(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
帯状の湿紙を抄紙する抄紙部と、帯状の湿紙を受け取って乾燥させる乾燥部と、乾燥した帯状紙を受け取って設定仕様に整形する仕上げ部と、各部を制御する制御部を備える製紙機において、
乾燥部が、帯状の湿紙を搬送する搬送ベルトと、搬送ベルトの搬送面上にある湿紙を加熱する加熱装置と、搬送ベルトの搬送面に対して当接離間自在に設けたスクレーパーおよび、スクレーパーの接触端縁が湿紙の搬送方向で加熱装置より上流側において搬送ベルトの搬送面に当接する作用位置と接触端縁が搬送面から離間する退避位置とにわたってスクレーパーを駆動するスクレーパー駆動装置を有し、
制御部が、スクレーパー駆動装置を制御して、湿紙の先端縁の前後領域が搬送される間、搬送ベルトの搬送面にスクレーパーを当接させて湿紙の先端縁を含む先端部を搬送ベルトの搬送面から剥離させるスクレーパー制御機能部を有することを特徴とする製紙機。
スクレーパーは、搬送ベルトの幅方向に延びる板状をなし、搬送ベルトの搬送面に当接する接触端縁から湿紙の搬送方向に沿った板幅方向に延びる複数のスリットを有し、スリットにより接触端縁が複数片に分割されたことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の製紙機。
スクレーパーは、作用位置において接触端縁が湿紙の先端縁を含む先端部に対向する姿勢に配置し、折り返し手段によって、搬送ベルトの搬送面から剥離した湿紙の先端部を湿紙の搬送方向の後方に折り返すことを特徴とする請求項6に記載の製紙方法。
異物除去装置を兼ねるスクレーパーの接触端縁を搬送ベルトの搬送面に当接させ、搬送ベルトの搬送面に付着した浸潤状態の異物をスクレーパーで搬送ベルトの搬送面から除去することを特徴とする請求項6または7に記載の製紙方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、湿紙をベルト上で乾燥させる場合に、乾燥した帯状紙(乾紙)はベルトに強く付着した状態となっており、特に抄紙の初期に形成される湿紙の先端部は厚さが薄くなっているために、ベルトにこびり付いた状態となっている。乾燥した乾紙の先端部は厚さが薄く、その先端縁が幅方向に沿って直線形状をなさず、ジグザグとした不揃いの形状をなしている。
【0006】
このため、特許文献1のように、乾燥処理された乾紙を剥離部材の先端エッジによって平滑面無端ベルトの保持面から順次剥離させる場合に、乾紙の不揃いの先端縁の一部が先端エッジの上方に入り込むと、それ以後の帯状の乾紙が剥離部材で引き裂かれることになる。
【0007】
また、特許文献2のように、摺動部材を無端帯状体の幅方向に往復駆動させて無端帯状体の表面に付着した付着物を剥離させる構成は、装置が大型化する要因となる。
本発明は上記した課題を解決するものであり、湿紙を乾燥させる搬送ベルトから乾燥した帯状紙を、損傷を与えることなく安全に剥離させることができる製紙機および製紙方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の製紙機は、帯状の湿紙を抄紙する抄紙部と、帯状の湿紙を受け取って乾燥させる乾燥部と、乾燥した帯状紙を受け取って設定仕様に整形する仕上げ部と、各部を制御する制御部を備える製紙機において、乾燥部が、帯状の湿紙を搬送する搬送ベルトと、搬送ベルトの搬送面上にある湿紙を加熱する加熱装置と、搬送ベルトの搬送面に対して当接離間自在に設けたスクレーパーおよび、スクレーパーの接触端縁が
湿紙の搬送方向で加熱装置より上流側において搬送ベルトの搬送面に当接する作用位置と接触端縁が搬送面から離間する退避位置とにわたってスクレーパーを駆動するスクレーパー駆動装置を有し、制御部が、スクレーパー駆動装置を制御して、
湿紙の先端縁の前後領域が搬送される間、搬送ベルトの搬送面にスクレーパーを当接させ
