(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
音声処理装置が、建物内のエレベータの乗場に設置されたマイクロホンから入力された、前記乗場にいる利用者が発した音声の情報を解析して、前記利用者の質問内容情報を特定するステップと、
エレベータ制御装置が、前記音声処理装置で特定された質問内容情報が保守に関するものであるときに、前記エレベータ内で発生した故障情報を取得し、取得した故障情報を報知するための応答情報を生成するステップと、
出力制御装置が、前記エレベータ制御装置で生成された応答情報を、前記乗場に設置された乗場出力装置から出力させるステップと
を有することを特徴とするエレベータの情報出力方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〈一実施形態によるエレベータシステムの構成〉
本発明の一実施形態によるエレベータ制御装置を利用したエレベータシステムの構成について、
図1を参照して説明する。
【0010】
本実施形態によるエレベータシステム1Aは、建物内に設置された1台のエレベータの監視および制御を行うものであり、乗場2の乗場操作盤21に設けられ、乗場2にいる利用者が発した音声を入力するマイクロホン211と、乗場スピーカ22と、乗場表示装置23と、乗りかご3内を俯瞰する位置に設置されたかご内カメラ装置31と、昇降路上部の機械室に設置された音声処理装置40と、画像処理装置50と、エレベータ制御装置60と、音声合成装置70と、表示情報生成装置80とを備える。
【0011】
音声処理装置40、画像処理装置50、エレベータ制御装置60、音声合成装置70、および表示情報生成装置80の詳細な構成について、
図2のブロック図を参照して説明する。
【0012】
音声処理装置40は、マイクロホン211から入力された乗場2の利用者の音声をデジタル情報に変換するA/D変換部41と、変換されたデジタル音声情報を入力する音声情報入力部42と、入力されたデジタル音声情報を記憶する音声情報記憶部43と、記憶されたデジタル音声情報を解析して単語と文法とを認識することで利用者の質問内容情報を特定する認識処理部44と、特定された質問内容情報をエレベータ制御装置60に出力する特定情報出力部45とを有する。
【0013】
画像処理装置50は、かご内カメラ装置31で乗りかご3内を撮影したかご内画像情報を入力するかご内画像入力部51と、入力されたかご内画像情報を解析することにより、乗りかご3内に乗車している利用者の人数を計数するかご内人数計数部52と、計数された乗りかご3内の人数から、乗りかご3に乗車可能な人数を算出する乗車可能人数算出部53とを有する。
【0014】
エレベータ制御装置60は、音声処理装置40で特定された質問内容情報を入力する特定情報入力部61と、画像処理装置50で算出された乗車可能人数を入力する乗車可能人数入力部62と、当該エレベータの乗りかご3の現在位置や行き先階などの運転状況を示す運転情報を取得する運転情報取得部63と、入力された質問内容情報に応答するための応答情報を、乗車可能人数や運転情報を用いて生成する応答情報生成部64とを有する。
【0015】
音声合成装置70は、エレベータ制御装置60で生成された応答情報を、音声で出力するための音声情報を合成する音声合成部71と、合成された音声情報を増幅させる音声増幅処理部72と、増幅された音声情報を乗場スピーカ22から出力させる音声出力制御部73とを有する。
【0016】
表示情報生成装置80は、エレベータ制御装置60で生成された応答情報を、テキスト表示で出力するためのテキスト情報を生成するテキスト情報生成部81と、生成されたテキスト情報を乗場表示装置23に表示させる表示制御部82とを有する。
【0017】
〈一実施形態によるエレベータシステムの動作〉
次に、本実施形態によるエレベータシステムの動作について説明する。本実施形態においてシステム稼働中は、かご内カメラ装置31により乗りかご3内を撮影したかご内画像情報が所定時間間隔で画像処理装置50に送信されている。かご内画像情報を取得したときに、画像処理装置50で実行される処理について、
図3のフローチャートを参照して説明する。
【0018】
