(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記結晶成長装置において、融液を保有する坩堝の外部は、金属製容器等の外容器によって囲われている。これは、結晶成長中に融液のNaが蒸発して外に出て行くのを極力防止するためである。このため、結晶成長方法を実施するためには、外容器の中に坩堝を設置する、または、坩堝を取り出すための工程が必要となる。
【0005】
坩堝と外容器との隙間を大きくとるように設計すれば、外容器に対して坩堝を出し入れし易くはなる。しかしながら、上記結晶成長方法としてプロペラで融液を直接攪拌する場合に、坩堝と外容器との間に大きな隙間があると、攪拌によって坩堝と外容器とが衝突することによる坩堝への衝撃や、プロペラを回転させる駆動軸の回転性という観点から好ましくない。
【0006】
一方で、坩堝と外容器との隙間を小さくとる場合、外容器に対して坩堝を出し入れし易くするために、坩堝自体にワイヤーを括りつける突起や穴等を設けることが考えられる。しかしながら、坩堝はセラミックスでできており、突起や穴を設けることは、その加工性上容易ではない。また、このような加工ができたとしても、複数回の再生利用は難しいという坩堝の性質を考慮すると、コスト的に見合うものではなく、得策でない。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、駆動軸による融液の攪拌を円滑に行え、外容器に対して坩堝を出し入れし易くすることができる坩堝ハンドリング用治具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、外部が外容器に囲まれ、内部に保有する融液を攪拌するための駆動軸が挿通される孔部を有する坩堝を、ハンドリングする坩堝ハンドリング用治具であって、上記坩堝を、上記外容器の中に設置する、または、上記外容器の中から取り出すための吊り具が装着可能な吊り部と、上記設置の際に、上記坩堝と共に上記外容器の中に設置され、上記駆動軸に対する上記孔部の芯出しをする芯出し部と、を有するという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明の坩堝ハンドリング用治具は、吊り具が装着可能な吊り部を備えるため、坩堝自体に突起や穴等を設ける必要はなく、また、融液に直接接触するわけではないので、坩堝とは異なり、複数回の再生利用も可能で、コストを低く抑えることができる。そして、坩堝と外容器との隙間を小さくとった場合であっても、吊り具を装着できるため、外容器に対して坩堝を出し入れし易くなる。また、この治具は、外容器の中に坩堝を設置する際に、坩堝と共に外容器の中に収容される。そして、当該設置の際に、この治具の芯出し部によって、駆動軸に対する孔部の芯出しが行われるため、駆動軸の回転性が保たれ、駆動軸による融液の攪拌を円滑に行える。
【0009】
また、本発明においては、上記芯出し部は、上記設置の際に、上記坩堝と上記外容器との隙間に介在するという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、坩堝と外容器との間に芯出し部が挟まって存在するため、坩堝と外容器とが衝突することがなく、また、攪拌中、当該隙間による坩堝の振動の発生も抑制することができ、駆動軸による融液の攪拌を円滑に行える。
【0010】
また、本発明においては、上記吊り部は、上記坩堝よりも高い位置に設けられているという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、坩堝と干渉することなく治具に吊り具を装着することができる。
【0011】
また、本発明においては、上記坩堝の底部を支持する支持部と、上記支持部と上記坩堝の底部との間で熱衝撃を緩和する熱衝撃緩和部と、を有するという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、支持部と坩堝底部との間で熱衝撃が緩和されるため、例え治具が金属製であっても、加熱の際の坩堝底部の局所的な温度上昇を抑制でき、坩堝に割れやヒビなどが入らないようにすることができる。
【0012】
