特許第5867099号(P5867099)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5867099
(24)【登録日】2016年1月15日
(45)【発行日】2016年2月24日
(54)【発明の名称】進入検知装置および進入検知システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20160210BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20160210BHJP
   G08B 13/00 20060101ALI20160210BHJP
   G08B 21/00 20060101ALI20160210BHJP
   G08B 23/00 20060101ALI20160210BHJP
   G08B 25/00 20060101ALI20160210BHJP
【FI】
   G08G1/00
   G08G1/16
   G08B13/00
   G08B21/00
   G08B23/00
   G08B25/00
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-4541(P2012-4541)
(22)【出願日】2012年1月13日
(65)【公開番号】特開2013-143113(P2013-143113A)
(43)【公開日】2013年7月22日
【審査請求日】2014年11月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095957
【弁理士】
【氏名又は名称】亀谷 美明
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(72)【発明者】
【氏名】神谷 亮太
【審査官】 白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−180374(JP,A)
【文献】 特開平02−144257(JP,A)
【文献】 特開2007−186162(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0050421(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00
G08B 13/00
G08B 21/00
G08B 23/00
G08B 25/00
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の複数箇所に配置された車両通信機の各々と車両外部の外部通信機との各通信の関係に基づき、前記車両が対象領域へ進入したか否かを検知する進入検知部と、
前記車両通信機の各々と前記外部通信機との通信における前記車両通信機の各々の受信強度の関係を特定する強度関係特定部をさらに備え、
前記進入検知部は、前記強度関係特定部によって特定された前記受信強度の関係と、所定の受信強度の関係との一致度合いに基づき、前記車両が前記対象領域へ進入したか否かを検知する、進入検知装置。
【請求項2】
前記進入検知装置は、
前記外部通信機と通信可能となった前記車両通信機の順序関係を特定する順序特定部をさらに備え、
前記進入検知部は、前記順序特定部によって特定された前記順序関係と所定の順序関係との一致度合いに基づき、前記車両が前記対象領域へ進入したか否かを検知する、請求項1に記載の進入検知装置。
【請求項3】
前記進入検知部は、前記強度関係特定部によって特定された前記受信強度の関係と前記所定の受信強度の関係との一致度合いが所定時間にわたって閾値を上回った場合に、前記車両が前記対象領域に進入したと検知する、請求項1または2に記載の進入検知装置。
【請求項4】
前記進入検知装置は、
前記車両通信機の各々の識別情報を、前記車両通信機が配置された車両ごとにグループ化された状態で記憶する記憶部をさらに備え、
前記進入検知部は、同一グループを形成する車両通信機の各々と前記外部通信機との各通信の関係に基づいて、当該グループに対応する車両が前記対象領域へ進入したか否かを検知する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の進入検知装置。
【請求項5】
複数箇所に車両通信機が配置された車両と、
車両外部に設けられた外部通信機と、
前記車両に配置された前記車両通信機の各々と前記外部通信機との各通信の関係に基づき、前記車両が対象領域へ進入したか否かを検知する進入検知部、および
