(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5868041
(24)【登録日】2016年1月15日
(45)【発行日】2016年2月24日
(54)【発明の名称】ハイドロスタティック式のアキシャルピストン機械
(51)【国際特許分類】
F03C 1/253 20060101AFI20160210BHJP
F04B 1/20 20060101ALI20160210BHJP
【FI】
F03C1/253
F04B1/20
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-147358(P2011-147358)
(22)【出願日】2011年7月1日
(65)【公開番号】特開2012-13088(P2012-13088A)
(43)【公開日】2012年1月19日
【審査請求日】2014年4月14日
(31)【優先権主張番号】10 2010 025 910.1
(32)【優先日】2010年7月2日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513139909
【氏名又は名称】リンデ ハイドロリックス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Linde Hydraulics GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ベルクマン
(72)【発明者】
【氏名】ローベアト シュロッサー
【審査官】
田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−120529(JP,A)
【文献】
特開平11−241674(JP,A)
【文献】
特開平07−180653(JP,A)
【文献】
特開平09−068155(JP,A)
【文献】
特開平07−167044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03C 1/253
F04B 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイドロスタティック式のアキシャルピストン機械、特にアキシャルピストンモータであって、回転可能なシリンダブロックが設けられており、該シリンダブロックが、シリンダブロックボデーとシリンダブロックカラーとを有しており、駆動軸が設けられており、前記シリンダブロックボデーに、長手方向摺動可能なピストンを内部に備えた複数のピストン用切欠きが配置されており、前記ピストンが斜板に支持されており、前記シリンダブロックボデーにおいて張り出した、前記斜板の方向に延びるシリンダブロックカラーと、前記駆動軸との間に、連行歯列(20)が形成されており、該連行歯列(20)は、前記駆動軸(14)の外周面に設けられた楔形成形部材(30)と、前記シリンダブロック(3)の内周面に設けられた、前記楔形成形部材(30)を収容する長手方向溝(31)とから成っており、前記シリンダブロックに作用するブレーキ装置が設けられている形式のものにおいて、
シリンダブロックカラー(3b)の領域に設けられた連行歯列(20)に加えて付加的に、シリンダブロックボデー(3a)の軸方向延在部内に別の連行歯列(21)が形成されており、シリンダブロックボデー(3a)の領域に設けられたこの別の連行歯列(21)が、シリンダブロックカラー(3b)の領域に設けられた連行歯列(20)に比べて、拡大された歯列遊び(SF)を有しており、該歯列遊び(SF)は、別の連行歯列(21)の軸方向領域(c)にわたって一定であり、
別の連行歯列(21)は、前記連行歯列(20)の故障又は前記シリンダブロックカラー(3b)の破断により前記連行歯列(20)に欠陥が生じた場合に係合状態にもたらされることを特徴とする、ハイドロスタティック式のアキシャルピストン機械。
【請求項2】
シリンダブロックボデー(3a)の領域に設けられた別の連行歯列(21)が、シリンダブロックカラー(3b)の領域に設けられた連行歯列(20)から軸方向で分離されている、請求項1記載のハイドロスタティック式のアキシャルピストン機械。
【請求項3】
シリンダブロックボデー(3a)の領域に設けられた別の連行歯列(21)が、シリンダブロックカラー(3b)の領域に設けられた連行歯列(20)に、軸方向で隣接して形成されている、請求項1記載のハイドロスタティック式のアキシャルピストン機械。
