特許第5868832号(P5868832)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5868832
(24)【登録日】2016年1月15日
(45)【発行日】2016年2月24日
(54)【発明の名称】改質石炭の貯蔵方法
(51)【国際特許分類】
   B65G 3/02 20060101AFI20160210BHJP
   B65G 63/00 20060101ALI20160210BHJP
   C10L 9/00 20060101ALI20160210BHJP
【FI】
   B65G3/02 A
   B65G63/00 A
   C10L9/00
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-259123(P2012-259123)
(22)【出願日】2012年11月27日
(65)【公開番号】特開2014-105065(P2014-105065A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2014年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100158540
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 博生
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100176876
【弁理士】
【氏名又は名称】各務 幸樹
(74)【代理人】
【識別番号】100177976
【弁理士】
【氏名又は名称】根木 義明
(74)【代理人】
【識別番号】100154472
【弁理士】
【氏名又は名称】新庄 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100184697
【弁理士】
【氏名又は名称】川端 和也
(74)【代理人】
【識別番号】100181939
【弁理士】
【氏名又は名称】柴尾 猛
(72)【発明者】
【氏名】安室 元晴
(72)【発明者】
【氏名】山本 誠一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 洋一
(72)【発明者】
【氏名】重久 卓夫
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 直人
【審査官】 大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−259390(JP,A)
【文献】 特開2000−297288(JP,A)
【文献】 特開2006−077155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 3/02
B65G 63/00
C10L 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質石炭のブリケットを成型する工程、
このブリケットを粉砕する工程、及び
上記粉砕工程により得られる粉砕物を含む粒状の石炭を山積みする工程
を有し、
上記石炭における粒径10mm以下の粒子の含有量が50質量%以上である改質石炭の貯蔵方法。
【請求項2】
上記石炭における粒径1mm以下の粒子の含有量が25質量%以上、粒径0.15mm以下の粒子の含有量が7質量%以上である請求項1に記載の改質石炭の貯蔵方法。
【請求項3】
上記石炭における粒径10mm以下の粒子の含有量が90質量%以下である請求項1又は請求項2に記載の改質石炭の貯蔵方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改質石炭の貯蔵方法及び粒度調整石炭に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所や製鉄所等で使用する石炭は、通常、屋外ヤードに山積みされたパイルとして貯蔵される。このように貯蔵される石炭は、空気中の酸素と反応することで発熱し、自然発火する場合がある。特に低品位炭は、多孔質状を有するため酸化反応性が高く、発熱しやすい。そこで、一般的には、パイルに対する散水等により自然発火を防止する方法がとられている。しかし、この方法では定期的に散水を行う必要があり、効率的な自然発火防止方法が求められている。
【0003】
そのような中、石炭パイルの自然発火を防止する技術として、樹脂等によりパイル表面を被覆する方法(特開平5−230480号公報及び特開2000−297288号公報参照)や、ラジカル捕捉剤又は酸素捕捉化合物を含む界面活性剤を散布する方法(特開2001−164254号公報参照)が提案されている。しかし、上記各方法によれば、樹脂やラジカル捕捉剤等が必要となるためコスト増が懸念される。
