特許第5867419号(P5867419)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱瓦斯化学株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5867419
(24)【登録日】2016年1月15日
(45)【発行日】2016年2月24日
(54)【発明の名称】ポリエーテルポリアミドエラストマー
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/40 20060101AFI20160210BHJP
【FI】
   C08G69/40
【請求項の数】10
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2012-557960(P2012-557960)
(86)(22)【出願日】2012年2月13日
(86)【国際出願番号】JP2012053312
(87)【国際公開番号】WO2012111636
(87)【国際公開日】20120823
【審査請求日】2014年12月12日
(31)【優先権主張番号】特願2011-28316(P2011-28316)
(32)【優先日】2011年2月14日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-46330(P2011-46330)
(32)【優先日】2011年3月3日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-283437(P2011-283437)
(32)【優先日】2011年12月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(72)【発明者】
【氏名】武尾 まゆみ
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智則
【審査官】 大木 みのり
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭49−110744(JP,A)
【文献】 米国特許第04218351(US,A)
【文献】 特開平01−193320(JP,A)
【文献】 特開平09−118750(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 69/00 − 69/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアミン構成単位が下記式(1)で表されるポリエーテルジアミン化合物(A−1)及びキシリレンジアミン(A−2)に由来し、ジカルボン酸構成単位がアジピン酸及びセバシン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種に由来し、ジアミン構成単位中のキシリレンジアミン(A−2)に由来する構成単位の割合が85〜99.9モル%であるポリエーテルポリアミドエラストマー。
【化1】

(式(1)において、x+zは1〜6.0の数値、yは1〜12.5の数値を表し、Rはプロピレン基を表す。)
【請求項2】
キシリレンジアミン(A−2)が、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン又はこれらの混合物である請求項1に記載のポリエーテルポリアミドエラストマー。
【請求項3】
キシリレンジアミン(A−2)が、メタキシリレンジアミンである請求項1に記載のポリエーテルポリアミドエラストマー。
【請求項4】
キシリレンジアミン(A−2)が、メタキシリレンジアミン及びパラキシリレンジアミンの混合物である請求項1に記載のポリエーテルポリアミドエラストマー。
【請求項5】
メタキシリレンジアミン及びパラキシリレンジアミンの総量に対するパラキシリレンジアミンの割合が90モル%以下である請求項4に記載のポリエーテルポリアミドエラストマー。
【請求項6】
ポリエーテルポリアミドエラストマーの相対粘度が1.1〜3.0である請求項1〜のいずれかに記載のポリエーテルポリアミドエラストマー。
【請求項7】
ポリエーテルポリアミドエラストマーの融点が170〜270℃である請求項1〜のいずれかに記載のポリエーテルポリアミドエラストマー。
【請求項8】
ポリエーテルポリアミドエラストマーの、測定温度23℃、湿度50%RHにおける引張破断伸び率が100%以上である請求項1〜のいずれかに記載のポリエーテルポリアミドエラストマー。
【請求項9】
リン原子濃度が1〜1,000ppmである請求項1〜8のいずれかに記載のポリエーテルポリアミドエラストマー。
【請求項10】
硫黄原子濃度が1〜200ppmである請求項1〜9のいずれかに記載のポリエーテルポリアミドエラストマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性、結晶性、及び柔軟性を有するポリエーテルポリアミドエラストマーに関する。
【背景技術】
【0002】
加硫による化学的な架橋点をもつゴムは、リサイクルができず高比重である。それに対し、熱可塑性エラストマーは結晶等による物理的な架橋点をハードセグメントとし、非晶部分をソフトセグメントとする相分離構造からなるため、容易に溶融成形加工ができ、リサイクルが可能で、低比重であるという特徴を有する。そのため、自動車部品、電気・電子部品、スポーツ用品等の分野で注目されている。
【0003】
熱可塑性エラストマーとして、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリスチレン系、ポリ塩化ビニル系等の種々の熱可塑性エラストマーが開発されている。その中でもポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系の熱可塑性エラストマーは比較的耐熱性に優れたエラストマーとして知られている。
【0004】
中でもポリアミドエラストマーは、柔軟性、低比重、耐摩擦・磨耗特性、弾性、耐屈曲疲労性、低温特性、成形加工性、耐薬品性に優れていることから、チューブ、ホース、スポーツ用品、シール・パッキン、自動車や電機、電子部品の材料として幅広く使用されている。
【0005】
ポリアミドエラストマーとしては、ポリアミドブロックをハードセグメントとし、ポリエーテルブロックをソフトセグメントとするポリエーテルポリアミドエラストマー等が知られている。例として、特許文献1及び特許文献2にはポリアミド12などの脂肪族ポリアミドをベースとしたポリエーテルポリアミドエラストマーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−161964号公報
【特許文献2】特開2004−346274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記ポリエーテルポリアミドエラストマーについては、ポリアミド成分としてポリアミド12などの脂肪族ポリアミドが利用されており、ポリアミド成分が低融点であるために高温環境下で利用される用途では耐熱性が不十分である。
【0008】
本発明の目的は、ポリアミドエラストマーの溶融成形性、強靭性、柔軟性、ゴム的な性質を保持したまま、さらに耐熱性を必要とする自動車や電機、電子部品の材料に好適な、耐熱性ポリエーテルポリアミドエラストマーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ジアミン構成単位が特定のポリエーテルジアミン化合物及びキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸構成単位が炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリエーテルポリアミドエラストマーにより上記目的が達成できることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明によれば、ジアミン構成単位が下記式(1)で表されるポリエーテルジアミン化合物(A−1)及びキシリレンジアミン(A−2)に由来し、ジカルボン酸構成単位が炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリエーテルポリアミドエラストマーが提供される。
【0011】
【化1】
【0012】
(式(1)において、x+zは1〜60の数値、yは1〜50の数値を表し、R1はプロピレン基を表す。)
