特許第5868020号(P5868020)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5868020
(24)【登録日】2016年1月15日
(45)【発行日】2016年2月24日
(54)【発明の名称】圧縮機ロータ用バランスドラム構成
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/42 20060101AFI20160210BHJP
   F04D 17/12 20060101ALI20160210BHJP
   F04D 29/051 20060101ALI20160210BHJP
【FI】
   F04D29/42 L
   F04D17/12
   F04D29/051
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-98839(P2011-98839)
(22)【出願日】2011年4月27日
(65)【公開番号】特開2011-236902(P2011-236902A)
(43)【公開日】2011年11月24日
【審査請求日】2014年4月17日
(31)【優先権主張番号】CO2010A000025
(32)【優先日】2010年5月11日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】505347503
【氏名又は名称】ヌオーヴォ ピニォーネ ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(72)【発明者】
【氏名】デニ・ギローム・ジャン・グエルナール
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−072292(JP,A)
【文献】 特開昭64−029693(JP,A)
【文献】 特開2004−108336(JP,A)
【文献】 特開2001−041191(JP,A)
【文献】 特開2005−330878(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/112064(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/42
F04D 17/12
F04D 29/051
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
ロータと、
第1の圧縮機セクションと、
第2の圧縮機セクションと、
前記ロータに接続され、前記第1の圧縮機セクションと前記第2の圧縮機セクションとの間に配置された第2のバランスドラムと、
を備え、
前記第1の圧縮機セクションが、
プロセスガスを前記第1の圧縮機セクションに供給するよう構成された第1の入口ダクトと、
加圧されたプロセスガスを前記第1の圧縮機セクションから外に供給するよう構成された第1の出口ダクトと、
前記第1の入口ダクトと前記第1の出口ダクトとの間で前記ロータに接続された少なくとも1つの第1のインペラと、
前記ロータに接続され、前記第1の入口ダクトと前記ロータとの間で少なくとも部分的に配置された第1のバランスドラムと、
を含み、
前記第2の圧縮機セクションが、
プロセスガスを前記第2の圧縮機セクションに供給するよう構成された第2の入口ダクトと、
加圧されたプロセスガスを前記第2の圧縮機セクションから外に供給するよう構成された第2の出口ダクトと、
前記第2の入口ダクトと前記第2の出口ダクトとの間で前記ロータに接続された少なくとも1つの第2のインペラと、

を含み、
前記第1の入口ダクトの第1の容積は前記第2の入口ダクトの第2の容積よりも大きく、
前記第2の出口ダクトと前記ロータとの間に配置されたバランスドラムを有しない、
多段圧縮機。
【請求項2】
前記ロータが一体型ロータである、請求項1に記載の多段圧縮機。
【請求項3】
前記ロータが、複数のセグメントから構成されるスタックロータである、請求項1に記載の多段圧縮機。
【請求項4】
前記複数のセグメントが共にボルト締結されたフランジを含む、請求項3に記載の多段圧縮機。
【請求項5】
前記フランジの1つが、前記第1のバランスドラムとして機能するよう構成される、請求項4に記載の多段圧縮機。
【請求項6】
前記ロータを回転可能に支持するため前記ロータの各端部にある少なくとも1つの軸受と、
前記少なくとも1つの軸受と、前記少なくとも1つの第1のインペラ及び前記少なくとも1つの第2のインペラのそれぞれとの間に配置された少なくとも1つの乾式ガスシールと、
