特許第5867734号(P5867734)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5867734
(24)【登録日】2016年1月15日
(45)【発行日】2016年2月24日
(54)【発明の名称】β−2CaO・SiO2の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/24 20060101AFI20160210BHJP
   C04B 22/08 20060101ALI20160210BHJP
【FI】
   C01B33/24 101
   C04B22/08 A
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-555690(P2012-555690)
(86)(22)【出願日】2011年11月11日
(86)【国際出願番号】JP2011076113
(87)【国際公開番号】WO2012105102
(87)【国際公開日】20120809
【審査請求日】2014年8月12日
(31)【優先権主張番号】特願2011-21614(P2011-21614)
(32)【優先日】2011年2月3日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-21658(P2011-21658)
(32)【優先日】2011年2月3日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-128708(P2011-128708)
(32)【優先日】2011年6月8日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-172188(P2011-172188)
(32)【優先日】2011年8月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090918
【弁理士】
【氏名又は名称】泉名 謙治
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 利春
(72)【発明者】
【氏名】樋口 隆行
(72)【発明者】
【氏名】富岡 茂
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 晃
(72)【発明者】
【氏名】山本 賢司
(72)【発明者】
【氏名】盛岡 実
(72)【発明者】
【氏名】庄司 慎
【審査官】 安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−291618(JP,A)
【文献】 特開昭62−017013(JP,A)
【文献】 国際公開第03/016234(WO,A1)
【文献】 特開平10−036110(JP,A)
【文献】 米国特許第04314980(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/24
C04B 22/06−22/08
JSTPlus(JDreamII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CaOとSiOを主成分とし、CaO/SiOモル比が1.8〜2.2であって、1000℃加熱後に、AlとFeの合計の含有量が5質量%未満で、ホウ素、リン、バリウム、ストロンチウム、およびモリブデンの合計の含有量が酸化物換算で0.5質量%未満である原料を選定し、
原料の粒度を150μm通過率で90質量%以上としたものを造粒し、
造粒した原料を、Alが45〜80質量%、SiOが20〜55質量%のシリカ−アルミナ質レンガ、Alが25〜80質量%、SiOが20〜75質量%のシリカ−アルミナ質モルタル、MgOが85質量%以上のマグネシアレンガ、およびMgOが85質量%以上のマグネシアモルタルからなる群から選ばれる少なくとも1種以上のレンガ又はモルタルを焼成帯の内面に使用したロータリーキルンにて、
焼点温度1350〜1600℃で焼成することを特徴とするβ−2CaO・SiOの製造方法。
【請求項2】
上記ロータリーキルンが、焼成帯のレンガにAlが45〜80質量%、SiOが20〜55質量%のシリカ−アルミナ質レンガを使用する請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
上記ロータリーキルンが、焼成帯のレンガの表面にMgOが85質量%以上のマグネシアモルタルを塗布する請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
上記ロータリーキルンが、焼成帯のレンガにMgOが85質量%以上のマグネシアレンガを使用する請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
上記ロータリーキルンが、焼成帯のレンガの表面にAlが25〜80質量%、SiOが20〜75質量%のシリカ−アルミナ質モルタルを塗布する請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
