルトフローレートは、0.1〜3.5g/10分であり、前記熱可塑性樹脂に混合する前記無機フィラーの量は、30重量%未満であることを特徴とする請求項4記載の樹脂成形品の成形方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
<本実施形態の樹脂成形品の成形方法の概要>
まず、
図1〜
図6を参照しながら、第1の実施形態の樹脂成形品の成形方法の概要について説明する。
図1は、第1の実施形態の樹脂成形品の一例であるインパネダクト200の構成例を示し、
図2〜
図6は、
図1に示す樹脂成形品の一例であるインパネダクト200を成形する際の成形工程例を示す図である。
【0015】
本実施形態の樹脂成形品の成形方法では、熱可塑性樹脂を溶融及び混練する。その後、溶融混練された熱可塑性樹脂をシート状に押し出す。これにより、溶融状態の熱可塑性樹脂シートPを下方に垂下する。次に、
図2に示すように、熱可塑性樹脂シートPを、ローラ対30(ローラ30Aとローラ30Bで構成)で挟み込み、ローラ対30を回転することにより熱可塑性樹脂シートPを下方に送り出す。そして、ローラ対30により送り出された熱可塑性樹脂シートPに対し
図3〜
図5の工程を行い、
図5に示すように、分割金型32で型締めし、熱可塑性樹脂シートPを分割金型32の形状に沿った形状に成形する。これにより、
図1に示す樹脂成形品が形成される。
【0016】
本実施形態では、薄肉化された熱可塑性樹脂シートPの厚みのばらつきを抑制すること、及び、肉厚が薄く、且つ、均一な厚みを有する樹脂成形品を成形することを実現するために、以下の条件(A)または(B)を満足することにしている。
条件(A):Va<110、3.0≦Va/Vb≦5.5
条件(B):Va≧110、3.0≦Va/Vb<605/Va
但し、Va:ローラ対30による熱可塑性樹脂シートPの送出速度(mm/s)
Vb:熱可塑性樹脂シートPの押出速度(mm/s)
【0017】
本実施形態の樹脂成形品の成形方法では、上記条件を満足するように、ローラ対30による熱可塑性樹脂シートPの送出速度と、熱可塑性樹脂シートPの押出速度と、を調整している。これにより、薄肉化された熱可塑性樹脂シートPの厚みのばらつきを抑制することができる。また、肉厚が薄く、且つ、均一な厚みを有する樹脂成形品を成形することができる。その結果、
図1に示すように、肉厚が薄く(例えば、平均肉厚1.0mm以下)、且つ、均一な厚みを有し、また、所定以上の角度(例えば、60度以上で)で屈曲した屈曲部201を有する複雑な形状の樹脂成形品であるインパネダクト200を成形することができる。以下、添付図面を参照しながら、本実施形態の樹脂成形品の成形方法例について詳細に説明する。但し、以下の実施形態では、樹脂成形品として
図1に示すインパネダクト200を成形する場合を例に説明する。
【0018】
<インパネダクト200の構成例>
まず、
図1を参照しながら、本実施形態のインパネダクト200の構成例について説明する。
図1は、本実施形態のインパネダクト200の構成例を示す図であり、
図1(a)は、インパネダクト200の第1の面側を示し、
図1(b)は、インパネダクト200の第2の面側を示す。
【0019】
本実施形態のインパネダクト200は、平均肉厚が1.0mm以下であり、且つ、所定以上の角度(60度以上)で屈曲した屈曲部201を有して構成している。屈曲部201の平均肉厚は、1.0mm以下である。
【0020】
本実施形態における平均肉厚とは、樹脂成形品の長手方向に沿って略等間隔に設定された少なくとも12カ所で測定された肉厚の平均値を意味する。なお、中空の樹脂成形品であれば、パーティングラインを挟んだ両側について、それぞれ、樹脂成形品の長手方向に沿って略等間隔に設定された少なくとも12カ所で測定された肉厚の平均値を意味する(この場合、合計で少なくとも24カ所で肉厚が測定される)。但し、測定位置には、フランジ部等の分割金型32で圧縮された部分が含まれないようにする。
【0021】
本実施形態のインパネダクト200の平均肉厚は、
図1(a)に示すインパネダクト200の第1の面側の部位12〜18,25〜31の14カ所で測定された肉厚と、
図1(b)に示すインパネダクト200の第2の面側の部位18〜23,30〜35の12カ所で測定された肉厚と、の平均値である。
【0022】
屈曲部201は、所定以上の角度(60度以上)で屈曲された部分である。インパネダクト200の両端には、
図1に示すように、約90度で屈曲された屈曲部201を有している。屈曲部201の平均肉厚は、1.0mm以下である。屈曲部201の屈曲角度は、60度〜120度の範囲にすることが可能である。
【0023】
本実施形態のインパネダクト200は、ダクト内部に中空部を有しており、その中空部を介して空気などの流体が流通することになる。なお、
図1に示す形状は、本実施形態のインパネダクト200の一例であり、
図1に示す形状に限定するものではない。本実施形態のインパネダクト200の成形方法は、様々な形状のダクトを成形することが可能である。
【0024】
<インパネダクト200の成形方法例>
次に、
図2〜
図9を参照しながら、本実施形態のインパネダクト200の成形方法例について説明する。
図2は、本実施形態のインパネダクト200を成形する成形装置1の構成例を示し、
図2〜
図6は、本実施形態のインパネダクト200を成形する成形工程例を示し、
図7〜
図9は、ローラ30の詳細構成例を示す図である。
【0025】
まず、
図2を参照しながら、本実施形態のインパネダクト200を成形する成形装置1の構成例について説明する。
【0026】
本実施形態のインパネダクト200を成形するための成形装置1は、押出装置12と、型締装置10と、を有して構成し、押出装置12から溶融状態の熱可塑性樹脂シートPを型締装置10に押し出し、型締装置10で熱可塑性樹脂シートPを型締めし、
図1に示すインパネダクト200を成形する。
【0027】
押出装置12は、ホッパ16が付設されたシリンダ18と、シリンダ18内に設けられたスクリュ(図示せず)と、スクリュに連結された電動モータ20と、シリンダ18と連通したアキュムレータ22と、アキュムレータ22と連通したプランジャ24と、Tダイ28と、を有して構成する。
【0028】
本実施形態の押出装置12は、ホッパ16から投入された樹脂ペレットが、シリンダ18内で電動モータ20によるスクリュの回転により溶融及び混練され、溶融状態の樹脂(溶融樹脂)を形成する。シリンダ18内で形成された溶融樹脂は、アキュムレータ22に移送されて、そこに一定量の溶融樹脂が貯留される。そして、プランジャ24を駆動することにより、Tダイ28に向けて溶融樹脂を送り、Tダイ28の押出スリット(図示せず)から連続的なシート状の熱可塑性樹脂シートPが押し出される。Tダイ28の押出スリットから押し出された熱可塑性樹脂シートPは、間隔を隔てて配置されたローラ対30によって挟圧されながら下方へ向かって送り出されて分割金型32の間に垂下される。これにより、熱可塑性樹脂シートPが上下方向(押出方向)に一様な厚みを有する状態で、分割金型32の間に配置されることになる。
【0029】
押出装置12の押出能力は、成形される樹脂成形品の大きさ、熱可塑性樹脂シートPのドローダウンあるいはネックインの発生を防止することを考慮して適宜選択する。具体的には、実用的な観点から、間欠押出における1ショットの押出量は、好ましくは1〜10kgである。また、押出スリットからの熱可塑性樹脂シートPの押出速度は、数百kg/時以上、より好ましくは、700kg/時以上である。また、熱可塑性樹脂シートPのドローダウンあるいはネックインの発生を防止するために、熱可塑性樹脂シートPの押出時間は、なるべく短いことが好ましく、樹脂の特性(特に、MFR値、メルトテンション値)に依存するが、一般的に、押出は、40秒以内、より好ましくは10〜20秒以内に完了するのが好ましい。
【0030】
このため、熱可塑性樹脂シートPの押出スリットからの単位面積(1cm
2)、単位時間(h)当りの押出量は、50kg/h cm
2以上、より好ましくは、150kg/h cm
2以上である。例えば、スリット間隔が0.5mm、スリットの幅方向の長さが1000mmのTダイ28の押出スリットから、密度0.9g/cm
3の熱可塑性樹脂を用いて、厚さ1.0mm、幅1000mm、押出方向の長さが2000mmの熱可塑性樹脂シートPを15秒間で押し出す場合は、1.8kgの熱可塑性樹脂を1ショット15秒間で押し出したことになり、押出速度は432kg/時であり、単位面積当りの押出速度は約86kg/h cm
2と算出することができる。
【0031】
なお、Tダイ28に設けられる押出スリットは、鉛直下向きに配置され、押出スリットから押し出された熱可塑性樹脂シートPは、押出スリットからそのまま垂下する形態で、鉛直下向きに送られる。押出スリットは、押出スリットのスリット間隔を可変にすることで、熱可塑性樹脂シートPの厚みを変更することができる。
【0032】
但し、Tダイ28から押し出された熱可塑性樹脂シートPは、分割金型32の間に垂下された状態では(つまり、型締めされる時点では)、熱可塑性樹脂シートPの押出方向の厚みが均一となるように調整されていることが好ましい。このため、押出スリットのスリット間隔を押出開始から徐々に広げ、押出終了時に最大となるように変動させても良い。Tダイ28から押し出される熱可塑性樹脂シートPの厚みは、押出開始から徐々に厚くなるが、溶融状態で押し出された熱可塑性樹脂シートPは、自重により引き伸ばされるため、熱可塑性樹脂シートPの下方から上方へ徐々に薄くなる傾向がある。このため、押出スリットのスリット間隔を押出開始から徐々に広げ、押出終了時に最大となるように変動させることで、押出スリットのスリット間隔を広げて厚くなった分と、ドローダウン現象により引き伸ばされて薄くなった分と、が相殺されて、熱可塑性樹脂シートPの上方から下方に亘って均一な厚みに調整することができる。
【0033】
Tダイ28に設けられる押出スリットのスリット間隔は、公知のスリット間隔調整装置23により調整される。スリット間隔調整装置23を用いてスリット間隔を調整することで、熱可塑性樹脂シートPの幅方向における均一性を調整することができる。さらに、スリット間隔調整装置23を用いて、間欠的に押し出される熱可塑性樹脂シートPの押出開始から押出終了までの間にダイリップを変動させる。これにより、熱可塑性樹脂シートPの押出方向の厚みを調整することができる。
【0034】
スリット間隔調整装置23には、熱膨張式と機械式とがある。スリット間隔調整装置23としては、その両方の機能を併せ持つ装置を用いることが好ましい。
【0035】
スリット間隔調整装置23は、スリットの幅方向に沿って等間隔に複数配置されている。各スリット間隔調整装置23が、対応するスリット間隔を狭くしたり、広くしたりすることによって、スリットの幅方向における熱可塑性樹脂シートPの厚みを均一にすることができる。
【0036】
スリット間隔調整装置23は、ダイリップに向けて進退自在に設けられたダイボルトを有している。ダイボルトの先端に、圧力伝達部を介して、調整軸が配置されている。調整軸には、締結ボルトにより係合片が結合されている。係合片は、一方のダイリップに連結されている。ダイボルトを前進させると、圧力伝達部を介して、調整軸が先端方向に押し出される。これにより、一方のダイリップが押圧される。これにより、ダイリップは、凹溝の部位によって変形される。このため、スリット間隔が狭くなる。スリット間隔を広くするには、これと逆に、ダイボルトを後退させる。
【0037】
さらに、上記機械式の調整装置に加えて、熱膨張式の調整装置を用いることによって、精度良くスリット間隔を調整することができる。具体的には、図示しない電熱ヒータにより、調整軸を加熱して熱膨張させることによって、一方のダイリップが押圧される。これにより、スリット間隔が狭くなる。
【0038】
また、スリット間隔を広くするには、電熱ヒータを停止させ、図示しない冷却手段により調整軸を冷却する。これにより、調整軸が収縮するので、スリット間隔が広くなる。
【0039】
本実施形態の成形装置1は、ローラ対30の間に挟み込まれた熱可塑性樹脂シートPをローラ対30の回転により下方に送り出すことで、熱可塑性樹脂シートPを延伸薄肉化することができる。本実施形態の成形装置1は、Tダイ28により押し出される熱可塑性樹脂シートPの押出速度と、ローラ対30により送り出される熱可塑性樹脂シートPの送出速度と、の関係を調整することで、熱可塑性樹脂シートPのドローダウンあるいはネックインの発生を防止することができる。このため、採用する樹脂の特性(特に、MFR値、MT値)、単位時間当たりの押出量に対する制約を軽減することができる。
【0040】
図7に示すように、ローラ対30は、一対のローラ30A及び30Bから構成されている。ローラ30の回転軸は、押出スリットの下方において、互いに平行に、ほぼ水平に配置されている。ローラ30Aは、回転駆動ローラであり、ローラ30Bは、被回転駆動ローラである。より詳細には、
図2に示すように、ローラ対30を構成する一対のローラ30A及び30Bは、押出スリットから下方に垂下する形態で押し出される熱可塑性樹脂シートPに関して、互いに線対称となるように配置される。なお、
図2に示す、一対のローラ30AA及びローラ30ABと、一対のローラBB及びローラBAは、同一の構造を有する。このため、一対のローラ30A及び30Bから構成されるローラをローラ対30と表現する。
図2に示すローラAA及びローラBAは、回転駆動ローラを示し、ローラAB及びローラBBは、被回転駆動ローラを示す。
【0041】
ローラ30の直径およびローラ30の軸方向の長さは、成形すべき熱可塑性樹脂シートPの押出速度、熱可塑性樹脂シートPの押出方向の長さ、幅、樹脂の特性などに応じて適宜設定される。但し、本実施形態の成形装置1では、ローラ対30の間に熱可塑性樹脂シートPを挟み込んだ状態で、ローラ対30を回転することにより熱可塑性樹脂シートPを円滑に下方に送り出す点を鑑み、回転駆動ローラ30Aの径は、被回転駆動ローラ30Bの径より若干大きいほうが好ましい。ローラ30の径は、50〜200mmの範囲であることが好ましい。ローラ30の曲率が大きすぎることや、小さすぎることは、熱可塑性樹脂シートPがローラ30に巻き付く原因となる。
【0042】
