(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5867897
(24)【登録日】2016年1月15日
(45)【発行日】2016年2月24日
(54)【発明の名称】ロールペーパーホルダー
(51)【国際特許分類】
A47K 10/38 20060101AFI20160210BHJP
A47K 10/36 20060101ALI20160210BHJP
【FI】
A47K10/38 H
A47K10/36 Z
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-204478(P2011-204478)
(22)【出願日】2011年9月20日
(65)【公開番号】特開2013-63210(P2013-63210A)
(43)【公開日】2013年4月11日
【審査請求日】2014年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】眞鍋 実
(72)【発明者】
【氏名】長野 久
【審査官】
藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−041891(JP,A)
【文献】
特開2002−345677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 10/36
A47K 10/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロールペーパーの軸心を横にした状態で載置するストッパー兼載置部と該ストッパー兼載置部を載置する前記ストッパー兼載置部とは別体の載置部とを備え、前記ロールペーパーを前記ストッパー兼載置部上で転動させて前記ロールペーパーのペーパーを引き出し可能としたロールペーパーホルダーであって、
前記載置部は、壁面に沿って固定される固定部から前方に下り傾斜となると共に前記ストッパー兼載置部が載置される下降部と、この下降部の前方から昇り傾斜となると共に前記ストッパー兼載置部が載置される上昇部と、を備え、
前記ロールペーパーが接する前記下降部又は前記上昇部の水平面に対する傾斜角度が鉛直方向において下方になるほど大きくなる構成とし、
前記ストッパー兼載置部は、前記ロールペーパーが接触するスロープの山を備え、
前記ロールペーパーが接する前記スロープの山の水平面に対する傾斜角度が、鉛直方向において下方になるほど大きくなることを特徴とするロールペーパーホルダー。
【請求項2】
前記ストッパー兼載置部は、前記ロールペーパーの横方向の位置決めをすると共に側端に形成されたストッパー部を備えていることを特徴とする請求項1に記載するロールペーパーホルダー。
【請求項3】
前記載置部にはロールペーパーのストックが載置されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載するロールペーパーホルダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール状に巻回されたロールペーパーを載置し、そこから任意の量だけ引出されたペーパーを切断するためのロールペーパーホルダーに関するものであり、例えば、トイレ空間の壁面に取り付けてロールペーパーを保持・切断するのに利用可能なロールペーパーホルダーに関する発明である。
【背景技術】
【0002】
例えば、ロールペーパーとしてトイレで利用されているロールペーパーを保持・切断するのに現在最も汎用されているものは、ロール芯を回転可能に支持しておき、そのロールペーパーの上面に当接する紙切板の先端に設けられた切断歯によってペーパーを切断するタイプのものである。このロール芯を回転可能に支持するタイプにおいては、紙切板は、ロールペーパーに対して押さえつけられる構造であるため、切断時のみならず引出時にもロールペーパーに当接するものであり、切断時の押付け力を増そうとすれば引出時の抵抗が大きくなって、ペーパーが千切れてしまい、引出性が悪くなるものであり、切断性能と引出性能の両立が難しかった。
【0003】