原料のCaO/SiOのモル比が1.9〜2.1である請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
1000℃加熱後の原料が、2質量%未満のFeを含有する請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
原料が、100μm通過率で90質量%以上の粒度を有する請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
水/原料の質量比が(0.1〜0.3)/1の水を使用して造粒する請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
1400〜1500℃の焼点温度で焼成する請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
ロータリーキルンの焼成帯のレンガ表面のモルタルが、5〜10mmの厚みである請求項1、3、5〜10のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、セメント混和材として適切に使用可能なβ−2CaO・SiOの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2CaO・SiO(珪酸二カルシウム)の結晶形には、α型、β型、γ型などが知られる。このうち、常温で安定なのはβ型とγ型である。β型はポルトランドセメントの成分のひとつとして知られ、弱いながらも水硬性を持つ。一方、γ型は水硬性を持たないものの、炭酸化活性が高く、セメント混和材としての有用性が近年見出されている(特許文献1参照)。
【0003】
純粋な2CaO−SiOの系では、β型の2CaO・SiOは生成せず、γ型になる。2CaO・SiOの結晶形態に影響を及ぼす要因としては、(1)第三成分の影響、(2)冷却条件の影響、(3)酸化−還元雰囲気などが知られる。
【0004】
第三成分の影響としては、ホウ素、リン、バリウム、ストロンチウム、鉄、アルミニウム、モリブデンなどがある一定量以上混在すると、β−2CaO・SiOが生成することが知られている(非特許文献1、非特許文献2および非特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO03/016234号パンフレット
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Schwiete et al.,Zem.−Kalk−Gips,Vol.21,No.9,359,1968
【非特許文献2】柴田純夫ほか,窯業協会誌,Vol.92,No.2,71,1984
【非特許文献3】Niesel et al.Tonind−Ztg.,Vol.93,No.6,197,1969
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、白色度が高く、有害物質も含まず、セメントの凝結硬化も阻害することのないβ−2CaO・SiOの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは種々検討を重ねた結果、特定の原料を選定し、特定の粒度としたものを造粒し、特定のレンガや特定のモルタルを焼成帯に使用したロータリーキルンで焼成することにより、容易にβ−2CaO・SiOが生成することを見出した。
すなわち、本発明は、CaOとSiOを主成分とし、CaO/SiOモル比が1.8〜2.2であって、1000℃加熱後に、AlとFeの合計の含有量が5質量%未満で、ホウ素、リン、バリウム、ストロンチウム、およびモリブデンの合計の含有量が酸化物換算で0.5質量%未満である原料を選定し、原料の粒度を150μm通過率で90質量%以上、つまり、150μmの篩下が90質量%以上としたものを造粒し、造粒した原料を、焼成帯にAlが45〜80質量%、SiOが20〜55質量%のシリカ−アルミナ質レンガ、Alが25〜80質量%、SiOが20〜75質量%のシリカ−アルミナ質モルタル、MgOが85質量%以上のマグネシアレンガ、およびMgOが85質量%以上のマグネシアモルタルからなる群から選ばれる少なくとも1種以上を使用したロータリーキルンにて、焼点温度1350〜1600℃で焼成することを特徴とするβ−2CaO・SiOの製造方法である。
本発明においては、原料中のCaOとSiOは、CaO/SiOモル比で1.9〜2.1であるのが好ましい。
また、1000℃加熱後の原料は、2質量%未満のFeを含有するのが好ましい。
さらに、原料の粒度は、100μm通過率で90質量%以上であることが好ましい。
本発明の原料は、水/原料の比で10〜30質量%の水を使用して造粒するのが好ましい。
また、焼成時の焼点温度は1400〜1500℃が好ましい。
さらに、ロータリーキルンの焼成帯のレンガ表面のモルタルは、5〜10mmの厚みであるのが好ましい。
