特許第5867836号(P5867836)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5867836電池の製造方法、巻芯製造装置、及び巻芯
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5867836
(24)【登録日】2016年1月15日
(45)【発行日】2016年2月24日
(54)【発明の名称】電池の製造方法、巻芯製造装置、及び巻芯
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20160210BHJP
   B65H 75/10 20060101ALI20160210BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALI20160210BHJP
【FI】
   H01M10/04 W
   B65H75/10
   H01M10/0587
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-147637(P2014-147637)
(22)【出願日】2014年7月18日
(62)【分割の表示】特願2010-548539(P2010-548539)の分割
【原出願日】2010年1月28日
(65)【公開番号】特開2014-239049(P2014-239049A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2014年7月18日
(31)【優先権主張番号】特願2009-17894(P2009-17894)
(32)【優先日】2009年1月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勲
(72)【発明者】
【氏名】胸永 訓良
(72)【発明者】
【氏名】中村 拓
(72)【発明者】
【氏名】田才 博志
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 瞬
【審査官】 冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−242970(JP,A)
【文献】 特開平05−170360(JP,A)
【文献】 特開2003−249257(JP,A)
【文献】 特開2007−207649(JP,A)
【文献】 特開2003−346880(JP,A)
【文献】 特開昭62−195860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
B65H 75/10
H01M 10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、該回転軸を中心に回転する巻軸であって、溝が形成される巻軸を備える巻芯製造装置を用いて巻芯を製造する第一工程と、シート状の正電極及び負電極と、シート状のセパレータとで積層電極部材を作製しつつ、前記巻芯の周面に積層電極部材を巻回する第二工程とを備え、前記第一工程では、前記溝に、前記セパレータよりも強度が大きいシートを挿入し、巻軸を所定角度回転させた後、シートの重なり部位を接着あるいは溶着することにより巻芯を製造するようにしたことを特徴とする電池の製造方法。
【請求項2】
前記巻軸は、長楕円状に形成され、前記溝は、前記巻軸の長軸方向に沿って延びるように形成されている請求項1に記載の電池の製造方法。
【請求項3】
回転軸と、該回転軸を中心に回転する巻軸であって、溝が形成される巻軸を備え、前記巻軸の溝にシートを挿入するシート挿入手段と、前記巻軸を所定角度回転させた状態で、シートの重なり部位を接着あるいは溶着により接合する接合手段とを備えることを特徴とする巻芯製造装置。
【請求項4】