また、本発明においては、上記坩堝は、上記融液を保有する本体部と、上記本体部と係合すると共に上記孔部を有する蓋部と、を有しており、上記芯出し部は、上記坩堝に対し上記蓋部にのみ接触するという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、駆動軸が挿通する孔部を有する蓋部にのみ芯出し部が接触するため、例え治具が金属製であっても、加熱の際の本体部の局所的な温度上昇を抑制でき、融液を保有する本体部に割れやヒビなどが入らないようにすることができる。
【0013】
また、本発明においては、上記芯出し部は、上記坩堝の外周に沿って点在して複数設けられているという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、隣り合う芯出し部の間に隙間が生じるため、坩堝を治具にセットし易くなる。
【0014】
また、本発明においては、上記坩堝の底部を支持する支持部と、上記支持部と上記坩堝の底部との間の相対移動を抑制する摩擦力を発現させる摩擦部と、を有するという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、摩擦部によって支持部と坩堝底部との相対移動が抑制されるため、駆動軸による融液の攪拌を円滑に行える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、駆動軸による融液の攪拌を円滑に行え、外容器に対して坩堝を出し入れし易くすることができる坩堝ハンドリング用治具が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、本発明の坩堝ハンドリング用治具を適用する結晶成長装置として、窒化ガリウム製造装置を例示して説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態における窒化ガリウム製造装置1を示す構成図である。
窒化ガリウム製造装置1は、フラックス法により種基板(結晶担持体)2上に窒化ガリウム(GaN)結晶を成長させ製造するものであり、種基板2及び混合融液3を保持する坩堝11とその外側を囲う外容器13とで構成される反応容器10と、反応容器10の外側を囲う断熱容器20と、断熱容器20の外側を囲う圧力容器30と、混合融液3を攪拌する攪拌装置40と、を有する。
【0019】
坩堝11は、混合融液3を内部に保有する本体部11aと、本体部11aと係合する蓋部11bと、を有している。混合融液3は、原料となるガリウム(Ga)と、フラックス剤としてナトリウム(Na)とが溶融して混合したものである。なお、フラックス剤としては、ナトリウムの他に、他のアルカリ金属、あるいは、アルカリ土類金属等を用いることもできる。本体部11aは、有底円筒形状を有し、その内部に保有する混合融液3に種基板2を浸漬させる構成となっている。本体部11aは、アルミナ、または、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)、または、イットリアからなる耐熱性のセラミックス材から形成されている。
【0020】
蓋部11bは、本体部11aと同一の材料から形成され、本体部11aの上部開口に載置される。蓋部11bは、係合部14と、孔部15とを有する。係合部14は、本体部11aの上部開口内縁に沿って係合する凸形状を有する。また、孔部15には、本体部11aに保有する融液を攪拌するための駆動軸41が挿通される。孔部15は、すべり軸受70Aに形成されている。本実施形態のすべり軸受70Aは、高温雰囲気下におかれるため、耐熱性、耐摩耗性を併せ持つ、アルミナ、または、YAG、または、イットリアから形成されたセラミックス軸受から構成されている。
【0021】
すべり軸受70Aと軸体41b1との間には隙間が形成されている。この隙間は、すべり軸受70Aの内周径を、軸体41b1の外周径より大きく設計することにより形成される。この隙間は、Na蒸気の漏出を防ぎつつ窒素ガスを坩堝11内に供給することができる大きさに管理されている。この機能を十分に発揮できる隙間の大きさは、実験結果や経験則から、1mm以下が適当であるとされている。本実施形態では、加熱による熱膨張率を考慮して、この隙間の片側の大きさが0.1mm〜0.2mmとなるように、製作時にすべり軸受70Aの内周径及び駆動軸41の外周径を精度管理している。
【0022】
坩堝11の外側を囲う外容器13は、金属製容器であり、例えばステンレス鋼から形成されている。外容器13には、外部からGaN結晶の原料となる窒素ガス(N
