【実施例】
【0036】
実施例1((Z)−ペンタデセナールの調製)
下記一連の反応式にしたがって、表1に示す(7Z)、(8Z)、(9Z)および(10Z)−ペンタデセナールを合成した。
【0037】
【化9】
【0038】
【表1】
【0039】
カップリング(内部アルキンCの合成)
末端アルキンA(2.2当量)のテトラヒドロフラン(A(g)×20)(ml)溶液を、窒素雰囲気下−40℃に冷却撹拌した。系内にn−ブチルリチウムのヘキサン溶液(2.2等量)を滴下した。系内が−20℃になるまで1時間以上かけてゆるやかに昇温させた。再び冷却し、系内が−60℃以下になったらブロモアルカノールB(1.0当量)のテトラヒドロフラン(A(g)×20)(ml)及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(A(g)×2)(ml)混合溶液を滴下した。緩やかに室温まで昇温させながら終夜撹拌した。翌朝、系内に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え30分撹拌した後に分液操作を行い水層を酢酸エチルで抽出した。先の有機層と併せて2規定塩酸、飽和重曹水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム乾燥した。減圧濾過後濾液を減圧濃縮することで得られる残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(残渣(g)×100(g)、ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製することで内部アルキンCを得た。
還元(内部オレフィンDの合成)
内部アルキンC、キノリン(C(g)×0.2)(g)、1−ヘキセン(C(mmol)×10)(ml)及びリンドラー触媒(C(g)×0.2)(g)を仕込み、室温、水素雰囲気下で1.0時間撹拌した。ガスクロマトグラフィーにて原料の消失を確認後、減圧濾過して触媒を除去した。反応溶液を2規定塩酸、飽和重曹水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム乾燥した。減圧濾過後濾液を減圧濃縮して得られる残渣をこれ以上の精製することなく次工程に使用した。
酸化(目的化合物の合成)
ナスフラスコに内部オレフィンD(1.0当量)及びジメチルスルホキシド(2−ヨードキシ安息香酸(g)×12)(g)を仕込み室温撹拌した。系内に2−ヨードキシ安息香酸(1.5当量)を加え室温で終夜撹拌した。原料の消失を確認後に系内にジエチルエーテル及び水道水を加えて30分撹拌した。減圧濾過後に濾液を分液処理後に水層をジエチルエーテルで抽出した。有機層を水、10%チオ硫酸ナトリム水溶液、飽和重曹水、飽和食塩水で洗浄した。減圧濾過後、濾液を減圧濃縮することで得た残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(残渣(g)×100(g)、ヘキサン:酢酸エチル=100:1)で精製して(Z)−ペンタデセナール((7Z)、(8Z)、(9Z)および(10Z))を得た。
(Z)−7−ペンタデセナールの物性データ
1H−NMR(CDCl
3,400MHz):0.88(3H、t、J=6.4Hz)、1.26−1.37(14H、m)、1.64(2H、t、6.5Hz)、1.97−2.02(4H、m)、2.40−2.44(2H、m)、5.29−5.40(2H、m)、9.77(1H、s)
13C−NMR(CDCl
3、100MHz):14.098、21.986、22.661、26.933、27.211、28.771、29.208、29.267、29.436、29.734、31.860、43.880、129.322、130.305、202.823
MS(EI、70eV):224(M
+、1)、206(5)、180(1)、135(15)、121(30)、111(22)、98(40)、83(40)、67(60)、55(100)、41(85)、29(33)
(Z)−8−ペンタデセナールの物性データ
1H−NMR(CDCl
3,400MHz):0.88(3H、t、J=6.4Hz)、1.26−1.40(14H、m)、1.58−1.65(2H、m)、1.95−2.04(4H、m)、2.38−2.45(2H、m)、5.28−5.41(2H、m)、9.76(1H、s)
