(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光を導通するためのコアとクラッドを有する光ファイバ、前記光ファイバが固定される貫通孔を有するフェルール、前記フェルールの貫通孔に前記光ファイバとともに充填される弾性部材、を含むファイバスタブと、前記ファイバスタブの一部を保持するスリーブと、前記ファイバスタブの前記スリーブが保持する側とは反対側の一部を保持する保持具と、前記ファイバスタブ、および前記スリーブの少なくとも一部を内包する位置に設けられた収容部とを備え、前記ファイバスタブの端面の内、前記スリーブに挿入されるプラグフェルールと光学的に接続される端面が、前記光ファイバの中心軸に対して垂直となる面に対して一定の傾きを持って傾いた凸球面となるように形成されており、前記ファイバスタブの端面の前記傾いた凸球面を形成する際にその傾き方向を規定するために用いることが可能な位置決め部を前記保持具に有し、
前記保持具に設けられた位置決め部が複数あることを特徴とする光レセプタクル。
前記保持具が、前記光ファイバの中心軸に対して垂直となる面に対して一定の傾きを持って傾いた凸球面となるように形成された端面から1mm以上離れた位置を保持していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の光レセプタクル。
前記スリーブが円周方向の一部に前記光ファイバの中心軸方向に沿ったスリットを有しており、前記スリットは、前記光ファイバの中心軸に対して垂直となる面に対して一定の傾きを持って傾いた凸球面となるように形成された端面の内、前記保持具からの距離が短くなる側に位置していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の光レセプタクル。
前記凸球面となるように形成された前記端面上の点のうち前記保持具との間の距離が最も短い第1点と前記中心軸とを結ぶ直線と、前記スリットの中心と前記中心軸とを結ぶ直線と、の間の角度は、前記中心軸に対して平行な方向に沿って見たときに、90°以下であることを特徴とする請求項7に記載の光レセプタクル。
前記ファイバスタブの端面の一部であって、前記凸球面となるように形成された前記端面とは反対側の端面の一部は、前記光ファイバの前記中心軸に対して垂直となる前記面に対して傾いた平面であり、
前記凸球面となるように形成された前記端面とは反対側の前記端面上の点のうち前記スリーブとの間の距離が最も短い点と前記光ファイバの前記中心軸とを結ぶ直線と、前記位置決め部上の基準点と前記光ファイバの前記中心軸とを結ぶ直線と、の間の角度であって、前記光ファイバの前記中心軸に対して平行な方向に沿って見たときの角度は、検出可能であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の光レセプタクル。
【背景技術】
【0002】
光レセプタクルは、光通信用トランシーバの光モジュールにおいて、光ファイバコネクタを受光素子や発光素子等の光学素子と光学的に接続させるための部品として用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
光レセプタクルの基本特性は、前述のように光学素子と光ファイバコネクタを光学的に接続させることであるが、中でも光レセプタクルと光ファイバコネクタの光学的接続点における反射防止を目的とした斜め球面研磨を有すAPCコネクタ(参考文献:JIS C5963:光ファイバ11コード付き光コネクタ通則)との接続においては、通常のPCコネクタ接続よりも接続損失の低減と反射防止が重要な特性となっている。
【0004】
APCコネクタは光学接続点における反射光がノイズとなることで伝送信号が影響を受けやすいアナログ通信においてよく用いられている。
【0005】
アナログ通信を用いた光通信では、従来は光トランスポンダーが使われることが多かったが、近年世界的なIPトラフィックの増加等により光通信設備の小型化要求が強くなっており、アナログ通信系においても光トランスポンダよりも小型で安価な光トランシーバが求められている。