本発明の製造方法で得られるβ−2CaO・SiOは、セメント混和材として好適に用いられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のβ−2CaO・SiOの製造方法によれば、白色度が高く、有害物質も含まず、セメントの凝結硬化も阻害することもないβ−2CaO・SiOを連続的に容易に製造することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
なお、本発明における「部」や「%」は、特に規定しない限り質量基準で示す。
【0011】
本発明で云うβ−2CaO・SiOは、CaOとSiOを主成分とする化合物のうち、所謂ダイカルシウムシリケート(2CaO・SiO)の一種である。ダイカルシウムシリケートの結晶形にはα型、αプライム型、β型、γ型が存在するが、本発明は、β型のダイカルシウムシリケートに関する。
【0012】
本発明では、CaO原料とSiO原料を主成分として用いる。主成分とは、好ましくは原料中のCaOとSiOとの合計含有量が、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上であり、これ以外の成分の含有量はなるべく少ないことを意味する。
CaO原料としては、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウムなどを使用することができる。
SiO原料としては、ケイ石微粉末、粘土、シリカフューム、フライアッシュ、非晶質シリカ、その他、各産業から副生するシリカ質の物質などを選定できる。
ただし、本発明では、不純物の存在を限定する必要がある。具体的には、CaO原料やSiO原料から混入するAlやFeの合計が、1000℃加熱後の原料で、5%未満である必要がある。AlやFeの合計が、4%未満であることがより好ましく、3%未満であることが最も好ましい。
殊に、Feの含有量は、1000℃加熱後の原料で、2%未満であることが好ましく、1.5%未満であることがより好ましく、1%未満であることが最も好ましい。
また、その他の成分として、ホウ素、リン、バリウム、ストロンチウム、およびモリブデンの合計の含有量が酸化物換算で0.5%未満であることが好ましく、0.3%以下がより好ましい。前記範囲内でないと、白色度、有害物質の含有、セメントの硬化阻害の観点から好ましくない場合がある。
【0013】
CaO原料とSiO原料の配合割合は、原料中のCaO/SiOモル比が1.8〜2.2になるように調製する必要がある。原料のCaO/SiOモル比が1.8未満では、α型のワラストナイトが副生し、生成物中のβ−2CaO・SiOの含有率が低くなる。原料のCaO/SiOモル比が2.2を超えると、3CaO・SiOや遊離石灰が副生し、やはり生成物中のβ−2CaO・SiOの含有率が低くなる。 原料のCaO/SiOモル比は、1.8〜2.2が好ましく、1.9〜2.1がより好ましい。
【0014】
CaO原料とSiO原料の粒度は、150μm通過率が90%以上、つまり、150μmの篩下が90%以上になるように調製する必要があり、100μm通過率が90%以上、つまり、100μmの篩下が90%以上になるように調製することがより好ましい。原料の粒度が前記範囲まで細かくないと、β−2CaO・SiOの純度が悪くなる。具体的には、遊離石灰や不溶解残分が多くなる傾向となる。
【0015】
本発明では、β−2CaO・SiOの生成を促すために調合した原料を造粒することが好ましい。造粒とは、調合した原料を団子状に成形する操作である。造粒は、粒度が好ましくは1〜50mm、より好ましくは10〜30mmになるように行われる。
造粒の方法としては、円盤型の回転ドラムに原料と水とを投入して造粒する方法や、型に原料を入れて加圧成形する、いわゆるペレタイザーを用いる方法等が挙げられる。
造粒の際に使用する水の使用量は、水/原料の質量比で(0.1〜0.3)/1が好ましく、(0.15〜0.25)/1がより好ましい。水の使用量が10%未満では、造粒した原料が崩れやすく、ロータリーキルンでの焼成時に焼成反応が十分に進行しない場合がある。また、水の使用量が30%を超えると、造粒した原料が水っぽくなり、やはり、崩れやすくなって、ロータリーキルンでの焼成時に焼成反応が十分に進行しない場合がある。原料に多くの水を含むため、これを蒸発させるために、焼成エネルギーを多く必要とするため不経済でもあり、また、環境負荷も大きくなるため好ましくない。
【0016】
本発明では、造粒後の原料をロータリーキルンにて焼成する。その温度は、焼点温度1350〜1600℃で焼成することが必要であり、1375〜1550℃が好ましく、1400〜1500℃がより好ましい。焼点温度が1350℃未満では、β−2CaO・SiOの純度が悪くなる。具体的には、遊離石灰や不溶解残分が多くなる傾向となる。逆に、焼点温度が1600℃を超えると、溶融してキルン内にコーチングが付着して、操業が困難になる場合や、β−2CaO・SiOの混在が顕著となる場合がある。また、焼成エネルギーが大きく、不経済でもある。なお、本発明で言う焼点温度とは、キルン内の最高温度を意味する。通常、キルン内の最高温度はバーナーから伸びるフレーム(炎の形)の前方付近にある。
【0017】
ロータリーキルンの焼成帯に用いるレンガやモルタルの材質は重要である。本発明では下記の(1)〜(4)からなる群から選ばれるレンガ又はモルタルの少なくとも1種以上が使用される。