そこで、ロールペーパーを載置する構成として、ロール芯を回転可能に支持してロールペーパーを載置する載置部と、載置部の前方に設けられた切断部と、を備えたロールペーパーホルダーが提案されている。特許文献1に記載されているロールペーパーホルダーは、ロールペーパーを載置する載置部の前方からペーパーを引出し、載置部の前方に設けられた切断歯によってペーパーを切断する構成であり、切断性能と引出性能の両立が図りやすく、しかも、載置部の前方に残ったペーパーが次回引出時の摘み代となるため使い勝手の良いものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−041891号公報(
図1、
図2参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この特許文献1に記載された載置式のロールペーパーホルダーにおいては、ロールペーパーが大きい状態でロールペーパーホルダーに載置されている場合、載置部の前方からペーパーを引き出す際に、ロールペーパーの自重によってロールペーパーの転動に対して大きな抵抗が発生してしまい、ペーパーを滑らかに引出すことができないとともにペーパーのカット性が悪くなることがあった。また、ロールペーパーが小さい状態でロールペーパーホルダーに載置されている場合、載置部の前方からペーパーを引出す際に、ロールペーパーが載置部の後方に向かって勢いよく転動し、載置部上のロールペーパーが不安定な状態となり、ペーパーを滑らかに引出すことができないとともにペーパーのカット性が悪くなることがあった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、ロールペーパーが大きくても小さくてもペーパーを引出す際にロールペーパーを安定状態に保ち、滑らかに引出すことが可能となるとともにペーパーのカット性を向上させたロールペーパーホルダーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1記載のロールペーパーホルダーでは、
ロールペーパーの軸心を横にした状態で載置するストッパー兼載置部と該ストッパー兼載置部を載置する前記ストッパー兼載置部とは別体の載置部とを備え、前記ロールペーパーを前記
ストッパー兼載置部上で転動させて前記ロールペーパーのペーパーを引き出し可能としたロールペーパーホルダーであって、前記載置部は、壁面に沿って固定される固定部から前方に下り傾斜となる
と共に前記ストッパー兼載置部が載置される下降部と、この下降部の前方から昇り傾斜となる
と共に前記ストッパー兼載置部が載置される上昇部と、を備え、前記ロールペーパーが接する前記下降部又は前記上昇部の水平面に対する傾斜角度が鉛直方向において下方になるほど大きくなる構成
とし、前記ストッパー兼載置部は、前記ロールペーパーが接触するスロープの山を備え、前記ロールペーパーが接する前記スロープの山の水平面に対する傾斜角度が、鉛直方向において下方になるほど大きくなることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、ロールペーパーが大きい状態でロールペーパーホルダーに載置されている場合、上昇部における水平面に対する傾斜角度が小さいので、
ストッパー兼載置部の前方からペーパーを引き出す際に、ロールペーパーの転動に対する抵抗が小さくなり、ペーパーを滑らかに引出すことが可能になるとともにペーパーのカット性を向上させることができる。また、ロールペーパーが小さい状態でロールペーパーホルダーに載置されている場合、下降部における水平面に対する傾斜角度が大きいので、
ストッパー兼載置部の前方からペーパーを引き出す際に、ロールペーパーの転動に対する抵抗が大きくなり、ロールペーパーが
ストッパー兼載置部の後方に向かって勢いよく転動しなくなり、
ストッパー兼載置部上のロールペーパーを安定状態に保つことができ、ペーパーを滑らかに引出すことが可能になるとともにペーパーのカット性を向上させることができる。
さらに、載置部に形成された複数の突出部が鉛直方向において下方になるほど傾斜角度が大きくなるので、ロールペーパーが大きい状態でもロールペーパーと突出部との接触面積が必要以上に大きくなることを防止し、ペーパー引出しの際により滑らかに引出すことが可能となる。
【0009】
請求項2記載のロールペーパーホルダーでは、
前記ストッパー兼載置部は、前記ロールペーパーの横方向の位置決めをすると共に側端に形成されたストッパー部を備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、
ロールペーパーが横方向おいて所定の位置からずれないように位置決めすることが可能となる。