前記車両通信機の各々と前記外部通信機との通信における前記車両通信機の各々の受信強度の関係を特定する強度関係特定部を有し、
前記進入検知部は、前記強度関係特定部によって特定された前記受信強度の関係と、所定の受信強度の関係との一致度合いに基づき、前記車両が前記対象領域へ進入したか否かを検知する進入検知装置と、
を備える、進入検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、進入検知装置、進入検知システムおよび車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近日、車両を用いた物品の運搬業務が広く行われている。この運搬業務は、一般に、積み込み作業、運搬作業、および荷下ろし作業を含む。例えば、セメント業界では、採掘現場で採掘された石灰石などの砕石物を大型トラックに積み込み、大型トラックが荷下ろし場まで砕石物を運送し、荷下ろし場に砕石物を荷下ろしする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−280336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような運搬業務における荷下ろし状況をシステム的に集中管理するために、RFID(Radio Frequency IDentification)タグを用いることが考えられる。具体的には、車両に1つのRFIDタグを設置し、RFIDタグの受信強度測定値の分析により、車両の荷下ろし場への進入を検知する方法が考えられる。なお、RFIDタグが設置された車両を用いる車両進入検知システムについては例えば特許文献に開示されている。
【0005】
しかし、上記方法には以下に説明するいくつかの問題がある。
【0006】
第1に、現場環境によっては電波の反射などの影響により正確な受信強度を測定することが困難である。また、電波の受信強度は天候にも左右され易いので、受信強度は日々異なり得る。このように、RFIDタグの受信強度は信頼性が低いので、1のRFIDタグの受信強度の分析により車両の進入を正確に検知することは困難である。
【0007】
特に、採掘所の荷下ろし場は、屋外であるので天候の影響を直接的に受ける環境にある。また、採掘所自体が巨大なクレータ型であるので、雨が降ると電波伝搬に影響を与える霧や靄が発生する。さらに、金属製の荷下ろし設備やトラックの増設や移動により周辺の金属環境も頻繁に変化する。このため、採掘所の荷下ろし場で1のRFIDタグの受信強度の分析により車両の進入を正確に検知することは非常に困難である。
【0008】
第2に、進入と接近を1のRFIDタグの受信強度の分析により区別することは困難である。例えば、荷下ろし場の近隣を通過するトラックと、荷下ろしするトラックの荷下ろし場への接近形態が類似する場合、RFIDタグの受信強度の変化も類似するので、進入と通過(接近)を区別することは困難である。
【0009】
第3に、車両に設置されるRFIDタグが1つである場合、RFIDタグが破損/紛失するとシステムが機能しなくなってしまう。特に、砕石物を運送するトラックは、舗装されていない道路を運搬経路に含むので、運搬時に大きな振動が発生する。また、トラックでは、大きな砕石物の積み込みと荷下ろしが繰り返される。このため、RFIDタグの破損の可能性が高い。
【0010】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、対象領域への車両の進入を適切に検知することが可能な、新規かつ改良された進入検知装置、進入検知システムおよび車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、車両の複数箇所に配置された車両通信機の各々と車両外部の外部通信機との各通信の関係に基づき、前記車両が対象領域へ進入したか否かを検知する進入検知部と、前記車両通信機の各々と前記外部通信機との通信における前記車両通信機の各々の受信強度の関係を特定する強度関係特定部をさらに備え、前記進入検知部は、前記強度関係特定部によって特定された前記受信強度の関係と、所定の受信強度の関係との一致度合いに基づき、前記車両が前記対象領域へ進入したか否かを検知する、を備える進入検知装置が提供される。

【0012】
前記進入検知装置は、前記外部通信機と通信可能となった前記車両通信機の順序関係を特定する順序特定部をさらに備え、前記進入検知部は、前記順序特定部によって特定された前記順序関係と所定の順序関係との一致度合いに基づき、前記車両が前記対象領域へ進入したか否かを検知してもよい。
【0014】