【0013】
本発明の好ましい様態は、以下の通りである。
1.キシリレンジアミン(A−2)が、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン又はこれらの混合物であること。
2.炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸が、アジピン酸及びセバシン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種であること。
3.ジアミン構成単位中のキシリレンジアミン(A−2)に由来する構成単位の割合が50〜99.9モル%の範囲であること。
4.ポリエーテルポリアミドエラストマーの相対粘度が1.1〜3.0であること。
5.ポリエーテルポリアミドエラストマーの融点が170〜270℃であること。
6.ポリエーテルポリアミドエラストマーの、測定温度23℃、湿度50%RHにおける引張破断伸び率が100%以上であること。
【0014】
本発明のポリエーテルポリアミドエラストマーは、既存のポリエーテルポリアミドエラストマーの溶融成形性、柔軟性、ゴム的性質を維持したまま、より高い結晶性、耐熱性を有し、高い耐熱性を要求される自動車や電機、電子部品の材料に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[ポリエーテルポリアミドエラストマー]
本発明のポリエーテルポリアミドエラストマーは、ジアミン構成単位が下記式(1)で表されるポリエーテルジアミン化合物(A−1)及びキシリレンジアミン(A−2)に由来し、ジカルボン酸構成単位が炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来することを特徴とする。
【0016】
【化2】
【0017】
(式(1)において、x+zは1〜60の数値、yは1〜50の数値を表し、R1はプロピレン基を表す。)
【0018】
本発明のポリエーテルポリアミドエラストマーを構成するジアミン構成単位は、式(1)で表されるポリエーテルジアミン化合物(A−1)及びキシリレンジアミン(A−2)に由来する。
【0019】
(ポリエーテルジアミン化合物(A−1))
本発明のポリエーテルポリアミドエラストマーを構成するジアミン構成単位は、式(1)で表されるポリエーテルジアミン化合物(A−1)に由来する構成単位を含む。本発明において使用されるポリエーテルジアミン化合物(A−1)においては、上記式(1)における(x+z)の数値は1〜60、好ましくは2〜40、より好ましくは2〜30、さらに好ましくは2〜20であり、yの数値は1〜50、好ましくは1〜40、より好ましくは1〜30、さらに好ましくは1〜20である。x、y、zの値が上記範囲より大きい場合、溶融重合の反応途中に生成するキシリレンジアミンとジカルボン酸からなるオリゴマーやポリマーとの相溶性が低くなり、重合反応が進行しづらくなる。
また、上記式(1)におけるR1はいずれもプロピレン基を表す。
【0020】
ポリエーテルジアミン化合物(A−1)の重量平均分子量は、好ましくは100〜6000、より好ましくは200〜4000、さらに好ましくは200〜3000、よりさらに好ましくは200〜2000である。ポリエーテルジアミン化合物の平均分子量が上記範囲内であれば、柔軟性やゴム弾性などのエラストマーとしての機能を発現するポリマーを得ることができる。
【0021】
(キシリレンジアミン(A−2))
本発明のポリエーテルポリアミドエラストマーを構成するジアミン構成単位は、キシリレンジアミン(A−2)に由来する構成単位を含む。本発明のジアミン構成単位を構成するキシリレンジアミン(A−2)としては、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン又はこれらの混合物であることが好ましく、メタキシリレンジアミン、又はメタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンとの混合物であることがより好ましい。
ジアミン構成単位を構成するキシリレンジアミン(A−2)がメタキシリレンジアミンに由来する場合、得られるポリエーテルポリアミドエラストマーは、柔軟性、結晶性、溶融成形性、成形加工性、強靭性に優れたポリエーテルポリアミドエラストマーとなり得る。
ジアミン構成単位を構成するキシリレンジアミン(A−2)が、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンとの混合物に由来する場合、得られるポリエーテルポリアミドエラストマーは柔軟性、結晶性、溶融成形性、成形加工性、強靭性に優れ、さらに耐熱性、高弾性率を示すポリエーテルポリアミドエラストマーとなり得る。
【0022】
ジアミン構成単位を構成するキシリレンジアミン(A−2)として、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンとの混合物を用いる場合には、メタキシリレンジアミン及びパラキシリレンジアミンの総量に対するパラキシリレンジアミンの割合は、好ましくは90モル%以下であり、より好ましくは1〜80モル%、さらに好ましくは5〜70モル%である。パラキシリレンジアミンの割合が上記範囲であれば、得られるポリエーテルポリアミドエラストマーの融点が、該ポリエーテルポリアミドエラストマーの分解温度に近接せず、好ましい。
【0023】
ジアミン構成単位中のキシリレンジアミン(A−2)に由来する構成単位の割合、すなわち、ジアミン構成単位を構成するポリエーテルジアミン化合物(A−1)とキシリレンジアミン(A−2)の総量に対する、キシリレンジアミン(A−2)の割合は、50〜99.9モル%が好ましく、より好ましくは50〜99.5モル%、さらに好ましくは50〜99モル%である。ジアミン構成単位中のキシリレンジアミン(A−2)に由来する構成単位の割合が上記範囲内であれば、得られるポリエーテルポリアミドエラストマーは溶融成形性に優れており、さらに強度、弾性率などの機械的物性が優れたものとなる。
【0024】
本発明のポリエーテルポリアミドエラストマーを構成するジアミン構成単位は、上述したように、前記式(1)で表されるポリエーテルジアミン化合物(A−1)及びキシリレンジアミン(A−2)に由来するが、本発明の効果を損なわない範囲であれば、その他のジアミン化合物を共重合させてもよい。
ポリエーテルジアミン化合物(A−1)及びキシリレンジアミン(A−2)以外のジアミン構成単位を構成しうるジアミン化合物としては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン;1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環族ジアミン;ビス(4−アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン類等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
(ジカルボン酸構成単位)
本発明のポリエーテルポリアミドエラストマーを構成するジカルボン酸構成単位は、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する。炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸等を例示できるが、これらの中でも結晶性、高弾性の観点からアジピン酸及びセバシン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく使用される。これらのジカルボン酸は、単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0026】
本発明のポリエーテルポリアミドエラストマーは、キシリレンジアミン(A−2)と炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸から形成される高結晶性のポリアミドブロックをハードセグメントとし、ポリエーテルジアミン化合物(A−1)由来のポリエーテルブロックをソフトセグメントとすることで、溶融成形性及び成形加工性に優れる。さらに得られたポリエーテルポリアミドエラストマーは強靭性、柔軟性、結晶性、耐熱性などに優れている。
【0027】
本発明のポリエーテルポリアミドエラストマーの相対粘度は後述する方法により測定され、成形性及び他の樹脂との溶融混合性の観点から、好ましくは1.1〜3.0の範囲、より好ましくは1.1〜2.9の範囲、さらに好ましくは1.1〜2.8の範囲である。
