特許第5868326号(P5868326)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5868326新規なジビニルエーテル化合物及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5868326
(24)【登録日】2016年1月15日
(45)【発行日】2016年2月24日
(54)【発明の名称】新規なジビニルエーテル化合物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 43/162 20060101AFI20160210BHJP
   C07C 41/08 20060101ALI20160210BHJP
【FI】
   C07C43/162CSP
   C07C41/08
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-537787(P2012-537787)
(86)(22)【出願日】2011年10月6日
(86)【国際出願番号】JP2011073597
(87)【国際公開番号】WO2012046880
(87)【国際公開日】20120412
【審査請求日】2014年7月28日
(31)【優先権主張番号】特願2011-100452(P2011-100452)
(32)【優先日】2011年4月28日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-100451(P2011-100451)
(32)【優先日】2011年4月28日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2010-228024(P2010-228024)
(32)【優先日】2010年10月8日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2010-228023(P2010-228023)
(32)【優先日】2010年10月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(72)【発明者】
【氏名】福西 陽一
(72)【発明者】
【氏名】室谷 昌宏
【審査官】 水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−312060(JP,A)
【文献】 特開2000−098613(JP,A)
【文献】 特開2001−278829(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/035903(WO,A1)
【文献】 特開2009−242484(JP,A)
【文献】 特開2010−053087(JP,A)
【文献】 特開2012−233062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 1/00−409/44
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I”)
【化1】
で表される5,5−ビス[(エテニロキシ)メチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンであるジビニルエーテル化合物。
【請求項2】
式(II):
【化2】
(式中、Aは単結合又は二重結合を示す。)
で表される2,2−ノルボルナンジメタノール又は5−ノルボルネン−2,2−ジメタノールと、アセチレンとを、アルカリ性化合物触媒の存在下に、非プロトン性極性溶媒中で反応させることによって、式(I)で表されるジビニルエーテル化合物を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なジビニルエーテル化合物、更に詳しくは2,2−ビス[(エテニロキシ)メチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプタン及び5,5−ビス[(エテニロキシ)メチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に係るジビニルエーテル化合物、具体的には2,2−ビス[(エテニロキシ)メチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(別名:2,2−ノルボルナンジメタノールジビニルエーテル)及び5,5−ビス[(エテニロキシ)メチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(別名:5−ノルボルネン−2,2−ジメタノールジビニルエーテル)は、従来報告例はなく、新規な化合物であると考えられる。
【0003】
本発明に係るジビニルエーテル化合物に関連する技術としては、例えば下記特許文献1及び2がある。特許文献1にはペンタエリスリトールアセタールジビニルエーテルが記載されている。この化合物は、アセタール構造を有しているため加水分解しやすく、本発明に係るジビニルエーテル化合物とは水に対する安定性の点で相違するものである。
特許文献2には1,3−アダマンタンジメタノールジビニルエーテルが記載されているが、この化合物は本発明に係るジビニルエーテル化合物とは環化重合のしやすさの点で相違するものである。
【0004】
【特許文献1】特開2009−242484号公報
【特許文献2】特開2010−053087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、新規なジビニルエーテル化合物、具体的には2,2−ビス[(エテニロキシ)メチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプタン及び5,5−ビス[(エテニロキシ)メチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン並びにその製造方法を提供することにある。
【0006】