シートを用いて構成され、シートの一端部の内面側がシートの所定箇所の内面側に接合される一方、シートの他端部の外面側がシートの別の所定箇所の外面側に接合され、両接合箇所間におけるシートがシートの環状となった部分の内部で掛け渡されるように配置されることを特徴とする巻芯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状の正電極及び負電極と、該両電極に対して交互に介挿されるシート状のセパレータとで積層電極部材を作製しつつ、巻芯の周面に沿うように積層電極部材を巻回して製造する電池の製造方法、巻芯製造装置、及び巻芯に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電池としては、例えば、円筒状に巻芯を形成する一方、シート状の正電極と負電極とを、シート状のセパレータを介して前記巻芯に巻回して、円筒型の発電要素を作製し、その後、円筒型の発電要素を両側から径内方向に押圧して、長楕円型の発電要素を完成するようにしたものが公知になっている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−242970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の上記電池の場合、円筒型の発電要素を両側から押圧して長楕円形の発電要素を製造しているので、巻芯自体も長楕円に変形されてしまう。このため、前記押圧方向に対する強度が低くなっていると考えられる。
【0005】
本発明は、前記問題を鑑み、電池の製造方法、巻芯製造装置、及び巻芯を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明に係る電池の製造方法は、回転軸と、該回転軸を中心に回転する巻軸であって、溝が形成される巻軸を備える巻芯製造装置を用いて巻芯を製造する第一工程と、シート状の正電極及び負電極と、シート状のセパレータとで積層電極部材を作製しつつ、前記巻芯の周面に積層電極部材を巻回する第二工程とを備え、前記第一工程では、前記溝に、前記セパレータよりも強度が大きいシートを挿入し、巻軸を所定角度回転させた後、シートの重なり部位を接着あるいは溶着することにより巻芯を製造するようにしたことを特徴とする。
【0007】
また、前記巻軸は、長楕円状に形成され、前記溝は、前記巻軸の長軸方向に沿って延びるように形成されていてもよい。
【0008】
本発明に係る巻芯製造装置は、回転軸と、該回転軸を中心に回転する巻軸であって、溝が形成される巻軸を備え、前記巻軸の溝にシートを挿入するシート挿入手段と、前記巻軸を所定角度回転させた状態で、シートの重なり部位を接着あるいは溶着により接合する接合手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る巻芯は、シートを用いて構成され、シートの一端部の内面側がシートの所定箇所の内面側に接合される一方、シートの他端部の外面側がシートの別の所定箇所の外面側に接合され、両接合箇所間におけるシートがシートの環状となった部分の内部で掛け渡されるように配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明によれば、巻軸の溝に、巻芯を製造するためのシートを挿入した後、巻軸を所定角度回転させて、巻芯を製造するようにしたので、安価で且つ簡単に、しかも、強度の大きい電池を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る電池製造装置を示し、巻芯を製造するシートが一対の巻軸の間に挿入された状態を示す平面図。
図2】挿入されたシートを一方の巻軸に押圧固定した状態を示す平面図。
図3図2の状態からテーブルを半回転させた状態を示す平面図。
図4】テーブルをもう半回転させて、「6」の字を扁平させた形状の巻芯を製造する状態を示す平面図。
図5】シート状の正電極及び負電極に対して、シート状のセパレータを交互に介挿して積層電極部材を作製する状態を示す平面図。
図6】積層電極部材を巻芯の周面に沿うように巻回して電池を製造する状態を示す平面図。
図7】(a)は本実施形態に係る巻芯の概略図、(b)は本発明の巻芯の別の実施形態を示した概略図。
図8】(a)は強度試験に使用するサンプルの平面図、(b)は試験装置の一例を示した図。
図9】他の電池の製造方法を示した平面図。
図10】巻芯製造装置の別の実施形態を示した平面図。
図11】「S」または「8」の字を扁平させた形状の巻芯を示した平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る電池の製造方法について図1図6を参照して説明する。ここで、該電池の巻芯を製造する巻芯製造装置について図1を参照して説明する。該巻芯製造装置は、回転自在に設けられるテーブル1と、該テーブル1の回転中心を挟んで配置される一対の巻軸5,5と、該両巻軸5,5の間に樹脂製のシートSを挿入するシート挿入手段10と、挿入されたシートSを巻軸5,5に押圧固定したり、熱溶着したりする、固定手段及び溶着手段としてのチャック15(15A,15B)とを備えている。
