特許第5868596号(P5868596)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5868596
(24)【登録日】2016年1月15日
(45)【発行日】2016年2月24日
(54)【発明の名称】特定の化学的実体、組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 473/34 20060101AFI20160210BHJP
   A61K 31/52 20060101ALI20160210BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20160210BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20160210BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20160210BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20160210BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20160210BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20160210BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20160210BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20160210BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20160210BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20160210BHJP
   A61P 5/14 20060101ALI20160210BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20160210BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20160210BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20160210BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20160210BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20160210BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20160210BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20160210BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20160210BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20160210BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20160210BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20160210BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20160210BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20160210BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20160210BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20160210BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20160210BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20160210BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20160210BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20160210BHJP
【FI】
   C07D473/34 361
   C07D473/34CSP
   A61K31/52
   A61K9/06
   A61K9/08
   A61K9/10
   A61K9/12
   A61K9/20
   A61P1/00
   A61P1/04
   A61P1/18
   A61P3/00
   A61P3/10
   A61P5/14
   A61P9/00
   A61P9/10
   A61P11/00
   A61P11/06
   A61P13/08
   A61P13/10
   A61P13/12
   A61P17/00
   A61P17/06
   A61P19/02
   A61P19/08
   A61P25/00
   A61P27/02
   A61P29/00
   A61P29/00 101
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61P37/02
   A61P37/08
   A61P43/00 111
【請求項の数】27
【全頁数】157
(21)【出願番号】特願2010-541560(P2010-541560)
(86)(22)【出願日】2009年1月5日
(65)【公表番号】特表2011-509259(P2011-509259A)
(43)【公表日】2011年3月24日
(86)【国際出願番号】US2009000038
(87)【国際公開番号】WO2009088986
(87)【国際公開日】20090716
【審査請求日】2011年12月13日
(31)【優先権主張番号】61/009,971
(32)【優先日】2008年1月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/194,294
(32)【優先日】2008年9月26日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/201,146
(32)【優先日】2008年12月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510186720
【氏名又は名称】インテリカイン, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】レン, ピンダ
(72)【発明者】
【氏名】リュー, イー
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン, トロイ エドワード
(72)【発明者】
【氏名】チャン, カトリーナ
(72)【発明者】
【氏名】ロメル, クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】リー, リャンシェン
【審査官】 鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−508782(JP,A)
【文献】 特表2007−537291(JP,A)
【文献】 特表2005−509635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 473/34
C07D 487/04
C07D 519/00
C07F 9/6561
A61K 31/33−33/44
A61K 9/00−9/72
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物
【化1】
または薬学的に許容されるその塩[式中、
Bは、式IIの部分であり、
【化2】
式中、Wcは、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルまたはシクロアルキルであり、かつ
qは、0、1、2、3または4の整数であり、
Xは、存在しないか、または−(CH(R))−であり、かつzは、1の整数であり、
Yは、−N(R)−であり、
Wdは、
【化3】
であり、
は、水素、アルキル、またはハロであり、
は、アルキル、またはハロであり、
は、水素、またはアルキルであり、かつ
の各存在は、独立に、水素、またはアルキルであり;
ここで、アルキル、アリール、及びシクロアルキルは、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヒドロキシ、ハロ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ニトロ、トリメチルシラニル、−OR、−SR、−OC(O)−R、−N(R、−C(O)R、−C(O)OR、−OC(O)N(R、−C(O)N(R、−N(R)C(O)OR、−N(R)C(O)R、−N(R)C(O)N(R、−N(R)C(NR)N(R、−N(R)S(O)、−S(O)OR、−S(O)N(R、またはPO(R(式中、各Rは、独立に、水素、アルキル、フルオロアルキル、カルボシクリル、カルボシクリルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルであり、かつtは、1または2である)から選択される1つまたは複数の置換基によって、場合によって置換されており、
該ヘテロアリールは、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヒドロキシ、ハロ、シアノ、ニトロ、オキソ、チオキソ、トリメチルシラニル、−OR、−SR、−OC(O)−R、−N(R、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)N(R、−N(R)C(O)OR、−N(R)C(O)R、−N(R)S(O)、−S(O)OR、−S(O)N(RまたはPO(R(各Rは、独立に、水素、アルキル、フルオロアルキル、カルボシクリル、カルボシクリルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルであり、tは、1または2である)から選択される1つまたは複数の置換基によって、場合によって置換されており、
該ヘテロシクロアルキルは、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヒドロキシ、ハロ、シアノ、ニトロ、オキソ、チオキソ、トリメチルシラニル、−OR、−SR、−OC(O)−R、−N(R、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)N(R、−N(R)C(O)OR、−N(R)C(O)R、−N(R)S(O)、−S(O)OR、−S(O)N(RまたはPO(R(各Rは、独立に、水素、アルキル、フルオロアルキル、カルボシクリル、カルボシクリルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルであり、tは、1または2である)から選択される1つまたは複数の置換基によって、場合によって置換されている]。
【請求項2】
qが0である、請求項1記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
【請求項3】
がハロである、請求項2記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
【請求項4】
がC〜Cアルキルである、請求項2記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
【請求項5】
がメチルである、請求項4記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
【請求項6】
がC〜Cアルキルである、請求項1記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
【請求項7】
がメチルである、請求項6記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
【請求項8】
が水素である、請求項1記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
【請求項9】
Xが、−CH−、−CH(CHCH)−または−CH(CH)−である、請求項1記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
【請求項10】
X−Yが、−CH−N(CH)−、−CH−N(CHCH)−、−CH(CHCH)−NH−または−CH(CH)−NH−である、請求項1記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
【請求項11】
下記化合物
【化4】
である、請求項1記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
【請求項12】
下記化合物
【化5】
である、請求項1記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
【請求項13】
薬学的に許容される賦形剤および請求項1〜12のいずれか一項記載の化合物または薬学的に許容されるその塩を含む、組成物。
【請求項14】
液体、固体、半固体、ゲルまたはエアゾール形態である、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
ホスファチジルイノシトール−3キナーゼ(PI3キナーゼ)を阻害するための組成物であって、有効量の請求項1〜12のいずれか一項記載の化合物または薬学的に許容されるその塩を含む、前記組成物。
【請求項16】
前記PI3キナーゼを含有する細胞と接触されることを特徴とする、請求項15記載の組成物。
【請求項17】
前記細胞が、T細胞、B細胞、肥満細胞、樹状細胞および好中球から選択される、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
前記阻害が、癌、骨疾患、炎症性疾患、免疫疾患、神経疾患、代謝性障害、呼吸器疾患、血栓症または心疾患に罹患している対象で行われる、請求項16記載の組成物。
【請求項19】
前記阻害が、癌に罹患している対象で行われる、請求項18記載の組成物。
【請求項20】
前記癌が、リンパ腫または白血病である、請求項18記載の組成物。
【請求項21】
前記白血病が、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、有毛細胞白血病、脊髄形成異常症、骨髄増殖性疾患、肥満細胞症、多発性骨髄腫(MM)または骨髄異形成症候群(MDS)である、請求項20記載の組成物。
【請求項22】
前記リンパ腫が、びまん性大型B細胞リンパ腫、B細胞免疫芽細胞リンパ腫、小型非切れ込み核細胞性リンパ腫、ヒト白血球ウイルス−タイプ1(HTLV−1)白血病/リンパ腫、成人T細胞リンパ腫、ホジキン疾患または非ホジキンリンパ腫である、請求項20記載の組成物。
【請求項23】
前記疾患が、炎症性疾患または免疫疾患であり、該炎症性疾患または免疫疾患が、喘息、肺気腫、アレルギー、皮膚炎、関節リウマチ、乾癬、紅斑性狼瘡、移植片対宿主病、炎症性腸疾患、湿疹、強皮症、クローン病または多発性硬化症である、請求項18記載の組成物。
【請求項24】
疾患を治療するための請求項1〜12のいずれか一項記載の化合物を含む組成物であって、該疾患が、癌、骨疾患、炎症性疾患、免疫疾患、神経疾患、代謝性障害、呼吸器疾患、血栓症または心疾患である、前記組成物。
【請求項25】
前記疾患が癌である、請求項24記載の組成物。
【請求項26】
前記疾患が炎症性疾患である、請求項24記載の組成物。
【請求項27】
疾患を治療するための薬剤の製造における請求項1〜12のいずれか一項記載の化合物の使用であって、該疾患が、癌、骨疾患、炎症性疾患、免疫疾患、神経疾患、代謝性障害、呼吸器疾患、血栓症または心疾患である、前記使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2008年1月4日に出願された米国仮特許出願第61/009,971号、2008年9月26日に出願された米国仮特許出願第61/194,294号、2008年12月5日に出願された米国仮特許出願第61/201,146号、および本明細書とともに出願された代理人整理番号35280−714.601の下の同時係属中の件の利益を主張し、これらはその全体が本明細書中に参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
細胞の活性は、細胞内事象を刺激または阻害する外部シグナルによって制御され得る。細胞内反応を誘発するための刺激性または阻害性シグナルが細胞内におよび細胞内で伝達される過程は、シグナル伝達と呼ばれる。過去数十年にわたり、シグナル伝達事象のカスケードが解明され、様々な生物学的反応において中心的な役割を担うことが見出されてきた。シグナル伝達経路の様々な成分の欠陥は、数々の形態の癌、炎症性障害、代謝性障害、血管および神経疾患を含む膨大な数の疾患の原因であることが見出されている(非特許文献1)。
【0003】
キナーゼは、ある種の重要なシグナル伝達分子である。キナーゼは、一般に、タンパク質キナーゼおよび脂質キナーゼに分類することができ、幾つかのキナーゼは二重の特異性を示す。タンパク質キナーゼは、他のタンパク質および/またはそれら自体をリン酸化する(即ち自己リン酸化)酵素である。タンパク質キナーゼは、一般に、それらの基質利用に基づいて以下の主な3つの群:主にチロシン残基上の基質をリン酸化するチロシンキナーゼ(例えば、erb2、PDGF受容体、EGF受容体、VEGF受容体、src、abl)、主にセリンおよび/またはトレオニン残基上の基質をリン酸化するセリン/トレオニンキナーゼ(例えば、mTorC1、mTorC2、ATM、ATR、DNA−PK、Akt)、ならびにチロシン、セリンおよび/またはトレオニン残基上の基質をリン酸化する二重特異性キナーゼに分類することができる。
【0004】
脂質キナーゼは、脂質のリン酸化を触媒する酵素である。これらの酵素ならびに得られたリン酸化脂質および脂質由来の生物活性のある有機分子は、細胞の増殖、遊走、接着および分化を含む多くの異なる生理学的過程において役割を担っている。幾つかの脂質キナーゼは、膜結合性であり、細胞膜に含有されているまたはそれに結合している脂質のリン酸化を触媒する。かかる酵素の例には、ホスホイノシチド(複数)キナーゼ(PI3−キナーゼ、PI4−キナーゼなど)、ジアシルグリセロールキナーゼおよびスフィンゴシンキナーゼが含まれる。
【0005】
ホスホイノシチド3−キナーゼ(PI3K)シグナル伝達経路は、ヒトの癌において最も高度に突然変異した系の1つである。PI3Kシグナル伝達は、ヒトの他の多くの疾患における非常に重要な要素でもある。PI3Kシグナル伝達は、アレルギー性接触皮膚炎、関節リウマチ、変形性関節症、炎症性腸疾患、慢性閉塞性肺障害、乾癬、多発性硬化症、喘息、糖尿病性合併症に関連する障害および急性冠不全症候群などの心臓血管系の炎症性合併症を含む多くの病状に関与している。
【0006】
PI3Kは、ホスファチジルイノシトールまたはホスホイノシチド上の3’−OH基をリン酸化する細胞内脂質キナーゼの、独特かつ保存されたファミリーのメンバーである。PI3Kファミリーは、明確な基質特異性、発現パターンおよび制御方法(Katsoら、2001年)を伴う15のキナーゼを含む。クラスIのPI3K(p110α、p110β、p110δおよびp110γ)は、一般に、チロシンキナーゼまたはGタンパク質結合受容体によって活性化されてPIP3を産生するが、これはAkt/PDK1経路、mTOR、TecファミリーキナーゼおよびRhoファミリーGTPaseにおけるエフェクターなどの下流エフェクターに関与する。クラスIIおよびIII PI3−Kは、PI(3)PおよびPI(3,4)P2の合成を介する細胞内輸送において非常に重要な役割を担っている。PIKKは、細胞増殖を制御し(mTORC1)、またはゲノムの完全性をモニターする(ATM、ATR、DNA−PKおよびhSmg−1)タンパク質キナーゼである。
【0007】
クラスIのPI3Kのデルタ(δ)アイソフォームは、特に、幾つかの疾患および生物学的過程に関与するとされてきた。PI3Kδは、主に、T細胞、樹状細胞、好中球、肥満細胞、B細胞およびマクロファージなどの白血球を含む造血細胞内に発現する。PI3Kδは、T細胞機能、B細胞活性化、肥満細胞活性化、樹状細胞機能および好中球活性などの哺乳動物の免疫系機能に一体的に関与している。免疫系機能におけるその一体的役割により、PI3Kδは、アレルギー反応などの望ましくない免疫反応、炎症性疾患、炎症媒介性血管形成、関節リウマチ、狼瘡などの自己免疫疾患、喘息、肺気腫および他の呼吸器疾患に関連する幾つかの疾患にも関与している。免疫系機能に関与している他のクラスIのPI3Kには、PI3Kγが含まれるが、これは、白血球のシグナル伝達においてある役割を担っており、炎症、関節リウマチおよび狼瘡などの自己免疫疾患に関与するとされている。
【0008】
PI3Kシグナル伝達経路の下流メディエーターには、Aktおよびラパマイシンの哺乳動物標的(mTOR)が含まれる。Aktは、PIP3と結合してAktキナーゼの活性化をもたらすプレクストリン(plckstrin)相同(PH)ドメインを有する。Aktは、多くの基質をリン酸化し、多様な細胞反応のPI3Kの中心的下流エファクターである。Aktの重要な一機能は、TSC2のリン酸化および他の機構を介してmTORの活性を増大させることである。mTORは、PI3Kファミリーの脂質キナーゼに関連するセリン−トレオニンキナーゼである。mTORは、細胞成長、細胞増殖、細胞運動性および生存を含む多種多様な生理学的過程に関与するとされてきた。mTOR経路の調節異常は、様々な種類の癌において報告されている。mTORは、増殖因子および栄養シグナルを統合して、タンパク質翻訳、栄養摂取、自食作用およびミトコンドリア機能を制御する多機能キナーゼである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Gaestelら、Current Medicinal Chemistry(2007年)14巻:2214〜2234頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、キナーゼ、特にPI3Kは、薬物開発の主要な標的となっている。薬物開発に適したPI3K阻害剤が、依然必要とされている。本発明はこの要求に取り組み、新しいクラスのキナーゼ阻害剤を提供することによって関連する利点も得られる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
一態様では、本発明は、以下の式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩を提供し、式中、
【0012】
【化1】
は、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、
Bは、式IIの部分であり、
【0013】
【化2】
式中、Wは、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルまたはシクロアルキルであり、qは、0、1、2、3または4の整数であり、
Xは、存在しないか、または−(CH(R))−であり、zは整数1であり、
Yは、存在しないか、または−N(R)−であり、
は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アミド、アルコキシカルボニル、スルホンアミド、ハロ、シアノまたはニトロであり、
は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、アルコキシ、アミノ、ハロ、シアノ、ヒドロキシまたはニトロであり、
は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルコキシ、アミド、アミノ、アルコキシカルボニルスルホンアミド、ハロ、シアノ、ヒドロキシまたはニトロであり、
、R、RおよびRは、独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル(hetercycloalkyl)、アルコキシ、アミド、アミノ、アシル、アシルオキシ、スルホンアミド、ハロ、シアノ、ヒドロキシまたはニトロであり、
の各存在は、独立に、水素、アルキル、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルである。
【0014】
別の態様では、本発明は、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩を提供し、式中、
【0015】
【化3】
は、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、
Bは、アルキル、アミノ、ヘテロアルキルまたは式IIの部分であり、
【0016】
【化4】
式中、Wは、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルまたはシクロアルキルであり、qは、0、1、2、3または4の整数であり、
Xは、存在しないか、または−(CH(R))−であり、zは、独立に、1、2、3または4の整数であり、
Yは、存在しないか、−O−、−S−、−S(=O)−、−S(=O)−、−N(R)−、−C(=O)−(CHR−、−C(=O)−、−N(R)(C=O)−、−N(R)(C=O)NH−または−N(R)C(R−であり、
は、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、アルコキシ、アミド、アミノ、アシル、アシルオキシ、アルコキシカルボニル、スルホンアミド、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、ニトロ、ホスフェート、尿素またはカーボネートであり、
は、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、アルコキシ、アミド、アミノ、アシル、アシルオキシ、アルコキシカルボニル、スルホンアミド、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、ニトロ、ホスフェート、尿素またはカーボネートであり、
は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルコキシ、アミド、アミノ、アシル、アシルオキシ、アルコキシカルボニル、スルホンアミド、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、アリール、ヘテロアリールまたはニトロであり、
、R、RおよびRは、独立に、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cシクロアルキル、C〜Cヘテロアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアミド、アミノ、アシル、C〜Cアシルオキシ、アルコキシカルボニル,C〜Cスルホンアミド、ハロ、シアノ、ヒドロキシまたはニトロであり、
の各存在は、独立に、水素、C〜C10アルキル、C〜Cシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルまたはC〜C10ヘテロアルキルである。
【0017】
実施形態の幾つかでは、Xは、−CH−、−CH(CHCH)または−CH(CH)−である。
【0018】
幾つかの実施形態では、X−Yは、−CH−N(CH)、−CH−N(CHCH)、−CH(CHCH)−NH−または−CH(CH)−NH−である。
【0019】
幾つかの実施形態では、Wは、式IIIのピラゾロピリミジンであり、
【0020】
【化5】
式中、R11は、H、アルキル、ハロ、アミノ、アミド、ヒドロキシまたはアルコキシであり、R12は、H、アルキル、アルキニル、アルケニル、ハロ、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルまたはシクロアルキルである。幾つかの実施形態では、Wは、式IIIのピラゾロピリミジンであり、R11は、H、アルキル、ハロ、アミノ、アミド、ヒドロキシまたはアルコキシであり、R12は、シアノ、アミノ、カルボン酸またはアミドである。
【0021】
幾つかの実施形態では、式Iの化合物は、式IVの構造を有し、
【0022】
【化6】
式中、R11は、H、アルキル、ハロ、アミノ、アミド、ヒドロキシまたはアルコキシであり、R12は、H、アルキル、アルキニル、アルケニル、ハロ、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルまたはシクロアルキルである。幾つかの実施形態では、式Iの化合物は、R11が、H、アルキル、ハロ、アミノ、アミド、ヒドロキシまたはアルコキシであり、R12が、シアノ、アミノ、カルボン酸またはアミドである式IVの構造を有する。
【0023】
式Iの化合物の幾つかの実施形態では、R11はアミノである。式Iの化合物の幾つかの実施形態では、R12は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアリール、アリールまたはヘテロシクロアルキルである。式Iの化合物の幾つかの実施形態では、R12は、シアノ、アミノ、カルボン酸またはアミドである。式Iの化合物の幾つかの実施形態では、R12は、単環式ヘテロアリールである。式Iの化合物の幾つかの実施形態では、R12は、二環式ヘテロアリールである。
【0024】
式Iの化合物の幾つかの実施形態では、化合物は、式Vの構造を有する。
【0025】
【化7】
式Iの実施形態の幾つかでは、X−Yは、N(CHCH)CH−またはN(CH)CH−である。式Iの実施形態の幾つかでは、化合物は、式VIの構造を有する。
【0026】
【化8】
式Iの実施形態の幾つかでは、Rは、−H、−CH、−Clまたは−Fである。
【0027】
式Iの実施形態の幾つかでは、R、R、RおよびRは、水素である。
【0028】
式Iの実施形態の幾つかでは、Bは、式IIの部分であり、
【0029】
【化9】
式中、Wは、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルまたはシクロアルキルであり、qは、0、1、2、3または4の整数である。
【0030】
本発明の別の態様では、式中、
Bが、式IIの部分であり、
が、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルまたはシクロアルキルであり、qが、0、1、2、3または4の整数であり、
Xが、存在しないか、または−(CH(R))−であり、zが、整数1であり、
Yが、存在しないか、または−N(R)−であり、
Yが存在しない場合、Wdは、
【0031】
【化10】
であり、またはYが存在する場合、Wdは、
【0032】
【化11】
であり、
が、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アミド、アルコキシカルボニル、スルホンアミド、ハロ、シアノまたはニトロであり、
が、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、アルコキシ、アミノ、ハロ、シアノ、ヒドロキシまたはニトロであり、
が、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルコキシ、アミド、アミノ、アルコキシカルボニルスルホンアミド、ハロ、シアノ、ヒドロキシまたはニトロであり、
が、各場合、独立に、水素、C〜C10アルキル、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキル(hetercyclooalkyl)であり、R12が、H、アルキル、アルキニル、アルケニル、ハロ、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルまたはシクロアルキルである、式Iの構造を有する化合物および薬学的に許容されるその塩が提供される。
【0033】
本発明の別の態様では、式中、
Bが、アルキル、アミノ、ヘテロアルキルまたは式IIの部分であり、
が、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルまたはシクロアルキルであり、qが、0、1、2、3または4の整数であり、
Xが、存在しないか、または−(CH(R))−であり、zが、1、2、3または4の整数であり、
Yが、存在しないか、−N(R)−または−N(R)−CH(R)−であり、
が、
【0034】
【化12】
であり、
が、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、アルコキシ、アミド、アミノ、アシル、アシルオキシ、アルコキシカルボニル、スルホンアミド、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、ニトロ、ホスフェート、尿素またはカーボネートであり、
が、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、アルコキシ、アミド、アミノ、アシル、アシルオキシ、アルコキシカルボニル、スルホンアミド、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、ニトロまたはホスフェートであり、
が、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルコキシ、アミド、アミノ、アシル、アシルオキシ、アルコキシカルボニル、スルホンアミド、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、ニトロ、アリールまたはヘテロアリールであり、
が、各場合、独立に、水素、C〜C10アルキル、C〜Cシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルまたはC〜C10ヘテロアルキルであり、
12が、H、アルキル、アルキニル、アルケニル、ハロ、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、シクロアルキル、シアノ、アミノ、カルボン酸、アルコキシカルボニルまたはアミドである、式Iの構造を有する化合物および薬学的に許容されるその塩が提供される。
【0035】
幾つかの実施形態では、Rは、−H、−CH、−CHCH、−CF、−Clまたは−Fである。他の実施形態では、Rは、−CH、−Clまたは−Fである。
【0036】
幾つかの実施形態では、Bは、式IIの部分であり、Wは、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルまたはシクロアルキルであり、qは、0、1、2、3または4の整数である。幾つかの実施形態では、Bは、ヘテロシクロアルキルである。幾つかの実施形態では、Bは、単環式ヘテロアリールである。幾つかの実施形態では、Bは、置換フェニルである。幾つかの実施形態では、Bは、置換アルキルである。
【0037】
幾つかの実施形態では、Bは、−(CH−NRであり、各Rは、独立に、水素、アルキル、フルオロアルキル、カルボシクリル、カルボシクリルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルであり、あるいは−NRは、一緒に組み合わさって環状部分を形成する。
【0038】
幾つかの実施形態では、Rは、H、−F、−Cl、−CN、−CH、イソプロピル、−CF、−OCH、ニトロまたはホスフェートである。幾つかの実施形態では、Rは、ホスフェートである。
【0039】
幾つかの実施形態では、Rは、ハロ、ヒドロキシ、シアノまたはニトロであり、qは1である。幾つかの実施形態では、Rは、ホスフェートであり、qは1である。幾つかの実施形態では、Rは、アルキルまたはハロであり、qは、1または2である。
【0040】
幾つかの実施形態では、Xは、−CH−、−CH(CHCH)または−CH(CH)−である。幾つかの実施形態では、X−Yは、−CH−N(CH)、−CH−N(CHCH)、−CH(CHCH)−NH−または−CH(CH)−NH−である。幾つかの実施形態では、N(CHCH)CH−またはN(CH)CH−である。
【0041】
幾つかの実施形態では、R12は、単環式ヘテロアリールである。幾つかの実施形態では、R12は、二環式ヘテロアリールである。幾つかの実施形態では、R12は、ヘテロシクロアルキルである。
【0042】
幾つかの実施形態では、式Iの化合物は、式IV−Aの構造を有する。
【0043】
【化13】
幾つかの実施形態では、式Iの化合物は、式V−Aの構造を有する。
【0044】
【化14】
幾つかの実施形態では、式Iの化合物は、式IV−Aまたは式V−Aの構造を有する。
【0045】
幾つかの実施形態では、式Iの化合物は、式V−Bの構造を有する。
【0046】
【化15】
幾つかの実施形態では、式Iの化合物は、式VI−Aの構造を有する。
【0047】
【化16】
本発明の別の態様では、薬学的に許容される賦形剤ならびに式I、式IV、IV−A、V、V−A、V−B、VIおよびVI−Aの1つまたは複数の化合物を含む組成物が提供される。幾つかの実施形態では、組成物は、液体、固体、半固体、ゲルまたはエアゾール形態である。
【0048】
本発明の別の態様では、PI3キナーゼを、有効量の本明細書に開示の1つまたは複数の化合物と接触させるステップを含む、ホスファチジルイノシトール−3キナーゼ(PI3キナーゼ)を阻害する方法が提供される。例えば、接触ステップは、式I、式IV、IV−A、V、V−A、V−B、VIおよびVI−Aの1つまたは複数の化合物の使用を含む。幾つかの実施形態では、接触ステップは、前記PI3キナーゼを含有する細胞を接触させるステップを含む。該方法の幾つかの実施形態では、阻害は、1種または複数種のPI3キナーゼの異常機能を伴う障害に罹患している対象において行われる。1つ以上の型のPI3キナーゼの異常機能に関連する幾つかの例示的疾患は、自己免疫疾患、関節リウマチ、呼吸器疾患、アレルギー性反応、および様々な種類の癌からなる群から選択される。望ましい場合、該方法で使用される化合物は、式IVの構造を有し、R11はアミノであり、R12は置換フェニルである。
【0049】
該方法の幾つかの実施形態では、阻害は、関節リウマチまたは呼吸器疾患に罹患している対象において行われ、該化合物は式IVの構造を有し、R11はアミノであり、R12は二環式ヘテロアリールである。
【0050】
幾つかの実施形態では、該方法は、第2の治療剤を対象に投与するステップを含む。
【0051】
さらに別の態様では、本発明は、望ましくない免疫反応を示す疾患の治療方法を提供する。該方法は、前記望ましくない免疫反応を緩和するのに有効な量の式I、式IV、IV−A、V、V−A、V−B、VIおよびVI−Aの化合物を含む、本明細書に開示の1つまたは複数の化合物を、それを必要としている対象に投与するステップを含む。幾つかの実施形態では、1つまたは複数の化合物は、試験動物に約30mg/kg BID未満の用量で投与される場合に抗TNP IgG3の産生を少なくとも約5分の1に低減することでも明らかなように、T細胞独立性B細胞活性化を阻害する。
【0052】
幾つかの実施形態では、治療される疾患は、対象の関節の腫れまたは疼痛に関連する。該方法は、17日後に関節の平均直径を少なくとも約10%低減すること、および/または例えば7日間の治療後に足首の直径を少なくとも5%低減することを含み、数日から数週間の治療後に足首の直径を少なくとも5〜10%以上低減することでも明らかなように、1つまたは複数の関節リウマチの症候を緩和するのに有効となり得る。別の実施形態では、望ましくない免疫反応は、抗タイプIIコラーゲン抗体の産生の強化によることが明らかであり、1つまたは複数の対象化合物の使用は、血清抗タイプIIコラーゲンレベルを約10mg/kg未満のED50に低減する。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
式Iの化合物
【化74】

または薬学的に許容されるその塩[式中、
Bは、式IIの部分であり、
【化75】

式中、Wは、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルまたはシクロアルキルであり、
qは、0、1、2、3または4の整数であり、
Xは、存在しないか、または−(CH(R))−であり、zは、整数1であり、
Yは、存在しないか、または−N(R)−であり、
Yが存在しない場合、Wdは、
【化76】

であり、またはYが存在する場合、Wdは、
【化77】

であり、
は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アミド、アルコキシカルボニル、スルホンアミド、ハロ、シアノまたはニトロであり、
は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、アルコキシ、アミノ、ハロ、シアノ、ヒドロキシまたはニトロであり、
は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルコキシ、アミド、アミノ、アルコキシカルボニルスルホンアミド、ハロ、シアノ、ヒドロキシまたはニトロであり、
の各存在は、独立に、水素、アルキルまたはヘテロシクロアルキルであり、
12は、H、アルキル、アルキニル、アルケニル、ハロ、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルまたはシクロアルキルである]。
(項目2)
式Iの化合物
【化78】

または薬学的に許容されるその塩[式中、
Bは、アルキル、アミノ、ヘテロアルキルまたは式IIの部分であり、
【化79】

式中、Wは、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルまたはシクロアルキルであり、
qは、0、1、2、3または4の整数であり、
Xは、存在しないか、または−(CH(R))−であり、zは、1、2、3または4の整数であり、
Yは、存在しないか、−N(R)−または−N(R)−CH(R)−であり、
Wdは、
【化80】

であり、
は、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、アルコキシ、アミド、アミノ、アシル、アシルオキシ、アルコキシカルボニル、スルホンアミド、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、ニトロ、ホスフェート、尿素またはカーボネートであり、
は、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、アルコキシ、アミド、アミノ、アシル、アシルオキシ、アルコキシカルボニル、スルホンアミド、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、ニトロまたはホスフェートであり、
は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルコキシ、アミド、アミノ、アシル、アシルオキシ、アルコキシカルボニル、スルホンアミド、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、ニトロ、アリールまたはヘテロアリールであり、
の各存在は、独立に、水素、C〜C10アルキル、C〜Cシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルまたはC〜C10ヘテロアルキルであり、
12は、H、アルキル、アルキニル、アルケニル、ハロ、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、シクロアルキル、シアノ、アミノ、カルボン酸、アルコキシカルボニルまたはアミドである]。
(項目3)
が、−H、−CH、−CHCH、−CF、−Clまたは−Fである、項目1または2に記載の化合物。
(項目4)
が、−CH、−Clまたは−Fである、項目1または2に記載の化合物。
(項目5)
Bが式IIの部分である、項目2に記載の化合物
【化81】

[式中、Wは、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルまたはシクロアルキルであり、
qは、0、1、2、3または4の整数である]。
(項目6)
Bがヘテロシクロアルキルである、項目1または2に記載の化合物。
(項目7)
Bが単環式ヘテロアリールである、項目1または2に記載の化合物。
(項目8)
Bが置換フェニルである、項目1または2に記載の化合物。
(項目9)
Bが置換アルキルである、項目2に記載の化合物。
(項目10)
Bが−(CH−NRであり、各Rが、独立に、水素、アルキル、フルオロアルキル、カルボシクリル、カルボシクリルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルであり、あるいは−NRが、一緒に組み合わさって環状部分を形成する、項目9に記載の化合物。
(項目11)
が、H、−F、−Cl、−CN、−CH、イソプロピル、−CF、−OCH、ニトロまたはホスフェートである、項目1または2に記載の化合物。
(項目12)
がホスフェートである、項目2に記載の化合物。
(項目13)
が、ハロ、ヒドロキシ、シアノまたはニトロであり、qが1である、項目1または2に記載の化合物。
(項目14)
がホスフェートであり、qが1である、項目2に記載の化合物。
(項目15)
が、アルキルまたはハロであり、qが、1または2である、項目1または2に記載の化合物。
(項目16)
Xが、−CH−、−CH(CHCH)または−CH(CH)−である、項目1または2に記載の化合物。
(項目17)
X−Yが、−CH−N(CH)、−CH−N(CHCH)、−CH(CHCH)−NH−または−CH(CH)−NH−である、項目1または2に記載の化合物。
(項目18)
Yが、N(CHCH)CH−またはN(CH)CH−である、項目2に記載の化合物。
(項目19)
12が単環式ヘテロアリールである、項目1または2に記載の化合物。
(項目20)
12が二環式ヘテロアリールである、項目1または2に記載の化合物。
(項目21)
12がヘテロシクロアルキルである、項目1または2に記載の化合物。
(項目22)
式IV−Aの構造を有する、項目1に記載の化合物。
【化82】

(項目23)
式V−Aの構造を有する、項目1に記載の化合物。
【化83】

(項目24)
式IV−Aの構造を有する、項目2に記載の化合物。
【化84】

(項目25)
式V−Aの構造を有する、項目2に記載の化合物。
【化85】

(項目26)
式VI−Aの構造を有する、項目2に記載の化合物。
【化86】

(項目27)
薬学的に許容される賦形剤および項目1に記載の化合物を含む組成物。
(項目28)
液体、固体、半固体、ゲルまたはエアゾール形態である、項目27に記載の組成物。
(項目29)
薬学的に許容される賦形剤および項目2に記載の化合物を含む組成物。
(項目30)
液体、固体、半固体、ゲルまたはエアゾール形態である、項目29に記載の組成物。
(項目31)
ホスファチジルイノシトール−3キナーゼ(PI3キナーゼ)を、有効量の項目1または2に記載の化合物と接触させるステップを含む、PI3キナーゼを阻害する方法。
(項目32)
前記接触ステップが、前記PI3キナーゼを含有する細胞を接触させることを含む、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記阻害が、呼吸器疾患に罹患している対象で行われ、前記化合物が、式IV−Aの構造を有する、項目31に記載の方法
【化87】

[式中、R12は、置換フェニルである]。
(項目34)
前記阻害が、関節リウマチまたは呼吸器疾患に罹患している対象で行われ、前記化合物が、式IV−Aの構造を有する、項目31に記載の方法
【化88】