【0004】
一方、含水率が高くかつ発熱量が低い低品位炭(多孔質炭)から、改質石炭を得る製造方法が開発されている(特開平7−233383号公報参照)。この製造方法は、まず、多孔質炭を粉砕し粒状とした後、重質油分と溶媒油分とを含む混合油と混合して原料スラリーを得る。次いで、原料スラリーを予熱後、加熱し、多孔質炭の脱水を進めると共に、多孔質炭の細孔内に混合油を含浸させて脱水スラリーを得る。その後、脱水スラリーから改質多孔質炭と混合油とを分離した後、改質多孔質炭を乾燥(脱液)させる。乾燥された改質多孔質炭は所望により冷却及び成型される。この製造方法によれば、多孔質炭の含水率の低下と共に、この多孔質炭の細孔内に重質油が付着し、発熱量が高い改質石炭を得ることができる。
【0005】
上記製造方法にて得られる改質石炭は、輸送作業を始めとした作業性の観点や発塵を抑制する観点から、ブリケットに成型される。このブリケットをパイルとして貯蔵すると、同一形状のブリケットからなるためパイルの通気性が高く、酸化反応性が比較的高い石炭をパイリングする場合や、パイルの高さが高くなる場合には、比較的短時間でパイルの温度上昇が起こる。従って、このような改質石炭においては、特に自然発火が生じにくい貯蔵技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−230480号公報
【特許文献2】特開2000−297288号公報
【特許文献3】特開2001−164254号公報
【特許文献4】特開平7−233383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、低コストでかつパイルの自然発火を抑制することができる改質石炭の貯蔵方法、及び貯蔵の際の自然発火が低減された粒度調整石炭を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、
改質石炭を含む粒状の石炭を山積みする工程を有し、
上記石炭における粒径10mm以下の粒子の含有量が50質量%以上である改質石炭の貯蔵方法である。
【0009】
当該改質石炭の貯蔵方法は、山積みする石炭として、粒径10mm以下の比較的小さい粒子が50質量%以上を占める粒状物を用いる。このような粒度分布を有する石炭を山積みすると、小さい粒子が空隙を埋めて通気性の低いパイルが形成される。従って、当該改質石炭の貯蔵方法によれば、特別な材料等を用いることなく、低コストでパイルの自然発火を抑制することができる。
【0010】
上記石炭における粒径1mm以下の粒子の含有量が25質量%以上、粒径0.15mm以下の粒子の含有量が7質量%以上であることが好ましい。このようにさらに小さい粒子を上記範囲で用いることで、パイルの空隙をより効果的に埋めることができ、自然発火の抑制能を高めることができる。
【0011】
上記石炭における粒径10mm以下の粒子の含有量が90質量%以下であることが好ましい。このように、粒径10mm以下の粒子が90質量%以下の石炭を用いることで、作業性等を高めることができる。
【0012】
当該改質石炭の貯蔵方法は、
上記改質石炭のブリケットを成型する工程、及び
このブリケットを粉砕する工程
をさらに有し、
上記粒状の石炭の少なくとも一部として、上記粉砕工程により得られる粉砕物を用いることが好ましい。
このように、一度成型したブリケットを粉砕して粒径の小さい改質石炭(粉砕物)とすることで、特別な新たな装置等を導入することなく、容易に所望する粒度分布を有する石炭を得ることができる。
【0013】
本発明の粒度調整石炭は、改質石炭を含み、粒径10mm以下の粒子の含有量が50質量%以上90質量%以下である。当該粒度調整石炭は、このようなブロードな粒度分布を有する粒状物であるため、作業性を確保しつつ、自然発火が抑制されるパイルを形成することができる。
【0014】
ここで、「粒径」とは、JIS Z 8815(1994)ふるい分け試験法通則における乾式ふるい分けに準拠して測定した値をいう。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明の改質石炭の貯蔵方法によれば、コストの上昇を招来することなく、パイルの自然発火を抑制することができる。また、本発明の粒度調整石炭は、自然発火が低減されたパイルを形成することができる。従って、本発明の粒度調整石炭及び改質石炭の貯蔵方法によれば、低品位炭から得られる改質石炭の利用の容易性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例で形成したパイルを示す模式図
図2-1】比較例1における各パイルの測定結果を示す図
図2-2】比較例2における各パイルの測定結果を示す図