2)を導入する窒素ガス供給ポート17が接続されており、反応容器10内に窒素ガスが充填されるようになっている。外容器13は、駆動軸41が挿通される孔部16を有する。孔部16は、すべり軸受70Bに形成されている。すべり軸受70Bは、すべり軸受70Aと同一の材料から形成されている。すべり軸受70Bと駆動軸41との間の隙間は、すべり軸受70Aと駆動軸41との間の隙間に比べて十分に小さく管理され、窒素ガスの流出を抑制する構成となっている。
【0023】
断熱容器20の断熱材には、例えばグラスウール等の繊維系断熱材が用いられる。断熱容器20の内側には、外容器13を囲んで加熱するヒーター21が設けられる。
圧力容器30は、圧力状態が変化した場合であってもその圧力に耐えられるように略円筒形状に形状設定された真空容器からなり、この円筒形の中心軸が鉛直方向となるように姿勢設定されている。また、圧力容器30には、内部の空気を真空排気する不図示の真空排気ポートが接続されている。
【0024】
攪拌装置40は、磁気結合式の攪拌機であり、駆動軸41と、軸ケース42と、回転駆動装置43と、を有する。駆動軸41の一端側には、永久磁石(磁性体)44を外周面周方向おいて所定間隔を空けて複数備える内筒45が装着されている。軸ケース42は、駆動軸41の一端側を収容する収容空間S1を有する。収容空間S1には、内筒45の周面と接して、駆動軸41を軸周りに回転自在に支持する軸受46が設けられている。この軸ケース42は、非磁性体のステンレス鋼から形成され、圧力容器30に気密に密着固定されている。なお、駆動軸41もステンレス鋼から形成されている。
【0025】
回転駆動装置43は、軸ケース42の外側に、永久磁石47を内周面周方向において所定間隔をあけて複数備える外筒48を備える。外筒48は、軸ケース42の外側に取り付けられた軸受49により軸周りに回転自在に支持されている。また、回転駆動装置43は、外筒48を軸周りに回転させるモーター50を備える。モーター50の回転軸と外筒48とはベルト51で接続されている。上記構成によれば、モーター50の駆動により外筒48が軸周りに回転すると、外筒48に固定された永久磁石47と内筒45に固定された永久磁石44とが軸ケース42を介して磁気的に作用し、駆動軸41が軸周りに回転する。
【0026】
断熱容器20及び圧力容器30には、駆動軸41が挿通する挿通孔(以下、断熱容器20の挿通孔を第1孔部22、圧力容器30の挿通孔を第2孔部31と称する)が形成されている。第1孔部22と第2孔部31との間には、軸方向に伸縮自在で、且つ、軸方向と直交する方向に偏心自在なベローズ管(伸縮管)53が設けられている。ベローズ管53は、断熱容器20と圧力容器30との間において駆動軸41を囲うと共に、その一端側で第1孔部22を気密に囲うように取り付けられ、その他端側で第2孔部31を気密に囲うように取り付けられている。なお、第2孔部31は軸ケース42の収容空間S1と気密に連通しており、第1孔部22より外側には、ベローズ管53、第2孔部31及び収容空間S1が連通した気密空間が形成される構成となっている。この構成によれば、断熱容器20からの高温ガスの流出を抑制することができる。
【0027】
軸ケース42から下方に延びる駆動軸41の他端側は、圧力容器30、断熱容器20、外容器13及び坩堝11を挿通され、混合融液3中に至る構成となっている。本実施形態の駆動軸41は、第1駆動軸41Aと第2駆動軸41Bとが軸継手60により係合して構成されている。第2駆動軸41Bは、その他端側先端部に攪拌翼52を備えており、混合融液3中で攪拌翼52が軸周りに回転することで、混合融液3を攪拌する。なお、第1駆動軸41Aは、軸ケース42によって回転自在に支持され、第2駆動軸41Bは、坩堝11の蓋部11bに設けられたすべり軸受70Aにより回転自在に支持され、さらに、外容器13に設けられたすべり軸受70Bにより回転自在に支持されている。
【0028】
第2駆動軸41Bは、反応容器10に挿通する軸体41b1と、軸方向(鉛直方向)で外容器13に係止可能に設けられた係止部41b2と、を有する。なお、軸体41b1と係止部41b2とは、分離可能に嵌合する構成となっている。係止部41b2は、軸体41b1の端部から半径方向(水平方向)両側に延在する略板形状を有する。一方、第1駆動軸41Aは、係止部41b2と組んで軸継手60を構成すると共に、係止部41b2を跨ぎ、且つ、係止部41b2の厚みより大きな距離で設けられる一対の棒体41a1を有する。
【0029】