【請求項4】
連行歯列(20)と別の連行歯列(21)とが、駆動軸(14)の1つの共通の歯列と、シリンダブロック(3)の1つの共通のハブ成形部材とによって形成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のハイドロスタティック式のアキシャルピストン機械。
【請求項5】
駆動軸(14)に設けられた歯列が、別の連行歯列(21)の領域では前記連行歯列(20)の領域に設けられた歯列に比べて減少された歯厚(b2)を有している、請求項1から4までのいずれか1項記載のハイドロスタティック式のアキシャルピストン機械。
【請求項6】
連行歯列(20)及び別の連行歯列(21)が、歯列付きスプラインとして形成されている、請求項1から5までのいずれか1項記載のハイドロスタティック式のアキシャルピストン機械。
【請求項7】
ブレーキ装置(25)が、半径方向でシリンダブロック(3)、特にシリンダブロックボデー(3a)とケーシング(8)との間に配置されている、請求項1から6までのいずれか1項記載のハイドロスタティック式のアキシャルピストン機械。
【請求項8】
アキシャルピストン機械(1)が、移動式の作業機械の走行駆動装置の走行モータとして、又は移動式の作業機械の回転機構の回転機構モータとして形成されている、請求項1から7までのいずれか1項記載のハイドロスタティック式のアキシャルピストン機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイドロスタティック式のアキシャルピストン機械、特にアキシャルピストンモータであって、回転可能なシリンダブロックが設けられており、該シリンダブロックが、シリンダブロックボデーとシリンダブロックカラーとを有しており、駆動軸が設けられており、前記シリンダブロックボデーに、長手方向摺動可能なピストンを内部に備えた複数のピストン用切欠きが配置されており、前記ピストンが斜板に支持されており、前記シリンダブロックボデーにおいて張り出した、前記斜板の方向に延びるシリンダブロックカラーと、前記駆動軸との間に、連行歯列が形成されており、前記シリンダブロックに作用するブレーキ装置が設けられている形式のものに関する。
【背景技術】
【0002】
このような斜板構成形式のアキシャルピストン機械の場合は、シリンダブロックのピストン用切欠き内で長手方向摺動可能なピストンが、斜板に支持されている。一般に、斜板におけるピストンの支持は、滑りシューを介して行われ、この滑りシューは、滑りシュージョイント、有利にはボールジョイントを介して、対応するピストンに結合されている。シリンダブロックと駆動軸との間の回転モーメント伝達は、連行歯列を介して行われ、この連行歯列は、シリンダブロックの軸方向運動と、シリンダブロックの制限された角度調節の両方を可能にする。これにより、シリンダブロックは位置的に、所定の制御面に適合され得る。駆動軸上でのシリンダブロックの支持は、滑りシュージョイントの中心点の平面の、シリンダブロックの回転軸線若しくは駆動軸の回転軸線との交点において行われる。この交点は、従来技術の公知のアキシャルピストン機械ではシリンダブロックの軸方向外側、即ち、軸方向でシリンダブロックと斜板との間に位置している。この理由から、冒頭で述べた形式のアキシャルピストン機械では、シリンダブロックボデーが斜板の方向で、張り出したシリンダブロックカラーの分だけ延長されている。連行歯列は、シリンダブロックカラーの領域に形成されている。これにより、シリンダブロックに対する妨害傾動力を生ぜしめることなしに、滑りシュージョイントにおける分力に起因する横方向力が伝達され且つ支持され得る、ということが得られる。この場合、軸方向で見てシリンダブロックカラーに設けられた連行歯列のオーバラップ領域の中心が、滑りシュージョイントの中心点によって形成される平面と、駆動軸若しくはシリンダブロックの回転軸線との交点にほぼ合致している限りは、シリンダブロックの制御面からの傾動を招く恐れのある、シリンダブロックにおける妨害傾動モーメントは、発生する前記横方向力によって回避され得る。
【0003】