を更に備える、請求項1から5のいずれかに記載の多段圧縮機。
【請求項7】
前記少なくとも1つの乾式ガスシールの各々が負圧圧力において作動する、請求項6に記載の多段圧縮機。
【請求項8】
前記第1の入口ダクトが、前記第1のバランスドラムを前記第1の入口ダクトと前記ロータとの間に配置可能に適合される、請求項1から7のいずれかにに記載の多段圧縮機。
【請求項9】
プロセスガスを前記第1の圧縮機セクションに供給するよう構成された第1の入口ダクトと、
加圧されたプロセスガスを前記第1の圧縮機セクションから外に供給するよう構成された第1の出口ダクトと、
を備える第1の圧縮機セクションを作製する段階と、
前記第1の入口ダクトと前記第1の出口ダクトとの間で少なくとも1つの第1のインペラをロータに接続する段階と、
第1の入口ダクトと前記ロータとの間で少なくとも部分的に配置された第1のバランスドラムを前記ロータに接続する段階と、
プロセスガスを前記第2の圧縮機セクションに供給するよう構成された第2の入口ダクトと、
加圧されたプロセスガスを前記第2の圧縮機セクションから外に供給するよう構成された第2の出口ダクトと、
を備える第2の圧縮機セクションを作製する段階と、
前記第2の入口ダクトと前記第2の出口ダクトとの間で少なくとも1つの第2のインペラを前記ロータに接続する段階と、
前記第1の圧縮機セクションと前記第2の圧縮機セクションとの間で第2のバランスドラムを前記ロータに接続する段階と、
を含み、
前記第1の入口ダクトの第1の容積は前記第2の入口ダクトの第2の容積よりも大きく、
前記第2の出口ダクトと前記ロータとの間に配置されたバランスドラムを有しない、
圧縮機を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される主題の実施形態は、全般的に、方法及びシステムに関し、圧縮機ロータをバランス調整するための機構及び技術に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機は、機械的エネルギーを使用することによって、例えばガスなどの加圧流体の圧力を増大させる機械である。圧縮機は、ガスタービンエンジンの最初の段としての作動を含む、幾つかの異なる用途で使用される。ガスタービンエンジン自体は、発電、天然ガス液化及び他のプロセスを含む、多くの産業プロセスで使用される。このようなプロセス及びプロセスプラントで使用される種々のタイプの圧縮機のうちの1つは、いわゆる遠心圧縮機であり、ここでは、機械的エネルギーは、例えば、ガスが通過する遠心インペラ又はロータを回転させることによりガス粒子を加速する遠心加速度を介して、圧縮機へのガス入力に作用する。
【0003】
遠心圧縮機は、単一のインペラ又は段、すなわち単一段構成を備え、或いは、複数の段を直列に備えることができ、この場合、これらは多段圧縮機と呼ばれることが多い。また、多段圧縮機の特定のサブ系列には、圧縮機流の全体が圧縮機から抽出されて冷却され、次いで圧縮機に再注入されるように構成された多セクション多段圧縮機が含まれる。
【0004】
ほとんどの場合、この多段圧縮機のサブ系列のセクション数は2つに制限され、この2つのセクションは、第1のセクションのインペラに対する第2のセクションのインペラの相対的向きに応じて、インライン構成か又は逆並列構成の何れかで配列することができる。
【0005】
遠心圧縮機の段の各々は典型的には、加圧されることになるガスの入口導管と、入力ガスに運動エネルギーを提供することができるインペラ又はホイールと、ステータと呼ばれ、ロータから出るガスの運動エネルギーを圧力エネルギーに変換する出口システムとを含む。複数のステータ構成要素の構成を用いることができ、最も一般的なものは、ベーン無しディフューザ、ベーン付きディフューザ戻りチャンネル、吐出スクロール又はプレナム、或いはこれらの構成の組み合わせである。個々のインペラ及びその関連するステータ構成要素の組み合わせは典型的には、段と呼ばれる。
【0006】
多段遠心圧縮機は、段にわたる差圧及び水平方向から垂直方向に転回するガスの運動量の変化によって引き起こされるロータ上の軸方向スラストに曝される。この軸方向スラストは、通常、バランスピストン及び軸方向スラスト軸受により補償される。軸方向スラスト軸受は、ロータのスラスト全体によって装荷することができないので、バランスピストンは、スラストの大部分について補償するよう設計され、何らかの残りの残留スラストの処理を軸受に任せるようにする。バランスピストンは通常、圧縮機シャフトに取り付けられる回転ディスク又はドラムとして実装され、バランスディスク又はドラムの各側部が作動中に異なる圧力に曝されるようになる。バランスピストンの直径は、残留負荷が軸方向軸受に過負荷を加えるのを避けるための望ましい軸方向負荷を有するように選択される。従来のオイル潤滑式軸受は、典型的には、異常(例えば、サージング)条件中に生じることが見込まれる最大残留軸方向スラストのおよそ4倍の軸方向スラスト力に耐えるよう設計されている。