【0006】
APCコネクタとの接続を目的とした光レセプタクルにおいて、低損失かつ低反射で光接続を行うためには斜め球面研磨された方向をAPCコネクタと整合させることが重要であるが、従来の光レセプタクルにおいては斜め球面研磨方向を精度よく制御する位置決め方法に関して一般的な技術が存在しなかったため、光トランシーバに組み込んだ際に光学接続点において大きな損失または反射が発生してしまうという課題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の態様は、上記問題を解決するために為されたもので、APCコネクタとの接続を目的とした光レセプタクルにおいて、その斜め球面研磨された方向を高精度に管理することで光学接続点において接続損失と反射減衰量の発生を低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、光を導通するためのコアとクラッドを有する光ファイバ、前記光ファイバが固定される貫通孔を有するフェルール、前記フェルールの貫通孔に前記光ファイバとともに充填される弾性部材、を含むファイバスタブと、前記ファイバスタブの一部を保持するスリーブと、前記ファイバスタブの前記スリーブが保持する側とは反対側の一部を保持する保持具と、前記ファイバスタブ、および前記スリーブの少なくとも一部を内包する位置に設けられた収容部とを備え、前記ファイバスタブの端面の内、前記スリーブに挿入されるプラグフェルールと光学的に接続される端面が、前記光ファイバの中心軸に対して垂直となる面に対して一定の傾きを持って傾いた凸球面となるように形成されており、前記ファイバスタブの端面
の前記傾いた凸球面を形成する際にその傾き方向を規定するために用いることが可能な位置決め部を
前記保持具に有し、前記保持具に設けられた位置決め部が複数あることを特徴とする光レセプタクルである。
【0010】
この光レセプタクルによれば、ファイバスタブの端面を研磨してAPCコネクタと光学的接続される斜め凸球面を形成する際に、保持具に設けた位置決め部を基準としながら斜め球面を形成する
。
【0011】
これにより、実際に斜め球面に研磨される方向を高精度に管理することができる。保持具に設けられた複数の位置決め部を基準として実際にファイバスタブ端面が斜めに研磨される方向の位置関係を高精度に管理することができる。
【0012】
このため、光トランシーバに組み込んだ際にAPCコネクタとの接続において損失や反射
を抑制することができる。
【0013】
第
2の発明は、第
1の発明において、前記保持具に設けられた位置決め部が直線により構成されていることを特徴とする光レセプタクルである。
【0014】
この光レセプタクルによれば、保持具に設けられた位置決め部を基準としてファイバスタブ端面に斜め球面を形成する際に、研磨に用いる治具に前記直線を押し当てる等の方法により位置決め部を機械的基準面として使用することで位置決め部と斜め研磨方向をさらに高精度に管理することができる。
【0015】
第
3の発明は、第
1の発明において、前記保持具に設けられた位置決め部が、切り欠きにより構成されていることを特徴とする光レセプタクルである。
【0016】
この光レセプタクルによれば、ファイバスタブ端面に斜め球面を形成する際に、研磨に用いる治具と前記切り欠きを整合させる等することにより、その位置決め部と斜め研磨方向の精度を高めることができる。
【0017】
第
4の発明は、第1〜
3のいずれか1つの発明において、
前記凸球面となるように形成された前記端面上の点のうち前記保持具との間の距離が最も長い点と、前記光ファイバの中心軸と、を結ぶ直線と、前記位置決め部の位置を示す点と、前記光ファイバの中心軸と、を結ぶ直線と、の間の角度は、前記中心軸に対して平行な方向から見たときに、±3°
以下であることを特徴とする光レセプタクルである。
【0018】
この光レセプタクルによれば、位置決め部に対するファイバスタブ端面の頂点偏心量を低減させることにより光トランシーバに組み込んだ際にAPCコネクタとの接続において損失や反射をさらに抑制することができる。