構造上、冒頭で述べた形式のアキシャルピストン機械では、シリンダブロックボデーから軸方向に引き出されて、連行歯列のハブ成形部材を備えたシリンダブロックカラーの小さな壁厚さが得られる。回転モーメントと横方向力とが同時に伝達されることに基づき、シリンダブロックカラー及びこのシリンダブロックカラーとシリンダブロックボデーとの間の移行部には高負荷が生じるので、相応に高い強度を有する材料を使用する必要がある。
【0004】
冒頭で述べた形式のアキシャルピストン機械の場合は更に、シリンダブロック、有利にはシリンダブロックボデーに作用するブレーキ装置が設けられており、このブレーキ装置がブレーキ位置に押圧されると、付加的にシリンダブロックカラーの領域の連行歯列が制動モーメントによって押圧される。制動モーメントによる連行歯列の付加的な押圧及び負荷は、とりわけハイドロスタティックな力及びモーメントが同時に伝達され且つブレーキ装置が回転する駆動軸を制動するための常用ブレーキとして使用される場合に発生する。
【0005】
シリンダブロックカラーにおける高負荷は、シリンダブロックカラーがシリンダブロックボデーから破断し且つシリンダブロックボデーから解離するというリスクをはらんでいる。更に、シリンダブロックカラーと駆動軸との間の連行歯列が働かなくなる恐れがある。従って、連行歯列の欠陥を伴うこのような故障の場合は、駆動軸とシリンダブロックカラーとの間の連行歯列の欠如に基づいて、ブレーキ装置の制動モーメントが最早駆動軸に伝達されず、これにより、ブレーキ作用の損失が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の根底を成す課題は、連行歯列に欠陥が生じた場合に、ブレーキ装置の機能を保持し続ける、冒頭で述べた形式のアキシャルピストン機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するために本発明では、シリンダブロックカラーの領域に設けられた連行歯列に加えて付加的に、シリンダブロックボデーの軸方向延在部内に別の連行歯列が形成されており、シリンダブロックボデーの領域に設けられたこの別の連行歯列が、シリンダブロックカラーの領域に設けられた連行歯列に比べて、拡大された歯列遊びを有しているようにした。
【発明の効果】
【0008】
つまり、本発明に基づく思想は、シリンダブロックカラーの領域に設けられた連行歯列に加えて付加的に、冗長的な予備の別の連行歯列をシリンダブロックボデーの軸方向延在領域内に設ける点にあり、この別の連行歯列は、例えば前記連行歯列の故障又はシリンダブロックカラーの破断等により前記連行歯列に欠陥が生じた場合に係合状態にもたらされ且つブレーキ装置の制動モーメントが、シリンダブロックボデーから駆動軸に伝達され得るようにする。別の連行歯列は、本発明ではシリンダブロックカラーの領域に設けられた連行歯列に比べて拡大された側方歯列遊びを有している。これにより、通常運転において前記連行歯列が機能する場合には、別の連行歯列は係合状態にない。これにより、故障無しの通常運転においては、シリンダブロックに対する傾動モーメントが発生することなしに、横方向力が、シリンダブロックカラーの領域に設けられた係合状態にある連行歯列を介して伝達され且つ支持され得るので、別の連行歯列に基づいてアキシャルピストン機械の通常の正常運転において妨害作用が発生することはない。別の連行歯列の領域において拡大された歯列遊びは特に、アキシャルピストン機械の通常運転において、別の連行歯列は負荷にさらされていない、という利点をもたらす。それというのも、回転モーメント及び力は、シリンダブロックカラーの領域に設けられた連行歯列を介して伝達され且つ支持されるからである。例えば連行歯列の故障又はシリンダブロックカラーの破断等で、連行歯列に欠陥が生じた場合の損傷ケースにおいては、今まで使用されていなかったシリンダブロックボデーの軸方向延在部の領域に設けられた別の連行歯列を介して、ブレーキ装置の制動モーメントがシリンダブロックボデーから駆動軸へ、確実に伝達され得る。更に、シリンダブロック側のハブは、シリンダブロックボデーの領域において、シリンダブロックカラーと比べて拡大された壁厚さを有しているので、損傷ケースにおける運転確実性が更に高まり、その結果、ブレーキ装置の制動モーメントが確実に伝達され得る。
【0009】
本発明の有利な1構成では、シリンダブロックボデーの領域に設けられた別の連行歯列が、シリンダブロックカラーの領域に設けられた連行歯列から、軸方向で分離されて配置されている。別の連行歯列は、シリンダブロックボデーの軸方向延在部内の、別の付加的な歯列領域に、シリンダブロックカラーの歯列領域から軸方向で分離されて配置されてよい。