画像処理装置50のかご内画像入力部51では、かご内カメラ装置31からのかご内画像情報が入力されるまで監視が行われる(S1の「NO」)。そしてかご内画像情報が入力されると(S1の「YES」)、入力されたかご内画像情報がかご内人数計数部52で解析されて、乗りかご3内に乗車している利用者の人数が計数される(S2)。
【0019】
次に乗車可能人数算出部53において、計数された乗りかご3内の人数が、あらかじめ設定された乗りかご3の定員よりも少ないか否かが判定され(S3)、少ないと判定されたとき(S3の「YES」)には、あと何人乗ることができるかを示す乗車可能人数が算出される(S4)。ここでは乗車可能人数として「2〜3人」が算出されたものとする。算出された乗車可能人数は、乗車可能人数算出部53からエレベータ制御装置60に出力される(S5)。
【0020】
ステップS3において、計数された乗りかご3内の人数が定員に達していると判定されたとき(S3の「NO」)には、既に乗りかご3が満員状態であることを示す満員状態通知情報が生成され、エレベータ制御装置60に出力される(S6)。
【0021】
一方エレベータ乗場2では、マイクロホン211から音声が入力されず所定時間が経過しているときには、乗場表示装置23にテキスト情報「このマイクに話しかけてください。このエレベータと対話できます。」が表示されている。このとき、乗場スピーカ22から所定時間間隔で当該テキスト情報を音声で出力してもよい。
【0022】
利用者が乗場2に近づいてこのテキスト情報を認識し、当該エレベータの乗りかご3に乗車可能な人数に関する質問、例えば「何人乗れますか?」と発声すると、当該発声による音声がマイクロホン211から入力され、音声処理装置40に送信される。
【0023】
マイクロホン211から音声が入力されたときに音声処理装置40で実行される処理について、
図4のフローチャートを参照して説明する。
【0024】
音声処理装置40では、マイクロホン211からの音声が入力されるまで監視が行われる(S11の「NO」)。そして音声が入力されると(S11の「YES」)、入力された音声がA/D変換部41でデジタル情報に変換されて、音声情報入力部42により入力される(S12)。ここで、音声情報入力部42により、デジタル音声情報が正常に認識されたか否かが判断される(S13)。
【0025】
デジタル音声情報が正常に認識されたと判断されたとき(S13の「YES」)には、当該デジタル音声情報が音声情報記憶部43に記憶される(S14)。ステップS13においてデジタル音声情報が正常に認識されなかったと判断されたとき(S13の「NO」)には、ステップS11に戻り、さらにマイクロホン211からの音声の入力があるまで監視される。
【0026】
次に認識処理部44において、記憶されたデジタル音声情報が解析され、単語と文法とが認識されて利用者の質問内容情報が特定される(S15)。ここでは、デジタル音声情報「何人乗れますか?」に、単語「何人」、「乗れます」が含まれること、および文末の「か」から疑問文であることが認識されて質問内容情報として「乗車可能な人数を問い合わせる質問」であると特定される。
【0027】
特定された質問内容情報は、特定情報出力部45からエレベータ制御装置60に出力される(S16)。
【0028】
エレベータ制御装置60において、音声処理装置40から出力された質問内容情報が取得されたときの処理について、
図5のフローチャートを参照して説明する。エレベータ制御装置60では、画像処理装置50から出力された乗車可能人数が乗車可能人数入力部62から入力されている。また、乗りかご3の現在位置や行き先階などの運転状況を示す運転情報が、運転情報取得部63において所定時間間隔で取得されている。
【0029】
エレベータ制御装置60の特定情報入力部61では、音声処理装置40からの質問内容情報が取得されるまで監視が行われる(S21の「NO」)。そして質問内容情報が取得されて入力されると(S21の「YES」)、応答情報生成部64に出力される。
【0030】
応答情報生成部64では、取得された質問内容情報「乗車可能な人数を問い合わせる質問」に応答するために、乗車可能人数入力部62から入力された乗車可能人数を用いて、応答情報「あと2〜3人乗れます」が生成される(S22)。生成された応答情報は音声合成装置70および表示情報生成装置80に出力される(S23)。
【0031】
