(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記固定素子保持部は、前記枢軸の両端部を挟持して保持し、かつ、前記枢軸を、前記弁ハンドルの周縁に、近接させる、又は、遠ざける、ようにスライドさせるための溝部を具備し、
前記弁ハンドル固定部は、前記溝部における前記枢軸のスライドを規制するスライド規制手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の弁ハンドル操作補助器具。
前記弁ハンドル固定部は、所望の前記固定素子の前記弁ハンドルへの、接触の有無、又は、接触の向き、を規制する接触規制手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の弁ハンドル操作補助器具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
弁ハンドルを操作するための補助具としては、操作対象である弁ハンドルの周側面上の複数箇所において弁ハンドルを保持することが望ましかった。これは、例えば、従来公知のウィルキーのような弁ハンドル操作補助具を用いる場合は、弁ハンドルの局所に、また、その弁ハンドルが取設される配管設備等の局所に大きな荷重が作用してしまい、操作が繰り返されることで操作対象である設備にダメージを与える恐れがあるためである。
他方、上述のような事情に鑑み弁ハンドル操作補助具を構成する場合、個々の弁ハンドルに対応した操作補助具を準備することが最良であると考えられるものの、実用的なアイデアであるとは言い難かった。
【0005】
これに対して、操作対象である弁ハンドルを固定するための固定具を複数のパーツにより構成し、弁ハンドルの周側面上の複数個所において支持する構成にすることで、径の異なる弁ハンドルにも使用可能な操作補助具を提供できる可能性がある。
その一方で、このような弁ハンドル操作補助具は、その目的からラチェット機能を有していることが望ましいと考えられる。しかも、弁ハンドルの操作方向(回動方向)は一様でないので、このようなラチェット機能はその作用方向を目的に応じて切換え可能であることが望ましいと考えられる。
このように、弁ハンドル操作補助具は、径の異なる弁ハンドルに対しても使用することができ、弁ハンドルを回動操作する際に作用する力を弁ハンドルの周側面上に分散させることができ、しかも、このような弁ハンドル操作補助具がラチェット機能及びその作用方向の切り替え機能をも有していることが望ましかった。
【0006】
そして、先に述べた特許文献1−13に開示される技術内容を参酌すれば、上述のような機能を有する弁ハンドル操作補助具を容易に想到できるとも考えられるが、この場合は下記のような技術的課題が生じる。
すなわち、弁ハンドルを固定する固定具を複数の固定具により構成する場合、個々の固定具にラチェット機能を付与するところまでは特許文献1−13を参酌して容易に想到できる可能性がある。また、弁ハンドルを固定するための固定具が1つである場合は、ラチェット機能とその作用方向の切り替え機能を同時に備えることも可能であるとも考えられる。
しかしながら、弁ハンドルを固定する固定具が複数の固定具により構成される場合で、かつ、それぞれの固定具がラチェット機能を有しており、しかも、それぞれの固定具に備えられるラチェット機能の作用方向を容易に切り替えることができる弁ハンドル操作補助器具に想到することは容易でないと考えられる。
これは、ラチェット機能の作用方向を切り替え可能にするためには、ラチェット機能を実現するパーツ同士が互いに連関し合っている必要がある一方で、本願発明のように弁ハンドルを固定する固定具を複数の固定具により構成する場合は、ラチェット機能を実現するパーツ同士を互いに連関させることができないからである。
【0007】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものでありその目的は、弁ハンドルを固定する固定具が複数の固定具から成る場合でも、それぞれの固定具がラチェット機能を有し、しかも、正逆どちらに回動させてもラチェット機能が発揮される弁ハンドル操作補助器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため請求項1記載の発明である弁ハンドル操作補助器具は、棒状の操作部と、この操作部上にスライド可能に取設されて弁ハンドルをその周側面側から挟持する一対の弁ハンドル固定部と、を有し、この弁ハンドル固定部は、弁ハンドルの側面に接触して摩擦力により弁ハンドルを保持する少なくとも1つの固定素子と、この固定素子を保持する固定素子保持部と、この固定素子保持部に固定素子を回動可能に軸支する枢軸と、を備え、固定素子は、その側面に曲面を備えたブロック体と、曲面上を被覆するように設けられる滑り止め材と、を具備し、ブロック体における曲面は、ブロック体の厚み方向を貫通して設けられる枢軸の軸心から曲面までの距離r1がこの曲面に沿って漸増して距離r2(ただし、r1<r2)となることを特徴とするものである。