また、ローラ30のそれぞれの外表面には、凹凸状のシボが設けられている。凹凸状のシボは、ローラ30の外表面における熱可塑性樹脂シートPと接触する面の全体に亘って、均一に分布されていることが好ましい。また、凹凸状のシボの深さや密度は、ローラ対30によって熱可塑性樹脂シートPを円滑に下方に送り出すことが可能となるように、即ち、ローラ30のそれぞれの外表面と、対応する熱可塑性樹脂シートPの表面と、の間に滑りが生じないように適宜定めればよい。なお、凹凸状のシボは、例えば、サンドブラスト処理によって形成できる。この場合、凹凸状のシボは、60番程度の粗さが採用されたブラスト機を用いて形成することが好ましい。
【0043】
なお、ローラ30のそれぞれに凹凸状のシボを設ける目的は、熱可塑性樹脂シートPの表面にシボ模様を単に転写するのではなく、あくまで、ローラ30のそれぞれの外表面と、対応する熱可塑性樹脂シートPの表面と、の間に滑りが生じることを防止することである。
【0044】
熱可塑性樹脂シートPの表面にシボ模様を転写する場合は、ローラ対30のうち、一方をシボロールとし、他方をゴムロールとするのが通常である。本実施形態のローラ対30においては、ローラ対30のそれぞれの外表面にシボを設けることにより、ローラ対30のそれぞれが熱可塑性樹脂シートPの対応する表面を確実に把持するようにする半面、ローラ対30による熱可塑性樹脂シートPの押圧力を制限することで、ローラ対30により熱可塑性樹脂シートPを送り出す直後に、熱可塑性樹脂シートPの表面にシボ模様を転写しないようにすることができる。
【0045】
回転駆動ローラ30Aには、ローラ回転駆動手段94(
図8参照)、ローラ移動手段96が付設されている。ローラ回転駆動手段94は、回転駆動ローラ30Aを、その軸線方向を中心に回転させる。また、ローラ移動手段96は、回転駆動ローラ30Aを、ローラ対30を包含する平面内で、被回転駆動ローラ30Bに向かって近づくように、あるいは、被回転駆動ローラ30Bから離れるように、移動させる。この移動では、回転駆動ローラ30Aと被回転駆動ローラ30Bとの平行な位置関係が維持される。
【0046】
ローラ回転駆動手段94は、
図8に示すように、回転駆動ローラ30Aに連結されたモータ98を有して構成し、モータ98の回転トルクを、例えば、歯車減速機構(図示せず)を介して回転駆動ローラ30Aに伝達している。モータ98は、回転駆動ローラ30Aの回転数を調整することができるように回転数調整装置100が付設されている。この回転数調整装置100は、例えば、電動モータに供給される電流量を調整するものでもよく、押出スリットから押し出される熱可塑性樹脂シートPの押出速度と、ローラ対30の回転により下方に送り出される熱可塑性樹脂シートPの送出速度と、の相対速度差を、熱可塑性樹脂シートPの押出速度に応じて調整するようにしている。例えば、直径100mmのローラ30を用いて、長さ2000mmの熱可塑性樹脂シートPを15秒間で送り出す場合は、1ショット15秒間の間で、ローラ30は、約6.4回転することになり、ローラ30の回転速度(即ち、熱可塑性樹脂シートPの送出速度)は、約25.5rpmとなる。ローラ30の回転速度を上げ下げすることで熱可塑性樹脂シートPの送出速度を容易に調整することができる。
【0047】
本実施形態では、
図8に示すように、被回転駆動ローラ30Bが回転駆動ローラ30Aと同調して回転駆動するように、被回転駆動ローラ30Bは、その端周面102に亘ってローラ30の回転軸を中心に回転可能な第1歯車104を有して構成し、回転駆動ローラ30Aは、その端周面107に亘ってローラ30の回転軸を中心に回転可能な第2歯車108を有して構成する。なお、第2歯車108は、第1歯車104と噛み合うようになっている。
【0048】
ローラ移動手段96は、
図7に示すように、ピストン−シリンダ機構を有しており、ピストンロッド109の先端が、回転駆動ローラ30Aのカバー117に連結されている。カバー117は、回転駆動ローラ30Aを、その軸線方向に回転可能に支持する。例えば、空気圧を調整することで、ピストン113をシリンダ115に対して摺動させる。それにより、回転駆動ローラ30Aを水平方向に移動させ、ローラ30同士の間隔を調整可能にしている。
【0049】
この場合、本実施形態では、熱可塑性樹脂シートPの最下部がローラ対30の間に供給される前に、ローラ30同士の間隔を熱可塑性樹脂シートPの厚みより広げて(
図7(A)の間隔D1を構成する開位置)、熱可塑性樹脂シートPが円滑にローラ対30の間に供給されるようにし、その後、ローラ30同士の間隔を狭めて、ローラ対30により熱可塑性樹脂シートPを挟み込み(
図7(B)の間隔D2を構成する閉位置)、ローラ対30の回転により熱可塑性樹脂シートPを下方に送り出すようにしている。ピストン113のストロークは、ローラ30の位置を開位置及び閉位置とすることができるような長さに設定すればよい。第1歯車104の歯先は、被回転駆動ローラ30Bの外周面より突出し、第2歯車108の歯先は、回転駆動ローラ30Aの外周面より突出するように設定している。これらの歯先の突出長さは、回転駆動ローラ30Aと被回転駆動ローラ30Bとが閉位置にあるとき(即ち、ローラ間隔が間隔D2であるとき)、被回転駆動ローラ30Bが回転駆動ローラ30Aと同調して回転駆動するように設定されている。
【0050】
これにより、回転駆動ローラ30Aの回転駆動力を被回転駆動ローラ30Bに伝達させることで両ローラ30の回転速度を一致させた状態で、両ローラ30により熱可塑性樹脂シートPを挟み込んで、下方に送り出すことが可能となる。また、空気圧を調整することで、熱可塑性樹脂シートPがローラ対30の間を通過する際に、ローラ30から熱可塑性樹脂シートPに作用する押圧力を調整することもできる。押圧力の範囲は、ローラ対30が回転することにより、ローラ30の表面と熱可塑性樹脂シートPの表面との間に滑りが生じない一方で、ローラ30により熱可塑性樹脂シートPが引きちぎられることのないようにして熱可塑性樹脂シートPが確実に下方に送り出されるように定め、樹脂の特性に依存するが、例えば、0.05MPa〜6MPaとなる。
【0051】
ローラ30は、金属製、例えば、アルミニウム製であり、ローラ30には、溶融状態の熱可塑性樹脂シートPの温度に応じて、ローラ30の表面温度を調整する表面温度調整手段が付設され、その構成は、ローラ30の内部に冷媒を通し、この冷媒を循環させることにより、ローラ30の内部において、熱交換を実現している。その結果、ローラ30の表面がローラ対30に挟み込まれた溶融状態の熱可塑性樹脂シートPにより過度に加熱されることを防止することができる。
【0052】
詳細には、ローラ30は、
図8に示す歯車機構104,108が設けられる端部と反対側の端部において、
図9に示すように、固定部202に対してベアリング204を介して回転自在に支承される。ローラ30の内部には、ローラ30の軸線方向に延びる冷媒供給管206が固定部202に支持された状態で設けられる。冷媒供給管206は、固定部202内で、ジョイント208を介して、冷媒供給源(図示せず)に接続されたホース210に接続され、冷媒である水をホース210、冷媒供給管206を通じてローラ30の内部に供給するようにしている。冷媒供給管206は、ローラ30とほぼ同心状に、冷媒供給管206の開口端212をローラ30の歯車機構が設けられる端部の内面214に対向させて配置される。これにより、開口端212から供給される冷媒は、ローラ30の端部の内面214において流れの向きを反転させ、ローラ30の内周面216と冷媒供給管206の外周面218との間に形成される環状スペース220内を固定部202に向けて流れるようにし、ローラ30の周面全体を内側から冷却するようにしている。環状スペース220内を固定部202に向けて流れる冷媒は、固定部202に設けた排水管路222を通じてローラ30から外部に排出される。
【0053】
ローラ30の外表面は、ローラ30が溶融状態の熱可塑性樹脂シートPに接触することにより熱伝導を通じて加熱されるところ、上記の形態でローラ30の外表面を内側から冷却することにより、ローラ対30により挟み込まれた溶融状態の熱可塑性樹脂シートPがローラ30の外表面にへばり付き、ローラ対30の回転によりローラ30に巻き付き、熱可塑性樹脂シートPが下方に送り出されないような事態を防止することにしている。この場合、巻き付き防止の観点から、ローラ30の表面温度を低くするのが好ましいが、後に、熱可塑性樹脂シートPを成形する観点から、ローラ30の表面温度を低くし過ぎると、ローラ30の表面により逆に溶融状態の熱可塑性樹脂シートPが過冷却され、成形時に支障が生じることになる。このため、ローラ対30のそれぞれの表面温度をローラ対30に向かって押し出される溶融状態の熱可塑性樹脂シートPの温度より所定温度の範囲内で低く設定する必要がある。この所定温度の範囲は、溶融状態の熱可塑性樹脂シートPの特性に応じて定められ、例えば、熱可塑性樹脂シートPが非晶性樹脂の場合は、所定温度の範囲が約80℃〜95℃の範囲となり、熱可塑性樹脂シートPが結晶性樹脂の場合は、所定温度の範囲が約50℃〜90℃の範囲となる。この場合、ローラ30の表面温度を温度調整するために、ローラ対30のそれぞれの内部を水冷する際は、熱可塑性樹脂シートPの特性に応じて、冷媒の温度を設定するのがよく、冷媒の温度は、熱可塑性樹脂シートPを成形中、一定温度に保持するようにする。
【0054】
本実施形態の型締装置10は、分割金型32と、分割金型32を熱可塑性樹脂シートPの供給方向に対して略直交する方向に開位置と閉位置との間で移動させる金型駆動装置(図示せず)と、を有して構成する。
【0055】
分割金型32は、キャビティ面116を対向させた状態で配置され、それぞれのキャビティ116が略鉛直方向を向くように配置される。キャビティ116の表面には、溶融状態の熱可塑性樹脂シートPに基づいて成形される成形品の外形、および表面形状に応じて凹凸部が設けられている。また、分割金型32のキャビティ面116の周りには、ピンチオフ部118が形成されている。このピンチオフ部118は、キャビティ面116の周りに環状に形成されており、対向する分割金型32に向かって突出している。これにより、分割金型32を型締めした際に、それぞれのピンチオフ部118の先端部が当接し、成形品の周縁にパーティングラインを形成することができる。
【0056】
また、分割金型32の外周部には、型枠33が摺動可能に配置されており、その型枠33が分割金型32に対して相対的に移動可能になっている。より詳細には、一方の型枠33Aは、分割金型32Bに向かって突出しており、分割金型32の間に配置された熱可塑性樹脂シートPの一方の側面に当接可能であり、また、他方の型枠33Bは、分割金型32Aに向かって突出しており、分割金型32の間に配置された熱可塑性樹脂シートPの他方の側面に当接可能である。
【0057】
分割金型32は、金型駆動装置(図示せず)により駆動し、開位置において、分割金型32の間に、溶融状態の熱可塑性樹脂シートPを配置可能にしている。また、閉位置において、分割金型32のピンチオフ部118が互いに当接し、分割金型32内に密閉空間を形成するようにしている。なお、開位置から閉位置への各分割金型32の移動について、閉位置は、溶融状態の熱可塑性樹脂シートPの中心線の位置とし、各分割金型32が金型駆動装置により駆動されてその位置に向かって移動するようにしている。
【0058】
熱可塑性樹脂シートPは、ポリプロピレン、ポリオレフィン系樹脂などから形成する。本実施形態の熱可塑性樹脂シートPは、熱可塑性樹脂シートPのドローダウン、ネックインなどにより肉厚のバラツキが発生することを防止する観点から溶融張力の高い樹脂材料を用いることが好ましく、一方で分割金型32への転写性、追従性を良好とするため流動性の高い樹脂材料を用いることが好ましい。
【0059】
熱可塑性樹脂シートPの材料としては、具体的には、エチレン、プロピレン、ブテン、イソプレンペンテン、メチルペンテン等のオレフィン類の単独重合体あるいは共重合体であるポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン)であって、230℃におけるMFR(JIS K-7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定)が3.5g/10分以下のものが適用可能である。MFRが3.5g/10分より大きくなると、ドローダウンがはげしくなり、薄肉の成形品を成形するのが困難になる。
【0060】
また、本実施形態の熱可塑性樹脂シートPは、平均肉厚が1.0mm以下であり、且つ、所定以上の角度(60度以上)で屈曲した屈曲部201を有する複雑な形状のインパネダクト200を成形するため、シリカ、マイカ、タルク、炭酸カルシウム等の粉状の無機フィラー、または、ガラス繊維、カーボン繊維等の繊維状の無機フィラーを添加することにしている。これにより、平均肉厚を薄くすることができ、且つ、複雑な形状のインパネダクト200を成形することができる。なお、無機フィラーは、添加量が多くなると、成形品の表面に荒れが発生し、ピンホールが発生し易くなる。このため、成形品の表面の荒れを抑え、且つ、ピンホールを発生し難くするために、無機フィラーは、30重量%未満で添加することが好ましい。また、本実施形態のインパネダクト200を成形する際は、繊維状のフィラーよりも粉状のフィラーを適用することが好ましい。これは、繊維状のフィラーは、繊維が押出方向を向くため、押出方向と直交する方向の皺を抑え難いためである。また、粉状のフィラーの中でも、特に、タルクを適用することがより好ましい。これは、タルクは、樹脂中での分散性が良いためである。
【0061】
また、熱可塑性樹脂シートPには、衝撃により割れが生じることを防止するために、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーを30wt%未満、好ましくは15wt%未満の範囲で添加することも可能である。水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレンーエチレン・ブチレンースチレンブロック共重合体、スチレンーエチレン・プロピレンースチレンブロック共重合体、水添スチレンーブタジエンゴムおよびその混合物が適用可能である。
【0062】
また、熱可塑性樹脂シートPには、可塑剤、安定剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤等を添加することも可能である。