て湿紙の先端縁を含む先端部を搬送ベルトの搬送面から剥離させるスクレーパー制御機能部を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の製紙機において、スクレーパーは、作用位置において接触端縁が湿紙の先端縁を含む先端部に対向する姿勢となることを特徴とする。
また、本発明の製紙機において、搬送ベルトの搬送面から剥離した湿紙の先端部を湿紙の搬送方向の後方に折り返す折り返し手段を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の製紙機において、スクレーパーは、搬送ベルトの幅方向に延びる板状をなし、搬送ベルトの搬送面に当接する接触端縁から湿紙の搬送方向に沿った板幅方向に延びる複数のスリットを有し、スリットにより接触端縁が複数片に分割されたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の製紙機において、スクレーパーは、搬送ベルトに付着した異物を除去する異物除去装置を兼ねることを特徴とする。
【0012】
本発明の製紙方法は、帯状の湿紙を搬送ベルトで搬送しつつ、搬送ベルトの搬送面上にある湿紙を搬送ベルトを介して加熱装置で加熱して乾燥させる乾燥工程において、スクレーパー駆動装置を制御して、
湿紙の搬送方向で加熱装置より上流側の搬送ベルトの搬送面に対して当接離間自在に設けたスクレーパーの接触端縁を、湿紙の先端縁の前後領域が搬送される間、搬送ベルトの搬送面に当接させて、湿紙の先端縁を含む先端部を搬送ベルトの搬送面から剥離させることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の製紙方法において、スクレーパーは、作用位置において接触端縁が湿紙の先端縁を含む先端部に対向する姿勢に配置し、折り返し手段によって、搬送ベルトの搬送面から剥離した湿紙の先端部を湿紙の搬送方向の後方に折り返すことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の製紙方法において、異物除去装置を兼ねるスクレーパーの接触端縁を搬送ベルトの搬送面に当接させ、搬送ベルトの搬送面に付着した浸潤状態の異物をスクレーパーで搬送ベルトの搬送面から除去することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上のように本発明によれば、抄紙部で帯状の湿紙を抄紙し、乾燥部で帯状の湿紙を乾燥させ、乾燥した帯状紙(乾紙)を仕上げ部で設定仕様に整形する製紙機において、その乾燥工程でスクレーパーにより湿紙の先端部を搬送ベルトの搬送面から剥がすことで、乾燥した帯状紙はその先端部が搬送ベルトの搬送面から剥がれた状態で仕上げ部に送られる。
【0016】
この搬送ベルトの搬送面から剥がれた湿紙の先端部は、湿紙が搬送方向においてスクレーパーで受け止められることで湿紙の幅方向においてスクレーパーの全長にわたって直線状となり、剛性のない湿った状態の紙をその搬送に伴って搬送方向に押し詰めることで蛇腹状、皺状、ひだ状等に幾重にも折り重ねた形状となって嵩高くなる。
【0017】
また、スクレーパーが湿紙の搬送方向で加熱装置より上流側において搬送ベルトの搬送面に当接し、湿紙の状態においてスクレーパーにより湿紙の先端部を搬送ベルトの搬送面から剥がすので、乾燥した後に帯状紙の先端部を搬送ベルトの搬送面から剥離させる場合に比べて容易に、かつ損傷を与えることなく安全に湿紙を搬送ベルトの搬送面から剥がすことができる。
【0018】
このため、乾燥した帯状紙を仕上げ部へ送る際に、帯状紙を容易に搬送ベルトから剥離させることができる。
スクレーパーは作用位置において接触端縁が湿紙の先端縁を含む先端部に対向する姿勢をなすので、接触端縁が作用位置から退避位置に移動するのに伴って、湿紙の先端縁を含む先端部が搬送ベルトの搬送面から離れる状態となる。
【0019】