図2-3】比較例3における各パイルの測定結果を示す図
図2-4】実施例1における各パイルの測定結果を示す図
図2-5】実施例2及び比較例5における各パイルの測定結果を示す図
図2-6】実施例3における各パイルの測定結果を示す図
図3】実施例における各石炭の粒度分布を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の改質石炭の貯蔵方法及び粒度調整石炭の実施の形態を詳説する。
【0018】
<改質石炭の貯蔵方法>
本発明の改質石炭の貯蔵方法は、
(C)改質石炭を含む粒状の石炭を山積みする工程
を有し、好ましくは、この(C)工程の前に
(A)上記改質石炭のブリケットを成型する工程、及び
(B)このブリケットを粉砕する工程
をさらに有する。
【0019】
ここで、まず当該貯蔵方法に用いられる上記改質石炭の製造方法の一例について説明する。上記改質石炭は、
多孔質炭(低品位炭)を粒状に粉砕する工程(粉砕工程)、
上記多孔質炭と油とを混合して原料スラリーを得る工程(混合工程)、
上記原料スラリーを予熱する工程(予熱工程)、
上記原料スラリーを加熱し、脱水スラリーを得る工程(加熱工程)、
上記脱水スラリーを改質多孔質炭と油とに分離する工程(固液分離工程)、及び
分離された上記改質多孔質炭を乾燥させる工程(乾燥工程)
を有する。
【0020】
(粉砕工程)
粉砕工程では、多孔質炭を好ましい粒径の粒状物に粉砕する。この粉砕は、公知の粉砕機等を用いることによって行うことができる。このように粉砕されて混合工程に供される粒状の多孔質炭の粒子径としては、特に制限されるものではなく、例えば0.05mm以上2.0mm以下、好ましくは0.1mm0.5mm以下とすることができる。
【0021】
また、上記多孔質炭は、多量の水分を含有し、脱水することが望まれるいわゆる低品位炭である。上記多孔質炭の含水率は、例えば20〜70質量%である。このような多孔質炭としては例えば、褐炭、亜炭、亜瀝青炭(サマランガウ炭等)などが挙げられる。
【0022】
(混合工程)
混合工程では、粒状の多孔質炭と油とを混合して原料スラリーを得る。この混合工程は、例えば公知の混合槽等を用いて行うことができる。また、上記油は、好ましくは重質油分と溶媒油分とを含む混合油である。以下、この混合油を用いた例として説明する。
【0023】
上記重質油分とは、例えば400℃でも実質的に蒸気圧を示すことが無いような重質分からなるか、これを多く含む油であり、アスファルト等を用いることができる。上記溶媒油分とは、上記重質油分を分散させる油である。この溶媒油分としては、重質油分との親和性、スラリーとしてのハンドリング性、細孔内への侵入容易性等の観点から軽沸油分が好まれる。具体的には、沸点100℃以上、好ましくは300℃以下の石油系油(軽油、灯油又は重油等)が好ましい。
【0024】
このような重質油分と溶媒油分との混合油を用いると、この混合油が適切な流動性を示す。そのため、上記混合油を用いることで、重質油分単独では果たし難い重質油分の多孔質炭の細孔内への侵入が促進される。上記混合油における重質油分の含有量としては、例えば、0.25質量%以上15質量%以下とすることができる。
【0025】
多孔質炭に対する混合油の混合割合としては、特に制限されない。例えば、多孔質炭に対する重質油分の量としては、0.5質量%以上30質量%以下、好ましくは0.5質量%以上5質量%以下である。
【0026】
(予熱工程)
混合工程で得られた原料スラリーを、加熱工程に先立って通常予熱する。この予熱条件としては特に制限されず、通常は操作圧での水の沸点近傍まで加熱する。
【0027】
(加熱工程)
加熱工程では、上記原料スラリーを加熱し、脱水スラリーを得る。この加熱は、公知の熱交換器、蒸発器等を用いて行うことができる。この際、多孔質炭の脱水が進むと共に、多孔質炭の細孔内に混合油が含浸される。具体的には、多孔質炭の細孔内表面は重質油分を含有する混合油によって次々に被覆され、細孔開口部のほぼ全域が混合油によって充満される。なお、混合油中の重質油分は活性点に選択的に吸着され易すく、付着すると離れ難いため、重質油分が溶媒油分よりも優先的に付着していくとされている。こうして細孔内表面が外気から遮断されることによって自然発火性を低下させることが可能となる。また、大量の水分が脱水除去されると共に、混合油、特に重質油分が優先して細孔内を充満することになるので、多孔質炭全体としてのカロリーアップが達成される。
【0028】
(固液分離工程)
固液分離工程では、上記脱水スラリーを改質多孔質炭と混合油とに分離する。この分離は、公知の遠心分離器、濾過器等を用いて行うことができる。この工程で分離された混合油は、上記混合工程にて再利用することができる。
【0029】
(乾燥工程)