【0063】
次に、
図2〜
図6を参照しながら、本実施形態のインパネダクト200の成形工程例について説明する。
【0064】
まず、
図2に示すように、熱可塑性樹脂シートPをTダイ28から押し出し、その押し出した熱可塑性樹脂シートPを、ローラ対30を通過させて熱可塑性樹脂シートPの肉厚を調整し、分割金型32の間に垂下させる。
【0065】
本実施形態の成形装置1は、Tダイ28から押し出される熱可塑性樹脂シートPの押出速度と、ローラ対30により下方に送り出される熱可塑性樹脂シートPの送出速度と、の相対速度差を、ローラ対30の回転速度で調整し、熱可塑性樹脂シートPがローラ対30の間を通過する際に、ローラ対30により下方に引っ張られ、それにより熱可塑性樹脂シートPが延伸薄肉化され、その結果、熱可塑性樹脂シートPのドローダウンあるいはネックインの発生を防止することにしている。
【0066】
この場合、ローラ対30のそれぞれにおいて、ローラ30の表面に凹凸状のシボを設けると共に、ローラ30の一端に歯車機構を設けることにより、回転駆動ローラ30BAの回転駆動力を被回転駆動ローラ30BBに、また、回転駆動ローラ30AAの回転駆動力を被回転駆動ローラ30ABに、それぞれ伝達することにより、回転駆動ローラ30Aと被回転駆動ローラ30Bとの間で回転速度差が生じないようにし、それにより、熱可塑性樹脂シートPの表面に、皺あるいはせん断痕が発生するのを防止している。
【0067】
また、ローラ対30のそれぞれにおいて、ローラ30の内部に冷媒を循環させることにより、ローラ30を冷却し、ローラ対30のそれぞれの外表面の温度を溶融状態の熱可塑性樹脂シートPの温度より所定温度の範囲内で低く設定し、溶融状態の熱可塑性樹脂シートPがローラ対30により挟み込まれる際に、溶融状態の熱可塑性樹脂シートPがローラ30の表面にへばりつき、ローラ対30の回転によりローラ30に巻き付くのを防止する一方、成形時に適した溶融状態に保持するようにしている。
【0068】
なお、ローラ対30の回転数の調整と共に、押出スリットの間隔調整を連動して行うことも可能である。
【0069】
図2に示すように、2枚の熱可塑性樹脂シートPを分割金型32の間に配置した後は、
図3に示すように、分割金型32の型枠33を熱可塑性樹脂シートPに向かって移動させ、分割金型32の外周に位置する型枠33を熱可塑性樹脂シートPの側面に当接させる。これにより、熱可塑性樹脂シートP、型枠33、キャビティ面116により、密閉空間が形成される。
【0070】
次に、
図4に示すように、密閉空間内の空気を真空吸引室120から吸引穴122を介して吸引し、熱可塑性樹脂シートPをキャビティ面116に吸着させ、熱可塑性樹脂シートPをキャビティ面116の表面に沿った形状に賦形する。
【0071】
この場合、吸引前の熱可塑性樹脂シートPの上下方向の厚みを一様にしているため、ブロー比により引き起こされる厚みの分布に起因して、賦形工程が満足に行われないような事態を防止することができる。
【0072】
次に、
図5に示すように、型枠33と分割金型32とを一体で、互いに近接するように移動させ、分割金型32の型締めを行い、分割金型32のピンチオフ部118により熱可塑性樹脂シートPの周縁部同士を溶着する。これにより、2枚の熱可塑性樹脂シートPの接合面にパーティングラインが形成されると共に、2枚の熱可塑性樹脂シートPの内部に密閉中空部151が形成される。
【0073】
次に、
図6に示すように、型枠33と分割金型32とを一体で、互いに遠ざかるように移動させ、分割金型32の型開きを行い、成形された樹脂成形品を取り出し、外周部のバリを除去する。これにより、
図1に示すインパネダクト200を成形することができる。
【0074】
<実施例>
次に、上述した実施形態の実施例について説明する。但し、以下の実施例は、一例であり、本実施形態の技術思想は、以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0075】
上述した
図2〜
図6に示す成形方法において、押出スリットから押し出される熱可塑性樹脂シートPの押出速度と、ローラ対30による熱可塑性樹脂シートPの送出速度と、の関係を適宜変更し、
図1に示す屈曲部201を有する複雑な形状のインパネダクト200を成形した。なお、押出スリットから押し出される熱可塑性樹脂シートPの押出速度は、15(mm/s)〜45(mm/s)の範囲で調整し、ローラ対30による熱可塑性樹脂シートPの送出速度は、80(mm/s)〜125(mm/s)の範囲で調整した。
【0076】
また、インパネダクト200は、以下の材料を用いて成形した。
ポリプロピレン系樹脂として、サンアロマー(株)製:商品名 サンアロマー グレード PB170A(MFR=0.35g/10分)を使用した。MFRは、JIS K-7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定した値である。
また、タルクの含有量を10重量%にした。タルクの粒径は、6〜7μmのものを使用した。なお、タルクの粒径が2〜30μmの範囲であると、樹脂中でのタルクの分散性が比較的良いため好ましい。
【0077】
また、ローラ対30は、アルミニウム製を使用し、ローラ径は、100mmとした。但し、ローラ30の表面にサンドブラスト処理を施し、ローラ30の表面に凹凸状のシボを形成した。
【0078】
また、押出スリットのスリット幅は、1.0mmとした。
【0079】
上述した
図2〜
図6に示す成形方法において、押出スリットから押し出される熱可塑性樹脂シートPの押出速度と、ローラ対30による熱可塑性樹脂シートPの送出速度と、の関係を適宜変更し、
図1に示す屈曲部201を有する複雑な形状のインパネダクト200を成形した際の成形品の平均肉厚(t)を
図10に示す。平均肉厚(t)は、
図1(a)に示すインパネダクト200の第1の面側の部位12〜18,25〜31の14カ所で測定された肉厚と、
図1(b)に示すインパネダクト200の第2の面側の部位18〜23,30〜35の12カ所で測定された肉厚と、の平均値である。
【0080】
なお、
図10の△、○、◎、×の意味を以下に記載する。
△:平均肉厚(t)が1.0より大きい場合
○:平均肉厚(t)が0.6より大きく1.0以下の場合
◎:平均肉厚(t)が0.6以下の場合
×:ピンホールが発生した場合
【0081】
<
図10の結果>
図10の結果を鑑み、
図1に示す屈曲部201を有するインパネダクト200を成形する場合に、押出スリットから押し出される熱可塑性樹脂シートPの押出速度と、ローラ対30による熱可塑性樹脂シートPの送出速度と、の関係が以下の条件式(A)または(B)を満たすことで、評価結果が○、◎であるインパネダクト200(平均肉厚(t)が1.0mm以下であり、且つ、ピンホールが発生しないインパネダクト200)を成形できることが判明した。
【0082】
条件式(A):Va<110の場合、3.0≦Va/Vb≦5.5
条件式(B):Va≧110の場合、3.0≦Va/Vb<605/Va
但し、Va:ローラ対30による熱可塑性樹脂シートPの送出速度(mm/s)
Vb:押出スリットから押し出される熱可塑性樹脂シートPの押出速度(mm/s)
また、605/Vaは、605/Va>3.0(mm/s)の条件を満たすものとする。
【0083】
なお、ローラ対30による熱可塑性樹脂シートPの送出速度:Vaが110(mm/s)以上になると、熱可塑性樹脂シートPの厚みにばらつきが発生し、ピンホールが発生し易くなるため、評価結果が○、◎であるインパネダクト200を成形できる上記条件の範囲が狭まることが判明した。また、押出速度:Vaが90(mm/s)以下になると、成形品の肉厚が厚くなり易くなるため、評価結果が○、◎であるインパネダクト200を成形できる上記条件の範囲が狭まることが判明した。このため、
図10の結果を鑑み、ローラ対30による熱可塑性樹脂シートPの送出速度:Vaは、上記条件式(A)において、90<Va<110の条件を満たすことが好ましいことが判明した。この条件を満たすことで、
図10に示すように、評価結果が○、◎であるインパネダクト200を成形できる上記条件の範囲に幅を持たせることができる。
【0084】
また、
図10の結果を鑑み、上述した条件式(A)において、Va/Vbが5.0≦Va/Vb<5.5の条件を満たすことが好ましいことが判明した。これにより、肉厚が0.6mm以下であり、且つ、均一な厚みのインパネダクト200を成形することができる。
【0085】
なお、上述した実施形態及び実施例は、本発明の好適な実施形態及び実施例であり、上記実施形態及び実施例のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。
【0086】
例えば、上述した実施例は、MFRが0.35(g/10分)であり、タルクの含有量が10重量%の熱可塑性樹脂シートPを形成した。しかし、MFRが0.1g/10分〜3.5g/10分以下であり、且つ、タルクの含有量が30重量%未満の条件を満足する熱可塑性樹脂シートPを使用することでも、上述した実施例の条件式を満たすように、押出スリットから押し出される熱可塑性樹脂シートPの押出速度と、ローラ対30による熱可塑性樹脂シートPの送出速度と、を調整すれば、薄肉化した熱可塑性樹脂シートPの厚みのばらつきを抑制し、肉厚が薄く、且つ、均一な厚みのインパネダクト200を成形することができる。
【0087】
また、上記実施形態においては、樹脂成形品として中空状に成形した樹脂成形品について説明したが、1枚のシートで非中空状に成形した樹脂成形品であっても本発明を適用できる。
【0088】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
【0089】
<第2の実施形態の樹脂成形品の成形方法の概要>
まず、
図1、
図11、
図3〜
図6を参照しながら、第2の実施形態の樹脂成形品の成形方法の概要について説明する。
図1は、第2の実施形態の樹脂成形品の一例であるインパネダクト200の構成例を示し、
図11、
図3〜
図6は、第2の実施形態の樹脂成形品の一例であるインパネダクト200を成形する際の成形工程例を示す図である。
【0090】
本実施形態の樹脂成形品の成形方法は、無機フィラーを混合した熱可塑性樹脂を溶融及び混練し、その溶融混練した熱可塑性樹脂をシート状に押し出し、
図11に示すように、溶融状態の熱可塑性樹脂シートPを分割金型32の間に配置する。そして、
図3〜
図5の工程を行い、
図5に示すように分割金型32を型締めし、熱可塑性樹脂シートPを分割金型32の形状に沿った形状に成形し、
図1に示す樹脂成形品を形成する。
【0091】
本実施形態では、カーテン現象の発生を抑制し、複雑な形状の樹脂成形品を成形する場合でも折れ肉を発生し難くするために、以下の条件を満足することにしている。
W≧2M
2−11M+18
但し、M:熱可塑性樹脂の230℃におけるメルトフローレイト(g/10分)
W:熱可塑性樹脂に混合する無機フィラーの量(重量%)
【0092】
本実施形態の樹脂成形品の成形方法は、上記条件を満足する熱可塑性樹脂シートPを形成することで、カーテン現象の発生を抑制し、複雑な形状の樹脂成形品を成形する場合でも折れ肉を発生し難くすることができる。その結果、
図1に示すように、肉厚が薄く(例えば、平均肉厚2.0mm以下)、且つ、所定以上の角度(例えば、60度以上で)で屈曲した屈曲部201を有する複雑な形状の樹脂成形品であるインパネダクト200を成形する場合でも、折れ肉を発生し難くすることができる。以下、添付図面を参照しながら、本実施形態の樹脂成形品の成形方法について詳細に説明する。但し、以下の実施形態では、樹脂成形品として
図1に示すインパネダクト200を成形する場合を例に説明する。
【0093】
<インパネダクト200の構成例>
まず、
図1を参照しながら、本実施形態のインパネダクト200の構成例について説明する。
図1は、本実施形態のインパネダクト200の構成例を示す図であり、
図1(a)は、インパネダクト200の第1の面側を示し、
図1(b)は、インパネダクト200の第2の面側を示す。
【0094】
本実施形態のインパネダクト200は、平均肉厚が2.0mm以下であり、且つ、所定以上の角度(60度以上)で屈曲した屈曲部201を有して構成している。屈曲部201の平均肉厚は、2.0mm以下である。本実施形態のインパネダクト200は、平均肉厚が2.0mm以下である点が第1の実施形態と異なる。
【0095】
次に、
図11、
図3〜
図6を参照しながら、本実施形態のインパネダクト200の成形工程例について説明する。本実施形態のインパネダクト200は、
図11に示す成形装置1を用いて成形する。
図11に示す成形装置1は、
図2に示す成形装置1において、ローラ対30がない状態であり、他の構成については、
図2に示す成形装置1と同様である。
【0096】
まず、
図11に示すように、熱可塑性樹脂シートPをTダイ28から押し出し、その押し出した熱可塑性樹脂シートPを分割金型32の間に垂下させる。
【0097】
図11に示すように、2枚の熱可塑性樹脂シートPを分割金型32の間に配置した後は、
図3に示すように、分割金型32の型枠33を熱可塑性樹脂シートPに向かって移動させ、分割金型32の外周に位置する型枠33を熱可塑性樹脂シートPの側面に当接させる。これにより、熱可塑性樹脂シートP、型枠33、キャビティ面116により、密閉空間が形成される。
【0098】
次に、
図4に示すように、密閉空間内の空気を真空吸引室120から吸引穴122を介して吸引し、熱可塑性樹脂シートPをキャビティ面116に吸着させ、熱可塑性樹脂シートPをキャビティ面116の表面に沿った形状に賦形する。
【0099】
この場合、吸引前の熱可塑性樹脂シートPの上下方向の厚みを一様にしているため、ブロー比により引き起こされる厚みの分布に起因して、賦形工程が満足に行われないような事態を防止することができる。
【0100】
次に、
図5に示すように、型枠33と分割金型32とを一体で、互いに近接するように移動させ、分割金型32の型締めを行い、分割金型32のピンチオフ部118により熱可塑性樹脂シートPの周縁部同士を溶着する。これにより、2枚の熱可塑性樹脂シートPの接合面にパーティングラインPLが形成されると共に、2枚の熱可塑性樹脂シートPの内部に密閉中空部151が形成される。
【0101】
次に、