帯状紙が剥離した後の搬送ベルトの搬送面には紙の繊維が残存し、その量は乾燥工程を繰り返すことで増加し、紙面に悪影響を与える要因となる。このため、残存する繊維に水分を与えて湿潤な状態となし、スクレーパーの接触端縁を搬送ベルトの搬送面に当接させることで、搬送ベルトの搬送面に付着した浸潤状態の異物をスクレーパーで搬送ベルトの搬送面から除去することができ、スクレーパーが異物除去装置を兼ねることで、製紙機の大型化を招くことなく、異物除去装置を設けることができる。
【0020】
また、スクレーパーに加わる力でスクレーパに撓みが生じても、スクレーパーが接触端縁から湿紙の搬送方向に延びる複数のスリットにより接触端縁が複数片に分割されていることで、接触端縁の分割された各片はその接触端縁の直線性を保って搬送ベルトの搬送面に当接するので、湿紙を逃すことなく確実にすくい上げることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1から
図7において、製紙機の1種である古紙処理装置1は、帯状の湿紙100を抄紙する抄紙工程をなす抄紙部2と、湿紙100を脱水する脱水工程をなす脱水部3と、湿紙100を乾燥させる乾燥工程をなす乾燥部4と、乾燥した帯状紙である乾紙101を設定仕様に整形して仕上げる仕上げ工程をなす仕上げ部5と、各部を制御する制御部300を備えている。
【0023】
抄紙部2は、第1群のローラ21の間に掛け渡されたワイヤーベルト22と、パルプ懸濁液をワイヤーベルト22に供給するヘッドボックス23を有し、ワイヤーベルト22の搬送面上に湿紙100を抄紙する。ワイヤーベルト22は金属製又は、合成樹脂製であり、網目状をなして通水性、通気性を有している。
【0024】
脱水部3は、第2群のローラ31の間に掛け渡された吸水性の素材からなる吸水ベルト32を有し、ここでは吸水ベルト32がフェルトからなり通気性を有している。
吸水ベルト32およびワイヤーベルト22は双方の搬送軌道の途中において相互に当接して抄紙転移部201を形成する。この抄紙転移部201においてワイヤーベルト22と吸水ベルト32のなす角度、すなわち、吸水ベルト32に対するワイヤーベルト22の入射角度θ1は、10〜20°であり、ワイヤーベルト22を支持する第1群のローラ21の直径はφ60mmからφ80mmである。
【0025】
抄紙部2でワイヤーベルト22の搬送面上に抄紙した湿紙100は、抄紙転移部201において吸水ベルト32に押圧され、ワイヤーベルト22が第1群のローラ21の外周に沿って反転して湿紙100から離間することで、ワイヤーベルト22から吸水ベルト32に転移し、転移した湿紙100から吸水ベルト32が吸水して湿紙100を吸収脱水する。抄紙転移部201の上流側には吸水ベルト32に水を噴霧する噴霧ノズル211が設けてある。運転初期において噴霧ノズル211から噴霧する水によって吸水ベルト32を湿らすものである。
【0026】
乾燥部4は、ヒータ等の加熱装置を内蔵して加熱部をなす乾燥ローラ41と、乾燥ローラ41と第3群のローラ42の間に掛け渡した非吸水性の素材からなる搬送ベルトをなす平滑面ベルト43と、第4群のローラ44の間に掛け渡した非吸水性の素材からなる搬送保持ベルト45を有する。脱水部3の吸水ベルト32と平滑面ベルト43は双方の搬送軌道の途中において相互に当接し、脱水部3の吸水ベルト32から乾燥部4の平滑面ベルト43に湿紙100が転移する脱水転移部202を形成する。
【0027】
脱水転移部202には、平滑面ベルト43と吸水ベルト32を挟持する一対の脱水ローラ51、52を配置している。本実施の形態では一対の脱水ローラ51、52であるが、複数組の脱水ローラ51、52を配置することも可能である。一対の脱水ローラ51、52は、下側に位置する吸水ベルト32に当接する脱水部3のローラ31の一つで直径がφ90mmからφ100mmのものと、上側に位置する平滑面ベルト43に当接する乾燥部4のローラ42の一つで直径がφ90mmからφ120mmのものとからなる。脱水ローラ51、52は金属製ローラからなり、外径φ80〜200mmのものが適用可能である。
【0028】