乾燥工程では、分離された上記改質多孔質炭を乾燥させる。この乾燥は、例えば公知のスチームチューブドライヤ等を用いて行うことができる。この乾燥工程で蒸発した油(溶媒油分)は、回収して上記混合工程にて再利用することができる。
【0030】
このような製造方法により得られる改質石炭は、上記加熱工程において含水率が低下すると共に、この細孔内に重質油が付着するため、発熱量が高い。
【0031】
次に、当該改質石炭の貯蔵方法における各工程を説明する。
【0032】
(A)成型工程
この(A)工程においては、粒状の上記改質石炭(改質多孔質炭)を加圧成型し、ブリケット(塊炭)とする。この成型は、ダブルロール型成形機等の公知の造粒装置を用いて行うことができる。なお、成型の際には、上記粒状の改質石炭を加湿したり、澱粉等のバインダーを添加したりして行うこともできる。このようにすることで、成型性を高めることなどができる。
【0033】
上記ブリケットのサイズとしては、特に限定されず、例えば1cm以上100cm以下とすることができる。また、このブリケットの形状としても、特に限定されるものではなく、球状、回転楕円体状、角柱状、円柱状等とすることができる。
【0034】
(B)粉砕工程
この(B)工程においては、(A)工程にて得られたブリケットを粉砕し、粒径の小さい改質石炭(粉砕物)を得る。このように、一度成型したブリケットを粉砕して粒径の小さい改質石炭とすることで、特別な新たな装置等を導入することなく、容易に所望する粒度分布を有する改質石炭を得ることができる。
【0035】
上記粉砕の方法としては、特に制限されず、粉砕機等を用いてもよいし、単に高所からの落下により粉砕させてもよい。例えば、ホイールローダでブリケットをすくい上げ、落下させること等によって粉砕することができる。この際、例えば、落下させる高さや回数等を変化させることで、得られる粉砕物の粒度分布を容易に調整することができる。
【0036】
なお、落下の際の高さとしては、1m以上5m以下とすることができる。このような高さから落下させることで、ブリケットを効率的にかつ適度な粒度分布を有する粒子に粉砕することができる。また、落下回数としては、10回以上50回以下が好ましい。このような落下回数とすることで、ブリケットを効率的にかつ適度な粒度分布を有する粒子に粉砕することができる。
【0037】
なお、この(B)粉砕工程においては、得られた粉砕物中に粉砕されないブリケットが残っていてもよい。また、上記(A)工程にて成型したブリケットの一部のみを(B)粉砕工程に供してもよい。
【0038】
(C)山積み工程
この(C)工程においては、上記改質石炭を含み特定の粒度分布からなる粒状の石炭を山積みし、パイルを形成する。この山積みは、ベルトコンベア等、公知の機器等を用いて行うことができる。
【0039】
(C)工程において、適当な粒度分布を有する改質石炭として、上記(B)工程で粉砕されたブリケット由来の粒状物を用いることができる。また、上記粉砕物に未粉砕のブリケット、成型していない粒状又は粉末状の改質石炭、成型工程等で生じた成型不良品等を加えて粒度を調整してもよく、上記粉砕物以外の改質石炭のみを用いて粒度を調整することができる。
【0040】
また、(C)工程において、未改質の他の石炭を用いて全体の粒度を調整することもできる。山積みする粒状の全石炭に対する上記未改質の石炭の割合としては、質量基準で、30質量%以下が好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。未改質の石炭の使用量を減らすことで、石炭の燃焼効率の低下を防ぐことなどができる。
【0041】
この(C)山積み工程に供せられる石炭においては、粒径10mm以下の粒子の含有量の下限が50質量%である。このように、粒径10mm以下の比較的小さい粒子を一定量用いることで、山積みした際、この小さい粒子が空隙を埋めて通気性の低いパイルを形成することができる。従って、当該改質石炭の貯蔵方法によれば、特別な材料等を用いることなく、低コストでパイルの自然発火を抑制することができる。
【0042】
上記粒径10mm以下の粒子の含有量の上限としては、90質量%が好ましく、70質量%がより好ましく、65質量%がさらに好ましい。このように、粒径10mm以下の粒子の含有量を上記上限以下とすることで、ある程度のサイズの石炭を混在させ、作業性等を高めることができる。
【0043】
上記石炭において、粒径1mm以下の粒子の含有量の下限としては25質量%が好ましい。また、粒径0.15mm以下の粒子の含有量の下限としては7質量%が好ましい。このようにさらに小さい粒子を上記粒度分布の範囲で用いることで、パイルの空隙をさらに密に埋めることができ、自然発火の抑制能を高めることができる。
【0044】