【0028】
本発明のポリエーテルポリアミドエラストマーの融点は後述する方法により測定され、好ましくは170〜270℃の範囲、より好ましくは175〜270℃の範囲、さらに好ましくは180〜270℃、さらにより好ましくは180〜260℃の範囲である。融点が上記範囲であることにより、耐熱性に優れたポリエーテルポリアミドエラストマーとなる。
【0029】
本発明のポリエーテルポリアミドエラストマーの引張破断伸び率(測定温度23℃、湿度50%RH)は、好ましくは100%以上、より好ましくは200%以上、さらに好ましくは250%以上、よりさらに好ましくは300%以上である。引張破断伸び率が100%以上であることにより柔軟性に優れたエラストマーとなる。
【0030】
本発明のポリエーテルポリアミドエラストマーの引張弾性率(測定温度23℃、湿度50%RH)は、好ましくは100MPa以上、より好ましくは200MPa以上、さらに好ましくは300MPa以上、よりさらに好ましくは400MPa以上、特に好ましくは500MPa以上である。引張弾性率が100MPa以上であることにより、柔軟性をもつと同時に機械強度にも優れたポリエーテルポリアミドエラストマーとなる。
【0031】
ジアミン成分(ポリエーテルジアミン化合物(A−1)、キシリレンジアミン(A−2)等のジアミン)と、ジカルボン酸成分(炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸等のジカルボン酸)のモル比(ジアミン成分/ジカルボン酸成分)は0.9〜1.1の範囲が好ましく、0.93〜1.07の範囲がより好ましく、0.95〜1.05の範囲がさらに好ましく、0.97〜1.02の範囲が特に好ましい。モル比が上記範囲内であれば、高分子量化が進行しやすくなる。
【0032】
本発明のポリエーテルポリアミドエラストマーの製造は、特に限定されるものではなく、任意の方法、重合条件により行うことができる。例えば、ジアミン成分(キシリレンジアミン、ポリエーテルジアミン等)とジカルボン酸成分(アジピン酸、セバシン酸等)とからなる塩を水の存在下に加圧状態で昇温し、加えた水及び縮合水を除きながら溶融状態で重合させる方法によりポリエーテルポリアミドエラストマーを製造することができる。また、ジアミン成分(キシリレンジアミン、ポリエーテルジアミン等)を溶融状態のジカルボン酸成分(アジピン酸、セバシン酸等)に直接加えて、常圧下で重縮合する方法によってもポリエーテルポリアミドエラストマーを製造することができる。この場合、反応系を均一な液状状態で保つために、ジアミン成分をジカルボン酸成分に連続的に加え、その間、反応温度が生成するオリゴアミド及びポリアミドの融点よりも下回らないように反応系を昇温しつつ、重縮合が進められる。
重合温度は好ましくは150〜300℃、より好ましくは160〜280℃、さらに好ましくは170〜270℃で行うことができる。重合温度が上記温度範囲内であれば、重合反応が速やかに進行する。また、モノマーや重合途中のオリゴマー、ポリマー等の熱分解が起こりにくいため、得られるポリマーの性状が良好なものとなる。
【0033】
本発明のポリエーテルポリアミドエラストマーの製造は、通常、重合時間1〜5時間で行うことができる。重合時間を上記範囲内とすることにより、ポリエーテルポリアミドエラストマーの分子量を十分に上げることができ、さらに得られるポリマーの着色が抑えられるため、所望の物性を有するポリエーテルポリアミドエラストマーを得ることができる。
【0034】
本発明のポリエーテルポリアミドエラストマーは、リン原子含有化合物を添加して溶融重縮合(溶融重合)法により製造されることが好ましい。溶融重縮合法としては、常圧で溶融させたジカルボン酸成分中にジアミン成分を滴下し、縮合水を除きながら溶融状態で重合させる方法が好ましい。
【0035】
本発明のポリエーテルポリアミドエラストマーの重縮合系内には、その特性が阻害されない範囲で、リン原子含有化合物を添加できる。添加できるリン原子含有化合物としては、ジメチルホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム、次亜リン酸エチル、フェニル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸ナトリウム、フェニル亜ホスホン酸カリウム、フェニル亜ホスホン酸リチウム、フェニル亜ホスホン酸エチル、フェニルホスホン酸、エチルホスホン酸、フェニルホスホン酸ナトリウム、フェニルホスホン酸カリウム、フェニルホスホン酸リチウム、フェニルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸ナトリウム、エチルホスホン酸カリウム、亜リン酸、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、ピロ亜リン酸等が挙げられ、これらの中でも特に次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム等の次亜リン酸金属塩がアミド化反応を促進する効果が高く、かつ着色防止効果にも優れるため好ましく用いられ、特に次亜リン酸ナトリウムが好ましい。本発明で使用できるリン原子含有化合物はこれらの化合物に限定されない。重縮合系内に添加するリン原子含有化合物の添加量は、ポリエーテルポリアミドエラストマー中のリン原子濃度換算で1〜1000ppmであることが好ましく、より好ましくは5〜1000ppmであり、さらに好ましくは10〜1000ppmである。ポリエーテルポリアミドエラストマー中のリン原子濃度が1〜1000ppmであれば、良好な外観を有し、且つ成形加工性の優れるポリエーテルポリアミドエラストマーを得ることができる。
【0036】
また、本発明のポリエーテルポリアミドエラストマーの重縮合系内には、リン原子含有化合物と併用してアルカリ金属化合物を添加することが好ましい。重縮合中のポリマーの着色を防止するためにはリン原子含有化合物を十分な量存在させる必要があるが、場合によってはポリマーのゲル化を招く恐れがあるため、アミド化反応速度を調整するためにもアルカリ金属化合物を共存させることが好ましい。アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属水酸化物やアルカリ金属酢酸塩が好ましい。本発明で用いることのできるアルカリ金属化合物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウム等が挙げられるが、これらの化合物に限定されることなく用いることができる。重縮合系内にアルカリ金属化合物を添加する場合、該化合物のモル数をリン原子含有化合物のモル数で除した値が0.5〜1となるようにすることが好ましく、より好ましくは0.55〜0.95であり、さらに好ましくは0.6〜0.9である。上記範囲内であると、リン原子含有化合物のアミド化反応促進を抑制する効果が適度であり、従って、抑制し過ぎによる重縮合反応速度が低下し、ポリマーの熱履歴が増加してポリマーのゲル化が増大することを避けることができる。
【0037】
本発明のポリエーテルポリアミドエラストマーの硫黄原子濃度は、1〜200ppmであり、より好ましくは10〜150ppm、さらに好ましくは20〜100ppmである。上記の範囲であると、製造時にポリエーテルポリアミドエラストマーの黄色度(YI値)の増加を抑えることができるばかりでなく、ポリエーテルポリアミドエラストマーを溶融成形する際のYI値の増加を抑えることができ、得られた成形品のYI値を低くすることができる。
【0038】
さらに、本発明において、ジカルボン酸としてセバシン酸を使用する場合には、その硫黄原子濃度が1〜500ppmであることが好ましく、より好ましくは1〜200ppm、さらに好ましくは10〜150ppm、特に好ましくは20〜100ppmである。上記の範囲であると、ポリエーテルポリアミドエラストマーを合成する際のYI値の増加を抑えることができる。また、ポリエーテルポリアミドエラストマーを溶融成形する際のYI値の増加を抑えることができ、得られる成形品のYI値を低くすることができる。
【0039】