[式中、R12は、二環式ヘテロアリールである]。
(項目35)
第2の治療剤を前記対象に投与するステップを含む、項目31に記載の方法。
(項目36)
望ましくない免疫反応を現している疾患を治療する方法であって、該望ましくない免疫反応を緩和するのに有効な量で、項目1または2に記載の1つまたは複数の化合物を、該治療を必要としている対象に投与するステップを含む、方法。
(項目37)
1つまたは複数の化合物が、試験動物に約30mg/kg BID未満の量で投与される場合に抗TNP IgG3の産生を少なくとも約5分の1に低減することで明らかにされるように、T細胞独立性B細胞活性化を阻害する、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記疾患が、対象の関節の腫れまたは疼痛に関連する、項目36に記載の方法。
(項目39)
前記投与が、17日後に関節の平均直径を少なくとも約10%低減すること、および/または7日間の治療後に足首の直径を少なくとも5%低減することで明らかなように、1つまたは複数の関節リウマチの症候を緩和するのに有効である、項目36に記載の方法。
(項目40)
前記望ましくない免疫反応が、抗タイプIIコラーゲン抗体の生成の強化によって明らかである、項目36に記載の方法。
(項目41)
1つまたは複数の化合物が、血清抗タイプIIコラーゲンレベルを約10mg/kg未満のED50に低減する、項目40に記載の方法。
(項目42)
前記疾患が自己免疫疾患である、項目36に記載の方法。
(項目43)
前記対象に、IgEの産生を阻害する薬剤を投与するステップを含む、項目36に記載の方法。
【0053】
参考としての援用
本明細書に列挙されているあらゆる刊行物、特許文書および特許出願文書は、あたかもそれぞれ個々の刊行物、特許文書および特許出願文書が、参考として具体的に個々に援用されることを示すのと同程度に、参考として本明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
本発明の新規な特徴を、添付の特許請求の範囲に詳細に示す。本発明の特徴および利点のより良好な理解は、本発明の原理が利用される例示的な実施形態を示す以下の詳細な説明および以下の添付の図を参照することによって得られよう。
図1図1は、インビボでのTNP特異的抗体のT細胞独立性産生の測定のための例示的プロトコルの図である。
図2図2は、経口投与した場合に、ビヒクル対照と比較した、式IVの化合物7および53によって提供された抗原に対するTNP特異的IgG3反応の倍数的減少を示す図である。
図3図3は、ラットのコラーゲン誘発型の関節炎進展モデルにおける経時的な足首直径の増大を減少する、式IVの化合物53の1日2回の経口投与の用量依存効果を示す図である。非関節炎対照ラット、陰性対照ビヒクルを投与した関節炎対照ラット、およびメトトレキサートで1日2回処理した関節炎対照ラットの結果も示す。
図4図4は、ラットのコラーゲン誘発型の関節炎進展モデルに投与した場合に、足首の組織病理を改善する、式IVの化合物7および53の用量依存効果を示す図である。陰性対照ビヒクルまたはメトトレキサートを投与した関節炎対照ラットの結果も示す。
図5図5は、ラットのコラーゲン誘発型の関節炎進展モデルに投与した場合に、膝の組織病理を改善する、式IVの化合物7および53の用量依存効果を示す図である。陰性対照ビヒクルまたは陽性対照メトトレキサートを投与した関節炎対照ラットの結果も示す。
図6図6は、コラーゲン誘発型の関節炎進展ラットモデルに投与した場合に、インビボでの抗タイプIIコラーゲン抗体のレベルを低減する、式IVの化合物7および53の用量依存効果を示す図である。陰性対照ビヒクルまたはメトトレキサートを投与した関節炎のラットの結果も示す。
図7図7は、ラットのコラーゲン誘発型の関節炎進展モデルに投与した場合に、足首の組織病理の改善に対する、式IVの化合物7の用量依存効果を示す図である。関節炎のビヒクル対照ラットおよびメトトレキサート処理した関節炎ラットの結果も示す。
図8図8は、ラットのコラーゲン誘発型の関節炎確立モデルにおける足首の組織病理に対する、毎日投与した式IVの化合物53の用量依存効果を示す図である。関節炎のビヒクル対照ラットおよびEnbrel処理した関節炎ラットの結果も示す。
図9図9は、ラットのコラーゲン誘発型の関節炎確立モデルにおける足首の組織病理に対する、毎日2回投与した式IVの化合物53の用量依存効果を示す図である。関節炎のビヒクル対照ラットおよびEnbrel処理した関節炎ラットの結果も示す。
図10図10は、アジュバント誘発性関節炎モデルにおける足の平均体積の増大に対する、式IVの化合物53の用量依存効果を示す図である。
図11図11は、ラットのアジュバント誘発性関節炎モデルにおけるラットの経時的平均体重に対する、式IVの化合物53の効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
(発明の詳細な説明)
本発明の好ましい実施形態を本明細書に示し、記載しているが、かかる実施形態は例示のみによって提供されることが、当業者には明らかとなろう。今回、数々の変動、変化および置換は、本発明から逸脱せずに当業者に明らかとなろう。本明細書に記載の本発明の実施形態の様々な代替が、本発明の実施において使用できることを理解されたい。添付の特許請求の範囲は、本発明の範囲を定義するものであり、これらの特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲に含まれる方法および構造は、それによって包含されることを企図する。
【0056】
別段定義されない限り、本明細書で使用する全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で言及した全ての特許文書および刊行物は、参照によって組み込まれる。
【0057】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈によって別段示されない限り、複数への言及を含む。
【0058】
本明細書で使用される場合、「薬剤」または「生物学的に活性な薬剤」は、生物学的、薬学的または化学的化合物または他の部分を指す。非限定的な例には、簡単なまたは複雑な有機または無機分子、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、抗体、抗体誘導体、抗体フラグメント、ビタミン誘導体、炭水化物、毒素または化学療法化合物が含まれる。様々な化合物、例えば小分子およびオリゴマー(例えば、オリゴペプチドおよびオリゴヌクレオチド)、ならびに様々な核となる構造に基づく合成有機化合物を合成することができる。さらに、植物または動物抽出物などの様々な天然供給源は、スクリーニングのための化合物を提供することができる。当業者には、本発明の薬剤の構造的性質に関して制限がないことが容易に理解され得る。
【0059】
「アゴニスト」という用語は、本明細書で使用される場合、標的タンパク質の活性であろうが発現であろうがそれを阻害することによって、その標的タンパク質の生物学的機能を引き起こすまたは増強する能力を有する化合物を指す。したがって、「アゴニスト」という用語は、標的ポリペプチドの生物学的役割の文脈において定義される。本明細書の好ましいアゴニストは、標的と特異的に相互反応(例えば結合)するが、標的ポリペプチドが一メンバーであるシグナル伝達経路の他のメンバーとの相互反応によって、標的ポリペプチドの生物学的活性を引き起こすかまたは増強する化合物も、特にこの定義に含まれる。
【0060】
「アンタゴニスト」および「阻害剤」という用語は、交換可能に使用され、これらは、標的タンパク質の活性であろうが発現であろうがそれを阻害することによって、その標的タンパク質の生物学的機能を阻害する能力を有する化合物を指す。したがって、「アンタゴニスト」および「阻害剤」という用語は、標的タンパク質の生物学的役割の文脈において定義される。本明細書の好ましいアンタゴニストは、標的と特異的に相互反応(例えば結合)するが、標的タンパク質が一メンバーであるシグナル伝達経路の他のメンバーとの相互反応によって、標的タンパク質の生物学的活性を阻害する化合物も、特にこの定義に含まれる。アンタゴニストによって阻害される好ましい生物学的活性は、腫瘍の発症、増殖または拡大、あるいは自己免疫疾患に現れるような望ましくない免疫反応に関連している。
【0061】
「抗癌剤」「抗腫瘍剤」または「化学療法剤」は、腫瘍性状態の治療に有用な任意の薬剤を指す。あるクラスの抗癌剤は、化学療法剤を含む。「化学療法」は、静脈内、経口、筋肉内、腹腔内、膀胱内、皮下、経皮、経頬もしくは吸入、または坐剤の形態を含む様々な方法によって、1つまたは複数の化学療法薬物および/または他の薬剤を、癌患者に投与することを意味する。
【0062】
「細胞増殖」という用語は、細胞数が、分化の結果として変化している現象を指す。この用語は、増殖シグナルと一致して細胞の形態が変化している(例えば大きさが増大させている)細胞増殖も包含する。
【0063】
本明細書で使用される、「併用投与」、「組み合わせて投与する」という用語およびそれらの文法的等価物は、2つ以上の薬剤を動物に投与して、その結果両方の薬剤および/またはそれらの代謝産物が同時に動物内に存在することを包含する。併用投与は、別個の組成物としての同時投与、別個の組成物としての異なる時間における投与、または両方の薬剤が存在する組成物としての投与を含む。
【0064】
「有効量」または「治療有効量」という用語は、それに限定されるものではないが、以下に定義の疾患の治療を含む企図した適用を行うのに十分な、本明細書に記載の化合物の量を指す。治療有効量は、企図した適用(インビトロまたはインビボ)、または治療を受ける対象および病状、例えば対象の体重および年齢、病状の重症度、投与方式等に応じて変わり得るが、これは当業者によって容易に決定され得る。この用語は、標的細胞において特定の反応を誘発する、例えば血小板粘着および/または細胞遊走を低減する用量にも適用する。具体的な用量は、選択される特定の化合物、それが他の化合物と組み合わせて投与されようとされまいと従うべき投与レジメン、投与のタイミング、化合物が投与される組織および化合物が運搬される身体送達系に応じて変わることになる。
【0065】
本明細書で使用される場合、「治療」または「治療している」または「軽減している」または「緩和している」は、本明細書では交換可能に使用される。これらの用語は、それに限定されるものではないが、治療効果および/または予防効果を含む有益なまたは所望の結果を得るための手法を指す。治療効果とは、治療を受ける基礎疾患の根絶または緩和を意味する。また治療効果は、患者が依然として基礎障害に罹患しているにもかかわらず該患者において改善が観測されるように、基礎障害に関連する生理学的症候の1つまたは複数を根絶または緩和することによって達成される。予防効果のために、組成物を、特定の疾患を発症する危険性のある患者に、または疾患の生理学的症候の1つもしくは複数があると訴えている患者に、この疾患の診断が行われていない場合であっても投与することができる。
【0066】
「治療効果」は、この用語が本明細書で使用される場合、前述の治療効果および/または予防効果を包含する。予防効果には、疾患または状態の発現の遅延または除去、疾患または状態の症候の発症の遅延または除去、疾患または状態の進行の減速、停止または逆行、あるいはそれらの任意の組合せが含まれる。
【0067】
「薬学的に許容される塩」という用語は、当技術分野で周知の様々な有機および無機対イオンから得られる塩を指す。薬学的に許容される酸付加塩は、無機酸および有機酸を用いて形成することができる。塩を得ることができる無機酸には、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等が含まれる。塩を得ることができる有機酸には、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸等が含まれる。薬学的に許容される塩基付加塩は、無機および有機塩基を用いて形成することができる。塩を得ることができる無機塩基には、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウム等が含まれる。塩を得ることができる有機塩基には、例えば、特にイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミンおよびエタノールアミンなどの、第1級、第2級および第3級アミン、天然に生じる置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、塩基性イオン交換樹脂等が含まれる。幾つかの実施形態では、薬学的に許容される塩基付加塩は、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、カルシウムおよびマグネシウム塩から選択される。
【0068】
「薬学的に許容される担体」または「薬学的に許容される賦形剤」には、任意のあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤等が含まれる。薬学的に活性な物質のためのかかる媒体および薬剤の使用は、当技術分野で周知である。任意の従来の媒体または薬剤が活性成分と不適合である場合を除き、本発明の治療組成物におけるその使用が企図される。補助的な活性成分を、組成物に組み込むこともできる。
【0069】
「シグナル伝達」は、刺激または阻害シグナルが、細胞内におよび細胞内で伝達されて、細胞内反応を誘発する過程である。シグナル伝達経路のモジュレーターとは、同じ特異的シグナル伝達経路にマップされた1つまたは複数の細胞タンパク質の活性を調節する化合物を指す。モジュレーターは、シグナル伝達分子の活性を増大(アゴニスト)または抑制(アンタゴニスト)することができる。
【0070】
「選択的阻害」または「選択的に阻害する」という用語は、生物活性のある薬剤に適用される場合、標的との直接的または間接的相互反応を介して、オフターゲットのシグナル伝達活性と比較して標的シグナル伝達活性を選択的に低減する薬物の能力を指す。
【0071】
「B−ALL」という用語は、本明細書で使用される場合、B細胞急性リンパ性白血病を指す。
【0072】
「対象」とは、哺乳動物、例えばヒトなどの動物を指す。本明細書に記載の方法は、ヒトの治療および獣医適用の両方に有用となり得る。幾つかの実施形態では、患者は哺乳動物であり、幾つかの実施形態では、患者はヒトである。
【0073】
「放射線療法」は、当業者に公知の常法および組成物を使用して、患者に、α粒子放出放射性ヌクレオチド(radionucleotide)(例えばアクチニウムおよびトリウム放射性核種)、低線エネルギー付与(LET)放射体(即ちβ放射体)、転換電子放射体(例えば、ストロンチウム−89およびサマリウム−153−EDTMP、またはそれに限定されるものではないが、X線、γ線および中性子を含む高エネルギー放射などの放射体を曝露することを意味する。
【0074】
「プロドラッグ」とは、生理条件下で、または加溶媒分解によって、本明細書に記載の生物活性のある化合物に変換できる化合物を指すことを意味する。したがって、「プロドラッグ」という用語は、薬学的に許容される生物活性のある化合物の前駆体を指す。プロドラッグは、対象に投与したときには不活性であり得るが、インビボで、例えば加水分解によって活性化合物に変換される。プロドラッグ化合物は、哺乳動物の生物内での可溶性、組織相溶性または遅延放出の利点をもたらすことが多い(例えば、Bundgard、H.、Design of Prodrugs(1985年)、7〜9頁、21〜24頁(Elsevier、Amsterdam)参照。プロドラッグの議論は、Higuchi、T.ら、「Pro−drugs as Novel Delivery Systems」、A.C.S. Symposium Series、第14巻およびBioreversible Carriers in Drug Design、編集、Edward B. Roche、American Pharmaceutical Association and Pergamon Press、1987年に提示されており、この両方を、参照によって本明細書に完全に組み込む。「プロドラッグ」という用語は、かかるプロドラッグが哺乳動物の対象に投与された場合に活性化合物をインビボで放出する、任意の共有結合した担体を含むことも意味する。活性化合物のプロドラッグは、本明細書で記載の通り、修飾が通例の操作またはインビボのいずれかで親活性化合物に開裂するように、活性化合物に存在する官能基を修飾することによって、調製することができる。プロドラッグは、活性化合物のプロドラッグが哺乳動物対象に投与された場合に、開裂して、それぞれ遊離ヒドロキシ、遊離アミノまたは遊離メルカプト基を形成する任意の基に、ヒドロキシ、アミノまたはメルカプト基が結合している化合物を含む。プロドラッグの例には、それに限定されるものではないが、アルコールの酢酸塩、ギ酸塩および安息香酸塩誘導体、または活性化合物のアミン官能基のアセトアミド、ホルムアミドおよびベンズアミド誘導体等が含まれる。
【0075】
「インビボ」という用語は、対象の体内で生じる事象を指す。
【0076】
「インビトロ」という用語は、対象の体外で生じる事象を指す。例えばインビトロアッセイは、対象のアッセイの外側で実施される任意のアッセイを包含する。インビトロアッセイは、生存または死滅細胞を使用する細胞系アッセイを包含する。インビトロアッセイは、無傷細胞を使用しない細胞なしのアッセイも包含する。
【0077】
別段の指定がない限り、本明細書に示した構造は、1つまたは複数の同位体に富んだ原子の存在下でのみ異なる化合物を含むことも意味する。例えば、ジュウテリウムまたはトリチウムによる水素の置換え、または13C−もしくは14C−に富んだ炭素による炭素の置換えを除き、本発明の構造を有する化合物は、本発明の範囲内にある。
【0078】
本発明の化合物は、かかる化合物を構成する1つまたは複数の原子において、非天然の割合の原子の同位体を含有することもできる。例えば化合物は、例えばトリチウム(H)、ヨウ素−125(125I)または炭素−14(14C)などの放射性同位体で標識化することができる。本発明の化合物のあらゆる同位体変化は、それが放射性であろうとなかろうと、本発明の範囲に包含される。
【0079】
分子量などの物理的性質または化学式などの化学的性質に関して本明細書で範囲が使用される場合、本明細書の範囲および特定の実施形態のあらゆる組合せおよび下位の組合せが含まれることを企図する。「約」という用語は、数値または数値範囲に言及している場合、言及されている数値または数値範囲が、実験的な変動内の(または統計的実験的誤差内の)近似であり、したがってその数値または数値範囲が、例えば記載の数値または数値範囲の1%および15%の間で変わり得ることを意味する。「含む」という用語(および「(複数が)含む」または「(単数が)含む」または「有している」または「含んでいる」などの関連用語)は、記載の特徴「からなる」または「から実質的になる」ような実施形態、例えば物質の任意の組成、組成物、方法または過程等の実施形態を含む。
【0080】
以下の略語および用語は、全体を通して示した意味を有する。PI3−K=ホスホイノシチド3−キナーゼ、PI=ホスファチジルイノシトール、PDK=ホスホノイノシチド依存性キナーゼ、DNA−PK=デオキシリボース核酸依存性タンパク質キナーゼ、PTEN=第10染色体で欠失しているホスファターゼおよびテンシンホモログ、PIKK=ホスホイノシチドキナーゼ様キナーゼ、AIDS=後天性免疫不全症候群、HIV=ヒト免疫不全ウイルス、MeI=ヨウ化メチル、POCl=オキシ塩化リン、KCNS=イソチオシアン酸カリウム、TLC=薄層クロマトグラフィー、MeOH=メタノール、およびCHCl=クロロホルム。
【0081】
本明細書で使用した略語は、化学および生物分野のそれらの従来の意味を有する。
【0082】
「アルキル」は、炭素および水素原子のみからなり、不飽和を含まず、1〜10個の炭素原子を有する直鎖または分岐炭化水素鎖基を指す(例えばC〜C10アルキル)。本明細書で出現する場合は常に、「1〜10」などの数値範囲は、所与の範囲の各整数を指し、例えば「1〜10個の炭素原子」は、そのアルキル基が、1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子等、10を含み最大10個の炭素原子からなり得ることを意味するが、本発明の定義は、数値範囲が示されていない「アルキル」という用語の発生も包含する。幾つかの実施形態では、アルキルはC〜Cアルキル基である。一般的なアルキル基には、それに限定されるものではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチルイソブチル、3級ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、セプチル、オクチル、ノニル、デシル等が含まれる。アルキル、例えばメチル(Me)、エチル(Et)、n−プロピル、1−メチルエチル(イソプロピル)、n−ブチル、n−ペンチル、1,1−ジメチルエチル(t−ブチル)、3−メチルヘキシル、2−メチルヘキシル等は、単結合によって分子の残りに結合している。本明細書において別段の指定がない限り、アルキル基は、独立に、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヒドロキシ、ハロ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ニトロ、トリメチルシラニル、−OR、−SR、−OC(O)−R、−N(R、−C(O)R、−C(O)OR、−OC(O)N(R、−C(O)N(R、−N(R)C(O)OR、−N(R)C(O)R、−N(R)C(O)N(R、N(R)C(NR)N(R、−N(R)S(O)(tは、1または2である)、−S(O)OR(tは、1または2である)、−S(O)N(R(tは、1または2である)、またはPO(R(各Rは、独立に、水素、アルキル、フルオロアルキル、カルボシクリル、カルボシクリルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルである)である1つまたは複数の置換基によって、場合によって置換されている。
【0083】
「アルキルアリール」は、アリールおよびアルキルが本明細書に開示の通りであり、アリールおよびアルキルにそれぞれ適した置換基として記載の置換基の1つまたは複数によって場合によって置換されている−(アルキル)アリール基を指す。
【0084】
「アルキルヘタリール」は、ヘタリールおよびアルキルが本明細書に開示の通りであり、アリールおよびアルキルにそれぞれ適した置換基として記載の置換基の1つまたは複数によって場合によって置換されている−(アルキル)ヘタリール基を指す。
【0085】
「アルキルヘテロシクロアルキル」は、アルキルおよびヘテロシクロアルキルが本明細書に開示の通りであり、ヘテロシクロアルキルおよびアルキルにそれぞれ適した置換基として記載の置換基の1つまたは複数によって場合によって置換されている−(アルキル)ヘテロシクリル(heterocycyl)基を指す。
【0086】
「アルケン」部分は、少なくとも2つの炭素および少なくとも1つの炭素−炭素二重結合からなる基を指し、「アルキン」部分は、少なくとも2つの炭素および少なくとも1つの炭素−炭素三重結合からなる基を指す。アルキル部分は、飽和であろうと不飽和であろうと、分岐、直鎖または環式であってよい。
【0087】
「アルケニル」は、炭素および水素原子のみからなり、少なくとも1つの二重結合を含有し、2〜10個の炭素原子を有する(即ちC〜C10アルケニル)、直鎖または分岐炭化水素鎖基を指す。本明細書で出現する場合は常に、「2〜10」などの数値範囲は、所与の範囲の各整数を指し、例えば「2〜10個の炭素原子」は、そのアルケニル基が、2個の炭素原子、3個の炭素原子等、10を含み最大10個の炭素原子からなり得ることを意味する。幾つかの実施形態では、アルケニルは、2〜8個の炭素原子を含む。他の実施形態では、アルケニルは、2〜5個の炭素原子を含む(例えばC〜Cアルケニル)。アルケニル、例えばエテニル(即ちビニル)、プロパ−1−エニル(即ちアリル)、ブタ−1−エニル、ペント−1−エニル、ペンタ−1,4−ジエニル等は、単結合によって分子の残りに結合している。本明細書において別段の指定がない限り、アルケニル基は、独立に、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヒドロキシ、ハロ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ニトロ、トリメチルシラニル、−OR、−SR、−OC(O)−R、−N(R、−C(O)R、−C(O)OR、−OC(O)N(R、−C(O)N(R、−N(R)C(O)OR、−N(R)C(O)R、−N(R)C(O)N(R、N(R)C(NR)N(R、−N(R)S(O)(tは、1または2である)、−S(O)OR(tは、1または2である)、−S(O)N(R(tは、1または2である)またはPO(R(各Rは、独立に、水素、アルキル、フルオロアルキル、カルボシクリル、カルボシクリルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルである)である1つまたは複数の置換基によって、場合によって置換されている。
【0088】
「アルケニル−シクロアルキル」は、アルケニルおよびシクロアルキルが本明細書に開示の通りであり、アルケニルおよびシクロアルキルにそれぞれ適した置換基として記載の置換基の1つまたは複数によって場合によって置換されている−(アルケニル)シクロアルキル基を指す。
【0089】
「アルキニル」は、炭素および水素原子のみからなり、少なくとも1つの三重結合を含有し、2〜10個の炭素原子を有する(即ちC〜C10アルキニル)、直鎖または分岐炭化水素鎖基を指す。本明細書で出現する場合は常に、「2〜10」などの数値範囲は、所与の範囲の各整数を指し、例えば「2〜10個の炭素原子」は、そのアルキニル基が、2個の炭素原子、3個の炭素原子等、10を含み最大10個の炭素原子からなり得ることを意味する。幾つかの実施形態では、アルキニルは、2〜8個の炭素原子を含む。他の実施形態では、アルキニルは、2〜5個の炭素原子を含む(例えばC〜Cアルキニル)。アルキニル、例えばエチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル等は、単結合によって分子の残りに結合している。本明細書において別段の指定がない限り、アルキニル基は、独立に、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヒドロキシ、ハロ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ニトロ、トリメチルシラニル、−OR、−SR、−OC(O)−R、−N(R、−C(O)R、−C(O)OR、−OC(O)N(R、−C(O)N(R、−N(R)C(O)OR、−N(R)C(O)R、−N(R)C(O)N(R、N(R)C(NR)N(R、−N(R)S(O)(tは、1または2である)、−S(O)OR(tは、1または2である)、−S(O)N(R(tは、1または2である)またはPO(R(各Rは、独立に、水素、アルキル、フルオロアルキル、カルボシクリル、カルボシクリルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルである)である1つまたは複数の置換基によって、場合によって置換されている。
【0090】
「アルキニル−シクロアルキル」は、アルキニルおよびシクロアルキルが本明細書に開示の通りであり、アルキニルおよびシクロアルキルにそれぞれ適した置換基として記載の置換基の1つまたは複数によって場合によって置換されている−(アルキニル)シクロアルキル基を指す。
【0091】
「カルボキシアルデヒド」は、−(C=O)H基を指す。
【0092】
「カルボキシル」は、−(C=O)OH基を指す。
【0093】
「シアノ」は、−CN基を指す。
【0094】
「シクロアルキル」は、炭素および水素のみを含有し、飽和または部分的に不飽和であってよい単環式または多環式基を指す。シクロアルキル基は、3〜10個の環原子を有する基を含む(即ちC〜C10シクロアルキル)。本明細書で出現する場合は常に、「3〜10」などの数値範囲は、所与の範囲の各整数を指し、例えば「3〜10個の炭素原子」は、そのシクロアルキル基が、3個の炭素原子等、10を含み最大10個の炭素原子からなり得ることを意味する。幾つかの実施形態では、シクロアルキルは、C〜Cシクロアルキル基である。幾つかの実施形態では、シクロアルキルは、C〜Cシクロアルキル基である。シクロアルキル基の例には、それに限定されるものではないが、以下の部分、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロセプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、ノルボルニル等が含まれる。本明細書において別段指定されない限り、シクロアルキル基は、独立に、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヒドロキシ、ハロ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ニトロ、トリメチルシラニル、−OR、−SR、−OC(O)−R、−N(R、−C(O)R、−C(O)OR、−OC(O)N(R、−C(O)N(R、−N(R)C(O)OR、−N(R)C(O)R、−N(R)C(O)N(R、N(R)C(NR)N(R、−N(R)S(O)(tは、1または2である)、−S(O)OR(tは、1または2である)、−S(O)N(R(tは、1または2である)またはPO(R(各Rは、独立に、水素、アルキル、フルオロアルキル、カルボシクリル、カルボシクリルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルである)である1つまたは複数の置換基によって、場合によって置換されている。
【0095】
「シクロアルキル−アルケニル」は、シクロアルキルおよびヘテロシクロアルキルが本明細書に開示の通りであり、ヘテロシクロアルキルおよびシクロアルキルにそれぞれ適した置換基として記載の置換基の1つまたは複数によって場合によって置換されている−(シクロアルキル)アルケニル基を指す。
【0096】
「シクロアルキル−ヘテロシクロアルキル」は、シクロアルキルおよびヘテロシクロアルキルが本明細書に開示の通りであり、ヘテロシクロアルキルおよびシクロアルキルにそれぞれ適した置換基として記載の置換基の1つまたは複数によって場合によって置換されている−(シクロアルキル)ヘテロシクリル基を指す。
【0097】
「シクロアルキル−ヘテロアリール」は、シクロアルキルおよびヘテロシクロアルキルが本明細書に開示の通りであり、ヘテロシクロアルキルおよびシクロアルキルにそれぞれ適した置換基として記載の置換基の1つまたは複数によって場合によって置換されている−(シクロアルキル)ヘテロアリール基を指す。
【0098】
「アルコキシ」という用語は、酸素を介して親構造に結合している直鎖、分岐、環式構造およびそれらの組合せの、1〜8個の炭素原子を含む基−O−アルキルを指す。それらの例には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、シクロプロピルオキシ、シクロヘキシルオキシ等が含まれる。「低級アルコキシ」は、1〜6個の炭素原子を含有するアルコキシ基を指す。幾つかの実施形態では、C〜Cアルキルは、1〜4個の炭素原子の直鎖および分岐鎖両方のアルキルを包含するアルキル基である。
【0099】
「置換アルコキシ」という用語は、アルキル構成成分が置換されているアルコキシを指す(即ち、−O−(置換アルキル))。本明細書において別段の指定がない限り、アルコキシ基のアルキル部分は、独立に、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヒドロキシ、ハロ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ニトロ、トリメチルシラニル、−OR、SR、−OC(O)−R、−N(R、−C(O)R、−C(O)OR、−OC(O)N(R、−C(O)N(R、−N(R)C(O)OR、−N(R)C(O)R、−N(R)C(O)N(R、N(R)C(NR)N(R、−N(R)S(O)(tは、1または2である)、−S(O)OR(tは、1または2である)、−S(O)N(R(tは、1または2である)またはPO(R(各Rは、独立に、水素、アルキル、フルオロアルキル、カルボシクリル、カルボシクリルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルである)である1つまたは複数の置換基によって、場合によって置換されている。
【0100】
「アルコキシカルボニル」という用語は、アルコキシ基が示した数の炭素原子を有する、カルボニル炭素を介して結合している式(アルコキシ)(C=O)−の基を指す。したがって、C〜Cアルコキシカルボニル基は、その酸素を介してカルボニルリンカーに結合している、1〜6個の炭素原子を有するアルコキシ基である。「低級アルコキシカルボニル」は、アルコキシ基が低級アルコキシ基であるアルコキシカルボニル基を指す。幾つかの実施形態では、C〜Cアルコキシは、1〜4個の炭素原子の直鎖および分岐鎖両方のアルコキシ基を包含するアルコキシ基である。
【0101】
「置換アルコキシカルボニル」という用語は、カルボニル官能基を介して親部分に結合している基(置換アルキル)−O−C(O)−を指す。本明細書において別段の指定がない限り、アルコキシカルボニル基のアルキル部分は、独立に、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヒドロキシ、ハロ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ニトロ、トリメチルシラニル、−OR、SR、−OC(O)−R、−N(R、−C(O)R、−C(O)OR、−OC(O)N(R、−C(O)N(R、−N(R)C(O)OR、−N(R)C(O)R、−N(R)C(O)N(R、N(R)C(NR)N(R、−N(R)S(O)(tは、1または2である)、−S(O)OR(tは、1または2である)、−S(O)N(R(tは、1または2である)またはPO(R(各Rは、独立に、水素、アルキル、フルオロアルキル、カルボシクリル、カルボシクリルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルである)である1つまたは複数の置換基によって、場合によって置換されている。
【0102】
「アシル」は、カルボニル官能基を介して親構造に結合している基(アルキル)−C(O)−、(アリール)−C(O)−、(ヘテロアリール)−C(O)−、(ヘテロアルキル)−C(O)−および(ヘテロシクロアルキル)−C(O)−を指す。幾つかの実施形態では、アシルはC〜C10アシル基であり、これは、アシルオキシ基のアルキル、アリール、ヘテロアリールまたはヘテロシクロアルキル部分の鎖または環原子と、アシルのカルボニル炭素、即ち3つの他の環または鎖原子とカルボニルの総数を指す。R基がヘテロアリールまたはヘテロシクロアルキルである場合、ヘテロ環または鎖原子は、鎖または環原子の総数に寄与する。本明細書において別段の指定がない限り、アシルオキシ基の「R」は、独立に、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヒドロキシ、ハロ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ニトロ、トリメチルシラニル、−OR、SR、−OC(O)−R、−N(R、−C(O)R、−C(O)OR、−OC(O)N(R、−C(O)N(R、−N(R)C(O)OR、−N(R)C(O)R、−N(R)C(O)N(R、N(R)C(NR)N(R、−N(R)S(O)(tは、1または2である)、−S(O)OR(tは、1または2である)、−S(O)N(R(tは、1または2である)またはPO(R(各Rは、独立に、水素、アルキル、フルオロアルキル、カルボシクリル、カルボシクリルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルである)である1つまたは複数の置換基によって、場合によって置換されている。
【0103】
「アシルオキシ」は、「R」が、本明細書に記載のアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアルキルまたはヘテロシクロアルキルであるR(C=O)O−基を指す。幾つかの実施形態では、アシルオキシはC〜Cアシルオキシ基であり、これは、アシルオキシ基のアルキル、アリール、ヘテロアリールまたはヘテロシクロアルキル部分の鎖または環原子と、アシルのカルボニル炭素、即ち3つの他の環または鎖原子とカルボニルの総数を指す。R基がヘテロアリールまたはヘテロシクロアルキルである場合、ヘテロ環または鎖原子は、鎖または環原子の総数に寄与する。本明細書において別段の指定がない限り、アシルオキシ基の「R」は、独立に、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヒドロキシ、ハロ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ニトロ、トリメチルシラニル、−OR、−SR、−OC(O)−R、−N(R、−C(O)R、−C(O)OR、−OC(O)N(R、−C(O)N(R、−N(R)C(O)OR、−N(R)C(O)R、−N(R)C(O)N(R、N(R)C(NR)N(R、−N(R)S(O)(tは、1または2である、−S(O)OR(tは、1または2である)、−S(O)N(R(tは、1または2である)またはPO(R(各Rは、独立に、水素、アルキル、フルオロアルキル、カルボシクリル、カルボシクリルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルである)である1つまたは複数の置換基によって、場合によって置換されている。
【0104】
「アミノ」または「アミン」は、−N(R基を指し、本明細書において別段の指定がない限り、各Rは、独立に、水素、アルキル、フルオロアルキル、カルボシクリル、カルボシクリルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルである。−N(R基が、水素以外の2つのRaを有する場合、それらは窒素原子と組み合わさって、4、5、6または7員環を形成することができる。例えば、−N(Rは、それに限定されるものではないが、1−ピロリジニルおよび4−モルホリニルを含むことを意味する。本明細書において別段の指定がない限り、アミノ基は、独立に、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヒドロキシ、ハロ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ニトロ、トリメチルシラニル、−OR、−SR、−OC(O)−R、−N(R、−C(O)R、−C(O)OR、−OC(O)N(R、−C(O)N(R、−N(R)C(O)OR、−N(R)C(O)R、−N(R)C(O)N(R、N(R)C(NR)N(R、−N(R)S(O)(tは、1または2である)、−S(O)OR(tは、1または2である)、−S(O)N(R(tは、1または2である)またはPO(R(各Rは、独立に、水素、アルキル、フルオロアルキル、カルボシクリル、カルボシクリルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルである)である1つまたは複数の置換基によって場合によって置換されており、これらの部分のそれぞれは、本明細書に定義の通り、場合によって置換されていてもよい。
【0105】
「置換アミノ」という用語は、それぞれ前述の基−NHRおよびNRのN−オキシドを指す。N−オキシドは、対応するアミノ基を、例えば過酸化水素またはm−クロロペルオキシ安息香酸で処理することによって調製できる。当業者には、N−酸化の実施のための反応条件が周知である。
【0106】
「アミド(amide)」または「アミド(amido)」は、式−C(O)N(R)または−NHC(O)Rを有する化学部分を指し、Rは、その部分のそれぞれが、それ自体場合によって置換されていてもよい水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール(環炭素を介して結合している)およびヘテロ脂環式(環炭素を介して結合している)からなる基から選択される。幾つかの実施形態では、アミドはC〜Cアミドまたはアミド基であり、これは、基の炭素の総数にアミドカルボニルを含む。アミドの−N(R)のRは、場合によって、それが結合する窒素と一緒になって、4、5、6または7員環を形成することができる。本明細書において別段の指定がない限り、アミド基は、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたはヘテロシクロアルキルについて前述の置換基の1つまたは複数によって、場合によって独立に置換されている。アミドは、式(I)の化合物に結合し、それによってプロドラッグを形成するアミノ酸またはペプチド分子であってよい。本明細書に記載の化合物上の任意のアミン、ヒドロキシまたはカルボキシル側鎖は、アミド化することができる。かかるアミドを製造するための手順および特定の基は、当業者に公知であり、その全体が本明細書に参照によって組み込まれるGreeneおよびWuts、Protective Groups in Organic Synthesis、3.sup.rd Ed.、John Wiley & Sons、New York、N.Y.、1999年などの参考文献において容易に見ることができる。
【0107】
「芳香族」または「アリール」は、6〜10個の環原子を有し(例えば、C〜C10芳香族またはC〜C10アリール)、炭素環式である共役したπ電子系を有する少なくとも1つの環を有する芳香族基を指す(例えば、フェニル、フルオレニルおよびナフチル)。置換ベンゼン誘導体から形成され、環原子において自由原子価を有する二価の基は、置換フェニレン基と命名される。自由原子価を有する炭素原子から1つの水素原子を除去することによってその名称が「−イル」で終わる一価の多環式炭化水素基由来の二価の基は、対応する一価の基の名称に「−イデン」を付加することによって命名され、例えば2つの結合点を有するナフチル基は、ナフチリデンと命名される。本明細書で出現する場合は常に、「6〜10」などの数値範囲は、所与の範囲の各整数を指し、例えば「6〜10個の環原子」は、そのアリール基が、6個の環原子、7個の環原子等、10を含み最大10個の環原子からなり得ることを意味する。この用語は、単環式または縮合環多環式(即ち環原子の隣接対を共有する環)基を含む。本明細書において別段の指定がない限り、アリール部分は、独立に、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヒドロキシ、ハロ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ニトロ、トリメチルシラニル、−OR、−SR、−OC(O)−R、−N(R、−C(O)R、−C(O)OR、−OC(O)N(R、−C(O)N(R、−N(R)C(O)OR、−N(R)C(O)R、−N(R)C(O)N(R、N(R)C(NR)N(R、−N(R)S(O)(tは、1または2である)、−S(O)OR(tは、1または2である)、−S(O)N(R(tは、1または2である)またはPO(R(各Rは、独立に、水素、アルキル、フルオロアルキル、カルボシクリル、カルボシクリルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルである)である1つまたは複数の置換基によって、場合によって置換されている。
【0108】
「アラルキル」または「アリールアルキル」は、アリールおよびアルキルが本明細書に開示の通りであり、アリールおよびアルキルにそれぞれ適した置換基として記載の置換基の1つまたは複数によって場合によって置換されている(アリール)アルキル基を指す。
【0109】
「エステル」は、式−COORの化学基を指し、Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール(環炭素を介して結合している)およびヘテロ脂環式(環炭素を介して結合している)からなる群から選択される。本明細書に記載の化合物上の任意のアミン、ヒドロキシまたはカルボキシル側鎖は、エステル化することができる。かかるエステルを製造するための手順および特定の基は、当業者に公知であり、その全体が本明細書に参照によって組み込まれるGreeneおよびWuts、Protective Groups in Organic Synthesis、3.sup.rd Ed.、John Wiley & Sons、New York、N.Y.、1999年などの参考文献において容易に見ることができる。本明細書において別段の指定がない限り、エステル基は、独立に、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヒドロキシ、ハロ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ニトロ、トリメチルシラニル、−OR、−SR、−OC(O)−R、−N(R、−C(O)R、−C(O)OR、−OC(O)N(R、−C(O)N(R、−N(R)C(O)OR、−N(R)C(O)R、−N(R)C(O)N(R、N(R)C(NR)N(R、−N(R)S(O)(tは、1または2である)、−S(O)OR(tは、1または2である)、−S(O)N(R(tは、1または2である)またはPO(R(各Rは、独立に、水素、アルキル、フルオロアルキル、カルボシクリル、カルボシクリルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルである)である1つまたは複数の置換基によって、場合によって置換されている。
【0110】
「フルオロアルキル」は、先に定義の1つまたは複数のフルオロ基によって置換されている、先に定義のアルキル基、例えばトリフルオロメチル、ジフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、1−フルオロメチル−2−フルオロエチル等を指す。フルオロアルキル基のアルキル部分は、アルキル基について先に定義の通り、場合によって置換されていてもよい。
【0111】
「ハロ」、「ハロゲン化物」あるいは「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードを意味する。「ハロアルキル」、「ハロアルケニル」「ハロアルキニル」および「ハロアルコキシ」という用語は、1つもしくは複数のハロ基またはそれらの組合せで置換されているアルキル、アルケニル、アルキニルおよびアルコキシ構造を含む。例えば、「フルオロアルキル」および「フルオロアルコキシ」という用語は、ハロがフッ素であるハロアルキルおよびハロアルコキシ基をそれぞれ含む。
【0112】
「ヘテロアルキル」、「ヘテロアルケニル」および「ヘテロアルキニル」は、場合によって置換されているアルキル、アルケニルおよびアルキニルを含み、炭素以外の原子、例えば酸素、窒素、硫黄、リンまたはそれらの組合せから選択される1つまたは複数の骨格鎖原子を有する。数値範囲、例えば合計の鎖長を指すC〜Cヘテロアルキル(この例では、4つの原子の長さである)を与えることができる。例えば、−CHOCHCH基は「C」ヘテロアルキルと呼ばれ、これは、原子鎖長の記載にヘテロ原子の中心を含む。分子の残りとの結合は、ヘテロアルキル鎖のヘテロ原子または炭素のいずれかを介することができる。ヘテロアルキル基は、独立に、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヒドロキシ、ハロ、シアノ、ニトロ、オキソ、チオキソ、トリメチルシラニル、−OR、−SR、−OC(O)−R、−N(R、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)N(R、−N(R)C(O)OR、−N(R)C(O)R、−N(R)S(O)(tは、1または2である)、−S(O)OR(tは、1または2である)、−S(O)N(R(tは、1または2である)またはPO(R(各Rは、独立に、水素、アルキル、フルオロアルキル、カルボシクリル、カルボシクリルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルである)である1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい。