13C−NMR(CDCl
3、100MHz):14.098、22.055、22.651、27.082、27.221、28.979、29.059、29.267、29.506、29.724、31.771、43.890、129.560、130.147、202.893
MS(EI、70eV):224(M
+、1)、206(5)、180(1)、135(15)、121(20)、111(20)、98(40)、81(50)、67(70)、55(100)、41(85)、29(35)
(Z)−9−ペンタデセナールの物性データ
1H−NMR(CDCl
3,400MHz):0.88(3H、t、J=6.4Hz)、1.28−1.40(14H、m)、1.59−1.67(2H、m)、1.96−2.04(4H、m)、2.37−2.46(2H、m)、5.31−5.40(2H、m)、9.76(1H、s)
13C−NMR(CDCl
3、100MHz):14.078、22.065、22.572、27.132、27.181、29.039、29.128、29.248、29.436、29.655、31.522、43.910、129.700、130.047、202.932
MS(EI、70eV):224(M
+、1)、206(5)、180(1)、135(10)、121(20)、111(20)、98(35)、81(45)、69(60)、55(100)、41(80)、29(30)
(Z)−10−ペンタデセナールの物性データ
1H−NMR(CDCl
3,400MHz):0.88(3H、t、J=6.4Hz)、1.26−1.40(14H、m)、1.61−1.64(2H、m)、1.95−2.03(4H、m)、2.37−2.46(2H、m)、5.32−5.40(2H、m)、9.76(1H、s)
13C−NMR(CDCl
3、100MHz):13.999、22.075、22.343、26.913、27.152、29、140、29.148、29.198、29.297、29.705、31.960、43.910、129.789、129.928、202.942
MS(EI、70eV):224(M
+、1)、206(5)、180(1)、135(10)、121(15)、111(15)、95(30)、81(45)、67(55)、55(100)、41(75)、28(45)
【0040】
実施例2
下記表2に示す成分からなるミート様基本調合香料組成物(比較品1)を調製した。
【0041】
【表2】
【0042】
比較品1のミート様基本調合香料組成物に(Z)−8−ペンタデセナールを表3に示す量添加混合して、本発明のミート様の調合香料組成物を調製した。
【0043】
【表3】
【0044】
官能評価
醤油1L、みりん1Lおよび酒1Lを混合し、鍋で煮詰めて全量を1Lとした。これを小分けし、比較品1〜3または本発明品1〜5を0.1%添加混合して、それぞれ焼き鳥のタレを調製した。
【0045】
一方、これとは別に、ブラジル産ブロイラーのもも肉と皮を剥離後、もも肉を広げ、約2.5cm角にカットし、皮も同様にカットした。カットしたもも肉とカットした皮を、1串につき、もも肉4切、皮2切を竹串に刺にした。串刺しにした鶏もも肉(皮を含む)をやや焦げ目が付くまでオーブンにて焼いた後、スチーム加熱を設定温度90℃とし、中心温度75℃以上、2分間維持した。常温まで放冷後、一串に対し、比較品および本発明品を配合した焼き鳥のタレを8gずつかけ、専門パネラー10人により比較した。
【0046】
焼き鳥の風味の採点基準:
コントロール(無配合):0点
コントロールと比べ、ごくわずかに天然感あふれるオイリー感が強い:2点
コントロールと比べ、わずかに、天然感あふれるオイリー感が強い:4点
コントロールと比べ、やや、天然感あふれるオイリー感が増強し、天然感が感じられる:6点
コントロールと比べ、天然感あふれるオイリー感が増強され、天然感が強く感じられる:8点
コントロールと比べ、天然感あふれるオイリー感が大幅に増強し、天然感が極めて強く感じられる:10点
コントロールと比べ、やや青臭く金属的な香気が感じられ、バランスがやや悪い:−2点
コントロールと比べ、青臭く金属的な香気が強すぎ、バランスが悪い:−4点