【0019】
第
5の発明は、第1〜
4のいずれか1つの発明において、前記保持具が、前記光ファイバの中心軸に対して垂直となる面に対して一定の傾きを持って傾いた凸球面となるように形成された端面から1mm以上離れた位置を保持していることを特徴とする光レセプタクルである。
【0020】
この光レセプタクルによれば、前記ファイバスタブ端面を研磨して斜め球面を形成する際に、ファイバスタブ外周を直接的に治具に固定するのに十分な長さを確保することができ、保持具に設けられた位置決め部に対する斜め球面研磨方向を高精度に管理することができる。
【0021】
第
6の発明は、第1〜
5のいずれか1つの発明において、前記ファイバスタブの端面に用いた球面が、前記フェルール端面の全体に渡って形成されていることを特徴とする光レセプタクルである。
【0022】
この光レセプタクルによれば、前記ファイバスタブの端面に設けられた斜め球面において、その頂点の位置を斜め球面の中心軸により近い位置に形成することが可能となる。
【0023】
第
7の発明は、第1〜
6のいずれか1つの発明において、前記スリーブが円周方向の一部に前記光ファイバの中心軸方向に沿ったスリットを有しており、前記スリットは、前記光ファイバの中心軸に対して垂直となる面に対して一定の傾きを持って傾いた凸球面となるように形成された端面の内、前記保持具からの距離が短くなる側に位置していることを特徴とする光レセプタクルである。
【0024】
この光レセプタクルによれば、光レセプタクルに挿入されたプラグフェルールに横荷重がかかった際に、ファイバスタブとプラグフェルールの中心軸の軸ズレを抑制することができる。
【0025】
第
8の発明は、第
7の発明において、前記凸球面となるように形成された前記端面上の点のうち前記保持具との間の距離が最も短い第1点と前記中心軸とを結ぶ直線と、前記スリットの中心と前記中心軸とを結ぶ直線と、の間の角度は、前記中心軸に対して平行な方向に沿って見たときに、90°以下であることを特徴とする光レセプタクルである。
【0026】
この光レセプタクルによれば、光レセプタクルに挿入されたプラグフェルールに横荷重がかかった際に、ファイバスタブとプラグフェルールの中心軸の軸ズレをさらに抑制することができる。
【0027】
第
9の発明は、第1〜
8のいずれか1つの発明において、前記ファイバスタブの端面の一部であって、前記凸球面となるように形成された前記端面とは反対側の端面の一部は、前記光ファイバの前記中心軸に対して垂直となる前記面に対して傾いた平面であり、前記凸球面となるように形成された前記端面とは反対側の前記端面上の点のうち前記スリーブとの間の距離が最も短い点と前記光ファイバの前記中心軸とを結ぶ直線と、前記位置決め部上の基準点と前記光ファイバの前記中心軸とを結ぶ直線と、の間の角度
であって、前記光ファイバの前記中心軸に対して平行な方向に沿って見たとき
の角度は、検出可能であることを特徴とする光レセプタクルである。
【0028】
この光レセプタクルによれば、光レセプタクルと光学素子とを組み合わせて光りモジュールを製作する際、光学素子から出射された光の内、光ファイバ端面で反射した光が光学素子へ戻ることを避けるため、ファイバスタブの光学素子側端面を斜めにし、さらにその端面の傾き方向を示す位置決め部を設けることで、光モジュール制作時の調心時間を短縮することができる。APCレセプタクルでは、前記位置決め部が、プラグフェルールと光学的接続する側の端面の傾き方向と、光学素子側端面の傾き方向と、を示すように、前記位置決め部を配設することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について例示をする。尚、各図面中同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0031】