また、載置部からスライドして来たロールペーパーが、使用時に逆戻りしないようにすることが可能となる。
【0011】
請求項3記載のロールペーパーホルダーでは、前記載置部にはロールペーパーのストックが載置されることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、スペアのロールペーパーが複数個収納可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のロールペーパーホルダーによれば、ロールペーパーが大きくても小さくてもペーパーを引出す際にロールペーパーを安定状態に保ち、滑らかに引出すことが可能となるとともにカット性の良いロールペーパーホルダーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明のロールペーパーホルダーの斜視図である。
【
図2】
図1においてロールペーパーを除いた状態を示す斜視図である。
【
図5】
図1におけるロールペーパーが大きい状態を表す主要拡大断面図である。
【
図6】
図1におけるロールペーパーが小さい状態を表す主要拡大断面図である。
【
図7】本発明のロールペーパーホルダーをトイレ空間に設置した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明におけるロールペーパーホルダー1の実施形態について図を用いて説明する。
図1は、本発明の実施形態のロールペーパーホルダー1の斜視図である。
図2は、
図1においてロールペーパーを除いた状態を表す斜視図である。本発明のロールペーパーホルダー1は、ロールペーパー2の軸心を横にした状態で載置している。ロールペーパーホルダー1の右端に使用されるロールペーパー2が配置され、ペーパー取り出し口11からペーパーが取り出し可能となっている。また、その使用されるロールペーパー2の左側にはスペアのロールペーパー2が複数個収納可能となっている。
【0016】
図1に示すように、カバー3の正面ペーパー取り出し口11の開口高さは、ロールペーパー2の空芯(38Φ)が飛び出さない高さ(35mm程度)とし、側壁部15の一部を切欠いた側面開口部12の開口高さは、ロールペーパー2の空芯が取り出せる高さかつ、盗難する意味の薄いなるべく小径に近い(50mm程度)とする。側面開口部12は、新品の糊付けされたロールペーパー2の端部をはがす際に、ロールペーパー2を回転させて端部を探すために指でつかむためのものでもあり、50mm程度が適切と考えられる。
【0017】
さらに、正面に設けたスライド用開口部13は、スペアのロールペーパー2を指でスライド移動させるためのものであるが、ロールペーパー2の紙端部が内部に入り込んだ状態でも、
図7に示すように便座14に座った状態から内部の状態を確認しやすくするためにペーパー取り出し口11上部まで開口され、確認用の窓を兼ねていることを特徴としている。
【0018】
図3は、
図1の分解斜視図である。ロールペーパーホルダー1の構成は、
ロールペーパーホルダー1のカバー3とロールペーパー2のストックを戴置するための戴置部4、使用されるロールペーパー2を載置し横ズレを防止するストッパー兼載置部5、紙切歯6を備えている。ストッパー兼載置部5は、ロールペーパー2が横方向おいて所定の位置からずれないように位置決めの機能を有しており、ロールペーパー2が
ストッパー兼載置部5を転動する際に摺動抵抗が大きくならないPP(ポリプロピレン)等で形成されることが好ましい。載置部
4は、トイレ壁面Wに沿って固定される固定部8から前方に下り傾斜となる下降部9と、下降部9の前方から昇り傾斜となり、前方に紙切歯6が設けられる上昇部10と、下降部9と上昇部10との側方に形成された側壁部15から構成される。下降部9と上昇部10は、固定部8側から手前側に連続して下るように傾斜している。尚、紙切歯6の材質は、ゴム系やエラストマー樹脂他の摩擦力の大きい材料が考えられ、ペーパーカット時には、ペーパーが横滑りするのを防止してカット性を良くするため、無数の突起部をランダムに配置することで引っ掛かり作用を持たせ、先端に設けた凹凸の紙切歯によってスムーズなカットができる。
【0019】
図4は、
図2のストッパー兼載置部5の拡大図である。具体的には、ストッパー兼載置部5は、ストッパー部5a、スロープの谷5b(凹側)、スロープの山5c(凸側)、を備えており、ストッパー部5aは載置部4からスライドして来たロールペーパー