図6に示すように、型枠33と分割金型32とを一体で、互いに遠ざかるように移動させ、分割金型32の型開きを行い、樹脂成形品を取り出し、外周部のバリを除去する。これにより、
図1に示すインパネダクト200を成形することができる。
【0102】
<実施例>
次に、上述した実施形態の実施例について説明する。但し、以下の実施例は、一例であり、本実施形態の技術思想は、以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0103】
成形品を成形する際に使用する材料を適宜変更し、上述した
図11、
図3〜
図6に示す成形方法で
図1に示す屈曲部201を有する複雑な形状のインパネダクト200を成形した。以下に、
図1に示すインパネダクト200を成形する際に使用した材料を実施例、比較例毎に記載する。
【0104】
(実施例1)
プロピレン単独重合体として、日本ポリプロ(株)製:商品名 ノバテック グレード EC9(MFR=0.5g/10分)を使用した。MFRは、JIS K-7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定した値である。
また、タルクの含有量を15重量%にした。タルクの粒径は、6〜7μmのものを使用した。なお、タルクの粒径が2〜30μmの範囲であると、樹脂中でのタルクの分散性が比較的良いため好ましい。
【0105】
(実施例2)
プロピレン単独重合体として、日本ポリプロ(株)製:商品名 ノバテック グレード EC9(MFR=0.5g/10分)を使用した。
また、タルクの含有量を20重量%にした。タルクは、実施例1と同様のものを使用した。
【0106】
(実施例3)
プロピレン単独重合体として、日本ポリプロ(株)製:商品名 ノバテック グレード EC9(MFR=0.5g/10分)を使用した。
また、タルクの含有量を30重量%にした。タルクは、実施例1と同様のものを使用した。
【0107】
(実施例4)
プロピレン単独重合体として、日本ポリプロ(株)製:商品名 ノバテック グレード EC7(MFR=1.5g/10分)を使用した。
また、タルクの含有量を8重量%にした。タルクは、実施例1と同様のものを使用した。
【0108】
(実施例5)
プロピレン単独重合体として、日本ポリプロ(株)製:商品名 ノバテック グレード EC7(MFR=1.5g/10分)を使用した。
また、タルクの含有量を15重量%にした。タルクは、実施例1と同様のものを使用した。
【0109】
(実施例6)
プロピレン単独重合体として、日本ポリプロ(株)製:商品名 ノバテック グレード EC7(MFR=1.5g/10分)を使用した。
また、タルクの含有量を25重量%にした。タルクは、実施例1と同様のものを使用した。
【0110】
(実施例7)
プロピレン単独重合体として、住友化学工業(株)製:商品名 ノーブレンH501(MFR=3.0g/10分)を使用した。
また、タルクの含有量を5重量%にした。タルクは、実施例1と同様のものを使用した。
【0111】
(実施例8)
プロピレン単独重合体として、住友化学工業(株)製:商品名 ノーブレンH501(MFR=3.0g/10分)を使用した。
また、タルクの含有量を10重量%にした。タルクは、実施例1と同様のものを使用した。
【0112】
(実施例9)
プロピレン単独重合体として、住友化学工業(株)製:商品名 ノーブレンH501(MFR=3.0g/10分)を使用した。
また、タルクの含有量を20重量%にした。タルクは、実施例1と同様のものを使用した。
【0113】
(比較例1)
プロピレン単独重合体として、日本ポリプロ(株)製:商品名 ノバテック グレード EC9(MFR=0.5g/10分)を使用した。
また、タルクの含有量を0重量%にした。
【0114】
(比較例2)
プロピレン単独重合体として、日本ポリプロ(株)製:商品名 ノバテック グレード EC9(MFR=0.5g/10分)を使用した。
また、タルクの含有量を10重量%にした。タルクは、実施例1と同様のものを使用した。
【0115】
(比較例3)
プロピレン単独重合体として、日本ポリプロ(株)製:商品名 ノバテック グレード EC7(MFR=1.5g/10分)を使用した。
また、タルクの含有量を0重量%にした。
【0116】
(比較例4)
プロピレン単独重合体として、日本ポリプロ(株)製:商品名 ノバテック グレード EC7(MFR=1.5g/10分)を使用した。
また、タルクの含有量を5重量%にした。タルクは、実施例1と同様のものを使用した。
【0117】
(比較例5)
プロピレン単独重合体として、住友化学工業(株)製:商品名 ノーブレンH501(MFR=3.0g/10分)を使用した。
また、タルクの含有量を0重量%にした。
【0118】
また、使用する材料を適宜変更し、上述した
図11、
図3〜
図6に示す成形方法で屈曲部201(
図1参照)を有さない
図12に示す直線形状のダクト300を成形した。
図12に示す直線形状のダクト300は、
図1に示すインパネダクト200のような屈曲部201がなく全体に亘って直線形状になっている。以下に、直線形状のダクト300を成形する際に使用した材料を比較例毎に記載する。
【0119】
(比較例6)
プロピレン単独重合体として、日本ポリプロ(株)製:商品名 ノバテック グレード EC9(MFR=0.5g/10分)を使用した。
また、タルクの含有量を0重量%にした。
【0120】
(比較例7)
プロピレン単独重合体として、日本ポリプロ(株)製:商品名 ノバテック グレード EC9(MFR=0.5g/10分)を使用した。
また、タルクの含有量を10重量%にした。タルクは、実施例1と同様のものを使用した。
【0121】
(比較例8)
プロピレン単独重合体として、日本ポリプロ(株)製:商品名 ノバテック グレード EC7(MFR=1.5g/10分)を使用した。
また、タルクの含有量を0重量%にした。
【0122】
(比較例9)
プロピレン単独重合体として、日本ポリプロ(株)製:商品名 ノバテック グレード EC7(MFR=1.5g/10分)を使用した。
また、タルクの含有量を5重量%にした。タルクは、実施例1と同様のものを使用した。
【0123】
(比較例10)
プロピレン単独重合体として、住友化学工業(株)製:商品名 ノーブレンH501(MFR=3.0g/10分)を使用した。
また、タルクの含有量を0重量%にした。
【0124】
屈曲部201を有する複雑な形状の
図1に示すインパネダクト200を成形した際の折れ肉の発生の有無と、ピンホールの発生の有無と、を
図13に示す。また、屈曲部201を有さない直線形状の
図12に示すダクト300を成形した際の折れ肉の発生の有無と、ピンホールの発生の有無と、を
図14に示す。また、
図13に示す実施例1〜9、比較例1〜5におけるMFR(g/10分)とタルクの含有量(重量%)との関係を
図15に示す。
【0125】
<
図13、
図14に示す結果>
図13に示す結果から、
図1に示す屈曲部201を有する複雑な形状のインパネダクト200を成形する場合に、MFRが0.5g/10分で、タルクの含有量が30重量%の熱可塑性樹脂シートPを使用した場合(実施例3の場合)は、折れ肉が発生しないが、ピンホールが発生することが判明した。なお、MFRが1.5g/分で、タルクの含有量が30重量%の熱可塑性樹脂シートPを使用した場合も、実施例3と同様に、折れ肉が発生しないが、ピンホールが発生した。また、MFRが3.0g/分で、タルクの含有量が30重量%の熱可塑性樹脂シートPを使用した場合も、実施例3と同様に、折れ肉が発生しないが、ピンホールが発生した。このため、MFRの値にかかわらず、タルクの含有量が30重量%以上の熱可塑性樹脂シートPを使用すると、ピンホールが発生することが判明した。
【0126】
また、MFRが0.5g/10分で、タルクの含有量が0〜10重量%の熱可塑性樹脂シートPを使用した場合(比較例1,2の場合)は、折れ肉が発生することが判明した。
また、MFRが1.5g/10分で、タルクの含有量が0〜5重量%の熱可塑性樹脂シートPを使用した場合(比較例3,4の場合)は、折れ肉が発生することが判明した。
また、MFRが3.0g/10分で、タルクの含有量が0重量%の熱可塑性樹脂シートPを使用した場合(比較例5の場合)は、折れ肉が発生することが判明した。
なお、タルクの含有量を多くするに従って、インパネダクト200の表面に荒れが発生することが判明した。このため、インパネダクト200の表面の荒れを抑制するためには、タルクの含有量を折れ肉が発生しない条件下でなるべく少なくすることが好ましいことが判明した。
【0127】
また、
図13、
図14に示す結果から、
図1に示す屈曲部201を有する複雑な形状のインパネダクト200を成形する場合に、MFRが0.5g/10分で、タルクの含有量が0〜10重量%の熱可塑性樹脂シートPを使用した場合(比較例1,2の場合)は、折れ肉が発生するが、
図12に示す直線形状のダクト300を成形する場合(比較例6、7の場合)は、折れ肉が発生しないことが判明した。
また、
図1に示す屈曲部201を有する複雑な形状のインパネダクト200を成形する場合に、MFRが1.5g/10分で、タルクの含有量が0〜5重量%の熱可塑性樹脂シートPを使用した場合(比較例3,4の場合)は、折れ肉が発生するが、
図12に示す直線形状のダクト300を成形する場合(比較例8、9の場合)は、折れ肉が発生しないことが判明した。
また、
図1に示す屈曲部201を有する複雑な形状のインパネダクト200を成形する場合に、MFRが3.0g/10分で、タルクの含有量が0重量%の熱可塑性樹脂シートPを使用した場合(比較例5の場合)は、折れ肉が発生するが、
図12に示す直線形状のダクト300を成形する場合(比較例10の場合)は、折れ肉が発生しないことが判明した。
【0128】
図13、
図14に示す結果を鑑み、
図1に示す屈曲部201を有する複雑な形状のインパネダクト200を成形する場合には、MFRが0.5g/10分以上3.0g/10分以下であり、且つ、タルクの含有量が5重量%以上30重量%未満の条件を満足する熱可塑性樹脂シートPを使用することで、折れ肉が発生しないインパネダクト200を成形できることが判明した。なお、
図1に示す屈曲部201を有する複雑な形状のインパネダクト200を成形する場合には、MFRが0.1g/10分以上3.5g/10分以下であり、且つ、タルクの含有量が5重量%以上30重量%未満の条件を満足する熱可塑性樹脂シートPを使用することでも、折れ肉が発生しないインパネダクト200を成形できる。
【0129】
また、
図15に示すMFR(g/10分)とタルクの含有量(重量%)との関係を鑑み、
図1に示す屈曲部201を有する複雑な形状のインパネダクト200を成形する場合には、以下の条件式1を満足する熱可塑性樹脂シートPを使用することで、カーテン現象が発生せず、折れ肉が発生しないインパネダクト200を成形できることが判明した。
条件式1・・・W≧2M
2−11M+18
但し、M:熱可塑性樹脂の230℃におけるメルトフローレイト(g/10分)
W:熱可塑性樹脂に混合するタルクの量(重量%)
【0130】
また、以下の条件式2を満足する熱可塑性樹脂シートPを使用することで、折れ肉が発生せず、且つ、ピンホールが発生しないインパネダクト200を成形できることが判明した。
条件式2・・・30>W≧2M
2−11M+18
【0131】
また、以下の条件式3を満足する熱可塑性樹脂シートPを使用することで、折れ肉が発生せず、且つ、ダクト表面の荒れが発生しないインパネダクト200を成形できることが判明した。
条件式3・・・2M
2−11M+23≧W≧2M
2−11M+18
【0132】
なお、上述した実施形態及び実施例は、
図11に示す成形装置1を用いてインパネダクト200を成形することにした。しかし、第1の実施形態で説明した
図2に示すローラ対30を有する成形装置1を用いてインパネダクト200を成形することも可能であり、この場合も同様な効果を奏することになる。
【0133】
図2に示す成形装置1の場合は、Tダイ28から押し出した熱可塑性樹脂シートPを、ローラ対30を通過させて熱可塑性樹脂シートPの肉厚を調整し、分割金型32の間に垂下させるようにしている。この
図2に示す成形装置1であっても、Tダイ28から押し出された熱可塑性樹脂シートPにカーテン現象が発生し、熱可塑性樹脂シートPに皺が発生する。但し、
図2に示す成形装置1では、ローラ対30を通過させて熱可塑性樹脂シートPの肉厚を調整するため、熱可塑性樹脂シートPに発生した皺を低減させることができる。しかし、熱可塑性樹脂シートPにカーテン現象が発生した状態でローラ対30をむりやり通過させてしまうと、熱可塑性樹脂シートPに発生した皺同士がローラ対30で折り畳まれて折れ線が発生してしまう場合がある。また、熱可塑性樹脂シートPにカーテン現象が発生した状態ではローラ対30を通過し難いため、ローラ対30の上部に熱可塑性樹脂シートPが滞留し、一様な厚みの熱可塑性樹脂シートPが形成できなかったり、熱可塑性樹脂シートPに折れ線や皺が発生したりすることになる。このため、
図2に示す成形装置1であっても、
図11に示す成形装置1と同様に、樹脂成形品を成形する分割金型32の形状によっては樹脂成形品に折れ肉が発生し、分割金型32の形状に沿った形状に成形することが困難になる。従って、
図2に示す成形装置1を用いてインパネダクト200を成形する際にも、上述した条件式1〜条件式3を満足する熱可塑性樹脂シートPを形成することで、Tダイ28から押し出された熱可塑性樹脂シートPにカーテン現象が発生しないようにすることができ、折れ肉が発生しないインパネダクト200を成形することができる。なお、ローラ対30を用いた場合、平均肉厚を1.0mm以下のインパネダクト200を成形することも可能である。また、上記実施形態においては、樹脂成形品として中空状に成形した樹脂成形品について説明したが、1枚のシートで非中空状に成形した樹脂成形品であっても本発明を適用できる。
【0134】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
【0135】
<第3の実施形態の樹脂成形品の概要>
まず、
図16を参照しながら、第3の実施形態の樹脂成形品の概要について説明する。
図16は、第3の実施形態の樹脂成形品の一例であるインパネダクト200の構成例を示す図である。
【0136】