【0113】
「ヘテロアルキルアリール」は、ヘテロアルキルおよびアリールが本明細書に開示の通りであり、ヘテロアルキルおよびアリールにそれぞれ適した置換基として記載の置換基の1つまたは複数によって場合によって置換されている−(ヘテロアルキル)アリール基を指す。
【0114】
「ヘテロアルキルヘテロアリール」は、ヘテロアルキルおよびヘテロアリールが本明細書に開示の通りであり、ヘテロアルキルおよびヘテロアリールにそれぞれ適した置換基として記載の置換基の1つまたは複数によって場合によって置換されている−(ヘテロアルキル)ヘテロアリール基を指す。
【0115】
「ヘテロアルキルヘテロシクロアルキル」は、ヘテロアルキルおよびヘテロアリールが本明細書に開示の通りであり、ヘテロアルキルおよびヘテロシクロアルキルにそれぞれ適した置換基として記載の置換基の1つまたは複数によって場合によって置換されている−(ヘテロアルキル)ヘテロシクロアルキル基を指す。
【0116】
「ヘテロアルキルシクロアルキル」は、ヘテロアルキルおよびシクロアルキルが本明細書に開示の通りであり、ヘテロアルキルおよびシクロアルキルにそれぞれ適した置換基として記載の置換基の1つまたは複数によって場合によって置換されている−(ヘテロアルキル)シクロアルキル基を指す。
【0117】
「ヘテロアリール」あるいは「複素環式芳香族」は、窒素、酸素および硫黄から選択される1つまたは複数の環ヘテロ原子を含み、単環式、二環式、三環式または四環式環系であってよい5〜18員の芳香族基(例えばC〜C13ヘテロアリール)を指す。本明細書で出現する場合は常に、「5〜18」などの数値範囲は、所与の範囲の各整数を指し、例えば「5〜18個の環原子」は、そのヘテロアリール基が、5個の環原子、6個の環原子等、18を含み最大18個の環原子からなり得ることを意味する。自由原子価を有する原子から1つの水素原子を除去することによってその名称が「−イル」で終わる一価のヘテロアリール基由来の二価の基は、対応する一価の基の名称に「−イデン」を付加することによって命名され、例えば2つの結合点を有するピリジル基は、ピリジリデンである。N含有「複素環式芳香族」または「ヘテロアリール」部分は、環の骨格原子の少なくとも1つが窒素原子である芳香族基を指す。多環式ヘテロアリール基は、縮合または非縮合であってよい。ヘテロアリール基のヘテロ原子(複数可)は、場合によって酸化されている。1つまたは複数の窒素原子は、存在する場合、場合によって四級化されている。ヘテロアリールは、環(複数可)の任意の原子を介して分子の残りに結合している。ヘテロアリールの例には、それに限定されるものではないが、アゼピニル、アクリジニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾインドリル、1,3−ベンゾジオキソリル、ベンゾフラニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾ[d]チアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾ[b][1,4]ジオキセピニル、ベンゾ[b][1,4]オキサジニル、1,4−ベンゾジオキサニル、ベンゾナフトフラニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾジオキシニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾピラニル、ベンゾピラノニル、ベンゾフラニル、ベンゾフラノニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチエニル(ベンゾチオフェニル)、ベンゾチエノ[3,2−d]ピリミジニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾ[4,6]イミダゾ[1,2−a]ピリジニル、カルバゾリル、シンノリニル、シクロペンタ[d]ピリミジニル、6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジニル、5,6−ジヒドロベンゾ[h]キナゾリニル、5,6−ジヒドロベンゾ[h]シンノリニル、6,7−ジヒドロ−5H−ベンゾ[6,7]シクロヘプタ[1,2−c]ピリダジニル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、フラニル、フラザニル、フラノニル、フロ[3,2−c]ピリジニル、5,6,7,8,9,10−ヘキサヒドロシクロオクタ[d]ピリミジニル、5,6,7,8,9,10−ヘキサヒドロシクロオクタ[d]ピリダジニル、5,6,7,8,9,10−ヘキサヒドロシクロオクタ[d]ピリジニル、イソチアゾリル、イミダゾリル、インダゾリル、インドリル、インダゾリル、イソインドリル、インドリニル、イソインドリニル、イソキノリル、インドリジニル、イソオキサゾリル、5,8−メタノ−5,6,7,8−テトラヒドロキナゾリニル、ナフチリジニル、1,6−ナフチリジノニル、オキサジアゾリル、2−オキソアゼピニル、オキサゾリル、オキシラニル、5,6,6a,7,8,9,10,10a−オクタヒドロベンゾ[h]キナゾリニル、1−フェニル−1H−ピロリル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピロリル、ピラゾリル、ピラゾロ[3,4−d]ピリミジニル、ピリジニル、ピリド[3,2−d]ピリミジニル、ピリド[3,4−d]ピリミジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピロリル、キナゾリニル、キノキサリニル、キノリニル、イソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、5,6,7,8−テトラヒドロキナゾリニル、5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジニル、6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−シクロヘプタ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジニル、5,6,7,8−テトラヒドロピリド[4,5−c]ピリダジニル、チアゾリル、チアジアゾリル、チアピラニル、トリアゾリル、テトラゾリル、トリアジニル、チエノ[2,3−d]ピリミジニル、チエノ[3,2−d]ピリミジニル、チエノ[2,3−c]プリジニル、およびチオフェニル(例えばチエニル)が含まれる。本明細書において別段の指定がない限り、ヘテロアリール部分は、独立に、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヒドロキシ、ハロ、シアノ、ニトロ、オキソ、チオキソ、トリメチルシラニル、−OR、−SR、−OC(O)−R、−N(R、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)N(R、−N(R)C(O)OR、−N(R)C(O)R、−N(R)S(O)(tは、1または2である)、−S(O)OR(tは、1または2である)、−S(O)N(R(tは、1または2である)またはPO(R(各Rは、独立に、水素、アルキル、フルオロアルキル、カルボシクリル、カルボシクリルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルである)である1つまたは複数の置換基で場合によって置換されている。
【0118】
ピリジニルN−オキシドなどの置換ヘテロアリールは、1つまたは複数のオキシド(−O−)置換基で置換されている環系も含む。
【0119】
「ヘテロアリールアルキル」は、本明細書に記載のアリール部分を有し、本明細書に記載のアルキレン部分に結合しており、分子の残りとの結合がアルキレン基を介する部分を指す。
【0120】
「ヘテロシクロアルキル」は、2〜12個の炭素原子ならびに窒素、酸素および硫黄から選択される1〜6個のヘテロ原子を含む安定な3〜18員の非芳香族環基を指す。本明細書で出現する場合は常に、「3〜18」などの数値範囲は、所与の範囲の各整数を指し、例えば「3〜18個の環原子」は、そのヘテロシクロアルキル基が、3個の環原子、4個の環原子等、18を含み最大18個の環原子からなり得ることを意味する。幾つかの実施形態では、ヘテロシクロアルキルは、C〜C10ヘテロシクロアルキルである。幾つかの実施形態では、ヘテロシクロアルキルは、C〜C10ヘテロシクロアルキルである。幾つかの実施形態では、ヘテロシクロアルキルは、C〜C10ヘテロシクロアルキルである。本明細書において別段の指定がない限り、ヘテロシクロアルキル基は、単環式、二環式、三環式または四環式環系であり、縮合または架橋環系を含み得る。ヘテロシクロアルキル基のヘテロ原子は、場合によって酸化されていてもよい。1つまたは複数の窒素原子は、存在する場合、場合によって四級化されている。ヘテロシクロアルキル基は、部分的または完全に飽和である。ヘテロシクロアルキルは、環(複数可)の任意の原子を介して分子の残りに結合することができる。かかるヘテロシクロアルキル基の例には、それに限定されるものではないが、ジオキソラニル、チエニル[1,3]ジチアニル、デカヒドロイソキノリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、イソチアゾリジニル、イソキサゾリジニル、モルホリニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロイソインドリル、2−オキソピペラジニル、2−オキソピペリジニル、2−オキソピロリジニル、オキサゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、4−ピペリドニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、キヌクリジニル、チアゾリジニル、テトラヒドロフリル、トリチアニル、テトラヒドロピラニル、チオモルホリニル、チアモルホリニル、1−オキソ−チオモルホリニルおよび1,1−ジオキソ−チオモルホルニルが含まれる。本明細書において別段の指定がない限り、ヘテロシクロアルキル部分は、独立に、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヒドロキシ、ハロ、シアノ、ニトロ、オキソ、チオキソ、トリメチルシラニル、−OR、−SR、−OC(O)−R、−N(R、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)N(R、−N(R)C(O)OR、−N(R)C(O)R、−N(R)S(O)(tは、1または2である)、−S(O)OR(tは、1または2である)、−S(O)N(R(tは、1または2である)またはPO(R(各Rは、独立に、水素、アルキル、フルオロアルキル、カルボシクリル、カルボシクリルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルである)である1つまたは複数の置換基で場合によって置換されている。
【0121】
「ヘテロシクロアルキル」は、通常3〜7個の環原子を有する1つの非芳香族環が、少なくとも2個の炭素原子に加えて、酸素、硫黄および窒素から独立に選択される1〜3個のヘテロ原子、ならびに前述のヘテロ原子の少なくとも1個を含む組合せおよび通常3〜7個の環原子を有する他の環を含有し、場合によって、酸素、硫黄および窒素から独立に選択される1〜3個のヘテロ原子を含有し、芳香族でない二環式環系も含む。
【0122】
「異性体」は、同じ分子式を有する異なる化合物である。「立体異性体」は、原子が空間内に配列する方式のみにおいて異なる異性体である。「エナンチオマー」は、互いに重ね合わせることができない鏡像である立体異性体の対である。エナンチオマーの対の1:1混合物は、「ラセミ」混合物である。「(.±.)」という用語は、適切な場合、ラセミ混合物を示すために使用される。「ジアステレオマー」は、少なくとも2つの不斉原子を有するが、互いに鏡像ではない立体異性体である。絶対立体化学は、Cahn−Ingold−Prelog R−S系に従って特定される。化合物が純粋なエナンチオマーである場合、各キラル炭素における立体化学は、RまたはSのいずれかによって特定することができる。絶対配置が公知でない分解された化合物は、それらがナトリウムDラインの波長において平面偏光を回転させる方向(右旋性または左旋性)に応じて、(+)または(−)と示すことができる。本明細書に記載の化合物の幾つかは、1つまたは複数の不斉中心を含有し、したがって、絶対立体化学に関して(R)−または(S)−と定義付けることができるエナンチオマー、ジアステレオマーおよび他の立体異性体の形態を生じることができる。本発明の化学的実体、医薬組成物および方法は、ラセミ混合物を含むかかる全ての可能な異性体、光学的に純粋形態および中間体混合物を含むことを意味する。光学活性な(R)−および(S)−異性体は、キラルシントンもしくはキラル試薬を使用して調製することができ、または従来の技術を使用して分解することができる。本明細書に記載の化合物が、オレフィン二重結合または幾何学的非対称の他の中心を含有する場合、別段の指定がない限り、その化合物は、EおよびZ幾何異性体の両方を含むことが企図される。
【0123】
「部分」は、分子の特定の部分または官能基を指す。化学部分は、分子に含まれるまたはそれに付加される化学的実体と認識されることが多い。
【0124】
「ニトロ」は、−NO基を指す。
【0125】
「オキサ」は、−O−基を指す。
【0126】
「オキソ」は、=O基を指す。
【0127】
「互変異性体」は、互変異性化によって相互転換する構造的に異なる異性体である。「互変異性化」は、異性化の形態であり、酸−塩基科学のサブセットとみなされているプロトン回帰性(prototropic)またはプロトン移動互変異性化を含む。「プロトン回帰性互変異性化」または「プロトン移動互変異性化」は、結合次数の変化、しばしば単結合と隣接二重結合の変換が伴うプロトンの遊走を含む。互変異性化が可能な場合(例えば溶液中で)、互変異性体の化学平衡に達することができる。互変異性化の例は、ケト−エノール互変異性化である。ケト−エノール互変異性化の具体例は、ペンタン−2,4−ジオンおよび4−ヒドロキシペント−3−エン−2−オン互変異性体の相互変換である。互変異性化の別の例は、フェノール−ケト互変異性化である。フェノール−ケト互変異性化の具体例は、ピリジン−4−オールおよびピリジン−4(1H)−オン互変異性体の相互変換である。
【0128】
本発明の化合物は、かかる化合物を構成する1つまたは複数の原子において、非天然の割合の原子の同位体を含有することもできる。例えば化合物は、例えばトリチウム(H)、ヨウ素−125(125I)または炭素−14(14C)などの放射性同位体で標識化することができる。本発明の化合物のあらゆる同位体変化は、それが放射性であろうとなかろうと、本発明の範囲に包含される。
【0129】
「脱離基または原子」は、反応条件下で出発材料から開裂し、したがって特定部位における反応を促進する任意の基または原子である。別段の指定がない限り、かかる基の適切な例は、ハロゲン原子、メシルオキシ、p−ニトロベンゼンスルホニルオキシおよびトシルオキシ基である。
【0130】
「保護基」は、有機合成においてそれに関連する従来の意味を有し、即ちこの基は、多官能性化合物における1つまたは複数の反応性部位を選択的に遮断し、その結果、化学反応を別の非保護反応性部位上で選択的に行うことができ、選択的反応が完了した後に該基を容易に除去することができる。様々な保護基が、例えばT.H. GreeneおよびP. G. M. Wuts、Protective Groups in Organic Synthesis、Third Edition、John Wiley & Sons、New York(1999年)に開示されている。例えば、ヒドロキシ保護形態は、化合物に存在するヒドロキシ基の少なくとも1つがヒドロキシ保護基で保護されているものである。同様に、アミンおよび他の反応基を保護することもできる。
【0131】
「溶媒和物」は、薬学的に許容される溶媒の1つまたは複数の分子と物理的に結合した化合物(例えば、式Iから選択される化合物または薬学的に許容されるその塩)を指す。「式Iの化合物」は、式Iの化合物および該化合物の溶媒和物、ならびにそれらの混合物を包含することを理解されよう。
【0132】
「置換されている」は、参照した基が、アシル、アルキル、アルキルアリール、シクロアルキル、アラルキル、アリール、炭水化物、カーボネート、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ハロ、カルボニル、エステル、チオカルボニル、イソシアナート、チオシアナート、イソチオシアナート、ニトロ、オキソ、ペルハロアルキル、ペルフルオロアルキル、ホスフェート、シリル、スルフィニル、スルホニル、スルホンアミジル、スルホキシル、スルホネート、尿素ならびに一置換および二置換アミノ基を含むアミノ、ならびにそれらの被保護誘導体から個々に独立に選択される1つまたは複数の追加の基(複数可)で置換されていてもよいことを意味する。二置換アミノ基は、例えばモルホリノなどのアミノ基の窒素と一緒になって環を形成するものを包含する。置換基それら自体が置換されていてもよく、例えばシクロアルキル(cycloakyl)置換基は、1つまたは複数の環炭素等において置換されたハロゲン化物を有することができる。先の置換基の保護誘導体を形成することができる保護基は、当業者に公知であり、先のGreeneおよびWutsなどの参考文献に見ることができる。
【0133】
「スルファニル」は、以下の基、−S−(場合によって置換されているアルキル)、−S−(場合によって置換されているアリール)、−S−(場合によって置換されているヘテロアリール)および−S−(場合によって置換されているヘテロシクロアルキル)を指す。
【0134】
「スルフィニル」は、以下の基、−S(O)−H、−S(O)−(場合によって置換されているアルキル)、−S(O)−(場合によって置換されているアミノ)、−S(O)−(場合によって置換されているアリール)、−S(O)−(場合によって置換されているヘテロアリール)および−S(O)−(場合によって置換されているヘテロシクロアルキル)を指す。
【0135】
「スルホニル」は、以下の基、−S(O)−H、−S(O)−(場合によって置換されているアルキル)、−S(O)−(場合によって置換されているアミノ)、−S(O)−(場合によって置換されているアリール)、−S(O)−(場合によって置換されているヘテロアリール)および−S(O)−(場合によって置換されているヘテロシクロアルキル)を指す。
【0136】
「スルホンアミジル」または「スルホンアミド」は、−S(=O)−NRR基を指し、各Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール(環炭素を介して結合している)およびヘテロ脂環式(環炭素を介して結合している)からなる群から独立に選択される。−S(=O)−NRR基の−NRRのR基は、それが結合する窒素と一緒になって、4、5、6または7員環を形成することができる。幾つかの実施形態では、スルホンアミドは、C〜C10スルホンアミドであり、スルホンアミドの各Rは、合計1個の炭素、2個の炭素、3個の炭素または4個の炭素を含有する。スルホンアミド基は、それぞれアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールについて記載した置換基の1つまたは複数によって、場合によって置換されている。
【0137】
「スルホキシル」は、−S(=O)OH基を指す。
【0138】
「スルホネート」は、−S(=O)−OR基を指し、各Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール(環炭素を介して結合している)およびヘテロ脂環式(環炭素を介して結合している)からなる群から選択される。スルホネート基は、それぞれアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールについて記載した置換基の1つまたは複数によって、R上で場合によって置換されている。
【0139】
置換基が、左から右に書かれたそれらの従来の化学式によって特定されている場合、それらは、右から左の構造を書いたものから得られる化学的に同一の置換基を同様に包含し、例えば−CHO−は−OCH−に等しい。
【0140】
本発明の化合物は、例えば多形体、疑似多形体、溶媒和物、水和物、非溶媒和多形体(無水物を含む)、配座多形および化合物の非晶形、ならびにそれらの混合物を含む、それらの化合物の結晶形および非晶形も含む。「結晶形」、「多形体」および「新規形態」は、本明細書では変換可能に使用することができ、特定の結晶形または非晶形に言及しない限り、例えば、多形体、疑似多形体、溶媒和物、水和物、非溶媒和多形体(無水物を含む)、配座多形および非晶形、ならびにそれらの混合物を含む、化合物の全ての結晶形および非晶形を含むことを意味する。
【0141】
化学的実体には、それに限定されるものではないが、式Iの化合物ならびにそれらの全ての薬学的に許容される形態が含まれる。本明細書に引用した、化合物の薬学的に許容される形態には、薬学的に許容される塩、キレート、非共有結合複合体、プロドラッグおよびそれらの混合物が含まれる。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、薬学的に許容される塩の形態である。したがって、「化学的実体(単数)」および「化学的実体(複数)」という用語は、薬学的に許容される塩、キレート、非共有結合複合体、プロドラッグおよび混合物も包含する。
【0142】
さらに、式Iの化合物が酸付加塩として得られる場合、遊離塩基は、酸塩の溶液を塩基性化することによって得ることができる。その逆に、生成物が遊離塩基である場合、付加塩、特に薬学的に許容される付加塩は、塩基性化合物から酸付加塩を調製するための従来の手順に従って、適切な有機溶媒に遊離塩基を溶解し、酸でその溶液を処理することによって生成することができる。当業者は、非毒性の薬学的に許容される付加塩の調製に使用できる様々な合成方法を認識されよう。
【0143】
一態様では、本発明は、式Iの化合物
【0144】
【化17】
または薬学的に許容されるその塩を提供し、式中、
は、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、
Bは、アルキル、アミノ、ヘテロアルキルまたは式IIの部分であり、
【0145】
【化18】
式中、Wは、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルまたはシクロアルキルであり、
qは、0、1、2、3または4の整数であり、
Xは、存在しないか、または−(CH(R))−であり、zは、1、2、3または4の整数であり、
Yは、存在しないか、−O−、−S−、−S(=O)−、−S(=O)−、−N(R)−、−C(=O)−(CHR−、−C(=O)−、−N(R)−C(=O)−または−N(R)−C(=O)NH−、−N(R)C(R−または−C(=O)−(CHR−であり、
は、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、アルコキシ、アミド、アミノ、アシル、アシルオキシ、アルコキシカルボニル、スルホンアミド、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、ニトロ、ホスフェート、尿素またはカーボネートであり、
は、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、アルコキシ、アミド、アミノ、アシル、アシルオキシ、アルコキシカルボニル、スルホンアミド、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、ニトロ、ホスフェート、尿素またはカーボネートであり、
は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルコキシ、アミド、アミノ、アシル、アシルオキシ、アルコキシカルボニル、スルホンアミド、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、ニトロ、アリールまたはヘテロアリールであり、
、R、RおよびRは、独立に、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cシクロアルキル、C〜Cヘテロアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアミド、アミノ、アシル、C〜Cアシルオキシ、C〜Cスルホンアミド、ハロ、シアノ、ヒドロキシまたはニトロであり、
の各存在は、独立に、水素、C〜C10アルキル、C〜Cシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルまたはC〜C10ヘテロアルキルである。
【0146】
幾つかの実施形態では、Bは、それに限定されるものではないが、−(CH−NR(各Rは、独立に、水素、アルキル、フルオロアルキル、カルボシクリル、カルボシクリルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルである)を含む非置換または置換アルキルであり、あるいはNRは一緒に組み合わさって環状部分を形成し、それには、限定されるものではないがピペリジニル、ピペラジニルおよびモルホリニルが含まれる。幾つかの実施形態では、Bは、非置換または置換アミノである。幾つかの実施形態では、Bは、非置換または置換ヘテロアルキルである。
【0147】
【化19】
幾つかの実施形態では、Bは、式IIの部分であり、Wは、非置換または置換アリール、置換フェニル、それに限定されるものではないが、ピリジン−2−イル、ピリジン−3−イル、ピリジン−4−イル、ピリミジン−4−イル、ピリミジン−2−イル、ピリミジン−5−イルまたはピラジン−2−イルを含む非置換または置換ヘテロアリール、非置換または置換単環式ヘテロアリール、非置換または置換二環式ヘテロアリール、環原子として2つのヘテロ原子を含むヘテロアリール、窒素環原子を含む非置換または置換ヘテロアリール、2つの窒素環原子を含むヘテロアリール、環原子として窒素および硫黄を含むヘテロアリール、それに限定されるものではないが、モルホリニル、テトラヒドロピラニル、ピペラジニルおよびピペリジニルを含む非置換または置換ヘテロシクロアルキル、それに限定されるものではないが、シクロペンチルおよびシクロヘキシルを含む非置換または置換シクロアルキルからなる群から選択されるメンバーである。
【0148】
幾つかの実施形態では、Bは、以下の部分の1つである。
【0149】
【化20】
【0150】
【化21】
【0151】
【化22】
幾つかの実施形態では、Bは、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリールアルコキシ、アミド、アミノ、アシル、アシルオキシ、アルコキシカルボニル、スルホンアミド、ハロ、シアノ、ヒドロキシまたはニトロの1つまたは複数によって置換されており、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アミド、アミノ、アシル、アシルオキシまたはスルホンアミドのそれぞれは、それ自体置換されていてもよい。
【0152】
幾つかの実施形態では、Rは、水素、非置換または置換アルキル、非置換または置換ヘテロアルキル、非置換または置換アルケニル、非置換または置換アルキニル、非置換または置換シクロアルキルあるいは非置換または置換ヘテロシクロアルキルからなる群から選択されるメンバーである。幾つかの実施形態では、Rは、非置換または置換アリール、非置換または置換アリールアルキル、非置換または置換ヘテロアリールあるいは非置換または置換ヘテロアリールアルキルである。幾つかの実施形態では、Rは、非置換または置換アルコキシ、非置換または置換アミド、非置換または置換アミノである。幾つかの実施形態では、Rは、非置換または置換アシル、非置換または置換アシルオキシ、非置換または置換アルコキシカルボニルあるいは非置換または置換スルホンアミドである。幾つかの実施形態では、Rは、−Cl、−F、−Iおよび−Brを含むハロである。幾つかの実施形態では、Rは、シアノ、ヒドロキシ、ニトロ、非置換または置換ホスフェート、非置換または置換尿素およびカーボネートからなる群から選択される。
【0153】
幾つかの実施形態では、Rがアルキルである場合、Rは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、ペンチル、ヘキシルまたはヘプチルである。
【0154】
幾つかの実施形態では、Rがアルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、アルコキシ、アミド、アミノ、アシル、アシルオキシ、アルコキシカルボニル、スルホンアミドまたはヒドロキシである場合、Rは、ホスフェートまたは非置換尿素または置換尿素または炭酸またはカーボネートによって置換されている。
【0155】
幾つかの実施形態では、Rがアルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、アルコキシ、アミド、アミノ、アシル、アシルオキシ、アルコキシカルボニルまたはスルホンアミドである場合、Rは、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、アルコキシ、アミド、アミノ、アシル、アシルオキシ、アルコキシカルボニル、スルホンアミド、ハロ、シアノ、ヒドロキシまたはニトロの1つまたは複数によって置換されており、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、アルコキシ、アミド、アミノ、アシル、アシルオキシ、アルコキシカルボニルまたはスルホンアミドのそれぞれは、それ自体置換されていてもよい。
【0156】
幾つかの実施形態では、Rは、非置換または置換アルキル、非置換または置換ヘテロアルキル、非置換または置換アルケニル、非置換または置換アルキニル、非置換または置換シクロアルキルおよび非置換または置換ヘテロシクロアルキルからなる群から選択されるメンバーである。幾つかの実施形態では、Rは、非置換または置換アリール、非置換または置換アリールアルキル、非置換または置換ヘテロアリールあるいは非置換または置換ヘテロアリールアルキルである。幾つかの実施形態では、Rは、非置換または置換アルコキシ、非置換または置換アミド、非置換または置換アミノである。幾つかの実施形態では、Rは、非置換または置換アシル、非置換または置換アシルオキシ、非置換または置換アルコキシカルボニルあるいは非置換または置換スルホンアミドである。幾つかの実施形態では、Rは、−I、−F、−Clまたは−Brであるハロである。幾つかの実施形態では、Rは、シアノ、ヒドロキシ、ニトロ、炭酸およびカーボネートからなる群から選択される。幾つかの実施形態では、Rは、非置換または置換ホスフェートである。幾つかの実施形態では、Rは、非置換または置換尿素である。幾つかの実施形態では、Rがアルキルである場合、Rは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、ペンチル、ヘキシルまたはヘプチルである。
【0157】
幾つかの実施形態では、Rがアルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、アルコキシ、アミド、アミノ、アシル、アシルオキシ、アルコキシカルボニル、スルホンアミドまたはヒドロキシである場合、Rは、ホスフェートによって置換され、尿素によって置換され、またはカーボネートによって置換されている。
【0158】
幾つかの実施形態では、Rがアルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、アルコキシ、アミド、アミノ、アシル、アシルオキシ、アルコキシカルボニルまたはスルホンアミドである場合、Rは、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アミド、アミノ、アシル、アシルオキシ、アルコキシカルボニル、スルホンアミド、ハロ、シアノ、ヒドロキシまたはニトロの1つまたは複数によって置換されており、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アミド、アミノ、アシル、アシルオキシ、アルコキシカルボニルまたはスルホンアミドのそれぞれは、それ自体置換されていてもよい。
【0159】
幾つかの実施形態では、qは整数0である。幾つかの実施形態では、qは整数1である。幾つかの実施形態では、qは整数2である。幾つかの実施形態では、qは整数3である。幾つかの実施形態では、qは整数4である。
【0160】
式Iの化合物の幾つかの実施形態では、Rは、水素、非置換または置換アルキル、非置換または置換アルケニルおよび非置換または置換アルキニルからなる群から選択されるメンバーである。幾つかの実施形態では、Rは、非置換または置換アリール、非置換または置換ヘテロアリール、非置換または置換シクロアルキルあるいは非置換または置換ヘテロシクロアルキルである。幾つかの実施形態では、Rは、非置換または置換アルコキシ、非置換または置換アミド、非置換または置換アミノである。幾つかの実施形態では、Rは、非置換または置換アシル、非置換または置換アシルオキシ、非置換または置換アルコキシカルボニルあるいは非置換または置換スルホンアミドである。幾つかの実施形態では、Rは、−I、−F、−Clまたは−Brであるハロである。
【0161】
幾つかの実施形態では、Rは、シアノ、ヒドロキシおよびニトロからなる群から選択される。幾つかの実施形態では、Rがアルキルである場合、Rは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、ペンチル、ヘキシルまたはヘプチルである。幾つかの実施形態では、Rは−CFである。
【0162】
幾つかの実施形態では、Rがアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルコキシ、アミド、アミノ、アシル、アシルオキシ、アルコキシカルボニルまたはスルホンアミドである場合、Rは、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アミド、アミノ、アシル、アシルオキシ、アルコキシカルボニル、スルホンアミド、ハロ、シアノ、ヒドロキシまたはニトロの1つまたは複数で置換されており、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アミド、アミノ、アシル、アシルオキシ、アルコキシカルボニルまたはスルホンアミドのそれぞれは、それ自体置換されていてもよい。
【0163】
式Iの化合物の幾つかの実施形態では、Rは、水素、非置換または置換アルキル(それに限定されるものではないが非置換または置換C〜Cアルキルを含む)である。幾つかの実施形態では、Rは、それに限定されるものではないが、非置換または置換C〜Cアルケニルを含む非置換または置換アルケニルである。幾つかの実施形態では、Rは、それに限定されるものではないが、非置換または置換C〜Cアルキニルを含む非置換または置換アルキニルである。幾つかの実施形態では、Rは、それに限定されるものではないが、非置換または置換C〜Cシクロアルキルを含む非置換または置換シクロアルキルである。幾つかの実施形態では、Rは、非置換または置換ヘテロシクロアルキルである。幾つかの実施形態では、Rは、それに限定されるものではないが、非置換または置換C〜Cヘテロアルキルを含む非置換または置換ヘテロアルキルである。幾つかの実施形態では、Rは、それに限定されるものではないが、非置換または置換C〜Cアルコキシを含む非置換または置換アルコキシである。幾つかの実施形態では、Rは、それに限定されるものではないが、非置換または置換C〜Cアミドを含む非置換または置換アミドである。幾つかの実施形態では、Rは、非置換または置換アミノである。幾つかの実施形態では、Rは、非置換または置換アシル、非置換または置換アシルオキシ、非置換または置換C〜Cアシルオキシ、非置換または置換アルコキシカルボニル、非置換または置換スルホンアミドあるいは非置換または置換C〜Cスルホンアミドである。幾つかの実施形態では、Rは、−I、−F、−Clまたは−Brであるハロである。幾つかの実施形態では、Rは、シアノ、ヒドロキシおよびニトロからなる群から選択される。幾つかの他の実施形態では、Rは、−CH、−CHCH、n−プロピル、イソプロピル、−OCH、−OCHCHまたは−CFである。
【0164】
幾つかの実施形態では、Rがアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アシル、アルコキシ、アミド、アミノ、アシルオキシ、アルコキシカルボニルまたはスルホンアミドである場合、Rは、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アミド、アミノ、アシル、アシルオキシ、アルコキシカルボニル、スルホンアミド、ハロ、シアノ、ヒドロキシまたはニトロの1つまたは複数で場合によって置換されており、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アミド、アミノ、アシル、アシルオキシ、アルコキシカルボニルまたはスルホンアミドのそれぞれは、それ自体置換されていてもよい。
【0165】
式Iの化合物の幾つかの実施形態では、Rは、水素、非置換または置換アルキル(それに限定されるものではないが非置換または置換C〜Cアルキルを含む)である。幾つかの実施形態では、Rは、それに限定されるものではないが、非置換または置換C〜Cアルケニルを含む非置換または置換アルケニルである。幾つかの実施形態では、Rは、それに限定されるものではないが、非置換または置換C〜Cアルキニルを含む非置換または置換アルキニルである。幾つかの実施形態では、Rは、それに限定されるものではないが、非置換または置換C〜Cシクロアルキルを含む非置換または置換シクロアルキルである。幾つかの実施形態では、Rは、非置換または置換ヘテロシクロアルキルである。幾つかの実施形態では、Rは、それに限定されるものではないが、非置換または置換C〜Cヘテロアルキルを含む非置換または置換ヘテロアルキルである。幾つかの実施形態では、Rは、それに限定されるものではないが、非置換または置換C〜Cアルコキシを含む非置換または置換アルコキシである。幾つかの実施形態では、Rは、それに限定されるものではないが、非置換または置換C〜Cアミドを含む非置換または置換アミドである。幾つかの実施形態では、Rは、非置換または置換アミノである。幾つかの実施形態では、Rは、非置換または置換アシル、非置換または置換アシルオキシ、非置換または置換C〜Cアシルオキシ、非置換または置換アルコキシカルボニル、非置換または置換スルホンアミドあるいは非置換または置換C〜Cスルホンアミドである。幾つかの実施形態では、Rは、−I、−F、−Clまたは−Brであるハロである。幾つかの実施形態では、Rは、シアノ、ヒドロキシおよびニトロからなる群から選択される。幾つかの他の実施形態では、Rは、−CH、−CHCH、n−プロピル、イソプロピル、−OCH、−OCHCHまたは−CFである。
【0166】
幾つかの実施形態では、Rがアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アシル、アルコキシ、アミド、アミノ、アシルオキシ、アルコキシカルボニルまたはスルホンアミドである場合、Rは、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アミド、アミノ、アシル、アシルオキシ、アルコキシカルボニル、スルホンアミド、ハロ、シアノ、ヒドロキシまたはニトロの1つまたは複数で場合によって置換されており、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アミド、アミノ、アシル、アシルオキシ、アルコキシカルボニルまたはスルホンアミドのそれぞれは、それ自体置換されていてもよい。
【0167】
式Iの化合物の幾つかの実施形態では、Rは、水素、非置換または置換アルキル(それに限定されるものではないが非置換または置換C〜Cアルキルを含む)である。幾つかの実施形態では、Rは、それに限定されるものではないが、非置換または置換C〜Cアルケニルを含む非置換または置換アルケニルである。幾つかの実施形態では、Rは、それに限定されるものではないが、非置換または置換C〜Cアルキニルを含む非置換または置換アルキニルである。幾つかの実施形態では、Rは、それに限定されるものではないが、非置換または置換C〜Cシクロアルキルを含む非置換または置換シクロアルキルである。幾つかの実施形態では、Rは、非置換または置換ヘテロシクロアルキルである。幾つかの実施形態では、Rは、それに限定されるものではないが、非置換または置換C〜Cヘテロアルキルを含む非置換または置換ヘテロアルキルである。幾つかの実施形態では、Rは、それに限定されるものではないが、非置換または置換C〜Cアルコキシを含む非置換または置換アルコキシである。幾つかの実施形態では、Rは、それに限定されるものではないが、非置換または置換C〜Cアミドを含む非置換または置換アミドである。幾つかの実施形態では、Rは、非置換または置換アミノである。幾つかの実施形態では、Rは、非置換または置換アシル、非置換または置換アシルオキシ、非置換または置換C〜Cアシルオキシ、非置換または置換アルコキシカルボニル、非置換または置換スルホンアミドあるいは非置換または置換C〜Cスルホンアミドである。幾つかの実施形態では、Rは、−I、−F、−Clまたは−Brであるハロである。幾つかの実施形態では、Rは、シアノ、ヒドロキシおよびニトロからなる群から選択される。幾つかの他の実施形態では、Rは、−CH、−CHCH、n−プロピル、イソプロピル、−OCH、−OCHCHまたは−CFである。
【0168】
幾つかの実施形態では、Rがアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アシル、アルコキシ、アミド、アミノ、アシルオキシ、アルコキシカルボニルまたはスルホンアミドである場合、Rは、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アミド、アミノ、アシル、アシルオキシ、アルコキシカルボニル、スルホンアミド、ハロ、シアノ、ヒドロキシまたはニトロの1つまたは複数で場合によって置換されており、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アミド、アミノ、アシル、アシルオキシ、アルコキシカルボニルまたはスルホンアミドのそれぞれは、それ自体置換されていてもよい。
【0169】
式Iの化合物の幾つかの実施形態では、Rは、水素、非置換または置換アルキル(それに限定されるものではないが非置換または置換C〜Cアルキルを含む)である。幾つかの実施形態では、Rは、それに限定されるものではないが、非置換または置換C〜Cアルケニルを含む非置換または置換アルケニルである。幾つかの実施形態では、Rは、それに限定されるものではないが、非置換または置換C〜Cアルキニルを含む非置換または置換アルキニルである。幾つかの実施形態では、Rは、それに限定されるものではないが、非置換または置換C〜Cシクロアルキルを含む非置換または置換シクロアルキルである。幾つかの実施形態では、Rは、非置換または置換ヘテロシクロアルキルである。幾つかの実施形態では、Rは、それに限定されるものではないが、非置換または置換C〜Cヘテロアルキルを含む非置換または置換ヘテロアルキルである。幾つかの実施形態では、Rは、それに限定されるものではないが、非置換または置換C〜Cアルコキシを含む非置換または置換アルコキシである。幾つかの実施形態では、Rは、それに限定されるものではないが、非置換または置換C〜Cアミドを含む非置換または置換アミドである。幾つかの実施形態では、Rは、非置換または置換アミノである。幾つかの実施形態では、Rは、非置換または置換アシル、非置換または置換アシルオキシ、非置換または置換C〜Cアシルオキシ、非置換または置換アルコキシカルボニル、非置換または置換スルホンアミドあるいは非置換または置換C〜Cスルホンアミドである。幾つかの実施形態では、Rは、−I、−F、−Clまたは−Brであるハロである。幾つかの実施形態では、Rは、シアノ、ヒドロキシおよびニトロからなる群から選択される。幾つかの他の実施形態では、Rは、−CH、−CHCH、n−プロピル、イソプロピル、−OCH、−OCHCHまたは−CFである。
【0170】
幾つかの実施形態では、Rがアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アシル、アルコキシ、アミド、アミノ、アシルオキシ、アルコキシカルボニルまたはスルホンアミドである場合、Rは、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アミド、アミノ、アシル、アシルオキシ、アルコキシカルボニル、スルホンアミド、ハロ、シアノ、ヒドロキシまたはニトロの1つまたは複数で場合によって置換されており、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アミド、アミノ、アシル、アシルオキシ、アルコキシカルボニルまたはスルホンアミドのそれぞれは、それ自体置換されていてもよい。
【0171】
式Iの化合物の幾つかの実施形態では、R、R、RおよびRはHである。
【0172】
式Iの化合物の幾つかの実施形態では、Xは存在しない。幾つかの実施形態では、Xは−(CH(R))であり、zは、1、2、3または4の整数である。
【0173】
幾つかの実施形態では、Rは、それに限定されるものではないが、非置換または置換C〜C10アルキルを含む非置換または置換アルキルである。幾つかの実施形態では、Rは、それに限定されるものではないが、非置換または置換C〜Cシクロアルキルを含む非置換または置換シクロアルキルである。幾つかの実施形態では、Rは、メチルまたは水素である。幾つかの実施形態では、Rは、それに限定されるものではないが、非置換または置換C〜C10ヘテロアルキルを含む非置換または置換ヘテロシクロアルキルである。幾つかの実施形態では、Rは、それに限定されるものではないが、非置換または置換C〜C10ヘテロアルキルを含む非置換または置換ヘテロアルキルである。
【0174】
が先のいずれかである場合、幾つかの実施形態では、Xは−CH−、−CHCH−、−CHCHCH−、−CH(CH)−または−CH(CHCH)−である。幾つかの実施形態では、Xが−CH(CH)−である場合、−CH(CH)−は、(S)−または(R)−立体化学的配置である。
【0175】
式Iの化合物の幾つかの実施形態では、Yは存在しない。幾つかの実施形態では、Yは、−O−、−S−、−S(=O)−、−S(=O)−、−C(=O)−、−N(R)(C=O)−、−N(R)(C=O)NH−、−N(R)C(R−(−N(R)CH−、特に−N(CH)CH−、N(CH(CH)CH−またはN(CHCH)CH−など)、−N(R)−、−N(CH)−、−N(CHCH)−または−N(CH(CH)−である。幾つかの実施形態では、Yは、−C(=O)−(CHR−であり、zは、1、2、3または4の整数である。
【0176】
幾つかの実施形態では、X−Yは、−CH−、−CH−N(CH)、−CH(CH)−NH−、(S)−CH(CH)−NH−または(R)−CH(CH)−NH−である。幾つかの実施形態では、X−Yは、−N(CHCH−、N(CHCH)CH−、−N(CH(CH)CH−または−NHCH−である。
【0177】