同様に、本発明において、ジカルボン酸としてセバシン酸を使用する場合には、そのナトリウム原子濃度が1〜500ppmであることが好ましく、より好ましくは10〜300ppm、さらに好ましくは20〜200ppmである。上記の範囲であると、ポリエーテルポリアミドエラストマーを合成する際の反応性が良く、適切な分子量範囲にコントロールしやすく、さらに、前述のアミド化反応速度調整の目的で配合するアルカリ金属化合物の使用量を少なくすることができる。また、ポリエーテルポリアミドエラストマーを溶融成形する際に粘度増加を抑制することができ、成形性が良好となると共に成形加工時にコゲの発生を抑制できることから、得られる成形品の品質が良好となる傾向にある。
【0040】
このようなセバシン酸は、植物由来のものであることが好ましい。植物由来のセバシン酸は、不純物として硫黄化合物やナトリウム化合物を含有することから、植物由来のセバシン酸に由来する単位を構成単位とするポリエーテルポリアミドエラストマーは、酸化防止剤を添加しなくてもYI値が低く、また、得られる成形品のYI値も低い。また、植物由来のセバシン酸は、不純物を過度に精製することなく使用することが好ましい。過度に精製する必要が無いので、コスト的にも優位である。
【0041】
植物由来の場合のセバシン酸の純度は、99〜100質量%が好ましく、99.5〜100質量%がより好ましく、99.6〜100質量%がさらに好ましい。この範囲であると、得られるポリエーテルポリアミドエラストマーの品質が良く、重合に影響を及ぼさないため好ましい。
【0042】
例えば、セバシン酸が含有する1,10−デカメチレンジカルボン酸等のジカルボン酸は、0〜1質量%が好ましく、0〜0.7質量%がより好ましく、0〜0.6質量%がさらに好ましい。この範囲であると、得られるポリエーテルポリアミドエラストマーの品質が良く、重合に影響を及ぼさないため好ましい。
また、セバシン酸が含有するオクタン酸、ノナン酸、ウンデカン酸等のモノカルボン酸は、0〜1質量%が好ましく、0〜0.5質量%がより好ましく、0〜0.4質量%がさらに好ましい。この範囲であると、得られるポリエーテルポリアミドエラストマーの品質が良く、重合に影響を及ぼさないため好ましい。
【0043】
セバシン酸の色相(APHA)は、100以下が好ましく、75以下がより好ましく、50以下がさらに好ましい。この範囲であると、得られるポリエーテルポリアミドエラストマーのYI値が低いため、好ましい。なお、APHAは、日本油化学会(Japan Oil Chemist’s Society)の基準油脂分析試験法(Standard Methods for the Analysis of Fats,Oils and Related Materials)により測定することができる。
【0044】
溶融重縮合で得られた本発明のポリエーテルポリアミドエラストマーは一旦取り出され、ペレット化された後、乾燥して使用される。また更に重合度を高めるために固相重合してもよい。乾燥ないし固相重合で用いられる加熱装置としては、連続式の加熱乾燥装置やタンブルドライヤー、コニカルドライヤー、ロータリードライヤー等と称される回転ドラム式の加熱装置及びナウタミキサーと称される内部に回転翼を備えた円錐型の加熱装置が好適に使用できるが、これらに限定されることなく公知の方法、装置を使用することができる。
【0045】
本発明のポリエーテルポリアミドエラストマーには、その特性が阻害されない範囲で、艶消剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、核剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤等の添加剤を、必要に応じて添加することができる。
【0046】
本発明のポリエーテルポリアミドエラストマーは、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂とブレンドしてもよく、これらの樹脂の耐衝撃性、弾性及び柔軟性などを改良することができる。
【0047】
ポリアミド樹脂としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(ナイロン69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン116)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリヘキサメチレンテレフタラミド(ナイロン6T(Tは、テレフタル酸成分単位を表す。以下において同じ))、ポリヘキサメチレンイソフタラミド(ナイロン6I(Iは、イソフタル酸成分単位を表す。以下において同じ))、ポリヘキサメチレンテレフタルイソフタルアミド(ナイロン6TI)、ポリヘプタメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6(MXDは、m−キシリレンジアミン成分単位を表す。以下において同じ))、ポリメタキシリレンセバカミド(ナイロンMXD10)、ポリパラキシリレンセバカミド(ナイロンPXD10(PXDは、p−キシリレンジアミン成分単位を表わす。))、1,3−又は1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンとアジピン酸を重縮合して得られるポリアミド樹脂(ナイロン1,3−/1,4−BAC6(BACは、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン成分単位を表す。))及びこれらの共重合アミドなどを使用することができる。
【0048】
ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート−イソフタレート共重合樹脂、ポリエチレン−1,4−シクロヘキサンジメチレン−テレフタレート共重合樹脂、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキレート樹脂、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート−テレフタレート共重合樹脂、ポリエチレン−テレフタレート−4,4' −ビフェニルジカルボキシレート共重合樹脂、ポリ−1,3−プロピレン−テレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート樹脂等がある。より好ましいポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート−イソフタレート共重合樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂及びポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート樹脂が挙げられる。
【0049】
ポリオレフィン樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)などのポリエチレン;プロピレン単独重合体、プロピレンとエチレンまたはα−オレフィンとのランダム若しくはブロック共重合体などのポリプロピレン;これらの2種以上の混合物などが挙げられる。ポリエチレンの多くは、エチレンとα−オレフィンとの共重合体である。またポリオレフィン樹脂には、少量のアクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのカルボキシル基含有単量体によって変性された変性ポリオレフィン樹脂が含まれる。変性は、通常、共重合又はグラフト変性によって行われる。
【0050】
本発明のポリエーテルポリアミドエラストマーをポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂の少なくとも一部に利用することで、射出成形、押出成形、ブロー成形などの成形方法により、強靭性、柔軟性、耐衝撃性に優れた成形体を得ることができる。
【実施例】
【0051】
[物性測定、成形、評価方法]
以下に実施例、及び比較例を示し、本発明を具体的に説明する。なお本発明における評価のための測定は以下の方法によった。
【0052】
1)相対粘度(ηr)
試料0.2gを精秤し、96%硫酸20mlに20〜30℃で攪拌溶解した。完全に溶解した後、速やかにキャノンフェンスケ型粘度計に溶液5mlを取り、25℃の恒温槽中で10分間放置後、落下時間(t)を測定した。また、96%硫酸そのものの落下時間(t0)も同様に測定した。t及びt0から次式(1)により相対粘度を算出した。
相対粘度=t/t0 (1)
【0053】
2)数平均分子量(Mn)