本発明に係る新規なジビニルエーテル化合物、具体的には2,2−ビス[(エテニロキシ)メチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプタン及び5,5−ビス[(エテニロキシ)メチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンは、硬化性、密着性、紫外光の透過性、剛直性に優れるため、重合組成物原料、架橋剤及び種々の合成試薬として有用である。従って、本発明の新規なジビニルエーテル化合物はインク、塗料、レジスト、カラーフィルタ、接着剤、製版材、封止剤、画像形成剤等の用途に利用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に従えば、式(I):
(式中、Aは単結合又は二重結合を示す。)
で表される新規なジビニルエーテル化合物が提供される。
【0008】
本発明の製造方法に従えば、式(II):
(式中、Aは単結合又は二重結合を示す。)
で表される2,2−ノルボルナンジメタノール又は5−ノルボルネン−2,2−ジメタノールと、アセチレンとを、アルカリ性化合物触媒の存在下に、非プロトン性極性溶媒中で反応させることによって式(I):
(式中、Aは単結合又は二重結合を示す。)
で表される新規なジビニルエーテル化合物、具体的には式(I’)の2,2−ビス[(エテニロキシ)メチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプタン又は式(I”)の5,5−ビス[(エテニロキシ)メチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンを製造することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の新規なジビニルエーテル化合物は、低臭気、低揮発性且つ低皮膚刺激性であって、毒性が低く、また、硬化性、密着性、紫外光の透過性に優れる重合組成物原料として、有用な特性を有することが期待できる。更に本発明の式(I)で表される新規なジビニルエーテル化合物は、単独で、あるいは他の化合物との間で、特殊な反応性を有するビニルエーテル基を特異な位置に2つ有するという特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】2,2−ビス[(エテニロキシ)メチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプタンのH−NMRチャートである。
図2】2,2−ビス[(エテニロキシ)メチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプタンの13C−NMRチャートである。
図3】5,5−ビス[(エテニロキシ)メチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンのH−NMRチャートである。
図4】5,5−ビス[(エテニロキシ)メチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンの13C−NMRチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明に従えば、本発明に係るジビニルエーテル化合物(I)は、以下の反応式に従って、合成することができる。
(式中、Aは単結合又は二重結合を示す。)
【0012】
本発明の第一の態様に従えば、2,2−ビス[(エテニロキシ)メチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(I’)は、アルカリ性化合物触媒の存在下に、非プロトン性溶媒中で、以下の反応式に従って、合成することができる。
【0013】
本発明の第二の態様に従えば、5,5−ビス[(エテニロキシ)メチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(I”)は、アルカリ性化合物触媒の存在下に、非プロトン性溶媒中で、以下の反応式に従って、合成することができる。
【0014】
本発明におけるジビニルエーテル化合物(I)の具体的な合成法としては、例えば次のような方法を挙げることができる。
ステンレス鋼(SUS)製の耐圧反応容器等の反応容器中に、溶媒として、非プロトン性極性溶媒、例えばジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、N,N’−ジメチルエチレン尿素、N,N’−ジメチルプロピレン尿素、N,N’−ジエチルエチレン尿素、N,N’−ジイソプロピルエチレン尿素、N,N,N’,N’,N’’,N’’−ヘキサメチルリン酸トリアミド、1,3,4−トリメチル−2−イミダゾリジノン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル等から選択される少なくとも1種の非プロトン性溶媒を入れ、次に原料化合物である2,2−ノルボルナンジメタノール又は5−ノルボルネン−2,2−ジメタノールを供給し、反応触媒として、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物等のアルカリ性化合物を添加する。この際、非プロトン性極性溶媒の使用量には特に制限はないが、非プロトン性極性溶媒の使用量は、2,2−ノルボルナンジメタノール又は5−ノルボルネン−2,2−ジメタノール100質量部に対して、好ましくは100〜1,000質量部、更に好ましくは200〜700質量部である。非プロトン性極性溶媒の使用量が、2,2−ノルボルナンジメタノール又は5−ノルボルネン−2,2−ジメタノール100質量部に対して、100質量部未満の場合、反応の選択性が低下するおそれがあるので好ましくない。一方、非プロトン性極性溶媒の使用量が、2,2−ノルボルナンジメタノール又は5−ノルボルネン−2,2−ジメタノール100質量部に対して、1000質量部を超えた場合、反応終了後の溶媒除去が煩雑になるおそれがあるので好ましくない。また、反応触媒であるアルカリ性化合物の使用量にも、特に制限はないが、アルカリ性化合物の使用量は、2,2−ノルボルナンジメタノール又は5−ノルボルネン−2,2−ジメタノール100質量部に対して、好ましくは少なくとも2質量部であり、更に好ましくは4〜50質量部である。