前記進入検知部は、前記強度関係特定部によって特定された前記受信強度の関係と前記所定の受信強度の関係との一致度合いが所定時間にわたって閾値を上回った場合に、前記車両が前記対象領域に進入したと検知してもよい。
【0015】
前記進入検知装置は、前記車両通信機の各々の識別情報を、前記車両通信機が配置された車両ごとにグループ化された状態で記憶する記憶部をさらに備え、前記進入検知部は、同一グループを形成する車両通信機の各々と前記外部通信機との各通信の関係に基づいて、当該グループに対応する車両が前記対象領域へ進入したか否かを検知してもよい。
【0016】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、複数箇所に車両通信機が配置された車両と、車両外部に設けられた外部通信機と、前記車両に配置された前記車両通信機の各々と前記外部通信機との各通信の関係に基づき、前記車両が対象領域へ進入したか否かを検知する進入検知部、および前記車両通信機の各々と前記外部通信機との通信における前記車両通信機の各々の受信強度の関係を特定する強度関係特定部を有し、前記進入検知部は、前記強度関係特定部によって特定された前記受信強度の関係と、所定の受信強度の関係との一致度合いに基づき、前記車両が前記対象領域へ進入したか否かを検知する進入検知装置と、を備える進入検知システムが提供される。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明によれば、対象領域への車両の進入を適切に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態による進入検知システムの構成を示した説明図である。
図2】トラックにおけるRFIDタグの配置の具体例を示した説明図である。
図3】第1の実施形態による進入検知装置の構成を示した機能ブロック図である。
図4】トラックが砕石投入口の荷下ろし場に進入した状態を示した説明図である。
図5】RFIDタグの受信強度の関係を示した説明図である。
図6】第1の実施形態による進入検知装置の動作を示したフローチャートである。
図7】第2の実施形態による進入検知装置の構成を示した機能ブロック図である。
図8】トラックに荷下ろし場への進入を示した説明図である。
図9】トラックに荷下ろし場への進入を示した説明図である。
図10】第2の実施形態による進入検知装置の動作を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0022】
また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素を、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する場合もある。ただし、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素の各々を特に区別する必要がない場合、同一符号のみを付する。
【0023】
<<1.進入検知システムの構成>>
本発明は、一例として「2.第1の実施形態」および「3.第2の実施形態」において詳細に説明するように、多様な形態で実施され得る。また、各実施形態による進入検知装置は、車両の複数箇所に配置された車両通信機の各々と車両外部の外部通信機との各通信の関係に基づき、車両が対象領域へ進入したか否かを検知する進入検知部を備える。
【0024】
以下では、まず、このような各実施形態による進入検知装置を有する進入検知システムの基本構成を説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施形態による進入検知システムの構成を示した説明図である。図1に示したように、本発明の実施形態による進入検知システムは、トラック12、砕石投入口14、RFIDアンテナ16および進入検知装置20を備える。
【0026】
トラック12は、物品を運送するための車両の一例である。特に、本実施形態によるトラック12は、採掘現場で採掘された石灰石などの砕石物が積み込まれ、砕石投入口14の荷下ろし場まで砕石物を運送し、荷下ろし場に砕石物を荷下ろしする。また、トラック12は、複数箇所にRFIDタグのような車両通信機を備える。例えば、トラック12は、平面視における四隅のうちの少なくとも2箇所にRFIDタグを備える。以下、この点について図2を参照して具体的に説明する。
【0027】