一方、粒径1mm以下の粒子の含有量の上限としては40質量%が好ましく、35質量%がさらに好ましい。また、粒径0.15mm以下の粒子の含有量の上限としては20質量%が好ましく、15質量%がさらに好ましい。これらの微細な粒子の含有量の上限を上記範囲とすることで、発塵の抑制や、その他作業性を高めることができる。
【0045】
なお、山積みの際、石炭に水や界面活性剤水溶液を噴霧させてもよい。このようにすることで、形成されるパイルからの発塵や発火をより低減させることができる。
【0046】
このように、当該改質石炭の貯蔵方法によれば、用いる石炭の粒度分布を制御することのみで、特殊な機器や材料等を用いることなく、低コストでパイルの自然発火を抑制することができる。
【0047】
<粒度調整石炭>
本発明の粒度調整石炭は、改質石炭を含み、粒径10mm以下の粒子の含有量が50質量%以上90質量%以下である。
【0048】
当該粒度調整石炭は、当該改質石炭の貯蔵方法に用いられる粒状の石炭として上述したとおりである。当該粒度調整石炭の製造方法や好ましい粒径等も上述した粒状の石炭と同様であるので説明を省略する。
【0049】
当該粒度調整石炭は、このようなブロードな粒度分布を有する粒状物であるため、作業性を確保しつつ、自然発火が抑制されたパイルを形成することができる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0051】
[実施例1〜3及び比較例1〜5]
亜瀝青炭(生炭)を原料とし、重質油分と溶媒油分との混合油と混合して加熱する工程を経て得られた粉末状の改質石炭(UBC−P)を用意した。この粉末状の改質石炭を成型してブリケット状の改質石炭(UBC−B、サイズ:47mm×47mm×28mm)を得た。ホイールローダを用いて上記UBC−Bを3mの高さから落下させて粉砕し、UBC−B(粉砕)を得た。落下回数等は後述するとおりである。
【0052】
上記UBC−B、UBC−B(粉砕)、UBC−P及び生炭を表1に記載の質量比で混合し、これを用いて高さ約1mの石炭パイルを形成した。なお、補足事項を表1の下に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
比較例1〜4については、UBC−BとUBC−Pとを混合して用いた。比較例4においては、比較例3のPile−40の表面にUBC−Pをさらに15質量部まぶした。
実施例1については、UBC−Pのみを用いた。
比較例5については、以下の手順で粉砕を行ったものを用いた。
(UBC−Bの落下10回)→(上記UBC−BをUBC−Pと混合)→(混合物の落下10回)
実施例2については、比較例5の混合物にさらに生炭を混合したものを用いた。
実施例3については、落下回数を30回として行った。
【0055】
[評価]
図1に示すように、パイル1の下から約129cmの位置Pから、パイル斜面に垂直な方向の深さ25cm、50cm及び75cmの各測定ポイントe1〜e3におけるガス分析(O、CO及びCO濃度)と温度測定とを実施した。結果を図2−1〜6に示す。
【0056】
窒息した(酸素濃度がほぼ0となった)パイルは、Pile−100(実施例1、UBC−Pのみ)、Pile−40−B−New(実施例2、UBC−B(粉砕):UBC−P:生炭=100:38:15)、及びPile−Raw20(実施例3、UBC−B(粉砕):生炭=100:19)の3パイルであった。窒息したパイルは深さ50cmより深い範囲で酸素濃度がほぼ0になった(表層付近では酸素濃度が高い)。
【0057】
次に、各パイルを形成する石炭の粒度分布の測定結果(実施例1〜3、比較例1〜3、5、後述する実施例4、並びに参考としての落下前のUBC−B及び生炭)を図3及び表2に示す。なお、この粒度分布は、FRITSCH社製の振とう篩い機を用いて分析した値である。
【0058】
【表2】
【0059】
図3に示されるように、パイルの窒息に成功した実施例1〜3の石炭の粒度分布においては、粒径10mm以下の粒子の割合が50質量%以上と高くなっていることがわかる。
【0060】
[実施例4]
UBC―Pと他の石炭とを混合して、図3及び表2の実施例4で示す粒度分布に調整した。これを用い実施例1等と同様にパイルを形成しガス分析を行ったところ、窒息が確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上説明したように、本発明の改質石炭の貯蔵方法は、低コストでパイルの自然発火を抑制することができ、火力発電所や製鉄所等で広く用いることができる。
【符号の説明】
【0062】
1 パイル
e1、e2、e3 測定ポイント
図1
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図2-5】
図2-6】
図3