式Iの化合物の幾つかの実施形態では、Wは、非置換または置換ヘテロシクロアルキル、非置換または置換アリールおよび非置換または置換ヘテロアリールからなる群から選択されるメンバーである。幾つかの実施形態では、Wは、非置換または置換単環式ヘテロアリールあるいは非置換または置換二環式ヘテロアリールである。幾つかの実施形態では、Wは、少なくとも1つのヘテロ原子を有する二環式ヘテロアリール、例えば少なくとも1つの窒素環原子を有する二環式ヘテロアリールである。幾つかの実施形態では、Wは、少なくとも2つのヘテロ原子を有する二環式ヘテロアリール、例えば少なくとも2つの窒素環原子を有する二環式ヘテロアリールである。幾つかの実施形態では、Wは、XYに結合している環中に2つのヘテロ原子を有する二環式ヘテロアリールである。幾つかの実施形態では、Wは、XYが結合している環中に2つの窒素環原子を有する二環式ヘテロアリールである。幾つかの実施形態では、Wは、4つのヘテロ原子を有する二環式ヘテロアリール、例えば4つの窒素環原子を有する二環式ヘテロアリールである。幾つかの実施形態では、Wは、非置換または置換4−アミノ−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル、非置換または置換7−アミノ−2−メチル−2H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−3−イル、非置換または置換6−メチレニル−9H−プリン−6−イルあるいは非置換または置換6−アミノ−9H−プリン−9−イルである。
【0178】
幾つかの実施形態では、Wは以下の1つである。
【0179】
【化23】
式中、Rは、水素、ハロ、ホスフェート、尿素、カーボネート、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロアルキルまたはヘテロシクロアルキルであり、
11は、H、アルキル、ハロ、アミノ、アミド、ヒドロキシまたはアルコキシであり、
12は、H、アルキル、シアノ、アルキニル、アルケニル、ハロ、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、シクロアルキル、アミノ、カルボン酸、アルコキシカルボニルまたはアミドである。
【0180】
幾つかの実施形態では、Wdは、
【0181】
【化24】
である。
【0182】
幾つかの実施形態では、Wは、
【0183】
【化25】
である。
【0184】
幾つかの実施形態では、Wは、
【0185】
【化26】
である。
【0186】
幾つかの実施形態では、Wは、
【0187】
【化27】
である。
【0188】
の幾つかの実施形態では、Rは、水素、ハロ、ホスフェート、尿素、カーボネート、非置換または置換アルキル、非置換または置換アルケニル(alkeny)、非置換または置換アルキニル、非置換または置換シクロアルキル、非置換または置換ヘテロアルキルおよび非置換または置換ヘテロシクロアルキルからなる群から選択されるメンバーである。
【0189】
の幾つかの実施形態では、Rがアルキル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロアルキルまたはヘテロシクロアルキルである場合、Rは、ホスフェート、尿素またはカーボネートによって置換されている。
【0190】
式Iの化合物の幾つかの実施形態では、R11は、水素、非置換または置換アルキル、および−I、−F、−Clまたは−Brを含むハロからなる群のメンバーである。幾つかの実施形態では、R11は、非置換または置換アミノ、非置換または置換アミド、ヒドロキシあるいは非置換または置換アルコキシである。幾つかの実施形態では、R11は、ホスフェート、非置換または置換尿素またはカーボネートである。
【0191】
幾つかの実施形態では、R11がアルキル、アミノ、アミド、ヒドロキシまたはアルコキシである場合、R11は、ホスフェート、尿素またはカーボネートによって置換されている。
【0192】
式Iの化合物の幾つかの実施形態では、−X−Y−Wは、以下の部分の1つである。
【0193】
【化28】
【0194】
【化29】
式Iの化合物の幾つかの実施形態では、R12は、水素、シアノ、ハロ、非置換または置換アルキル、および非置換または置換アルキニル、非置換または置換アルケニルからなる群のメンバーである。幾つかの実施形態では、R12は、非置換または置換アリールである。幾つかの実施形態では、R12は、非置換または置換ヘテロアリールであり、それには、限定されるものではないが、5員環を有するヘテロアリール、6員環を有するヘテロアリール、少なくとも1つの窒素環原子を有するヘテロアリール、2つの窒素環原子を有するヘテロアリール、単環式ヘテロアリールおよび二環式ヘテロアリールが含まれる。幾つかの実施形態では、R12は、非置換または置換ヘテロシクロアルキルであり、それには、限定されるものではないが、1つの窒素環原子を有するヘテロシクロアルキル、1つの酸素環原子を有するヘテロシクロアルキルが含まれ、R12は、1つの硫黄環原子を有するヘテロシクロアルキル、5員のヘテロシクロアルキル、6員のヘテロシクロアルキル、飽和ヘテロシクロアルキル、不飽和ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル環に結合した不飽和部分を有するヘテロシクロアルキル、オキソによって置換されているヘテロシクロアルキルおよび2つのオキソによって置換されているヘテロシクロアルキルである。幾つかの実施形態では、R12は、それに限定されるものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1つのオキソによって置換されているシクロアルキル、シクロアルキル環に結合している不飽和部分を有するシクロアルキルを含む非置換または置換シクロアルキルである。幾つかの実施形態では、R12は、非置換または置換アミド、カルボン酸、非置換または置換アシルオキシあるいは非置換または置換アルコキシカルボニルである。
【0195】
幾つかの実施形態では、R12がアルキル、アルキニル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルまたはシクロアルキルである場合、R12は、ホスフェートで置換されている。幾つかの実施形態では、R12がアルキル、アルキニル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルまたはシクロアルキルである場合、R12は、尿素で置換されている。幾つかの実施形態では、R12がアルキル、アルキニル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルまたはシクロアルキルである場合、R12は、カーボネートで置換されている。
【0196】
幾つかの実施形態では、R12がアルキル、アルキニル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、シクロアルキル、アルコキシカルボニル、アミドまたはアシルオキシである場合、R12は、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アミド、アミノ、アシル、アシルオキシ、アルコキシカルボニル、スルホンアミド、ハロ、シアノ、ヒドロキシまたはニトロの1つまたは複数で置換されており、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アミド、アミノ、アシル、アシルオキシ、アルコキシカルボニルまたはスルホンアミドのそれぞれは、それ自体置換されていてもよい。
【0197】
幾つかの実施形態では、WのR12は、以下の部分の1つである。
【0198】
【化30】
【0199】
【化31】
幾つかの実施形態では、Wは、式IIIのピラゾロピリミジンである。
【0200】
【化32】
式中、R11は、H、アルキル、ハロ、アミノ、アミド、ヒドロキシまたはアルコキシであり、R12は、H、アルキル、アルキニル、アルケニル、ハロ、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルまたはシクロアルキルである。幾つかの実施形態では、R11は、アミノであり、R12は、H、アルキル、アルキニル、アルケニル、ハロ、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルまたはシクロアルキルである。幾つかの実施形態では、R11は、アミノであり、R12は、アルキル、ハロ、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルまたはシクロアルキルである。幾つかの実施形態では、R11は、アミノであり、R12は、単環式ヘテロアリールである。幾つかの実施形態では、R11は、アミノであり、R12は、二環式ヘテロアリールである。幾つかの実施形態では、R11は、アミノであり、R12は、シアノ、アミノ、カルボン酸、アシルオキシ、アルコキシカルボニルまたはアミドである。
【0201】
本発明の幾つかの実施形態では、式Iの化合物は、式IVの構造を有する化合物である。
【0202】
【化33】
式IVの化合物の幾つかの実施形態では、R11は、H、アルキル、ハロ、アミノ、アミド、ヒドロキシまたはアルコキシであり、R12は、H、アルキル、アルキニル、アルケニル、ハロ、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルまたはシクロアルキルである。別の実施形態では、R11は、アミノであり、R12は、アルキル、アルケニル、ヘテロアリール、アリールまたはヘテロシクロアルキルである。幾つかの実施形態では、R11は、アミノであり、R12は、シアノ、アミノ、カルボン酸、アルコキシカルボニルまたはアミドである。
【0203】
幾つかの実施形態では、式IVの化合物は、式IV−Aの化合物である。
【0204】
【化34】
本発明はまた、式V、V−A、V−B、VIまたはVI−Aのいずれかの構造を有する式Iの化合物を提供する。
【0205】
【化35】
式Iの化合物について開示の要素およびそれらの置換基のいずれも、任意の組合せで使用することができる。
【0206】
一態様では、Rは、H、CH、CF、ClまたはFであり、Bは、式IIの部分であり、
【0207】
【化36】
式中、Wは、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルまたはシクロアルキルであり、Rは、H、−F、−Cl、−CN、−CH、イソプロピル、−CF、−OCH、ニトロまたはホスフェートであり、Rは、ハロ、ヒドロキシ、シアノまたはニトロであり、qは、0、1、2、3または4の整数であり、R、R、RおよびRは、Hであり、Xは、存在しないか、または(CHであり、zは1であり、Yは、存在しないか、または−N(R)−であり、Rは、水素、C〜C10アルキル、C〜CシクロアルキルまたはC〜C10ヘテロアルキルであり、Wは、ピラゾロピリミジンまたはプリンである。
【0208】
別の態様では、Rは、H、CH、CF、ClまたはFであり、Bは、式IIの部分であり、これは、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルまたはシクロアルキルであり、Rは、H、−F、−Cl、−CN、−CH、イソプロピル、−CF、−OCH、ニトロまたはホスフェートであり、Rは、ハロ、ヒドロキシ、シアノまたはニトロであり、qは、0、1または2であり、R、R、RおよびRは、Hであり、Xは、存在しないか、または(CHであり、zは1であり、Yは、存在しないか、または−N(R)−であり、Rは、水素、メチルまたはエチルであり、Wは、
【0209】
【化37】
であり、
11は、アミノであり、R12は、H、アルキル、アルキニル、アルケニル、ハロ、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルまたはシクロアルキルである。
【0210】
別の態様では、Rは、H、CH、CF、ClまたはFであり、Bは、式IIの部分であり、これは、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルまたはシクロアルキルであり、Rは、H、−F、−Cl、−CN、−CH、イソプロピル、−CF、−OCH、ニトロまたはホスフェートであり、Rは、ハロ、ヒドロキシ、シアノまたはニトロであり、qは、0、1または2であり、Xは、(CHであり、zは1であり、R、R、RおよびRは、Hであり、Yは、存在せず、Wは、
【0211】
【化38】
であり、
11は、アミノであり、R12は、H、アルキル、アルキニル、アルケニル、ハロ、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルまたはシクロアルキルである。
【0212】
別の態様では、Rは、H、CH、CF、ClまたはFであり、Bは、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルまたはシクロアルキルであり、Rは、H、−F、−Cl、−CN、−CH、イソプロピル、−CF、−OCH、ニトロまたはホスフェートであり、Rは、ハロ、ヒドロキシ、シアノまたはニトロであり、qは、0、1または2であり、R、R、RおよびRは、Hであり、Xは、(CHであり、zは1であり、Xは、(CHであり、zは1であり、Yは、−N(R)−であり、Rは、水素、メチルまたはエチルであり、Wは、
【0213】
【化39】
である。
【0214】
11は、アミノであり、R12は、H、アルキル、アルキニル、アルケニル、ハロ、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルまたはシクロアルキルである。
【0215】
別の態様では、Rは、アリール、ヘテロアリール、H、CH、CF、ClまたはFであり、Bは、アルキルまたは式IIの部分であり、
【0216】
【化40】
式中、Wは、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルまたはシクロアルキルであり、qは、0、1、2、3または4の整数であり、Rは、H、−F、−Cl、−CN、−CH、イソプロピル、−CF、−OCH、ニトロまたはホスフェートであり、Rは、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロまたはホスフェートであり、qは、0、1または2であり、R、R、RおよびRは、Hであり、Xは、存在しないか、または(CH(R))であり、zは、1、2、3または4の整数であり、Yは、存在しないか、−N(R)−または−N(R)CH(R)−であり、Rは、水素、アルキル、シクロアルキルまたはヘテロアルキルであり、Wは、ピラゾロピリミジンまたはプリンである。
【0217】
別の態様では、Rは、アリール、ヘテロアリール、H、CH、CF、ClまたはFであり、Bは、アルキルまたは式IIの部分であり、これは、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルまたはシクロアルキルであり、Rは、H、−F、−Cl、−CN、−CH、イソプロピル、−CF、−OCH、ニトロまたはホスフェートであり、Rは、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロまたはホスフェートであり、qは、0、1または2であり、R、R、RおよびRは、Hであり、Xは、存在しないか、または(CH(R))であり、zは、1、2、3または4の整数であり、Yは、存在しないか、−N(R)−または−N(R)CH(R)−であり、Rは、水素、メチルまたはエチルであり、Wは、
【0218】
【化41】
であり、R11は、アミノであり、R12は、H、アルキル、アルキニル、アルケニル、ハロ、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、シクロアルキル、シアノ、アミノ、カルボン酸、アルコキシカルボニル(aloxycarbonyl)またはアミドである。
【0219】
別の態様では、Rは、H、CH、CF、ClまたはFであり、Bは、アルキルまたは式IIの部分であり、これは、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルまたはシクロアルキルであり、Rは、H、−F、−Cl、−CN、−CH、イソプロピル、−CF、−OCH、ニトロまたはホスフェートであり、Rは、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロまたはホスフェートであり、qは、0、1または2であり、R、R、RおよびRは、Hであり、Xは、(CH(R))であり、zは、整数1であり、Yは、存在しないか、または−N(R)CH(R)−であり、Rは、水素、メチルまたはエチルであり、Wは、
【0220】
【化42】
であり、R11は、アミノであり、R12は、H、アルキル、アルキニル、アルケニル、ハロ、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、シクロアルキル、シアノ、アミノ、カルボン酸、アルコキシカルボニルまたはアミドである。
【0221】
別の態様では、Rは、アリール、ヘテロアリール、H、CH、CF、ClまたはFであり、Bは、式IIの部分であり、これは、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルまたはシクロアルキルであり、Rは、H、−F、−Cl、−CN、−CH、イソプロピル、−CF、−OCH、ニトロまたはホスフェートであり、Rは、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロまたはホスフェートであり、qは、0、1または2であり、R、R、RおよびRは、Hであり、Xは、存在しないか、または(CH(R))であり、zは、1、2、3または4の整数であり、Yは、存在しないか、−N(R)−または−N(R)CH(R)−であり、Rは、水素、メチルまたはエチルであり、Wは、
【0222】
【化43】
である。
【0223】
別の態様では、Rは、アリール、ヘテロアリール、H、CH、CF、ClまたはFであり、Bは、式IIの部分であり、これは、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルまたはシクロアルキルであり、Rは、H、−F、−Cl、−CN、−CH、イソプロピル、−CF、−OCH、ニトロまたはホスフェートであり、Rは、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロまたはホスフェートであり、qは、0、1または2であり、R、R、RおよびRは、Hであり、Xは、存在せず、Yは、−N(R)CH(R)−であり、Rは、水素、メチルまたはエチルであり、Wは、
【0224】
【化44】
である。
【0225】
式IV−Aの下位構造を有する、本発明のさらなる例示的化合物が開示される。
【0226】
【化45】
式IV−Aの構造を有する本発明の幾つかの例示的化合物は、Rが、−H、−Cl、−Fまたは−CHであり、それを表1に記載の任意のB部分および表2に記載の任意のR12と組み合わせた化合物を含む。式IV−Aの化合物は、R、BおよびR12の任意の組合せを含む。式IV−Aのさらなる例示的化合物を、表4に示す。
【0227】
【表1-1】
【0228】
【表1-2】
【0229】
【表1-3】
【0230】
【表1-4】
【0231】
【表2-1】
【0232】
【表2-2】
【0233】
【表2-3】
本発明の他の例示的化合物は、式V−Aの構造を有し、−H、−Cl、−FまたはCHであるRおよび−H、−CHまたは−CHCHであるRと共に、Bは、表2に記載の部分である。
【0234】
【化46】
本発明の他の例示的化合物は、式V−Bの構造を有し、−H、−Cl、−FまたはCHであるRおよび−H、−CHまたは−CHCHであるRと共に、Bは、表2に記載の部分である。
【0235】
【化47】
本発明の他の例示的化合物は、式VI−Aの構造を有し、−H、−Cl、−FまたはCHであるRおよび−H、−CHまたは−CHCHであるRと共に、Bは、表2に記載の部分である。
【0236】
【化48】
本発明の他の例示的化合物には、それに限定されるものではないが、以下のものが含まれる。
【0237】
【化49】
【0238】
【化50】
本明細書に記載の化学的実体は、本明細書の1つもしくは複数の例示的スキームおよび/または当技術分野で周知の技術に従って合成することができる。
【0239】
他に相反する記載がなければ、本明細書に記載の反応は、大気圧で、一般に−10℃〜200℃の温度範囲内で実施される。さらに、別段指定される場合を除き、反応時間および条件は概算であることを企図し、例えばおよそ大気圧において、約−10℃〜約110℃の温度範囲内で約1〜約24時間にわたって実施され、反応は、終夜平均約16時間静置される。
【0240】
それぞれ「溶媒」、「有機溶媒」または「不活性溶媒」という用語は、例えばベンゼン、トルエン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(「THF」)、ジメチルホルムアミド(「DMF」)、クロロホルム、塩化メチレン(またはジクロロメタン)、ジエチルエーテル、メタノール、N−メチルピロリドン(「NMP」)、ピリジン等を含む、それに関して記載の反応条件下で不活性な溶媒を意味する。他に相反する記載がなければ、本明細書に記載の反応で使用される溶媒は、不活性な有機溶媒である。他に相反する記載がなければ、限定試薬の各グラムについて、溶媒1cc(またはmL)は、体積当量を構成する。
【0241】
本明細書に記載の化学的実体および中間体の単離および精製は、所望により、例えば濾過、抽出、結晶化、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィーまたは厚層クロマトグラフィー、あるいはこれらの手順の組合せなどの任意の適切な分離または精製手順によって行うことができる。適切な分離および単離手順の具体例は、以下の実施例を参照することによって得られる。しかし、他の同等の分離または単離手順を使用することもできる。
【0242】
所望に応じて、本発明の化合物の(R)−および(S)−異性体は、存在する場合には当業者に公知の方法によって、例えば分離できるジアステレオマー塩または錯体を形成することによって、例えば結晶化によって、分離できるジアステレオマー誘導体の形成を介して、例えば結晶化、ガス液体または液体クロマトグラフィー、あるエナンチオマーとエナンチオマー特異的試薬との選択的反応、例えば酵素的酸化または還元、その後の修飾および非修飾エナンチオマーの分離、あるいはキラル環境、例えば結合キラルリガンドを用いるまたはキラル溶媒の存在下でのシリカなどのキラル支持体の下でのガス液体または液体クロマトグラフィーによって分解することができる。あるいは、特異的エナンチオマーは、光学活性試薬、基質、触媒または溶媒を使用する不斉合成によって、あるいは不斉転換によってあるエナンチオマーから他のエナンチオマーに変換することによって合成することができる。
【0243】
本明細書に記載の化合物は、場合によって、薬学的に許容される酸と接触させて、対応する酸付加塩を形成することができる。
【0244】
場合によって置換されている出発化合物および他の反応物の多くは、例えばAldrich Chemical Company(ウィスコンシン州ミルウォーキー)から市販されており、または一般に使用されている合成方法を使用して、当業者によって容易に調製され得る。
【0245】
本発明の化合物は、一般に周知の合成方法の適切な組合せによって、一般に合成することができる。これらの化学的実体の合成に有用な技術は、本開示に基付いて、関連技術の業者には容易に明らかとなり、利用できるものである。
【0246】
本発明の化合物は、当技術分野の公知の合成方法の適切な組合せによって合成することができる。以下の議論は、本発明の化合物の製造における使用に利用できる様々な方法の幾つかを例示するために提供され、本発明の化合物の調製に使用できる反応の範囲または反応のシーケンスを制限するものではない。
【0247】
反応スキーム1
【0248】
【化51】
スキーム1、ステップ1に関して、式101の化合物(式中、XはNまたはCRである)を、例えば、式102の化合物とのHeckカップリング、その後のメタノール中での酸触媒の環化の2ステップ過程を介して、式103の化合物に変換する。生成物である式103の化合物を単離する。スキーム1、ステップ2に関して、式103の化合物を、例えば適切に置換されたアニリンを用いる反応を介して、式104の化合物に変換する。生成物である式104の化合物を単離する。スキーム1、ステップ3に関して、式104の化合物を、例えば水素化リチウムアルミニウムを用いる還元を介して、式105の化合物に変換する。生成物である式105の化合物を単離する。スキーム1、ステップ4に関して、式105の化合物を、例えば塩化チオニルとの反応を介して、式106の化合物に変換する。生成物である式106の化合物を単離する。スキーム1、ステップ5に関して、式106の化合物を、例えばピラゾロピリミジンを用いるアルキル化を介して、炭酸カリウムなどの塩基を使用して、式107の化合物に変換する。生成物である式107の化合物を単離する。スキーム1、ステップ6に関して、式107の化合物を、例えば鈴木反応を介して、式108の化合物に変換する。生成物である式108の化合物を単離し、必要に応じて精製する。
【0249】
反応スキーム2
【0250】
【化52】
【0251】
【化53】
スキーム2、ステップ1に関して、式201の化合物(式中、XはNまたはCRである)を、例えば酸塩化物、例えば塩化オキサリルの導入に適した試薬を用いて、式202の化合物に変換する。生成物である式202の化合物を、場合によって単離する。スキーム2、ステップ2に関して、式202の化合物を、例えばアリールアミンとの例えば反応を介して、式203の化合物に変換する。生成物である式203の化合物を単離する。スキーム2、ステップ3に関して、式203の化合物を、例えば適切なビニルスタンナンを使用するスティルカップリングを介して、式204の化合物に変換する。生成物である式204の化合物を単離する。スキーム2、ステップ4に関して、式204の化合物を、酢酸クロロエチルおよび水酸化ナトリウム塩基との反応を介して、第3級アミドである式205の化合物に変換する。式205の化合物を単離する。スキーム2、ステップ5に関して、式205の化合物を、例えば四酸化オスモニウムおよび過ヨウ素酸(periodinate)ナトリウムを使用して、アルデヒドに酸化する。生成物である式206の化合物を単離する。スキーム2、ステップ6に関して、式206の化合物を、例えば炭酸セシウムなどの塩基とのエタノール中アルドール反応を介して、式104の化合物に変換する。生成物である式104の化合物を単離する。スキーム2、ステップ7に関して、式104の化合物を、例えば水素化アルミニウムリチウムを用いる還元によって、第1級アルコールに還元して式105の化合物を得、それを単離する。スキーム2、ステップ8に関して、式105の化合物を、四臭化炭素およびトリフェニルホスフィンとの反応を介して、式207の化合物に変換する。式207の化合物を、単離する。この化合物は、本発明の化合物の合成における中心的中間体であり得る。
【0252】
反応スキーム3
【0253】
【化54】
スキーム3、ステップ9に関して、反応スキーム2に記載の通り合成した式207の化合物(式中、XはNまたはCRである)を、塩基、例えばカリウムt−ブトキシドの存在下で、式208の化合物とのカップリングを介して、式107の化合物に変換する。式107の化合物を単離する。スキーム3、ステップ10に関して、式107の化合物を、例えば、カップリング触媒および塩基、例えば酢酸パラジウム、トリフェニルホスフィンおよび炭酸ナトリウムの存在下で、例えばアリールボロン酸とのカップリングを介して、式108の化合物に変換する。式108の化合物を単離する。
【0254】
反応スキーム4
【0255】
【化55】
反応スキーム4、ステップ1に関して、ヨードエステル401を、パラジウム触媒、ヨウ化銅およびトリエチルアミン(TEA)の存在下でアルキンと反応させて、そのアルキンを化合物401のアリールコアとカップリングして、式402の化合物を得る。式402の化合物を必要に応じて単離する。反応スキーム4、ステップ2に関して、式402を水酸化カリウム塩基で処理して、反応生成物が酸性化される場合にはカルボン酸である式403の化合物、またはその塩を得る。式403の化合物を必要に応じて単離する。反応スキーム4、ステップ3に関して、式403の化合物をビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム(II)およびTEAで処理して、分子内閉環を行って、式404の化合物を得る。式404の化合物を単離する。反応スキーム4、ステップ4に関して、式404の化合物を第1級アミンと反応させて、式405の化合物を得る。式405の化合物を必要に応じて単離する。反応スキーム14、ステップ5に関して、式405の化合物を塩酸で処理し、窒素上の保護基を除去して、式406の化合物を得る。式406の化合物を必要に応じて単離することができる。反応スキーム4、ステップ6に関して、式406の化合物を式407の化合物と反応させて、式408の化合物を得る。式408の化合物を単離する。
【0256】
反応スキーム5
【0257】
【化56】
【0258】
【化57】
反応スキーム5、ステップ1に関して、ヨードエステル401を、パラジウムカップリング触媒、ヨウ化銅およびTEAの存在下でアルキン501と反応させて、式502の化合物を得る。式502の化合物を、場合によって単離する。反応スキーム5、ステップ2に関して、式502の化合物を水酸化カリウム塩基で処理して、カルボン酸塩または式503の化合物の遊離酸を得る。反応スキーム5、ステップ3に関して、式503の化合物を、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム(II)およびTEAで処理して、分子内閉環させて、式504の化合物を生成する。式504の化合物を、場合によって単離する。反応スキーム5、ステップ4に関して、式504の化合物を第1級アミンで処理して、式505の化合物を生成する。式505の化合物を単離する。
【0259】
反応スキーム6
【0260】
【化58】
反応スキーム6、ステップ1に関して、ヨードエステル401を、パラジウムカップリング触媒、ヨウ化銅およびTEAの存在下でアルキン601と反応させて、式602の化合物を得る。式602の化合物を、場合によって単離する。反応スキーム6、ステップ2に関して、式602の化合物を水酸化カリウム塩基で処理して、カルボン酸塩または式603の化合物の遊離酸を得る。反応スキーム6、ステップ3に関して、式603の化合物を、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム(II)およびTEAで処理して、分子内閉環させて、式604の化合物を生成する。式604の化合物を、場合によって単離する。反応スキーム6、ステップ4に関して、式604の化合物を第1級アミンで処理して、式605の化合物を生成する。式605の化合物を単離する。反応スキーム6、ステップ5に関して、式605の化合物を酸で処理して、THP保護基を除去して、式606の化合物を得る。式606の化合物を単離する。
【0261】
反応スキーム7
【0262】
【化59】
【0263】
【化60】
反応スキーム7、ステップ1に関して、式701の化合物を、スキーム1または2の変形を含む様々な合成経路によって合成し、例えば式103の化合物を式104の化合物に変換するステップでベンジルアミンを使用する。アミンのベンジル保護基を、標準の脱保護化学によって除去して、式701の化合物を得ることができる。式103の化合物を式701の化合物に変換する別の例では、式103の化合物をアンモニアで処理することによって、式701の化合物を生成する。701の化合物を、脱保護できる幾つかの2−炭素含有シントンを用いてアミド窒素をアルキル化することによって式702の化合物に変換し、酸化し、それぞれケタールとして再保護する。反応スキーム7、ステップ2−1に関して、式702の化合物を、例えばエステル部分を還元的にアミノ化して、式703の化合物のプリニル部分を導入することによって変形し、あるいはアルキル化してプリニル部分をそのようにして導入し、式703の化合物を得る。反応スキーム7、ステップ3−1に関して、式703の化合物を酸で処理して、ケタール保護基を除去して、式704の化合物を得る。式704の化合物を単離する。反応スキーム7、ステップ4−1に関して、式704の化合物をアミンで還元的にアミノ化して、式705の化合物を得る。式705の化合物を単離する。反応スキーム7、ステップ2−2に関して、式702の化合物を、スキーム2のステップ7および8ならびにスキーム3のステップ1によって、式706の化合物のピラゾロピリミジン部分を導入することによって変形する。式706の化合物を単離する。反応スキーム7、ステップ3−2に関して、式706の化合物を酸で処理して、ケタール保護基を除去して、式707の化合物を得る。式707の化合物を単離することができる。
【0264】
反応スキーム7、ステップ4−2に関して、式707の化合物をアミンで還元的にアミノ化して、式708の化合物を得る。式708の化合物を単離する。
【0265】
反応スキーム8
【0266】
【化61】
反応スキーム8、ステップ1に関して、式701の化合物を、スキーム7または任意の他の一般に公知の化学文献に記載の通り合成する。式701の化合物を、脱保護できる幾つかの2−炭素含有シントンを用いてアミド窒素をアルキル化することによって変形し、式801の化合物で示した通りアルコキシ保護種に変換し、それを単離することができる。反応スキーム8、ステップ2に関して、式801の化合物を、スキーム7のステップ2−1に記載の化学によりプリニル部分を導入することによって変換し、得られた化合物を、脱保護、活性化およびアミンでのアミノ化によって変形して、式802の化合物を得、それを単離する。
【0267】
反応スキーム8、ステップ3に関して、式801の化合物を、スキーム7のステップ2−2に記載の化学によりピラゾロピリミジン部分を導入することによって変換し、得られた化合物を、脱保護、活性化およびアミンでのアミノ化によって変形して、式803の化合物を得、それを単離する。
【0268】
反応スキーム9
【0269】
【化62】
反応スキーム9、ステップ1に関して、式901の化合物をアミンで処理して、式902の化合物を得る。式902の化合物を単離する。反応スキーム9、ステップ2に関して、式902の化合物をオキシ塩化リンで処理して、式903の化合物を得る。式903の化合物を単離する。反応スキーム9、ステップ3に関して、式903の化合物を式904のアミノプリンと反応させて、式905の化合物を得る。式905の化合物を単離する。反応スキーム9、ステップ4に関して、式905の化合物を塩酸で処理して、プリン部分上の窒素における保護基を除去して、式906の化合物を得る。式906の化合物を単離する。
【0270】
反応スキーム10
【0271】
【化63】
反応スキーム10、ステップ1に関して、式1001の化合物を、例えばHeck反応とその後の環化を使用して、ビニル性エステル1002で処理して、式1003の化合物を得る。式1003の化合物を単離する。反応スキーム10、ステップ2に関して、式1003の化合物を4−アミノN−Bocピペリジンと反応させて、式1004の化合物を得る。式1004の化合物を単離する。式1004の化合物を、本発明の化合物の合成における中間体として使用することができる。
【0272】
反応スキーム11
【0273】
【化64】
反応スキーム11、ステップ1に関して、式1101の化合物を、ヨウ化銅および炭素触媒上のパラジウムの存在下、例えば式1102のアルキニルアルコールで処理して、式1103の化合物を得る。式1103の化合物を、場合によって単離し、場合によって精製する。反応スキーム11、ステップ1に関して、式1102の化合物を4−アミノN−Bocピペリジンと反応させて、式1103の化合物を得る。式1103の化合物を単離する。式1103の化合物を、本発明の化合物の合成における中間体として使用することができる。
【0274】
式Iの化合物は、本明細書に開示の反応スキームまたは当技術分野で周知のこれらの過程の変形を使用して、合成することができる。
【0275】
化学的実体は、一般に周知の合成方法の適切な組合せによって合成することができる。
【0276】
幾つかの実施形態では、本発明の化合物は、本明細書に開示の1つまたは複数の機能的特徴を示す。例えば、1つまたは複数の対象化合物は、PI3キナーゼに特異的に結合する。幾つかの実施形態では、p110α、p110β、p110γまたはp110δに対する対象化合物のIC50は、約1uM未満、約100nM未満、約50nM未満、約10nM未満、約1nM未満、約0.5nM未満、約100pM未満または約50pM未満である。
【0277】
幾つかの実施形態では、対象化合物の1つまたは複数は、タイプIまたはクラスIのホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3−キナーゼ)の1つまたは複数のメンバーを、インビトロキナーゼアッセイで測定して約100nM、50nM、10nM、5nM、100pM、10pMまたは1pM以下のIC50で選択的に阻害することができる。
【0278】
幾つかの実施形態では、対象化合物の1つまたは複数は、PI3−キナーゼα、PI3−キナーゼβ、PI3−キナーゼγおよびPI3−キナーゼδからなるタイプIまたはクラスIホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3−キナーゼ)の1つまたは2つのメンバーを選択的に阻害することができる。幾つかの態様では、対象化合物の幾つかは、全ての他のタイプIのPI3−キナーゼと比較して、PI3−キナーゼδを選択的に阻害する。他の態様では、対象化合物の幾つかは、残りのタイプIのPI3−キナーゼと比較して、PI3−キナーゼδおよびPI3−キナーゼγを選択的に阻害する。さらに他の態様では、対象化合物の幾つかは、残りのタイプIのPI3−キナーゼと比較して、PI3−キナーゼαおよびPI3−キナーゼβを選択的に阻害する。またさらに幾つかの他の態様では、対象化合物の幾つかは、残りのタイプIのPI3−キナーゼと比較して、PI3−キナーゼδおよびPI3−キナーゼαを選択的に阻害する。またさらに幾つかの他の態様では、対象化合物の幾つかは、残りのタイプIのPI3−キナーゼと比較して、PI3−キナーゼδおよびPI3−キナーゼβを選択的に阻害し、または残りのタイプIのPI3−キナーゼと比較して、PI3−キナーゼδおよびPI3−キナーゼαを選択的に阻害し、または残りのタイプIのPI3−キナーゼと比較して、PI3−キナーゼαおよびPI3−キナーゼγを選択的に阻害し、または残りのタイプIのPI3−キナーゼと比較して、PI3−キナーゼγおよびPI3−キナーゼβを選択的に阻害する。
【0279】
さらに別の態様では、タイプIのPI3−キナーゼの1つもしくは複数のメンバーを選択的に阻害する阻害剤または1つもしくは複数のタイプIのPI3−キナーゼ媒介性シグナル伝達経路を選択的に阻害する阻害剤は、あるいは所与のタイプIのPI3−キナーゼに関して、残りの他のタイプIのPI3−キナーゼに関する阻害剤のIC50よりも、少なくとも少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも1000倍、少なくとも10,100倍以下の50%阻害濃度(IC50)を示す化合物に言及していると理解することができる。
【0280】
医薬組成物
本発明は、本発明の1つまたは複数の化合物を含む医薬組成物を提供する。
【0281】
幾つかの実施形態では、本発明は、哺乳動物における望ましくない、過活動の有害なまたは危険な免疫反応に関連する疾患または状態を治療するための医薬組成物を提供する。かかる望ましくない免疫反応は、例えば喘息、肺気腫、気管支炎、乾癬、アレルギー、アナフィキラシー(anaphylaxsis)、自己免疫疾患、関節リウマチ(rhuematoid)、移植片対宿主病および紅斑性狼瘡に関連するまたはそれらをもたらすおそれがある。本発明の医薬組成物は、それに限定されるものではないが、肺葉、胸膜腔、気管支、気管、上気道または呼吸のための神経および筋肉に影響を及ぼす疾患を含む他の呼吸器疾患を治療するために使用することができる。
【0282】
幾つかの実施形態では、本発明は、それに限定されるものではないが、急性骨髄性白血病、胸腺、脳、肺、扁平上皮細胞、皮膚、目、網膜芽細胞、眼球内黒色腫、口腔および口腔咽頭、膀胱、胃(gastric)、胃(stomach)、膵臓、膀胱、乳房、頸部、頭部、首、腎臓(renal)、腎臓(kidney)、肝臓、卵巣、前立腺、結腸直腸、食道、精巣、婦人科、甲状腺、CNS、PNS、AIDS関連AIDS関連(例えば、リンパ腫およびカポジ肉腫)またはウイルス誘発性癌などの癌を含む、過剰増殖性障害などの障害の治療のための医薬組成物を提供する。幾つかの実施形態では、前記医薬組成物は、皮膚(例えば乾癬)、再狭窄または前立腺の良性過形成(例えば前立腺肥大症(BPH))などの非癌性過剰増殖性障害の治療のためのものである。
【0283】
本発明はまた、哺乳動物の肝臓疾患(糖尿病を含む)、膵炎または腎臓疾患(増殖性糸球体腎炎および糖尿病誘発性腎臓疾患を含む)または疼痛の治療のための組成物を提供する。
【0284】
本発明はさらに、哺乳動物における未分化胚芽細胞着床予防のための組成物を提供する。
【0285】
本発明はまた、腫瘍血管形成、関節リウマチなどの慢性炎症性疾患、炎症性腸疾患、アテローム性動脈硬化症、乾癬、湿疹および強皮症などの皮膚疾患、糖尿病、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、加齢黄斑変性症、血管腫、神経膠腫、黒色腫、カポジ肉腫ならびに卵巣、乳房、肺、膵臓、前立腺、結腸および類表皮癌として現れ得る哺乳動物の脈管形成または血管形成に関連する疾患の治療のための組成物に関する。
【0286】
対象医薬組成物は、一般に、活性成分としての治療有効量の本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩、エステル、プロドラッグ、溶媒和物、水和物もしくは誘導体を提供するために製剤化される。望ましい場合、医薬組成物は、薬学的に許容される塩および/またはその配位錯体、ならびに1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤、不活性な固体希釈剤および充填剤を含む担体、滅菌水溶液および様々な有機溶媒を含む希釈剤、透過促進剤、可溶化剤ならびにアジュバントを含有する。
【0287】
対象医薬組成物は、単独で、またはやはり一般に医薬組成物の形態で投与される1つもしくは複数の他の薬剤と組み合わせて投与することができる。望ましい場合、対象化合物および他の薬剤(複数)は、調製物に混合することができ、または両方の成分を別個の調製物に製剤化して、それらを組み合わせて別々にもしくは同時に使用することができる。
【0288】
幾つかの実施形態では、本発明の医薬組成物において提供される化合物の1つまたは複数の濃度は、100%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%、0.09%、0.08%、0.07%、0.06%、0.05%、0.04%、0.03%、0.02%、0.01%、0.009%、0.008%、0.007%、0.006%、0.005%、0.004%、0.003%、0.002%、0.001%、0.0009%、0.0008%、0.0007%、0.0006%、0.0005%、0.0004%、0.0003%、0.0002%または0.0001%w/w、w/vまたはv/v未満である。
【0289】
幾つかの実施形態では、本発明の化合物の1つまたは複数の濃度は、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、19.75%、19.50%、19.25%、19%、18.75%、18.50%、18.25%、18%、17.75%、17.50%、17.25%、17%、16.75%、16.50%、16.25%、16%、15.75%、15.50%、15.25%、15%、14.75%、14.50%、14.25%、14%、13.75%、13.50%、13.25%、13%、12.75%、12.50%、12.25%、12%、11.75%、11.50%、11.25%、11%、10.75%、10.50%、10.25%、10%、9.75%、9.50%、9.25%、9%、8.75%、8.50%、8.25%、8%、7.75%、7.50%、7.25%、7%、6.75%、6.50%、6.25%、6%、5.75%、5.50%、5.25%、5%、4.75%、4.50%、4.25%、4%、3.75%、3.50%、3.25%、3%、2.75%、2.50%、2.25%、2%、1.75%、1.50%、125%、1%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%、0.09%、0.08%、0.07%、0.06%、0.05%、0.04%、0.03%、0.02%、0.01%、0.009%、0.008%、0.007%、0.006%、0.005%、0.004%、0.003%、0.002%、0.001%、0.0009%、0.0008%、0.0007%、0.0006%、0.0005%、0.0004%、0.0003%、0.0002%または0.0001%w/w、w/vまたはv/vを超える。
【0290】
幾つかの実施形態では、本発明の化合物の1つまたは複数の濃度は、約0.0001%〜約50%、約0.001%〜約40%、約0.01%〜約30%、約0.02%〜約29%、約0.03%〜約28%、約0.04%〜約27%、約0.05%〜約26%、約0.06%〜約25%、約0.07%〜約24%、約0.08%〜約23%、約0.09%〜約22%、約0.1%〜約21%、約0.2%〜約20%、約0.3%〜約19%、約0.4%〜約18%、約0.5%〜約17%、約0.6%〜約16%、約0.7%〜約15%、約0.8%〜約14%、約0.9%〜約12%、約1%〜約10%w/w、w/vまたはv/v、v/vの範囲である。
【0291】
幾つかの実施形態では、本発明の化合物の1つまたは複数の濃度は、約0.001%〜約10%、約0.01%〜約5%、約0.02%〜約4.5%、約0.03%〜約4%、約0.04%〜約3.5%、約0.05%〜約3%、約0.06%〜約2.5%、約0.07%〜約2%、約0.08%〜約1.5%、約0.09%〜約1%、約0.1%〜約0.9%w/w、w/vまたはv/vの範囲である。
【0292】
幾つかの実施形態では、本発明の化合物の1つまたは複数の量は、10g、9.5g、9.0g、8.5g、8.0g、7.5g、7.0g、6.5g、6.0g、5.5g、5.0g、4.5g、4.0g、3.5g、3.0g、2.5g、2.0g、1.5g、1.0g、0.95g、0.9g、0.85g、0.8g、0.75g、0.7g、0.65g、0.6g、0.55g、0.5g、0.45g、0.4g、0.35g、0.3g、0.25g、0.2g、0.15g、0.1g、0.09g、0.08g、0.07g、0.06g、0.05g、0.04g、0.03g、0.02g、0.01g、0.009g、0.008g、0.007g、0.006g、0.005g、0.004g、0.003g、0.002g、0.001g、0.0009g、0.0008g、0.0007g、0.0006g、0.0005g、0.0004g、0.0003g、0.0002gまたは0.0001g以下である。
【0293】
幾つかの実施形態では、本発明の化合物の1つまたは複数の量は、0.0001g、0.0002g、0.0003g、0.0004g、0.0005g、0.0006g、0.0007g、0.0008g、0.0009g、0.001g、0.0015g、0.002g、0.0025g、0.003g、0.0035g、0.004g、0.0045g、0.005g、0.0055g、0.006g、0.0065g、0.007g、0.0075g、0.008g、0.0085g、0.009g、0.0095g、0.01g、0.015g、0.02g、0.025g、0.03g、0.035g、0.04g、0.045g、0.05g、0.055g、0.06g、0.065g、0.07g、0.075g、0.08g、0.085g、0.09g、0.095g、0.1g、0.15g、0.2g、0.25g、0.3g、0.35g、0.4g、0.45g、0.5g、0.55g、0.6g、0.65g、0.7g、0.75g、0.8g、0.85g、0.9g、0.95g、1g、1.5g、2g、2.5、3g、3.5、4g、4.5g、5g、5.5g、6g、6.5g、7g、7.5g、8g、8.5g、9g、9.5gまたは10gを超える。
【0294】
幾つかの実施形態では、本発明の化合物の1つまたは複数の量は、0.0001〜10g、0.0005〜9g、0.001〜8g、0.005〜7g、0.01〜6g、0.05〜5g、0.1〜4g、0.5〜4gまたは1〜3gの範囲である。
【0295】