図2は、トラック12におけるRFIDタグの配置の具体例を示した説明図である。トラック12は、図2に示したように、複数のRFIDタグT1〜T8を備える。RFIDタグT1、T3、T6およびT8は、トラック12の平面視における四隅に配置される。このようなRFIDタグT1、T3、T6およびT8の配置によれば、図2に示したように、RFIDタグT1、T3、T6およびT8の各々とRFIDアンテナ16との間の各距離が異なる。その結果、RFIDタグT1、T3、T6およびT8におけるRFIDアンテナ16から送信された電波の受信強度、あるいは、RFIDアンテナ16から送信された電波の検出開始タイミングが異なる。詳細については後述するが、本実施形態によれば、複数のRFIDタグ間のこのような通信特性の相違に基づき、トラック12の荷下ろし場への進入を適切に検知することが可能である。
【0028】
また、トラック12は、図2に示したように、平面視における四隅の間にもRFIDタグT2、T4、T5およびT7を備えてもよい。かかる構成により、より多数のRFIDタグの情報を用いることが可能となるので、トラック12の荷下ろし場への進入の検知精度を向上することができる。さらに、RFIDタグの冗長性が増すので、一部のRFIDタグの破損や故障による影響を抑制することが可能である。なお、RFIDタグT4およびT5は、トラック12の荷台部分に設けられてもよいし、トラック12の本体部分に設けられてもよい。
【0029】
また、図2においては車両の一例としてトラック12を示しているが、車両はトラック12に限定されない。例えば、車両は、シャベルカーのような特殊車両であってもよいし、乗用車のような一般車両であってもよい。
【0030】
砕石投入口14は、トラック12によって運送された砕石物が投入される。なお、トラック12は、荷台の前方を持ち上げて荷台を傾けることにより砕石物を投入する。このため、トラック12は、荷下ろし時、すなわち砕石物の投入時にバックで荷下ろし場へ進入する。
【0031】
RFIDアンテナ16は、車両外部に設けられた外部通信機の一例であって、トラック12に配置されたRFIDタグと通信する。例えば、RFIDアンテナ16は、数ms単位で電波を送信し、トラック12に配置されたRFIDタグからタグIDやRFIDタグにおける電波の受信強度情報などを受信することができる。なお、図1および図2においては、荷下ろし場に進入したトラック12の右手後方にRFIDアンテナ16が位置する例を示しているが、RFIDアンテナ16の位置は図1および図2に示した例に限定されない。
【0032】
進入検知装置20は、トラック12に配置された複数のRFIDタグの各々とRFIDアンテナ16との各通信の関係に基づき、トラック12が砕石投入口への荷下ろし場へ進入したか否かを検知する。特に、第1の実施形態による進入検知装置20−1は、複数のRFIDタグの各々の受信強度の関係に基づいてトラック12の進入を検知し、第2の実施形態による進入検知装置20−2は、RFIDアンテナ16から送信された電波を検出したRFIDタグの順序関係に基づいてトラック12の進入を検知する。以下、このような第1の実施形態および第2の実施形態について順次詳細に説明する。
【0033】
<<2.第1の実施形態>>
<2−1.進入検知装置の構成>
図3は、第1の実施形態による進入検知装置20−1の構成を示した機能ブロック図である。図3に示したように、第1の実施形態による進入検知装置20−1は、記憶部22、強度関係特定部24、および進入検知部26を備える。
【0034】
(記憶部)
記憶部22は、RFIDタグの各々のタグIDを、RFIDタグが配置された車両ごとにグループ化された状態で記憶する。例えば、記憶部22は、同一のトラック12に配置されたRFIDタグT1〜T8のタグIDと、トラック12の車両IDを関連付けた状態で記憶する。
【0035】
(強度関係特定部)
強度関係特定部24は、RFID受信機18から、トラック12に搭載されたRFIDタグT1〜T8におけるRFIDアンテナ16から送信された電波の受信強度を受信する。なお、RFID受信機18は、RFIDアンテナ16によって受信された信号を復調、復号することにより、RFIDアンテナ16とRFIDタグとの一定間隔当たりの電波受信回数、およびRFIDタグの受信強度などを取得することができる。
【0036】
そして、強度関係特定部24は、RFID受信機18から受信した受信強度を記憶部22においてグループ化されているRFIDタグ内で観察し、同一グループを構成するRFIDタグの受信強度の関係を特定する。例えば、強度関係特定部24は、トラック12に配置されたRFIDタグT1〜T8の受信強度の関係を、以下のように特定する。
【0037】
−受信強度の関係の具体例
例1:T1>T2>T3>T4>T5>T6>T7>T8
例2:T1>T2>T4>T5>T7>T8
例3:T6>T7>T4>T8>T5>T1>T2>T3