図1(a)は、本発明の第1の実施形態を示す光レセプタクルの模式断面図である。光レセプタクル1は、光を導通するためのコアとクラッドとを有する光ファイバ2と、光ファイバが固定される貫通孔を有するフェルール3と、前記フェルールの貫通孔に前記光ファイバとともに充填される弾性部材とを含むファイバスタブ4と、前記ファイバスタブ4の一部を保持するスリーブ5と、前記ファイバスタブ4の前記スリーブが保持する側と反対側の一部を保持する保持具6と、前記ファイバスタブ4および前記スリーブ5の少なくとも一部を内包する位置に設けられた収容部7からなり、前記ファイバスタブ4の端面4a(第1端面)は光ファイバ2の中心軸に対して垂直となる面に対して一定の傾きを持って傾いた凸球面となるように形成されており、前記保持具6に2箇所以上の位置決め部8が施されている。尚、弾性部材については図示されていない。
【0032】
フェルール3に適する材質はセラミックス、ガラス等が挙げられるが、本実施例ではジルコニアセラミックスを用い、その中心に光ファイバ2を接着固定し、その端面4aは光ファイバ2の中心軸に対して垂直となる面に対して一定の傾きを持って傾いた凸球面となるように研磨して形成した。すなわち、光ファイバ2の中心軸に対して垂直となる面に対して傾いた平面の上に凸面が設けられている。またファイバスタブ4の端面4aとは反対側の端面(第2端面)も研磨により平面を形成しており、本実施例では光ファイバ2の中心軸に対し垂直な平面となるように形成しているが、斜めに研磨をしても良い。
【0033】
また、本実施例では光レセプタクル1の組立において、ファイバスタブ4、保持具6、収容部7等は圧入による固定とした。
【0034】
スリーブ5に適する材質は樹脂、金属、セラミックス等が挙げられるが、本実施例では全長方向にスリットを有するジルコニアセラミックス製の割スリーブを用いた。スリーブ5は一端でファイバスタブ4の斜め凸球面に研磨された端面4aを含む先端部を保持し、他端では光レセプタクル1に挿入されるプラグフェルールを保持するようになっている。尚、プラグフェルールは図示されていない。
【0035】
ファイバスタブ4の端面の内、スリーブ5に挿入されるプラグフェルールと光学的接続される端面4aは、光ファイバの中心軸に対して垂直となる平面から一定の傾きをもった凸球面となるように形成されている。ここで言う一定の角度とは一般的なAPCコネクタ(参考文献:JIS C5963:光ファイバ11コード付き光コネクタ通則)との接続を良好にするためには8°±0.5°以下となっていることが望ましい。
【0036】
ファイバスタブ4の一部を保持する保持具6には、ファイバスタブ4の端面4aが斜めに研磨された方向を制御する位置決め部8が2箇所に設けられている。さらに、保持具6には、位置決め部8が1箇所に追加されている。この追加された位置決め部8を端面4aが研磨された方向を示すものとしても使用することができる。なお、追加された位置決め部8の形状は、斜めに研磨された方向の制御に用いられる2つの位置決め部8の形状と同様でも
良いが、機械的な凹凸等でも代用可能である。
【0037】
一般的にファイバスタブ4にプラグフェルールと光学的接続される端面4aを研磨して形成する際には、所望の端面形状を得られるようにその形状や寸法を厳密に管理された治具にファイバスタブ4を固定して研磨を行う。ファイバスタブ4を治具に固定する際にはフェルール3の外周を治具に倣うようにして固定をすることが一般的である。
【0038】
本実施例では斜め球面を有する光レセプタクル1に用いられるファイバスタブ4の端面4aを形成するためにファイバスタブ4を治具に固定する際、予め保持具6に設けられた位置決め部に対する方向が一定の範囲となるように固定した後、端面4aを形成した。この時、ファイバスタブ4に直接圧入固定されている保持具6に設けられた2箇所以上の位置決め部8を基準とすることで、位置決め部8とファイバスタブ4の端面4aの位置を高精度に管理することが可能となる。この2箇所の位置決め部8の位置関係は、設計者によって適宜、設定可能である。本実施例では、位置決め部8同士の位置関係を、平行とした。ただし、位置決め部8は、例えば互いに直交していてもよい。
【0039】