本発明の化合物は、広範な用量範囲にわたって有効である。例えば、成人ヒトの治療において、1日当たりの用量0.01〜1000mg、0.5〜100mg、1〜50mgおよび1日当たり5〜40mgが、使用できる用量の例である。例示的用量は、1日当たり10〜30mgである。正確な用量は、投与経路、化合物の投与形態、治療を受ける対象、治療を受ける対象の体重、ならびに担当医の選好および経験に応じて変わることになる。
【0296】
非限定的な例示的医薬組成物およびその調製方法を、以下に記載する。
【0297】
経口投与のための医薬組成物
幾つかの実施形態では、本発明は、本発明の化合物および経口投与に適した医薬賦形剤を含有する、経口投与のための医薬組成物を提供する。
【0298】
幾つかの実施形態では、本発明は、(i)有効量の本発明の化合物、場合によって(ii)有効量の第2の薬剤、および(iii)経口投与に適した医薬賦形剤を含有する、経口投与のための固体医薬組成物を提供する。幾つかの実施形態では、組成物はさらに、(iv)有効量の第3の薬剤を含有する。
【0299】
幾つかの実施形態では、医薬組成物は、経口消費に適した液体医薬組成物であってよい。経口投与に適した本発明の医薬組成物は、所定量の活性成分を、散剤として、または顆粒剤、水性もしくは非水性液体中の溶液剤もしくは懸濁剤、水中油乳剤、または油中水液体乳剤中にそれぞれ含有するカプセル剤、カシェ剤もしくは錠剤、または液剤もしくはエアロゾルスプレー剤などの別個の剤形として提供することができる。かかる剤形は、調剤法のいずれかによって調製することができるが、全ての方法は、活性成分を、1つまたは複数の必須成分を構成する担体と組み合わせるステップを含む。一般に組成物は、活性成分を、液体担体と、または微粉砕した固体担体と、またはその両方と均質に、密接に混合し、次いで必要に応じてその生成物を所望の提示物に成形することによって調製される。例えば、錠剤は、場合によって1つまたは複数の必須の成分と共に圧縮または成型することによって調製できる。圧縮錠剤は、適切な機械内で、場合によってそれに限定されるものではないが、結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤および/または界面活性剤もしくは分散化剤などの賦形剤と混合した粉剤または顆粒剤などの自由に流れる形態の活性成分を圧縮することによって調製できる。成型錠剤は、適切な機械内で、不活性液体希釈剤で湿潤させた粉末化化合物の混合物を成型することによって製造できる。
【0300】
本発明はさらに、水が幾つかの化合物の分解を容易にし得ることから、活性成分を含む無水医薬組成物および剤形を包含する。例えば、有効期限または経時的な製剤の安定性などの特徴を決定するために長期保存をシミュレートする手段として、薬剤分野では水を添加することができる(例えば5%)。本発明の無水医薬組成物および剤形は、無水または低含水成分および低水分または低湿度条件を使用して調製することができる。ラクトースを含有する本発明の医薬組成物および剤形は、製造、パッケージングおよび/または保存中に、水分および/または湿度との十分な接触が予想される場合に、無水で製造することができる。無水医薬組成物は、その無水性質が維持されるように調製し、保存することができる。したがって、無水組成物は、水への曝露を防止することが知られている材料を使用してパッケージして、それらが適切な製剤キットに含まれ得るようにすることができる。適切なパッケージの例には、それに限定されるものではないが、密封ホイル、プラスチック等、単位用量容器、ブリスターパックおよびストリップパックが含まれる。
【0301】
活性成分は、従来の医薬配合技術に従って、密接な混合物として薬学的な担体と組み合わせることができる。担体は、投与に望ましい調製形態に応じて多種多様な形態をとることができる。経口剤形のための組成物の調製において、例えば経口液体調製物(懸濁剤、溶液剤およびエリキシル剤)またはエアロゾルの場合、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、保存剤、着色剤などの通常の薬学的媒体はいずれも担体として使用することができ、あるいは経口固体調製物の場合には、幾つかの実施形態ではラクトースを使用せずに、デンプン、糖類、微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤および崩壊剤などの担体を使用することができる。例えば、適切な担体には、固体経口調製物の場合、散剤、カプセル剤および錠剤が含まれる。所望に応じて、錠剤は、標準の水性または非水性技術によってコーティングすることができる。
【0302】
医薬組成物および剤形における使用に適した結合剤には、それに限定されるものではないが、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、または他のデンプン、ゼラチン、アカシア、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、他のアルギン酸塩、粉末化トラガカント、グアーガム、セルロースおよびその誘導体(例えばエチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム)などの天然および合成ガム、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、事前に糊化したデンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶性セルロースならびにそれらの混合物が含まれる。
【0303】
本明細書に開示の医薬組成物および剤形における使用に適した充填剤の例には、それに限定されるものではないが、タルク、炭酸カルシウム(例えば、顆粒剤または散剤)、微結晶性セルロース、粉末化セルロース、デキストレート(dextrate)、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、デンプン、事前に糊化したデンプンおよびそれらの混合物が含まれる。
【0304】
崩壊剤は、水性環境に曝露された場合に崩壊する錠剤を提供するために、本発明の組成物において使用することができる。多過ぎる崩壊剤は、瓶内で崩壊し得る錠剤を生成するおそれがある。少な過ぎると、崩壊が生じるのに不十分であり、こうして剤形からの活性成分(複数可)の放出速度および度合いを変えることができる。したがって、活性成分(複数可)の放出を有害に変える程には少な過ぎず多過ぎない十分な量の崩壊剤を使用して、本明細書に開示の化合物の剤形を形成することができる。使用される崩壊剤の量は、製剤の種類および投与方法に応じて変わり得、これは当業者に容易に認識され得る。崩壊剤約0.5〜約15重量パーセントまたは崩壊剤約1〜約5重量パーセントを、医薬組成物に使用することができる。本発明の医薬組成物および剤形を形成するために使用できる崩壊剤には、それに限定されるものではないが、寒天、アルギン酸、炭酸カルシウム、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ジャガイモもしくはタピオカデンプン、他のデンプン、事前に糊化したデンプン、他のデンプン、粘土、他のアルギン、他のセルロース、ガムまたはそれらの混合物が含まれる。
【0305】
本発明の医薬組成物および剤形を形成するための使用できる滑沢剤には、それに限定されるものではないが、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、軽油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、他のグリコール、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、水素化植物油(例えば、ピーナッツ油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油および大豆油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル(ethylaureate)、寒天またはそれらの混合物が含まれる。さらなる滑沢剤には、例えば、syloidシリカゲル、合成シリカの凝固エアロゾルまたはそれらの混合物が含まれる。場合によって、医薬組成物の約1重量パーセント未満の量の滑沢剤を添加することができる。
【0306】
水性懸濁剤および/またはエリキシル剤が経口投与にとって望ましい場合、本明細書の必須の活性成分を、様々な甘味剤または香味剤、着色物質または染料と混合することができ、また望ましい場合には、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリンおよびそれらの様々な組合せなどの希釈剤と一緒に、乳化剤および/または懸濁化剤と混合することができる。
【0307】
錠剤は、コーティングされていなくてもよく、または消化管における崩壊および吸収を遅延するための公知の技術によってコーティングすることができ、それによってより長期にわたって持続作用をもたらすことができる。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延材料を使用することができる。経口使用の製剤は、硬質ゼラチンカプセル剤として提供することもでき、この場合、活性成分は不活性な固体希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンと混合され、あるいは軟質ゼラチンカプセル剤として、活性成分は、水または油性媒体、例えばピーナッツ油、液体パラフィンまたはオリーブ油と混合される。
【0308】
本発明の医薬組成物および剤形を形成するために使用できる界面活性剤には、それに限定されるものではないが、親水性界面活性剤、親油性界面活性剤およびそれらの混合物が含まれる。即ち、親水性界面活性剤の混合物を使用することができ、親油性界面活性剤の混合物を使用することができ、または少なくとも1種の親水性界面活性剤および少なくとも1種の親油性界面活性剤の混合物を使用することができる。
【0309】
適切な親水性界面活性剤は、一般に、少なくとも10以下のHLB値を有することができ、適切な親油性界面活性剤は、一般に約10以下のHLB値を有することができる。非イオン性両親媒性化合物の相対的親水性および疎水性を特徴付けるために使用される実験的パラメータは、親水性−親油性平衡(「HLB」値)である。低HLB値を有する界面活性剤は、より親油性または疎水性であり、油への可溶性がより高く、高HLB値を有する界面活性剤は、より親水性であり、水溶液への可溶性がより高い。親水性界面活性剤は一般に、約10を超えるHLB値を有する化合物、ならびにHLB尺度が一般に適用できないアニオン性、カチオン性または双性化合物であるとみなされる。同様に、親油性(即ち疎水性)界面活性剤は、約10以下のHLB値を有する化合物である。しかし界面活性剤のHLB値は、工業的、薬学的および化粧用乳剤の製剤化を可能にするために一般に使用される大まかな指針であるにすぎない。
【0310】
親水性界面活性剤は、イオン性また非イオン性のいずれかであってよい。適切なイオン性界面活性剤には、それに限定されるものではないが、アルキルアンモニウム塩;フシジン酸塩;アミノ酸、オリゴペプチドおよびポリペプチドの脂肪酸誘導体;アミノ酸、オリゴペプチドおよびポリペプチドのグリセリド誘導体;レシチンおよび水素化レシチン;リゾレシチンおよび水素化リゾレシチン;リン脂質およびその誘導体;リゾリン脂質およびその誘導体;カルニチン脂肪酸エステル塩;硫酸アルキルの塩;脂肪酸塩;ドキュセートナトリウム;アシルアクチレート(acylactylate);モノおよびジグリセリドのモノおよびジアセチル化酒石酸エステル;スクシニル化モノおよびジグリセリド;モノおよびジグリセリドのクエン酸エステル;ならびにそれらの混合物が含まれる。
【0311】
前述の群の中で、イオン性界面活性剤には、例えばレシチン、リゾレシチン、リン脂質、リゾリン脂質およびその誘導体;カルニチン脂肪酸エステル塩;硫酸アルキルの塩;脂肪酸塩;ドキュセートナトリウム;アシルアクチレート;モノおよびジグリセリドのモノおよびジアセチル化酒石酸エステル;スクシニル化モノおよびジグリセリド;モノおよびジグリセリドのクエン酸エステル;ならびにそれらの混合物が含まれる。
【0312】
イオン性界面活性剤は、レシチン、リゾレシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジン酸、リゾホスファチジルセリン、PEG−ホスファチジルエタノールアミン、PVP−ホスファチジルエタノールアミン、脂肪酸のラクチル酸(lactylic)エステル、ステアロイル−2−ラクチレート、ステアロイルラクチレート、スクシニル化モノグリセリド、モノ/ジグリセリドのモノ/ジアセチル化酒石酸エステル、モノ/ジグリセリドのクエン酸エステル、コリルサルコシン(cholylsarcosine)、カプロン酸塩、カプリル酸塩、カプリン酸塩、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、オレイン酸塩、リシノール酸塩、リノール酸塩、リノレン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリル硫酸塩、テラセシル(teracecyl)硫酸塩、ドキュセート、ラウロイルカルニチン、パルミトイルカルニチン、ミリストイルカルニチンならびにそれらの塩および混合物のイオン化形態であってよい。
【0313】
親水性非イオン性界面活性剤には、それに限定されるものではないが、アルキルグルコシド;アルキルマルトシド;アルキルチオグルコシド;ラウリルマクロゴールグリセリド;ポリエチレングリコールアルキルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリエチレングリコールアルキルフェノールなどのポリオキシアルキレンアルキルフェノール;ポリエチレングリコール脂肪酸モノエステルおよびポリエチレングリコール脂肪酸ジエステルなどのポリオキシアルキレンアルキルフェノール脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステル;ポリグリセロール脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステルなどのポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオールと、グリセリド、植物油、水素化植物油、脂肪酸およびステロールからなる群の少なくとも1つのメンバーの親水性エステル交換生成物;ポリオキシエチレンステロール、その誘導体および類似体;ポリオキシエチル化ビタミンおよびその誘導体;ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー;およびそれらの混合物;ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステルならびにポリオールと、トリグリセリド、植物油および水素化植物油からなる群の少なくとも1つのメンバーの親水性エステル交換生成物が含まれ得る。ポリオールは、グリセロール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、プロピレングリコール、ペンタエリスリトールまたはサッカライドであってもよい。
【0314】
他の親水性非イオン性界面活性剤には、それに限定されるものではないが、ラウリン酸PEG−10、ラウリン酸PEG−12、ラウリン酸PEG−20、ラウリン酸PEG−32、ジラウリン酸PEG−32、オレイン酸PEG−12、オレイン酸PEG−15、オレイン酸PEG−20、ジオレイン酸PEG−20、オレイン酸PEG−32、オレイン酸PEG−200、オレイン酸PEG−400、ステアリン酸PEG−15、ジステアリン酸PEG−32、ステアリン酸PEG−40、ステアリン酸PEG−100、ジラウリン酸PEG−20、トリオレイン酸PEG−25グリセリル、ジオレイン酸PEG−32、ラウリン酸PEG−20グリセリル、ラウリン酸PEG−30グリセリル、ステアリン酸PEG−20グリセリル、オレイン酸PEG−20グリセリル、オレイン酸PEG−30グリセリル、ラウリン酸PEG−30グリセリル、ラウリン酸PEG−40グリセリル、PEG−40パーム核油、PEG−50水素化ヒマシ油、PEG−40ヒマシ油、PEG−35ヒマシ油、PEG−60ヒマシ油、PEG−40水素化ヒマシ油、PEG−60水素化ヒマシ油、PEG−60トウモロコシ油、カプリン酸/カプリル酸PEG−6グリセリド、カプリン酸/カプリル酸PEG−8グリセリド、ポリグリセリル−10ラウリン酸、PEG−30コレステロール、PEG−25植物ステロール、PEG−30大豆ステロール、トリオレイン酸PEG−20、オレイン酸PEG−40ソルビタン、ラウリル酸PEG−80ソルビタン、ポリソルベート20、ポリソルベート80、POE−9ラウリルエーテル、POE−23ラウリルエーテル、POE−10オレイルエーテル、POE−20オレイルエーテル、POE−20ステアリールエーテル、コハク酸トコフェリルPEG−100、PEG−24コレステロール、オレイン酸ポリグリセリル−10、Tween 40、Tween 60、モノステアリン酸スクロース、モノラウリル酸スクロース、モノパルミチン酸スクロース、PEG10−100ノニルフェノールの一連、PEG15−100オクチルフェノールの一連およびポロキサマーが含まれる。
【0315】
適切な親油性界面活性剤には、ほんの一例として、脂肪アルコール;グリセロール脂肪酸エステル;アセチル化グリセロール脂肪酸エステル;低級アルコール脂肪酸エステル;プロピレングリコール脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル;ステロールおよびステロール誘導体;ポリオキシエチル化ステロールおよびステロール誘導体;ポリエチレングリコールアルキルエーテル;糖エステル;糖エーテル;モノおよびジグリセリドの乳酸誘導体;ポリオールと、グリセリド、植物油、水素化植物油、脂肪酸およびステロールからなる群の少なくとも1つのメンバーの疎水性エステル交換生成物;油溶性ビタミン/ビタミン誘導体;ならびにそれらの混合物が含まれる。この群の中でも、好ましい親油性界面活性剤には、グリセロール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルおよびそれらの混合物が含まれ、またはそれらは、ポリオールと、植物油、水素化植物油およびトリグリセリドからなる群の少なくとも1つのメンバーの疎水性エステル交換生成物である。
【0316】
一実施形態では、組成物は、本発明の化合物の良好な可溶性および/または溶解性を確実にし、本発明の化合物の沈殿を最小限に抑えるための可溶化剤を含むことができる。これは特に、非経口使用のための組成物、例えば注射用組成物にとって重要となり得る。可溶化剤はまた、親水性薬物および/または界面活性剤などの他の成分の可溶性を増大させ、あるいは組成物を安定なまたは均質な溶液剤または分散剤として維持するために添加することができる。
【0317】
適切な可溶化剤の例には、それに限定されるものではないが、以下の、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールおよびそれらの異性体などのアルコールおよびポリオール、グリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、トランスクトール(transcutol)、ジメチルイソソルビド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび他のセルロース誘導体、シクロデキストリンおよびシクロデキストリン誘導体;テトラヒドロフルフリルアルコールPEGエーテル(グリコフロール)またはメトキシPEGなどの約200〜約6000の平均分子量を有するポリエチレングリコールのエーテル;アミドならびに2−ピロリドン、2−ピペリドン、ε−カプロラクタム、N−アルキルピロリドン、N−ヒドロキシアルキルピロリドン、N−アルキルピペリドン、N−アルキルカプロラクタム、ジメチルアセトアミドおよびポリビニルピロリドンなどの他の窒素含有化合物;プロピオン酸エチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリエチル、オレイン酸エチル、カプリル酸エチル、酪酸エチル、トリアセチン、一酢酸プロピレングリコール、二酢酸プロピレングリコール、ε−カプロラクトンおよびその異性体、δ−バレロラクトンおよびその異性体、β−ブチロラクトンおよびその異性体などのエステル;ならびにジメチルアセトアミド、ジメチルイソソルビド、N−メチルピロリドン、モノオクタノイン、ジエチレングリコールモノエチルエーテルおよび水などの当技術分野で公知の他の可溶化剤が含まれる。
【0318】
可溶化剤の混合物を使用することもできる。それらの例には、それに限定されるものではないが、トリアセチン、クエン酸トリエチル、オレイン酸エチル、カプリル酸エチル、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−ヒドロキシエチルピロリドン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、エタノール、ポリエチレングリコール200−100、グリコフロール、トランスクトール、プロピレングリコールおよびジメチルイソソルビドが含まれる。特に好ましい可溶化剤には、ソルビトール、グリセロール、トリアセチン、エチルアルコール、PEG−400、グリコフロールおよびプロピレングリコールが含まれる。
【0319】
含まれ得る可溶化剤の量は、特に制限されない。所与の可溶化剤の量は、生物学的に許容される量に制限することができ、これは当業者によって容易に決定され得る。幾つかの場合、はるかに過剰の生物学的に許容される量の可溶化剤を入れて、例えば薬物濃度を最大限にし、患者に組成物を提供する前に、蒸留または蒸発などの従来の技術を使用して過剰の可溶化剤を除去することが有利になり得る。したがって存在する場合には、可溶化剤は、薬物および他の賦形剤の組合せの重量に対して、10重量%、25重量%、50重量%、100重量%、または最大約200重量%の重量比であってよい。所望に応じて、5%、2%、1%またはさらに少量などの非常に少量の可溶化剤を使用することもできる。一般に、可溶化剤は、約1%〜約100%の量で、より一般的には約5重量%〜約25重量%で存在することができる。
【0320】
組成物はさらに、1つまたは複数の薬学的に許容される添加剤および賦形剤を含むことができる。かかる添加剤および賦形剤には、それに限定されるものではないが、脱粘着剤(detackifier)、消泡剤、緩衝剤、ポリマー、抗酸化剤、保存剤、キレート剤、粘度調節剤、等張化剤(tonicifier)、香味剤、着色剤、着臭剤、乳白剤、懸濁化剤、結合剤、充填剤、可塑剤、滑沢剤およびそれらの混合物が含まれる。
【0321】
さらに、処理を容易にし、安定性を増大させ、または他の目的のために、酸または塩基を組成物に組み込むことができる。薬学的に許容される塩基の例には、アミノ酸、アミノ酸エステル、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロカルサイト(hydrocalcite)、水酸化マグネシウムアルミニウム、ジイソプロピルエチルアミン、エタノールアミン、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、トリイソプロパノールアミン、トリメチルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)等が含まれる。また、酢酸、アクリル酸、アジピン酸、アルギン酸、アルカンスルホン酸、アミノ酸、アスコルビン酸、安息香酸、ホウ酸、酪酸、炭酸、クエン酸、脂肪酸、ギ酸、フマル酸、グルコン酸、ヒドロキノスルホン(hydroquinosulfonic)酸、イソアスコルビン酸、乳酸、マレイン酸、シュウ酸、パラ−ブロモフェニルスルホン酸、プロピオン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、タンニン酸、酒石酸、チオグリコール酸、トルエンスルホン酸、尿酸などの薬学的に許容される酸の塩である塩基が適している。リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムおよびリン酸二水素ナトリウムなどの多塩基酸の塩を使用することもできる。塩基が塩である場合、カチオンは、アンモニウム、アルカリ金属、アルカリ土類金属などの任意の好都合な薬学的に許容されるカチオンであってよい。その例には、それに限定されるものではないが、ナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウムおよびアンモニウムが含まれ得る。
【0322】
適切な酸は、薬学的に許容される有機または無機酸である。適切な無機酸の例には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、リン酸等が含まれる。適切な有機酸の例には、酢酸、アクリル酸、アジピン酸、アルギン酸、アルカンスルホン酸、アミノ酸、アスコルビン酸、安息香酸、ホウ酸、酪酸、炭酸、クエン酸、脂肪酸、ギ酸、フマル酸、グルコン酸、ヒドロキノスルホン酸、イソアスコルビン酸、乳酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、パラ−ブロモフェニルスルホン酸、プロピオン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、タンニン酸、酒石酸、チオグリコール酸、トルエンスルホン酸、尿酸等が含まれる。
【0323】
注射のための医薬組成物
幾つかの実施形態では、本発明は、本発明の化合物および注射に適した医薬賦形剤を含有する、注射のための医薬組成物を提供する。組成物中の成分および薬剤の量は、本明細書に記載の通りである。
【0324】
本発明の新規な組成物が、注射による投与に組み込まれ得る形態は、水性またはゴマ油、トウモロコシ油、綿実油もしくはピーナッツ油を伴う油性懸濁剤または乳剤、ならびにエリキシル剤、マンニトール、デキストロース、または滅菌水溶液および類似の医薬ビヒクルを含む。
【0325】
食塩水中水溶液も、従来注射に使用されている。エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等(および適切なそれらの混合物)、シクロデキストリン誘導体および植物油を使用することもできる。適切な流動性は、例えば、分散剤の場合には必要な粒径を維持するために、レシチンなどのコーティングを使用することによって、また界面活性剤を使用することによって維持することができる。微生物作用の予防は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等によってもたらすことができる。
【0326】
滅菌注射溶液は、必要な量の本発明の化合物を、先に列挙した様々な他の成分と共に適切な溶媒に組み込み、必要に応じてその後滅菌濾過することによって調製される。一般に、分散剤は、様々な滅菌活性成分を、塩基性分散媒および先に列挙したものから必要な他の成分を含有する滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。注射可能な滅菌溶液剤の調製のための滅菌散剤の場合、幾つかの望ましい調製方法が真空乾燥および冷凍乾燥技術であり、これは活性成分と、予め滅菌濾過したその溶液からの任意の追加の所望の成分の粉末を生成するものである。
【0327】
局所(例えば経皮)送達のための医薬組成物
幾つかの実施形態では、本発明は、本発明の化合物および経皮送達に適した医薬賦形剤を含有する、経皮送達のための医薬組成物を提供する。
【0328】
本発明の組成物は、ゲル剤、水溶性ゼリー剤、クリーム剤、ローション剤、懸濁剤、発泡剤、散剤、スラリー剤、軟膏、溶液剤、油剤、ペースト剤、坐剤、スプレー剤、乳剤、生理食塩水、ジメチルスルホキシド(DMSO)系溶液剤などの、局所(local)または局所(topical)投与に適した固体、半固体または液体形態としての調製物に製剤化することができる。一般に、高密度の担体によって、領域に活性成分を長期曝露することができる。その一方、溶液製剤は、選択領域に対して活性成分をより即時的に曝露することができる。
【0329】
医薬組成物はまた、皮膚の角質層透過性障壁を通る治療分子の浸透を増大させ、またはその送達の一助となる化合物である、適切な固体またはゲル相担体または賦形剤を含むことができる。局所製剤分野の業者に公知のこれらの浸透促進分子の多くが存在する。かかる担体および賦形剤の例には、それに限定されるものではないが、湿潤剤(例えば尿素)、グリコール(例えばプロピレングリコール)、アルコール(例えばエタノール)、脂肪酸(例えばオレイン酸)、界面活性剤(例えば、ミリスチン酸イソプロピルおよびラウリル硫酸ナトリウム)、ピロリドン、モノラウリン酸グリセロール、スルホキシド、テルペン(例えばメンソール)、アミン、アミド、アルカン、アルカノール、水、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖類、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチンおよびポリエチレングリコールなどのポリマーが含まれる。
【0330】
本発明の方法において使用するための別の例示的製剤は、経皮送達デバイス(「パッチ」)を使用する。かかる経皮パッチは、制御量の本発明の化合物を、別の薬剤を伴って、または伴わずに連続的または非連続的に注入するために使用することができる。
【0331】
医薬品の送達のための経皮パッチの構造および使用は、当技術分野で周知である。例えば、米国特許第5,023,252号、第4,992,445号および第5,001,139号参照。かかるパッチは、医薬品の連続的、拍動的送達または要求に応じた送達に合わせて構成することができる。
【0332】
吸入のための医薬組成物
吸入または吹送のための組成物には、薬学的に許容される水性もしくは有機溶媒またはそれらの混合物中の溶液剤および懸濁剤、ならびに散剤が含まれる。液体または固体組成物は、前述の適切な薬学的に許容される賦形剤を含有することができる。好ましくは、組成物は、局所性または全身性作用のために、経口または鼻による呼吸経路によって投与される。好ましくは薬学的に許容される溶媒中の組成物は、不活性なガスを使用することによってネブライザ投与することができる。ネブライザ投与される溶液剤は、ネブライザデバイスまたはフェイスマスクテントに取り付けることができるネブライザデバイス、または間欠的陽圧呼吸機から直接吸入することができる。溶液剤、懸濁剤または散剤組成物は、適切なやり方で製剤を送達するデバイスから、好ましくは経口または経鼻投与することができる。
【0333】
他の医薬組成物
医薬組成物はまた、本明細書に記載の組成物および舌下、経頬、直腸、骨内、眼内、鼻腔内、硬膜外または髄腔内投与に適した1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤から調製することができる。かかる医薬組成物の調製は、当技術分野で周知である。例えば、それらの全体が参照によって全て本明細書に組み込まれる、Anderson、Philip O.;Knoben、James E.;Troutman、William G、編集、Handbook of Clinical Drug Data、Tenth Edition、McGraw−Hill、2002年;PrattおよびTaylor、編集、Principles of Drug Action、Third Edition、Churchill Livingston、New York、1990年;Katzung、編集、Basic and Clinical Pharmacology、Ninth Edition、McGraw Hill、20037ybg;GoodmanおよびGilman、編集、The Pharmacological Basis of Therapeutics、Tenth Edition、McGraw Hill、2001年;Remingtons Pharmaceutical Sciences、20th Ed.、Lippincott Williams & Wilkins.、2000年;Martindale、The Extra Pharmacopoeia、Thirty−Second Edition(The Pharmaceutical Press、London、1999年)参照。
【0334】
本発明の化合物または医薬組成物の投与は、化合物を作用部位に送達できる任意の方法によって行うことができる。これらの方法には、経口経路、十二指腸内経路、非経口注射(静脈内、動脈内、皮下、筋肉内、血管内、腹腔内または注入を含む)、局所(例えば経皮適用)、直腸投与、カテーテルもしくはステントによる局所送達による、または吸入によるものが含まれる。化合物は、脂肪内または髄腔内投与することもできる。
【0335】
投与される化合物の量は、治療を受ける哺乳動物、障害または状態の重症度、投与率、化合物の性質および処方医師の裁量に依存して決まることになる。しかし有効量は、単回用量または分割用量で、1日につき体重1kg当たり約0.001〜約100mg、好ましくは約1〜約35mg/kg/日の範囲である。70kgのヒトについては、この量は約0.05〜7g/日、好ましくは約0.05〜約2.5g/日の量になろう。幾つかの場合、前述の範囲の下限未満の投与レベルで十分なことがあり、他の場合には、例えば1日を通して投与するために多用量を幾つかの少用量に分割することによって、任意の有害な副作用を生じることなく、かかるさらなる多用量を使用することもできる。
【0336】
幾つかの実施形態では、本発明の化合物は、単回用量で投与される。一般に、かかる投与は、薬剤を急速に導入するために注射によって、例えば静脈内注射によって行われることになる。しかし、必要に応じて他の経路を使用することができる。本発明の化合物の単回用量は、急性状態の治療のために使用することもできる。
【0337】
幾つかの実施形態では、本発明の化合物は、複数回用量で投与される。投与は、1日当たりおよそ1回、2回、3回、4回、5回、6回または7回以上行うことができる。投与は、およそ1カ月1回、隔週に1回、週1回、または1日おきに1回行うことができる。別の実施形態では、本発明の化合物および他の薬剤は、1日当たりおよそ1回〜1日当たりおよそ6回、一緒に投与される。別の実施委形態では、本発明の化合物および薬剤の投与は、約7日未満継続する。さらに別の実施形態では、投与は、およそ6日、10日、14日、28日、2カ月、6カ月、または1年を超えて継続する。幾つかの場合、連続投与は、必要な限り実現し維持される。
【0338】
本発明の薬剤の投与は、必要な限り継続することができる。幾つかの実施形態では、本発明の薬剤は、1、2、3、4、5、6、7、14または28日を超えて投与される。幾つかの実施形態では、本発明の薬剤は、28、14、7、6、5、4、3、2または1日未満投与される。幾つかの実施形態では、本発明の薬剤は、例えば慢性作用の治療のために、継続的に慢性的に投与される。
【0339】
有効量の本発明の化合物は、単回または複数回用量で、直腸、経頬、鼻腔内および経皮経路を含む、類似の利用性を有する薬剤の許容される投与方法のいずれかによって、動脈内注射によって、静脈内、腹腔内、非経口、筋肉内、皮下、経口、局所的に、または吸入剤として投与することができる。
【0340】
本発明の組成物はまた、例えばステントなどの含浸またはコーティング済みデバイス、または動脈挿入型円筒ポリマーによって送達することができる。かかる投与方法は、例えばバルーン血管形成術などの術後の再狭窄の予防または緩和の一助になり得る。理論に拘泥するものではないが、本発明の化合物は、再狭窄に寄与する動脈壁内の平滑筋細胞の遊走および増殖を遅延または阻害することができる。本発明の化合物は、例えばステントの支柱(strut)から、ステントグラフトから、グラフトから、またはステントのカバーもしくは外筒からの局所送達によって投与することができる。幾つかの実施形態では、本発明の化合物は、マトリックスと混合される。かかるマトリックスは、ポリマーマトリックスであってよく、これは化合物をステントに結合する働きをし得る。かかる使用に適したポリマーマトリックスには、例えば、ポリラクチド、ポリカプロラクトングリコリド、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリアミノ酸、多糖、ポリホスファゼン、ポリ(エーテル−エステル)コポリマー(例えばPEO−PLLA)などのラクトン系ポリエステルまたはコポリエステル;ポリジメチルシロキサン、ポリ(エチレン−酢酸ビニル)、アクリレート系ポリマーまたはコポリマー(例えばポリヒドロキシエチルメチルメタクリレート、ポリビニルピロリドン)、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素化ポリマーおよびセルロースエステルが含まれる。適切なマトリックスは、非分解性であってよく、または経時的に分解して、1つまたは複数の化合物を放出することができる。本発明の化合物は、浸漬/スピンコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、および/またははけ塗りなどの様々な方法によって、ステントの表面に塗布することができる。化合物を溶媒に加えることができ、その溶媒を蒸発させることによって、化合物の層をステント上に形成することができる。あるいは、化合物を、ステントまたはグラフト本体内に、例えばマイクロチャネルまたは細孔内に置くこともできる。埋め込まれる場合、化合物は、ステント本体から拡散して動脈壁に接触する。かかるステントは、かかる細孔またはマイクロチャネルを含有するように製造されたステントを、適切な溶媒中、本発明の化合物の溶液に浸漬し、その後溶媒を蒸発することによって調製できる。ステント表面上の過剰薬物は、追加の簡単な溶媒洗浄によって除去することができる。さらに他の実施形態では、本発明の化合物は、ステントまたはグラフトに共有結合することができる。インビボで分解し、本発明の化合物を放出する共有結合のリンカーを使用することができる。かかる目的のために、エステル、アミドまたは無水結合などの生体内で不安定な任意の結合を使用することができる。本発明の化合物はさらに、血管形成術中に使用するバルーンから経脈管的に投与することができる。本発明の製剤の心膜または外膜(advential)適用を介する化合物の血管外投与も、再狭窄を低減するために実施することができる。
【0341】
記載の通りに使用できる様々なステントデバイスは、例えば、その全てが参照によって本明細書に組み込まれる以下の参考文献、米国特許第5451233号、米国特許第5040548号、米国特許第5061273号、米国特許第5496346号、米国特許第5292331号、米国特許第5674278号、米国特許第3657744号、米国特許第4739762号、米国特許第5195984号、米国特許第5292331号、米国特許第5674278号、米国特許第5879382号、米国特許第6344053号に開示されている。
【0342】
本発明の化合物は、複数投与量で投与することができる。化合物の薬物動態の被験者間変動により、最適治療のためには投与レジメンの個別化が必要であることが、当技術分野では公知である。本発明の化合物の投与は、本開示に照らして通例の実験によって見ることができる。
【0343】
本発明の化合物が、1つまたは複数の薬剤を含む組成物として投与され、その薬剤が、本発明の化合物よりも短い半減期を有する場合、該薬物および本発明の化合物の単位剤形は、それに応じて調節することができる。
【0344】
対象医薬組成物は、例えば、錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、徐放製剤、溶液剤、懸濁剤として経口投与に適した、滅菌溶液剤、懸濁剤または乳剤として非経口注射に適した、軟膏剤またはクリーム剤として局所投与に適した、あるいは坐剤として直腸投与に適した形態であってよい。医薬組成物は、正確な用量を単回投与するのに適した単位剤形であってよい。医薬組成物は、従来の医薬担体または賦形剤および活性成分としての本発明の化合物を含むことになる。さらに医薬組成物は、他の医薬または医薬品、担体、アジュバント等を含むことができる。
【0345】
例示的非経口投与形態には、滅菌水溶液、例えばプロピレングリコール水溶液またはデキストロース溶液中の活性化合物の溶液剤または懸濁剤が含まれる。かかる剤形は、所望に応じて、適切に緩衝することができる。
【0346】
本発明の化合物の活性は、以下の手順ならびに以下の実施例に記載の手順によって決定することができる。キナーゼの活性は、γ−33P−ATPからのγ−33P−リン酸を、N−末端His標識化基質上に組み込み、E.coliにおいて発現させ、定法によってキナーゼの存在下で精製し、それを測定することによって評価する。アッセイは、96ウェルのポリプロピレンプレート内で実施する。インキュベーション混合物(100μL)は、25mMのHepes、pH7.4、10mMのMgCl、5mMのβ−グリセロールリン酸、100μMのNa−オルトバナジン酸塩、5mMのDTT、5nMキナーゼおよび1μMの基質から構成される。阻害剤をDMSOに懸濁し、対照を含む全ての反応を、1%DMSOの最終濃度で実施する。10μMのATP(0.5μCiγ−33P−ATP/ウェルと共に)を添加することによって反応を開始し、周囲温度で45分間インキュベートする。等体積の25%TCAを添加して反応を停止させ、タンパク質を沈殿させる。沈殿したタンパク質を、ガラス繊維Bフィルタープレート上に捕捉し、Tomtec MACH III harvestorを使用して、過剰の標識化ATPを洗い流す。プレートを空気乾燥させた後、30μL/ウェルのPackard Microscint 20を添加し、Packard TopCountを使用してプレートを計数する。
【0347】
本発明は、キットも提供する。キットは、適切なパッケージに入れた本明細書に記載の本発明の1つまたは複数の化合物、および使用のための指示、臨床研究の詳解、副作用の一覧等を含み得る資料を含む。かかるキットは、組成物の活性および/または利点を示し、または定め、ならびに/あるいは用量、投与、副作用、薬物相互作用または医療専門家にとって有用な他の情報を記載した、科学的参考文献、パッケージ装入物、臨床試験の結果および/またはこれらの概要などの情報を含むこともできる。かかる情報は、様々な研究、例えばインビボモデルを含む実験動物を使用する研究およびヒト臨床試験に基付く研究の結果に基付くことができる。キットはさらに、別の薬剤を含有することができる。幾つかの実施形態では、本発明の化合物および薬剤は、キット内の別個の容器に入れた別個の組成物として提供される。幾つかの実施形態では、本発明の化合物および薬剤は、キット内の1つの容器に入れた単一組成物として提供される。適切なパッケージおよび使用のための追加品(例えば、液体調製物のための測定カップ、空気への曝露を最小限に抑えるためのホイルラッピング等)は、当技術分野で公知であり、キットに入れることができる。本明細書に記載のキットは、医師、看護師、薬剤師、薬局等を含む医療専門家に提供、市販および/または販促することができる。キットは、幾つかの実施形態では消費者に直接販売することもできる。
【0348】
方法
本発明はまた、それに限定されるものではないが、1種または複数種のPI3キナーゼの機能低下に関連する疾患を含む病状を治療するために、本発明の化合物または医薬組成物を使用する方法を提供する。p110δキナーゼ活性によって媒介される状態および障害の詳説は、その全体があらゆる目的で参照によって本明細書に組み込まれるSaduら、WO01/81346に提示されている。
【0349】
本明細書で提供される治療方法は、対象に、治療有効量の本発明の化合物を投与するステップを含む。一実施形態では、本発明は、哺乳動物における自己免疫疾患を含む炎症性障害の治療方法を提供する。該方法は、前記哺乳動物に、治療有効量の本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩、エステル、プロドラッグ、溶媒和物、水和物もしくは誘導体を投与するステップを含む。自己免疫疾患の例には、それに限定されるものではないが、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、アジソン病、抗リン脂質抗体症候群(APS)、再生不良性貧血、自己免疫性肝炎、セリアック病、クローン病、糖尿病(1型)、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギラン−バレー症候群(GBS)、橋本病、紅斑性狼瘡、多発性硬化症、重症筋無力症、オプソクローヌスミオクローヌス症候群(OMS)、視神経炎、Ord甲状腺炎、天疱瘡(oemphigus)、多発性関節炎、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、関節リウマチ、ライター症候群、高安動脈炎、一時的動脈炎(「巨細胞性動脈炎」としても公知)、温式自己免疫性溶血性貧血、ウェゲナー肉芽腫症、全身性脱毛症、シャーガス病、慢性疲労症候群、自律神経障害、子宮内膜症、汗腺膿瘍、間質性膀胱炎、神経性筋強直症、サルコイドーシス、強皮症、潰瘍性大腸炎、白斑および外陰部痛が含まれる。他の障害には、骨吸収障害および血栓症(thromobsis)が含まれる。
【0350】
幾つかの実施形態では、炎症性または自己免疫疾患の治療方法は、対象(例えば哺乳動物)に、全ての他のタイプIのPI3キナーゼと比較してPI3K−δおよび/またはPI3K−γを選択的に阻害する、治療有効量の本発明の化合物の1つまたは複数を投与するステップを含む。PI3K−δおよび/またはPI3K−γのかかる選択的な阻害は、本明細書に記載の疾患または状態のいずれかの治療に有利になり得る。例えば、PI3K−δの選択的阻害は、炎症性疾患、自己免疫疾患、あるいはそれに限定されるものではないが、喘息、肺気腫、アレルギー、皮膚炎、関節リウマチ、乾癬、紅斑性狼瘡または移植片対宿主病を含む望ましくない免疫反応に関係する疾患に関連する炎症性反応を阻害することができる。PI3K−δの選択的阻害は、さらに、細菌、ウイルスおよび/または真菌感染を低減する能力を同時に(concomittant)低減することなく、炎症性または望ましくない免疫反応の低減をもたらすことができる。PI3K−δおよびPI3K−γ両方の選択的阻害は、PI3K−δまたはPI3K−γのみを選択的に阻害する阻害剤によってもたらされるよりも高い度合いで対象の炎症性反応を阻害するのに有利となり得る。一態様では、対象方法の1つまたは複数は、インビボでの抗原特異的な抗体産生を、約2倍、3倍、4倍、5倍、7.5倍、10倍、25倍、50倍、100倍、250倍、500倍、750倍または約1000倍以上低減するのに有効である。一態様では、対象方法の1つまたは複数は、インビボでの抗原特異的なIgG3および/またはIgGM産生を、約2倍、3倍、4倍、5倍、7.5倍、10倍、25倍、50倍、100倍、250倍、500倍、750倍または約1000倍以上低減するのに有効である。
【0351】
一態様では、対象方法の1つまたは複数は、それに限定されるものではないが、関節の腫脹の低減、血清抗コラーゲンレベルの低減ならびに/あるいは骨吸収、軟骨損傷、パンヌスおよび/または炎症などの関節の病態の低減を含む関節リウマチに関連する症候を緩和するのに有効である。別の態様では、対象方法は、足首の炎症を少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、50%、60%または約75%〜90%低減するのに有効である。別の態様では、対象方法は、膝の炎症を少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、50%、60%または約75%〜90%以上低減するのに有効である。さらに別の態様では、対象方法は、血清抗タイプIIコラーゲンレベルを少なくとも約10%、12%、15%、20%、24%、25%、30%、35%、50%、60%、約75%、80%、86%、87%または約90%以上低減するのに有効である。別の態様では、対象方法は、足首の組織病理スコアを約5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、75%、80%、90%以上低減するのに有効である。さらに別の態様では、対象方法は、膝の組織病理スコアを約5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、75%、80%、90%以上低減するのに有効である。