【0010】
少ない製作コストを伴う小さな構成手間に関しては、本発明の別の有利な1構成に基づいて、シリンダブロックボデーの領域に設けられた別の連行歯列が、シリンダブロックカラーの領域に設けられた連行歯列に軸方向で隣接して形成されていると、特別な利点が得られる。別の連行歯列は、シリンダブロックカラーに設けられた既存の連行歯列を、シリンダブロックボデーの延在領域に軸方向で延長することにより簡単に製作され得、この場合は単にシリンダブロックボデーの領域に、別の連行歯列の拡大された歯列遊びを製作するだけで済む。
【0011】
この場合、シリンダブロックカラーの領域に設けられた連行歯列と、シリンダブロックボデーの領域に設けられた別の連行歯列とは、種々様々な歯列成形部材によって形成されてよい。本発明の更に別の有利な1構成では、別の連行歯列にかかる構成手間及び製作コストが少なくなるのは、連行歯列と別の連行歯列とが、駆動軸の1つの共通の歯列と、シリンダブロックの1つの共通のハブ成形部材とによって形成されている場合である。従って、別の連行歯列は、駆動軸に設けられた歯列と、シリンダブロックに設けられたハブ成形部材との、簡単に製作され得る軸方向延長部によって、延いてはシリンダブロックカラーに形成された連行歯列の延長によって製作され得る。
【0012】
別の連行歯列において拡大された歯列遊びは、シリンダブロック側のハブのハブ成形部材の切欠きを相応に拡幅することにより、製作され得る。低い製作コストに関して別の利点が得られるのは、本発明の更に別の有利な1構成に基づき、駆動軸に設けられた歯列が、別の連行歯列の領域内では、連行歯列の領域に設けられた歯列と比べて減少された歯厚を有している場合である。駆動軸に、軸方向で変化する、減少する歯厚を備えた共通の歯列を形成することにより、駆動軸の外周面を簡単に加工できることから、拡大された歯列遊びが別の連行歯列の領域に形成され得る。従って、シリンダブロックにおけるハブ成形部材の軸方向切欠きは、簡単に製作され得る一定の不変の切欠きによって形成され得、これらの切欠きは、シリンダブロックカラーからシリンダブロックボデーの軸方向延在領域に延びている。
【0013】
本発明の更に別の有利な1構成では、連行歯列と別の連行歯列とが、歯列付きスプラインとして形成されている。駆動軸に設けられた歯列の軸方向で変化する歯厚に基づき、共通の歯列付きスプラインの場合は、連行歯列と、別の連行歯列とが簡単に製作され得る。但し択一的に、連行歯列と、別の連行歯列とを、適合された形状接続的な軸・ハブ結合部として、例えば歯付き軸成形部材として構成することも、同様に可能である。
【0014】
本発明の更に別の有利な1構成では、ブレーキ装置が半径方向でシリンダブロック、特にシリンダブロックボデーとケーシングとの間に配置されている。このようなブレーキ装置により簡単に且つスペース節約式で、駆動軸を制動するための制動モーメントが、シリンダブロックボデーに形成され得る。この場合、前記ブレーキ装置はパーキングブレーキ及び/又は常用ブレーキの機能を有していてよい。前記ブレーキ装置は、有利にはマルチディスクブレーキとして形成されている。
【0015】
特別な利点は、アキシャルピストン機械が移動式の作業機械の走行駆動装置の走行モータとして、又は移動式の作業機械の回転機構の回転機構モータとして形成されている場合に得られる。シリンダブロックボデーの軸方向延在領域内に配置されている、本発明による別の連行歯列によって、ブレーキ装置により生ぜしめられてシリンダブロックボデーに作用する制動モーメントが、例えばシリンダブロックカラーの領域に設けられた連行歯列の故障又はシリンダブロックカラーの破断等の損傷ケースにおいて、確実に駆動軸に伝達され得る。従って、ブレーキ装置による駆動軸の制動若しくは駆動軸の停止が確実に可能である。従って、本発明による別の連行歯列により、例えば回転機構駆動装置又は走行駆動装置において、ブレーキ機能は連行歯列が損傷した場合でも確実に維持され得るので、高い運転確実性が得られる。走行モータとして形成された本発明によるアキシャルピストン機械は、所定の駆動軸を駆動することができる。択一的に、前記走行モータはホイール駆動装置として形成され得、この場合はアキシャルピストンモータが移動式の作業機械の被駆動輪に対応配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明によるアキシャルピストン機械の第1実施形態を縦断して示した図である。