上記構成の軸継手60によれば、第1駆動軸41Aが軸周り(例えば平面視時計回り)に回転すると、一対の棒体41a1が係止部41b2を厚み方向で挟み込むように接触し、係合する。そして、第1駆動軸41Aと第2駆動軸41Bとが一体回転することとなる。第2駆動軸41Bが回転すると、攪拌翼52によって混合融液3に旋回流が生じる。
外容器13の中には、本発明に係る坩堝ハンドリング用治具100が設置されている。坩堝ハンドリング用治具100は、外容器13の中で駆動軸41(第2駆動軸41B)に対する孔部15の芯出しをする構成となっている。
【0030】
次に、
図2〜
図4を参照して、坩堝ハンドリング用治具100の構成について詳しく説明する。
図2は、本発明の実施形態における坩堝ハンドリング用治具100を示す斜視図である。また、
図3は、本発明の実施形態における坩堝ハンドリング用治具100を示す平面図である。また、
図4は、本発明の実施形態における坩堝ハンドリング用治具100を示す正面図である。
【0031】
図2に示すように、坩堝ハンドリング用治具100は、坩堝11を、外容器13の中に設置する、または、外容器13の中から取り出すための吊り具が装着可能な吊り部101を有する。本実施形態の吊り部101は、吊り具として例えばワイヤーやピン等を装着可能な穴から構成されている。なお、吊り部101の構成は、当該穴の形状に限られるわけではなく、ワイヤーなどを括り付けられれば、例えば突起形状やフック形状等であっても良い。
【0032】
吊り部101は、坩堝11よりも高い位置に設けられている(
図4参照)。この構成によれば、坩堝11と干渉することなく治具100に吊り具を装着することができるため、吊り具の装着を容易に行える。また、吊り部101は、坩堝11の外周に沿って点在して複数設けられている。本実施形態の吊り部101は、坩堝11の周りに90度間隔で計4つ配置されている。吊り部101の配置数は、2点以上であることが好ましく、バランスを考えると3点以上であることがより好ましい。
【0033】
坩堝ハンドリング用治具100は、坩堝11の外容器13の中への設置の際に、当該坩堝11と共に外容器13の中に設置され、駆動軸41に対する孔部15の芯出しをする芯出し部102を有する。このように、本実施形態の坩堝ハンドリング用治具100は、吊り具を用いて坩堝11をハンドリングして搬送するためだけでなく、坩堝11の設置の際には、坩堝11と共に外容器13の中に設置され、駆動軸41(第2駆動軸41B)の回転性を確保するために用いられる。
【0034】
図3に示すように、芯出し部102は、坩堝11の設置の際に、坩堝11と外容器13との隙間に介在する。なお、
図3に示す符号C1は坩堝11の外周面を示す、符号C2は外容器13の内周面を示す。このように、芯出し部102は、坩堝11の外周面C1と外容器13の内周面C2との間に挟まって存在する。芯出し部102の内側の形状は、坩堝11の外周面C1との関係で公差が規定され、芯出し部102の外側の形状は、外容器13の内周面C2との関係で公差が規定される。
【0035】
図4に示すように、芯出し部102は、坩堝11に対してその蓋部11bにのみ接触する構成となっている。芯出し部102は、坩堝11の底部を支持する支持部103から垂直に立設している。蓋部11bは本体部11aよりもひと回り大きく形成されており、芯出し部102の先端部が、本体部11aからはみ出た蓋部11bと径方向で接触する構成となっている。一方、芯出し部102と蓋部11bとが接触することで、芯出し部102と本体部11aとが一定の隙間をあけた非接触状態となる。
【0036】
図3に示すように、芯出し部102は、坩堝11の外周に沿って点在して複数設けられている。この構成によれば、隣り合う芯出し部102の間に隙間が生じるため、例えば隙間のない円筒形状のものと比較して、坩堝11を治具100の中にセットし易くなる。芯出し部102の先端部には、吊り部101が設けられている。このため、本実施形態の芯出し部102は、吊り部101と同様に、坩堝11の周りに90度間隔で計4つ配置されている。芯出し部102の配置数も、2点以上であることが好ましく、バランスを考えると3点以上であることがより好ましい。
【0037】
また、
図4に示すように、芯出し部102は、先端部が太く、また、基端部から先端部に到るまでが細くなる形状を有している。この構成によれば、芯出し部102の芯出しを行う先端部の幅を確保でき、また、先端部に到るまでは幅が狭く隙間が大きくなるので坩堝11を治具100の中にセットし易くなる。なお、芯出し部102の形状は、当該形状に限られるわけではなく、例えば基端部から先端部に向かうに従って漸次幅が大きくなるテーパー形状等であっても良い。