【0013】
テーブル1は、円板形状を呈しており、中心部に回転軸2が固設されている。そして、該回転軸2を通る直径の両端部の位置(線対称の位置)に一対の巻軸5,5が配置されている。そして、本実施形態においては、テーブル1は反時計方向に回転するように構成されている。
【0014】
巻軸5は、テーブル1の周縁部に配置されており、図1を正面から見て水平方向に位置している。そして、テーブル1の回転によって、両巻軸5,5が回転中心回りに少なくとも1回転公転するようになっている。この公転によって、両巻軸5,5が、シートSにテンションを掛けつつ、シート挿入手段10から挿入されるシートSを巻き取る。
【0015】
シート挿入手段10は、図1を正面から見て右側の巻軸5の斜め上方に配置されており、右側の巻軸5の回転方向から左側の巻軸5の回転方向に向けて挿入される。
【0016】
チャック15A,15Bは、両巻軸5,5が回転する前方に配置されており、上述したように、巻軸5,5に対して近接離間するように進退自在に設けられると共に、シートSを熱溶着するための手段を備えている。
【0017】
シートSは、その厚さとしては、例えば、40〜300μmで、材質としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)のうちのいずれかを選択できる。
【0018】
つぎに本実施形態に係る電池の製造方法について図1図8を参照して説明する。まず、図1に示すように、シート挿入手段10によって、両巻軸5,5の間にシートSを挿入する。つぎに、図2に示すように、両巻軸5,5に対して近接するように、一方のチャック15Aを進出移動させて、シートSの端部を押圧固定する。即ち、一方の巻軸5の回転側の面にシートSの表面が押圧固定された状態で、他方の巻軸5の回転側の面にシートSの裏面が当接することになる。つまり、両巻軸5,5にシートSが斜めに掛け渡される。
【0019】
つぎに、図2の状態からテーブル1を反時計方向に半回転させると、図3に示すように、他方の巻軸5の周面に沿うようにシートSが巻回される。なお、この半回転時に、シートSが一方のチャック15Aを巻き込まないよう、該チャック15Aは、例えば回転軸方向に可動(退避可能)に構成されている。さらに、図4に示すように、テーブル1を反時計方向にもう半回転させると、一方の巻軸5の周面に沿うようにシートSが巻回される。なお、この半回転時に、シートSが他方のチャック15Bを巻き込まないよう、該チャック15Bは、例えば回転軸方向に可動(退避可能)に構成されている。
【0020】
そして、両巻軸5,5にシートSが巻回された時点で、テーブル1の回転を停止させた後、チャック15A,15Bを矢印の方向(巻軸5,5に対して近接する方向)に進出させて、シートSの両湾曲部の部位を接着(あるいは熱溶着)すると共に、巻き取り終端側のシートSを切断して巻芯20を製造する。なお、本実施形態においては、テーブル1を1回転させたが、2〜3回転であってもよい。
【0021】
この巻芯20は、図7(a)に示すように、シートSの一端部の内面側がシートSの所定箇所の外面側に接合する一方、シートSの他端部の内面側がシートSの別の所定箇所の内面側に接合しており、「6」の字をシートSの面に対して交差する方向から圧力を加えて扁平させた形状を呈している。そして、互いに異なる方向に略同じ大きさの湾曲部20a,20aが形成されると共に、シートSの環状となった部分の内部で斜めに掛け渡されるように配置されたシートSの部分が存在するので、巻芯の強度が向上する。
【0022】
その後、図5に示すように、図示しない送出手段によって、一対のシート状のセパレータ23を送出すると共に、該両セパレータ23,23の一端部が巻芯20の接合部Aに重ねて接合される。したがって、巻回されたシートSのテンションが維持される、換言すれば、長楕円の形状を維持するように常に外方向に張力が作用するので、巻芯20の強度がより一層向上する。
【0023】
その後、正電極21及び負電極22に対してセパレータ23,23が交互に介挿されるように、両電極21,22を送出する。この状態で、テーブル1を再度回転させ、両電極21,22及びセパレータ23を巻回して積層電極部材25を作製しつつ、テーブル1を数回転させて、前記巻芯20の周面に沿うように積層電極部材25を巻回して電池30を製造する(図6参照)。
【0024】
前記セパレータ23は、その厚さとしては、例えば20〜30μmで、材質としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレンのうちいずれかを選択できる。