【0007】
しかしながら、圧縮機作動中のガスの条件が変化したとき、又は圧縮機が不作動であるが加圧されているときには、単一のバランスピストンにより与えられる補償は、軸受の過負荷を避けるのには不十分な可能性がある。全ての多段圧縮機は、通常、圧縮機の1つのセクションに関しては圧力が一定/均一であるが、あるセクションと別のセクションとでは異なる可能性があるような過渡的状況(場合によっては、「過渡的な調定圧力」とも呼ばれることがある)の下でバランス調整を可能にする圧縮セクションが存在するのと同じ数のバランスドラムを備える。
【0008】
従って、例えば、逆並列遠心圧縮機では、第2のバランスピストンは、典型的には、圧縮機の逆並列セクション間に設けられ、2つの圧縮機セクションにより共用されるロータに沿った軸方向スラストの追加の補償を可能にする。しかしながら、第2のバランスピストンを設けることには、圧縮機の軸方向長さが全体として増大するという欠点があり、このことは、圧縮機の軸方向長さが全体として大きくなることで装置の安全性を損ない、及び/又は単一の装置に一体化される可能性がある圧縮機段の数が少なくなるので不利である。
【0009】
従って、既存のバランス調整システムの上述の欠点に対処した、このような圧縮機における動的スラストのバランス調整のための方法及びシステムを設計し提供することが望ましいことになる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
例示的な実施形態によれば、逆並列圧縮機は、ハウジングと、ロータと、第1の圧縮機セクションと、を備え、該第1の圧縮機セクションが、プロセスガスを第1の圧縮機セクションに供給するよう構成された第1の入口ダクトと、加圧されたプロセスガスを第1の圧縮機セクションから外に供給するよう構成された第1の出口ダクトと、第1の入口ダクトと第1の出口ダクトとの間でロータに接続された少なくとも1つのインペラと、ロータに接続され且つ第1の入口ダクトとロータとの間で少なくとも部分的に配置された第1のバランスドラムと、を含み、逆並列圧縮機が更に、第2の圧縮機セクションを備え、該第2の圧縮機セクションが、プロセスガスを第2の圧縮機セクションに供給するよう構成された第2の入口ダクトと、加圧されたプロセスガスを第2の圧縮機セクションから外に供給するよう構成された第2の出口ダクトと、第2の入口ダクトと第2の出口ダクトとの間でロータに接続された少なくとも1つのインペラと、ロータに接続され且つ第1の圧縮機セクションと第2の圧縮機セクションとの間に配置された第2のバランスドラムと、を含み、第1の入口ダクトの第1の容積は第2の入口ダクトの第2の容積よりも大きい。
【0011】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、圧縮機を製造する方法は、第1の圧縮機セクションを作製する段階を含み、該第1の圧縮機セクションが、プロセスガスを第1の圧縮機セクションに供給するよう構成された第1の入口ダクトと、加圧されたプロセスガスを第1の圧縮機セクションから外に供給するよう構成された第1の出口ダクトと、を備え、本方法が更に、第1の入口ダクトと第1の出口ダクトとの間で少なくとも1つの第1のインペラをロータに接続する段階と、第1の入口ダクトとロータとの間で少なくとも部分的に配置された第1のバランスドラムをロータに接続する段階と、第2の圧縮機セクションを作製する段階と、を含み、該第2の圧縮機セクションが、プロセスガスを第2の圧縮機セクションに供給するよう構成された第2の入口ダクトと、加圧されたプロセスガスを第2の圧縮機セクションから外に供給するよう構成された第2の出口ダクトと、を備え、第1の入口ダクトの第1の容積は第2の入口ダクトの第2の容積よりも大きく、本方法が更に、第2の入口ダクトと第2の出口ダクトとの間で少なくとも1つの第2のインペラをロータに接続する段階と、第1の圧縮機セクションと第2の圧縮機セクションとの間で第2のバランスドラムをロータに接続する段階と、を含む。
【0012】