【0015】
次に、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等の不活性ガスにより反応容器内を置換した後、反応容器を密封して、アセチレンを圧入しながら、昇温して反応させることにより、本発明に係る式(I)のジビニルエーテル化合物、具体的には式(I’)の2,2−ビス[(エテニロキシ)メチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプタン又は式(I”)の5,5−ビス[(エテニロキシ)メチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンを生成させることができる。反応容器内の雰囲気はアセチレン単独とすることができるが、アセチレンに、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスを併用してもよい。
【0016】
本発明において、式(I)のジビニルエーテル化合物を製造する際の反応条件としては、例えばアセチレンの圧力がゲージ圧で0.01MPa以上であることが好ましく、生産性、副反応抑制、安全性の観点から、アセチレン圧力はゲージ圧で0.15MPa以上、1.0MPa以下であるのが更に好ましい。一方、反応温度は80〜140℃が好ましく、反応速度の観点からは100℃以上であるのが好ましく、経済性、副反応抑制の観点からは130℃以下であるのが好ましい。
【0017】
なお、本発明に用いる原料である式(II)の2,2−ノルボルナンジメタノール又は5−ノルボルネン−2,2−ジメタノール(II)は、公知の化合物であり、従来公知の方法で製造することができる。2,2−ノルボルナンジメタノールは、例えば特開2005−29608号公報の合成例4に記載された方法によることができる。具体的には東京化成工業株式会社から製品名5−ノルボルネン−2,2−ジメタノールとして市販されている5−ノルボルネン−2,2−ジメタノールから製造することができる。
【0018】
本発明に係る前記式(I)で表わされるジビニルエーテル化合物は単独重合、又は他のモノマー(例えば、n−ブチルビニルエーテル)と共重合することができ、ガラス転移温度が高いポリマーを得ることができる。重合方法については特に制限はなく、例えば汎用の重合方法であるHCl/ZnClを重合開始剤としたトルエン中での反応等によって重合することができる。
【実施例】
【0019】
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明の範囲をこれら実施例に限定するものでないことはいうまでもない。
【0020】
調製例1
2,2−ノルボルナンジメタノールの調製
5−ノルボルネン−2,2−ジメタノール(東京化成工業(株)より市販)138.18gをエタノール481.63gに溶解し、5%Pd−C 6.92gを加え、水素風船を付け6時間撹拌した。Pd−Cを濾別後、反応溶液を濃縮し、乾燥することにより2,2−ノルボルナンジメタノール129.83gを得た(ガスグロマトグラフィーによる純度99.1%、収率92.9%)。
【0021】
実施例1
攪拌器、圧力ゲージ、温度計、ガス導入管及びガスパージラインを備えた容量300mlのSUS製耐圧反応容器に、ジメチルスルホキシド70.07g、調製例1で調製した2,2−ノルボルナンジメタノール8.00g(0.044mol)及び純度95.0%の水酸化カリウム1.52g(0.031mol)を仕込み、攪拌下に約60分間窒素ガスを流し、容器内を窒素にて置換した。次いで、反応容器を密封し、容器内にアセチレンガスを0.18MPaの圧力で圧入した。次いで、ゲージ圧力を0.18MPaに保ちながら徐々に昇温し、反応容器内温が90℃を越えないように制御し、約2時間反応させた。この間、逐次アセチレンガスを補充して反応容器内の圧力を常に0.18MPaに保った。反応終了後、残留するアセチレンガスをパージして、反応液95.90gを得た。この反応液のガスクロ分析の結果、2,2−ノルボルナンジメタノールの転化は定量的に進行し、所望の2,2−ビス[(エテニロキシ)メチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプタンの選択率は99.2%であった。
【0022】
次いで、上記反応液にヘプタン197g及び蒸留水190gを加え、撹拌及び濾過した後、上層を抜き出し、活性炭処理し、減圧濃縮した。この濃縮物をさらに減圧下(0.2kPa)に蒸留し、89℃〜93℃で留出した留分7.22gを集めた。この得られた留分は、NMRによる分析の結果、下記式で示される2,2−ビス[(エテニロキシ)メチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプタンであった(ガスグロマトグラフィーによる純度99.5%、収率79.3%)。
【0023】
【0024】
得られた2,2−ビス[(エテニロキシ)メチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプタンのNMR分析の特性吸収値は表Iに示す通りであった。また、得られた2,2−ビス[(エテニロキシ)メチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプタンのH−NMRチャートを図1に、13C−NMRチャートを図2に示した。
【0025】
【表1】
【0026】
使用例1