【0038】
(進入検知部)
進入検知部26は、強度関係特定部24によって特定されたRFIDタグの受信強度の関係と、所定の受信強度の関係との一致度合いに基づき、トラック12が荷下ろし場に進入したか否かを検知する。ここで、所定の受信強度は、トラック12が荷下ろしのために荷下ろし場に進入した場合に想定される受信強度の関係である。以下、この所定の受信強度の関係について図4および図5を参照して具体的に説明する。
【0039】
図4は、トラック12が砕石投入口14の荷下ろし場に進入した状態を示した説明図である。図4に示したように、トラック12は、荷下ろしを目的とする場合にはバックで荷下ろし場に進入する。このため、図4に示したように、RFIDアンテナ16とRFIDタグT1〜T8の各々との距離は以下の関係を有する。
【0040】
−RFIDアンテナ16とRFIDタグT1〜T8の各々との距離関係
T8>T7>T6>T5>T4>T3>T2>T1
【0041】
ここで、RFIDアンテナ16との距離が近いRFIDタグほど受信強度が高くなる。このため、上記の距離関係から、図5に示すように、RFIDタグT1〜T8の各々の受信強度の以下に示す関係(所定の受信強度の関係)が導かれる。
【0042】
−所定の受信強度の関係
T1>T2>T3>T4>T5>T6>T7>T8
【0043】
進入検知部26は、上記の所定の受信強度の関係と、強度関係特定部24によって特定されたRFIDタグの受信強度の関係との一致度合いに基づき、トラック12が荷下ろし場に進入したか否かを検知する。具体的には、進入検知部26は、双方の受信強度の関係の一致度合いが閾値を上回る場合にトラック12が荷下ろし場に進入したと検知する。
【0044】
例えば、強度関係特定部24によって例1に示した受信強度の関係が特定された場合、双方の受信強度の関係は一致するので、進入検知部26は、タグT1〜T8のタグIDと関連付けられた車両IDを有するトラック12が荷下ろし場に進入したと検知する。なお、トラック12は荷下ろしが完了するまで停車していると考えられるので、進入検知部26は、双方の受信強度の関係の一致度合いが所定時間にわたって閾値を上回った場合にトラック12が荷下ろし場に進入したと検知してもよい。かかる構成により、さらに確実に荷下ろしを行ったトラック12の進入のみを検知することが可能となる。
【0045】
また、RFIDタグT3およびT6の故障により、強度関係特定部24によって例2に示した受信強度の関係が特定された場合、双方の受信強度の関係は一致しない。しかし、故障していない6つのRFIDタグの受信強度の関係は、所定の受信強度の関係と一致しているので、進入検知部26は、例えば、関係が一致しているタグ数/設置タグ数、という演算により、双方の関係の一致度合いを75%と算出する。したがって、閾値が70%である場合、進入検知部26は、トラック12が荷下ろし場に進入したと検知する。このように、閾値を用いて進入検知を行うことにより、一部のRFIDタグの破損や故障が発生してもシステム運営を継続することが可能である。
【0046】
一方、トラック12がRFIDアンテナ16の脇を前進しながら通過する場合、例3に示したように、トラック12の前方に配置されたRFIDタグの受信強度が後方に配置されたRFIDタグの受信強度より高くなる。このような受信強度の関係と上記の所定の関係との一致度合いは低いので、進入検知部26は、トラック12が荷下ろし場に進入したと検知しない。
【0047】
以上説明したように、進入検知部26は、複数のRFIDタグの各々の受信強度の関係に基づき、トラック12の荷下ろし場への進入を、近隣の通過と区別して適切に検知することができる。また、第1の実施形態による進入検知システムによれば、天候、トラック12または設備などの現場環境の変化に伴い電波伝搬状況が変化する可能性のある現場においても、受信強度の調整のための送信強度や指向性の調整を行わなくても、トラック12の進入を適切に検知することが可能である。また、トラック12の複数箇所にRFIDタグが設けられるので、運用上の冗長性も確保される。
【0048】
<2−2.進入検知装置の動作>
以上、第1の実施形態による進入検知装置20−1の構成を説明した。続いて、図6を参照し、第1の実施形態による進入検知装置20−1の動作を整理する。
【0049】
図6は、第1の実施形態による進入検知装置20−1の動作を示したフローチャートである。図6に示したように、まず、進入検知装置20−1はRFID受信機18からトラック12に配置された各RFIDタグの受信強度情報を取得する(S110)。
【0050】