【0352】
他の実施形態では、本発明は、それに限定されるものではないが、肺葉、胸膜腔、気管支、気管、上気道または呼吸のための神経および筋肉に影響を及ぼす疾患を含む呼吸器疾患を治療するために、化合物または医薬組成物を使用する方法を提供する。例えば、それらの方法は、閉塞性肺疾患を治療するために提供される。慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、気道閉塞または気流制限を特徴とする気道疾患の群の包括的用語である。この包括的用語に含まれる状態は、慢性気管支炎、肺気腫および気管支拡張症である。
【0353】
別の実施形態では、本明細書に記載の化合物は、喘息の治療に使用される。また、本明細書に記載の化合物または医薬組成物は、内毒血症および敗血症の治療に使用することができる。一実施形態では、本明細書に記載の化合物または医薬組成物は、関節リウマチ(RA)の治療に使用される。さらに別の実施形態では、本明細書に記載の化合物または医薬組成物は、接触性またはアトピー性皮膚炎の治療に使用される。接触性皮膚炎には、刺激性皮膚炎、光毒性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、光アレルギー性皮膚炎、接触じん麻疹、全身性接触性皮膚炎等が含まれる。刺激性皮膚炎は、特定物質に敏感になっている皮膚の上に、かなり多量の物質が使用される場合に生じ得る。時に湿疹と呼ばれるアトピー性皮膚炎は、皮膚炎の一種であるアトピー性皮膚疾患である。
【0354】
本発明はまた、哺乳動物に、治療有効量の本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩、エステル、プロドラッグ、溶媒和物、水和物もしくは誘導体を投与するステップを含む、前記哺乳動物の過剰増殖性障害を治療する方法に関する。幾つかの実施形態では、前記方法は、急性骨髄性白血病、胸腺、脳、肺、扁平上皮細胞、皮膚、目、網膜芽細胞、眼球内黒色腫、口腔および口腔咽頭、膀胱、胃、胃、膵臓、膀胱、乳房、頸部、頭部、首、腎臓、腎臓、肝臓、卵巣、前立腺、結腸直腸、食道、精巣、婦人科、甲状腺、CNS、PNS、AIDS関連(例えば、リンパ腫およびカポジ肉腫)またはウイルス誘発性癌などの癌の治療に関する。幾つかの実施形態では、前記方法は、皮膚(例えば乾癬)、再狭窄または前立腺の良性過形成(例えば前立腺肥大症(BPH))などの非癌性過剰増殖性障害の治療に関する。
【0355】
本発明はまた、哺乳動物に、治療有効量の本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩、エステル、プロドラッグ、溶媒和物、水和物もしくは誘導体を投与するステップを含む、前記哺乳動物の脈管形成または血管形成に関する疾患を治療する方法に関する。幾つかの実施形態では、前記方法は、腫瘍血管形成、関節リウマチなどの慢性炎症性疾患、アテローム性動脈硬化症、炎症性腸疾患、乾癬、湿疹および強皮症などの皮膚疾患、糖尿病、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、加齢黄斑変性症、血管腫、神経膠腫、黒色腫、カポジ肉腫ならびに卵巣、乳房、肺、膵臓、前立腺、結腸および類表皮癌からなる群から選択される疾患の治療のための方法である。
【0356】
本発明の方法に従って、本発明の化合物または前記化合物の薬学的に許容される塩、エステル、プロドラッグ、溶媒和物、水和物もしくは誘導体を用いて治療できる患者には、例えば、乾癬;再狭窄;アテローム性動脈硬化症;BPH;乳腺の管組織の腺管癌、髄様癌、膠様癌、管状癌および炎症性乳房癌などの乳房癌;卵巣の腺癌および卵巣から腹腔に転位した腺癌などの上皮卵巣腫瘍を含む卵巣癌;子宮癌;扁平上皮細胞癌および腺癌を含む頸部上皮における線癌などの頸部癌;以下の腺癌または骨に転移した腺癌(adenocarinoma)から選択される前立腺癌などの前立腺癌;膵臓管組織の類上皮(epitheliod)癌および膵臓管の腺癌などの膵臓癌;膀胱の移行上皮癌、尿路上皮癌(移行上皮癌)、膀胱の内側を覆う尿路上皮細胞の腫瘍、扁平上皮細胞癌、腺癌および小細胞癌などの膀胱癌;急性骨髄性白血病(myeloid leukemia)(AML)、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、有毛細胞白血病、脊髄形成異常症、骨髄増殖性疾患、急性骨髄性白血病(myelogenous leukemia)(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、肥満細胞症、慢性リンパ性白血病(CLL)、多発性骨髄腫(MM)および骨髄異形成症候群(MDS)などの白血病;骨癌;扁平上皮細胞癌、腺癌および未分化大細胞癌に分割される非小細胞肺癌(NSCLC)ならびに小細胞肺癌などの肺癌;基底細胞癌、黒色腫、扁平上皮細胞癌および時に扁平上皮細胞癌に進展する皮膚状態である日光角化症などの皮膚癌;目網膜芽細胞;皮膚または眼内(目)黒色腫;原発性肝癌癌(肝臓から始まる癌);腎臓癌;乳頭、濾胞、髄質および未分化などの甲状腺癌;びまん性大型B細胞リンパ腫、B細胞免疫芽細胞リンパ腫および小切れ込み核細胞型リンパ腫などのAIDS関連リンパ腫;カポジ肉腫;肝炎Bウイルス(HBV)、肝炎Cウイルス(HCV)および幹細胞癌を含むウイルス誘発性癌;ヒト白血球ウイルス−タイプ1(HTLV−1)および成人T細胞白血病/リンパ腫;ならびにヒトパピローマウイルス(HPV)および頸部癌;神経膠腫(星状細胞腫、未分化星状細胞腫または多形神経膠芽腫)、乏突起神経膠腫、上衣腫、髄膜腫、リンパ腫、シュワン腫および髄芽腫を含む、原発性脳腫瘍などの中枢神経系癌(CNS);聴神経腫瘍ならびに神経線維腫およびシュワン腫を含む悪性末梢神経鞘腫(MPNST)、悪性線維性組織球腫(fibrous cytoma)、悪性線維性組織球腫(fibrous histiocytoma)、悪性髄膜腫、悪性中皮腫ならびに悪性ミューラー管混合腫瘍などの末梢神経系(PNS)癌;下咽頭癌、喉頭癌、上咽頭癌および口腔咽頭癌などの口腔および口腔咽頭癌;リンパ腫、胃の間質腫瘍およびカルチノイド腫瘍などの胃癌;精上皮腫および非セミノーマを含む胚細胞性腫瘍(GCT)ならびにライディッヒ細胞腫およびセルトリ細胞腫を含む性腺間質腫瘍などの精巣癌;胸腺腫、胸腺癌、ホジキン疾患、非ホジキンリンパ腫カルチノイドまたはカルチノイド腫瘍などの胸腺癌;直腸癌;ならびに結腸癌を有すると診断された患者が含まれる。
【0357】
本発明はまた、哺乳動物に、治療有効量の本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩、エステル、プロドラッグ、溶媒和物、水和物もしくは誘導体を投与するステップを含む、哺乳動物における糖尿病を治療する方法に関する。
【0358】
さらに、本明細書に記載の化合物は、座瘡を治療するために使用することができる。
【0359】
さらに、本明細書に記載の化合物は、アテローム性動脈硬化症を含む動脈硬化症の治療に使用することができる。動脈硬化症は、中動脈または大動脈の任意の硬化を説明する一般用語である。アテローム性動脈硬化症は、特に粥状斑による動脈の硬化である。
【0360】
さらに、本明細書に記載の化合物は、糸球体腎炎の治療に使用することができる。糸球体腎炎は、糸球体の炎症を特徴とする、原発性または続発性自己免疫腎臓疾患である。これは無症候性のことがあり、あるいは血尿および/またはタンパク尿を発症することがある。多くの認識されている種類があり、急性、亜急性または慢性糸球体腎炎に分割される。その原因は、感染性(細菌、ウイルスまたは寄生性病原体)、自己免疫性または腫瘍随伴性である。
【0361】
さらに、本明細書に記載の化合物は、滑液包炎、狼瘡、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、アジソン病、抗リン脂質抗体症候群(APS)、再生不良性貧血、自己免疫性肝炎、セリアック病、クローン病、糖尿病(1型)、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギラン−バレー症候群(GBS)、橋本病、炎症性腸疾患、紅斑性狼瘡、重症筋無力症、オプソクローヌスミオクローヌス症候群(OMS)、視神経炎、ord甲状腺炎、変形性関節症(ostheoarthritis)、網膜ブドウ膜炎、天疱瘡、多発性関節炎、原発性胆汁性肝硬変、ライター症候群、高安動脈炎、一時的動脈炎、温式自己免疫性溶血性貧血、ウェゲナー肉芽腫症、全身性脱毛症、シャーガス病、慢性疲労症候群、自律神経障害、子宮内膜症、汗腺膿瘍、間質性膀胱炎、神経性筋強直症、サルコイドーシス、強皮症、潰瘍性大腸炎、白斑、外陰部痛、虫垂炎、動脈炎、関節炎、眼瞼炎、細気管支炎、気管支炎、子宮頚管炎、胆管炎、胆嚢炎、絨毛羊膜炎、大腸炎、結膜炎、膀胱炎、涙腺炎、皮膚筋炎、心内膜炎、子宮内膜炎、腸炎、全腸炎、上顆炎、精巣上体炎、筋膜炎、結合織炎、胃炎、胃腸炎、歯肉炎、肝炎、汗腺炎、回腸炎、虹彩炎、喉頭炎、乳腺炎、髄膜炎、脊髄炎、心筋炎、筋炎、腎炎、臍炎、卵巣炎、精巣炎、骨炎、耳炎、膵炎、耳下腺炎、心膜炎、腹膜炎、咽頭炎、胸膜炎、静脈炎、間質性肺炎、直腸炎、前立腺炎、腎盂腎炎、鼻炎、卵管炎、副鼻腔炎、口内炎、滑膜炎、腱炎、扁桃炎、ブドウ膜炎、腟炎、血管炎または外陰炎の治療に使用することができる。
【0362】
本発明はまた、哺乳動物に、治療有効量の本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩、エステル、プロドラッグ、溶媒和物、水和物もしくは誘導体を投与するステップを含む、前記哺乳動物の心血管疾患を治療する方法に関する。心血管状態の例には、それに限定されるものではないが、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、血管閉塞および頸動脈閉塞性疾患が含まれる。
【0363】
別の態様では、本発明は、白血球の機能を破壊するまたは破骨細胞の機能を破壊する方法を提供する。該方法は、白血球または破骨細胞を、機能破壊量の本発明の化合物と接触させるステップを含む。
【0364】
本発明の別の態様では、方法は、対象の目に対象化合物または医薬組成物の1つまたは複数を投与するステップを含む、眼疾患の治療を提供する。
【0365】
方法はさらに、点眼剤、眼内注射、硝子体内注射により局所的な、または薬物溶出デバイス、マイクロカプセル、埋込体もしくはマイクロ流体デバイスの使用による、本発明の化合物の投与を提供する。幾つかの場合、本発明の化合物は、界面膜によって取り囲まれた油性コアを有するコロイド粒子を伴う油および水性乳剤などの、化合物の眼球内浸透度を増大させる担体または賦形剤と共に投与される。
【0366】
幾つかの場合、コロイド粒子は、ポロキサマー、チロキサポール、ポリソルベート、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ソルビタンエステルまたはステアリン酸ポリオキシルなどの少なくとも1つのカチオン性薬剤および少なくとも1つの非イオン性界面活性剤を含む。幾つかの場合、カチオン性薬剤は、アルキルアミン、第3級アルキルアミン、第4級アンモニウム化合物、カチオン性脂質、アミノアルコール、ビグアニジン塩、カチオン性化合物またはそれらの混合物である。幾つかの場合、カチオン性薬剤は、クロルヘキシジン、ポリアミノプロピルビグアニジン、フェンホルミン、アルキルビグアニジンまたはそれらの混合物などのビグアニジン塩である。幾つかの場合、第4級アンモニウム化合物は、ベンザルコニウムハロゲン化物、ラウラコニウムハロゲン化物、セトリミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムハロゲン化物、テトラデシルトリメチルアンモニウムハロゲン化物、ドデシルトリメチルアンモニウムハロゲン化物、セトリモニウムハロゲン化物、ベンゼトニウムハロゲン化物、ベヘンアルコニウム(behenalkonium)ハロゲン化物、セタルコニウムハロゲン化物、セテチルジモニウム(cetethyldimonium)ハロゲン化物、セチルピリジニウムハロゲン化物、ベンゾドデシニウムハロゲン化物、クロラリルメテンアミン(chlorallyl methenamine)ハロゲン化物、ミリスチルアルコニウム(rnyristylalkonium)ハロゲン化物、ステアラルコニウムハロゲン化物またはそれらの2つ以上の混合物である。幾つかの場合、カチオン性薬剤は、ベンザルコニウムクロリド、ラウラコニウムクロリド、ベンゾドデシニウムブロミド、ベンゼテニウム(benzethenium)クロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミドまたはそれらの2つ以上の混合物である。幾つかの場合、油相は、鉱油および軽油、中鎖トリグリセリド(MCT)、ヤシ油;水素化綿実油、水素化パーム油、水素化ヒマシ油または水素化大豆油を含む水素化油;ポルオキシル(poluoxyl)−40水素化ヒマシ油、ポリオキシル−60水素化ヒマシ油またはポリオキシル−100水素化ヒマシ油を含むポリオキシエチレン水素化ヒマシ油誘導体である。
【0367】
本発明はさらに、キナーゼを、該キナーゼの活性を調節するのに十分な量の本発明の化合物と接触させることによってキナーゼ活性を調節する方法を提供する。調節は、キナーゼ活性を阻害または活性化することであってよい。幾つかの実施形態では、本発明は、キナーゼを、該キナーゼの活性を阻害するのに十分な量の本発明の化合物と接触させることによってキナーゼ活性を阻害する方法を提供する。幾つかの実施形態では、本発明は、溶液を、前記溶液中のキナーゼの活性を阻害するのに十分な量の本発明の化合物と接触させることによって、溶液中のキナーゼ活性を阻害する方法を提供する。幾つかの実施形態では、本発明は、細胞を、前記細胞内のキナーゼの活性を阻害するのに十分な量の本発明の化合物と接触させることによって、細胞内のキナーゼ活性を阻害する方法を提供する。幾つかの実施形態では、本発明は、組織を、前記組織内のキナーゼの活性を阻害するのに十分な量の本発明の化合物と接触させることによって、組織内のキナーゼ活性を阻害する方法を提供する。幾つかの実施形態では、本発明は、有機体を、前記有機体内のキナーゼの活性を阻害するのに十分な量の本発明の化合物と接触させることによって、有機体内のキナーゼ活性を阻害する方法を提供する。幾つかの実施形態では、本発明は、動物を、前記動物のキナーゼの活性を阻害するのに十分な量の本発明の化合物と接触させることによって、動物のキナーゼ活性を阻害する方法を提供する。幾つかの実施形態では、本発明は、哺乳動物を、前記哺乳動物のキナーゼの活性を阻害するのに十分な量の本発明の化合物と接触させることによって、哺乳動物のキナーゼ活性を阻害する方法を提供する。幾つかの実施形態では、本発明は、ヒトを、前記ヒトのキナーゼの活性を阻害するのに十分な量の本発明の化合物と接触させることによって、ヒトのキナーゼ活性を阻害する方法を提供する。幾つかの実施形態では、キナーゼを本発明の化合物と接触させた後のキナーゼ活性%は、前記接触ステップがない場合のキナーゼ活性の1、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95または99%未満である。
【0368】
幾つかの実施形態では、キナーゼは、脂質キナーゼまたはタンパク質キナーゼである。幾つかの実施形態では、キナーゼは、PI3キナーゼα、PI3キナーゼβ、PI3キナーゼγ、PI3キナーゼδなどの様々なアイソフォーム(isorform)を含むPI3キナーゼ;DNA−PK;mTor;Abl、VEGFR、Ephrin受容体B4(EphB4);TEK受容体チロシンキナーゼ(TIE2);FMS−related チロシンキナーゼ3(FLT−3);血小板由来増殖因子受容体(PDGFR);RET;ATM;ATR;hSmg−1;Hck;Src;上皮増殖因子受容体(EGFR);KIT;インスリン(Inulsin)受容体(IR)およびIGFRからなる群から選択される。
【0369】
本発明はさらに、PI3キナーゼを、該PI3キナーゼの活性を調節するのに十分な量の本発明の化合物と接触させることによってPI3キナーゼ活性を調節する方法を提供する。調節は、PI3キナーゼ活性を阻害または活性化することであってよい。幾つかの実施形態では、本発明は、PI3キナーゼを、該PI3キナーゼの活性を阻害するのに十分な量の本発明の化合物と接触させることによってPI3キナーゼ活性を阻害する方法を提供する。幾つかの実施形態では、本発明は、PI3キナーゼ活性を阻害する方法を提供する。かかる阻害は、溶液中で、1つもしくは複数のPI3キナーゼを発現する細胞内で、1つもしくは複数のPI3キナーゼを発現する細胞を包む組織内で、または1つもしくは複数のPI3キナーゼを発現する有機体内で行うことができる。幾つかの実施形態では、本発明は、動物(ヒトなどの哺乳動物を含む)を、前記動物のPI3キナーゼの活性を阻害するのに十分な量の本発明の化合物と接触させることによって、動物のPI3キナーゼ活性を阻害する方法を提供する。
【0370】
併用治療
本発明はまた、他の経路、または同じ経路の他の成分、または重複している標的酵素の組を調節することが知られている薬剤を、本発明の化合物または薬学的に許容される塩、エステル、プロドラッグ、溶媒和物、水和物もしくはその誘導体と組み合わせて使用する併用療法のための方法を提供する。一態様では、かかる療法は、相乗的または付加的治療効果を得るために、それに限定されるものではないが、対象化合物と化学療法剤、治療抗体および放射線治療の組合せを含む。
【0371】
一態様では、本発明の化合物または医薬組成物は、IgEの産生または活性を阻害する薬剤と組み合わせて投与される場合、相乗的または付加的効果をもたらすことができる。かかる組合せは、1つまたは複数のPI3Kδ阻害剤の使用に関連する高レベルのIgEの望ましくない作用を、かかる作用が生じる場合には低減することができる。このことは特に、関節リウマチなどの自己免疫および炎症性障害(AIID)の治療に有用となり得る。さらに、mTORの阻害剤と組み合わせた本発明のPI3KδまたはPI3Kδ/γ阻害剤の投与は、PI3K経路の阻害強化によって相乗効果を示すこともできる。
【0372】
別個の関連の態様では、本発明は、PI3Kδ阻害剤およびIgEの産生または活性を阻害する薬剤を投与するステップを含む、PI3Kδに関連する疾患の併用治療を提供する。他の例示的PI3Kδ阻害剤も、適用することができ、それらは、例えば米国特許第6,800,620号に記載されている。かかる併用治療は、特に、それに限定されるものではないが関節リウマチを含む自己免疫および炎症性疾患(AIID)の治療に有用である。
【0373】
IgEの産生を阻害する薬剤は、当技術分野で公知であり、それには、限定されるものではないがTEI−9874、2−(4−(6−シクロヘキシルオキシ−2−ナフチルオキシ)フェニルアセトアミド)安息香酸、ラパマイシン、ラパマイシン類似体(即ちラパログ(rapalog))、TORC1阻害剤、TORC2阻害剤、ならびにmTORC1およびmTORC2を阻害する任意の他の化合物の1つまたは複数が含まれる。IgEの活性を阻害する薬剤には、例えばオマリズマブおよびTNX−901などの、例えば抗IgE抗体が含まれる。
【0374】
自己免疫疾患の治療では、対象化合物または医薬組成物を、それに限定されるものではないがEnbrel(登録商標)、Remicade(登録商標)、Humira(登録商標)、Avonex(登録商標)およびRebif(登録商標)を含む一般に処方されている薬物と組み合わせて使用することができる。呼吸器疾患の治療では、対象化合物または医薬組成物を、それに限定されるものではないがXolair(登録商標)、Advair(登録商標)、Singulair(登録商標)およびSpiriva(登録商標)を含む一般に処方されている薬物と組み合わせて使用することができる。
【0375】
本発明の化合物は、脳脊髄炎、喘息および本明細書に記載の他の疾患などの炎症状態の症候を軽減する作用をする他の薬剤と組み合わせて製剤化または投与することができる。これらの薬剤には、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、例えばアセチルサリチル酸、イブプロフェン、ナプロキセン、インドメタシン、ナブメトン、トルメチン等が含まれる。コルチコステロイドは、炎症を低減し、免疫系の活性を抑制するために使用される。この種類の最も一般的な処方薬は、プレドニゾンである。クロロキン(Aralen)またはヒドロキシクロロキン(Plaquenil)も、狼瘡を有する幾つかの個体に非常に有用となり得る。これらは、狼瘡の皮膚および関節症候に対して処方されることが最も多い。アザチオプリン(Imuran)およびシクロホスファミド(Cytoxan)は、炎症を抑制し、免疫系を抑制する傾向がある。他の薬剤、例えばメトトレキサートおよびシクロスポリンは、狼瘡の症候を制御するために使用される。抗凝固剤は、血液が急速に凝固するのを防止するために使用される。これらは、血小板が粘着するのを防止する非常に低用量のアスピリンから、ヘパリン/クマディンにわたる。
【0376】
別の一態様では、本発明はまた、ある量の本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩、エステル、プロドラッグ、溶媒和物、水和物もしくは誘導体を、ある量の抗癌剤(例えば化学療法剤)と組み合わせて含む、哺乳動物の異常細胞増殖を阻害するための医薬組成物に関する。現在、多くの化学療法剤が当技術分野で公知であり、本発明の化合物と組み合わせて使用することができる。
【0377】
幾つかの実施形態では、化学療法剤は、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、挿入抗生物質、増殖因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、生体応答修飾物質、抗ホルモン剤、血管形成阻害剤および抗アンドロゲン薬からなる群から選択される。非限定的な例は、化学療法剤、細胞傷害性薬物ならびにGleevec(イマチニブメシル酸塩)、Velcade(ボルテゾミブ)、Casodex(ビカルタミド)、Iressa(ゲフィチニブ)およびアドリアマイシンなどの非ペプチド小分子、ならびに化学療法剤の宿主である。化学療法剤の非限定的な例には、チオテパおよびシクロスホスファミド(CYTOXAN(商標))などのアルキル化剤;ブスルファン、イムプロスルファンおよびピポスルファンなどのスルホン酸アルキル;ベンゾドーパ、カルボクオン(carboquone)、メツレドーパ(meturedopa)およびウレドーパ(uredopa)などのアジリジン;アルトレタミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド(trietylenephosphoramide)、トリエチレンチオホスホラミドおよびトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミンおよびメチルアメラミン(methylamelamines);クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレスアミン(mechlorethamine)、メクロレスアミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなどのニトロソウレア(nitrosurea);アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリケアマイシン(calicheamicin)、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、Casodex(商標)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシンなどの抗生物質;メトトレキサートおよび5−フルオロウラシル(5−FU)などの代謝拮抗剤;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキセートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンなどのピリミジン類似体、カルステロン、ドロモスタノロンプロピオネート、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎物質(anti−adrenal);フロリン酸などの葉酸補充物質;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート;デホファミン(defofamine);デメコルシン;ジアジクオン(diaziquone);エルホミチン(elfomithine);酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン(lonidamine);ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメト(phenamet);ピラルビシン;ポドフィリン酸;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK.R(商標);ラゾキサン;シゾフィラン(sizofiran);スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’’−トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara−C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキサン、例えばパクリタキセル(TAXOL(商標)、Bristol−Myers Squibb Oncology、Princeton、N.J.)およびドセタキセル(TAXOTERE(商標)、Rhone−Poulenc Rorer、Antony、France);レチノイン酸;エスペラマイシン;カペシタビン;ならびに上記の任意の薬学的に許容される塩、酸または誘導体が含まれる。適切な化学療法細胞調整剤として、例えばタモキシフェン(Nolvadex(商標))、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害性4(5)−イミダゾール、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY 117018、オナプリストンおよびトレミフェン(Fareston)を含む抗エストロゲン薬;ならびにフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリドおよびゴセレリンなどの抗アンドロゲン薬;クロランブシル(chlorambucil);ゲムシタビン;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチンおよびカルボプラチンなどの白金類似体;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP−16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;キセロダ;イバンドロネート;カンプトテシン−11(CPT−11);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO)などの、腫瘍へのホルモン作用を制御または阻害するように作用する抗ホルモン剤も含まれる。望ましい場合、本発明の化合物または医薬組成物は、Herceptin(登録商標)、Avastin(登録商標)、Erbitux(登録商標)、Rituxan(登録商標)、Taxol(登録商標)、Arimidex(登録商標)、Taxotere(登録商標)およびVelcade(登録商標)などの一般に処方されている抗癌薬と組み合わせて使用することができる。
【0378】
本発明はさらに、化合物または医薬組成物を、哺乳動物の異常細胞増殖の阻害または過剰増殖性障害の治療において、放射線療法と組み合わせて使用する方法に関する。放射線療法の施用技術は、当技術分野で公知であり、これらの技術は、本明細書に記載の併用療法において使用することができる。この併用療法における本発明の化合物の投与は、本明細書に記載の通り決定することができる。
【0379】
放射線療法は、それに限定されるものではないが、体外照射療法、体内照射療法、内照射療法(implant radiation)、定位放射線照射、全身性放射線療法、放射線治療および恒久的または一時的組織内近接照射療法(interstitial brachytherapy)を含む幾つかの方法の1つまたはそれらの方法の組合せによって施用することができる。「近接照射療法」という用語は、本明細書で使用される場合、体内の腫瘍または他の増殖性組織疾患部位またはその周りに挿入された、空間的に密閉された放射線材料によって送達される放射線療法を指す。この用語は、それに限定されるものではないが、放射線同位体(例えば、At−211、I−131、I−125、Y−90、Re−186、Re−188、Sm−153、Bi−212、P−32およびLuの放射線同位体)への曝露を含むものである。本発明の細胞調整剤として使用するのに適した放射線源には、固体および液体の両方が含まれる。非限定的な例では、放射線源は、固体供給源としてのI−125、I−131、Yb−169、Ir−192、固体供給源としてのI−125などの放射性核種、または光子、β粒子、γ放射線もしくは他の放射線を放出する他の放射性核種であってよい。放射性材料はまた、放射性核種(複数可)の任意の溶液から生成した流体、例えばI−125またはI−131の溶液であってよく、あるいは放射性流体は、Au−198、Y−90などの固体放射性核種の少粒子を含有する適切な流体のスラリーを使用して生成することができる。さらに、放射性核種(複数可)は、ゲルまたは放射性マイクロスフィアに埋め込むことができる。
【0380】
いかなる理論にも拘泥するものではないが、本発明の化合物は、異常細胞を死滅させ、および/またはその増殖を阻害する目的で、かかる細胞を、放射線を用いる治療に対してより敏感にすることができる。したがって、本発明はさらに、放射線を用いる治療に対して異常細胞を感作するのに有効な量の本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩、エステル、プロドラッグ、溶媒和物、水和物もしくは誘導体を哺乳動物に投与するステップを含む、放射線を用いる治療に対して哺乳動物の異常細胞を感作する方法に関する。この方法における化合物、塩または溶媒和物の量は、本明細書に記載のかかる化合物の有効量を確認する手段に従って決定することができる。
【0381】
本発明の化合物または医薬組成物は、抗血管形成剤、シグナル伝達阻害剤および抗増殖剤から選択される、ある量の1つまたは複数の物質と組み合わせて使用することができる。
【0382】
MMP−2(マトリックス−メタロプロチエナーゼ(metalloprotienase)2)阻害剤、MMP−9(マトリックス−メタロプロチエナーゼ9)阻害剤およびCOX−11(シクロオキシゲナーゼ11)阻害剤などの抗血管形成剤は、本発明の化合物および本明細書に記載の医薬組成物と組み合わせて使用することができる。有用なCOX−II阻害剤の例には、CELEBREX(商標)(アレコキシブ)、バルデコキシブおよびロフェコキシブが含まれる。有用なマトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤の例は、WO96/33172(1996年10月24日公開)、WO96/27583(1996年3月7日公開)、欧州特許出願第97304971.1号(1997年7月8日出願)、欧州特許出願第99308617.2号(1999年10月29日出願)、WO98/07697(1998年2月26日公開)、WO98/03516(1998年1月29日公開)、WO98/34918(1998年8月13日公開)、WO98/34915(1998年8月13日公開)、WO98/33768(1998年8月6日公開)、WO98/30566(1998年7月16日公開)、欧州特許第606,046号(1994年7月13日公開)、欧州特許第931,788号(1999年7月28日公開)、WO90/05719(1990年5月31日公開)、WO99/52910(1999年10月21日公開)、WO99/52889(1999年10月21日公開)、WO99/29667(1999年6月17日公開)、PCT国際出願PCT/IB98/01113(1998年7月21日出願)、欧州特許出願第99302232.1号(1999年3月25日出願)、英国特許出願第9912961.1号(1999年6月3日出願)、米国仮特許出願第60/148,464号(1999年8月12日出願)、米国特許第5,863,949号(1999年1月26日発行)、米国特許第5,861,510号(1999年1月19日発行)および欧州特許第780,386号(1997年6月25日公開)に記載されており、これらの全体を、参考として全て本明細書に援用する。好ましいMMP−2およびMMP−9阻害剤は、MMP−1を阻害する活性を殆どまたは全く持たない阻害剤である。より好ましいのは、他のマトリックス−メタロプロテイナーゼ(即ち、MAP−1、MMP−3、MMP−4、MMP−5、MMP−6、MMP−7、MMP−8、MMP−10、MMP−11、MMP−12およびMMP−13)と比較して、MMP−2および/またはAMP−9を選択的に阻害するものである。本発明において有用なMMP阻害剤の幾つかの特定の例は、AG−3340、RO32−3555およびRS13−0830である。
【0383】
本発明はまた、ある量の本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩、エステル、プロドラッグ、溶媒和物、水和物もしくは誘導体、もしくはそれらの同位体標識化誘導体、および心血管疾患の治療のためのある量の1つまたは複数の治療剤の使用を含む、哺乳動物の心血管疾患を治療する方法および医薬組成物に関する。
【0384】
心血管疾患適用における使用の例は、抗血栓剤、例えばプロスタサイクリンおよびサリチル酸塩、血栓溶解剤、例えばストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、組織プラスミノーゲンアクチベータ(TPA)およびアニソイル化プラスミノーゲン−ストレプトキナーゼアクチベータ複合体(APSAC)、抗血小板薬、例えばアセチル−サリチル酸(ASA)およびクロピドロゲル(clopidrogel)、血管拡張剤、例えば硝酸塩、カルシウムチャンネル遮断薬、抗増殖剤、例えばコルヒチンおよびアルキル化剤、挿入剤、インターロイキン、増殖形質転換因子−βおよび血小板由来増殖因子の同属種などの増殖調節因子、増殖因子を対象にしたモノクローナル抗体、抗炎症剤、ステロイド剤および非ステロイド剤の両方、ならびに血管緊張、機能、動脈硬化および介入後の血管または器官損傷に対する治癒反応を調節することができる他の薬剤である。抗生物質を組み合わせて含むこともでき、または本発明に含まれるコーティングに含むことができる。さらにコーティングは、血管壁内で局所的に治療送達するために使用することができる。活性成分を膨潤性ポリマーに組み込むことによって、活性剤は、ポリマーの膨張時に放出されることになる。
【0385】
本明細書に記載の化合物は、潤滑剤としても公知の液体または固体組織障壁と組み合わせて製剤化または投与することができる。組織障壁の例には、それに限定されるものではないが、多糖、ポリグリカン、セプラフィルム、インターシードおよびヒアルロン酸が含まれる。
【0386】
本明細書に記載の化合物と組み合わせて投与できる医薬品には、吸入によって有効に送達される任意の適切な薬物、例えば鎮痛剤、例えばコデイン、ジヒドロモルヒネ、エルゴタミン、フェンタニルまたはモルヒネ;狭心症用製剤、例えばジルチアゼム;抗アレルギー薬、例えばクロモグリケイト、ケトチフェンまたはネドクロミル;抗感染薬、例えばセファロスポリン、ペニシリン、ストレプトマイシン、スルホンアミド、テトラサイクリンまたはペンタミジン;抗ヒスタミン剤、例えばメタピリレン;抗炎症剤、例えばベクロメタゾン、フルニソリド、ブデソニド、チプレダン(tipredane)、トリアムシノロンアセトニドまたはフルチカゾン;鎮咳薬、例えばノスカピン;気管支拡張剤、例えばエフェドリン、アドレナリン、フェノテロール、フォルモテロール、イソプレナリン、メタプロテレノール、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、ピルブテロール、レプロテロール、リミテロール、サルブタモール、サルメテロール、テルブタリン、イソエタリン、ツロブテロール、オルシプレナリンまたは(−)−4−アミノ−3,5−ジクロロ−α−[[[6−[2−(2−ピリジニル)エトキシ]ヘキシル]−アミノ]メチル]ベンゼンメタノール;利尿薬、例えばアミロリド;抗コリン作用薬、例えばイプラトロピウム、アトロピンまたはオキシトロピウム;ホルモン剤、例えばコルチゾン、ヒドロコルチゾンまたはプレドニゾロン;キサンチン、例えばアミノフィリン、コリンテオフィリネート(theophyllinate)、リシンテオフィリネートまたはテオフィリン;ならびに治療用タンパク質およびペプチド、例えばインスリンまたはグルカゴンが含まれる。適切な場合、医薬品は、医薬品の活性および/または安定性を最適化するために、塩の形態で(例えばアルカリ金属もしくはアミン塩として、または酸付加塩として)またはエステルとして(例えば、低級アルキルエステル)または溶媒和物として(例えば水和物)使用できることが、当業者には明らかとなろう。
【0387】
併用療法に有用な他の例示的治療剤には、それに限定されるものではないが、前述の薬剤、放射線療法、ホルモン拮抗薬、ホルモン剤およびそれらの放出因子、甲状腺および抗甲状腺薬、エストロゲンおよびプロゲスチン、アンドロゲン、副腎皮質刺激ホルモン;副腎皮質ステロイドおよびそれらの合成類似体;副腎皮質ホルモン、インスリン、経口血糖降下薬および膵島の薬理の合成および作用の阻害剤、石灰化および骨代謝に影響を及ぼす薬剤;カルシウム、ホスフェート、副甲状腺ホルモン、ビタミンD、カルシトニン、水溶性ビタミン、ビタミンB複合体、アスコルビン酸、脂溶性ビタミン、ビタミンA、KおよびEなどのビタミン、増殖因子、サイトカイン、ケモカイン、ムスカリン受容体アゴニストおよびアンタゴニスト;抗コリンエステラーゼ剤;神経筋接合部および/または自律神経節において作用する薬剤;カテコラミン、交感神経刺激薬およびアドレナリン受容体アゴニストまたはアンタゴニスト;ならびに5−ヒドロキシトリプタミン(5−HT、セロトニン)受容体アゴニストおよびアンタゴニストが含まれる。
【0388】
治療剤には、ヒスタミンおよびヒスタミンアンタゴニスト、ブラジキニンおよびブラジキニンアンタゴニスト、5−ヒドロキシトリプタミン(セロトニン)、膜リン脂質の選択的加水分解の生成物の生体内変換によって生成される脂質物質、エイコサノイド、プロスタグランジン、トロンボキサン、ロイコトリエン、アスピリン、非ステロイド系抗炎症剤、鎮痛解熱薬、プロスタグランジンおよびトロンボキサンの合成を阻害する薬剤、誘発性シクロオキシゲナーゼの選択的阻害剤、誘発性シクロオキシゲナーゼ−2の選択的阻害剤、オータコイド、パラクリンホルモン、ソマトスタチン、ガストリン、体液性および細胞免疫反応に関与する相互作用を媒介するサイトカイン、脂質由来オータコイド、エイコサノイド、β−アドレナリン作動薬、イプラトロピウム、グルココルチコイド、メチルキサンチン、ナトリウムチャンネル遮断薬、オピオイド受容体アゴニスト、カルシウムチャンネル遮断薬、膜安定化薬およびロイコトリエン阻害剤などの疼痛および炎症のための薬剤も含まれ得る。
【0389】
本明細書で企図されるさらなる治療剤には、利尿薬、バソプレシン、腎臓の水保持に影響を及ぼす薬剤、レニン、アンギオテンシン、心筋虚血の治療に有用な薬剤、降圧薬、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、β−アドレナリン受容体アンタゴニスト、高コレステロール血症の治療剤および脂質異常症の治療剤が含まれる。
【0390】
企図される他の治療剤には、胃酸性度の制御に使用される薬物、消化性潰瘍の治療のための薬剤、胃食道逆流性疾患の治療のための薬剤、消化管運動促進剤、制吐薬、過敏性腸症候群に使用される薬剤、下痢に使用される薬剤、便秘に使用される薬剤、炎症性腸疾患に使用される薬剤、胆道疾患に使用される薬剤、膵臓疾患に使用される薬剤が含まれる。原虫感染症を治療するために使用される治療剤、マラリア、アメーバ症、ランブル鞭毛虫症、トリコモナス症、トリパノソーマ症および/またはリーシュマニア症を治療するために使用される薬物、ならびに/あるいは蠕虫病の化学療法に使用される薬物。他の治療剤には、抗菌剤、スルホンアミド、トリメトプリム−スルファメトキサゾールキノロン、ならびに尿路感染症のための薬剤、ペニシリン、セファロスポリンおよび他のもの、β−ラクタム抗生物質、アミノグリコシドを含む薬剤、タンパク質合成阻害剤、結核、マイコバクテリウムアビウムコンプレックス病およびライ病の化学療法に使用される薬物、抗真菌剤、非レトロウイルス性剤および抗レトロウイルス剤を含む抗ウイルス剤が含まれる。
【0391】
対象化合物と組み合わせることができる治療用抗体の例には、それに限定されるものではないが、抗受容体チロシンキナーゼ抗体(セツキシマブ、パニツムマブ、トラスツズマブ)、抗CD20抗体(リツキシマブ、トシツモマブ)ならびにアレムツズマブ、ベバシズマブおよびゲムツズマブなどの他の抗体が含まれる。
【0392】
さらに、免疫調節物質、免疫抑制剤、寛容原および免疫賦活薬などの免疫調節に使用される治療剤が、本明細書の方法によって企図される。さらに、血液および造血器官に作用する治療剤、造血剤、増殖因子、ミネラルおよびビタミン、抗凝固剤、血栓溶解剤ならびに抗血小板薬。
【0393】
対象化合物と組み合わせることができるさらなる治療剤は、Hardman、LimbirdおよびGilman編集のGoodmanおよびGilmanの「The Pharmacological Basis of Therapeutics」Tenth EditionまたはPhysician’s Desk Referenceに見ることができ、その全体は参考として共に本明細書に援用される。
【0394】
本明細書に記載の化合物は、治療を受ける状態に応じて、本明細書に開示の薬剤または他の適切な薬剤と組み合わせて使用することができる。したがって幾つかの実施形態では、本発明の化合物は、前述の他の薬剤と併用投与されることになる。併用療法において使用される場合、本明細書に記載の化合物は、第2の薬剤と同時にまたは別個に投与することができる。この併用投与には、同じ剤形としての2種類の薬剤の同時投与、別個の剤形としての同時投与および個別投与が含まれ得る。即ち、本明細書に記載の化合物および前述の薬剤のいずれかは、同じ剤形として一緒に製剤化することができ、同時に投与することができる。あるいは、本発明の化合物および前述の薬剤のいずれかは、両方の薬剤が別個の製剤として存在する場合に同時に投与することができる。別の代替では、本発明の化合物は、前述の薬剤のいずれかの直後に投与することができ、またはその逆も同様である。別個の投与プロトコルでは、本発明の化合物および前述の薬剤のいずれかは、数分間隔で、または数時間間隔で、または数日間隔で投与することができる。
【0395】
以下に提供する実施例および調製例は、本発明の化合物およびかかる化合物の調製方法をさらに示し、例示するものである。本発明の範囲は、以下の実施例および調製例の範囲によって全く制限されないことを理解されたい。以下の実施例では、単一のキラル中心を有する分子は、別段示されない限りラセミ混合物として存在する。2つ以上のキラル中心を有する分子は、別段示されない限りジアステレオマーのラセミ混合物として存在する。単一のエナンチオマー/ジアステレオマーは、当業者に公知の方法によって得ることができる。
【実施例】
【0396】
(実施例1)3−((4−アミノ−3−(3−ヒドロキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)メチル)−8−メチル−2−o−トリルイソキノリン−1(2H)−オン(化合物1613)の合成(方法A)
スキーム12.3−((4−アミノ−3−(3−ヒドロキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)メチル)−8−メチル−2−o−トリルイソキノリン−1(2H)−オン(化合物1613)の合成
【0397】
【化65】
2−アミノ−6−メチル安息香酸(1601)(106.5g、705mmol)のHO(200mL)中溶液を、0〜5℃に冷却し、濃HCl(250mL)をゆっくり添加した。溶液を0〜5℃で15分間撹拌した。亜硝酸ナトリウム(58.4g、6.85mol)のHO(120mL)中溶液を、0〜5℃で滴下添加し、得られた混合物を30分間撹拌した。次いで先の溶液を、KI(351g、2.11mol)のHO(200mL)中溶液に添加し、得られた混合物をRTで16時間撹拌した。溶液を氷水(2000mL)に注ぎ、酢酸エチル(3×1000mL)で抽出した。混合有機層をNaOH水溶液(15%、3×200mL)で洗浄した。水層を、PH=1になるまで酸性化し、酢酸エチル(3×1000mL)で抽出した。混合有機層をNaSOで乾燥させ、濾過した。濾液を真空内で濃縮して、所望の生成物である2−ヨード−6−メチル安息香酸(1602)(145g、収率79%)を黄色固体として得た。
【0398】
2−ヨード−6−メチル安息香酸(1602)(105g、400mmol)、Pd(OAc)(27g、120mmol)およびPPh(63g、240mol)のTHF(1000mL)中撹拌混合物に、RTでトリブチル(ビニル)スズ(152g、480mmol)を添加した。得られた混合物を、終夜加熱還流した。混合物をRTに冷却し、シリカゲル(10g)を介して濾過し、次いで真空内で濃縮した。残渣を氷水(1000mL)に注ぎ、酢酸エチル(3×1000mL)で抽出した。混合有機層を、NaOH(15%、5×200mL)水溶液で洗浄した。混合水層を、PH=1になるまで酸性化し、酢酸エチル(3×1000mL)で抽出した。混合有機層をNaSOで乾燥させ、濾過した。濾液を真空内で濃縮して、所望の生成物である2−メチル−6−ビニル安息香酸(1603)(61g、収率95%)を黄色固体として得た。
【0399】
2−メチル−6−ビニル安息香酸(1603)(56g、350mmol)および塩化チオニル(208g、1750mmol)のトルエン(400mL)中混合物を、還流温度で2時間撹拌した。混合物を真空内で濃縮して、所望の生成物である2−メチル−6−ビニルベンゾイルクロリド(1604)(63g、収率95%)を黄色油として得た。得られた生成物を、精製なしに次のステップで直接使用した。
【0400】
o−トルイジン(45g、420mmol)およびトリエチルアミン(71g、70mmol)のCHCl(300mL)中混合物を、RTで10分間撹拌した。この混合物に、2−メチル−6−ビニルベンゾイルクロリド(1604)(63g、35mmol)を添加し、得られた混合物をRTで30分間撹拌した。溶液を水(300mL)に注ぎ、CHCl(3×200mL)で抽出し、NaSOで乾燥させ、濾過した。濾液を真空内で濃縮して、粗生成物を得た。粗生成物を、IPE(イソプロピルエーテル)(300mL)に懸濁し、還流温度で30分間撹拌し、次いで0〜5℃に冷却した。沈殿物を濾過によって収集し、真空内でさらに乾燥させて、所望の生成物である2−メチル−N−o−トリル−6−ビニルベンズアミド(1605)(81g、収率80%)を黄色固体として得た。
【0401】
2−メチル−N−o−トリル−6−ビニルベンズアミド(1605)(80g、320mmol)のDMF(250mL)中溶液に、RTでNaH(鉱油中60%、25.6g、640mmol)をゆっくり添加し、得られた混合物をRTで30分間撹拌した。この混合物に、クロロ酢酸エチル(78g、640mmol)を添加し、得られた混合物をRTで2時間撹拌した。溶液を水(500mL)に注ぎ、酢酸エチル(3×200mL)で抽出し、NaSOで乾燥させ、濾過した。濾液を真空内で濃縮した。粗生成物をMeOH(160mL)に懸濁し、還流温度で10分間撹拌し、次いで0〜5℃に冷却した。沈殿物を濾過によって収集し、真空内でさらに乾燥させて、所望の生成物である2−(2−メチル−N−o−トリル−6−ビニルベンズアミド)酢酸エチル(1606)(67g、収率62%)を白色固体として得た。