本発明の更に別の例示的な実施形態によれば、回転機械は、回転機械の要素を収容するよう構成されたハウジングと、回転機械の要素の少なくとも一部を回転させるよう構成されたロータと、回転機械にプロセスガスを供給するよう構成された入口ダクトと、回転機械から加圧されたプロセスガスを供給するよう構成された出口ダクトと、入口ダクトと出口ダクトとの間でロータに接続され、且つプロセスガスを加圧するよう構成された少なくとも1つのインペラと、ロータに接続され、入口ダクトとロータとの間で少なくとも部分的に配置され、且つ軸方向スラストをバランス調整するよう構成されたバランスドラムと、を含む。
【0013】
本明細書に組み込まれ且つその一部を構成する添付図面は、1つ又はそれ以上の実施形態を例証しており、本明細書と共にこれらの実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】圧縮機の概略図。
図2】圧縮機に関連する軸方向スラストを示す図。
図3】従来の逆並列圧縮機の部分切り欠き図。
図4】例示的な実施形態による、再配置されたバランスドラムを有する逆並列圧縮機の部分切り欠き図。
図5】例示的な実施形態による、バランスドラムの再配置とバランスドラムが配置される第1の入口ダクトの適合を示す図。
図6】例示的な実施形態に従って使用できるボルト締めロータ構成の図。
図7】例示的な実施形態による、ボルト締めロータ構成を用いた圧縮機における再配置バランスドラムを示す図。
図8】例示的な実施形態による、圧縮機を製造するための方法を例示するフローチャート。
図9(a)】従来のインライン圧縮機の1つの段を示す図。
図9(b)】例示的な実施形態による、インライン圧縮機の1つの段を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
例示的な実施形態の以下の説明では添付図面を参照する。異なる図面における同じ参照符号は同じ又は同様の要素とみなしている。以下の詳細な説明は本発明を限定するものではない。代わりに、本発明の範囲は、添付の請求項によって定義される。以下の実施形態は、簡単にするために、多段遠心圧縮機の用語及び構造に関して検討される。しかしながら、次に検討されることになる実施形態は、この圧縮機に限定されず、他のタイプの圧縮機、タービン、ポンプ、その他にも適用することができる。
【0016】
本明細書を通して「一実施形態」又は「実施形態」として言及することは、実施形態に関連して説明される具体的な特徴、構造、又は特性が、開示される主題の少なくとも一つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書全体を通じて様々な箇所で表現「1つの実施形態では」又は「ある実施形態では」が出現するが、必ずしも同じ実施形態について言及している訳ではない。更に、具体的な特徴、構造、又は特性は、1つ又はそれ以上の実施形態においてあらゆる好適な様態で組み合わせてもよい。
【0017】
これらの例示的な実施形態によるスラストバランス調整システムに関する後続の検討において一部の関連状況を提供するために、図1は、多段遠心圧縮機10を概略的に示している。ここでは、圧縮機10は、複数の遠心インペラ16を備える回転圧縮機シャフト14が内部に装着されたボックス又はハウジング(ステータ)を含む。ロータ組立体18は、シャフト14及びインペラ16を含み、ロータ組立体18の何れかの側部上に配置される軸受20を通じて半径方向及び軸方向に支持される。
【0018】
多段遠心圧縮機は、入口ダクト22から入力プロセスガスを受け取り、ロータ組立体18の作動によってプロセスガスの圧力を増大させ、続いて該プロセスガスを入力圧力よりも高い出力圧力で出口ダクト24を通じて放出するよう機能する。プロセスガスは、例えば、二酸化炭素、硫化水素、ブタン、メタン、エタン、プロパン、液化天然ガス、又はこれらの組み合わせのうちの何れかとすることができる。ロータ16と軸受20との間には、軸受20へのプロセスガスの流れを阻止するためにシールシステム26が設けられる。ハウジング12は、遠心圧縮機10からのガスの漏れを防ぐために軸受20及びシールシステム26の両方を覆うように構成される。軸受20は、オイル潤滑式軸受又は能動型磁気軸受の何れかとして実施することができる。軸受20として能動型磁気軸受が使用される場合、シール聞こう26は省略することができる。
【0019】
遠心圧縮機10はまた、前述のバランスピストン(ドラム)28と、その対応するラビリンスシール30とを含む。バランスライン32は、入口ダクト22を介して流入するプロセスガスと同じ(又は実質的に同じ)圧力で外寄り側のバランスチャンバ34内の圧力を維持する。
【0020】