上記構成の請求項1記載の発明において、一対の弁ハンドル固定部は、操作対象である弁ハンドルの周側面上において互いに対向して配設されて、弁ハンドルをその周側面側から挟持するように保持するという作用を有する。
また、操作部は、上述の一対の弁ハンドル固定部を個別にスライド可能に支持するとともに、一対の弁ハンドル固定部を間接的に操作して回動させ、これにより一対の弁ハンドル固定部により挟持される弁ハンドルを回動させるという作用を有する。
さらに、弁ハンドル固定部に設けられる少なくとも1つの固定素子は、弁ハンドルの側面に接触して摩擦力により弁ハンドルを保持するという作用を有する。
より具体的には、固定素子は、弁ハンドルの周側面に接触して弁ハンドルを保持するものであるが、この保持機能は固定素子がラチェット機能を発揮することにより実現される。また、このブロック体の厚み方向を貫通して設けられる枢軸は、固定素子保持部においてブロック体をこの枢軸を基軸に回動可能に支持するという作用を有する。加えて、固定素子保持部は、ブロック体に挿通される枢軸を保持するという作用を有する。
また、固定素子の側面(ブロック体の周縁を形成する面)に形成される曲面を、枢軸の軸心から曲面までの距離をr1とした場合に、この距離r1がこの曲面に沿って漸増して距離r2(ただし、r1<r2)となるよう構成することで、枢軸の軸心から弁ハンドルの周側面上までの距離が一定であれば、固定素子における曲面と弁ハンドルの周側面との接点が上述の距離r1から距離r2に向かって移動する際に、弁ハンドルの周側面上における固定素子の転動が停止してラチェット機能が発揮される。また、これとは逆に、固定素子における曲面と弁ハンドルの周側面との接点が上述の距離r2から距離r1に向かって移動する場合は、固定素子は弁ハンドルの周側面上をスムースに回動することができるのでラチェット機能は発揮されない。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の弁ハンドル操作補助器具であって、固定素子保持部は、枢軸の両端部を挟持して保持し、かつ、この枢軸を、弁ハンドルの周縁に、近接させる、又は、遠ざける、ようにスライドさせるための溝部を具備し、弁ハンドル固定部は、溝部における枢軸のスライドを規制するスライド規制手段を備えていることを特徴とするものである。
上記構成の発明は請求項1記載の発明と同じ作用に加えて、固定素子保持部に形成される溝部は、枢軸を弁ハンドルの周縁に、近接させる、又は、遠ざける、ようにスライド可能に保持するという作用を有する。また、スライド規制手段は、枢軸のこのようなスライドを常時規制するという作用を有する。
すなわち、このスライド規制手段により枢軸のスライドが規制されるので、弁ハンドルの周側面上から枢軸の軸心までの距離が一定となる。そして、この時、弁ハンドルの周側面上を固定素子が距離r1から距離r2に向かう方向に転動する場合に、ラチェット機能が発揮されるという作用を有する。他方、弁ハンドルの周側面上を固定素子が距離r2から距離r1に向かう方向に転動する場合は、ラチェット機能が発揮されないという作用を有する。
そして、固定素子保持部がこのようなスライド規制手段を備えることで、弁ハンドルの周側面上から枢軸の軸心までの距離が一定に保たれる固定素子の数を多くするという作用を有する。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の弁ハンドル操作補助器具であって、操作部は、この操作部の中央に交差した状態で固設される少なくとも1本の棒状の支持アームを有し、支持アームは、この支持アームをその伸長方向に伸縮させる伸縮機構と、支持アームの端部又はその近傍に取設されて弁ハンドルをその周側面側から挟持する一対の弁ハンドル固定部と、を備えていることを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明と同じ作用に加えて、支持アームは、操作部に取設されるものとは別の弁ハンドル固定部を支持するという作用を有する。また、支持アームに取設される弁ハンドル固定部の作用は、操作部に取設される弁ハンドル固定部の作用と同じである。