本実施形態の樹脂成形品200は、パーティングラインPLを介して接着される第1の壁部201と第2の壁部202とを有して構成する樹脂成形品200である。
本実施形態の樹脂成形品200は、第1の壁部201の平均肉厚と第2の壁部202の平均肉厚との差が0.3mm以下であり、樹脂成形品200全体の肉厚の変動係数が0.3以下である。但し、変動係数は、第1の壁部201の肉厚と第2の壁部202の肉厚とから得られた肉厚の標準偏差を第1の壁部201の肉厚と第2の壁部202の肉厚とから得られた肉厚の平均値で割った値である(変動係数=肉厚の標準偏差/肉厚の平均値)。
【0137】
本実施形態の樹脂成形品200は、上記構成を有することで、成形後の樹脂成形品200の反りの発生を防止することができる。以下、添付図面を参照しながら、本実施形態の樹脂成形品200について詳細に説明する。但し、以下の実施形態では、樹脂成形品200として
図16に示すインパネダクト200を成形する場合を例に説明する。
【0138】
<インパネダクト200の構成例>
まず、
図16を参照しながら、本実施形態のインパネダクト200の構成例について説明する。
図16は、本実施形態のインパネダクト200の構成例を示す図であり、
図16(a)は、インパネダクト200の第1の壁部201側を示し、
図16(b)は、インパネダクト200の第2の壁部202側を示す。
【0139】
本実施形態のインパネダクト200は、パーティングラインPLを介して接着した第1の壁部201と第2の壁部202とを有して構成する。
【0140】
本実施形態のインパネダクト200を構成する第1の壁部201と第2の壁部202との平均肉厚は、0.3〜1.2mmであり、第1の壁部201の平均肉厚と第2の壁部202の平均肉厚との肉厚差は、0.3mm以下である。また、インパネダクト200全体の肉厚の変動係数は、0.3以下である。
【0141】
本実施形態における平均肉厚は、ダクトの中空延伸方向に沿って約100mmの等間隔で設定された、複数の部位の肉厚を測定した結果の平均値を意味する。なお、中空のダクトであれば、パーティングラインPLを介して接着される第1の壁部201と第2の壁部202との各々の壁部においてそれぞれパーティングラインPL90°方向の部位の肉厚を測定し、その測定した肉厚の平均値を意味する。但し、測定位置には、フランジ部等の分割金型32で圧縮された部分が含まれないようにしている。中空延伸方向とは、ダクトにおいて中空部が延びる方向であり、流体が流れる方向である。パーティングラインPL90°方向の部位とは、中空延伸方向に垂直な断面において(
図18参照)、一方のパーティングラインL1と他方のパーティングラインL2とを結ぶ線分の中点を通り、当該線分に直交する直線Xと交わる部位を意味する。
【0142】
なお、本実施形態のインパネダクト200の第1の壁部201側の平均肉厚は、
図16(a)に示すインパネダクト200の第1の壁部201側の部位11〜19,20〜28の18カ所で測定された肉厚の平均値である。また、第2の壁部202側の平均肉厚は、
図16(b)に示すインパネダクト200の第2の壁部202側の部位31〜38,39〜46の16カ所で測定された肉厚の平均値である。インパネダクト200全体の平均肉厚は、第1の壁部201側の平均肉厚と、第2の壁部202側の平均肉厚と、の平均値である。
【0143】
インパネダクト200全体の肉厚の変動係数は、ダクトの中空延伸方向に沿って約100mmの等間隔で設定された、複数の部位の肉厚を測定した結果のばらつきを示し、この変動係数は、ダクトの各部位で測定された肉厚の標準偏差を、その各部位の肉厚の平均値で割った値である(変動係数=肉厚の標準偏差/肉厚の平均値)。なお、肉厚の測定部位は、パーティングラインPL90°方向の部位である。
【0144】
本実施形態のインパネダクト200は、ダクト内部に中空部を有し、その中空部を介して空気などの流体が流通する。なお、
図16に示す形状は、本実施形態のインパネダクト200の一例であり、
図16に示す形状に限定するものではなく、様々な形状のダクトを成形することが可能である。なお、
図16に示す204〜210は、開口部を示し、インパネダクト200内を流通した流体を開口部を介して流通することになる。また、
図16(b)に示すAは、インパネダクト200の両端に位置するフランジ間の距離を示す。本実施形態のインパネダクト200は、上述した第1の実施形態と同様な方法で成形する。
【0145】
<実施例>
次に、上述した実施形態の実施例について説明する。但し、以下の実施例は、一例であり、本実施形態の技術思想は、以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0146】
上述した第1の実施形態の成形方法において、押出スリットから押し出される熱可塑性樹脂シートPの押出速度と、ローラ対30による熱可塑性樹脂シートPの送出速度と、の関係を適宜変更し、
図16に示す屈曲部203を有する複雑な形状のインパネダクト200を成形した。
【0147】
インパネダクト200は、以下の材料を用いて成形した。
ポリプロピレン系樹脂として、サンアロマー(株)製:商品名 サンアロマー グレード PB170A(MFR=0.35g/10分)を使用した。MFRは、JIS K-7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定した値である。
また、タルクの含有量を10重量%にした。タルクの粒径は、6〜7μmのものを使用した。なお、タルクの粒径が2〜30μmの範囲であると、樹脂中でのタルクの分散性が比較的良いため好ましい。
【0148】
また、ローラ対30は、アルミニウム製を使用し、ローラ径は、100mmとした。但し、ローラ30の表面にサンドブラスト処理を施し、ローラ30の表面に凹凸状のシボを形成した。
【0149】
上述した第1の実施形態の成形方法において、押出スリットから押し出される熱可塑性樹脂シートPの押出速度と、ローラ対30による熱可塑性樹脂シートPの送出速度と、の関係を適宜変更し、熱可塑性樹脂シートPの厚みを適宜調整し、
図16に示す屈曲部203を有する複雑な形状のインパネダクト200を成形した際の成形品の平均肉厚、肉厚差、変動係数、重量、フランジ間隔の変化、開口部変化を
図17に示す。フランジ間隔の変化は、
図16(b)に示すフランジAの間隔を示し、開口部変化は、
図16に示す開口部204〜210の変化を示す。フランジ間隔の変化、開口部変化は、以下の方法で測定した。
【0150】
インパネダクト200を恒温槽にて、-30℃,3時間⇒80℃,3時間⇒常温,3時間の冷熱サイクルで保管した。そして、冷熱サイクル前のフランジ間隔、開口部内寸法と、冷熱サイクル後のフランジ間隔、開口部内寸法と、を測定した。そして、前者の測定値と後者の測定値との差を、フランジ間隔の変化、開口部変化として算出した。
【0151】
図17に示す実施例1は、
図16に示すインパネダクト200の重量が964gとなるように成形し、実施例2は、インパネダクト200の重量が800gとなるように成形し、実施例3は、インパネダクト200の重量が724gとなるように成形し、実施例4は、インパネダクト200の重量が640gとなるように成形し、実施例5は、インパネダクト200の重量が715gとなるように成形した。
【0152】
図17に示す平均肉厚は、
図16に示すインパネダクト200の第1の壁部201側の平均肉厚(上側)、第2の壁部202側の平均肉厚(下側)、第1の壁部201側と第2の壁部202側との平均肉厚(上下平均)を示す。また、肉厚差は、第1の壁部201と第2の壁部202との肉厚差(上下の肉厚差)を示す。
【0153】
第1の壁部201側の平均肉厚(上側)は、
図16(a)に示すインパネダクト200の第1の壁部201側の部位11〜19,20〜28の18カ所で測定された肉厚の平均値である。第2の壁部202側の平均肉厚(下側)は、
図16(b)に示すインパネダクト200の第2の壁部202側の部位31〜38,39〜46の16カ所で測定された肉厚の平均値である。第1の壁部201側と第2の壁部202側との平均肉厚(上下平均)は、第1の壁部201側の平均肉厚(上側)と第2の壁部202側の平均肉厚(下側)との平均値である。
【0154】
肉厚差は、第1の壁部201側の平均肉厚(上側)と第2の壁部202側の平均肉厚(下側)との差分である。
【0155】
図17に示す変動係数は、
図16に示すインパネダクト200全体の肉厚の変動係数を示す。変動係数は、
図16(a)に示すインパネダクト200の第1の壁部201側の部位11〜19,20〜28の18カ所で測定された肉厚と、
図16(b)に示すインパネダクト200の第2の壁部202側の部位31〜38,39〜46の16カ所で測定された肉厚と、からなる計34カ所で測定された肉厚から算出された標準偏差を、上述した第1の壁部201側と第2の壁部202側との平均肉厚で除算した値である(変動係数=標準偏差/平均肉厚)。
【0156】
(実施例1)
実施例1のインパネダクト200は、
図17に示すように、インパネダクト200を構成する第2の壁部202側の平均肉厚(下側)は0.900mmであり、第1の壁部201側(上側)の平均肉厚は1.020mmであり、第1の壁部201側と第2の壁部202側との平均肉厚(上下平均)は、0.960mmであった。また、第1の壁部201と第2の壁部202との肉厚差(上下の肉厚差)は、0.120mmであった。
【0157】
また、実施例1のインパネダクト200全体の肉厚の変動係数は、0.271であった。
【0158】
(実施例2)
実施例2のインパネダクト200は、
図17に示すように、インパネダクト200を構成する第2の壁部202側の平均肉厚(下側)は0.682mmであり、第1の壁部201側(上側)の平均肉厚は0.808mmであり、第1の壁部201側と第2の壁部202側との平均肉厚(上下平均)は、0.745mmであった。また、第1の壁部201と第2の壁部202との肉厚差(上下の肉厚差)は、0.126mmであった。
【0159】
また、実施例2のインパネダクト200全体の肉厚の変動係数は、0.266であった。
【0160】
(実施例3)
実施例3のインパネダクト200は、
図17に示すように、インパネダクト200を構成する第2の壁部202側の平均肉厚(下側)は0.580mmであり、第1の壁部201側(上側)の平均肉厚は0.710mmであり、第1の壁部201側と第2の壁部202側との平均肉厚(上下平均)は、0.645mmであった。また、第1の壁部201と第2の壁部202との肉厚差(上下の肉厚差)は、0.130mmであった。
【0161】
また、実施例3のインパネダクト200全体の肉厚の変動係数は、0.260であった。
【0162】
(実施例4)
実施例4のインパネダクト200は、
図17に示すように、インパネダクト200を構成する第2の壁部202側の平均肉厚(下側)は0.495mmであり、第1の壁部201側(上側)の平均肉厚は0.574mmであり、第1の壁部201側と第2の壁部202側との平均肉厚(上下平均)は、0.535mmであった。また、第1の壁部201と第2の壁部202との肉厚差(上下の肉厚差)は、0.079mmであった。
【0163】
また、実施例4のインパネダクト200全体の肉厚の変動係数は、0.252であった。
【0164】
(実施例5)
実施例5のインパネダクト200は、
図17に示すように、インパネダクト200を構成する第2の壁部202側の平均肉厚(下側)は0.497mmであり、第1の壁部201側(上側)の平均肉厚は0.770mmであり、第1の壁部201側と第2の壁部202側との平均肉厚(上下平均)は、0.634mmであった。また、第1の壁部201と第2の壁部202との肉厚差(上下の肉厚差)は、0.273mmであった。
【0165】
また、実施例5のインパネダクト200全体の肉厚の変動係数は、0.250であった。
【0166】
(比較例1)
比較例1のインパネダクト200は、上述した第1の実施形態の成形方法において、押出スリットから押し出される熱可塑性樹脂シートPの押出速度と、ローラ対30による熱可塑性樹脂シートPの送出速度と、の関係を適宜変更し、熱可塑性樹脂シートPの厚みを適宜調整し、
図16に示すインパネダクト200の重量が731gとなるように成形した。
【0167】
比較例1のインパネダクト200は、
図17に示すように、インパネダクト200を構成する第2の壁部202側の平均肉厚(下側)は0.490mmであり、第1の壁部201側(上側)の平均肉厚は0.820mmであり、第1の壁部201側と第2の壁部202側との平均肉厚(上下平均)は、0.655mmであった。また、第1の壁部201と第2の壁部202との肉厚差(上下の肉厚差)は、0.330mmであった。
【0168】
また、比較例1のインパネダクト200全体の肉厚の変動係数は、0.260であった。
【0169】
(比較例2)
比較例2のインパネダクト200は、パリソンブロー成形方法を用いて
図16に示すインパネダクト200の重量が1130gとなるように成形した。
【0170】
比較例2のインパネダクト200は、
図17に示すように、インパネダクト200を構成する第2の壁部202側の平均肉厚(下側)は1.012mmであり、第1の壁部201側(上側)の平均肉厚は1.284mmであり、第1の壁部201側と第2の壁部202側との平均肉厚(上下平均)は、1.148mmであった。また、第1の壁部201と第2の壁部202との肉厚差(上下の肉厚差)は、0.272mmであった。
【0171】
また、比較例2のインパネダクト200全体の肉厚の変動係数は、0.326であった。
【0172】
<比較結果>
実施例1〜実施例5と、比較例1と、を比較すると、第1の壁部201の平均肉厚と第2の壁部202の平均肉厚との肉厚差が小さいほど、
図16に示すインパネダクト200のフランジ間隔の変化に与える影響が小さいことが判明した。例えば、肉厚差が最も小さい実施例4の場合は、フランジ間隔の変化が最も小さく、肉厚差が最も大きい比較例1の場合は、フランジ間隔の変化が最も大きいことが判明した。
【0173】
また、実施例1〜実施例5を比較すると、第1の壁部201側と第2の壁部202側との平均肉厚(上下平均)が薄いほど、
図16に示すインパネダクト200の開口部変化に与える影響が小さいことが判明した。例えば、平均肉厚が最も小さい実施例4の場合は、開口部変化が最も小さく、平均肉厚が最も大きい実施例1の場合は、開口部変化が最も大きいことが判明した。