また、図1に示す種々の要素は、図2を検討することにより遠心圧縮機における軸方向荷重に一般に関連付けられるので、これらの要素の相互作用を説明することは有用である。ここで、遠心圧縮機10の作動に関連する種々の軸方向荷重力は、概念的に例証される。図2に示すように、インペラ16は、例えば、段間の差違、ガス運動量の変化、その他に起因して圧縮機10の内寄り(低圧)側の方向で軸受20に軸方向荷重(力)を加える。図2には示されていないが、圧縮機シャフト18を回転させるモータは、反対方向で、すなわち、圧縮機10の外寄り(高圧)側に向かって軸方向荷重(実質的に一定の)を加える。インペラ16の残りの軸方向荷重を打ち消すために、バランスドラム28は、外寄り方向の軸方向力を加えるように設計され、その大きさは、インペラの予想される軸方向荷重からモータの軸方向荷重を差し引いたものである。これは、例えば、バランスドラム28の内寄り側上のプロセスガスの圧力Puがバランスドラム28の外寄り側上のプロセスガスの圧力Peよりも大きいように、システムを設計することによって、及び所望のバランス力を生成するよう適切なサイズ(直径)のバランスドラムを選択することによって達成される。圧力の不均衡は、バランスチャンバの圧力がインペラ16の内寄り側と実質的に同じであるように、バランスチャンバ34と入口ダクト22に関連する主吸込みラインとの間にバランスライン32を設けることにより生成され維持される。
【0021】
上記で例示し検討した構成は、いわゆる「直線状」圧縮機構成を伴い、ここではプロセス又は作動ガスは、ハウジング12の一方端で入口ダクト22を介して流入し、ハウジング12の他端部で出口ダクト24を介して流出する。しかしながら、背景技術の段落で述べたように、利用される場合がある別の圧縮機構成は、2つの実質的に独立した圧縮機が単一のロータ18を共用する、いわゆる「逆並列」圧縮機構成であり、その実施例が図3に示される。この場合、圧縮機の中央付近に入口ダクト38及び出口ダクト40を有する第1の圧縮機セクションを含む逆並列圧縮機33の内側機構を明瞭にするため、ハウジング34の上半部分が切り取られている。第1のセクションにおける入口ダクト38と出口ダクト40との間には、上述のように作動ガスを加圧するよう機能する3つのインペラ段42、44、及び46がある。同様に、第2の圧縮機セクション48は、入口ダクト50と出口ダクト52とを有し、該出口ダクトはまた、圧縮機33の中央部に近接し、3つのインペラ56、60、及びこれらの間に関連付けられる58を有する。典型的には、入口ダクト50は、流れが冷却された後に第1のセクション36の出口ダクト40に接続され、ガスの圧縮プロセスが第2のセクションの出口ダクト52まで継続する。
【0022】
直線状単一セクション圧縮機10とは異なり、逆並列圧縮機33は、同じ直径(又は実質的に同じ)の2つのバランスピストン又はドラムを有し、バランス調整されたロータ62を提供する。このことは、少なくとも1つには、特に圧縮機33が停止又はスタンバイモードであるときに、2つの圧縮機セクション36及び48がこれらに付随する異なる差圧を有していることに起因する。第1のバランスピストン又はドラム64は、第2の圧縮機セクションの入口ダクト50の下に配置され、第2のバランスピストン又はドラム66は、第1の圧縮機セクション36と第2の圧縮機セクション48との間の圧縮機33の中央に配置される。作動時には、バランスドラム64は、その表面の一方では、第2の圧縮機セクション48の負圧を受け、バランスドラム64の他の面は、該面がバランスラインと呼ばれる外部パイプを介して第1のセクション入口38に接続されていることに起因して、第1の圧縮機セクション36の負圧を受けることになる。第1及び第2のバランスドラム64、66の両方がロータ62と共に回転する。背景技術の段落で述べたように、逆並列構成におけるこの第2のバランスピストン又はドラムの追加によって、圧縮機33の軸方向長さが増大し、これは一般に望ましいことではない。
【0023】
第1のバランスピストン64はまた、圧縮機33の軸方向長さの増大の一因となる。例えば、インペラ58及び60間の距離に関連するスパンの軸方向長さをL1に設計されている場合、インペラ60と第1のバランスピストン64との間の標準的距離L2は、典型的にはL1のおよそ1.5から2倍である。従って、バランスピストン又はドラム64、66に関連する軸方向長さの量が低減された新規の構成を考慮することが望ましいことになる。
【0024】