そして、操作部に支持アームが固設されていることで、操作部を回動操作することにより間接的に支持アームに取設される弁ハンドル固定部を回動操作するという作用を有する。
さらに、支持アームが備える伸縮機構は、支持アームの長さを所望に変更可能にするという作用を有する。これにより、支持アームに取設される弁ハンドル固定部を、径の異なる様々な弁ハンドルの周側面上に取設可能にするという作用を有する。
請求項3記載の発明によれば、請求項1,2に記載の発明と比較して、弁ハンドルの周側面上に取設される弁ハンドル固定部の数が多くなるので、より安定した状態で、かつ、弁ハンドルの周側面上に作用する力を分散させた状態で、弁ハンドルの回動操作を可能にするという作用を有する。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の弁ハンドル操作補助器具であって、操作部は、弁ハンドル固定部を備えていないことを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項3に記載の発明において操作部が弁ハンドル固定部を備えない場合を発明として特定したものである。
このような請求項4記載の発明は、請求項3に記載の発明と比較して、弁ハンドル固定部の数が減るものの、その作用は請求項3記載の発明と同じである。
また、請求項4記載の発明の場合は、弁ハンドルに対する弁ハンドル固定部の取設構造が同じになるので、弁ハンドルに作用する力を均一化させるという作用も有する。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の弁ハンドル操作補助器具であって、弁ハンドル固定部は、所望の固定素子の弁ハンドルへの、接触の有無、又は、接触の向き、を規制する接触規制手段を備えていることを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項1乃至請求項4のそれぞれに記載の発明と同じ作用に加えて、接触規制手段は所望の固定素子の弁ハンドルへの接触の有無、又は、接触の向き、を規制するという作用を有する。
より具体的には、固定素子保持部が、ラチェット機能の作用方向が異なる2タイプの固定素子を同時に備える場合、接触規制手段は、目的とする回動方向に対してラチェット機能を発揮しない固定素子の弁ハンドルの周側面上への接触を妨げるという作用を有する。
また、固定素子保持部が、操作部を正逆いずれの方向に回動させてもラチェット機能を発揮するタイプの固定素子を備える場合で、かつ、このような固定素子の弁ハンドルの周側面に対する接触の向きを変えることでラチェット機能の作用方向が変更される場合、接触規制手段は、目的とする固定素子の弁ハンドルの周側面に対する接触の向きを所望に変更するという作用を有する。
すなわち、請求項5記載の発明では、弁ハンドル固定部が接触規制手段を備えることで、弁ハンドルの周側面に接触する全ての固定素子により、ラチェット機能が発揮されるという作用を有する。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項5に記載の弁ハンドル操作補助器具であって、接触規制手段は、固定素子保持部の中空部内に収容される梯子状物体を用いることを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項5に記載の発明における接触規制手段の形態を特定したものであり、その作用については請求項5に記載の発明と実質的に同じである。
また、請求項6に記載の発明において、接触規制手段として用いられる梯子状物体は、一対の棒状の本体部とこの本体部を連結する少なくとも1つの連結部から成るものである。
より具体的には、固定素子保持部が、ラチェット機能の作用方向が異なる2タイプの固定素子を同時に備える場合、梯子状物体における連結部が、ラチェット機能を発揮しない固定素子の側面に接触してこれを押し上げて、その固定素子の弁ハンドルへの接触を妨げる。つまり、2タイプある固定素子のうち、ラチェット機能を発揮する固定素子のみを弁ハンドルの周側面上に接触させるという作用を有する。