2が、使用時に逆戻りしないように段差を設けている。ストッパー兼載置部5のスロープ部にスロープの谷5b(凹側)とスロープの山5c(凸側)とを設け、スロープの下側に行くに従ってロールペーパー
2との接触面が大きくなるように形成し、ロールペーパー
2が大きい時はスロープの山5c部と狭い面で接触することでペーパー引き出し時の抵抗を小さくし、ロールペーパー
2が小さくなるに従って接触面積を大きくすることでロールペーパーの引き出し抵抗を増し、ロールペーパー
2の
ストッパー兼載置部
5内での転動を抑えることで、引き出し性とカット時の安定性が両立できる。また、スロープの谷5b(凹側)はストックのロールペーパー
2を横にスライドした時にロールペーパー
2が引っ掛かることなくスムーズな移動ができるように、ストッパー部5aから見てなだらかな角度でスロープの山5c(凸側)へと連続した形状としている。
【0020】
図5は、
図1におけるロールペーパー2が大きい状態を表す主要拡大断面図である。本発明のロールペーパーホルダー1は、ロールペーパー2の軸心を横にした状態で載置するストッパー兼載置部5を備え、ロールペーパー2を
ストッパー兼載置部5上で転動させてロールペーパー2のペーパーを引き出し可能としたロールペーパーホルダー1であって、載置部
4は、壁面に沿って固定される固定部8から前方に下り傾斜となる下降部9と、この下降部の前方からのぼり傾斜となる上昇部10と、を備え、
ストッパー兼載置部5は、鉛直方向において下方になるほど傾斜角度大きくなり、ロールペーパー2との接触面積が大きくなる構成としている。それによって、ロールペーパー2が大きい状態でロールペーパーホルダー1に載置されている場合、
ストッパー兼載置部5の前方からペーパーを引出す際に、ロールペーパー2の転動に対して大きな抵抗が発生することなく、ペーパーを滑らかに引出すことが可能となるとともにカット性が向上できる。
【0021】
図6は、
図1におけるロールペーパー2が小さい状態を表す主要拡大断面図である。ロールペーパー2が小さい状態でロールペーパーホルダー1に載置されている場合、
ストッパー兼載置部5の前方からペーパーを引出す際に、ロールペーパー2の転動に対して大きな抵抗が発生するため、ロールペーパー2が
ストッパー兼載置部
5の後方に向かって勢いよく転動することがなくなり、
ストッパー兼載置部5上のロールペーパーが安定な状態でペーパーを滑らかに引出すことが可能となる。
【0022】
図5、
図6で説明してきたように、ロールペーパー
2が大きい状態と小さい状態では、鉛直方向において下方になるほど傾斜角度が大きくなるとともに、ロールペーパー2と
ストッパー兼載置部
5との接触面積が大きくなる構成としている。
図5の状態における水平面に対する傾斜角度αは概ね37度で、水平面に対する傾斜角度βが概ね30度で接触面積が概ね0.72平方センチである。
図6の状態における水平面に対する傾斜角度α’は概ね60度で、水平面に対する傾斜角度β’が概ね45度で接触面積が概ね9平方センチである。
【0023】
以上、本発明について実施形態を通して説明してきたが、本発明は、載置部4、
ストッパー兼載置部5の上方は、カバー3や蓋部材を有さない開放された空間であっても良い。そうすれば、ロールペーパー2を載置部4にセットする際に、カバー3を外したり蓋部材を開閉する必要がなく、片手で簡単にセットすることができるようになる。また、本発明は、ロールペーパーホルダー1の右端に使用されるロールペーパー2が配置され、ペーパー取り出し口11からペーパーが取り出し可能となっているものに限定されるものではなく、本発明の技術思想から逸脱しない範囲で適宜設計変更をしてもよい。また、本発明は、その使用されるロールペーパー2の左側にはスペアのロールペーパー2が複数個収納可能となっているものに限定されるものではなく、使用されるロールペーパー2のみ収納可能となっているものでもよく、本発明の技術思想から逸脱しない範囲で適宜設計変更をしてもよい。
【符号の説明】
【0024】
1…ロールペーパーホルダー
2…ロールペーパー
3…カバー
4…戴置部
5…ストッパー兼載置部
6…紙切歯
8…固定部
9…下降部
10…上昇部
11…ペーパー取り出し口
12…側面開口部
13…スライド用開口部
14…便座
15…側壁部