その平均的な香気評価結果を表4に示す。
【0047】
【表4】
【0048】
表4に示したとおり、焼き鳥のタレに(Z)−8−ペンタデセナールを0.0002ppb〜2000ppbの濃度範囲で配合した場合には、焼き鳥様の天然感あふれるオイリー感が付与乃至増強された。また、焼き鳥のタレ中への(Z)−8−ペンタデセナールの添加濃度が、0.00004ppbでは、焼き鳥のタレは、ほとんど無添加(無添加のミート様基本調合香料組成物である比較品1を添加した場合)と差が無いが、0.0002ppbでは、ややオイリー感が増強され、(Z)−8−ペンタデセナールの配合濃度の増加と共に、オイリー感が強まっていき、さらに天然感が良好に感じられるようになり、焼き鳥のタレ中0.02〜20ppbでは天然感が良好に感じられ、特に0.2〜2ppbにおいて天然感が極めて良好に感じされた。しかしながら、2000ppb配合では焼き鳥様のオイリー感は増強されているが、ややバランスが良くないという評価であった。また、さらに配合量を増やし、5000ppbでは(Z)−8−ペンタデセナール特有の風味が強く出すぎて香気全体としてあまりバランスが良くないとの評価であった。
【0049】
以上より、焼き鳥のタレ1質量部に対して(Z)−8−ペンタデセナールの配合量が0.0002ppb〜2000ppbの範囲(ミート様基本調合香料組成物に対し、0.0002ppm〜2000ppmの範囲)において、焼き鳥のタレ(ミート様基本調合香料組成物)に天然感あふれるオイリー感を付与乃至増強できることが判明した。
【0050】
実施例3
比較品1のミート様基本調合香料組成物に、下記表5に示す化合物をそれぞれ0.2ppmずつ(それぞれの0.02%エタノール溶液を0.1%)添加し、比較品1、4、5または本発明品4、9〜11のミート様香料組成物を調製した。
官能評価
醤油1L、みりん1Lおよび酒1Lを混合し、鍋で煮詰めて全量を1Lとした。これを小分けし、比較品1、4、5または本発明品4、9〜11を0.1%添加混合して、それぞれ焼き鳥のタレを調製した(焼き鳥のタレ中の本発明の化合物の濃度として0.2ppb)。
【0051】
この焼きトリのたれを、実施例2と同様に、焼き鳥にかけ、実施例2と同一の評価基準で、官能評価した。その結果を表5に示す。
【0052】
【表5】
【0053】
表5に示したとおり、焼き鳥のタレに(Z)−7−ペンタデセナール、(Z)−8−ペンタデセナール、(Z)−9−ペンタデセナールまたは(Z)−10−ペンタデセナールを0.2ppb配合した場合には、焼き鳥様の天然感あふれるオイリー感が付与乃至増強され、また、ファッティー、ワキシーな油脂のコク味を想起させる風味が付与され、極めて良好な風味となった。
【0054】
一方、本発明のこれらの化合物に替えて、香料として一般的に使用される、二重結合を有するアルデヒドである、(Z)−3−ヘキセノールまたは(Z)−6−ノネナールを配合した焼き鳥のタレは、鋭い青臭さや石鹸臭など、焼き鳥のタレとは違和感のある風味が付与されてしまい、良好ではないという結果であった。
【0055】
実施例4
下記表6に示す成分からなるオレンジ様基本調合香料組成物(比較品6)を調製した。
【0056】
【表6】
【0057】
比較品6のオレンジ様基本調合香料組成物に、下記表7に示す化合物をそれぞれ0.2ppmずつ(それぞれの0.02%エタノール溶液を0.1%)添加し、本発明品12〜15のオレンジ様香料組成物を調製した。
官能評価
果糖ぶどう糖液糖300g、クエン酸(結晶)1.5g、ビタミンC0.05gおよびバレンシアオレンジ果汁1000gを混合し、水にて全量を2000gとした。これを小分けし、比較品6または本発明品12〜15を0.1%添加混合して、それぞれオレンジ果汁飲料を調製した。
【0058】
これらのオレンジ果汁飲料を、専門パネラー10人により官能評価を行った。その平均的な風味評価結果を表7に示す。
【0059】
【表7】
【0060】
表7に示したとおり、オレンジ果汁飲料に本発明の(Z)−7−ペンタデセナール、(Z)−8−ペンタデセナール、(Z)−9−ペンタデセナールまたは(Z)−10−ペンタデセナールを0.2ppb配合した場合には、いずれもオレンジ果皮様のフレッシュで天然感あふれるピーリー感が付与乃至増強され、極めて良好な風味となった。