また、固定素子保持部が、操作部を正逆いずれの方向に回動させてもラチェット機能を発揮するタイプの固定素子を備える場合で、かつ、このような固定素子の弁ハンドルの周側面に対する接触の向きを変えることでラチェット機能の作用方向が変更される場合、個々の固定素子の側面に梯子状物体の連結部を接触させてその回動量を所望に変更することで、ラチェット機能の作用方向を切り替えるという作用を有する。
特に後者の場合は、接触規制手段を備えない場合に、固定素子保持部に取設される個々の固定素子が目的とする回動方向においてラチェット機能を発揮するか否かは確率(1/2の確率)によって決まることになり、不確定となる。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項5に記載の弁ハンドル操作補助器具であって、接触規制手段は、磁力を利用することを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項5に記載の発明における接触規制手段の作用原理を磁力に特定したものであり、その作用については請求項5に記載の発明と実質的に同じである。
より具体的には、固定素子保持部が、ラチェット機能の作用方向が異なる2タイプの固定素子を同時に備える場合、磁力を利用する接触規制手段は、例えば、磁石の引き合う力を利用してラチェット機能を発揮しない固定素子のみを跳ね上げて、その固定素子が弁ハンドルの周側面上に接触するのを妨げ、ラチェット機能を発揮する固定素子のみを弁ハンドルの周側面上に当接させるという作用を有する。
また、固定素子保持部が、操作部を正逆いずれの方向に回動させてもラチェット機能を発揮するタイプの固定素子を備える場合で、かつ、このような固定素子の弁ハンドルの周側面に対する接触の向きを変えることでラチェット機能の作用方向が変更される場合、磁力を利用する接触規制手段は、例えば、磁石の引き合う力を利用して、目的とする固定素子を所望量だけ回動させて、弁ハンドルの周側面上における固定素子の接触の向きを調整するという作用を有する。
特に後者の場合は、接触規制手段を備えないと、固定素子保持部に取設される個々の固定素子が目的とする回動方向においてラチェット機能を発揮するか否かは確率(1/2の確率)によって決まることになり、不確定となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1記載の発明によれば、複数の弁ハンドル固定部を用いて弁ハンドルの周側面を挟持して保持することで、弁ハンドルに作用する回転力を分散させることができる。また、操作部上において弁ハンドル固定部をスライド移動することができるので、請求項1記載の発明により異なる径を有する弁ハンドルも操作することができる、この結果、請求項1記載の発明の汎用性が高まる。
また、請求項1記載の発明は、固定素子保持部がラチェット機能の作用方向が異なる2タイプの固定素子を同時に備える場合は、いずれか一方のタイプの固定素子がラチェット機能を発揮している状態において、他のタイプの固定素子はラチェット機能を発揮しない。つまり、請求項1記載の発明は、ラチェット機能の作用方向を切り替えるための構造を何ら備えなくとも、所望の回動方向におけるラチェット機能を発揮させることができる。
さらに、請求項1記載の発明において、固定素子保持部が弁ハンドルを正逆方向のいずれに回動させてもラチェット機能を発揮するような1種類の固定素子を備える場合は、弁ハンドル固定部を弁ハンドルの周側面上に取設した場合に、個々の固定素子が目的とする回動方向におけるラチェット機能を発揮するか否かは確率(1/2の確率)によって決まるため不確定になるものの、この場合も、ラチェット切換え構造を何ら備えることなしに、目的とする方向に対しするラチェット機能を発揮させることができる。
よって、請求項1記載の発明によれば、弁ハンドルを正逆いずれの方向に回動させてもラチェット機能が発揮される弁ハンドル操作補助器具を提供することができる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明と同じ効果に加えて、弁ハンドルの周側面から枢軸の軸心までの距離を一定に保った状態で、弁ハンドルの周側面上に接触する固定素子の数を多くすることができる。
この結果、弁ハンドル固定具に取設される固定素子のうちのなるべく多くを弁ハンドルの保持に寄与させることができる。
よって、請求項2記載の発明の使用時の安定性を向上するとともに、弁ハンドルを回動させる際に弁ハンドルに作用する負荷を一層分散させることができる。