【0025】
このようにして製造された電池30は、上述したように、巻芯20において、互いに異なる方向に突出するように湾曲部20a,20aが形成されることで、巻芯20の長軸方向から内方向の圧力に対する補強がなれる一方、接合箇所A,A間におけるシートSがシートSの環状となった部分の内部で斜めに掛け渡されるように配置されることで、巻芯20の短軸方向から内方向の圧力に対する補強がなされる。つまり、いずれの方向から圧力が加えられても、大きな強度が確保された電池30が製造されることになる。
【0026】
ここで、シートS及びセパレータ23の強度について、図8を参照して説明する。シートS及びセパレータ23のそれぞれにおいて、図8(a)に示すような矩形状のサンプルを作製し、図8(b)に示す試験装置に基づいて強度試験を行う。即ち、断面が三角形状の一対の支持台60,60を所定の間隔Lに配置し、両支持台60,60の頂部にサンプルを水平に載置する。この状態からシートS及びセパレータ23がどのくらい撓むのか、その撓み量Tを判定し、撓み量Tが小さい方を強度が大きいという。そして、本願発明では、セパレータ23よりもシートSの強度が大きい(撓み量が小さい)ことを要件としている。
【0027】
また、電池30は、高温で使用し続けたとしても、活物質の膨張収縮に起因する正電極及び負電極の撓みを抑制できると共に、この撓みによる電池の放電容量の低下も抑制できる。つまり、著しい性能向上が認められる。
【0028】
なお、前記実施形態の場合、シートSの一端部の内面側をシートSの所定箇所の外面側に接合する一方、シートSの他端部の内面側をシートSの別の所定箇所の内面側に接合する(図7(a)参照)ようにしたが、図7(b)に示すように、シートSの一端部の内面側をシートSの所定箇所の外面側に接合する一方、シートSの他端部の外面側をシートSの別の所定箇所の内面側に接合するようにしてもよい。
【0029】
また、前記実施形態の場合、両巻軸5,5の間にシートSを挿入して、一方の巻軸5でシートSの端部を押圧固定した状態で、テーブル1を回転させ、他方の巻軸5をシートSの裏面に押圧して、シートSを巻き取るようにしたが、図9に示すように、両巻軸5,5の間にシートSを挿入して、一方の巻軸5でシートSの表面を押圧すると共に、他方の巻軸5でシートSの裏面を押圧するようにして、例えば、少なくとも半回転させて、「S」又は「8」の字を上下方向から圧力を加えて扁平させた形状にするようにしてもよい(図11参照)。この場合、両巻軸5,5において、同一方向にシートSが巻回されて、両側に略同一形状の湾曲部200a,200aを有する巻芯200が製造される。この巻芯200は、両湾曲部200a,200aが互いに異なる方向に突出していると共に、両湾曲部200a,200aの異なる端部同士を繋ぐことで、この直線部分が両湾曲部200a,200aの間に位置するようになっている。よって、前記と同様に、外部からの圧力に対する補強と、極板の撓みの抑制とを実現できる。また、この場合、両巻軸5,5を独立して駆動するように制御し、一方の巻軸5でシートSの表面を押圧すると共に、他方の巻軸5でシートSの裏面を押圧するようにしてもよい。
【0030】
また、前記実施形態の場合、テーブル1の回転中心を挟んで一対の巻軸5,5を配置するようにしたが、図10に示すように、単体の長楕円の巻軸50を回転自在に設けて、該巻軸50の長軸方向に沿って溝50aを形成し、該溝50aにシートSを挿入した状態で、テーブル1を回転させるようにしてもよい。この場合も図9に示す巻芯200aが製造される。なお、図中の51は回転軸を示す。
【0031】
また、前記実施形態の場合、シートSを熱溶着によって接合したが、ホットメルト、テープのいずれを用いた接着により接合してもよい。
【0032】
また、前記実施形態の場合、電池の巻芯を製造するようにしているが、電池以外の他の用途に用いられる巻芯を製造するものであってもよい。
【符号の説明】
【0033】
1…テーブル、2,51…回転軸、5,50…巻軸、10…シート挿入手段、15…チャック、20,200…巻芯、20a,200a…湾曲部、21…正電極、22…負電極、23…セパレータ、25…積層電極部材、30…電池、50a…溝、60…支持台、A…接着部、L…距離、P…サンプル、T…撓み量、S…シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11