(1)JIS R 2305で規定されている高アルミナ質耐火レンガのうち、Alの含有率が45〜80%、好ましくは55〜70%、SiOの含有率が20〜55%、好ましくは30〜45%のシリカ−アルミナ質レンガ。
(2)JIS R 2302で規定されているマグネシアレンガのうち、MgOの含有率が85%以上、好ましくは90%以上のマグネシアレンガ。
上記以外のレンガを使用した場合、β−2CaO・SiOの生成率が低くなったり、レンガが溶融して原料と反応しコーチングが生成してしまう場合がある。レンガの形状や厚みは、特に限定されるものではなく、ロータリーキルン径に応じて適切なサイズのものを選定することが望ましい。
(3)MgOの含有率が85%以上、好ましくは90%以上のマグネシア耐火モルタル。
(4)JIS R 2501で規定されている粘土質耐火モルタルおよび高アルミナ質耐火モルタルのうち、Alの含有率が25〜80%、好ましくは35〜70%、SiOの含有率が20〜75%、好ましくは30〜65%のシリカ−アルミナ質モルタル。
本発明において上記モルタルを焼成帯に使用する場合、これらのモルタルは、ロータリーキルンの焼成帯のレンガの表面に塗布して用いることが好ましい。
塗布するモルタルの使用条件は、特に限定されるものではないが、通常、モルタルの厚みは5〜10mm、好ましくは6〜9mmである。塗布に使用する水の量は、モルタルの種類によって異なるが、モルタル成分に対して好ましくは15〜35%である。なかでも、塗布に使用する水の量は、シリカ−アルミナ質モルタルでは、30〜35%が好ましく、マグネシアモルタルでは15〜20%が好ましい。前記範囲外ではβ−2CaO・SiOの含有率が低くなったり、レンガが溶融して原料と反応しコーチングが生成してしまう場合がある。また、レンガ、モルタルともに、セメントロータリーキルン用でクロムフリーであることが好ましい。
【0018】
本発明では、焼成後、冷却操作を行うが、冷却条件は特に限定されるものではなく、特殊な急冷操作を行わなければよい。具体的には、一般的なポルトランドセメントクリンカーの冷却条件に準じた方法で良く、ロータリーキルンで焼成後、大気環境下でクーラー等を通して冷却すればよい。
【0019】
熱処理方法は特に限定されるものではなく、ロータリーキルン、電気炉、トンネル炉、シャフトキルン、流動床式焼却炉などを用いることができる。
【実施例】
【0020】
次に、実施例及び比較例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定して解釈されるべきではない。
「実験例1」
下記のCaO原料、SiO原料、Al成分、およびFe成分を、振動ポットミル(中央化工機社製)を用いて配合し、表1に示すようなCaO/SiOモル比が2.0で、1000℃加熱後のAl含有量とFe含有量が異なる様々な配合の原料を調製した。これら原料を造粒機(装置;小型パン型造粒機、三井インダストリー社製)で、水/原料の質量比が0.2/1の条件で粒度が10〜30mmになるように造粒し、焼成帯内面の材質を表1に示すように変えたロータリーキルンにより1450℃で焼成した。得られた生成物のサンプルを評価し、結果を表1に併記する。
【0021】
<ロータリーキルン>
本発明の実験例で用いたロータリーキルンは、内径1m、長さ20mの円筒状であり、ロータリーキルンの焼成帯の内面の耐火物には、レンガ(厚さ120mm)またはレンガの表面にモルタル(厚さ7mm)を塗布したものである。
<焼成帯の材質(焼成帯の内面の耐火物の材質>
焼成帯の材質(1):Al含有率60%、SiO含有率40%のシリカ−アルミナ質レンガ(市販品)。
焼成帯の材質(2):MgO含有率91%のマグネシアレンガ(市販品)。
焼成帯の材質(3):上記(1)のレンガの内面に、マグネシア耐火モルタル(ヨータイ社製、商品名ヨータイヒートセットM、最大粒径0.6mm)を、水/モルタルの質量比率が0.17にて、厚み7mmで塗布したもの。
焼成帯の材質(4):上記(1)のレンガの内面に、Al含有率60%、SiO含有率40%のシリカ−アルミナ質耐火モルタルを、水/モルタルの質量比率が0.33にて、厚み7mmで塗布したもの。
【0022】
<使用材料>
CaO原料:石灰石微粉末。CaOが55.4%、MgOが0.37%、Alが0.05%、Feが0.02%、およびSiOが0.10%であり、強熱減量(1000℃)が43.57%であり、炭素分は検出されず。150μm通過率;97.0%、100μm通過率;91.9%。
SiO原料:ケイ石微粉末。CaOが0.02%、MgOが0.04%、Alが2.71%、Feが0.27%、SiOが95.83%、およびTiOが0.23%であり、炭素分は検出されず。強熱減量(1000℃)が0.51%であり、150μm通過率;95.1%、100μm通過率;90.3%。
Al成分:工業用のアルミナ、純度99%以上。
Fe成分:工業用の酸化第二鉄、純度99%以上。
水:水道水。
【0023】
<測定方法>
焼成後に得られた生成物についての各種の特性の評価は次のようにして行った。
化合物の同定:粉末X線回折法(装置;粉末X線回折装置(マルチフレックス)、リガク社製)により化合物を同定した。