例示的な実施形態によれば、これは、例えば、第1のバランスピストン又はドラム64を図3に示す第2の入口ダクト50に近接した標準的位置から、図4に示す第1の入口ダクト38に近接した新しい位置に移動させることによって達成することができる。図4では、例示的な実施形態による逆並列圧縮機80が例示され、ここでは図3に関して上記で説明された同じ又は同様の要素を説明するために、同じ参照符号が使用されている。しかしながら、第1のバランスドラム82はここでは第1の入口ダクト38よりも下方に存在し(第2の入口ダクト50の下方から移動している)、第1のバランスドラム82がここでは第1の入口ダクト38とロータ62との間に配置されるようになっていることは理解されるであろう。第1の入口ダクト38は、第2の入口ダクト50よりも大きな容積を有する点で該第2の入口ダクト50と区別することができる。加えて、ロータ62を回転させるモータ(図示せず)は、典型的には回転機械80の第2のセクションの側部に位置付けられる。第2のバランスドラム66は、依然として第1及び第2の圧縮機セクション間に配置される。
【0025】
第2のバランスドラムを位置決めし直すことによって、ロータ62の全体の軸方向長さが低減される。例えば、第2のバランスドラムを図3に示す位置から図4に示す位置に移動させることによって、第2のバランスドラムの軸方向長さの約2/3を節減できると推測される。純粋に例示的な実施例として、これは、軸方向長さ1515mmを有するロータ62上で約40mmに等しく(軸方向長さのうちの60mmを要するバランスドラムにおいて)、これにより圧縮機の安全性が向上し、更に、圧縮機の全体の軸方向サイズが縮小するか、或いは他の要素が軸方向スペースを利用可能になる。
【0026】
図5で分かるように、図4の例示的な実施形態と図3のバランスドラム構成との間の別の相違点は、バランスドラム82の外側側部はバランスライン90を介して第2の入口ダクト50の負圧(圧力)に接続され、ドラム64の外側側部は、第1の入口ダクト38の負圧(圧力)に接続される。これは、例示的な実施形態によれば、ロータ62の両端部上に配置された乾式ガスシール26の両方が、従来構成のように第1の入口ダクト38の負圧ではなく、第2の入口ダクト50の負圧で作動することを意味している。乾式ガスシールは、第2の入口ダクト50の高い圧力で作動するので、この特徴は、例えば大気圧又はより低い圧力(すなわち第1の入口38)で作動する第1の圧縮機セクションを有する圧縮機において有利であり、或いは、第2のセクション48の負圧入口50にて極めて高い圧力で作動する圧縮機の場合には不利とすることができる。図5にはまた、図中に「X」で表記された第2の入口ダクトに近接したスペースから第1のバランスドラムを移動させ、これに応じて図中に矢印で表記される軸方向スペース利用の削減が示されており、更に、圧縮機の第1のセクションの入口ダクト92は、バランスドラム82を圧縮機のこの側部上に配置できるような形状にされ、或いは構成されていることが理解できる。
【0027】
図4及び5の例示的な実施形態に関して上記で示したように、一部の逆並列遠心圧縮機は、一体的、すなわち単一構成のロータを利用している。しかしながら、別の例示的な実施形態によれば、圧縮機のような機械のロータは、複数の要素を含むことができ、その実施例が図6に示される。この場合、中実の第1のロータ部品160は、第1のインペラ144に取り付けられるよう構成される。中実の第1のロータ部品160と第1のインペラ144との間の接合部162は、該中実の第1のロータ部品160と第1のインペラ144との間の接続を達成するための種々の要素を含むことができる。例えば、図6に示すように、接合部162は、第1のロータ部品160に取り付けられるフランジ164と、第1のインペラ144に取り付けられるフランジ166とを含むことができる。フランジ164及び166は、互いに取り付けられるように構成される。例示的な実施形態によれば、フランジ164及び166は、1つ又はそれ以上の孔168及び170を有し、ここに1つ又はそれ以上のボルト172が提供される。ボルト172は、フランジ166の孔170内部の対応するネジ付き領域にネジ止めされるネジ付き領域を有することができる。ボルト172の端部174は、例えば、孔168の第1の部分により大きな直径でドリル加工することにより、孔168で完全に収容することができる。或いは、ボルト172の端部174は、フランジ164の外側にあってもよい。
【0028】