音声合成装置70では、エレベータ制御装置60から取得された応答情報「あと2〜3人乗れます」に基づいて音声合成部71において音声情報が合成され、さらに音声増幅処理部72において音声情報が増幅される。増幅された音声情報は、音声出力制御部73の制御により、乗場スピーカ22から音声出力される。
【0032】
一方表示情報生成装置80では、エレベータ制御装置60から取得された応答情報「あと2〜3人乗れます」に基づいてテキスト情報生成部81においてテキスト情報が生成される。生成されたテキスト情報は、表示制御部82の制御により、乗場表示装置23に表示される。
【0033】
以上の実施形態によればエレベータ制御装置は、利用者が音声で問い合わせた質問に対し、現在の乗りかごの状況に即した応答情報を音声や表示で出力することにより、利用者の利便性を向上させることができる。
【0034】
また他の実施形態のエレベータシステムについて、
図6を参照して説明する。
図6のエレベータシステム1Bは、上述したエレベータシステム1Aと同様に、乗場2の乗場操作盤21に設けられるマイクロホン211と、乗場スピーカ22と、乗場表示装置23と、乗りかご3内を俯瞰する位置に設置されたかご内カメラ装置31と、昇降路上部の機械室に設置された音声処理装置40と、画像処理装置50と、エレベータ制御装置60と、音声合成装置70と、表示情報生成装置80とを備えるとともに、乗場2を俯瞰する位置に乗場カメラ装置24をさらに備える。そして、画像処理装置50において乗場カメラ装置24で撮影された乗場画像情報を取得して解析することで、乗場2にいる利用者の人数を計数して、エレベータ制御装置60に出力する。
【0035】
このようにエレベータ制御装置60において乗場2にいる利用者の人数も取得しておくことにより、建物内の複数のエレベータを管理する場合に乗りかごごとに算出された乗車可能人数を用いて、利用者が音声で問い合わせた質問「あと何人乗れますか?」に対し、乗場2にいる全利用者が乗り切れるように最適号機を報知するための応答情報を提供することができる。例えば乗場2にいる利用者の人数が「5人」として取得されたときに、「5人」が乗り切れるようにするために、「A号機に2〜3人、B号機に2〜3人乗れます。」や、「2番目に到着するC号機に5人乗れます。」などの応答情報を提供することができる。
【0036】
また画像処理装置50において乗場カメラ装置24で撮影された乗場画像情報を取得して解析することで、乗場2にいる利用者の口の動きから利用者が問い合わせている質問内容情報を特定してエレベータ制御装置60に出力するようにしてもよい。この場合、エレベータ制御装置は、画像処理装置50から取得した質問内容情報に応答するための応答情報を生成して、乗場スピーカ22や乗場表示装置23から出力させる。
【0037】
このように利用者の口の動きから利用者が問い合わせている質問内容を特定することにより、声を出すことが不自由な利用者や乗場のマイクロホンに話しかけるのが恥ずかしい利用者でも、乗場カメラ装置に顔を向けて質問内容を発声するように口を動かすのみで、質問に対する応答情報を得ることができる。
【0038】
またエレベータ制御装置60において各乗りかごの現在位置や運転方向などの運転状況も取得しておくことにより、どの階にどの号機が早く到着するかを予測することができ、利用者が音声で問い合わせた質問「どのエレベータが早くきますか?」に対し、「A号機が早くきます。」などのように、運転状況に基づいた応答情報を提供することができる。
【0039】
またエレベータ制御装置60においてエレベータ内で発生した故障情報(エレベータ内でエラーが発生したときのエラーコードなど)を取得しておくことにより、特定された質問内容情報が保守管理者による保守に関するものであるときには、取得した故障情報を報知するための応答情報を生成して、乗場スピーカ22や乗場表示装置23から出力させるようにしてもよい。
【0040】
このように保守管理者に故障情報を音声や表示で報知することにより、保守管理者が迅速に故障内容を把握して対処を行うことができる。
【0041】
またエレベータ制御装置60を外部ネットワークに接続しておくことにより、天気情報やニュース情報などを取得可能となるように構成し、利用者からの質問内容「今日の天気は?」や「最新のニュースは?」など、エレベータに関する情報以外の情報に対しても応答情報を生成して提供することができる。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。