脱水ローラ51、52は、平滑面ベルト43と吸水ベルト32を介して両ベルト間の湿紙100を圧搾して脱水するとともに、湿紙100を平滑面ベルト43に押圧し、吸水ベルト32が下側の脱水ローラ52の外周に沿って反転して湿紙100から離間することで、湿紙100が吸水ベルト32から平滑面ベルト43に円滑に転移する。
【0029】
脱水ローラ51、52は、双方の軸心を含む平面Aが鉛直面Bに対して微小角度θ3で傾斜し、上位の脱水ローラ51が平滑面ベルト43および吸水ベルト32の搬送方向で後方に位置し、下位の脱水ローラ52が平滑面ベルト43および吸水ベルト32の搬送方向で前方に位置する。
【0030】
平滑面ベルト43は金属または耐熱温度150℃以上の合成樹脂からなり、ここでは厚み0.2mmのステンレス薄板(SUS430)からなる非通気性のものである。平滑面ベルト43は、湿紙100に当接する搬送面が平滑面をなし、かつ搬送面にシリコーン樹脂コーティング又はフッ素樹脂コーティングを施している。
【0031】
本実施の形態において吸水ベルト32の開口率はワイヤーベルト22の開口率より小さく、平滑面ベルト43は薄板状をなして無通気性である。
搬送保持ベルト45は網目状の通気性を有するもので合成樹脂からなり、平滑面ベルト43の搬送面に対向して配置し、平滑面ベルト43との間に湿紙100を挟持する。平滑面ベルト43と搬送保持ベルト45は、次工程の仕上げ部5に対して乾燥した乾紙101を受け渡す位置まで延在している。
【0032】
また、ワイヤーベルト22、吸水ベルト32、平滑面ベルト43のそれぞれに対して洗浄噴水を行なうことにより、あるいはスクレーパーやブラシローラなどを設けることにより、各々のベルト表面に付着した紙粉などのゴミを除去することも可能である。
【0033】
仕上げ部5は、乾燥部4で乾燥させた帯状紙をなす乾紙101を切断するカッター102を備え、カッター102で設定サイズの再生紙103に仕上げるものである。乾紙101の搬送方向でカッター102の上流側には平滑面ベルト43から排出する乾紙101をカッターに案内するガイド104を備えている。
【0034】
次に、湿紙100の搬送方向で乾燥ローラ41より上流側において平滑面ベルト43の軌道上にはスクレーパー部400を配置している。本実施の形態において、スクレーパー部400は、平滑面ベルト43に付着した異物を除去する異物除去装置を兼ねるものである。
【0035】
スクレーパー部400は、平滑面ベルト43の搬送面に対して当接離間自在に設けたスクレーパー401および、スクレーパー401の接触端縁402が搬送面に当接する作用位置と接触端縁402が平滑面ベルト43の搬送面から離間する退避位置とにわたってスクレーパー401を駆動するスクレーパー駆動装置450とを有している。
【0036】
図2から
図4に示すように、スクレーパー401は、平滑面ベルト43の幅方向に延びて平滑面ベルト43の全幅にわたる長さを有する板状をなし、平滑面ベルト43の搬送面に当接する接触端縁402から湿紙100の搬送方向に沿った板幅方向に延びる複数のスリット403を有し、スリット403により接触端縁402が複数片に分割されている。スクレーパー401はポリエステル、ポリアセタール等の合成樹脂、ゴム、金属等からなり、平滑面ベルト43を傷めず、耐久性に優れたものが好ましい。
【0037】
図2(b)に示すように、スクレーパー401は、作用位置において接触端縁402が湿紙100の先端縁を含む先端部に対向する姿勢となり、
図2(a)に示すように、退避位置において接触端縁402が湿紙100の搬送方向の後方に向く姿勢となる。しかしながら、退避位置においてスクレーパー401が向く方向は、本実施の形態に限らず、搬送面に対して90°となる姿勢でも良く、あるいは他の姿勢でも良い。
【0038】