【0174】
また、実施例5と、比較例2と、を比較すると、比較例2は、第1の壁部201の平均肉厚と第2の壁部202の平均肉厚との肉厚差が小さい(0.3mm以下)が、インパネダクト200全体の肉厚の変動係数が大きいため(0.3超)、
図16に示すインパネダクト200のフランジ間隔の変化に与える影響が大きく、且つ、開口部変化に与える影響も大きいことが判明した。
【0175】
実施例1〜5、比較例1、2の結果から、インパネダクト200全体の肉厚の変動係数が0.3以下であり、且つ、第1の壁部201の平均肉厚と第2の壁部202の平均肉厚との肉厚差が0.3mm以下であることで、
図16に示すインパネダクト200のフランジ間隔の変化に与える影響が小さく、且つ、開口部変化に与える影響が小さいことが判明した。このため、上記条件を満足することで、成形したインパネダクト200に反りが発生しないようにすることができる。
【0176】
また、第1の壁部201の肉厚と第2の壁部202の肉厚との平均肉厚(上下平均)が0.7mmを越えている実施例1、2に比べて、当該平均肉厚が0.7mm以下である実施例3、4は、開口部の変化が顕著に小さくなっている。このことから、第1の壁部201の肉厚と第2の壁部202の肉厚との平均肉厚が0.7mm以下であることが好ましい。これにより、ダクト内外面の冷却時間差が小さいため、熱に対して形状を安定することができ、成形したインパネダクト200に反りが発生しないようにすることができる。
【0177】
<本実施形態のインパネダクト200の作用・効果>
このように、本実施形態のインパネダクト200は、インパネダクト200全体の肉厚の変動係数が0.3以下であり、且つ、第1の壁部201の平均肉厚と第2の壁部202の平均肉厚との肉厚差が0.3mm以下であることで、成形したインパネダクト200に反りが発生しないようにすることができる。
【0178】
なお、本実施形態のインパネダクト200は、上述したシートダイレクト成形で成形することが好ましい。シートダイレクト成形で成形する場合は、第1の壁部201の肉厚と第2の壁部202の肉厚との双方を調整することができるため、第1の壁部201と第2の壁部202との平均ブロー比の差が大きい場合(例えば、0.05以上の場合)でも、双方の肉厚差を小さくすることができるため、冷熱サイクルによるインパネダクト200の変形を抑制することができる。これにより、冷熱サイクルによるインパネダクト200の変形が少なく、且つ、自由度の高い形状のインパネダクト200を成形することができる。
【0179】
例えば、本実施形態のインパネダクト200をパリソンブロー成形により成形する場合は、第1の壁部201と第2の壁部202との平均ブロー比の差が大きい場合(例えば、0.05以上の場合)は、第1の壁部201の肉厚と第2の壁部202の肉厚との差が顕著になり、冷熱サイクルによるインパネダクト200の変形も顕著になる。
【0180】
これに対し、本実施形態のインパネダクト200をシートダイレクト成形で成形する場合は、第1の壁部201の肉厚と第2の壁部202の肉厚との双方を調整することができるため、第1の壁部201と第2の壁部202との平均ブロー比の差が大きい場合(例えば、0.05以上の場合)でも、双方の肉厚差を小さくすることができるため、冷熱サイクルによるインパネダクト200の変形を抑制することができる。特に平均ブロー比の差が0.1以上の場合は変形抑制効果が大きい。
【0181】
なお、本実施形態においてブロー比は、例えば、
図18に示すように、中空延伸方向垂直断面において、一方のパーティングラインL1と他方のパーティングラインL2とを結ぶ線分の長さAに対する、この線分と、この線分から最も離れた内壁面との間の距離Bの割合(B/A)である。
図18の場合は、断面の形状に凹凸が見られる場合は、ブロー比は、0.5となる。また、平均ブロー比は、ダクトの中空延伸方向に約100mmの等間隔で測定したブロー比の平均値である。
【0182】
また、冷却された空気や清浄な空気を供給するダクトにおいては、ダクト周辺の壁面に沿わせたり、周辺位置を避けて空気の供給通路を設けたりする必要があるため、その供給通路が曲がりくねった形状であることが少なくない。このため、ブロー成形されたダクトの壁面において、ブロー比の高い部分と低い部分とのギャップがはげしくなり、薄肉部の発生、さらにはピンホールの発生をきたす問題がある。その結果、ブロー比のギャップがはげしい場合は、ピンホール防止のため、ブロー成形の設定肉厚を全体的に厚くすることが行われている。特に、発泡性樹脂をブロー成形する場合は、非発泡の樹脂の場合に比べて、パリソンの伸びが低下するため、ピンホール防止を目的とした厚肉の設定肉厚を余儀なく行っている。その結果、第1の壁部201と第2の壁部202との平均ブロー比の差が大きい場合は、ダクトの肉厚差が大きくなり、ダクトに反りが発生してしまう場合がある。
【0183】
これに対し、シートダイレクト成形でダクトを成形する場合は、第1の壁部201の肉厚と第2の壁部202の肉厚との双方を調整することができるため、第1の壁部201と第2の壁部202との平均ブロー比の差が大きい場合でも、双方の肉厚差を小さくすることができるため、ダクトに反りが発生しないようにすることができる。
【0184】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。
【0185】
<第4の実施形態の発泡樹脂成形品の成形方法の概要>
まず、
図2〜
図6、
図19、
図20を参照しながら、本実施形態の発泡樹脂成形品の成形方法の概要について説明する。
【0186】
本実施形態の発泡樹脂成形品の成形方法は、
図2に示す成形装置1を用いて、
図19、
図20に示す発泡樹脂成形品を成形する。
【0187】
例えば、
図2に示すように、溶融状態の熱可塑性発泡樹脂シートPを分割金型32の間に配置する。
【0188】
次に、
図3に示すように、分割金型32の周囲に位置する型枠33を、熱可塑性発泡樹脂シートPに近づくように移動させる。さらに、型枠33に設けられた吸引部によって、熱可塑性発泡樹脂シートPを吸引する。これにより、熱可塑性発泡樹脂シートPを型枠33に密着させる。
【0189】
次に、
図4に示すように、分割金型32のキャビティ面116に、熱可塑性発泡樹脂シートPを吸着させる。さらに、
図5に示すように、分割金型32を型締めし、
図19、
図20に示す発泡樹脂成形品を成形する。
【0190】
本実施形態の発泡樹脂成形品の成形方法では、溶融状態の熱可塑性発泡樹脂シートPを、分割金型32の間に配置し、分割金型32を型締めすることによって、発泡樹脂成形品を成形する。このため、熱可塑性発泡樹脂シートPの溶着強度を向上させることができる。以下、添付図面を参照しながら、本実施形態の発泡樹脂成形品の成形方法例を詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、発泡樹脂成形品の一例である空調ダクト400の成形方法を例に説明する。
【0191】
<空調ダクト400の成形方法例>
まず、
図2〜
図6を参照しながら、
図19、
図20に示す空調ダクト400の成形方法例について説明する。
図2は、
図19、
図20に示す空調ダクト400を成形する成形装置1の構成例を示す。
図3〜
図6は、空調ダクト400の成形工程例を示す。
【0192】
図19、
図20に示す空調ダクト400は、エアコンユニットより供給される空調エアを所望の部位へ通風させるための軽量な空調ダクトである。本実施形態の空調ダクト400は、発泡状態の壁面(第1の壁面401および第2の壁面402、以下同じ)を有している。これらの壁面は、複数の気泡セル(発泡倍率が2.0倍以上)を有する独立気泡構造(独立気泡率が70%以上)を有している。さらに、空調ダクト400は、パーティングライン403、および、取付片404を有している。本実施形態の空調ダクト400は、取付片404により、他の部材に取り付ける。
【0193】
本実施形態の空調ダクト400の壁面401,402の平均肉厚は3.5mm以下である。壁面401,402の厚み方向における気泡セルの平均気泡径は300μm未満、好ましくは、100μm未満である。
【0194】
本実施形態の空調ダクト400の材料は、ポリプロピレン系樹脂であってもよい。この材料は、好ましくは、ポリエチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂との混合樹脂であってもよい。空調ダクト400の材料の-10℃における引張破壊伸びは、40%以上であることが好ましい。また、この材料の常温時における引張弾性率は、1000kg/cm
2以上であることが好ましい。さらに、この材料の-10℃における引張破壊伸びは、100%以上であることが好ましい。以下に、材料特性の測定方法、および、発泡倍率の定義を示す。
【0195】
引張破壊伸び:本実施形態の成形方法により得られた空調ダクト400の壁面401,402を切り出し、-10℃で保管した。その後、この切り出し部分を用いて、JIS K-7113に準じた2号形試験片を形成した。この試験片の引張破壊伸びを、引張速度を50mm/分で測定した。
【0196】
引張弾性率:本実施形態の成形方法により得られた空調ダクト400の壁面401,402を切り出した。この切り出し部分を用いて、常温(23℃)で、JIS K-7113に準じた2号形試験片を形成した。この試験片の引張弾性率を、引張速度を50mm/分で測定した。
【0197】
発泡倍率:本実施形態の成形方法に用いた熱可塑性樹脂の密度を、本実施形態の成形方法により得られた空調ダクト400の壁面401,402の見かけ密度で割った値を、発泡倍率とした。
【0198】
メルトフローレイト(MFR):JIS K-7210に準じて、試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定された。
【0199】
アイゾット衝撃強度:本実施形態の成形方法により得られた空調ダクト400の壁面401,402を切り出し、-20℃で保管した。その後、80×10(長さ×幅mm)の小片を、複数枚、切り出した。これらを、厚さが4mmとなるように重ねて、試験片とした。この試験片を用いて、JIS K-7110(ノッチ付き)に準じて測定を行った。
【0200】
<空調ダクト400の成形工程例>
次に、
図2〜
図6を参照しながら、本実施形態の空調ダクト400の成形工程例について説明する。
【0201】
まず、
図2に示すように、第1の壁面401及び第2の壁面402を形成するための2枚の熱可塑性発泡樹脂シート(溶融状態で、且つ、気泡セルを有する熱可塑性発泡樹脂シート)Pを、Tダイ28から押し出し、2枚の熱可塑性発泡樹脂シートPを、一対の分割金型32の間に垂下させる。
【0202】
次に、型枠33及び分割金型32を水平方向に前進させる。これにより、
図3に示すように、一対の分割金型32の外周に位置する型枠33が、熱可塑性発泡樹脂シートPに密着する。そして、型枠33に設けられた吸引部(図示せず)によって、熱可塑性発泡樹脂シートPを吸引する。これにより、熱可塑性発泡樹脂シートPを、型枠33に保持することができる。また、熱可塑性発泡樹脂シートPと分割金型32のキャビティ面116との間に、密閉空間を形成することができる。
【0203】
次に、熱可塑性発泡樹脂シートPを型枠33により保持した状態で、分割金型32を水平方向に前進させる。さらに、
図4に示すように、熱可塑性発泡樹脂シートPを、分割金型32のキャビティ面116に真空吸着させる。これにより、熱可塑性発泡樹脂シートPが、キャビティ面116に沿った形状となる。
【0204】
次に、型枠33及び分割金型32を水平方向に前進させる。これにより、
図5に示すように、型枠33A及び分割金型32Aと、型枠33B及び分割金型32Bと、を閉じ合わせる。これにより、一対の分割金型32のピンチオフ形成部118同士が当接する。その結果、2枚の熱可塑性発泡樹脂シートPが接合されて熱融着し、2枚の熱可塑性発泡樹脂シートPの接合面にパーティングラインが形成される。これにより、
図19、
図20に示す空調ダクト400の成形品が成形される。
【0205】
なお、分割金型32を閉じ合わせた後に、熱可塑性発泡樹脂シートPの間にブローエアを吹き込んでもよい。ブローエアについては、例えば、1〜3kgf/cm
2程度の圧力で吹き込むことができる。これにより、分割金型32の形状に対応した形状のダクトをより確実に成形することができる。
【0206】
次に、空調ダクト400の成形品を、一対の分割金型32内で冷却する。
【0207】
次に、型枠33A及び分割金型32Aと、型枠33B及び分割金型32Bと、を水平方向に後退させる。これにより、
図6に示すように、型枠33A及び分割金型32Aと、型枠33B及び分割金型32Bと、が空調ダクト400の成形品から離れる。
【0208】
次に、ピンチオフ形成部118によって形成されたパーティングラインの外周にあるバリを切除する。これにより、
図19、
図20に示す空調ダクト400が得られる。
【0209】
なお、一対の分割金型32の間に垂下された2枚の熱可塑性発泡樹脂シートPの厚み、押出速度、押出方向の肉厚分布などについては、ドローダウン、ネックインなどにより肉厚のバラツキが発生することを防止するため、個別に調整される。
【0210】
発泡状態の熱可塑性発泡樹脂シートPは、以下のように形成される。
まず、発泡剤を添加した熱可塑性発泡樹脂をシリンダ18により溶融及び混練する。その後、熱可塑性発泡樹脂がアキュムレータ22のアキュム室に一時的に貯留される。そして、一定間隔毎に熱可塑性発泡樹脂がプランジャ24によってTダイ28に供給される。なお、発泡の起点となる発泡核剤や着色用の顔料(カーボンブラック)などをシリンダ18において、熱可塑性発泡樹脂に混合することも可能である。
【0211】
Tダイ28から押し出された熱可塑性発泡樹脂シートPは、ローラ対30によって挟圧され、一対の分割金型32の間に配置される。この時、熱可塑性発泡樹脂シートPの厚み、肉厚分布などが、個別に調整される。
【0212】
具体的には、まず、アキュムレータ22、Tダイ28により熱可塑性発泡樹脂シートPの押出速度が別個に設定される。
【0213】