ファイバスタブ4の光ファイバ2の中心軸に対して垂直となる平面から一定の傾きを持った凸球面状となった端面4aの傾き方向を、位置決め部8に対して高精度に管理することにより、光レセプタクル1を光トランシーバモジュールに組み込んでAPCコネクタと接続させる際に光学的接続点における損失、反射を低減させることができる。
【0040】
一般的なAPCコネクタでは、光フェルール端面の斜め研磨方向を示すガイドキーを基準にして、斜め凸球面上の端面を垂直方向から確認した状態で、凸球面の頂点の位置が該端面の中心から50μm以下であることが規格により要求されている(参考文献:JIS C5963:光ファイバ11コード付き光コネクタ通則)。
【0041】
保持具6に設けられた位置決め部8と、ファイバスタブ4の端面4aが光ファイバ2の中心軸に対し垂直となる平面から傾いた方向が為す角度は、所望の角度に対し±3°以下となる範囲に入るように構成されている。これにより凸球面上の端面4aの頂点偏心量を50μm以下とすることが可能となる。本実施例における所望の角度は0°としたが、この角度は、例えば45°、90°、135°、180°、225°、270°および315°のいずれかてあってもよい。
【0042】
±3°の精度が望ましい根拠を説明する。斜め球面同士を接触させる際、ファイバスタブとプラグフェルールとが軸方向に回転(光ファイバの中心軸を中心として回転)してしまうと、互いに接触すべきファイバ同士の間に空隙が発生してしまうことが知られている。例えば、球面の角度が8°、球面の曲率半径が12.5ミリメートル(mm)のとき、ファイバが軸方向に3°回転すると、ファイバ間には約0.14mmの空隙が生じる。球面の角度が8°、球面の曲率半径が12.5mmのとき、ファイバが4°回転すると、約0.25mmの空隙が発生する。例えば、シングルモードファイバにおいてファイバ同士の結合部に空隙が発生すると、下記の式で求められる損失が発生する。また、ファイバの回転角度(ファイバスタブに対するプラグフェルールの回転角度:フェルール回転角度)と損失との関係を
図2(c)に示す。
【0043】
L(dB)=−10log(1/(1+z
2))
z=λS/(2πn
cw
2)
ここで、λは波長、n
cはクラッドの屈折率、wはファイバのスポット径である。本実施形態では、波長は1310ナノメートル、クラッドの屈折率は1.45、スポット径は9.2マイクロメートルとした。これらの式によれば、ファイバが3°回転したときの空隙の空隙の大きさは、約0.14mmであり、損失は、約0.23dBとなる。ファイバの回転角度が4°のときには、空隙の大きさは約0.25mmであり、損失は約0.7dBとなり、損失が3倍近くも増大する。一般的に、ファイバの結合の損失は、0.5dB以下に抑える必要がある。このため、4°ずれたファイバスタブは、実用には適さない。したがって、角度誤差は、±3°以下が好ましい。
【0044】
図1(b)は、第1の実施形態に係る光レセプタクルを例示する投影図である。なお、見やすさのため一部の要素を省略している。光ファイバ2の中心軸に対して平行な第1方向D1から見たときに、直線10と直線11との間の角度は、所望の角度±3°以下である。ここで、直線10は、点40と光ファイバ2の中心軸とを結ぶ直線である。点40は、端面4a上の複数の点のうち保持具6との間の距離が最も長い点である。直線11は、光ファイバ2の中心軸と位置決め部8上の基準点とを結ぶ直線である。基準点は、位置決め部8の位置を示す点であり、位置決め部8上の任意の点を用いることができる。ファイバスタブ4の端面4aが傾いた方向とは、例えば直線10に沿った方向である。
【0045】
また、光レセプタクル1を光トランシーバ・モジュールに組み込む際、前述の位置決め部8を端面4aが斜めに研磨された方向を示すガイドキーとして使用することで、APCコネクタとの接続においてファイバ同士を確実に接続させることが可能となり、光学接続点における損失や反射を低減させることができる。
【0046】
図2(a)は、本発明の第2、第3の実施形態を示す光レセプタクルの模式断面図、および投影図である。光レセプタクル1を構成する部材は第1の実施形態と同様であり、保持具6に設けられたファイバスタブ4の端面4aの傾き方向を示す3箇所の位置決め部のそれぞれが直線で構成されている。