従って、請求項2記載の発明を用いて弁ハンドルを繰り返し操作する場合に、弁ハンドル自体、又は、この弁ハンドルを備えた設備が破損又は損傷するリスクを一層低減することができる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は請求項2に記載の発明と同じ効果に加えて、支持アームを有することで操作部に取設されるものとは別に弁ハンドル固定部を備えることができる。
この結果、操作対象である弁ハンドルを少なくとも4つ以上の弁ハンドル固定部により保持することができるので、請求項1又は請求項2に記載される効果を一層促進できる。
【0018】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、操作部が弁ハンドル固定部を備えないものを発明として特定したものであり、その効果は請求項3に記載される発明と実質的に同じである。
【0019】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項4記載のそれぞれの発明と同じ効果に加えて、接触規制手段を備えることで、下記のような効果が発揮される。
操作部を正逆それぞれの方向に回動させる場合で、かつ、異なる2タイプの固定素子を用いてラチェット機能を発揮させる場合は、ラチェット機能の発揮に寄与しない固定素子の弁ハンドルへの接触を妨げることができる。この場合、目的とする方向に操作部を回動させる場合に、ラチェット機能に寄与する固定素子の転動が、ラチェット機能に寄与しない固定素子により妨げられるリスクを低減することができる。
また、操作部を正逆それぞれの方向に回動させる際に1種類の固定素子を用い、かつ、このような固定素子の弁ハンドルの周側面に対する接触の向きを変更することでラチェット機能の作用方向が変更される場合は、接触規制手段によりその固定素子の向きを所望に変更することができる。
従って、請求項5記載の発明によれば、接触規制手段を備えることで、弁ハンドル操作補助器具の機能性を向上させることができる。
【0020】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明における接触規制手段を、梯子状物体を用いるものに特定したものであり、その効果は請求項5記載の発明と実質的に同じである。
また、請求項6記載の発明は、接触規制手段として梯子状物体を用いることで、シンプルな構造物を備えるだけで、所望の固定素子の弁ハンドルへの、接触の有無、又は、接触の向き、を規制することができるという効果を有する。
この結果、請求項6記載の発明の構造をシンプルにできそのメンテナンスも容易にできる。
【0021】
請求項7記載の発明は、請求項5記載の発明における接触規制手段を、磁力を利用するものに特定したものであり、その効果は請求項5記載の発明と実質的に同じである。
また、請求項7記載の発明は、接触規制手段として磁力を利用することで、請求項7記載の発明における所望の固定素子の弁ハンドルへの、接触の有無、又は、接触の向き、の規制を固定素子への具体的な構造物の接触に因らずに行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態に係る弁ハンドル操作補助器具について
図1乃至
図13を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
本実施の形態に係る耐張クランプ1の概要について
図1,2を参照しながら説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る弁ハンドル操作補助器具の概念図である。また、
図2は本発明の実施の形態の他の例に係る弁ハンドル操作補助器具の概念図である。
図1,2に示すように本実施の形態に係る弁ハンドル操作補助器具1A,1Bは主に、剛性を有する棒状の操作部2と、この操作部2上にスライド可能に取設されて操作対象である弁ハンドルをその周側面側から挟持する一対の弁ハンドル固定部5a又は弁ハンドル固定部5bと、操作部2の中央部に交差した状態で固設される少なくとも1本の剛性を有する棒状の支持アーム3と、この支持アーム3の端部又はその近傍に取設される弁ハンドル固定部5a又は弁ハンドル固定部5bとにより構成されるものである。なお、操作部2に取設される弁ハンドル固定部5a又は弁ハンドル固定部5bと、支持アーム3に取設される弁ハンドル固定部5a又は弁ハンドル固定部5bは同じ構造を有している。