アキュムレータ22にそれぞれ接続されるシリンダ18の押出能力は、最終的に成形される空調ダクト400の大きさに応じて、適宜選択することが可能である。しかし、シリンダ18の押出能力は、50kg/時以上であることが好ましい。これにより、空調ダクト400の成形サイクルを短縮させることができる。
【0214】
また、熱可塑性発泡樹脂シートPのドローダウンの発生を防止する観点から、Tダイ28からの熱可塑性発泡樹脂シートPの押出時間は、40秒以内、さらに好ましくは、30秒以内に完了する必要がある。
【0215】
このため、アキュムレータ22のアキュム室に貯留された熱可塑性発泡樹脂は、Tダイ28の押出スリットの開口から、1cm
2当り50kg/時以上、好ましくは、60kg/時以上で押し出されることになる。この際、Tダイ28の押出スリットのスリット間隔を、熱可塑性発泡樹脂シートPの押出に併せて変えることにより、ドローダウンの影響を最小限に抑えることができる。
【0216】
つまり、ドローダウン現象により、熱可塑性発泡樹脂シートPにおける上方の肉厚は、自重により引き伸ばされるため、薄くなる傾向にある。これに対して、Tダイ28の押出スリットのスリット間隔を、熱可塑性発泡樹脂シートPの押出開始から徐徐に広げることによって、熱可塑性発泡樹脂シートPの上方に応じたスリット間隔を広くすることができる。これにより、熱可塑性発泡樹脂シートPの肉厚を、上方から下方に亘って均一となるように調整することができる。
【0217】
さらに、Tダイ28から押し出された熱可塑性発泡樹脂シートPの押出速度と、ローラ対30の回転速度と、を異ならせることも可能である。これにより、Tダイ28から押し出された熱可塑性発泡樹脂シートPの押出速度と、ローラ対30による熱可塑性発泡樹脂シートPの送出速度と、に差を設けることができる。これにより、Tダイ28からローラ対30までの間で、熱可塑性発泡樹脂シートPを延伸させることができる。その結果、熱可塑性発泡樹脂シートPの厚みを薄く調整することができる。
【0218】
Tダイ28にそれぞれ供給された熱可塑性発泡樹脂は、Tダイ28本体のマニホールド(図示せず)から、樹脂流路を通って、熱可塑性発泡樹脂シートPとして、Tダイ28本体の押出スリットから押し出される。Tダイ本体は、一方のダイ及び他方のダイを重ね合わせて構成される。Tダイ28本体の先端部分では、一方のダイリップ及び他方のダイリップが、任意のスリット間隔をもって対向している。このスリット間隔は、スリット間隔調整装置23により調整される。Tダイ28から押し出される熱可塑性発泡樹脂シートPの厚みは、スリット間隔により決定される。具体的には、Tダイ28から押し出される熱可塑性発泡樹脂シートPの厚みは、0.6〜6.0mmである。
【0219】
Tダイ28から押し出された熱可塑性発泡樹脂シートPが、一対の分割金型32の間に垂下された時点では、つまり、分割金型32が閉じ合わされる時点では、熱可塑性発泡樹脂シートPの押出方向の厚みは、均一となるように調整されていることが好ましい。この場合、Tダイ28の押出スリットのスリット間隔を、熱可塑性発泡樹脂シートPの押出開始から徐々に広げ、熱可塑性発泡樹脂シートPの押出終了時に最大となるように変動させる。
【0220】
これにより、Tダイ28から押し出される熱可塑性発泡樹脂シートPの厚みは、熱可塑性発泡樹脂シートPの押出開始から徐々に厚くなる。しかし、溶融状態で押し出された熱可塑性発泡樹脂シートPは、自重により引き伸ばされるので、熱可塑性発泡樹脂シートPの厚さは、下方から上方に向かって、徐々に薄くなる傾向がある。従って、Tダイ28の押出スリットのスリット間隔を広げて厚くなった分と、ドローダウン現象により引き伸ばされて薄くなった分と、が相殺される。このため、熱可塑性発泡樹脂シートPの厚さを、上方から下方に亘って均一に調整することができる。
【0221】
上述したように、Tダイ28から熱可塑性発泡樹脂シートPを押し出すときの圧力(射出圧力)、樹脂を押し出す速度(射出速度)、ローラ30の回転速度、および、Tダイ28の押出スリットのスリット間隔が、射出中一定であると、押し出した熱可塑性発泡樹脂シートPが自重によりドローダウン(ネッキング)する。このため、熱可塑性発泡樹脂シートPの下の方は厚くなる一方、上の方は薄くなりやすい。そこで、射出圧力と射出速度とローラ30の送出速度とを、射出中に多段にすることによって、熱可塑性発泡樹脂シートPの肉厚を調整することができる。具体的には、射出圧力および射出速度を、射出中に徐々に上げることによって、熱可塑性発泡樹脂シートPの上方が薄くなることを抑制できる。また、射出中にローラ30の回転速度(送出速度)を上げることにより、熱可塑性発泡樹脂シートPの自重によるネッキングを抑制できる。
【0222】
これらのパラメータ(射出圧力、射出速度、ローラ30の回転速度)は、シリンダ18やアキュムレータ22をプログラムで制御することで、比較的容易に調整可能である。このため、これらは、熱可塑性発泡樹脂シートPの肉厚を調整するためのパラメータとして適している。
【0223】
なお、熱可塑性発泡樹脂シートPの材料が、製膜性の高い樹脂(例えば、ポリプロピレン系樹脂にタルク等の無機フィラーを添加した樹脂)である場合、射出圧力、射出速度、ローラ30の回転速度などの大幅な調整を射出中に行うことなく、熱可塑性発泡樹脂シートPを均一の厚みにすることができる。
【0224】
なお、上述した
図2に示す成形装置1では、Tダイ28への熱可塑性発泡樹脂の供給経路がそれぞれ独立している。しかし、
図21に示すように、Tダイ28に対して1つのシリンダ18、及び、それに連結される1つのアキュムレータ22を組み合わせることも可能である。この場合、アキュムレータ22の先に分岐路を設けることによって、Tダイ28に熱可塑性発泡樹脂を供給する。さらに、アキュムレータ22として、サイドアキュム方式またはリングアキュム方式のアキュムレータを用いることができる。
【0225】
また、
図2、
図21に示すTダイ28は、
図22に示す構造であってもよい。
図22は、一方のTダイ28Bの拡大構成例を示す。例えば、Tダイ28Bが
図22に示す構造を有している場合、アキュムレータ22から供給された熱可塑性発泡樹脂が、流路71に導入及び案内され、マニホールド72を流れてダイ幅方向に広げられる。そして、熱可塑性発泡樹脂は、マニホールド72の下流の樹脂流路を通って、押出スリット73に向かう。これにより、押出スリット73から熱可塑性発泡樹脂シートPが、一対の分割金型32の間に垂下される。
【0226】
また、
図22に示す構造は、押出スリット73の開閉を制御するための開閉機構74,75を有している。開閉機構74,75を左右にスライドさせることによって、押出スリット73を開状態にしたり閉状態にしたりすることができる。通常、アキュムレータ22のアキュム室の出口を閉じることで、当該アキュム室に溶融樹脂が貯留される。これにより、アキュムレータ22のアキュム室内の樹脂圧を上昇させることができる。一方、
図22に示す構造では、樹脂圧を上昇させる際、アキュムレータ22のアキュム室とTダイ28内の流路とが連通した状態で、Tダイ28の先端が閉塞される。これにより、アキュムレータ22のアキュム室とTダイ28内の流路とに貯留された樹脂の圧力を上昇させることができる。即ち、開閉機構74,75により、押出スリット73を閉じた状態にすることで、Tダイ28の出口直前までの溶融樹脂の圧力を上昇させることができる。そして、Tダイ28の内部圧力が所定の値まで上昇したときに、開閉機構74,75により、押出スリット73を開状態とする。これにより、押出スリット73から、熱可塑性発泡樹脂シートPが、一対の分割金型32の間に垂下される。このように、この構成では、Tダイ28の内部圧力を上昇させることができる。このため、Tダイ28から熱可塑性発泡樹脂シートPを押し出すまでは、熱可塑性発泡樹脂シートPの発泡を防止できる。Tダイ28から熱可塑性発泡樹脂シートPを押し出した段階で、熱可塑性発泡樹脂シートPを発泡させることができる。なお、開閉機構74,75の構成および制御方法は、押出スリット73を開閉することが可能であれば、どのような構成および制御方法であってもよい。また、マニホールド72の下流の樹脂流路にチョークバー(図示せず)を設けてもよい。この構成では、チョークバーによって、熱可塑性発泡樹脂における幅方向の流量、厚みを調整することができる。
【0227】
また、
図2、
図21に示す成形装置1は、シングルマニホールド方式の2つのTダイ28を用いて、2枚の熱可塑性発泡樹脂シートPを一対の分割金型32の間に垂下させている。しかし、
図23に示す、マルチマニホールド方式の1つのTダイ28Cを用いて、2枚の熱可塑性発泡樹脂シートPを、一対の分割金型32の間に垂下させることも可能である。
図23に示すTダイ28Cでは、アキュムレータ22から供給された熱可塑性発泡樹脂が2つの流路61に導入及び案内される。熱可塑性発泡樹脂は、それぞれのマニホールド62を流れて、ダイ幅方向に広げられる。各マニホールド62の下流には、チョークバー63が設けられている。このチョークバー63により、熱可塑性発泡樹脂における幅方向の流量および厚みを調整することができる。これにより、
図23に示すTダイ28Cから、2枚の熱可塑性発泡樹脂シートPを、一対の分割金型32の間に垂下させることができる。また、チョークバー63により樹脂流路を閉じることによって、Tダイ28Cの内部圧力を上昇させることができる。これにより、Tダイ28Cの内部圧力を上昇させることができるため、Tダイ28Cから熱可塑性発泡樹脂シートPを押し出すまでは、熱可塑性発泡樹脂シートPの発泡を防止できる。Tダイ28Cから熱可塑性発泡樹脂シートPを押し出した段階で、熱可塑性発泡樹脂シートPを発泡させることができる。
【0228】
また、
図2、
図21に示す成形装置1では、ローラ対30が、熱可塑性発泡樹脂シートPの厚さを調整している。しかし、これらのローラ対30は、必須の構成ではない。
【0229】
熱可塑性発泡樹脂シートPをローラ対30によって挟持すると、熱可塑性発泡樹脂シートPの気泡セルが潰れてしまう場合がある。これに対し、
図11に示す成形装置1のようにローラ対30を有しない構成では、熱可塑性発泡樹脂シートPの気泡セルがローラ対30によって潰れないため、熱可塑性発泡樹脂シートPの発泡倍率を向上させることができる。
【0230】
本実施形態の空調ダクト400を成形するために用いることが可能なポリプロピレン系樹脂は、230℃におけるメルトテンションが30〜350mNの範囲内となるような、ポリプロピレンであることが好ましい。特に、ポリプロピレン系樹脂は、長鎖分岐構造を有するプロピレン単独重合体であることが好ましく、エチレン−プロピレンブロック共重合体が添加されていることがさらに好ましい。
【0231】
また、ポリプロピレン系樹脂に、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーを添加してもよい。この場合、耐衝撃性を改善すると共に空調ダクト400としての剛性を維持するために、スチレン系熱可塑性エラストマーは、ポリプロピレン系樹脂に対して、5〜40wt%、好ましくは、15〜30wt%の範囲で添加される。
【0232】
使用されるスチレン系熱可塑性エラストマーは、具体的には、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンランダム共重合体などの、水素添加ポリマーである。また、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーを使用する場合、スチレン含有量は、30wt%未満、好ましくは、20wt%未満である。水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーの、230℃におけるMFR(JIS K-7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定)は、10g/10分以下、好ましくは、5.0g/10分以下で、且つ、1.0g/10分以上である。
【0233】
また、ポリプロピレン系樹脂に添加されるポリオレフィン系重合体は、低密度のエチレン−α−オレフィンであることが好ましく、1〜20wt%の範囲の配合比を有することが好ましい。低密度のエチレン−α−オレフィンは、0.91g/cm
3以下の密度を有するものであることが好ましい。好適な低密度のエチレン−α−オレフィンは、エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンとを共重合して得られる、エチレン−α−オレフィン共重合体である。その例には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン等があり、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が好適である。また、上記の炭素原子数3〜20のα−オレフィンは、単独で用いたり、2種以上を併用したりすることも可能である。エチレン−α−オレフィン共重合体中の、エチレンに基づく単量体単位の含有量は、エチレン−α−オレフィン共重合体に対して、50〜99wt%の範囲である。また、α−オレフィンに基づく単量体単位の含有量は、エチレン−α−オレフィン共重合体に対して、1〜50wt%の範囲である。特に、メタロセン系触媒を用いて重合された直鎖状超低密度ポリエチレン又はエチレン系エラストマー、プロピレン系エラストマーを用いることが好ましい。
【0234】
一対の分割金型32の間に垂下させる熱可塑性発泡樹脂シートPの材料は、高い溶融張力を有することが必要である。これにより、ドローダウン、ネックインなどにより、熱可塑性発泡樹脂シートPの肉厚にバラツキが発生することを防止すると共に、発泡倍率を高くすることができる。このため、良好な軽量性および断熱性を有する空調ダクト400を得られる。
【0235】
具体的には、熱可塑性発泡樹脂シートPの材料における230℃におけるMFR(JIS K-7210に準じて、試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定)は、5.0g/10分以下であることが好ましく、さらに好ましくは、1.5〜3.0g/10分である。なお、一般に、Tダイ28の押出スリットから薄く押し出すために、フィルム等の成形に用いられる樹脂材料における230℃におけるMFR(JIS K-7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定)は、3.0g/10分より大きく、具体的には5.0〜10.0g/10分である。