スクレーパー駆動装置450は、スクレーパー401を支持する取り付け座451と、取り付け座451に装着したカムフォロア452と、スクレーパー401と取り付け座451とカムフォロア452を一体的に回転自在に支持する回動支軸461と、カムフォロア452に当接してスクレーパー401を回動支軸461の軸心回りに回動させるカム453と、取り付け座451に連結したレバー454に接続してスクレーパー401を平滑面ベルト43の搬送面に向けて回動させる付勢手段をなすスプリング455と、カム453を駆動する駆動軸456および、プーリー457を介して駆動軸456を回転駆動するモータ458を有している。
【0039】
図5に示すように、スクレーパー部400は、駆動軸456の一端側に、駆動軸456と一体に回転する遮蔽板459および遮蔽板459によって光軸が遮断されてオン、オフするセンサ460を有しており、スクレーパー401の下方位置にシュータ462を備えている。
【0040】
制御部300は、スクレーパー駆動装置450を制御して、湿紙100の先端縁の前後領域において平滑面ベルト43の搬送面にスクレーパー401を当接させるスクレーパー制御機能部を有している。
【0041】
上記した構成における作用を説明する。抄紙部2では、ヘッドボックス23からパルプ懸濁液をワイヤーベルト22に供給してワイヤーベルト22の搬送面上に湿紙100を抄紙する。脱水部3では、抄紙部2でワイヤーベルト22の搬送面上に抄紙した湿紙100を吸水ベルト32に転移させ、吸水ベルト32により湿紙100から吸水して湿紙100を脱水する。ワイヤーベルト22の湿紙100は抄紙転移部201の直前での含水率が約99%である。抄紙転移部201では、ワイヤーベルト22と吸水ベルト32との入射角度θ1が10〜20°であり、第1群のローラ21の直径がφ60mmからφ80mmであることで、吸水ベルト32に対する湿紙100の押圧と、ワイヤーベルト22から湿紙100が離間することを円滑に行なうことができる。
【0042】
また、ワイヤーベルト22は、その開口率が吸水ベルト32の開口率より大きくて通気性が吸水ベルト32の通気性に優るので、剥離性が吸水ベルト32の剥離性より大きくなり、換言すれば吸水ベルト32の密着性がワイヤーベルト22の密着性に優る。よって、湿紙100は剥離性が高いワイヤーベルト22から容易に剥離し、密着性が高い吸水ベルト32に容易に密着し、ワイヤーベルト22から吸水ベルト32へ湿紙100が容易に転移し、高い転写性能を奏する。
【0043】
乾燥部4では、吸水ベルト32による吸水で湿紙100を吸収脱水した後に、脱水転移部202で脱水ローラ51、52によって圧搾脱水し、湿紙100を平滑面ベルト43に転移させる。
【0044】
また、平滑面ベルト43は無通気性であり、通気性の吸水ベルト32より密着性が高く、換言すれば吸水ベルト32の剥離性が平滑面ベルト43の剥離性に優る。よって、湿紙100は剥離性が高い吸水ベルト32から容易に剥離し、密着性が高い平滑面ベルト43に容易に密着し、吸水ベルト32から平滑面ベルト43へ湿紙100が容易に転移する。
【0045】
このように、本実施の形態において、湿紙100は高い通気性を有して剥離性に優れるワイヤーベルト22から低い通気性を有して密着性に優る吸水ベルト32へ転移し、さらに吸水ベルト32から無通気性で密着性に優る平滑面ベルト43へ転移することで、湿紙100の転移が常に剥離性に優れたベルトから密着性に優れたベルトに対して行なわれるので、優れた転写性能を実現できる。
【0046】
そして、平滑面ベルト43が吸水ベルト32の上方に位置する状態で、脱水ローラ51、52で搾り出した水は、脱水ローラ52より下方に配置したトレー(図示省略)に排出される。このため、脱水ローラ51、52を通過した吸水ベルト32は再生されて吸水可能な状態となる。
【0047】
湿紙100が転移した平滑面ベルト43は乾燥ローラ41へ向けて進行し、スクレーパー部400に達する。
制御部300は、抄紙を開始した後に一定時間、例えば数十秒経過した時点で湿紙の先端縁がスクレーパー部400に達するとして、スクレーパー制御機能部によりスクレーパー部400を制御し、湿紙100の先端縁がスクレーパー部400に達する前にスクレーパー401の接触端縁402を平滑面ベルト43の搬送面に当接させる。