【0038】
坩堝ハンドリング用治具100は、坩堝11の底部を支持する支持部103を有する。支持部103及び4つの芯出し部102は、平面視で略十字にクロスした金属板材(例えば、SUS材)を曲げ加工することで一体的に形成されている。坩堝ハンドリング用治具100は、支持部103と坩堝11の底部との間で熱衝撃を緩和する熱衝撃緩和部104を有する。本実施形態の熱衝撃緩和部104は、円板状に加工したセラミックス材から構成されている。このセラミックス材としては、坩堝11よりも耐熱衝撃性があるセラミックス材であることが好ましく、また、同一材料であっても熱伝導率が低い多孔質のセラミックス材等であることが好ましい。
【0039】
続いて、上記構成の坩堝ハンドリング用治具100の作用について説明する。
【0040】
図1に示す窒化ガリウム製造装置1によってGaN結晶を育成するためには、先ず、外容器13の中に、種基板2及び混合融液3を保有する坩堝11を設置するための工程が必要となる。
当該工程では、
図2に示すように、坩堝11を坩堝ハンドリング用治具100にセットする。治具100の芯出し部102は、坩堝11の外周に沿って点在して複数設けられている(
図3参照)。このため、隣り合う芯出し部102の間に隙間が生じ、坩堝11と治具100との衝突干渉が低減され、坩堝11を治具100にセットし易くなる。
【0041】
坩堝11を治具100にセットしたら、治具100の吊り部101に吊り具を装着する。吊り部101は、上記坩堝11よりも高い位置に設けられている(
図4参照)。このため、坩堝11と干渉することなく治具100に吊り具を装着することができる。
なお、坩堝11が小型で、人手で運べる重量であれば、吊り具としては、例えば吊り部101の穴に嵌合する吊りピン等を装着することで、坩堝11を容易にハンドリングし搬送することができる。また、坩堝11が大型で、人手で運べない重量であれば、吊り具としては、例えば吊り部101の穴にワイヤー吊り具を装着することで、クレーン等の機械によって坩堝11をハンドリングし搬送することができる。
【0042】
坩堝11の外容器13の中への設置は、治具100を吊り下ろすことで行う。治具100には吊り具が装着できるため、外容器13に対して坩堝11を容易に入れることができる。治具100は、坩堝11と共に外容器13の中に設置される。治具100は、坩堝11の設置の際に、坩堝11と共に外容器13の中に設置され、駆動軸41に対する孔部15の芯出しをする芯出し部102を有する。芯出し部102は、
図3に示すように、坩堝11と外容器13との隙間に介在する。第2駆動軸41Bは外容器13に支持されており、この芯出し部102が両者の隙間に介在することで、外容器13に対して坩堝11が位置決めされる。このため、第2駆動軸41Bに対する孔部15の芯出しが行われ、第2駆動軸41Bの回転性が保たれる。
【0043】
以上の坩堝11のセットが完了したら、
図1に示す窒化ガリウム製造装置1を用いて窒化ガリウム結晶を成長させる。
先ず、圧力容器30内部の空気を真空排気ポートから真空排気する。真空状態となった後、窒素ガス供給ポート17から窒素ガスを供給して反応容器10内を充填させる。この際、窒素ガス供給ポート17から供給された窒素ガスは、先ず外容器13内に充填される。外容器13内が充填されて加圧されると、すべり軸受70Aと駆動軸41との間の隙間がガス流路として機能し、外容器13内の窒素ガスが、坩堝11内に供給される。そして、内部圧力を、数十MPaまで加圧する。また、ヒーター21を駆動させて、内部温度を800℃〜1000℃まで加熱し、高温高圧雰囲気を形成する。
【0044】
治具100は、支持部103と坩堝11の底部との間で熱衝撃を緩和する熱衝撃緩和部104を有する。この構成によれば、支持部103と坩堝11の底部との間で熱衝撃が緩和されるため、例え治具100が熱伝導率の高いSUS材等であっても、上記加熱の際の坩堝11の底部の局所的な温度上昇を抑制でき、坩堝11に割れやヒビなどが入らないようにすることができる。また、治具100の芯出し部102は、芯出しのため坩堝11に対し蓋部11bにのみ接触するが、坩堝11の本体部11a対しては隙間があいて非接触状態となっている。このため、混合融液3を保有する本体部11aに対しては決定的な割れやヒビなどが入らないようにすることができる。