まず試料をフェノール/エタノール混合溶媒及び、ベンジルアルコール溶媒にそれぞれ溶解させ、カルボキシル末端基濃度とアミノ末端基濃度を塩酸及び水酸化ナトリウム水溶液の中和滴定により求めた。数平均分子量は、アミノ末端基濃度及びカルボキシル末端基濃度の定量値から次式により求めた。
数平均分子量 = 2×1,000,000/([NH2]+[COOH])
[NH2] :アミノ末端基濃度(μeq/g)
[COOH]:カルボキシル末端基濃度(μeq/g)
【0054】
3)示差走査熱量測定(ガラス転移温度、結晶化温度及び融点)
JIS K−7121、K−7122に準じて行った。株式会社島津製作所製DSC−60を用い、各試料をDSC測定パンに仕込み、窒素雰囲気下にて昇温速度10℃/分で300℃まで昇温し、急冷する前処理を行った後に測定を行った。測定条件は、昇温速度10℃/分で、300℃で5分保持した後、降温速度−5℃/分で100℃まで測定を行い、ガラス転移温度(Tg)、結晶化温度(Tch)及び融点(Tm)を求めた。
【0055】
4)引張試験(引張弾性率及び引張破断伸び率)
JIS K−7161に準じて行った。作製した厚さ約100μmのフィルムを10mm×100mmに切り出して試験片とした。株式会社東洋精機製作所製ストログラフを用いて、測定温度23℃、湿度50%RH、チャック間距離50mm、引張速度50mm/minの条件で引張試験を実施し、引張弾性率及び引張破断伸び率を求めた。
【0056】
5)黄色度:YI値測定
JIS K−7105に準じて行った。作製した厚さ約100μmのフィルムを50mm×50mmに切り出して試験片とした。測定装置は、日本電色工業株式会社製の曇価測定装置(型式:COH−300A)を使用した。
【0057】
6)硫黄原子濃度(単位:ppm)
ジカルボン酸、又はポリエーテルポリアミドエラストマーをプレス機で錠剤成形し、蛍光X線分析(XRF)を実施した。株式会社リガク製の蛍光X線分析装置(ZSX Primus)を用い、管球はRh管球(4kw)を使用した。分析窓用フィルムはポリプロピレンフィルムを使用し、真空雰囲気下で、照射領域30mmφでEZスキャンを実施した。
【0058】
実施例1−1〜1−3(キシリレンジアミンとしてメタキシリレンジアミン、ジカルボン酸としてアジピン酸を使用)、及び、比較例1−1〜1−3
[実施例1−1]
攪拌機、窒素ガス導入口、縮合水排出口を備えた容積約3Lの反応容器にアジピン酸613.83g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.6122g及び酢酸ナトリウム0.4264gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら170℃で溶融させた。260℃まで徐々に昇温しながら、そこへメタキシリレンジアミン(MXDA)(三菱ガス化学株式会社製)542.35gとポリエーテルジアミン(米国HUNTSMAN社製、商品名:ED−900:米国HUNTSMAN社のカタログによると、式(1)におけるx+zの概数は6.0、yの概数は12.5、概略重量平均分子量は900である)188.62gの混合液を滴下し約2時間重合を行い、ポリエーテルポリアミドエラストマーを得た:ηr=1.45、[COOH]=77.82μeq/g、[NH2]=51.63μeq/g、Mn=15450、Tg=57.7℃、Tch=111.8℃、Tm=232.8℃。
得られたポリエーテルポリアミドエラストマーを、温度260℃で押出成形を行い、厚さ約100μmの無延伸フィルムを作成した。このフィルムを用いて引張物性を評価した結果を表1に示す。
【0059】
[実施例1−2]
攪拌機、窒素ガス導入口、縮合水排出口を備えた容積約3Lの反応容器にアジピン酸584.60g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.6613g及び酢酸ナトリウム0.4606gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら170℃で溶融させた。260℃まで徐々に昇温しながら、そこへメタキシリレンジアミン(MXDA)(三菱ガス化学株式会社製)489.34gとポリエーテルジアミン(米国HUNTSMAN社製、商品名:ED−900)359.28gの混合液を滴下し約2時間重合を行い、ポリエーテルポリアミドエラストマーを得た:ηr=1.35、[COOH]=73.24μeq/g、[NH2]=45.92μeq/g、Mn=16784、Tg=42.1℃、Tch=89.7℃、Tm=227.5℃。
得られたポリエーテルポリアミドエラストマーを、温度260℃で押出成形を行い、厚さ約100μmの無延伸フィルムを作成した。このフィルムを用いて引張物性を評価した結果を表1に示す。
【0060】
[実施例1−3]
攪拌機、窒素ガス導入口、縮合水排出口を備えた容積約3Lの反応容器にアジピン酸584.60g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.5523g及び酢酸ナトリウム0.3847gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら170℃で溶融させた。260℃まで徐々に昇温しながら、そこへメタキシリレンジアミン(MXDA)(三菱ガス化学株式会社製)516.52gとポリエーテルジアミン(米国HUNTSMAN社製、商品名:ED−600:米国HUNTSMAN社のカタログによると、式(1)におけるx+zの概数は3.0、yの概数は9.0、概略重量平均分子量は600である)119.76gの混合液を滴下し約2時間重合を行い、ポリエーテルポリアミドエラストマーを得た:ηr=1.49、[COOH]=76.70μeq/g、[NH2]=43.29μeq/g、Mn=16669、Tg=67.1℃、Tch=125.0℃、Tm=230.5℃。
得られたポリエーテルポリアミドエラストマーを、温度260℃で押出成形を行い、厚さ約100μmの無延伸フィルムを作成した。このフィルムを用いて引張物性を評価した結果を表1に示す。
【0061】
(比較例1−1)
攪拌機、窒素ガス導入口、縮合水排出口を備えた容積約3Lの反応容器に12−アミノラウリン酸(東京化成工業株式会社製)753.66g、アジピン酸56.84g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.5798g及び酢酸ナトリウム0.4038gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら170℃で溶融させた。240℃まで徐々に昇温しながら、そこへポリエーテルジアミン(米国HUNTSMAN社製、商品名:XTJ−542:米国HUNTSMAN社のカタログによると、下式(2)で表され、a+cの概数は6.0、bの概数は9.0、概略重量平均分子量は1000である。R2はプロピレン基を表す。)388.89gを滴下し約2時間重合を行い、ポリエーテルポリアミドエラストマーを得た:ηr=1.25、[COOH]=87.27μeq/g、[NH2]=73.12μeq/g、Mn=12470、Tm=165.0℃。
得られたポリエーテルポリアミドエラストマーを、温度190℃に設定したラボプラストミルを用いて押出成形を行い、厚さ約100μmの無延伸フィルムを作成した。このフィルムを用いて引張物性を評価した結果を表1に示す。
【0062】
【化3】
【0063】
(比較例1−2)
攪拌機、窒素ガス導入口、縮合水排出口を備えた容積約3Lの反応容器に12−アミノラウリン酸(東京化成工業株式会社製)559.86g、アジピン酸95.00g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.6398g及び酢酸ナトリウム0.4457gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら170℃で溶融させた。240℃まで徐々に昇温しながら、そこへポリエーテルジアミン(米国HUNTSMAN社製、商品名:XTJ−542)650.00gを滴下し約2時間重合を行い、ポリエーテルポリアミドエラストマーを得た:ηr=1.25、[COOH]=78.30μeq/g、[NH2]=92.61μeq/g、Mn=11703、Tm=139.0℃。
得られたポリエーテルポリアミドエラストマーを、温度190℃に設定したラボプラストミルを用いて押出成形を行い、厚さ約100μmの無延伸フィルムを作成した。このフィルムを用いて引張物性を評価した結果を表1に示す。
【0064】
(比較例1−3)