【0048】
すなわち、モータ458を駆動して駆動軸456およびカム453を回転させる。スクレーパー401はスプリング455の付勢力を受けて取り付け座451およびカムフォロア452とともに回動支軸461の軸心回りに回動し、接触端縁402が平滑面ベルト43の搬送面に当接する作用位置に配置される。
【0049】
センサ460が遮蔽板459の回転によりスクレーパー401が作用位置に達したことを検出すると、制御部300は一定時間にわたってこの状態を維持する。その後、モータ458を駆動して駆動軸456およびカム453を回転させ、カム453でカムフォロア452を押圧し、スプリング455の付勢力に抗してスクレーパー401、取り付け座451およびカムフォロア452を一体的に回動支軸461の軸心回りに回動させ、接触端縁402が平滑面ベルト43の搬送面から離間する退避位置にスクレーパー401を配置する。センサ460が遮蔽板459の回転によりスクレーパー401が退避位置に達したことを検出すると、制御部300はモータ458を停止させる。
【0050】
この制御によって、湿紙100の先端縁の前後領域において平滑面ベルト43の搬送面にスクレーパー401が当接する。
スクレーパー401に加わる力でスクレーパー401に撓みが生じても、スクレーパー401が接触端縁402から湿紙100の搬送方向に延びる複数のスリット403により接触端縁402が複数片に分割されていることで、接触端縁402の分割された各片はその接触端縁402の直線性を保って平滑面ベルト43の搬送面に当接するので、湿紙100を逃すことなく確実にすくい上げることができる。
【0051】
スクレーパー401が平滑面ベルト43の搬送面に当接する状態で、平滑面ベルト43に搬送される湿紙100がスクレーパー401の接触端縁402に達すると、
図2(b)に示すように、スクレーパー401が湿紙100の先端縁に係合して、先端縁を平滑面ベルト43の搬送面から剥がす。
【0052】
この平滑面ベルト43の搬送面から剥がれる湿紙100の先端部は、湿紙100が搬送方向においてスクレーパー401で受け止められることで湿紙100の幅方向においてスクレーパー401の全長にわたって直線状となり、剛性のない湿った状態の紙を搬送方向に押し詰めることで蛇腹状、皺状、ひだ状等に幾重にも折り重ねた形状となって嵩高くなる。
【0053】
このように、スクレーパー401が湿紙100の搬送方向で、平滑面ベルト43が乾燥ローラ41に当接し始める位置より上流側において平滑面ベルト43の搬送面に当接し、湿紙100の状態においてスクレーパー401により湿紙100の先端部を平滑面ベルト43の搬送面から剥がすので、従来のように乾燥した後に帯状紙の先端部を平滑面ベルト43の搬送面から剥離させる場合に比べて容易に、かつ損傷を与えることなく安全に湿紙100を平滑面ベルト43の搬送面から剥がすことができる。
【0054】
しかしながら、スクレーパー401が平滑面ベルト43に当接する位置は、平滑面ベルト43が乾燥ローラ41に当接している間の区間でも良く、あるいは平滑面ベルト43が乾燥ローラ41を通過した後の位置でも良い。
【0055】
スクレーパー401が、
図2(b)に示すように、接触端縁402が湿紙100の先端縁を含む先端部に対向する姿勢をなす作用位置から、
図6(a)に示すように、接触端縁402が湿紙100の搬送方向の後方に向く姿勢をなす退避位置に回動すると、蛇腹状に幾重にも折り重ねた形状の湿紙100の先端部が平滑面ベルト43の搬送面から持ち上がり、スクレーパー401が湿紙100から離間すると、湿紙100の先端部が平滑面ベルト43の搬送面から自重によって下方に垂れ下がる。
【0056】
次に、平滑面ベルト43の軌道の途中から平滑面ベルト43の搬送面に対向して搬送保持ベルト45が並走し、搬送保持ベルト45と平滑面ベルト43との間に湿紙100を挟持する。この際に、平滑面ベルト43の搬送面から下方に垂れ下がる湿紙100の先端部が搬送保持ベルト45と平滑面ベルト43との間に挟まれて搬送方向の後方に折り返される。すなわち、本実施の形態では搬送保持ベルト45が折り返し手段をなす。