【0236】
また、本実施形態の空調ダクト400を成形するための熱可塑性発泡樹脂シートPの材料として、長鎖分岐構造のポリプロピレン(以下、長鎖分岐PPと記載する)と、長鎖分岐構造の高密度ポリエチレン(以下、長鎖分岐HDPEと記載する)を含むポリエチレン系樹脂と、を混合した混合樹脂を用いることも可能である。
【0237】
なお、長鎖分岐HDPEを含むポリエチレン系樹脂は、長鎖分岐HDPEのみであってもよいし、長鎖分岐HDPEと他のポリエチレン系樹脂との混合材料であってもよい。例えば、密度0.94g/cm
3以下のポリエチレン(低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン等)を長鎖分岐HDPEに混合してもよい。
【0238】
上記の混合樹脂を用いて空調ダクト400を成形することで、高発泡の空調ダクト400を成形することができる。
【0239】
なお、長鎖分岐PPは、0.9以下の重量平均分岐指数を有するプロピレン単独重合体(ホモPP)であることが、発泡倍率向上の観点から好ましい。また、重量平均分岐指数は、v1/v2で表される。v1が分岐ポリオレフィンの極限粘度数、v2が、分岐ポリオレフィンと同じ重量平均分子量を有する、線状ポリオレフィンの極限粘度数である。
【0240】
また、長鎖分岐HDPEは、230℃におけるメルトテンション(MT)が30mN以上の、エチレン単独重合体(ホモPE)であることが、発泡倍率向上の観点から好ましい。
【0241】
また、混合樹脂に配合される、長鎖分岐HDPE以外のポリエチレンとしては、剛性を保ちつつバリ取り性を向上させる観点から、非長鎖分岐構造の高密度ポリエチレン(密度0.94g/cm
3以上のもの)を用いることができる。また、低温時の衝撃強度を高めるために、密度0.91g/cm
3以下のポリエチレンを用いてもよい。この場合、特に、メタロセン系触媒により重合された直鎖状超低密度ポリエチレンを用いることが好ましい。
【0242】
また、混合樹脂は、230℃におけるメルトテンション(MT)が30〜350mNの範囲内になるように、複数の樹脂を混合したものであることが好ましい。ここで、MTとは、溶融張力を意味する。混合樹脂のMTが30〜350mNの範囲内であると、高い発泡倍率を得ることができる。なお、MTは、メルトテンションテスター(株式会社東洋精機製作所製)を用いて測定される張力である。この測定では、余熱温度230℃、押出速度5.7mm/分で、直径2.095mm、長さ8mmのオリフィスから、ストランドを押し出す。このストランドを、直径50mmのローラに巻取速度100rpmで巻き取る。MTは、この巻き取りの際のストランドの張力として測定される。
【0243】
また、混合樹脂の230℃におけるメルトフローレイト(MFR)は、1〜10g/10分であることが好ましい。ここで、MFRとは、JIS K-7210に順じて測定した値である。MFRが1g/10分未満であると、MFRが1〜10g/10分の範囲内にある場合と比較して、押出速度を上げることが困難になる傾向がある。MFRが10g/10分を越えると、MFRが1〜10g/10分の範囲内にある場合と比較して、ドローダウン等の発生により成形が困難になる傾向がある。
【0244】
また、熱可塑性エラストマーを5〜40wt%混合した混合樹脂を用いて発泡成形体を成形することで、発泡倍率を高めることができる。この場合の熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系エラストマーや、エチレンプロピレンゴム(以下、EPRと記載する)、オレフィンブロックコポリマー(以下、OBCと記載する)などを用いることができる。
【0245】
スチレン系エラストマーとしては、分子内に水素が添加されたスチレン単位を有するエラストマーを用いることが可能である。例えば、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(以下、SEBSと記載する)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンランダム共重合体等の水素添加エラストマーを用いることが可能である。
【0246】
また、OBC(オレフィンブロックコポリマー)を5〜20wt%混合した混合樹脂を用いて空調ダクト400を成形することで、発泡倍率を約4.0倍以上に向上させることができる。なお、OBCとは、2種類の触媒からなる触媒システムにより、2種類のポリオレフィンが一本の分子内に交互にブロック状に形成されたものをいう。
【0247】
発泡剤としては、空気、炭酸ガス、窒素ガス、水等の無機系物理発泡剤、およびブタン、ペンタン、ヘキサン、ジクロロメタン、ジクロロエタン等の有機系物理発泡剤、あるいは、重炭酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、アゾジカルボンアミド(以下、ADCAと記載する)等の化学発泡剤、さらに、これらの物理発泡剤と化学発泡剤とを併用して用いることができる。
【0248】
特に、発泡剤として、炭酸ガス、又は、重炭酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム等の炭酸ガスを発生する化学発泡剤を用いることで、シャークスキンの発生が抑制される。このため、発泡成形体の表面をきれいにすることができる。ここで、シャークスキンとは、押出スリットから均一に溶融樹脂が流れ出ないことに起因して発生する、成形体表面の凹凸をいう。
【0249】
なお、物理発泡剤としての炭酸ガスと、炭酸ガスを発生する化学発泡剤と、を併用することで、化学発泡剤が、物理発泡剤による発泡の核材としての役割を果たす。これにより、気泡を微細分散させることができる。このため、バリ取り性を向上させつつ、発泡成形体の強度を増加させることができる。
【0250】
また、物理発泡剤を混合樹脂に混練する際には、超臨界流体とした物理発泡剤を、混合樹脂に混練することが好ましい。特に、超臨界状態とした炭酸ガスまたは窒素ガスを、混合樹脂に混練させることが好ましい。この場合、均一且つ確実な発泡を得ることができる。なお、窒素の超臨界流体は、窒素を臨界温度−149.1℃、臨界圧力3.4Mpa以上とすることにより得られる。二酸化炭素の超臨界流体は、二酸化炭素を臨界温度31℃、臨界圧力7.4Mpa以上とすることにより得られる。
【0251】
<本実施形態の空調ダクト400の成形方法の作用・効果>
このように、本実施形態の空調ダクト400の成形方法では、
図2に示すシリンダ18から供給された発泡剤を混練した熱可塑性発泡樹脂を、アキュムレータ22に貯留する。この熱可塑性発泡樹脂を、一定間隔で、プランジャ24を用いてTダイ28に供給する。このTダイ28から、一対の溶融状態で且つ気泡セルを有する、熱可塑性発泡樹脂シートPを押し出す。この一対の熱可塑性発泡樹脂シートPを、一対の分割金型32の間に配置する。そして、
図3に示すように、分割金型32の周囲に位置する型枠33を、熱可塑性発泡樹脂シートPに近づくように移動させる。さらに、型枠33に設けられた吸引部によって、熱可塑性発泡樹脂シートPを吸引する。これにより、熱可塑性発泡樹脂シートPを、型枠33に密着させる。次に、
図4に示すように、一対の分割金型32のキャビティ面116に、熱可塑性発泡樹脂シートPを真空吸着させる。さらに、
図5に示すように、分割金型32を閉じ合わせる。これにより、空調ダクト400が成形される。その後、
図6に示すように、一対の分割金型32を空調ダクト400から離して、空調ダクト400を取り出す。
【0252】
このように、本実施形態のダクトの成形方法では、溶融状態の一対の熱可塑性発泡樹脂シートPを、一対の分割金型32の間に配置する。その後、分割金型32を閉じ合わせて、ダクトを成形する。このため、2枚の熱可塑性発泡樹脂シートPの溶着強度を向上させることができる。
【0253】
<実施例>
次に、上述した空調ダクト400の成形方法の例に関する、具体的な実施例について説明する。但し、以下の実施例は、一例であり、本実施形態の技術思想は、以下の実施例のみに限定されない。
【0254】
図24には、実施例1〜5における(1)混合樹脂の原料配合比、(2)成形された発泡ダクトの発泡倍率、が示されている。
【0255】
図24及び以下の実施例に示す樹脂A〜Cは、次の樹脂に対応する。
【0256】
樹脂A:長鎖分岐HDPE(単独重合体)、東ソー(株)製「08S55A」
樹脂B:長鎖分岐PP(単独重合体)、ボレアリス社製「WB140」
樹脂C:OBC、ダウケミカル社製「OBC9000」
【0257】
(実施例1)
樹脂A、樹脂Bを、50:50の割合で混合して得られる混合樹脂(100重量部)に、発泡剤としての超臨界状態の炭酸ガス、核剤としてのタルクマスターバッチ(1.5重量部)、および、着色剤としてのカーボンブラックマスターバッチ(1.5重量部)を添加して、発泡樹脂とした。これを、2枚の熱可塑性発泡樹脂シートPとして、分割金型32の間に押し出した。分割金型32を閉じ合わせて、2枚の熱可塑性発泡樹脂シートPを接合して熱融着した。これにより、空調ダクト400の成形品が成形された。
図24に示すように、成形された空調ダクト400の発泡倍率は、2.9倍であった。
【0258】
(実施例2)
実施例2の製法は、樹脂A、樹脂B、樹脂Cを、50:45:5の割合で混合して得られる混合樹脂を用いた点を除いて、実施例1と同じである。
図24に示すように、成形された発泡ダクトの発泡倍率は、4.2倍であった。
【0259】
(実施例3)
実施例3の製法は、樹脂A、樹脂B、樹脂Cを、50:40:10の割合で混合して得られる混合樹脂を用いた点を除いて、実施例1と同じである。
図24に示すように、成形された発泡ダクトの発泡倍率は、4.7倍であった。
【0260】
(実施例4)
実施例4の製法は、樹脂A、樹脂B、樹脂Cを、50:30:20の割合で混合して得られる混合樹脂を用いた点を除いて、実施例1と同じである。
図24に示すように、成形された発泡ダクトの発泡倍率は、4.0倍であった。
【0261】
(実施例5)
実施例5の製法は、樹脂A、樹脂B、樹脂Cを、50:10:40の割合で混合して得られる混合樹脂を用いた点を除いて、実施例1と同じである。
図24に示すように、成形された発泡ダクトの発泡倍率は、3.7倍であった。
【0262】
実施例1は、長鎖分岐構造の高密度ポリエチレン(樹脂A)を含むポリエチレン系樹脂を50wt%含有し、長鎖分岐構造のポリプロピレン(樹脂B)を50wt%含有した混合樹脂を発泡させたものである。このような混合樹脂を発泡させたものの発泡倍率は、長鎖分岐構造のポリプロピレン(樹脂B)のみの樹脂を発泡させたものよりも高くなる。
【0263】
また、実施例2〜5のように、熱可塑性エラストマーとしてのOBCを、5〜40wt%の割合で混合することは、他の熱可塑性エラストマーを混合することに比べて、発泡倍率を向上させることができる。
【0264】
特に、実施例2〜4のように、OBCを5〜20wt%の割合で混合することは、発泡倍率をより向上させる(4.0倍以上)ため、好ましい。OBCを約10wt%(8〜12%)とすることは、さらに好ましい。これにより、4.2〜4.7倍程度の高発泡の空調ダクト400を得ることができる。
【0265】
なお、長鎖分岐HDPE(単独重合体)の配合比が40〜60wt%、長鎖分岐PP(単独重合体)の配合比が30〜45wt%、OBCの配合比が5〜15wt%(長鎖分岐HDPEと長鎖分岐PPとOBCとで100wt%)となるように製造された混合樹脂を、発泡成形することで、発泡倍率4.0倍以上の空調ダクト400を容易に得ることができる。
【0266】
なお、本実施形態の空調ダクト400の用途は、自動車に限定されない。空調ダクト400の設計を適宜変更することによって、列車、船舶、航空機等の輸送機にも、空調ダクト400を適用することができる。本実施形態の空調ダクト400は、ある程度の強度を有すると共に、軽量であり、さらに、低コストで製造可能である。このため、空調ダクト400を用いることによって、輸送機のコストを低減することができると共に、輸送機の燃費も向上させることができる。
【0267】
また、押出装置12から押し出された一対の熱可塑性発泡樹脂シートPの間に、風向きを制御するフィンを配置することによって、ダクトをインサート成形することも可能である。これにより、内部にフィンを備えるダクトを成形することができる。この製法では、ブロー成形によって、風向きを制御するためのリブを、ダクトと一体に成形することによって、同一外形のダクトを成形する製法に比べて、より広い風路断面積を確保できる。このため、圧力損失を抑えられる。
【0268】
また、上述した実施形態の製法では、分割金型32よりも上側に設けられたTダイ28から、下方に向かって熱可塑性発泡樹脂シートPを押し出している。そして、熱可塑性発泡樹脂シートPが、分割金型32によって挟み込まれる。このような製法では、熱可塑性発泡樹脂シートPを保持する機構が不要となる。このため、製造装置を簡易化することができる。即ち、例えば、Tダイ28から水平方向に熱可塑性発泡樹脂シートPを押し出す。その後、分割金型32によって、上下から、熱可塑性発泡樹脂シートPを挟み込むような製法も考えられる。しかし、この場合、熱可塑性発泡樹脂シートPのたわみを防止しながら、分割金型32の間に熱可塑性発泡樹脂シートPを配置するための機構が必要になる。これに対し、上述した実施形態の製法では、押出装置12から押し出された熱可塑性発泡樹脂シートPは、自重により、たわむことなく、分割金型32の間に配置される。このため、簡易な機構で、ダクトを成形することが可能である。
【0269】
また、上述した実施形態の製法では、型枠33に熱可塑性発泡樹脂シートPを吸着して保持している。このため、熱可塑性発泡樹脂シートPと分割金型32のキャビティ面116との間に、密閉空間を確実に形成することができる。従って、キャビティ面116側から熱可塑性発泡樹脂シートPを吸引することによって、より確実に、キャビティ面116の形状を熱可塑性発泡樹脂シートPに転写することができる。
【0270】
なお、上述した実施形態は、本発明の好適な実施形態であり、上記実施形態のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。