そして、強度関係特定部24は、RFID受信機18から受信した受信強度を記憶部22においてグループ化されているRFIDタグ内で観察し、同一グループを構成するRFIDタグの受信強度の関係を特定する(S120)。
【0051】
その後、進入検知部26は、強度関係特定部24によって特定されたRFIDタグの受信強度の関係と所定の受信強度の関係との一致度合いが閾値以上であるか否かを判断し(S130)、一致度合いが閾値以上である場合、RFIDタグに対応するトラック12が進入したと検知する(S140)。
【0052】
<<3.第2の実施形態>>
以上、本発明の第1の実施形態を説明した。続いて、本発明の第2の実施形態を説明する。本発明の第2の実施形態によれば、RFIDアンテナ16によって検出されたRFIDタグの順序関係に基づいてトラック12の進入を検知することが可能である。
【0053】
<3−1.進入検知装置の構成>
図7は、第2の実施形態による進入検知装置20−2の構成を示した機能ブロック図である。図7に示したように、第2の実施形態による進入検知装置20−2は、記憶部22、検出順序特定部25、および進入検知部27を備える。
【0054】
(記憶部)
記憶部22は、第1の実施形態と同様に、RFIDタグの各々のタグIDを、RFIDタグが配置された車両ごとにグループ化された状態で記憶する。例えば、記憶部22は、同一のトラック12に配置されたRFIDタグT1〜T8のタグIDと、トラック12の車両IDを関連付けた状態で記憶する。
【0055】
(検出順序特定部)
検出順序特定部25は、RFID受信機18から、トラック12に搭載されたRFIDタグT1〜T8のRFIDアンテナ16による検出情報を受信する。そして、検出順序特定部25は、RFIDアンテナ16と通信可能になったRFIDタグの順序関係、すなわち、RFIDアンテナ16によりRFIDタグが検出された順序関係を特定する。
【0056】
(進入検知部)
進入検知部27は、検出順序特定部25によって特定されたRFIDタグの検出順序関係と、所定の順序関係との一致度合いに基づき、トラック12が荷下ろし場に進入したか否かを検知する。ここで、所定の順序関係は、トラック12が荷下ろしのために荷下ろし場に進入した場合に想定されるRFIDタグの検出順序である。以下、この所定の順序関係について図8および図9を参照して具体的に説明する。
【0057】
例えば、図8に示したようにトラック12がバックで荷下ろし場へ進入しようとする場合、RFIDアンテナ16に最も近接するRFIDタグT1がRFIDアンテナ16の電波到達範囲に最初に進入するので、RFIDタグT1が最初に検出される。その後、図9に示すようにトラック12の荷下ろし場への進入が完了する過程で、以下に示す順序関係でRFIDタグT2〜T8が検出されると考えられる。
【0058】
−所定の順序関係
T1→T2→T3→T4→T5→T6→T7→T8
【0059】
このため、進入検知部27は、上記の所定の順序関係と、検出順序特定部25によって特定されたRFIDタグの検出順序関係との一致度合いが閾値を上回る場合にトラック12が荷下ろし場に進入したと検知する。
【0060】
例えば、進入検知部27は、検出順序特定部25によって特定されたRFIDタグの検出順序関係が上記の所定の順序関係と同一である場合、進入検知部27は、タグT1〜T8のタグIDと関連付けられた車両IDを有するトラック12が荷下ろし場に進入したと検知する。
【0061】
また、RFIDタグT3およびT6の故障により、検出順序特定部25によって以下の検出順序関係が特定された場合、検出順序関係は所定の順序関係と一致しない。
T1→T2→T4→T5→T7→T8
【0062】
しかし、故障していない6つのRFIDタグの検出順序関係は、所定の順序関係と一致しているので、進入検知部27は、例えば、関係が一致しているタグ数/設置タグ数、という演算により、双方の関係の一致度合いを75%と算出する。したがって、閾値が70%である場合、進入検知部27は、トラック12が荷下ろし場に進入したと検知する。このように、閾値を用いて進入検知を行うことにより、一部のRFIDタグの破損や故障が発生してもシステム運営を継続することが可能である。
【0063】
一方、トラック12がRFIDアンテナ16の脇を前進しながら通過する場合、以下に示すように、トラック12の前方に配置されたRFIDタグが後方に配置されたRFIDタグより早く検出されると考えられる。このような検出順序関係と所定の順序関係との一致度合いは低いので、進入検知部27は、トラック12が荷下ろし場に進入したと検知しない。
T6→T7→T4→T8→T5→T1→T2→T3
【0064】