【
図4】本発明によるアキシャルピストン機械の第2実施形態を縦断して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を実施するための形態を図面につき詳しく説明する。
【0018】
図1には斜板構成形式におけるハイドロスタティック式のアキシャルピストン機械1、例えばアキシャルピストンモータが示されている。
【0019】
このアキシャルピストン機械1は、回転軸線2を中心として回転可能に支承されたシリンダブロック3を有しており、このシリンダブロック3には、回転軸線2に対して同心的に配置された複数のピストン用切欠き4が設けられており、これらのピストン用切欠き4は、有利にはシリンダ孔によって形成されており且つ内部には各1つの作業ピストン5が長手方向で摺動可能に支承されている。
【0020】
これらの作業ピストン5は、シリンダブロック3から突出している範囲において、それぞれ斜板7に設けられた各1つの滑りシュー6によって支持されている。斜板7は、ケーシング8に一体成形されているか、又は固定されていてよく、この場合、アキシャルピストン機械1は、固定的な不変の押退け容積を有している。但し、斜板7を移動可能に形成することもやはり可能であり、これにより、アキシャルピストン機械1は可変の押退け容積を有している。
【0021】
シリンダブロック3は軸方向で、ケーシングに固定された制御面10に支持されており、この制御面10は、ディスク形の制御ボトム11に形成されており、この制御ボトム11は、ケーシング8又は対応するケーシングカバーに、相対回動不能に固定されている。制御ボトム11には、腎臓形の複数の制御スリットが設けられており、これらの制御スリットは、吸込み側接続通路12及び吐出し側接続通路13を形成している。
【0022】
作業ピストン5は、ボールジョイントとして形成された滑りシュージョイント9によって、それぞれ滑りシュー6に結合されている。これらの滑りシュージョイント9の中心点は、一点鎖線で示した1つの共通の平面E内に配置されており、この平面Eは、シリンダブロック3の回転軸線2との交点Sを有している。
【0023】
この交点Sは、ピストン用切欠き4が斜板側に開口しているシリンダブロック3の一方の端面A(即ち、この端面Aはピストン出口開口を有している)と、斜板7との間、つまり、シリンダブロック3の軸方向延在部の外位に位置している。
【0024】
シリンダブロック3には中心孔が貫通しており、この中心孔を介して、回転軸線2に対して同心的に配置された駆動軸14が、シリンダブロック3を貫通案内されている。駆動軸14は、ケーシング8に設けられた軸受け15,16によって回転可能に支承されている。制御面10から軸方向で間隔を置いた領域において、シリンダブロック3は、支持支承部19によって駆動軸14に接して半径方向で支持されている。
【0025】
シリンダブロック3は、ピストン5のピストン用切欠き4が形成されているシリンダブロックボデー3aと、このシリンダブロックボデー3aから軸方向で斜板7に向かって延びているシリンダブロックカラー3bとから成っている。この場合、シリンダブロックカラー3bは、軸方向の張出し部としてシリンダブロックボデー3aに一体成形されている。シリンダブロックカラー3bの領域には連行歯列20が形成されており、この連行歯列20は、有利には歯列付きスプラインによって形成されている。この歯列付きスプラインによって形成された連行歯列20は、同時に支持支承部19を形成している。連行歯列20によって、シリンダブロック3は駆動軸14に相対回動不能に且つ長手方向摺動可能に配置されている。
【0026】
図2との関連において明らかなように、駆動軸14とシリンダブロック3との間の連行歯列20は、軸方向のオーバラップ領域若しくは係合領域UEを有しており、この領域の中心UE/2は軸方向で、滑りシュージョイント9の中心点から形成される平面Eと、シリンダブロック3の回転軸線2との交点Sと、ほぼ合致している。これにより、滑りシュージョイント9における分力に起因する横方向力F
Qが、妨害傾動力無しで駆動軸14に伝達されて、支持力F
Sによって支持され得る、ということが得られる。
【0027】