すなわち、光レセプタクル1は、ファイバスタブ4の端面4aの傾き方向を示す第2の位置決め部をさらに含む。光ファイバ2の中心軸に対して平行な第1方向D1に沿って見たときに(中心軸に対して垂直な平面に投影したときに)、3箇所の位置決め部のそれぞれの形状は直線状である。
【0047】
位置決め部8を3箇所設けることにより、ファイバスタブ4の端面4aを形成する際に端面4aの傾き方向と位置決め部8の精度をより高精度に管理することが可能となり、APCコネクタとの接続時の光学的接続点における損失、反射を低減させることができる。
【0048】
本実施例では位置決め部8を3方向に設けた直線
状のDカットにより構成した。本構成とすることで、ファイバスタブ4を研磨用の治具に固定する際に保持具6およびファイバスタブ4の位置を3方向から固定することが可能となり、ファイバスタブ4の端面4aと位置決め部8の位置をより高精度に管理することが可能となる。
【0049】
ここで言う直線とは、ファイバスタブ4および保持具6を治具に固定する際に倣いとして使用するに十分な長さを有していれば良いことになり、全体に渡って厳密な直線である必要はない。例えば一部が大小の曲率を伴った球面状となっていてもよい。
【0050】
図2(b)は、位置決め部の数と、光学的接続点における反射判定の結果と、の関係を示した表である。効果を確認するため、位置決め部を有していない構造および1〜3箇所の位置決め部を有する構造のそれぞれについて反射判定を実施した。
【0051】
光学的接続点の反射判定は、高分解能リフレクトメータを用いて行われる。この反射判定において、接続部の合格値を70dB以上とした。2箇所以上の位置決め部を有する構造からは不良が発生しておらず、本発明の効果が確認できる。
【0052】
図3は本発明の第4の実施形態を示す光レセプタクルの投影図である。光レセプタクル1を構成する部材は第1の実施形態と同様であり、保持具6に設けられたファイバスタブ4の端面4aの傾き方向を制御する位置決め部が円状の外周を有する保持具6の外周部に切り欠きにより構成されている。
【0053】
位置決め部8を切り欠きにより構成することにより、ファイバスタブ4の端面4aを形成するために研磨用の治具に固定する際に切り欠きを使用することで、端面4aの傾き方向と位置決め部8の位置をより高精度に管理することが可能となる。また
図3(c)のように切り欠き状の位置決め部8を3箇所設けることによりさらに高精度に管理することが可能となる。
【0054】
保持具6に設けた切り欠き状の位置決め部8の形状としては、
図3(a)のような楔状の形状や
図3(b)のような円形状とすることが考えられるが、位置決め部としての機能を為す形状であればその形状を特定する必要はない。また、
図3(c)のように位置決め部8を複数設ける場合にその形状は全てが同一である必要はなく、各々が異なる形状をしていても良い。さらには位置決め部8を複数で構成する際に切り欠き状の位置決め部と直線状の位置決め部を組み合わせて使用することも可能である。
【0055】
図4は本発明の第5の実施形態を示す光レセプタクルの模式断面図である。光レセプタクル1を構成する部材は第1の実施形態と同様であり、ファイバスタブ4の端面4aから保持具6がファイバスタブ4を保持する位置までの長さLが1mm以上となるように構成されている。
【0056】
前述のように、ファイバスタブ4に光ファイバ2の中心軸に対して垂直となる平面から一定の角度を持った凸球面状の端面4aを形成する際には、一般的な光コネクタに要求される端面形状を得るためには専用の治具にファイバスタブ4の側面を固定した状態で研磨等により形成することが一般的である。ファイバスタブ4を構成するフェルール3は外径や、内径に対する外径の同心度、および外径の円筒度等が非常に高精度に管理されているため、フェルール3の外周部を基準として治具に固定することで、その形状や寸法に高い精度を要求されるファイバスタブ4を経済的に生産することが可能となる。
【0057】