以上説明したように、進入検知部27は、複数のRFIDタグの各々の検出順序関係に基づき、トラック12の荷下ろし場への進入を、近隣の通過と区別して適切に検知することが可能である。
【0065】
<2−3.進入検知装置の動作>
以上、第2の実施形態による進入検知装置20−2の構成を説明した。続いて、図10を参照し、第2の実施形態による進入検知装置20−2の動作を整理する。
【0066】
図10は、第2の実施形態による進入検知装置20−2の動作を示したフローチャートである。図10に示したように、まず、進入検知装置20−2はRFID受信機18からトラック12に配置された各RFIDタグの検出情報を取得する(S210)。
【0067】
そして、検出順序特定部25は、RFID受信機18から受信した検出情報を記憶部22においてグループ化されているRFIDタグ内で観察し、同一グループを構成するRFIDタグの検出順序関係を特定する(S230)。
【0068】
その後、進入検知部27は、検出順序特定部25によって特定されたRFIDタグの検出順序関係と所定の順序関係との一致度合いが閾値以上であるか否かを判断し(S230)、一致度合いが閾値以上である場合、RFIDタグに対応するトラック12が進入したと検知する(S240)。
【0069】
<<4.補足>>
以上、第1の実施形態および第2の実施形態を個別に説明したが、第1の実施形態と第2の実施形態を組み合わせることも可能である。例えば、進入検知装置20は、RFIDタグの検出順序関係と所定の順序関係との一致度合いが閾値以上であり(第2の実施形態)、かつ、RFIDタグの受信強度の関係と所定の受信強度の関係との一致度合いが閾値以上である場合(第1の実施形態)にトラック12が進入したと検知してもよい。
【0070】
また、上記では本実施形態による進入検知システムが砕石投入口の荷下ろし場への進入検知に適用される例を説明したが、本実施形態は他の用途にも同様に適用することが可能である。例えば、物流関連のトラックは、荷下ろし場にバックで進入するケースが多いので、物流関連のトラックの荷下ろし管理/検収管理に本実施形態を適用することも可能である。なお、代替案としてDSRC/ICカードを利用して上記管理をシステム化することも考えられるが、幾つかの懸念がある。例えば、DSRCでは、隣接の電波の干渉、または反射波などの電波伝搬状況の影響により、誤検知の発生が懸念される。また、ICカードでは、人が介在するので、人的ミスによる誤検知の発生が懸念される。これに対し、本発明の実施形態によれば、トラックの荷下ろし場への進入を適切に検知することが可能である。
【0071】
<<5.むすび>>
以上説明したように、本発明の第1の実施形態によれば、複数のRFIDタグの各々の受信強度の関係に基づき、トラック12の荷下ろし場への進入を、近隣の通過と区別して適切に検知することができる。また、本発明の第2の実施形態によれば、複数のRFIDタグの各々の検出順序関係に基づき、トラック12の荷下ろし場への進入を、近隣の通過と区別して適切に検知することが可能である。
【0072】
また、本発明の第1の実施形態および第2の実施形態によれば、天候、トラック12または設備などの現場環境の変化に伴い電波伝搬状況が変化する可能性のある現場においても、受信強度の調整のための送信強度や指向性の調整を行わなくても、トラック12の進入を適切に検知することが可能である。また、トラック12の複数箇所にRFIDタグが設けられるので、運用上の冗長性も確保される。
【0073】
なお、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0074】
例えば、本明細書の進入検知装置20の処理における各ステップは、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はない。例えば、進入検知装置20の処理における各ステップは、フローチャートとして記載した順序と異なる順序で処理されても、並列的に処理されてもよい。
【0075】
また、進入検知装置20に内蔵されるCPU、ROMおよびRAMなどのハードウェアを、上述した進入検知装置20の各構成と同等の機能を発揮させるためのコンピュータプログラムも作成可能である。また、該コンピュータプログラムを記憶させた記憶媒体も提供される。
【符号の説明】
【0076】
12 トラック
14 砕石投入口
16 RFIDアンテナ
18 RFID受信機
20 進入検知装置
22 記憶部
24 強度関係特定部
25 検出順序特定部
26、27 進入検知部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10