更に、本発明によるアキシャルピストン機械1には、シリンダブロック3のシリンダブロックボデー3aの領域に作用するブレーキ装置25が設けられている。このブレーキ装置25は、半径方向で見てシリンダブロックボデー3aと、ケーシング8との間に配置されており且つシリンダブロックボデー3aに作用する。ブレーキ装置25は、有利にはマルチディスクブレーキとして形成されており、このマルチディスクブレーキは、ケーシング8に相対回動不能に結合された複数のアウタディスクと、シリンダブロックボデー3aに相対回動不能に結合された複数のインナディスクとを有している。ブレーキ装置25は、パーキングブレーキとして且つ/又は常用ブレーキとして形成されていて、ばね装置26によってブレーキ位置に押圧可能であると共に、操作装置27によって解除位置に押圧可能である。図示の実施例では、前記操作装置27はブレーキ装置25を液圧式で解除するための、液圧式に押圧可能なリングピストンによって形成されている。
【0028】
本発明では、シリンダブロックカラー3bの領域で支持支承部19を形成している連行歯列20に加えて付加的に、シリンダブロックボデー3aの軸方向延在部内に別の連行歯列21が形成されており、この場合、シリンダブロックボデー3aの領域に設けられたこの別の連行歯列21は、シリンダブロックカラー3bの領域に設けられた連行歯列20に比べて、拡大された側方歯列遊びを有している。
【0029】
図3には、
図2のA−A線に沿って連行歯列20と別の連行歯列21とを、歯列成形部の領域で断面した図が示されている。
【0030】
歯列付きスプラインとして形成された連行歯列20は、駆動軸14の外周面に設けられた軸方向歯列としての、相応する楔形成形部材30を備えたスプライン成形部と、ハブ成形部材の軸方向切欠きとしての、ハブ側のシリンダブロック3の内周面に設けられた、前記楔形成形部材30を収容する長手方向溝31とから成っている。
【0031】
図1〜
図3との関連において明らかなように、シリンダブロックカラー3bの領域に設けられた連行歯列20は、軸方向で見てシリンダブロックボデー3aの方向で延長されている。この場合、連行歯列20と、別の連行歯列21とは、相応する楔形成形部材30によって形成されている、駆動軸14に設けられた1つの共通の歯列30と、シリンダブロック3に設けられた1つの共通のハブ成形部材31とによって形成されており、このハブ成形部材31は、軸方向で長手方向溝31によって形成されている。
【0032】
シリンダブロックカラー3bからシリンダブロックボデー3aの軸方向延在領域に延びる、シリンダブロック3に設けられた長手方向溝31は、一定の幅bを有する不変の横断面を有している。相応する楔形成形部材30によって形成されている、駆動軸14に配置された歯列30は、軸方向で変化する歯厚を備えている。シリンダブロックカラー3bの領域延いては連行歯列20の領域において、楔形成形部材30は幅b1を有しており且つシリンダブロックボデー3aの領域延いては別の連行歯列21の領域では、前記幅b1に比べて減少された幅b2を有している。
図3には更に、連行歯列20のオーバラップ領域若しくは係合領域UEと、この領域に続く軸方向領域cが示されており、この軸方向領域cは、別の連行歯列21の係合領域に対応している。更に、駆動軸14における歯列成形は、横方向力F
Qを支持する際に、シリンダブロック3における妨害傾動力を回避するために、横方向力F
Qと支持力F
Sとが、オーバラップ領域UEのほぼ中心、延いては交点Sに作用するように選択されている。
【0033】
オーバラップ領域UEに配置された連行歯列20と、前記領域cに形成された別の連行歯列21との間の移行領域は、
図2及び
図3では符号「a」によって示されている。連行歯列20,21の係合領域間の移行領域では、楔形成形部材30の幅bの減少、延いては駆動軸14に設けられた歯列の歯厚の減少、更に、駆動軸14の外径の減少が行われる。これにより、前記領域c、延いては別の連行歯列21の係合領域に、連行歯列20に比べて拡大された側方の歯列遊びS
Fが生じる、ということが得られる。
【0034】
図1及び
図3に示した実施例では、別の連行歯列21は連行歯列20に直接に隣接して配置されている。
【0035】
図4では、シリンダブロックボデー3aの軸方向延在領域に設けられた別の連行歯列21は、シリンダブロックカラー3bの領域に設けられた連行歯列20から軸方向で分離されていて、より離れた、シリンダブロックボデー3aの制御面10に配置された領域に配置されていてよい。連行歯列20並びに別の連行歯列21の形成及び形態に関して、