このボルト締結のフランジ構成を有するいわゆるスタック式ロータを利用すると、バランスドラム200のうちの1つはまた、図4及び5に関して説明され、図7に示されるようにして第1の入口ダクト202に近接して装着することができる。この場合、接続フランジ204は、バランスドラム200と第1の入口ダクト202との間に配置されることは理解できる。例示的な実施形態によれば、フランジ164、166、202のうちの1つは、第1の入口ダクト38、92の下に配置されたバランスドラムとして機能するよう構成する(例えば、バランスドラム66の直径と同じ又は実質的に同じ直径であるような寸法にされる)ことができる。
【0029】
その上、例示的な実施形態は更に、例えば図8のフローチャートに示すように、このような逆並列圧縮機の製造方法を含む。この場合、逆並列圧縮機の製造方法は、第1の圧縮機セクションにプロセスガスを供給するよう構成された第1の入口ダクトと、第1の圧縮機セクションから外に加圧プロセスガスを供給するよう構成された第1の出口ダクトとを有する第1の圧縮機セクションを作製するステップ(ステップ800)と、第1の入口ダクトと第1の出口ダクトとの間でロータに少なくとも1つの第1のインペラを接続するステップ(ステップ802)と、第1の入口ダクトと上記ロータとの間に少なくとも部分的に配置された第1のバランスドラムをロータに接続するステップ(ステップ804)とを含む。第2の圧縮機セクションにプロセスガスを供給するよう構成された第2の入口ダクトと、第2の圧縮機セクションから外に加圧プロセスガスを供給するよう構成された第2の出口ダクトとを含み、第1の出口ダクトの第1の負圧圧力が第2の入口ダクトの第2の負圧圧力よりも大きい第2の圧縮機セクションが作製される(ステップ806)。第2の入口ダクトと第2の出口ダクトとの間で少なくとも1つの第2のインペラがロータに接続される(ステップ808)。第2のバランスドラムがロータに接続され、第1の圧縮機セクションと第2の圧縮機セクションとの間に配置される(ステップ810)。図8に例示したステップは、必ずしも記載され説明した順序で実施する必要はない点は、当業者であれば理解されるであろう。
【0030】
開示された例示的な実施形態は、例えば、逆並列圧縮機に関連するロータをバランス調整するシステム及び方法を提供する。本明細書は本発明を限定することを意図していない点は理解されたい。逆に、例示的な実施形態は、添付の請求項によって定義される本発明の技術的思想及び範囲に含まれる、代替形態、修正形態、及び均等形態を保護するものとする。例えば、本明細書で説明される反転バランスドラム方向と併せて、インライン構成も使用することができる。図9(a)は、バランスドラム900がインペラ904の吐出側でロータ902上に配置された従来のインライン圧縮機の1つの段を示している。ここで乾式ガスシール906は、負圧圧力Psを備える。対照的に、図9(b)に描いたインライン圧縮機の例示的な実施形態によれば、バランスドラム910は、インペラの徒手津川ではなく、ボルト締結フランジ構成912の一部としてインペラ904の入口又は負圧側面に移動される。図9(b)の例示的な実施形態において、乾式ガスシールは、吐出圧力Pdを備える。詳細には、図9(b)の例示的な実施形態によるこのような構成は、低圧/低温圧縮機において望ましいとすることができる。図9(b)は、1つの圧縮機のみを示しているが、1からn(nは任意の整数)個の段を設けることができる点は理解されるであろう。
【0031】
更に、例示的な実施形態の詳細な説明において、請求項に記載された本発明を包括的に理解するために多数の具体的な詳細事項が記載されている。しかしながら、種々の実施形態はこのような具体的な詳細事項がなくとも実施できる点は当業者であれば理解されるであろう。
【0032】
本発明の例示的な実施形態の特徴及び要素は、特定の組み合わせで実施形態において説明したが、各特徴又は要素は、実施形態の他の特徴及び要素を伴わず単独で、或いは本明細書で開示される他の特徴及び要素の有無に関わりなく種々の組み合わせで用いることができる。
【0033】
本明細書は、開示される主題の実施例を用いて、あらゆる当業者があらゆるデバイス又はシステムを実施及び利用すること及びあらゆる包含の方法を実施することを含む本発明を実施することを可能にする。本発明の特許保護される範囲は、請求項によって定義され、当業者であれば想起される他の実施例を含むことができる。このような他の実施例は、請求項の範囲内にあるものとする。
【符号の説明】
【0034】
38 第1の入口ダクト
50 第2の入口ダクト
62 ロータ
64 ドラム
82 バランスドラム
90 バランスライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9(a)】
図9(b)】