【0045】
この高温高圧状態を維持することで、Na(ナトリウム)によってN
2(窒素ガス)を混合融液3中に溶解させ易くさせ、混合融液3中でGa(ガリウム)とN(窒素)とを反応させ、種基板2上にGaN結晶を成長させる(所謂、フラックス法)。この結晶成長過程において余分な核発生を抑え、大型で高品質のGaN結晶を得るべく、攪拌装置40で混合融液3を攪拌させる。具体的には、モーター50の駆動により外筒48を軸周りに回転させて、磁気的作用により駆動軸41を軸周りに回転させ、攪拌翼52で混合融液3に攪拌流を形成する。
【0046】
ここで、駆動軸41(第2駆動軸41B)は、治具100の芯出し部102によって芯出しが行われている。したがって、駆動軸41の回転性が保たれ、攪拌翼52による混合融液3の攪拌を円滑に行うことができる。また、
図3に示すように、坩堝11と外容器13との間に芯出し部102が挟まって存在するため、坩堝11と外容器13とが衝突することがなく、また、攪拌中、当該隙間による坩堝11の振動の発生も低減・抑制することができる。このため、駆動軸41による混合融液3の攪拌をより円滑に行うことができる。これにより、攪拌流が良好に形成することができ、種基板2上に大型で高品質のGaN結晶を育成することができる。
【0047】
窒化ガリウム製造装置1によってGaN結晶を育成した後は、外容器13の中から坩堝11を取り出す工程が必要となる。
治具100は、吊り具が装着可能な吊り部101を備えるため、坩堝11を吊り上げて、外容器13の中から坩堝11を容易に取り出すことができる。ここで、坩堝11は、セラミックスでできており、混合融液3と直接接触するため、混合融液3にアタック(侵食)され複数回の再生利用は難しい。一方、治具100は、混合融液3に直接接触するわけではないので、坩堝11とは異なり、複数回の再生利用も可能である。したがって、坩堝11自体を加工し突起や穴等を設けるよりも、治具100を用いる方がコストを低く抑えることができる。
【0048】
このように、上述の本実施形態によれば、外部が外容器13に囲まれ、内部に保有する混合融液3を攪拌するための駆動軸41が挿通される孔部15を有する坩堝11を、ハンドリングする坩堝ハンドリング用治具100であって、坩堝11を、外容器13の中に設置する、または、外容器13の中から取り出すための吊り具が装着可能な吊り部101と、上記設置の際に、坩堝11と共に外容器13の中に設置され、駆動軸41に対する孔部15の芯出しをする芯出し部102と、を有するという構成を採用することによって、駆動軸41による混合融液3の攪拌を円滑に行え、外容器13に対して坩堝11を出し入れし易く、また、コストを低く抑えることができる坩堝ハンドリング用治具100が得られる。
【0049】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0050】
例えば、
図5に示すような構成を採用しても良い。なお、以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
図5は、本発明の別実施形態における坩堝ハンドリング用治具100を示す正面図である。
【0051】
図5に示すように、別実施形態の坩堝ハンドリング用治具100は、支持部103と坩堝11の底部との間の相対移動を抑制する摩擦力を発現させる摩擦部105を有する。摩擦部105は、熱衝撃緩和部104の両面に設けられており、支持部103と、坩堝11の底部とに面している。摩擦部105は、熱衝撃緩和部104の表面状態(表面粗さ等)を調整することで形成しても良いし、シート材等を貼付することで形成しても良い。この構成によれば、摩擦部によって支持部103と坩堝11底部との相対移動、例えば連れ回り等が抑制されるため、駆動軸41による混合融液3の攪拌を円滑に行える。
【0052】
また、別実施形態の治具100の芯出し部102は、常態で
図5の二点鎖線で示すように傾いており、外容器13の中に設置される際に
図5の実線で示すように変形する構成となっている。この構成によれば、坩堝11と外容器13との間において芯出し部102が押圧状態で存在し、また自身のバネ性によって両者に容易に接触可能となるため、攪拌中、両者間の隙間による坩堝11の振動の発生を確実に抑制することができ、駆動軸41による混合融液3の攪拌を円滑に行える。