【0402】
2−(2−メチル−N−o−トリル−6−ビニルベンズアミド)酢酸エチル(1606)(67g、200mmol)の1,4−ジオキサン(300mL)およびHO(100mL)中撹拌混合物に、RTで四酸化オスミウム(20mg)を添加し、RTで30分間撹拌した。この混合物に、過ヨウ素酸ナトリウム(86g、400mmol)を添加し、得られた混合物をRTで16時間撹拌した。反応混合物を、シリカゲル(10g)を介して濾過し、濾液を酢酸エチル(3×200mL)で抽出した。混合有機層をブライン(100mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過した。濾液を真空内で濃縮し、残渣をさらに真空内で乾燥させて、所望の生成物である2−(2−ホルミル−6−メチル−N−o−トリルベンズアミド)酢酸エチル(1607)(38g、収率57%)を黄色固体として得た。
【0403】
2−(2−ホルミル−6−メチル−N−o−トリルベンズアミド)酢酸エチル(1607)(38g、112mmol)のEtOH(200mL)および酢酸エチル(100mL)中撹拌溶液に、RTで炭酸セシウム(22g、112mmol)を添加した。得られた混合物を脱気し、アルゴンで3回再び充填し、次いで50℃で5時間撹拌した。混合物をRTに冷却し、シリカゲル(10g)を介して濾過し、濾液を真空内で濃縮した。残渣をHO(200mL)に注ぎ、酢酸エチル(3×200mL)で抽出した。混合有機層をブライン(50mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過した。濾液を真空内で濃縮した。粗生成物をIPE(120mL)に懸濁し、10分間加熱還流し、次いで0〜5℃に冷却した。沈殿物を濾過によって収集し、真空内でさらに乾燥させて、所望の生成物である8−メチル−1−オキソ−2−o−トリル−1,2−ジヒドロイソキノリン−3−カルボン酸エチル(1608)(28g、収率77%)を白色固体として得た。
【0404】
水素化リチウムアルミニウム(8.28g、218mol)の無水THF(500mL)中撹拌溶液に、窒素雰囲気下、−78℃で8−メチル−1−オキソ−2−o−トリル−1,2−ジヒドロイソキノリン−3−カルボン酸エチル(1608)(28g、87mmol)を、10分かけてゆっくり添加した。得られた混合物を−30℃に温め、30分間撹拌すると、TLCは反応の完了を示した。次いで、混合物を−78℃に冷却し、水(50mL)をゆっくり添加した。混合物をRTに温め、シリカゲルを介して濾過し(10g)、濾液を真空内で濃縮した。粗生成物をHO(200mL)に注ぎ、酢酸エチル(3×200mL)で抽出した。混合有機層をブライン(50mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過した。濾液を真空内で濃縮した。粗生成物を酢酸エチル(30mL)に懸濁し、10分間撹拌した。固体を濾過によって収集し、真空内でさらに乾燥させて、所望の生成物である3−(ヒドロキシメチル)−8−メチル−2−o−トリルイソキノリン−1(2H)−オン(1609)(22g、収率92%)を白色固体として得た。
【0405】
PBr(25.6g、95mmol)を、0℃においてDMF(11.5g、158mol)のアセトニトリル(200mL)中撹拌溶液にゆっくり添加し、得られた混合物を、0Cで30分間撹拌した。3−(ヒドロキシメチル)−8−メチル−2−o−トリルイソキノリン−1−(2H)−オン(1606)(22g、78.8mmol)を、ゆっくり添加した。次いで、反応混合物をRTに温め、30分間撹拌した。飽和水性NaHCO溶液(50mL)をゆっくり添加し、酢酸エチル(3×200mL)で抽出した。混合有機層をブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過した。濾液を真空内で濃縮した。粗生成物をIPE(50mL)に懸濁し、次いで10分間撹拌した。沈殿物を濾過によって収集し、真空内でさらに乾燥させて、所望の生成物である3−(ブロモメチル)−8−メチル−2−o−トリルイソキノリン−1(2H)−オン(1610)(21g、収率80%)を白色固体として得た。
【0406】
3−ヨード−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン(108)(10.8g、41.4mmol)およびカリウムtert−ブトキシド(4.4g、40mmol)を、無水DMF(150mL)に溶解し、RTで30分間撹拌した。3−(ブロモメチル)−8−メチル−2−o−トリルイソキノリン−1(2H)−オン(1610)(13.7g、40mmol)を添加した。得られた混合物をRTで30分間撹拌し、水(300mL)に注ぎ、次いで酢酸エチル(3×200mL)で抽出した。混合有機層をブライン(50mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過した。濾液を、真空内で約100mlに濃縮し、沈殿物を濾過によって収集して、所望の生成物である3−((4−アミノ−3−ヨード−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)メチル)−8−メチル−2−o−トリルイソキノリン−1(2H)−オン(1611)(12g、収率60%)の第1のバッチを白色固体として得た。濾液を真空内で濃縮し、残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(2〜20%MeOH/DCM)によって精製して、所望の生成物である3−((4−アミノ−3−ヨード−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)メチル)−8−メチル−2−o−トリルイソキノリン−1(2H)−オン(1611)(6g、収率30%)の第2のバッチを白色固体として得た。
【0407】
3−((4−アミノ−3−ヨード−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)メチル)−8−メチル−2−o−トリルイソキノリン−1(2H)−オン(1608)(13g、24.9mmol)および3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェノール(1612)(6.6g、30mmol)を、DMF−EtOH−HO(120mL、40mL、40mL)に溶解した。Pd(OAc)(1.684g、7.5mmol)、PPh(3.935g、15mmol)およびNaCO(13.25g、125mmol)を、逐次的に添加した。得られた混合物を脱気し、アルゴンで3回再び充填し、次いで100℃で1時間撹拌した。混合物をRTに冷却し、シリカゲル(10g)を介して濾過し、真空内で濃縮した。残渣を、シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(2〜20%MeOH/DCM)によって精製して、生成物(1613)(9g、収率76%)を、わずかに黄色の固体として得た。次いで、先の生成物をEtOH(100mL)に懸濁し、30分間加熱還流した。混合物を、RTに冷却し、固体を濾過によって収集した。次いで、固体をEA(100mL)に懸濁し、終夜撹拌した。沈殿物を濾過によって収集し、真空内でさらに乾燥させて、所望の生成物である3−((4−アミノ−3−(3−ヒドロキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)メチル)−8−メチル−2−o−トリルイソキノリン−1(2H)−オン(1613)(8.4g、収率69%)を白色固体として得た。
【0408】
(実施例2)3−((4−アミノ−3−(3−ヒドロキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)メチル)−8−メチル−2−o−トリルイソキノリン−1(2H)−オン(化合物1613)の合成(方法B)
スキーム13.方法Bによる3−((4−アミノ−3−(3−ヒドロキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)メチル)−8−メチル−2−o−トリルイソキノリン−1(2H)−オン(化合物1613)の合成を記載する。
【0409】
【化66】
3−(3−メトキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン(1701)(964mg、4mmol)およびカリウムtert−ブトキシド(0.44g、4mmol)を、無水DMF(150mL)に溶解し、RTで30分間撹拌した。3−(ブロモメチル)−8−メチル−2−o−トリルイソキノリン−1(2H)−オン(1610)(1.37g、4.0mmol)を添加した。得られた混合物をRTで30分間撹拌し、氷水(30mL)に注ぎ、次いで酢酸エチル(3×50mL)で抽出した。混合有機層をブライン(25mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過した。濾液を真空内で濃縮し、残渣を、シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(2〜20%MeOH/DCM)によって精製して、所望の生成物である3−((4−アミノ−3−(3−メトキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)メチル)−8−メチル−2−o−トリルイソキノリン−1(2H)−オン(1702)(1.4g、収率70%)を白色固体として得た。
【0410】
3−((4−アミノ−3−(3−メトキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)メチル)−8−メチル−2−o−トリルイソキノリン−1(2H)−オン(1702)(100mg、0.2mmol)のCHCl(20mL)中溶液に、窒素雰囲気下、−78℃でBBr(1mL)を添加し、得られた混合物を、−78℃で3時間撹拌した。混合物をRTに温め、氷水(200mL)に注ぎ、酢酸エチル(3×50mL)で抽出した。混合有機層をブライン(20mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過した。濾液を真空内で濃縮し、残渣を、シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(10〜50%MeOH/CHCl)によって精製して、所望の生成物である3−((4−アミノ−3−(3−ヒドロキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)メチル)−8−メチル−2−o−トリルイソキノリン−1(2H)−オン(1613)(87mg、収率91%)を白色固体として得た。
【0411】
(実施例3)(R)−3−((4−アミノ−3−(3−ヒドロキシブト−1−イニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)メチル)−8−メチル−2−o−トリルイソキノリン−1(2H)−オン(化合物1802)の合成
スキーム14.(R)−3−((4−アミノ−3−(3−ヒドロキシブト−1−イニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)メチル)−8−メチル−2−o−トリルイソキノリン−1(2H)−オン(化合物1802)の合成を記載する。
【0412】
【化67】
3−((4−アミノ−3−ヨード−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)メチル)−8−メチル−2−o−トリルイソキノリン−1(2H)−オン(1611)(522mg、1mmol)および(R)−ブタ−3−イン−2−オール(84mg、1.2mmol)を、無水THF(40mL)に溶解した。混合物を脱気し、窒素で3回再び充填した。Pd(PPhCl(12mg、0.1mmol)、CuI(47mg、0.25mmol)および(i−Pr)NH(505mg、5mmol)を、逐次的に添加した。得られた混合物を脱気し、アルゴンで3回再び充填し、次いで還流温度で4時間撹拌した。混合物をRTに冷却し、シリカゲル(10g)を介して濾過し、真空内で濃縮した。残渣を、シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(2〜20%MeOH/DCM)によって精製して、生成物である3(R)−3−((4−アミノ−3−(3−ヒドロキシブト−1−イニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)メチル)−8−メチル−2−o−トリルイソキノリン−1(2H)−オン(1802)(324mg、収率70%)を、わずかに黄色の固体として得た。
【0413】
(実施例4)3−((6−アミノ−9H−プリン−9−イル)メチル)−8−メチル−2−o−トリルイソキノリン−1(2H)−オン(化合物1902)の合成
スキーム15.3−((6−アミノ−9H−プリン−9−イル)メチル)−8−メチル−2−o−トリルイソキノリン−1(2H)−オン(化合物1902)の合成を記載する。
【0414】
【化68】
9H−プリン−6−アミン(1901)(540mg、4.0mmol)を、無水DMF(20mL)に溶解した。NaH(鉱油中60%、160mg、4.0mmol)を添加し、得られた混合物をRTで30分間撹拌した。3−(ブロモメチル)−8−メチル−2−o−トリルイソキノリン−1(2H)−オン(1610)(1.37g、4.0mmol)を添加した。反応混合物をRTで30分間撹拌し、氷水(30mL)に注ぎ、次いで酢酸エチル(3×50mL)で抽出した。混合有機層をブライン(25mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過した。濾液を真空内で濃縮し、残渣を、シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(2〜20%MeOH/DCM)によって精製して、所望の生成物である3−((6−アミノ−9H−プリン−9−イル)メチル)−8−メチル−2−o−トリルイソキノリン−1(2H)−オン(1902)(1.1g、収率70%)を白色固体として得た。
【0415】
(実施例5)3−((4−アミノ−3−(3−ヒドロキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)メチル)−2−イソプロピル−8−メチルイソキノリン−1(2H)−オン(化合物2013)の合成
スキーム16.3−((4−アミノ−3−(3−ヒドロキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)メチル)−2−イソプロピル−8−メチルイソキノリン−1(2H)−オン(化合物2010)の合成を記載する。
【0416】
【化69】
【0417】
【化70】
2−ヨード−6−メチル安息香酸(1602)(105g、400mmol)、Pd(OAc)(27g、120mmol)およびPPh(63g、240mol)のTHF(1000mL)中撹拌混合物に、RTでトリブチル(ビニル)スズ(152g、480mmol)を添加した。得られた混合物を、終夜加熱還流した。混合物をRTに冷却し、シリカゲル(10g)を介して濾過し、次いで真空内で濃縮した。残渣を氷水(1000mL)に注ぎ、酢酸エチル(3×1000mL)で抽出した。混合有機層を、NaOH水溶液(15%、5×200mL)で洗浄した。混合水層を、PH=1になるまで酸性化し、酢酸エチル(3×1000mL)で抽出した。混合有機層をNaSOで乾燥させ、濾過した。濾液を真空内で濃縮して、所望の生成物である2−メチル−6−ビニル安息香酸(1603)(61g、収率95%)を黄色固体として得た。
【0418】
2−メチル−6−ビニル安息香酸(1603)(56g、350mmol)および塩化チオニル(208g、1750mmol)のトルエン(400mL)中混合物を、還流温度で2時間撹拌した。混合物を真空内で濃縮して、所望の生成物である2−メチル−6−ビニルベンゾイルクロリド(1604)(63g、収率95%)を黄色油として得た。得られた生成物を、精製なしに次のステップで直接使用した。
【0419】
プロパン−2−アミン(2001)(59g、1.0mol)およびクロロ酢酸エチル(122g、1.0mol)を、トルエン(200mL)に溶解し、混合物を還流温度で2時間撹拌した。反応混合物をRTに冷却し、氷水(500mL)に注ぎ、酢酸エチル(3×250mL)で抽出した。混合有機層をブライン(50mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過した。濾液を真空内で濃縮し、残渣を、シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(10〜50%EA/PE)によって精製して、生成物である2−(イソプロピルアミノ)酢酸エチル(2002)(70g、収率51%)を油として得た。
【0420】
2−(イソプロピルアミノ)酢酸エチル(2002)(14.5g、100mmol)およびトリエチルアミン(200g、200mmol)を、CHCl(300mL)に溶解し、混合物をRTで10分間撹拌した。2−メチル−6−ビニルベンゾイルクロリド(1604)(18g、100mmol)を添加し、得られた混合物をRTで30分間撹拌した。反応混合物を水(300mL)に注ぎ、CHCl(3×200mL)で抽出した。混合有機層をブライン(50mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過した。濾液を真空内で濃縮して、粗生成物を得た。粗生成物を、IPE(イソプロピルエーテル)(300mL)に懸濁し、還流温度で30分間撹拌し、次いで0〜5℃に冷却した。沈殿物を濾過によって収集し、真空内でさらに乾燥させて、所望の生成物である2−(N−イソプロピル−2−メチル−6−ビニルベンズアミド)酢酸エチル(2003)(14.5g、収率50%)を黄色固体として得た。
【0421】
2−(N−イソプロピル−2−メチル−6−ビニルベンズアミド)酢酸エチル(2003)(14.0g、48.0mmol)の1,4−ジオキサン(100mL)およびHO(30mL)中撹拌溶液に、四酸化オスミウム(20mg)を添加し、得られた混合物をRTで30分間撹拌した。この混合物に、過ヨウ素酸ナトリウム(22g、100mmol)を添加し、次いでRTで16時間撹拌した。反応混合物を、シリカゲル(10g)を介して濾過し、濾液を酢酸エチル(3×200mL)で抽出した。混合有機層をブライン(50mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過した。濾液を真空内で濃縮し、残渣を真空内でさらに乾燥させて、所望の生成物である2−(2−ホルミル−N−イソプロピル−6−メチルベンズアミド)酢酸エチル(2004)(8.33g、収率57%)を黄色固体として得た。
【0422】
2−(2−ホルミル−N−イソプロピル−6−メチルベンズアミド)酢酸エチル(2004)(8.3g、28.0mmol)のEtOH(100mL)および酢酸エチル(50mL)中撹拌溶液に、RTで炭酸セシウム(5.9g、30mmol)を添加した。得られた混合物を脱気し、アルゴンで3回再び充填し、次いで50℃で5時間撹拌した。混合物をRTに冷却し、シリカゲル(10g)を介して濾過し、濾液を真空内で濃縮した。残渣をHO(200mL)に注ぎ、酢酸エチル(3×200mL)で抽出した。混合有機層をブライン(50mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過した。濾液を真空内で濃縮した。粗生成物をIPE(120mL)に懸濁し、還流温度で10分間撹拌し、次いで0〜5℃に冷却した。沈殿物を濾過によって収集し、真空内でさらに乾燥させて、所望の生成物である2−イソプロピル−8−メチル−1−オキソ−1,2−ジヒドロイソキノリン−3−カルボン酸エチル(2005)(5.35g、収率70%)を白色固体として得た。
【0423】
水素化リチウムアルミニウム(2.88g、76mol)の無水THF(200mL)中撹拌溶液に、窒素雰囲気下、−78℃で、2−イソプロピル−8−メチル−1−オキソ−1,2−ジヒドロイソキノリン−3−カルボン酸エチル(2005)(5.2g、19mmol)を、10分かけてゆっくり添加した。得られた混合物を−30℃に温め、30分間撹拌すると、TLCは反応の完了を示した。次いで、混合物を−78℃に冷却し、水(50mL)をゆっくり添加した。混合物をRTに温め、シリカゲル(10g)を介して濾過し、濾液を真空内で濃縮した。粗生成物をHO(200mL)に注ぎ、酢酸エチル(3×200mL)で抽出した。混合有機層をブライン(50mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過した。濾液を真空内で濃縮した。粗生成物を酢酸エチル(30mL)に懸濁し、10分間撹拌した。固体を濾過によって収集し、真空内でさらに乾燥させて、所望の生成物である3−(ヒドロキシメチル)−2−イソプロピル−8−メチルイソキノリン−1(2H)−オン(2006)(3.51g、収率80%)を白色固体として得た。
【0424】
3−(ヒドロキシメチル)−2−イソプロピル−8−メチルイソキノリン−1(2H)−オン(2006)(1.61g、7.0mmol)のCHCl中溶液に、PPh(3.67g、14.0mmol)を添加し、混合物をRTで30分間撹拌した。混合物を0℃に冷却し、CBr(4.64g、14.0mmol)を数回に分けて添加した。得られた混合物を、0℃〜RTで30分間撹拌し、次いで真空内で濃縮した。粗生成物を、シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(30〜50%EA/PE)によって精製して、所望の生成物である3−(ブロモメチル)−2−イソプロピル−8−メチルイソキノリン−1(2H)−オン(2007)(1.65g、収率80%)を白色固体として得た。
【0425】
3−ヨード−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン(108)(1.3g、5mmol)およびカリウムtert−ブトキシド(0.55g、5mmol)の無水DMF(20mL)中混合物を、RTで30分間撹拌し、次いで3−(ブロモメチル)−2−イソプロピル−8−メチルイソキノリン−1(2H)−オン(2007)(1.47g、5mmol)を添加した。得られた混合物をRTで30分間撹拌し、氷水(30mL)に注ぎ、次いで酢酸エチル(3×50mL)で抽出した。混合有機層をブライン(25mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過した。濾液を真空内で濃縮し、残渣を、シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(2〜20%MeOH/DCM)によって精製して、所望の生成物である3−((4−アミノ−3−ヨード−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)メチル)−2−イソプロピル−8−メチルイソキノリン−1(2H)−オン(2008)(1.66g、収率70%)を白色固体として得た。
【0426】
3−((4−アミノ−3−ヨード−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)メチル)−2−イソプロピル−8−メチルイソキノリン−1(2H)−オン(2008)(95mg、0.2mmol)および3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェノール(66mg、0.3mmol)のDMF−EtOH−HO(3:1:1、20mL)中撹拌混合物に、Pd(OAc)(16mg、0.075mmol)、PPh(39.3mg、0.15mmol)およびNaCO(132mg、1.25mmol)を、逐次的に添加した。得られた混合物を脱気し、アルゴンで3回再び充填し、次いで100℃で1時間撹拌した。混合物をRTに冷却し、シリカゲル(10g)を介して濾過し、真空内で濃縮した。残渣を、シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(2〜20%MeOH/DCM)によって精製して、生成物である3−((4−アミノ−3−(3−ヒドロキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)メチル)−2−イソプロピル−8−メチルイソキノリン−1(2H)−オン(2009)(53mg、収率61%)を、わずかに黄色の固体として得た。
【0427】
(実施例6)8−メチル−3−((メチル(9H−プリン−6−イル)アミノ)メチル)−2−o−トリルイソキノリン−1(2H)−オンの合成
スキーム17:8−メチル−3−((メチル(9H−プリン−6−イル)アミノ)メチル)−2−o−トリルイソキノリン−1(2H)−オン(化合物4004)の合成を記載する。
【0428】
【化71】
3−(ブロモメチル)−8−メチル−2−o−トリルイソキノリン−1(2H)−オン(342mg、1.0mmol)(1607)を、メチルアミン溶液(100mL)に溶解し、2時間撹拌した。混合物を氷水(200mL)に注ぎ、酢酸エチル(3×50mL)で抽出した。混合有機層をブライン(20mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過した。濾液を真空内で濃縮して、所望の生成物である8−メチル−3−((メチルアミノ)メチル)−2−o−トリルイソキノリン−1(2H)−オン(4001)(250mg、収率86%)を黄色固体として得た。得られた生成物を、精製なしに次のステップで直接使用した。
【0429】
8−メチル−3−((メチルアミノ)メチル)−2−o−トリルイソキノリン−1(2H)−オン(233mg、0.8mmol)(4001)および6−クロロ−9−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−9H−プリン(4002)(238mg、1.0mmol)を、EtOH(50mL)に溶解し、得られた混合物を還流温度で2時間撹拌した。混合物をRTに冷却し、真空内で濃縮した。残渣を、シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(2〜20%MeOH/DCM)によって精製して、生成物である8−メチル−3−((メチル(9−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−9H−プリン−6−イル)アミノ)メチル)−2−o−トリルイソキノリン−1(2H)−オン(4003)(200mg、収率51%)を、わずかに黄色の固体として得た。
【0430】
8−メチル−3−((メチル(9−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−9H−プリン−6−イル)アミノ)メチル)−2−o−トリルイソキノリン−1(2H)−オン(4003)(180mg、0.36mmol)を、MeOH(HCl)(50mL)に溶解し、混合物をRTで2時間撹拌した。NaHCO水溶液を反応混合物に添加し、pH値を9に調節した。混合物を濾過し、濾液を真空内で濃縮して、所望の生成物である8−メチル−3−((メチル(9H−プリン−6−イル)アミノ)メチル)−2−o−トリルイソキノリン−1(2H)−オン(4004)(80mg、収率54%)を黄色固体として得た。
【0431】
(実施例7)3−(1−(9H−プリン−6−イルアミノ)エチル)−8−メチル−2−o−トリルイソキノリン−1(2H)−オンの合成
スキーム18:3−(1−(9H−プリン−6−イルアミノ)エチル)−8−メチル−2−o−トリルイソキノリン−1(2H)−オン(化合物4106)の合成を記載する。
【0432】
【化72】
3−(ヒドロキシメチル)−8−メチル−2−o−トリルイソキノリン−1(2H)−オン1609(2.79g、10mmol)のCHCl(200mL)中撹拌溶液に、MnO(5g)を添加し、得られた混合物を、還流温度で3時間撹拌した。混合物をRTに冷却し、真空内で濃縮した。残渣を、シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(10〜50%EA/PE)によって精製して、生成物である8−メチル−1−オキソ−2−o−トリル−1,2−ジヒドロイソキノリン−3−カルバルデヒド4101(2.5g、収率90%)を白色固体として得た。
【0433】
8−メチル−1−オキソ−2−o−トリル−1,2−ジヒドロイソキノリン−3−カルバルデヒド4101(2.4g、8.6mmol)を、無水THF(280mL)に溶解し、窒素雰囲気下で−78℃に冷却した。メチルMgBr(2M、5mL、10mmol)をゆっくり添加し、得られた混合物を、−78℃で2時間撹拌した。HO(5mL)を添加し、次いで溶液を氷水(200mL)に注ぎ、酢酸エチル(3×50mL)で抽出した。混合有機層をブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過した。濾液を真空内で濃縮し、残渣としての生成物を、シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(10〜50%EA/PE)によって精製して、生成物である3−(1−ヒドロキシエチル)−8−メチル−2−o−トリルイソキノリン−1(2H)−オン4102(1.8g、収率71%)を白色固体として得た。
【0434】
3−(1−ヒドロキシエチル)−8−メチル−2−o−トリルイソキノリン−1(2H)−オン4102(1.6g、5.5mmol)のCHCl中溶液に、PPh(2.88g、11.0mmol)を添加し、得られた混合物をRTで30分間撹拌した。次いでCBr(3.64g、11.0mmol)を、0℃で混合物に数回に分けて添加した。得られた混合物をRTに温め、30分撹拌し、真空内で濃縮した。粗生成物を、シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(30〜50%EA/PE)によって精製して、所望の生成物である3−(1−ブロモエチル)−8−メチル−2−o−トリルイソキノリン−1(2H)−オン4103(1.8g、収率91%)を白色固体として得た。
【0435】
9−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−9H−プリン−6−アミン4103(436mg、2mmol)の無水DMF(10mL)中撹拌溶液に、NaH(鉱油中60%、77mg、2mmol)を添加し、混合物を30分間撹拌した。3−(1−ブロモエチル)−8−メチル−2−o−トリルイソキノリン−1(2H)−オン4104(700mg、2mmol)を添加した。混合物を2時間撹拌し、氷水(200mL)に注ぎ、酢酸エチル(3×50mL)で抽出した。混合有機層をブライン(20mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過した。濾液を真空内で濃縮し、残渣を、シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(10〜50%MeOH/DCM)によって精製して、生成物である8−メチル−3−(1−(9−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−9H−プリン−6−イルアミノ)エチル)−2−o−トリルイソキノリン−1(2H)−オン4105(500mg、収率51%)を白色固体として得た。
【0436】
8−メチル−3−(1−(9−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−9H−プリン−6−イルアミノ)エチル)−2−o−トリルイソキノリン−1(2H)−オン4105(180mg、0.36mmol)を、MeOH(HCl)(50mL)に溶解し、2時間撹拌した。NaHCO水溶液を反応混合物に添加し、pH値を9に調節した。次いで混合物を濾過し、濾液を真空内で濃縮して、所望の生成物である3−(1−(9H−プリン−6−イルアミノ)エチル)−8−メチル−2−o−トリルイソキノリン−1(2H)−オン4106(80mg、収率54%)を黄色固体として得た。
【0437】
(実施例8)3−(4−アミノ−1−((8−メチル−1−オキソ−2−o−トリル−1,2−ジヒドロイソキノリン−3−イル)メチル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−3−イル)−5−フルオロフェニルリン酸二水素の合成
スキーム19.3−(4−アミノ−1−((8−メチル−1−オキソ−2−o−トリル−1,2−ジヒドロイソキノリン−3−イル)メチル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−3−イル)−5−フルオロフェニルリン酸二水素(化合物4303)の合成を記載する。
【0438】
【化73】
3−((4−アミノ−3−(3−フルオロ−5−ヒドロキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)メチル)−8−メチル−2−o−トリルイソキノリン−1(2H)−オン4301(250mg、0.5mmol)を、暗室で(アルミニウムホイルでカバーした)丸底フラスコ中、無水THF(15mL)に溶解し、アルゴン雰囲気下で0℃に冷却した。CBr(498mg、1.5mmol)を添加し、その後亜リン酸ジエチル(129μL、1.0mmol)およびトリエチルアミン(417μL、1.5mmol)を添加した。得られた混合物を、暗室内で16時間、0℃〜RTで撹拌した。次いで、混合物を酢酸エチルとブラインに分離した。有機層をNaSOで乾燥させ、濾過し、真空内で濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって、メタノールおよびジクロロメタンで溶離して精製して、所望の生成物である3−(4−アミノ−1−((8−メチル−1−オキソ−2−o−トリル−1,2−ジヒドロイソキノリン−3−イル)メチル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−3−イル)−5−フルオロフェニルジエチルホスフェート4302(200mg、収率62%)をオフホワイト色の固体として得た。
【0439】
3−(4−アミノ−1−((8−メチル−1−オキソ−2−o−トリル−1,2−ジヒドロイソキノリン−3−イル)メチル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−3−イル)−5−フルオロフェニルジエチルホスフェート4302(170mg、0.26mmol)を、無水CHCN(5mL)に溶解し、アルゴン雰囲気下で0℃に冷却した。TMSBr(0.34mL、2.64mmol)を、シリンジを介してゆっくり添加し、得られた混合物を、0℃〜RTで16時間撹拌した。LC−MSは、少量の出発材料が残っていることを示し、追加量のTMSBr(0.1mL)を添加し、RTで5時間撹拌した。LC−MSは、完全な変換を示した。混合物を真空内で濃縮し、残渣をEtO(10mL)およびHO(0.5mL)に溶解し、30分間撹拌した。混合物を真空内で濃縮して、所望の生成物である3−(4−アミノ−1−((8−メチル−1−オキソ−2−o−トリル−1,2−ジヒドロイソキノリン−3−イル)メチル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−3−イル)−5−フルオロフェニルリン酸二水素4303(140mg、収率91%)を得た。
【0440】
(実施例9)選択化合物のIC50値
【0441】
【表3-1】
【0442】
【表3-2】
【0443】
【表3-3】
【0444】
【表4-1】
【0445】
【表4-2】
【0446】
【表4-3】
【0447】
【表4-4】
【0448】
【表4-5】
【0449】
【表4-6】
【0450】
【表4-7】
【0451】
【表4-8】
(実施例10)p110α/p85α、p110β/p85α、p110δ/p85αおよびp110γの発現および阻害アッセイ
クラスIのPI3−Kは、購入することができ(p110α/p85α、p110β/p85α、p110δ/p85αはUpstateから、p110γはSigmaから)、または過去に記載の通り発現させることができる(Knightら、2004年)。IC50値は、脂質キナーゼ活性のための標準のTLCアッセイ(以下に記載)またはハイスループット膜捕捉アッセイのいずれかを使用して測定される。キナーゼの反応は、キナーゼ、阻害剤(2%DMSO最終濃度)、バッファー(25mMのHEPES、pH7.4、10mMのMgCl2)および新しく超音波処理したホスファチジルイノシトール(100μg/ml)を含有する反応混合物を調製することによって実施される。反応は、10μCiのγ−32P−ATPを含有するATPを添加して、最終濃度10〜100μMにすることによって開始し、室温に5分間静置して進行させる。次いでTLC分析のために、1NのHCl105μlに次いでCHCl3:MeOH(1:1)160μlを添加することによって、反応を完了させる。二相混合物をボルテックスし、手短に遠心分離にかけ、CHClで事前にコーティングしたゲル搭載ピペットチップを使用して、有機相を新しい管に移す。この抽出物を、TLCプレート上にスポットし、n−プロパノール:1M酢酸の65:35溶液中で3〜4時間展開する。次いでTLCプレートを乾燥させ、リン酸イメージャー(phosphorimager)スクリーン(Storm、Amersham)に曝露させ、定量化する。各化合物について、キナーゼ活性を、試験した最高濃度(一般に200μM)からの2倍希釈である10〜12の阻害剤濃度で測定する。著しい活性を示す化合物について、IC50の決定を2〜4回反復し、報告値をこれらの独立な測定の平均値とする。
【0452】
PI3−K活性をアッセイするための他の市販のキットまたは系を利用することができる。市販のキットまたは系を使用して、それに限定されるものではないが、PI3−キナーゼα、β、δおよびγを含むPI3−Kの阻害剤および/またはアゴニストをスクリーニングすることができる。例示的な系は、Upstate製のPI3−キナーゼ(ヒト)HTRF(商標)アッセイである。このアッセイは、製造者によって提案されている手順に従って実施することができる。簡潔には、このアッセイは時間分解FRETアッセイであり、これはPI3−Kの活性によって形成されたPIP3産物を間接的に測定するものである。キナーゼ反応は、マイクロタイタープレート(例えば、384ウェルマイクロタイタープレート)内で実施される。総反応体積は、1ウェル当たり約20ulである。第1ステップでは、各ウェルに20%ジメチルスルホキシド中試験化合物を2ul入れ、最終濃度を2%DMSOにする。次に、1ウェル当たりキナーゼ/PIP2混合物約14.5ul(1×反応バッファーで希釈)を添加して、最終濃度をキナーゼ0.25〜0.3ug/mlおよび10uMのPIP2にする。プレートを封止し、室温で15分間インキュベートする。反応を開始するために、1ウェル当たりATP3.5ul(1×反応バッファーで希釈)を添加して、最終濃度を10uMのATPにする。プレートを封止し、室温で1時間インキュベートする。1ウェル当たり停止溶液5ulを添加することによって反応を停止し、次いで1ウェル当たり検出ミックス5ulを添加する。プレートを封止し、室温で1時間インキュベートし、次いで適切なプレートリーダーで読み取る。データを分析し、GraphPad Prism 5を使用してIC50を得る。
【0453】
(実施例11)Ablの発現および阻害アッセイ
Ablキナーゼに対する本発明の1つまたは複数の化合物の交差活性またはその欠如は、当技術分野で公知の任意の手順または以下に開示の方法に従って測定することができる。本明細書に記載の化合物を、25mMのHEPES、pH7.4、10mMのMgCl2、200μMのATP(2.5μCiのγ−32P−ATP)およびBSA0.5mg/mLを含むアッセイにおいて、組換え完全長AblまたはAbl(T315I)(Upstate)に対して3重にアッセイすることができる。最適化Ablペプチド基質EAIYAAPFAKKKを、ホスホアクセプター(phosphoacceptor)(200μM)として使用する。反応を、リン酸セルロースシート上にスポットすることによって完了させ、それを0.5%リン酸で洗浄する(約6回、それぞれ5〜10分)。シートを乾燥させ、移行した放射能を、リン酸イメージングによって定量化する。
【0454】
(実施例12)Hckの発現および阻害アッセイ
Hckキナーゼに対する本発明の1つまたは複数の化合物の交差活性またはその欠如は、当技術分野で公知の任意の手順または以下に開示の方法に従って測定することができる。本明細書に記載の化合物を、25mMのHEPES、pH7.4、10mMのMgCl2、200μMのATP(2.5μCiのγ−32P−ATP)およびBSA0.5mg/mLを含むアッセイにおいて、組換え完全長Hckに対して3重にアッセイすることができる。最適化Srcファミリーキナーゼペプチド基質EIYGEFKKKを、ホスホアクセプター(200μM)として使用する。反応を、リン酸セルロースシート上にスポットすることによって完了させ、それを0.5%リン酸で洗浄する(約6回、それぞれ5〜10分)。シートを乾燥させ、移行した放射能を、リン酸イメージングによって定量化する。
【0455】
(実施例13)インスリン受容体(IR)の発現および阻害アッセイ
IR受容体キナーゼに対する本発明の1つまたは複数の化合物の交差活性またはその欠如は、当技術分野で公知の任意の手順または以下に開示の方法に従って測定することができる。本明細書に記載の化合物を、25mMのHEPES、pH7.4、10mMのMgCl2、10mMのMnCl2、200μMのATP(2.5μCiのγ−32P−ATP)およびBSA0.5mg/mLを含むアッセイにおいて、組換えインスリン受容体キナーゼドメイン(Upstate)に対して3重にアッセイすることができる。ポリE−Y(Sigma、2mg/mL)を基質として使用する。反応を、ニトロセルロース上にスポットすることによって完了させ、それを1MのNaCl/1%リン酸で洗浄する(約6回、それぞれ5〜10分)。シートを乾燥させ、移行した放射能を、リン酸イメージングによって定量化する。
【0456】
(実施例14)Srcの発現および阻害アッセイ
Srcキナーゼに対する本発明の1つまたは複数の化合物の交差活性またはその欠如は、当技術分野で公知の任意の手順または以下に開示の方法に従って測定することができる。本明細書に記載の化合物を、25mMのHEPES、pH7.4、10mMのMgCl2、200μMのATP(2.5μCiのγ−32P−ATP)およびBSA0.5mg/mLを含むアッセイにおいて、組換え完全長SrcまたはSrc(T338I)に対して3重にアッセイすることができる。最適化Srcファミリーキナーゼペプチド基質EIYGEFKKKを、ホスホアクセプター(200μM)として使用する。反応を、リン酸セルロースシート上にスポットすることによって完了させ、それを0.5%リン酸で洗浄する(約6回、それぞれ5〜10分)。シートを乾燥させ、移行した放射能を、リン酸イメージングによって定量化する。
【0457】
(実施例15)DNA−PK(DNAK)の発現および阻害アッセイ
DNAKキナーゼに対する本発明の1つまたは複数の化合物の交差活性またはその欠如は、当技術分野で公知の任意の手順に従って測定することができる。DNA−PKは、Promegaから購入することができ、DNA−PKアッセイ系(Promega)を使用して、製造者の指示に従ってアッセイすることができる。
【0458】
(実施例16)mTORの発現および阻害アッセイ
mTorに対する本発明の1つまたは複数の化合物の交差活性またはその欠如は、当技術分野で公知の任意の手順または以下に開示の方法に従って測定することができる。本明細書に記載の化合物を、50mMのHEPES、pH7.5、1mMのEGTA、10mMのMgCl2、2.5mM、0.01%Tween、10μMのATP(2.5μCiのγ−32P−ATP)およびBSA3μg/mLを含むアッセイにおいて、組換えmTOR(Invitrogen)に対して試験することができる。ラット組換えPHAS−1/4EBP1(Calbiochem、2mg/mL)を基質として使用する。反応を、ニトロセルロース上にスポットすることによって完了させ、それを1MのNaCl/1%リン酸で洗浄する(約6回、それぞれ5〜10分)。シートを乾燥させ、移行した放射能を、リン酸イメージングによって定量化する。
【0459】
mTOR活性をアッセイするための他のキットまたは系が市販されている。例えば、本明細書に開示のmTORの阻害剤を試験するために、Invitrogen’s LanthaScreen(商標)キナーゼアッセイを使用することができる。このアッセイは、時間分解FRETプラットフォームであり、これはmTORキナーゼによって、GFP標識化4EBP1のリン酸化を測定するものである。キナーゼ反応は、白色384ウェルマイクロタイタープレートで実施する。総反応体積は、1ウェル当たり20ulであり、反応バッファーの組成は、50mMのHEPES、pH7.5、0.01%ポリソルベート20、1mMのEGTA、10mMのMnCl2および2mMのDTTである。第1ステップでは、20%ジメチルスルホキシド中試験化合物2ulを各ウェルに入れ、最終濃度を2%DMSOにする。次に、1ウェル当たり、反応バッファーで希釈したmTOR8ulを添加して、最終濃度を60ng/mlにする。反応を開始するために、1ウェル当たりATP/GFP−4EBP1混合物(反応バッファーで希釈する)10ulを添加して、最終濃度を10uMのATPおよび0.5uMのGFP−4EBP1にする。プレートを封止し、室温で1時間インキュベートする。1ウェル当たり、Tb−抗pT46 4EBP1抗体/EDTA混合物(TR−FRETバッファーで希釈)10ulを添加して、最終濃度を1.3nM抗体および6.7mMのEDTAにすることによって、反応を停止する。プレートを封止し、室温で1時間インキュベートし、次いでLanthaScreen(商標)TR−FRETに合わせて設定したプレートリーダーで読み取る。データを分析し、GraphPad Prism 5を使用してIC50を得る。
【0460】
(実施例17)血管内皮増殖受容体の発現および阻害アッセイ
VEGF受容体に対する本発明の1つまたは複数の化合物の交差活性またはその欠如は、当技術分野で公知の任意の手順または以下に開示の方法に従って測定することができる。本明細書に記載の化合物を、25mMのHEPES、pH7.4、10mMのMgCl2、0.1%のBME、10μMのATP(2.5μCiのμ−32P−ATP)およびBSA3μg/mLを含むアッセイにおいて、組換えKDR受容体キナーゼドメイン(Invitrogen)に対して試験することができる。ポリE−Y(Sigma、2mg/mL)を基質として使用する。反応を、ニトロセルロース上にスポットすることによって完了させ、それを1MのNaCl/1%リン酸で洗浄する(約6回、それぞれ5〜10分)。シートを乾燥させ、移行した放射能を、リン酸イメージングによって定量化する。
【0461】
(実施例18)Ephrin受容体B4(EphB4)の発現および阻害アッセイ
EphB4に対する本発明の1つまたは複数の化合物の交差活性またはその欠如は、当技術分野で公知の任意の手順または以下に開示の方法に従って測定することができる。本明細書に記載の化合物を、25mMのHEPES、pH7.4、10mMのMgCl2、0.1%のBME、10μMのATP(2.5μCiのμ−32P−ATP)およびBSA3μg/mLを含むアッセイにおいて、組換えEphrin受容体B4キナーゼドメイン(Invitrogen)に対して試験することができる。ポリE−Y(Sigma、2mg/mL)を基質として使用する。反応を、ニトロセルロース上にスポットすることによって完了させ、それを1MのNaCl/1%リン酸で洗浄する(約6回、それぞれ5〜10分)。シートを乾燥させ、移行した放射能を、リン酸イメージングによって定量化する。
【0462】
(実施例19)上皮増殖因子受容体(EGFR)の発現および阻害アッセイ