ここでファイバスタブ4の端面4aから保持具6がファイバスタブ4を保持する位置を端面4aから1mm以上離れた位置に設けることで、端面4aを形成する際にファイバスタブ4の外周を治具に固定する長さを十分確保することができる。これにより加工中のズレ等を抑制することができ前述のような経済的な生産をすることが可能となる。
【0058】
図5(a)は本発明の第7、第8の実施形態を示す光レセプタクルの模式断面図である。光レセプタクル1を構成する部材は第1の実施形態と同様であり、ファイバスタブ4の端面4aがフェルール3の端面全域に渡って構成されている。つまり、光ファイバ2の中心軸と平行な第1方向D1からみたときに、凸球面である端面4aの径は、フェルール3の径と同じである。ここで、同じとは、製造上のばらつきの範囲を含む。
さらにスリーブ5は、光ファイバ2の中心軸に対して平行な第1方向D1(中心軸方向)に沿ったスリット5aを、外周の一部に有している。スリット5aがファイバスタブ4の端面4aの内、保持具6からの距離が最も短くなる側にくるように配置されている。
【0059】
図5(b)は、第7、第8の実施形態に係る光レセプタクルを例示する投影図である。なお、見やすさのため一部の要素を省略して表している。
図5(a)及び(b)に表した第1点41は、端面4a上の複数の点のうち保持具6との間の距離が最も短い点である。第2点42は、端面4a上の複数の点のうち保持具6との間の第1方向D1に沿った距離が最も長い点である。スリット5aと第1点41との間の距離は、スリット5aと第2点42との間の距離よりも短い。
【0060】
また、スリット5aは、端面4aのうち保持具6からの距離が最も短くなる位置から±90°以内に配置される。すなわち、第1方向D1からみたときに、光ファイバ2の中心軸とスリット5aの中心50とを結ぶ直線13と、光ファイバ2の中心軸と第1点41とを結ぶ直線12との間の角度は、±90°以下である。このように、スリット5aは、端面4aのうち保持具6からの距離が最も短くなる側に配置される。
【0061】
ファイバスタブ4の端面4aをフェルール3の端面全域に渡って形成することにより、端面4aに対し垂直となる方向から確認した端面4aの中心と、フェルール3の端面の中心が一致するため、凸球面上に形成された端面4aの頂点偏心量を抑制することができる。
【0062】
一般に光レセプタクルにはWiggle損失というものがある。Wiggle損失とは、光トランシーバモジュールに組み込まれた光レセプタクルに挿入されたプラグフェルールに荷重がかかり、プラグフェルールと光レセプタクルの光学的接続点における両者の中心がずれることにより発生する損失のことである。
【0063】
APCコネクタとの接続を想定した光レセプタクルにおいて、上記のように光レセプタクルに挿入されたプラグフェルールの光学接続点におけるファイバスタブ4とプラグフェルールの中心軸のズレが最も大きくなるのは、
図5(a)に示す光レセプタクル1の方向において、プラグフェルールの先端が上方向にズレようとする力が働いたときとなる。この時、スリーブ5のスリット5aをファイバスタブ4の端面4aの内、保持具6からの距離が最も短くなる位置にくるように配置しておくことで、光レセプタクル1においてWiggle損失が最も発生しやすくなる方向に対しスリーブが最も変形しにくい位置関係となることで、Wiggle損失を効果的に低減させることができる。
【0064】
図6(a)〜
図6(c)は、光レセプタクルの特性を例示する模式図である。
図6(a)に表した状況において、ファイバスタブ4の中心軸とプラグフェルール20の中心軸とのズレ量(軸ズレ量Dev)の、スリット方向θに対する依存性を解析した。解析においては、収容部7の空間的位置を固定し、光レセプタクル1にプラグフェルール20を挿入し、力点P1に横荷重をかけた。すなわち、矢印Fで示す方向に荷重をかけた。横加重は、1.1ニュートンとした。このとき、点P2を支点として、作用点P3において、軸ズレが生じる。
【0065】
図6(b)及び
図6(c)に解析結果を示す。
図6(b)及び
図6(c)は、スリット方向を変化させたときの軸ズレ量Dev(μm)の変化を表している。ここで、スリット方向θ(°)は、