【0057】
本実施の形態では搬送保持ベルト45と平滑面ベルト43との間に挟むことでことで、湿紙100の先端部を折り返したが、折り返し手段は他のローラ、板状材等によって構成することも可能であり、あるいはスクレーパー401が折り返し手段を兼ねることも可能である。
【0058】
この場合には、
図6(a)に示すように、スクレーパー401の接触端縁402が湿紙100の搬送方向の後方に向く姿勢をなす退避位置に回動することで、蛇腹状に幾重にも折り重ねた形状の湿紙100の先端部を平滑面ベルト43の搬送面から持ち上げ、スクレーパ401が湿紙100の先端部に当接する状態を維持することで、
図6(b)に示すように、平滑面ベルト43の進行に伴って湿紙100の先端部が湿紙の搬送方向の後方に折り返される。
【0059】
次に、搬送保持ベルト45と平滑面ベルト43との間に湿紙100を挟持する状態で搬送保持ベルト45と平滑面ベルト43と湿紙100が乾燥ローラ41の転動に伴って進行し、乾燥ローラ41から受ける熱によって湿紙100が乾燥して帯状紙をなす乾紙101となる。この際に、湿紙100は脱水転移部202で平滑面ベルト43に密着しているので、平滑面ベルト43と湿紙100との間の熱伝導性が良くなり、高い熱効率を実現する。
【0060】
また、平滑面ベルト43に湿紙100を保持したまま乾燥ローラ41のローラ面上に巻装し、その状態で乾燥させるので、湿紙100を乾燥ローラ41の表面へ転移させるなどの余分な工数を必要とせず、搬送効率が良くなる。
【0061】
平滑面ベルト43と搬送保持ベルト45は乾紙101を仕上げ部5に対して受け渡す位置まで延在し、互に相反する方向へ反転して乾紙101を剥離させる。この際、乾燥した帯状紙はその先端部が搬送ベルトの搬送面から剥がれた状態で仕上げ部5に送られる。
【0062】
このため、ガイド104が平滑面ベルト43の搬送面から剥がれた乾紙101の先端部を案内することで、先端部に続く乾紙101がその全幅にわたってガイド104に案内されて乾紙101が容易に剥離される。乾燥した帯状紙である乾紙101の先端縁が搬送方向の後方に折り返された状態をなすことで、平滑面ベルト43と搬送保持ベルト45が互に相反する方向へ反転して乾紙101を剥離させる際に、折り返された先端縁を始点として乾紙101が平滑面ベルト43から容易に剥離する。
【0063】
仕上げ部5では、平滑面ベルト43と搬送保持ベルト45から剥離した帯状紙をなす乾紙101をカッター102で設定サイズの再生紙103に仕上げる。
ところで、乾紙101が剥離した後の平滑面ベルト43の搬送面には紙の繊維が残存し、その量は乾燥工程を繰り返すことで増加し、紙面に悪影響を与える要因となる。このため、噴霧ノズル211から水を噴霧して吸水ベルト32に水分を与え、吸水ベルト32から平滑面ベルト43に残存する繊維に水分を与えて湿潤な状態となし、スクレーパー401の接触端縁402を平滑面ベルト43の搬送面に当接させることで、平滑面ベルト43の搬送面に付着した浸潤状態の異物をスクレーパー401で平滑面ベルト43の搬送面から除去することができる。除去した異物463はシュータ462によりシュータ462の下方位置に設置したゴミ箱500に排出する。このように、スクレーパー401が異物除去装置を兼ねることで、製紙機の大型化を招くことなく、異物除去装置を設けることができる。
【0064】
上述した実施の形態では、スクレーパー401が揺動する例を示したが、スクレーパー401が平滑面ベルト43に当接する角度に限定はなく、任意の角度にすることが可能である。また、
図8(a)に示すように、スクレーパー401が作用位置と退避位置とにわたって直線的に移動する構成とすることも可能であり、
図8(b)に示すように、スクレーパー401が複数の羽根411を有する回転体であっても良く、角材や平滑面ベルト43よりも遅く回転するローラであっても良い。