重合開始剤及びルイス酸としては、HCl/ZnClを用いた。シュレンク管に、実施例1で得た2,2−ビス[(エテニロキシ)メチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプタンの9質量%トルエン溶液4.0mL、0.18%HCl溶液0.5mL、ZnCl溶液0.5mLを、この順に注射器で注入して、重合を開始した。トルエン中、−30℃、モノマー濃度0.30mol/L(ガスクロマトグラフィーの内部標準としてテトラリンを含有)、HCl濃度5.0mmol/L、ZnCl濃度2.0mmol/Lで行った。重合は、180分で重合率100%に達し、重合系にアンモニア水を少量加えたメタノールを加えて、重合を停止させた。
【0027】
生成ポリマーは、重合を停止した溶液を分液ロートに移し塩化メチレンで希釈し、イオン交換水で3回洗浄し、次いで有機層からエバポレーターにより溶媒を除去し、減圧乾燥して回収した。
【0028】
このポリマーは、メタノールによりデカンテーションして更に精製した。得られたポリマーの数平均分子量(Mn)は13,200で、分子量分布(Mw/Mn)は1.45、ガラス転移温度(Tg)は165℃、熱分解温度(Td)は337℃であった。なお、測定は、示差走査熱量測定装置(RIGAKU Thermo Plus DSC8230L)を用いて測定を行った(以下同じ)。
【0029】
使用例1で得たジビニルエーテルホモポリマーを塗料用原料に用いたところ、低臭気、低揮発性、低皮膚刺激性及び低毒性であり、さらにガラス転移温度が高いため、硬度が高く、乾燥性及び耐汚染性に優れた塗膜が得られた。
また、これをフォトレジスト用原料に用いたところ、低臭気、低揮発性、低皮膚刺激性及び低毒性であり、さらにガラス転移温度が高いため、良好な強度を有するレジストが得られた。
【0030】
実施例2
攪拌器、圧力ゲージ、温度計、ガス導入管及びガスパージラインを備えた容量300mlのSUS製耐圧反応容器に、ジメチルスルホキシド70.07g、5−ノルボルネン−2,2−ジメタノール(東京化成工業(株)より市販)7.00g(0.038mol)及び純度95.0%の水酸化カリウム1.30g(0.027mol)を仕込み、攪拌下に約60分間窒素ガスを流し、容器内を窒素にて置換した。次いで、反応容器を密封し、容器内にアセチレンガスを0.18MPaの圧力で圧入した。次いで、ゲージ圧力を0.18MPaに保ちながら徐々に昇温し、反応容器内温が90℃を越えないように制御し、約2時間30分反応させた。この間、逐次アセチレンガスを補充して反応容器内の圧力を常に0.18MPaに保った。反応終了後、残留するアセチレンガスをパージして、反応液81.99gを得た。この反応液のガスクロ分析の結果、5−ノルボルネン−2,2−ジメタノールの転化は定量的に進行し、所望の5,5−ビス[(エテニロキシ)メチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンの選択率は99.9%であった。
【0031】
次いで、上記反応液にヘプタン160g及び蒸留水160gを加え、撹拌及び濾過した後、上層を抜き出し、減圧濃縮した。この濃縮物をさらに減圧下(0.3kPa)に蒸留し、96℃〜100℃で留出した留分6.50gを集めた。この得られた留分は、NMRによる分析の結果、下記式で示される5,5−ビス[(エテニロキシ)メチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンであった(ガスグロマトグラフィーによる純度99.0%、収率81.5%)。
【0032】
【0033】
得られた5,5−ビス[(エテニロキシ)メチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンのNMR分析の特性吸収値は表IIに示す通りであった。また、得られた5,5−ビス[(エテニロキシ)メチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンのH−NMRチャートを図3に、13C−NMRチャートを図4に示した。
【表2】
【0034】
使用例2
重合開始剤及びルイス酸は、HCl/ZnClを用いた。シュレンク管に、実施例2で得た5,5−ビス[(エテニロキシ)メチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンの9質量%トルエン溶液4.0mL、0.18%HCl溶液0.5mL、ZnCl溶液0.5mLを、この順に注射器で注入して、重合を開始した。トルエン中、−30℃、モノマー濃度0.30mol/L(ガスクロマトグラフィーの内部標準としてテトラリンを含有)、HCl濃度5.0mmol/L、ZnCl濃度2.0mmol/Lで行った。重合は、60分で重合率91%に達し、重合系に、アンモニア水を少量加えたメタノールを加えて、重合を停止した。
【0035】
生成ポリマーは、重合を停止した溶液を分液ロートに移し塩化メチレンで希釈し、イオン交換水で3回洗浄し、次いで有機層からエバポレーターにより溶媒を除去し、減圧乾燥して回収した。
【0036】
このポリマーは、メタノールによりデカンテーションして更に精製した。得られたポリマーの数平均分子量(Mn)は12,900で、分子量分布(Mw/Mn)は1.92、ガラス転移温度(Tg)は162℃、熱分解温度(Td)は271℃であった。
【0037】
使用例2で得たジビニルエーテルホモポリマーを塗料用原料に用いたところ、低臭気、低揮発性、低皮膚刺激性及び低毒性であり、さらにガラス転移温度が高いため、硬度が高く、乾燥性及び耐汚染性に優れた塗膜が得られた。
また、これをフォトレジスト用原料)に用いたところ、低臭気、低揮発性、低皮膚刺激性及び低毒性であり、さらにガラス転移温度が高いため、良好な強度を有するレジストが得られた。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明に係る式(I)の新規なジビニルエーテルは、重合してジビニルエーテルホモポリマーとすることにより、ガラス転移温度が高いという優れた性能を示すポリマーとすることができ、またこのポリマーは硬化性、基材密着性、透明性に優れることに加え、耐熱性に優れるため、インク及び塗料に代表されるインク用原料、並びにレジスト、カラーフィルター、接着剤、製版材、封止剤及び画像形成用に代表される電子材料用原料等に有用である。
図1
図2
図3
図4