図5(b)において説明した、第1方向D1から見たときの直線12と直線13との間の角度である。
【0066】
スリット方向θが0°のときに最も軸ズレ量Devが小さい。スリット方向0°、45°、90°、180°、135°の順に、軸ズレ量Devが大きくなる。また、スリット方向θが90°以上の場合に軸ズレ量Devが大きいことが分かった。これは、支点P2に近い位置にスリット5aが配置されることで、支点P2におけるスリーブ5の変形が大きくなり、軸ズレ量も大きくなるためと考えられる。実施形態においては、スリット方向を±90°以内の範囲とする。これにより、軸ズレ量を抑制することができ、Wiggle損失を低減させることができる。
【0067】
図7(a)は、第9の実施形態に係る光レセプタクルを例示する模式断面図であり、
図7(b)は、第9の実施形態に係る光レセプタクルを例示する投影図である。
ファイバスタブ4は、凸球面となるように形成された端面4aとは反対側の端面4b(第2端面)を有する。端面4bの一部は、光ファイバ2の中心軸に対して垂直となる面に対して傾いた平面である。
【0068】
図7(b)に表した第3点43は、端面4b上の複数の点のうちスリーブ5との間の距離が最も短い点である。基準点44は、位置決め部8上の点であり、位置決め部8の位置を示す。この例では、基準点44は、投影図において位置決め部8の中点に位置する。なお、位置決め部8として
図3(a)に表したような切り欠きを用いた場合、切り欠きの頂点等を基準点としてもよい。
【0069】
第3点43と光ファイバ2の中心軸とを結ぶ直線と、基準点44と光ファイバ2の中心軸とを結ぶ直線と、の間の角度は、第1方向D1から見たときに所定の角度とされる。所定の角度は、例えば0°である。但し実施形態において、所定の角度には任意の角度を用いることができる。
【0070】
このようにファイバスタブ4の光学素子側端面(端面4b)を斜めにする。これにより、光レセプタクル1と光学素子とを組み合わせて光モジュールを作成する際、光学素子から出射された光の内、光ファイバ2の端面で反射した光が光学素子へ戻ることを抑制することができる。
【0071】
また上述のように、端面4bの傾きの方向を示す位置決め部8を設ける。位置決め部8を基準として、端面4bの傾き方向を検出することができる。これにより、光モジュール作製時の調心時間を短縮することができる。APCレセプタクルにおいて、プラグフェルールと光学的に接続される端面4aの傾き方向と、光学素子側の端面4bの傾き方向と、の両方の方向を示すように位置決め部8を配設することができる。
【0072】
図8(a)は、第10の実施形態に係る光レセプタクルを例示する模式的断面図であり、
図8(b)は、第10の実施形態に係る光レセプタクルを例示する投影図である。
図8(a)及び
図8(b)に表したように、位置決め部8の一部または全体は、収容部7に内包されていても良い。すなわち、第1方向D1と垂直な方向に沿って見たときに、位置決め部8の少なくとも一部は、収容部7の一部と重なる。
【0073】
このように位置決め部8の少なくとも一部が収容部7に内包されることによって、光モジュール組み立て後の形状的な制約を無くすことができる。位置決め部8は、光モジュール組み立て時に視認することができれば機能する。なお、第1〜9の実施形態において例示したように、位置決め部8が収容部7から露出した形状である場合には、位置決め部8の視認性をより高めることができる。
【0074】
なお、本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれば良い。
【0075】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明の実施形態は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、光ファイバ、フェルール、ファイバスタブ、スリーブ、保持具、収容部、及び位置決め部などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。