図4は
図1〜
図3と同一であってよい。
【0036】
アキシャルピストン機械1の通常の正規の運転では、回転モーメント伝達及び横方向力F
Qの支持は、連行歯列20において行われる。このような通常運転において、別の連行歯列21の領域内の歯列30は、拡大された歯列遊びS
Fに基づいて、シリンダブロックボデー3aに設けられたハブ成形部材31に係合してはいない。
【0037】
連行歯列20の欠陥は、シリンダブロック3のハブ若しくは駆動軸14のシリンダブロックカラー3bの領域の損傷、例えば連続負荷に基づく、駆動軸14に設けられた歯列若しくはシリンダブロックカラー3bの剪断又は破断によって発生する恐れがある。更に、連行歯列20の欠陥は、シリンダブロックボデー3aからの、シリンダブロックカラー3bの強制破断及び剪断によって発生する恐れがある。
【0038】
連行歯列20の欠陥を伴うこのような損傷が発生すると、別の連行歯列21が係合状態にもたらされるので、前記力及び回転モーメントは軸方向領域c、延いてはシリンダブロックボデー3aの軸方向延在部内の別の連行歯列21の係合領域に伝達され、最早今までのように、シリンダブロックカラー3bに設けられた連行歯列20のオーバラップ領域UEには伝達されない。この場合、前記領域cに配置された別の連行歯列21は、強度に関して好適な特性を有している。一方では、シリンダブロックボデー3aの領域の壁厚さは、シリンダブロックカラー3bの壁厚さに比べて増大されており、且つ他方では、別の連行歯列21は、拡大された歯列遊びS
Fに基づいて、今までのアキシャルピストン機械1の通常運転では未だ係合状態になく、延いては未だ連続負荷に晒されてはいなかった。つまり、連行歯列20に欠陥が生じると、別の連行歯列21が係合状態にもたらされることにより、ブレーキ装置25からシリンダブロックボデー3aに作用する制動モーメントが確実に駆動軸14に伝達され得る。従って特に、回転機構駆動装置又は走行駆動装置の場合は、連行歯列20に欠陥が生じると、本発明による別の連行歯列21によって駆動軸14が確実に制動されて、停止状態に保持され得る。
【0039】
連行歯列20に欠陥が生じると、支持力F
S*は、別の連行歯列21の領域cの中央区分に作用する。これにより、ピストン横方向力の和に相当するハイドロスタティックな作用横方向力F
Qと、支持力F
S*との間にてこ腕hが生じる。このてこ腕hによって、シリンダブロック3の制御面10からの傾動を生ぜしめる、ハイドロスタティックな妨害モーメント及び傾動モーメントが形成される。シリンダブロック3の制御面10からの傾動によって、連行歯列20の欠陥が発生した場合は制御面10に増大された漏れ流が生じ、この漏れ流は、アキシャルピストン機械1の機能を著しく損なうか、若しくはアキシャルピストン機械1の機能を引き続き保証はしない。この作用は、本発明では連行歯列20の欠陥を、外部に対して注意を引くことができるようにし且つ表示するために、意図的に選択されている。駆動軸14の制動若しくは停止状態での保持は、損傷の生じた場合にもかかわらず、確実に可能である。
【0040】
別の連行歯列21は、共通の歯列付きスプラインによって簡単に製作可能である。それというのも、単に歯列30が、駆動軸14に設けられた楔形成形部材30として、並びにハブ成形部材31が長手方向溝31として、シリンダブロックカラー3bからシリンダブロックボデー3aの軸方向延在領域に延長されるだけで済み、この場合、別の連行歯列21の拡大された歯列遊びS
Fは、駆動軸14の相応の成形、及び楔形成形部材30により形成された歯成形部の歯厚の相応の減少によって形成され得る。つまり、別の連行歯列21は、付加的な構成部材無しで簡単且つ廉価に製作され得る。
【符号の説明】
【0041】
1 アキシャルピストン機械、 2 回転軸線、 3 シリンダブロック、 3a シリンダブロックボデー、 3b シリンダブロックカラー、 4 ピストン用切欠き、 5 作業ピストン、 6 滑りシュー、 7 斜板、 8 ケーシング、 9 滑りシュージョイント、 10 制御面、 11 制御ボトム、 12 吸込み側接続通路、 13 吐出し側接続通路、 14 駆動軸、 15,16 軸受け、 19 支持支承部、 20 連行歯列、 21 別の連行歯列、 25 ブレーキ装置、 26 ばね装置、 27 操作装置、 30 楔形成形部材、歯列、 31 長手方向溝、ハブ成形部材