攪拌機、窒素ガス導入口、縮合水排出口を備えた容積約3Lの反応容器にアジピン酸584.5g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.6210g及び酢酸ナトリウム0.4325gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら170℃で溶融させた。260℃まで徐々に昇温しながら、そこへメタキシリレンジアミン(MXDA)(三菱ガス化学株式会社製)544.80gを滴下し約2時間重合を行い、ポリアミドを得た:ηr=2.10、[COOH]=104.30μeq/g、[NH2]=24.58μeq/g、Mn=15500、Tg=86.1℃、Tch=153.0℃、Tm=239.8℃。
得られたポリアミドを、温度260℃で押出成形を行い、厚さ約100μmの無延伸フィルムを作成した。このフィルムを用いて引張物性を評価した結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
実施例2−1〜2−3(キシリレンジアミンとしてメタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンとの混合物、ジカルボン酸としてアジピン酸を使用)、及び比較例2−1
[実施例2−1]
攪拌機、窒素ガス導入口、縮合水排出口を備えた容積約3Lの反応容器にアジピン酸657.68g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.6572g及び酢酸ナトリウム0.4578gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら170℃で溶融させた。270℃まで徐々に昇温しながら、そこへメタキシリレンジアミン(MXDA)(三菱ガス化学株式会社製)407.58gとパラキシレンジアミン(PXDA)(三菱ガス化学株式会社製)174.68g(モル比(MXDA/PXDA=70/30))、及びポリエーテルジアミン(米国HUNTSMAN社製、商品名:ED−900、実施例1−1を参照)202.50gの混合液を滴下し約2時間重合を行い、ポリエーテルポリアミドエラストマーを得た:ηr=1.51、[COOH]=48.53μeq/g、[NH2]=88.72μeq/g、Mn=14572、Tg=59.5℃、Tch=98.0℃、Tm=249.9℃。
得られたポリエーテルポリアミドエラストマーを、温度270℃で押出成形を行い、厚さ約100μmの無延伸フィルムを作成した。このフィルムを用いて引張物性を評価した結果を表2に示す。
【0067】
[実施例2−2]
攪拌機、窒素ガス導入口、縮合水排出口を備えた容積約3Lの反応容器にアジピン酸584.60g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.6626g及び酢酸ナトリウム0.4616gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら170℃で溶融させた。260℃まで徐々に昇温しながら、そこへメタキシリレンジアミン(MXDA)(三菱ガス化学株式会社製)343.22gとパラキシレンジアミン(PXDA)(三菱ガス化学株式会社製)147.10g(モル比(MXDA/PXDA=70/30))、及びポリエーテルジアミン(米国HUNTSMAN社製、商品名:ED−900)360.00gの混合液を滴下し約2時間重合を行い、ポリエーテルポリアミドエラストマーを得た:ηr=1.34、[COOH]=75.95μeq/g、[NH2]=61.83μeq/g、Mn=14516、Tg=33.2℃、Tch=73.9℃、Tm=246.2℃。
得られたポリエーテルポリアミドエラストマーを、温度270℃で押出成形を行い、厚さ約100μmの無延伸フィルムを作成した。このフィルムを用いて引張物性を評価した結果を表2に示す。
【0068】
[実施例2−3]
攪拌機、窒素ガス導入口、縮合水排出口を備えた容積約3Lの反応容器にアジピン酸511.53g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.6484g及び酢酸ナトリウム0.4517gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら170℃で溶融させた。270℃まで徐々に昇温しながら、そこへメタキシリレンジアミン(MXDA)(三菱ガス化学株式会社製)283.64gとパラキシレンジアミン(PXDA)(三菱ガス化学株式会社製)121.56g(モル比(MXDA/PXDA=70/30))、及びポリエーテルジアミン(米国HUNTSMAN社製、商品名:ED−900)472.50gの混合液を滴下し約2時間重合を行い、ポリエーテルポリアミドエラストマーを得た:ηr=1.30、[COOH]=64.58μeq/g、[NH2]=59.15μeq/g、Mn=16164、Tg=27.8℃、Tch=58.8℃、Tm=240.8℃。
得られたポリエーテルポリアミドエラストマーを、温度270℃で押出成形を行い、厚さ約100μmの無延伸フィルムを作成した。このフィルムを用いて引張物性を評価した結果を表2に示す。
【0069】
(比較例2−1)
攪拌機、窒素ガス導入口、縮合水排出口を備えた容積約3Lの反応容器にアジピン酸730.8g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.6322g及び酢酸ナトリウム0.4404gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら170℃で溶融させた。275℃まで徐々に昇温しながら、そこへメタキシリレンジアミン(MXDA)(三菱ガス化学株式会社製)476.70gとパラキシリレンジアミン(PXDA)(三菱ガス化学株式会社製)204.30g(モル比(MXDA/PXDA=70/30))の混合液を滴下し約2時間重合を行い、ポリアミドを得た:ηr=2.07、[COOH]=55.70μeq/g、[NH2]=64.58μeq/g、Mn=16623、Tg=89.0℃、Tch=135.0℃、Tm=257.0℃。
得られたポリアミドを、温度275℃で押出成形を行い、厚さ約100μmの無延伸フィルムを作成した。このフィルムを用いて引張物性を評価した結果を表2に示す。
【0070】
【表2】
【0071】
実施例3−1〜3−13、及び比較例3−1〜3−2(ジカルボン酸としてセバシン酸を使用)
[実施例3−1]
攪拌機、窒素ガス導入口、縮合水排出口を備えた容積約3Lの反応容器にセバシン酸809.00g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.6367g及び酢酸ナトリウム0.4435gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら170℃で溶融させた。260℃まで徐々に昇温しながら、そこへメタキシリレンジアミン(MXDA)(三菱ガス化学株式会社製)539.35gとポリエーテルジアミン(米国HUNTSMAN社製、商品名:ED−900、実施例1−1を参照)36.00gの混合液を滴下し約2時間重合を行い、ポリエーテルポリアミドエラストマーを得た:ηr=1.81、[COOH]=83.89μeq/g、[NH2]=40.93μeq/g、Mn=16024、Tg=54.0℃、Tch=103.0℃、Tm=190.7℃。
得られたポリエーテルポリアミドエラストマーを、温度250℃で押出成形を行い、厚さ約100μmの無延伸フィルムを作成した。このフィルムを用いて引張物性を評価した結果を表3に示す。また、得られたポリエーテルポリアミドエラストマー中の硫黄原子濃度及びYI値の測定結果を表3に示す。
【0072】
[実施例3−2]
攪拌機、窒素ガス導入口、縮合水排出口を備えた容積約3Lの反応容器にセバシン酸768.55g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.6644g及び酢酸ナトリウム0.4628gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら170℃で溶融させた。260℃まで徐々に昇温しながら、そこへメタキシリレンジアミン(MXDA)(三菱ガス化学株式会社製)491.68gとポリエーテルジアミン(米国HUNTSMAN社製、商品名:ED−900)171.00gの混合液を滴下し約2時間重合を行い、ポリエーテルポリアミドエラストマーを得た:ηr=1.44、[COOH]=94.54μeq/g、[NH2]=40.24μeq/g、Mn=14839、Tg=37.6℃、Tch=71.0℃、Tm=187.8℃。