EGFRキナーゼに対する本発明の1つまたは複数の化合物の交差活性またはその欠如は、当技術分野で公知の任意の手順または以下に開示の方法に従って測定することができる。本明細書に記載の化合物を、25mMのHEPES、pH7.4、10mMのMgCl2、0.1%のBME、10μMのATP(2.5μCiのμ−32P−ATP)およびBSA3μg/mLを含むアッセイにおいて、組換えEGF受容体キナーゼドメイン(Invitrogen)に対して試験することができる。ポリE−Y(Sigma、2mg/mL)を基質として使用する。反応を、ニトロセルロース上にスポットすることによって完了させ、それを1MのNaCl/1%リン酸で洗浄する(約6回、それぞれ5〜10分)。シートを乾燥させ、移行した放射能を、リン酸イメージングによって定量化する。
【0463】
(実施例20)KITアッセイの発現および阻害アッセイ
KITキナーゼに対する本発明の1つまたは複数の化合物の交差活性またはその欠如は、当技術分野で公知の任意の手順または以下に開示の方法に従って測定することができる。本明細書に記載の化合物を、25mMのHEPES、pH7.4、10mMのMgCl2、1mMのDTT、10mMのMnCl2、10μMのATP(2.5μCiのμ−32P−ATP)およびBSA3μg/mLを含むアッセイにおいて、組換えKITキナーゼドメイン(Invitrogen)に対して試験することができる。ポリE−Y(Sigma、2mg/mL)を基質として使用する。反応を、ニトロセルロース上にスポットすることによって完了させ、それを1MのNaCl/1%リン酸で洗浄する(約6回、それぞれ5〜10分)。シートを乾燥させ、移行した放射能を、リン酸イメージングによって定量化する。
【0464】
(実施例21)RETの発現および阻害アッセイ
RETキナーゼに対する本発明の1つまたは複数の化合物の交差活性またはその欠如は、当技術分野で公知の任意の手順または以下に開示の方法に従って測定することができる。本明細書に記載の化合物を、25mMのHEPES、pH7.4、10mMのMgCl2、2.5mMのDTT、10μMのATP(2.5μCiのμ−32P−ATP)およびBSA3μg/mLを含むアッセイにおいて、組換えRETキナーゼドメイン(Invitrogen)に対して試験することができる。最適化Ablペプチド基質EAIYAAPFAKKKを、ホスホアクセプター(200μM)として使用する。反応を、リン酸セルロースシート上にスポットすることによって完了させ、それを0.5%リン酸で洗浄する(約6回、それぞれ5〜10分)。シートを乾燥させ、移行した放射能を、リン酸イメージングによって定量化する。
【0465】
(実施例22)血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)の発現および阻害アッセイ
PDGFRキナーゼに対する本発明の1つまたは複数の化合物の交差活性またはその欠如は、当技術分野で公知の任意の手順または以下に開示の方法に従って測定することができる。本明細書に記載の化合物を、25mMのHEPES、pH7.4、10mMのMgCl2、2.5mMのDTT、10μMのATP(2.5μCiのμ−32P−ATP)およびBSA3μg/mLを含むアッセイにおいて、組換えPDG受容体キナーゼドメイン(Invitrogen)に対して試験することができる。最適化Ablペプチド基質EAIYAAPFAKKKを、ホスホアクセプター(200μM)として使用する。反応を、リン酸セルロースシート上にスポットすることによって完了させ、それを0.5%リン酸で洗浄する(約6回、それぞれ5〜10分)。シートを乾燥させ、移行した放射能を、リン酸イメージングによって定量化する。
【0466】
(実施例23)FMS関連チロシンキナーゼ3(FLT−3)の発現および阻害アッセイ
FLT−3キナーゼに対する本発明の1つまたは複数の化合物の交差活性またはその欠如は、当技術分野で公知の任意の手順または以下に開示の方法に従って測定することができる。本明細書に記載の化合物を、25mMのHEPES、pH7.4、10mMのMgCl2、2.5mMのDTT、10μMのATP(2.5μCiのμ−32P−ATP)およびBSA3μg/mLを含むアッセイにおいて、組換えFLT−3キナーゼドメイン(Invitrogen)に対して試験することができる。最適化Ablペプチド基質EAIYAAPFAKKKを、ホスホアクセプター(200μM)として使用する。反応を、リン酸セルロースシート上にスポットすることによって完了させ、それを0.5%リン酸で洗浄する(約6回、それぞれ5〜10分)。シートを乾燥させ、移行した放射能を、リン酸イメージングによって定量化する。
【0467】
(実施例24)TEK受容体チロシンキナーゼ(TIE2)の発現および阻害アッセイ
TIE2キナーゼに対する本発明の1つまたは複数の化合物の交差活性またはその欠如は、当技術分野で公知の任意の手順または以下に開示の方法に従って測定することができる。本明細書に記載の化合物を、25mMのHEPES、pH7.4、10mMのMgCl2、2mMのDTT、10mMのMnCl2、10μMのATP(2.5μCiのγ−32P−ATP)およびBSA3μg/mLを含むアッセイにおいて、組換えTIE2キナーゼドメイン(Invitrogen)に対して試験することができる。ポリE−Y(Sigma、2mg/mL)を基質として使用する。反応を、ニトロセルロース上にスポットすることによって完了させ、それを1MのNaCl/1%リン酸で洗浄する(約6回、それぞれ5〜10分)。シートを乾燥させ、移行した放射能を、リン酸イメージングによって定量化する。
【0468】
(実施例25)B細胞活性化および増殖アッセイ
B細胞の活性化および増殖を阻害する1つまたは複数の対象化合物の能力を、当技術分野で公知の標準の手順に従って決定する。例えば、生存細胞の代謝活性を測定するインビトロ細胞増殖アッセイを確立する。アッセイは、Alamar Blue還元を使用して、96ウェルマイクロタイタープレートで実施する。Balb/c脾臓B細胞を、Ficoll−Paque(商標)PLUS勾配で精製し、その後MACS B細胞単離キット(Miletenyi)を使用して磁気細胞を分離する。細胞を、B細胞培地(RPMI+10%FBS+Penn/Strep+50uMのbME+5mMのHEPES)中、90ulとして細胞50,000個/ウェルで蒔く。本明細書に開示の化合物を、B細胞培地で希釈し、体積10ulで添加する。プレートを、37Cおよび5%CO(最終濃度0.2%DMSO)で30分間インキュベートする。次いで、LPS10ug/mlまたはF(ab’)2Donkey抗マウスIgM5ug/mlのいずれかと、2ng/mlの組換えマウスIL4を含有するB細胞刺激カクテル50ulを、B細胞培地に添加する。プレートを、37℃および5%COで72時間インキュベートする。体積15uLのAlamar Blue試薬を各ウェルに添加し、プレートを37Cおよび5%COで5時間インキュベートする。Alamar Blue蛍光物質(fluoresce)を、560Ex/590Emで読み取り、IC50またはEC50値を、GraphPad Prism 5を使用して算出する。
【0469】
(実施例26)腫瘍細胞系増殖アッセイ
腫瘍細胞系の増殖を阻害する1つまたは複数の対象化合物の能力を、当技術分野で公知の標準の手順に従って決定する。例えば、生存細胞の代謝活性を測定するために、インビトロ細胞増殖アッセイを実施することができる。アッセイは、Alamar Blue還元を使用して、96ウェルマイクロタイタープレートで実施する。ヒト腫瘍細胞系を、ATCC(例えば、MCF7、U−87MG、MDA−MB−468、PC−3)から得、T75フラスコ中で増殖集密させ、0.25%トリプシンでトリプシン処理し、腫瘍細胞培地(DMEM+10%FBS)で1回洗浄し、腫瘍細胞培地中、90ulとして細胞5,000個/ウェルで蒔く。本明細書に開示の化合物を、腫瘍細胞培地で希釈し、体積10ulで添加する。プレートを、37Cおよび5%COで72時間インキュベートする。体積10uLのAlamar Blue試薬を各ウェルに添加し、プレートを37Cおよび5%COで3時間インキュベートする。Alamar Blue蛍光物質を、560Ex/590Emで読み取り、IC50値を、GraphPad Prism 5を使用して算出する。
【0470】
(実施例27)インビトロ抗腫瘍活性
本明細書に記載の化合物を、ヒトおよびマウス腫瘍モデルのパネルで評価することができる。
【0471】
パクリタキセル不応性腫瘍モデル
1.臨床から得る卵巣癌モデル
この腫瘍モデルは、卵巣癌患者の腫瘍生検から確立する。腫瘍生検を、患者から取り出す。
【0472】
本明細書に記載の化合物を、2日毎×5回のスケジュールを使用して、段階的腫瘍を担持するヌードマウスに投与する。
【0473】
2.A2780Taxヒト卵巣癌異種移植(突然変異チューブリン)
A2780Taxは、パクリタキセルに耐性のあるヒト卵巣癌モデルである。これは、細胞をパクリタキセルおよびベラパミル、MDR拮抗薬(reversal agent)と共にインキュベートすることによって、感受性患者A2780系から得る。その耐性機構は、非MDR関連であることが示されており、βチューブリンタンパク質をコードする遺伝子における突然変異に起因するものである。
【0474】
本明細書に記載の化合物を、2日毎×5回のスケジュールで、段階的腫瘍を担持するマウスに投与することができる。
【0475】
3.HCT116/VM46ヒト結腸癌異種移植(多剤耐性)
HCT116/VM46は、感受性HCT116親系から発症したMDR耐性結腸癌である。ヌードマウスでインビボ増殖したHCT116/VM46は、パクリタキセルに対して一貫して高い耐性を示している。
【0476】
本明細書に記載の化合物を、2日毎×5回のスケジュールで、段階的腫瘍を担持するマウスに投与することができる。
【0477】
5.M5076マウス肉腫モデル
M5076は、本質的にインビボでパクリタキセルに不応性であるマウス線維肉腫である。
【0478】
本明細書に記載の化合物を、2日毎×5回のスケジュールで、段階的腫瘍を担持するマウスに投与することができる。
【0479】
本発明の1つまたは複数の化合物は、多剤耐性のヒト結腸癌異種移植HCT/VM46または本明細書に記載のモデルを含む当技術分野で公知の任意の他のモデルにおいて、他の治療剤と組み合わせてインビボで使用することができる。
【0480】
(実施例28)ミクロソーム安定性アッセイ
1つまたは複数の対象化合物の安定性を、当技術分野で公知の標準手順に従って決定する。例えば、1つまたは複数の対象化合物の安定性は、インビトロアッセイによって確立される。特に、肝臓からのマウス、ラットまたはヒトミクロソームと反応する場合の、1つまたは複数の対象化合物の安定性を測定するインビトロミクロソーム安定性アッセイが確立される。ミクロソームと化合物の反応は、1.5mLのエッペンドルフ管中で実施される。各管に、10.0mg/mlのNADPH0.1μL;20.0mg/mlのマウス、ラットまたはヒト肝臓ミクロソーム75μL;0.2Mリン酸緩衝液0.4μLおよびddHO425μLを入れる。陰性対照(NADPHなし)の管に、20.0mg/mlのマウス、ラットまたはヒト肝臓ミクロソーム75μL;0.2Mリン酸緩衝液0.4μLおよびddHO525μLを入れる。反応は、10.0mMの試験化合物1.0μLを添加することによって開始する。反応管を、37℃でインキュベートする。反応の0、5、10、15、30および60分において、冷却メタノール300μLを入れた新しいエッペンドルフ管に、サンプル100μLを収集する。サンプルを15,000rpmで遠心分離にかけて、タンパク質を除去する。遠心分離にかけたサンプルの上清を、新しい管に移す。ミクロソームと反応した後の安定な化合物の上清中濃度を、液体クロマトグラフィー/質量分析(LC−MS)によって測定する。
【0481】
(実施例29)血漿安定性アッセイ
血漿中の1つまたは複数の対象化合物の安定性を、当技術分野で公知の標準手順に従って決定する。例えば、Rapid Commun. Mass Spectrom.、10巻:1019〜1026頁参照。以下の手順は、ヒトの血漿を使用するHPLC−MS/MSアッセイであり、サル、イヌ、ラットおよびマウスを含む他の種も利用可能である。冷凍したヘパリン化ヒト血漿を冷却水浴中で解凍し、使用前に10分間、4℃において2000rpmでスピンする。原液400μMからの対象化合物を、事前に温めた一定分量の血漿に添加して、試験化合物5μMおよび0.5%DMSOを含有する最終アッセイ体積400μL(または半減期の決定のために800μL)を得る。反応物を、37℃で0分および60分間、または半減期の決定のために37Cで0、15、30、45および60分間、振とうしながらインキュベートする。インキュベーション混合物50μLを氷冷アセトニトリル200μLに移すことによって反応を停止し、5分間振とうすることによって混合する。サンプルを6000×gで15分間、4℃において遠心分離にかけ、上清120μLを取り出して清浄な管に入れる。次いでサンプルを蒸発乾固させ、HPLC−MS/MSによる分析のために提示する。
【0482】
所望の場合、1つまたは複数の対照または参照化合物(5μM)を、一方の化合物である低血漿安定性のプロポキシカインおよびもう一方の化合物である中程度の血漿安定性のプロパンテリン、これらの試験化合物と同時に試験する。
【0483】
サンプルを、アセトニトリル/メタノール/水(1/1/2、v/v/v)で再構成し、(RP)HPLC−MS/MSによって、選択された反応モニタリング(SRM)を使用して分析する。HPLC条件は、オートサンプラーを備えたバイナリLCポンプ、C12、2×20mmのミックスモードカラムおよび勾配プログラムからなる。分析物に対応するピーク領域を、HPLC−MS/MSによって記録する。60分後に残っている親化合物対時間0における残量の比をパーセントで表し、血漿安定性として報告する。半減期の決定の場合、半減期は、残っている化合物(%)対時間の対数曲線の最初の線形範囲の傾斜から推定し、一次速度則を推測する。
【0484】
(実施例30)化学安定性
1つまたは複数の対象化合物の化学安定性は、当技術分野で公知の標準の手順に従って決定する。以下に、対象化合物の化学安定性を確定するための例示的手順を詳説する。化学安定性のアッセイに使用される初期(default)バッファーは、pH7.4のリン酸緩衝食塩水(PBS)であるが、他の適切なバッファーを使用することができる。原液100μMからの対象化合物を、一定分量のPBSに添加して(二重に)、試験化合物5μMおよび1%DMSOを含有する最終アッセイ体積400μLを得る(半減期の決定のためには、サンプル総体積700μLを調製する)。反応物を、37℃で0分および24時間、振とうしながらインキュベートし、半減期の決定のために、サンプルを0、2、4、6および24時間インキュベートする。インキュベーション混合物100μLを氷冷アセトニトリル100μLにすぐに添加することによって反応を停止し、5分間ボルテックスする。次いでサンプルを、HPLC−MS/MSによる分析まで−20℃で保存する。所望の場合、問題とする対象化合物は24時間にわたってかなり加水分解されるので、対照化合物またはクロラムブシルなどの参照化合物(5μM)を、この化合物と同時に試験する。サンプルを、(RP)HPLC−MS/MSによって、選択された反応モニタリング(SRM)を使用して分析する。HPLC条件は、オートサンプラーを備えたバイナリLCポンプ、C12、2×20mmのミックスモードカラムおよび勾配プログラムからなる。分析物に対応するピーク領域を、HPLC−MS/MSによって記録する。24時間後に残っている親化合物対時間0における残量の比をパーセントで表し、化学安定性として報告する。半減期の決定の場合、半減期は、残っている化合物(%)対時間の対数曲線の最初の線形範囲の傾斜から推定し、一次速度則を推測する。
【0485】
(実施例31)Aktキナーゼアッセイ
それに限定されるものではないが、L6筋芽細胞、B−ALL細胞、B細胞、T細胞、白血病細胞、骨髄細胞、p190形質導入細胞、philladelphiaクロモソーム陽性細胞(Ph+)およびマウス胎児線維芽細胞を含むAkt/mTOR経路の成分を含む細胞を、一般に、ウシ胎児血清および/または抗生物質を補充したDMEMなどの細胞増殖培地中で増殖させ、培養密度まで増殖させる。
【0486】
Akt活性化に対する本明細書に開示の1つまたは複数の化合物の効果を比較するために、前記細胞を終夜血清不足にし、本明細書に開示の1つまたは複数の化合物または約0.1%のDMSOで約1分間〜約1時間インキュベートした後、インスリン(例えば100nM)で約1分間〜約1時間刺激を与える。細胞を、ドデシル硫酸ナトリウムなどの洗浄剤およびプロテアーゼ阻害剤(例えばPMSF)を含有する氷冷溶解バッファーに入れることによって溶解する。細胞を溶解バッファーと接触させた後、溶液を手短に超音波分解し、遠心分離によって清浄にし、SDS−PAGEによって分離し、ニトロセルロースまたはPVDFに移し、ホスホ−Akt S473、ホスホ−Akt T308、Aktおよびβ−アクチンに対する抗体(Cell Signaling Technologies)を使用して、免疫ブロッティングする。
【0487】
結果は、本開示の1つまたは複数の化合物が、S473においてAktのインスリン刺激性リン酸化を阻害することを示す。あるいは、本明細書に開示の幾つかの化合物はさらに、T308においてAktのインスリン刺激性リン酸化を阻害する。かかるクラスの化合物は、ラパマイシンよりも効果的にAktを阻害することができ、mTORC2阻害剤またはPI3KもしくはAktなどの上流キナーゼの阻害剤であることを示すことができる。
【0488】
(実施例32)血中のキナーゼシグナル伝達
PI3K/Akt/mTorシグナル伝達は、phosflow法(Methods Enzymol.2007年;434:131〜54頁)を使用して血球中で測定する。この方法の利点は、それが生来単一細胞アッセイであり、したがって集団平均ではなく細胞の異種性を検出し得ることである。これによって、他のマーカーによって定義された様々な集団におけるシグナル伝達状態を同時に区別(dinstinction)することができる。Phosflowは、かなり定量的でもある。本明細書に開示の1つまたは複数の化合物の効果を試験するために、未分化脾細胞または末梢血単核細胞を抗CD3で刺激して、T細胞受容体シグナル伝達を開始する。次いで細胞を固定し、表面マーカーおよび細胞内リンタンパク質のために染色する。本明細書に開示の阻害剤は、Akt−S473およびS6の抗CD3媒介性リン酸化を阻害する一方、ラパマイシンはS6リン酸化を阻害し、試験条件下でAktリン酸化を強化すると予期される。
【0489】
同様に、一定分量の全血を、様々な濃度のビヒクル(例えば0.1%DMSO)またはキナーゼ阻害剤で15分間インキュベートした後、抗κ軽鎖抗体(Fab’2フラグメント)を使用して刺激を与えて、T細胞受容体(TCR)(抗CD3と2次抗体)またはB細胞受容体(BCR)を架橋する。約5分および15分後、サンプルを固定し(例えば、冷却した4%パラホルムアルデヒド)、phosflowのために使用する。表面染色を用いて、当技術分野で公知の細胞表面マーカーを対象とした抗体を使用して、TおよびB細胞を区別する。次いで、AktおよびS6などのキナーゼ基質のリン酸化レベルを、固定細胞をこれらのタンパク質のリン酸化アイソフォームに特異的な標識化抗体でインキュベートすることによって測定する。次いで、細胞集団をフローサイトメトリーによって分析する。
【0490】
(実施例33)コロニー形成アッセイ
p190BCR−Ablレトロウイルスで新しく形質転換したマウスの骨髄細胞(本明細書では、p190形質導入細胞と呼ぶ)を、約7日間、約30%血清中組換えヒトIL−7を含むM3630メチルセルロース培地中、様々な薬物の組合せの存在下で蒔き、形成したコロニーの数を、顕微鏡下で目視検査によって計数する。
【0491】
あるいは、ヒト末梢血単核細胞を、初期診断または初期再発時のPhiladelphiaクロモソーム陽性(Ph+)および陰性(Ph−)の患者から得る。生存細胞を単離し、CD19+CD34+B細胞前駆体のために濃縮する。終夜液体培養した後、サイトカイン(IL−3、IL−6、IL−7、G−CSF、GM−CSF、CF、Flt3リガンドおよびエリスロポエチン)および本開示のいずれかの化合物と組み合わせた様々な濃度の公知の化学療法剤を補充したmethocult GF+H4435、Stem Cell Tehcnologies)に、細胞を蒔く。コロニーを、顕微鏡検査によって12〜14日後に計数する。この方法は、付加的または相乗的活性の証拠について試験するために使用することができる。
【0492】
(実施例34)白血病細胞に対するキナーゼ阻害剤のインビボ効果
レシピエントである雌マウスに、γ源からそれぞれ約5Gyで、約4時間離して2回の投与で致死的放射線を照射する。2回目の放射線投与の約1時間後、マウスに約1×10個の白血病細胞(例えば、Ph+ヒトもしくはマウス細胞、またはp190形質導入骨髄細胞)を静脈注射する。これらの細胞を、3〜5週齢のドナーマウスからの放射線防護線量の約5×10個の正常な骨髄細胞と一緒に投与する。レシピエントに、水に入れた抗生物質を与え、毎日モニターする。約14日後に罹患したマウスを安楽死させ、リンパ器官を分析のために回収する。キナーゼ阻害剤の処理は、白血病細胞注射の約10日後に開始し、マウスが罹患するまでまたは移植後最大約35日まで、毎日継続する。阻害剤は、経口洗浄によって与える。
【0493】
末梢血液細胞を、約10日目(処理前)および安楽死時(処理後)に収集し、標識化抗hCD4抗体と接触させ、フローサイトメトリーによって計数する。この方法を使用して、試験条件下で、公知の化学療法剤(例えばGleevec)のみを用いた処理と比較して、公知の化学療法剤と組み合わせた本明細書に開示の1つまたは複数の化合物の相乗効果によって、白血病血球計数が著しく低減することを示すことができる。
【0494】
(実施例35)狼瘡疾患のモデルマウスの処理
B細胞におけるPI3Kシグナル伝達に対抗する阻害性受容体FcγRIIbをもたないマウスは、高い浸透度の狼瘡を発症する。FcγRIIbノックアウトマウス(R2KO、Jackson Labs)は、幾人かの狼瘡の患者がFcγRIIbの発現または機能の低下を示す場合、ヒト疾患の有効なモデルとみなされる(S. BollandおよびJ.V. Ravtech 2000年、Immunity 12巻:277〜285頁)。
【0495】
R2KOマウスは、月齢約4〜6カ月以内に、抗核抗体、糸球体腎炎およびタンパク尿を伴って狼瘡様疾患を発症する。これらの実験のために、ラパマイシン類似体RAD001(LC Laboratoriesから利用可能)をベンチマーク化合物として使用し、経口投与する。この化合物は、B6.Sle1z.Sle3zモデルにおける狼瘡症候を緩和することが示されている(T. Wuら、J. Clin Invest.117巻:2186〜2196頁)。
【0496】
R2KO、BXSBまたはMLR/lprなどの狼瘡疾患モデルマウスを、月齢約2カ月において約2カ月処理する。マウスに、ビヒクル、RAD001を約10mg/kgまたは本明細書に開示の化合物を約1mg/kg〜約500mg/kgの用量で投与する。およそ試験期間の間中、血液および尿サンプルを得、抗核抗体(血清の希釈物中)またはタンパク質濃度(尿中)について試験する。血清を、ELISAによって、抗ssDNAおよび抗dsDNA抗体についても試験する。動物を60日目に安楽死させ、脾臓重量および腎臓疾患を測定するために、組織を回収する。糸球体腎炎を、H&Eで染色した腎臓切片で評価する。処理停止後約2カ月間、同じエンドポイントを使用して他の動物を試験する。
【0497】
当技術分野で確立されているこのモデルを使用して、本明細書に開示のキナーゼ阻害剤が、狼瘡疾患モデルマウスにおける狼瘡症候の発症を抑制または遅延し得ることを示すことができる。
【0498】
(実施例36)マウス骨髄移植アッセイ
雌のレシピエントマウスに、γ線源から致死的放射線を照射する。放射線投与の約1時間後、初期継代のp190形質導入培養物から約1×106個の白血病細胞をマウスに注射する(例えば、Cancer Genet Cytogenet.2005年8月、161巻(1号):51〜6頁に記載の通り)。これらの細胞は、3〜5週齢のドナーマウスからの、放射線防護線量の約5×106個の正常な骨髄細胞と一緒に投与される。レシピエントに、抗体を水に入れて与え、毎日モニターする。約14日後に罹患したマウスを安楽死させ、フローサイトメトリーおよび/または磁気濃縮(magnetic enrichment)のために、リンパ器官を回収する。処理は、およそ10日目に開始し、マウスが罹患するまでまたは移植後最長約35日後まで、毎日継続する。薬物を強制経口(p.o.)によって与える。パイロット実験では、治癒性はないが、白血病の発症を約1週間以下遅延する用量の化学治療剤を同定し、対照をビヒクル処理し、またはこのモデルにおける白血病誘発を遅延するが治癒しないことが既に示されている化学療法剤(例えば、イマチニブ約70mg/kg毎日2回)で処理する。第1相では、eGFPを発現するp190細胞を使用し、死後分析は、骨髄、脾臓およびリンパ節(LN)における白血病細胞のパーセンテージのフローサイトメトリーによる計数に限定される。第2相では、ヒトCD4の無尾形態を発現するp190細胞を使用し、死後分析は、hCD4+脾臓からの細胞を磁気分類し、その後非常に重要なシグナル伝達エンドポイントであるpAkt−T308およびS473;pS6およびp4EBP−1の免疫ブロット分析を行うことを含む。免疫ブロット検出のための対照として、分類した細胞を、溶解前の本開示の阻害剤のキナーゼ阻害剤の存在下、またはそれなしにインキュベートする。場合によって「phosflow」を使用して、事前の分類なしに、hCD4依存性細胞におけるpAkt−S473およびpS6−S235/236を検出する。これらのシグナル伝達試験は、例えば薬物処理したマウスが35日目の時点で臨床的白血病を発症していなかった場合に特に有用である。生存についてのカプラン−マイヤープロットを作成し、当技術分野で公知の方法に従って統計的分析を実施する。p190細胞からの結果を、別個に累積的に分析する。
【0499】
末梢血のサンプル(100〜200μl)を、処理開始の直前の10日目に開始して毎週全てのマウスから得る。血漿を、薬物濃度測定のために使用し、細胞を白血病マーカー(eGFPまたはhCD4)および本明細書に記載のシグナル伝達バイオマーカーについて分析する。
【0500】
当技術分野で公知のこの一般的アッセイを使用して、有効治療量の本明細書に開示の化合物が、白血病細胞の増殖を阻害するために使用し得ることを示すことができる。
【0501】
(実施例37)TNP−Ficoll T細胞独立性B細胞活性化アッセイ
T細胞独立性抗体産生を抑制する本発明の化合物の作用を試験するために、TNP−Ficoll B細胞活性化アッセイを本明細書に記載の通り使用した。本発明の化合物を、適切なビヒクル(例えば、5%1−メチル−2−ピロリジノン、85%ポリエチレングリコール400、10%solutor)に溶解した。化合物は、4〜10週齢のマウスにTNP−Ficoll処理する約1時間前に経口投与した。B細胞活性化に対する化合物の作用を研究するために、マウスの組を以下の表に従って群に分けた。
【0502】
【表5】
群1の4匹の動物および群2〜7の8匹の動物を、7日目の最終化合物投与後に、CO2中に2時間置いて安楽死させた。血液を、心穿刺(cadio−puncture)によってすぐに収集し、37℃で1時間保持して凝固させ、その後4℃で終夜インキュベートして、凝固を縮小させた。翌日デカントし、3000rpmで10分間遠心分離にかけることによって血清を収集した。次いで、収集した血清を、その後の分析のために−80℃で冷凍した。
【0503】
血清サンプルを、本明細書に記載の通り、ELISAによって抗TNP抗体価について分析した。TNP−BSAを、Nunc Maxisorbマイクロタイタープレート上に、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中10μg/mlの濃度において100μl/ウェルでコーティングした。Maxisorbプレートを室温で1.5時間インキュベートし、溶液を除去した。ブロッキングバッファー(例えば、PBS中1%BSA)200μl/ウェルを各ウェルに添加し、室温で1時間インキュベートした。プレートを、200μl/ウェルのPBS0.05%Tween−20(洗浄バッファー)で1回洗浄した。各マウスからの血清のブロッキングバッファー中1:2希釈物を、マイクロタイタープレートの第1カラム(1)の各ウェルに添加した。次いで、カラム1の各ウェルの血清を、ブロッキングバッファーで3倍希釈し、カラム2に添加した。カラム2の各ウェル中の血清を、ブロッキングバッファーで3倍希釈し、カラム3に添加した。この手順を、マイクロタイタープレートの12のカラムで反復した。マイクロタイタープレートを室温で1時間インキュベートした。プレートから血清を除去し、プレートを洗浄バッファーで3回洗浄した。ブロッキングバッファーで1:250希釈したヤギ抗マウスIgG3−HRP100μl/ウェルを各ウェルに添加し、室温で1時間インキュベートした。抗マウスIgG3−HRPをマイクロタイタープレートから除去し、プレートを洗浄バッファーで6回洗浄した。HRP基質(ABTS溶液200μl+30%H2O2+クエン酸バッファー10ml)を、100μl/ウェルで各ウェルに添加し、暗室で2〜20分インキュベートし、抗TNP IgG3の量を、分光光度法によって405nmで決定した。同様に、抗TNP IgGおよび全ての抗TNP Abを、それぞれ抗マウスIgM−HRPおよび抗マウスIg−HRPを使用して決定した。
【0504】
図2に示した結果はさらに、試験化合物#7および#53が、各条件下でビヒクル対照マウスと比較して、30mg/kgの用量レベルでIgG3レベルをそれぞれ3.4および6.5倍低減したことを示す。図2はさらに、化合物#53が、試験条件下でビヒクル対照マウスと比較して、60mg/kgの用量レベルでIgG3レベルを29.9倍低減したことを示す。
【0505】
(実施例38)ラット発症型タイプIIコラーゲン誘発性関節炎アッセイ
自己免疫疾患である関節炎に対する本発明の化合物の作用を研究するために、コラーゲン誘発性発症型関節炎モデルを使用した。雌のLewisラットに、0日目にコラーゲンを注射した。ウシタイプIIコラーゲンを、0.01N酢酸中4mg/ml溶液として調製した。等体積のコラーゲンおよびフロイント不完全アジュバントを、乳化材料のビーズが水中でその形態を保持するまで手動で混合することによって、乳化させた。各げっ歯類に、それぞれの注射時間において混合物300μlを注射し、背部の3つの皮下部位にわたって展開した。
【0506】
経口化合物投与を0日目に開始し、ビヒクル(5%NMP、85%PEG400、10%Solutol)またはビヒクル中の本発明の化合物または対照(例えばメトトレキサート)を、毎日12時間間隔で16日にわたって継続した。ラットを、0、3、6、9〜17日目に秤量し、足首のノギス測定を9〜17日目に行った。最終体重を量り、次いで動物を17日目に安楽死させた。安楽死させた後、血液を抜き、後脚および膝を取り出した。血液を、薬物動態実験ならびに抗タイプIIコラーゲン抗体ELISAアッセイのためにさらに処理した。後足を秤量し、次いで膝を10%ホルマリン中で保存した。続いて、足および膝を顕微鏡観察(microcopy)のために処理した。肝臓、脾臓および胸腺も秤量した。坐骨神経を、組織病理のために準備した。
【0507】
膝および足首関節を1〜2日間固定し、4〜5日間脱灰した。足首関節を縦半分に切断し、膝を前額面に沿って半分に切断した。次いで関節を処理し、包埋し、切片化し、トルイジンブルーで染色した。関節のスコア化を、以下の基準に従って行った。
【0508】
膝および足首の炎症
0=正常
1=滑膜/関節周囲組織における炎症細胞の最小限の浸潤
2=軽度の浸潤
3=中等度の浮腫を伴う中等度の浸潤
4=顕著な浮腫を伴う顕著な浸潤
5=重症の浮腫を伴う重症の浸潤
足首パンヌス
0=正常
1=軟骨および軟骨下骨におけるパンヌスの最小限の浸潤
2=軽度の浸潤(辺縁帯において脛骨または足根骨の<1/4)
3=中等度の浸潤(辺縁帯において脛骨または小足根骨の1/4〜1/3が罹患)
4=顕著な浸潤(辺縁帯において脛骨または足根骨の1/2〜3/4が罹患)
5=重症の浸潤(辺縁帯において脛骨または足根骨の>3/4が罹患、全体構造の重症の捻挫)
膝パンヌス
0=正常
1=軟骨および軟骨下骨におけるパンヌスの最小限の浸潤
2=軽度の浸潤(脛骨または大腿骨の表面または軟骨領域の最大1/4にわたって拡大)
3=中等度の浸潤(脛骨または大腿骨の表面または軟骨領域の>1/4かつ<1/2にわたって拡大)
4=顕著な浸潤(脛骨または大腿骨表面の1/2〜3/4にわたって拡大)
5=重症の浸潤(表面の>3/4に拡大)
軟骨損傷(足首、小足根骨重視)
0=正常
1=最小限=明らかな軟骨細胞喪失またはコラーゲン破壊がない、トルイジンブルー染色の最小限から軽度の喪失
2=軽度=限局性の軽度(表在性)軟骨細胞喪失および/またはコラーゲン破壊がある、トルイジンブルー染色の軽度喪失
3=中等度=多源性であり中等度の(中間帯域までの深度)軟骨細胞喪失および/またはコラーゲン破壊があり、小足根骨が1/2〜3/4の深度まで罹患した、トルイジンブルー染色の中等度の喪失
4=顕著=多源性であり顕著な(深部帯域までの深度)軟骨細胞喪失および/またはコラーゲン破壊があり、1つまたは複数の小足根骨が軟骨の全層喪失を有する、トルイジンブルー染色の顕著な喪失
5=重症=多源性であり重症の(タイドマークまでの深度)軟骨細胞喪失および/またはコラーゲン破壊がある、トルイジンブルー染色の重症のびまん性喪失
軟骨損傷(膝、大腿骨顆重視)
0=正常
1=最小限=明らかな軟骨細胞喪失またはコラーゲン破壊がない、トルイジンブルー染色の最小限から軽度の喪失
2=軽度=限局性の軽度(表在性)軟骨細胞喪失および/またはコラーゲン破壊がある、トルイジンブルー染色の軽度喪失
3=中等度=多源性からびまん性の中等度の(中間帯域までの深度)軟骨細胞喪失および/またはコラーゲン破壊がある、トルイジンブルー染色の中等度の喪失
4=顕著=多源性からびまん性の顕著な(深部帯域までの深度)軟骨細胞喪失および/またはコラーゲン破壊があり、あるいは一方の大腿骨表面が完全にまたはほぼ完全に喪失している、トルイジンブルー染色の顕著な喪失
5=重症=両方の大腿骨および/または脛骨に多源性であり重症の(タイドマークまでの深度)軟骨細胞喪失および/またはコラーゲン破壊がある、トルイジンブルー染色の重症のびまん性喪失
骨吸収(足首)
0=正常
1=最小限=低倍率では容易に明らかにならない小領域の再吸収、まれに破骨細胞
2=軽度=低倍率では容易に明らかにならないより多数の領域の再吸収、より多数の破骨細胞、辺縁帯において再吸収された脛骨または足根骨<1/4
3=中等度=皮質の全層欠陥のない髄質骨梁および皮質骨の明らかな再吸収、幾らかの髄質骨梁の喪失、低倍率で明らかな病変、より多数の破骨細胞、辺縁帯において脛骨または足根骨の1/4〜1/3が罹患
4=顕著=皮質骨の全層欠陥、しばしば残りの皮質表面のプロファイルの捻挫を伴う、髄様骨の顕著な喪失、多数の破骨細胞、辺縁帯において脛骨または足根骨の1/2〜3/4が罹患
5=重症=皮質骨の全層欠陥、しばしば残りの皮質表面のプロファイルの捻挫を伴う、髄様骨の顕著な喪失、多数の破骨細胞、辺縁帯において脛骨または足根骨の>3/4が罹患、全体構造の重症の捻挫
骨吸収(膝)
0=正常
1=最小限=低倍率では容易に明らかにならない小領域の再吸収、まれに破骨細胞
2=軽度=より多数の領域の再吸収、脛骨または大腿骨表面(内側または外側)の1/4に及ぶ軟骨下骨の明らかな喪失
3=中等度=脛骨または大腿骨表面(内側または外側)の>1/4かつ<1/2に及ぶ軟骨下骨の明らかな再吸収
4=顕著=脛骨または大腿骨表面(内側または外側)の≧1/2かつ<3/4に及ぶ軟骨下骨の明らかな再吸収
5=重症=脛骨または大腿骨表面(内側または外側)の>3/4に及ぶ破壊による全体の関節の捻挫
身体/足の重量の統計的分析、足のAUCパラメータおよび病理組織学的パラメータを、スチューデントのt試験または他の適切な試験(ANOVAと事後試験)を使用して、有意水準5%の有意性の組を用いて評価した。足の重量およびAUCの阻害パーセントを、以下の式を使用して算出した。
%阻害=A−B/A×100
A=平均疾患対照−平均正常
B=平均処理−平均正常
図3に示した結果は、試験条件下での、ラット発症型タイプIIコラーゲン誘発性関節炎モデルにおける平均足首直径に対する、12時間間隔での10、30および60mg/kgの用量の化合物#53の経時的作用を示す。ビヒクルのみの対照またはメトトレキサート対照に対して、本発明の化合物は、関節炎誘発性の足首直径増大の有意な経時的低減を示した。
【0509】
図4に示した結果は、試験条件下での、前述の炎症、パンヌス、軟骨損傷および骨再吸収のカテゴリーにおける足首の組織病理に対する化合物#7および#53の作用を示す。結果は、試験条件下での本発明の化合物(即ち化合物#53)の1つによる、1つまたは複数のカテゴリーにおける有意な低減を示している。図4はさらに、試験条件下での60mg/kgにおける本発明の化合物(即ち化合物#53)の1つについて、足首の組織病理のあらゆるカテゴリーにおける統計的に有意な低減が見られることを示している。これによって、本発明の1つまたは複数の化合物が、関節炎病状の治療および低減に有用となり得ることが示される。
【0510】
図5に示した結果は、試験条件下での膝の組織病理に対する化合物#7および#53の作用を示す。結果は、膝の組織病理における用量依存性低減を示している。これによって、本発明の1つまたは複数の化合物が、関節炎病状の治療および低減に有用となり得ることが示される。
【0511】
図6に示した結果は、試験条件下での血清抗タイプIIコラーゲンレベルに対する化合物#7および#53の作用を示す。結果はさらに、化合物#53について、10、20および60mg/kgの用量の血清抗タイプIIコラーゲンレベルで有意な低減を示しており、これは、本発明の1つまたは複数の化合物が関節炎病状の治療および低減に有用となり得るだけでなく、その自己免疫反応の阻害に有用となり得ることを示している。
【0512】
図7に示した結果は、試験条件下での平均足首直径に対する、12時間間隔での10、30および60mg/kgの用量の化合物#7の経時的作用を示す。ビヒクルのみの対照またはメトトレキサート対照に対して、化合物は、試験条件下で関節炎誘発性の足首直径増大の経時的な低減を示した。
【0513】
(実施例39)ラットで確立されたタイプIIコラーゲン誘発性関節炎アッセイ
ラットにおいて7日で確立されたタイプIIコラーゲン誘発性関節炎の炎症、軟骨破壊および骨再吸収を阻害する、本発明の化合物の用量反応性の有効性を調べるために、化合物を6日間毎日または毎日2回、経口投与した。
【0514】
雌のLewisラットを麻酔し、調製したコラーゲン注射を与え、前述の通り0日目に投与した。6日目に動物を麻酔し、第2のコラーゲン注射を与えた。正常な(疾患前)右および左足首関節のノギス測定を、9日目に実施した。10〜11日目に関節炎が一般に生じ、ラットを処理群に無作為化した。無作為化は、足首関節腫脹が明らかに確立し、両側性疾患の十分な証拠が見られた後に実施した。
【0515】
動物を研究登録に選択した後、経口経路によって処理を開始した。動物に、毎日2回または毎日1回(それぞれBIDまたはQD)、ビヒクル、対照(Enbrel)または化合物を与えた。投与は、経口溶剤に合わせて2.5ml/kg(BID)または5ml/kg(QD)の体積を使用して1〜6日目に施用した。ラットを、関節炎の確立後1〜7日目に秤量し、足首のノギス測定を毎日行った。最終体重を7日目に量り、動物を安楽死させた。
【0516】
図8に示した結果は、試験条件下で毎日1回投与した化合物53#の、平均足首直径増大の有意な経時的低減を示す。図9の結果はさらに、試験条件下で毎日2回投与した化合物53#の、平均足首直径増大の有意な経時的低減を示す。これによって、本発明の化合物が、関節炎などの自己免疫疾患の治療に有用となり得ることが示される。
【0517】
(実施例40)アジュバント誘発性関節炎アッセイ
ラットの髄腔内カテーテル法
イソフルランで麻酔したLewisラット(200〜250g)に、髄腔内(IT)カテーテルを移植した。6日の回復期間後、感覚障害または運動障害を有すると思われた動物(総数の5%未満)を除く全ての動物を実験に使用した。IT投与について、薬物または食塩水10μlに次いで等張食塩水10μlを、カテーテルを介して注射した。
アジュバントによる関節炎および薬物処理
Lewisラットを、カテーテル移植の数日後0日目に、尾の付け根に完全フロイントアジュバント(CFA)0.1mlで免疫を付与した(n=6/群)。薬物(例えば、本発明の1つもしくは複数の化合物またはビヒクル)処理を、一般に8日目に開始し、20日目まで毎日継続した。関節炎の臨床徴候は、一般に10日目に始まり、足の膨張を水置換性プレチスモメトリー(plethysmometry)によって1日置きに決定した。
【0518】
指示された投与レジメンの下での足体積の平均変化によって図10に示した結果は、化合物#53が、このアジュバント誘発性関節炎モデル系において測定されたように、試験条件下で、平均足体積増大において用量依存性の低減を示すことを示している。これらの結果は、本発明の化合物の1つまたは複数が、本明細書に記載の疾患または状態の1つまたは複数の治療に有用となり得ることを示している。
【0519】
図11に示した結果は、減量がないことによって測定されたように、化合物#53が試験条件下で毒性または他の副作用を示さないことを示している。
【0520】
(実施例41)げっ歯類薬物動態アッセイ
本発明の化合物の薬物動態を研究するために、4〜10週齢のマウスの組を以下の表に従って群に分ける。
【0521】
【表6】
本発明の化合物を、適切なビヒクル(例えば、5%1−メチル−2−ピロリジノン、85%ポリエチレングリコール400、10%Solutor)に溶解し、毎日12時間間隔で経口投与する。全ての動物を、最終化合物の投与後に、CO2中に2時間置いて安楽死させる。血液をすぐに収集し、血漿単離のために氷上で維持する。血漿を、10分間5000rpmで遠心分離にかけることによって単離する。回収した血漿を、薬物動態検出のために冷凍する。
【0522】
結果は、本発明の化合物の吸収、分布、代謝、排出および毒性などの薬物動態パラメータを示すと予期される。
【0523】
(実施例42)Basotestアッセイ
baseotestアッセイは、Orpegen Pharma Basotest試薬キットを使用して実施する。ヘパリン化全血を、試験化合物または溶媒で、37Cにおいて20分間事前インキュベートする。次いで血液を、アッセイキット刺激バッファー(反応のための一次細胞に対する)に次いでアレルゲン(イエダニ抽出物または草抽出物)で、20分間インキュベートする。脱顆粒過程は、血液サンプルを氷上でインキュベートすることによって停止する。次いで、細胞を抗IgE−PEで標識化して、好塩基性顆粒球を検出し、抗gp53−FITCで標識化して、gp53(活性化した好塩基球上で発現する糖タンパク質)を検出する。染色後、溶解溶液を添加することによって赤血球を溶解する。細胞を洗浄し、フローサイトメトリーによって分析する。化合物7および53は、このアッセイで試験した場合、マイクロモル以下の範囲の好塩基性顆粒球のアレルゲン誘発性活性化を阻害する。
【0524】
(実施例43)PI3Kδ阻害剤およびIgE産生または活性を阻害する薬剤の併用
本発明の化合物は、IgE産生または活性を阻害する薬剤と併用投与される場合、相乗的または付加的有効性を示すことができる。IgE産生を阻害する薬剤には、例えば、TEI−9874、2−(4−(6−シクロヘキシルオキシ−2−ナフチルオキシ)フェニルアセトアミド)安息香酸、ラパマイシン、ラパマイシン類似体(即ちラパログ)、TORC1阻害剤、TORC2阻害剤ならびにmTORC1およびmTORC2を阻害する任意の他の化合物の1つまたは複数が含まれる。IgE産生を阻害する薬剤には、例えば、オマリズマブおよびTNX−901などの抗IgE抗体が含まれる。
【0525】
PI3Kδを阻害できる対象化合物の1つまたは複数は、自己免疫障害および炎症性障害(AIID)、例えば関節リウマチの治療に有効である。化合物のいずれかが望ましくないレベルのIgE産生を生じる場合、該化合物とIgE産生またはIgE活性を阻害する薬剤の併用投与を選択することができる。さらに、本発明のPI3KδまたはPI3Kδ/γ阻害剤とmTOR阻害剤の併用投与は、PI3K経路の阻害強化によって相乗効果を示すこともできる。それに限定されるものではないが、(a)インビトロB細胞抗体産生アッセイ、(b)インビボTNPアッセイおよび(c)げっ歯類コラーゲン誘発性関節炎モデルを含む、様々なインビボおよびインビトロモデルを使用して、AIIDに対するかかる併用治療の作用を確立することができる。
【0526】
(a)B細胞アッセイ
マウスを安楽死させ、脾臓を取り出し、ナイロンメッシュを介して分散させて、単一細胞懸濁液を生成する。脾細胞を洗浄し(浸透圧ショックによって赤血球を除去した後)、抗CD43および抗Mac−1抗体結合マイクロビーズ(Miltenyi Biotec)でインキュベートする。ビーズに結合した細胞を、磁気細胞分類デバイスを使用して、未結合細胞から分離する。磁化カラムによって望ましくない細胞を保持し、静止B細胞を流水式で収集する。精製したB細胞に、リポ多糖または抗CD40抗体およびインターロイキン4で刺激を与える。刺激を受けたB細胞を、ビヒクルのみで、または化合物53などの本発明のPI3Kδ阻害剤で、ラパマイシン、ラパログまたはmTORC1/C2阻害剤などのmTOR阻害剤を伴って、またはそれなしに処理する。結果は、mTOR阻害剤(例えばラパマイシン)のみの存在下で、IgGおよびIgE反応に対する実質的効果が殆どないか全くないことを示すと予期される。しかし、PI3KδおよびmTOR阻害剤の存在下では、B細胞は、ビヒクルのみで処理したB細胞と比較してIgG反応の低減を示し、B細胞は、PI3Kδ阻害剤のみで処理したB細胞と比較してIgE反応の低減を示すことが予期される。
【0527】
(b)TNPアッセイ
マウスを、TNP−FicollまたはTNP−KHLで免疫付与し、ビヒクル、PI3Kδ阻害剤、例えば本発明の化合物53、mTOR阻害剤、例えばラパマイシン、またはラパマイシンなどのmTOR阻害剤と組み合わせたPI3Kδ阻害剤で処理する。抗原特異的血清IgEを、ELISAによって、TNP−BSAでコーティングしたプレートおよびアイソタイプの特異的標識化抗体を使用して測定する。mTOR阻害剤のみで処理したマウスは、ビヒクル対照と比較して、抗原特異的IgG3反応に対して殆どまたは全く実質的効果を示さず、IgE反応の統計的に有意な増大を全く示さないと予期される。また、PI3Kδ阻害剤およびmTOR阻害剤の両方で処理したマウスは、ビヒクルのみで処理したマウスと比較して、抗原特異的IgG3反応の低減を示すと予期される。さらに、PI3Kδ阻害剤およびmTOR阻害剤の両方で処理したマウスは、PI3Kδ阻害剤のみで処理したマウスと比較して、IgE反応の低減を示す。
【0528】
(c)ラットのコラーゲン誘発性関節炎モデル
雌のLewisラットを麻酔し、調製したコラーゲン注射を与え、前述の通り0日目に投与する。6日目に動物を麻酔し、第2のコラーゲン注射を与える。正常な(疾患前)右および左足首関節のノギス測定を、9日目に実施する。10〜11日目に関節炎が一般に生じ、ラットを処理群に無作為化する。無作為化は、足首関節腫脹が明らかに確立し、両側性疾患の十分な証拠が見られた後に実施する。
【0529】
動物を研究登録に選択した後、処理を開始する。動物に、ビヒクル、PI3Kδ阻害剤またはラパマイシンと組み合わせたPI3Kδ阻害剤を投与する。投与は、1〜6日目に施用する。ラットを、関節炎の確立後1〜7日目に秤量し、足首のノギス測定を毎日行う。最終体重を7日目に量り、動物を安楽死させる。
【0530】
PI3Kδ阻害剤およびラパマイシンを使用する併用治療は、PI3Kδ阻害剤のみを用いた治療よりもかなり有効であると予期される。
【0531】
本発明の好ましい実施形態を示し、本明細書に記載してきたが、かかる実施形態はほんの一例を提供することが、当業者には明らかとなろう。今回当業者は、多数の変形、変更および代替を、本発明から逸脱せずに思いつくはずである。本明細書に記載の本発明の実施形態に対する様々な代替を、本発明の実施において使用できることを理解されたい。以下の特許請求の範囲は、本発明の範囲を定義し、これらの特許請求の範囲内にある方法および構造ならびにそれらの等価物は、それによって包含されるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11