化学成分の定量:Al成分、Fe成分をJIS R 5202に準じて分析し、定量した。
色の観察:目視により白色の程度を判定した。200ルクスの照度の部屋で観察し、ブレーン比表面積で3000±100cm/gに調製した粉末の白色程度を観察した。白い場合は○、黄色い場合は△、褐色の場合は×とした。
凝結時間および圧縮強度:普通ポルトランドセメント90部に対して、β−2CaO・SiOやγ−2CaO・SiOをそれぞれ10部加えてセメント組成物とした。このセメント組成物を用いて、JIS R 5201に準じてモルタルを調製し、凝結の終結時間を測定した。また、材齢1日の圧縮強度も測定した。
【0024】
【表1】
【0025】
「実験例2」
原料のCaO/SiOモル比を2.0、Fe含有量を0.3%、およびAl含有量を1.4%に固定し、焼成帯のレンガやモルタルの化学組成を変えたこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0026】
<焼成帯の材質>
焼成帯の材質(5):Al含有率45%、SiO含有率55%のシリカ−アルミナ質レンガ(市販品)。
焼成帯の材質(6):Al含有率80%、SiO含有率20%のシリカ−アルミナ質レンガ(市販品)。
焼成帯の材質(7):MgO含有率85%のマグネシアレンガ(市販品)。
焼成帯の材質(8):MgO含有率95%のマグネシアレンガ(市販品)。
焼成帯の材質(9):Al含有率95%、SiO含有率5%の高純度アルミナ質レンガ(市販品)。
焼成帯の材質(10):スピネル質レンガ(市販品)。
焼成帯の材質(11):上記(1)のレンガの内面に、マグネシア−スピネル耐火モルタル(ヨータイ社製、商品名ヨータイヒートセットM、最大粒径0.6mm)を、水/モルタルの質量比率が0.17にて、厚み7mmで塗布したもの。
焼成帯の材質(12):上記(1)のレンガの内面に、ハイアルミナ質モルタルAl2390%以上(ヨータイ社製、商品名ヨータイヒートセットM、最大粒径0.5mm)を、水/モルタルの質量比率が0.17にて、厚み7mmで塗布したもの。
焼成帯の耐火モルタル(13):上記(1)のレンガの内面に、Al含有率25%、SiO含有率75%のシリカ−アルミナ質モルタルを、水/モルタルの質量比率が0.33にて、厚み7mmで塗布したもの。
焼成帯の耐火モルタル(14):上記(1)のレンガの内面に、Al含有率45%、SiO含有率55%のシリカ−アルミナ質モルタルを、水/モルタルの質量比率が0.33にて、厚み7mmで塗布したもの。
焼成帯の耐火モルタル(15):上記(1)のレンガの内面に、Al含有率80%、SiO含有率20%のシリカ−アルミナ質モルタルを、水/モルタルの質量比率が0.33にて、厚み7mmで塗布したもの。
焼成帯の耐火モルタル(16):上記(1)のレンガの内面に、Al含有率90%、SiO含有率10%の高純度アルミナ質耐火モルタルを、水/モルタルの質量比率が0.33にて、厚み7mmで塗布したもの。
焼成帯の耐火モルタル(17):上記(1)のレンガの内面に、Al含有率96%、SiO含有率4%の高純度アルミナ質耐火モルタルを、水/モルタルの質量比率が0.33にて、厚み7mmで塗布したもの。
【0027】
表2中の材質の表示においては、例えば「Al45」は、Alの含有率が45%の焼成帯の材質を意味し、「Mg85」は、MgOの含有率が85%の焼成帯の材質を意味する。他についても、同様の例示の仕方である。
【0028】
【表2】
【0029】
「実験例3」
従来技術との比較を行った。表3に示すように、従来からβ−2CaO・SiOを安定化させる元素として知られる、Fe、Al、BO、BaO、P、SrO、またはMoO3を表3に示す割合で配合した以外は、実験例1と同様に行った。結果を表3に示す。
【0030】
【表3】
【0031】
「実験例4」
CaO原料とSiO原料のCaO/SiOモル比を表4に示すように変化したこと以外は、実験例1と同様に行った。結果を表4に示す。
【0032】
【表4】
【0033】
「実験例5」
熱処理温度を表5に示すように変化したこと以外は、実験例1と同様に行った。結果を表5に示す。
【0034】
【表5】
【0035】
「実験例6」
造粒の際の水比を表6に示すように変化したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表6に示す。
【0036】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明のβ−2CaO・SiOの製造方法は、白色度が高く、セメントの凝結硬化も阻害することのないβ−2CaO・SiOを製造することが可能であり、セメント分野などにおいて広範に利用できる。
なお、2011年2月3日に出願された日本特許出願2011−021614号、2011年2月3日に出願された日本特許出願2011−021658号、2011年6月8日に出願された日本特許出願2011−128708号、及び2011年8月5日に出願された日本特許出願2011−172188号の明細書、特許請求の範囲、及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。