得られたポリエーテルポリアミドエラストマーを、温度235℃で押出成形を行い、厚さ約100μmの無延伸フィルムを作成した。このフィルムを用いて引張物性を評価した結果を表3に示す。また、得られたポリエーテルポリアミドエラストマー中の硫黄原子濃度及びYI値の測定結果を表3に示す。
【0073】
[実施例3−3]
攪拌機、窒素ガス導入口、縮合水排出口を備えた容積約3Lの反応容器にセバシン酸687.65g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.6612g及び酢酸ナトリウム0.4605gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら170℃で溶融させた。260℃まで徐々に昇温しながら、そこへメタキシリレンジアミン(MXDA)(三菱ガス化学株式会社製)416.77gとポリエーテルジアミン(米国HUNTSMAN社製、商品名:ED−900)306.00gの混合液を滴下し約2時間重合を行い、ポリエーテルポリアミドエラストマーを得た:ηr=1.33、[COOH]=96.88μeq/g、[NH2]=37.00μeq/g、Mn=14939、Tg=22.2℃、Tch=43.0℃、Tm=182.8℃。
得られたポリエーテルポリアミドエラストマーを、温度220℃で押出成形を行い、厚さ約100μmの無延伸フィルムを作成した。このフィルムを用いて引張物性を評価した結果を表3に示す。また、得られたポリエーテルポリアミドエラストマー中の硫黄原子濃度及びYI値の測定結果を表3に示す。
【0074】
[実施例3−4]
攪拌機、窒素ガス導入口、縮合水排出口を備えた容積約3Lの反応容器にセバシン酸626.98g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.6636g及び酢酸ナトリウム0.4622gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら170℃で溶融させた。260℃まで徐々に昇温しながら、そこへメタキシリレンジアミン(MXDA)(三菱ガス化学株式会社製)358.89gとポリエーテルジアミン(米国HUNTSMAN社製、商品名:ED−900)418.50gの混合液を滴下し約2時間重合を行い、ポリエーテルポリアミドエラストマーを得た:ηr=1.27、[COOH]=114.63μeq/g、[NH2]=42.19μeq/g、Mn=12753、Tg=7.9℃、Tch=30.7℃、Tm=180.7℃。
得られたポリエーテルポリアミドエラストマーを、温度195℃で押出成形を行い、厚さ約100μmの無延伸フィルムを作成した。このフィルムを用いて引張物性を評価した結果を表3に示す。また、得られたポリエーテルポリアミドエラストマー中の硫黄原子濃度及びYI値の測定結果を表3に示す。
【0075】
[実施例3−5]
攪拌機、窒素ガス導入口、縮合水排出口を備えた容積約3Lの反応容器にセバシン酸566.30g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.6543g及び酢酸ナトリウム0.4557gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら170℃で溶融させた。260℃まで徐々に昇温しながら、そこへメタキシリレンジアミン(MXDA)(三菱ガス化学株式会社製)305.09gとポリエーテルジアミン(米国HUNTSMAN社製、商品名:ED−900)504.00gの混合液を滴下し約2時間重合を行い、ポリエーテルポリアミドエラストマーを得た:ηr=1.24、[COOH]=141.80μeq/g、[NH2]=83.03μeq/g、Mn=8895、Tm=175.5℃。また、得られたポリエーテルポリアミドエラストマー中の硫黄原子濃度及びYI値の測定結果を表3に示す。
【0076】
(比較例3−1)
攪拌機、窒素ガス導入口、縮合水排出口を備えた容積約3Lの反応容器にセバシン酸809.0g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.6210g及び酢酸ナトリウム0.4325gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら170℃で溶融させた。260℃まで徐々に昇温しながら、そこへメタキシリレンジアミン(MXDA)(三菱ガス化学株式会社製)544.80gを滴下し約2時間重合を行い、ポリアミドを得た:ηr=1.80、[COOH]=88.5μeq/g、[NH2]=26.7μeq/g、Mn=17300、Tg=61.2℃、Tch=114.1℃、Tm=191.5℃。
得られたポリアミドを、温度220℃で押出成形を行い、厚さ約100μmの無延伸フィルムを作成した。このフィルムを用いて引張物性を評価した結果を表3に示す。
【0077】
【表3】
【0078】
[実施例3−6]
攪拌機、窒素ガス導入口、縮合水排出口を備えた容積約3Lの反応容器にセバシン酸829.23g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.6526g及び酢酸ナトリウム0.4546gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら170℃で溶融させた。260℃まで徐々に昇温しながら、そこへメタキシリレンジアミン(MXDA)(三菱ガス化学株式会社製)386.99gとパラキシリレンジアミン(PXDA)(三菱ガス化学株式会社製)165.85g(モル比(MXDA/PXDA=70/30))、及びポリエーテルジアミン(米国HUNTSMAN社製、商品名:ED−900)36.90gの混合液を滴下し約2時間重合を行い、ポリエーテルポリアミドエラストマーを得た:ηr=1.81、[COOH]=53.34μeq/g、[NH2]=82.12μeq/g、Mn=14765、Tg=58.0℃、Tch=96.8℃、Tm=211.3℃。
得られたポリエーテルポリアミドエラストマーを、温度270℃で押出成形を行い、厚さ約100μmの無延伸フィルムを作成した。このフィルムを用いて引張物性を評価した結果を表4に示す。
【0079】
[実施例3−7]
攪拌機、窒素ガス導入口、縮合水排出口を備えた容積約3Lの反応容器にセバシン酸768.55g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.6644g及び酢酸ナトリウム0.4628gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら170℃で溶融させた。260℃まで徐々に昇温しながら、そこへメタキシリレンジアミン(MXDA)(三菱ガス化学株式会社製)344.18gとパラキシリレンジアミン(PXDA)(三菱ガス化学株式会社製)47.50g(モル比(MXDA/PXDA=70/30))、及びポリエーテルジアミン(米国HUNTSMAN社製、商品名:ED−900)171.00gの混合液を滴下し約2時間重合を行い、ポリエーテルポリアミドエラストマーを得た:ηr=1.48、[COOH]=66.91μeq/g、[NH2]=82.80μeq/g、Mn=13360、Tg=27.6℃、Tch=72.8℃、Tm=207.6℃。
得られたポリエーテルポリアミドエラストマーを、温度265℃で押出成形を行い、厚さ約100μmの無延伸フィルムを作成した。このフィルムを用いて引張物性を評価した結果を表4に示す。
【0080】
[実施例3−8]
攪拌機、窒素ガス導入口、縮合水排出口を備えた容積約3Lの反応容器にセバシン酸687.65g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.6612g及び酢酸ナトリウム0.4605gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら170℃で溶融させた。260℃まで徐々に昇温しながら、そこへメタキシリレンジアミン(MXDA)(三菱ガス化学株式会社製)291.74gとパラキシリレンジアミン(PXDA)(三菱ガス化学株式会社製)125.03g(モル比(MXDA/PXDA=70/30))、及びポリエーテルジアミン(米国HUNTSMAN社製、商品名:ED−900)306.00gの混合液を滴下し約2時間重合を行い、ポリエーテルポリアミドエラストマーを得た:ηr=1.36、[COOH]=66.35μeq/g、[NH2]=74.13μeq/g、Mn=14237、Tg=16.9℃、Tch=52.9℃、Tm=201.9℃。
得られたポリエーテルポリアミドエラストマーを、温度250℃で押出成形を行い、厚さ約100μmの無延伸フィルムを作成した。このフィルムを用いて引張物性を評価した結果を表4に示す。
【0081】
[実施例3−9]
攪拌機、窒素ガス導入口、縮合水排出口を備えた容積約3Lの反応容器にセバシン酸626.98g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.6636g及び酢酸ナトリウム0.4622gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら170℃で溶融させた。260℃まで徐々に昇温しながら、そこへメタキシリレンジアミン(MXDA)(三菱ガス化学株式会社製)251.22gとパラキシリレンジアミン(PXDA)(三菱ガス化学株式会社製)107.67g(モル比(MXDA/PXDA=70/30))、及びポリエーテルジアミン(米国HUNTSMAN社製、商品名:ED−900)418.50gの混合液を滴下し約2時間重合を行い、ポリエーテルポリアミドエラストマーを得た:ηr=1.30、[COOH]=68.12μeq/g、[NH2]=70.55μeq/g、Mn=14423、Tg=6.7℃、Tch=34.7℃、Tm=196.9℃。
得られたポリエーテルポリアミドエラストマーを、温度245℃で押出成形を行い、厚さ約100μmの無延伸フィルムを作成した。このフィルムを用いて引張物性を評価した結果を表4に示す。
【0082】
[実施例3−10]
攪拌機、窒素ガス導入口、縮合水排出口を備えた容積約3Lの反応容器にセバシン酸566.30g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.6543g及び酢酸ナトリウム0.4557gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら170℃で溶融させた。260℃まで徐々に昇温しながら、そこへメタキシリレンジアミン(MXDA)(三菱ガス化学株式会社製)213.56gとパラキシリレンジアミン(PXDA)(三菱ガス化学株式会社製)91.53g(モル比(MXDA/PXDA=70/30))、及びポリエーテルジアミン(米国HUNTSMAN社製、商品名:ED−900)504.00gの混合液を滴下し約2時間重合を行い、ポリエーテルポリアミドエラストマーを得た:ηr=1.27、[COOH]=75.93μeq/g、[NH2]=70.67μeq/g、Mn=13643、Tch=24.9℃、Tm=190.9℃。
【0083】
[実施例3−11]
攪拌機、窒素ガス導入口、縮合水排出口を備えた容積約3Lの反応容器にセバシン酸829.23g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.6414g及び酢酸ナトリウム0.4468gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら170℃で溶融させた。260℃まで徐々に昇温しながら、そこへメタキシリレンジアミン(MXDA)(三菱ガス化学株式会社製)388.94gとパラキシリレンジアミン(PXDA)(三菱ガス化学株式会社製)166.69g(モル比(MXDA/PXDA=70/30))、及びポリエーテルジアミン(米国HUNTSMAN社製、商品名:ED−600、実施例1−3を参照)12.30gの混合液を滴下し約2時間重合を行い、ポリエーテルポリアミドエラストマーを得た:ηr=1.87、[COOH]=38.27μeq/g、[NH2]=90.10μeq/g、Mn=15579、Tg=62.1℃、Tch=101.2℃、Tm=211.8℃。
得られたポリエーテルポリアミドエラストマーを、温度260℃で押出成形を行い、厚さ約100μmの無延伸フィルムを作成した。このフィルムを用いて引張物性を評価した結果を表4に示す。
【0084】
[実施例3−12]
攪拌機、窒素ガス導入口、縮合水排出口を備えた容積約3Lの反応容器にセバシン酸829.23g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.6463g及び酢酸ナトリウム0.4502gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら170℃で溶融させた。260℃まで徐々に昇温しながら、そこへメタキシリレンジアミン(MXDA)(三菱ガス化学株式会社製)386.99gとパラキシリレンジアミン(PXDA)(三菱ガス化学株式会社製)165.85g(モル比(MXDA/PXDA=70/30))、及びポリエーテルジアミン(米国HUNTSMAN社製、商品名:ED−600)24.60gの混合液を滴下し約2時間重合を行い、ポリエーテルポリアミドエラストマーを得た:ηr=1.86、[COOH]=36.13μeq/g、[NH2]=94.50μeq/g、Mn=15310、Tg=60.4℃、Tch=99.0℃、Tm=211.7℃。
得られたポリエーテルポリアミドエラストマーを、温度260℃で押出成形を行い、厚さ約100μmの無延伸フィルムを作成した。このフィルムを用いて引張物性を評価した結果を表4に示す。
【0085】
[実施例3−13]
攪拌機、窒素ガス導入口、縮合水排出口を備えた容積約3Lの反応容器にセバシン酸728.10g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.6446g及び酢酸ナトリウム0.4490gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら170℃で溶融させた。260℃まで徐々に昇温しながら、そこへメタキシリレンジアミン(MXDA)(三菱ガス化学株式会社製)308.90gとパラキシリレンジアミン(PXDA)(三菱ガス化学株式会社製)132.39g(モル比(MXDA/PXDA=70/30))、及びポリエーテルジアミン(米国HUNTSMAN社製、商品名:ED−600)216.00gの混合液を滴下し約2時間重合を行い、ポリエーテルポリアミドエラストマーを得た:ηr=1.36、[COOH]=33.90μeq/g、[NH2]=102.39μeq/g、Mn=14675、Tg=26.8℃、Tch=67.8℃、Tm=202.1℃。
得られたポリエーテルポリアミドエラストマーを、温度250℃で押出成形を行い、厚さ約100μmの無延伸フィルムを作成した。このフィルムを用いて引張物性を評価した結果を表4に示す。
【0086】
(比較例3−2)
攪拌機、窒素ガス導入口、縮合水排出口を備えた容積約3Lの反応容器にセバシン酸829.2g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.6365g及び酢酸ナトリウム0.4434gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら170℃で溶融させた。260℃まで徐々に昇温しながら、そこへメタキシリレンジアミン(MXDA)(三菱ガス化学株式会社製)390.89gとパラキシリレンジアミン(PXDA)(三菱ガス化学株式会社製)167.53g(モル比(MXDA/PXDA=70/30))の混合液を滴下し約2時間重合を行い、ポリアミドを得た:ηr=2.20、[COOH]=81.8μeq/g、[NH2]=26.9μeq/g、Mn=18400、Tg=65.9℃、Tch=100.1℃、Tm=213.8℃。
得られたポリアミドを、温度240℃で押出成形を行い、厚さ約100μmのフィルムを作成した。このフィルムを用いて引張物性を評価した結果を表4に示す。
【0087】
【表4】
【0088】
表1〜4の結果より、本発明のポリエーテルポリアミドエラストマーは溶融成形性、結晶性、柔軟性、機械強度及び耐熱性がともに優れる材料であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明のポリエーテルポリアミドエラストマーは、溶融成形性、結晶性、柔軟性、強靭性などに優れ、耐熱性に優れる新規なポリエーテルポリアミドエラストマーであって、各種工業部品、機械・電気精密機器のギア・コネクタ、自動車のエンジン回りの燃料チューブ、コネクター部品、摺動部品、ベルト、ホース、消音ギア等の電気・電子用部品、スポーツ用品等に使用できる。