また、操作部2に取設される支持アーム3は伸縮機構4を備えており、径の異なる弁ハンドル14に対してもその周側面上に弁ハンドル固定部5a又は弁ハンドル固定部5bを取設することができる。
さらに、操作部2の左右両端に、例えば、滑り止め材からなる把持部2aを設けてもよい、この場合、操作部2の操作性を向上できる。
このような、本実施の形態に係る弁ハンドル操作補助器具1A,1Bによれば、弁ハンドル14の回動操作時に、弁ハンドル14の周側面上の複数個所を弁ハンドル固定部5a又は弁ハンドル固定部5bにより保持することができるので、弁ハンドル14の局所に大きな荷重が作用するのを防止できる。
この結果、弁ハンドル14を備える配管等の設備の局所に大きな荷重が作用するのを防止できる。
よって、本実施の形態に係る弁ハンドル操作補助器具1A,1Bを繰り返し使用する際に、弁ハンドル14そのもの、又は、弁ハンドル14を備える設備が損傷又は破損するのを防止できる。
【0025】
なお、
図1,2では、操作部2が支持アーム3を備える場合を例に挙げて説明しているが、支持アーム3及びそれに設けられる弁ハンドル固定部5a又は弁ハンドル固定部5bを備えなくとも目的とする機能を発揮させることは十分可能である。
この場合、弁ハンドル14を支持する弁ハンドル固定部5a又は弁ハンドル固定部5bの数が減る分、弁ハンドル14の周側面上に作用する力を分散させる効果が低減するものの、本実施の形態に係る弁ハンドル操作補助器具1A,1Bの構造を極めてシンプルなものにできる。
また、本実施の他の形態に係る弁ハンドル操作補助器具としては、
図1,2に示すような弁ハンドル操作補助器具1A,1Bにおいて、操作部2に弁ハンドル固定部5a又は弁ハンドル固定部5bを備えないタイプのものも想定される。
この場合も、弁ハンドル14を支持する弁ハンドル固定部5a又は弁ハンドル固定部5bの数が減る分、やはり弁ハンドル14の周側面上に作用する力を分散させる効果が低減するものの、弁ハンドル14の周側面上に弁ハンドル固定部5a又は弁ハンドル固定部5bを固定するための構造を統一することができるというメリットがある。この場合、弁ハンドル14の周側面上の複数個所において作用する力を均一化(略均一化の概念も含む)することができる。
【0026】
また、本実施の形態に係る弁ハンドル固定部5a,5bはその外形が異なるだけで、その構造は同じである。このため、弁ハンドル固定部5a,5bの基本的な作用機構も実質的には同じである。
さらに、本実施の形態に係る弁ハンドル固定部5a,5bは、操作対象である弁ハンドル14を単に保持するためのものでなく、操作部2を正逆方向の何れに回動させる場合もラチェット機能を発揮するものである。
このような本実施の形態に係る弁ハンドル固定部5a,5bの構造、並びに、その作用機構について
図3乃至
図5を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
まず、本実施の形態に係る弁ハンドル固定部5a,5bの構造について
図3,4を参照しながら説明する。
なお、上述の通り本実施の形態に係る弁ハンドル固定部5aと弁ハンドル固定部5bとは、実質的に同じ構造を有しているので、
図3では、弁ハンドル固定部5aの場合を例に挙げて説明する。
図3(a)は本発明の実施の形態に係る弁ハンドル固定部の平面図であり、(b)は
図3(a)中のP−P線矢視断面図である。なお、
図1,2に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
図3(a),(b)に示すように、本実施の形態に係る弁ハンドル固定部5aは主に、操作対象である弁ハンドル14(
図1,2を参照)の周側面に接触して摩擦力により弁ハンドル14を保持するタイプの異なる固定素子60a,60bと、これらの固定素子を個別に保持するための断面コ字形で鞘状の固定素子保持部9aと、この固定素子保持部9aに固定素子60a又は固定素子60bを回動可能に軸支する枢軸10と、により構成されるものである。
また、固定素子60a,60bは、その平面形状が扇形様を成し、その周側面の一部に曲面を備えたブロック体7と、このブロック体7における曲面を被覆して設けられる滑り止め材8とにより構成されている。ここで、固定素子60a,60bの平面形状を扇形様と表現しているのは、固定素子60a,60bの側面に形成される曲面が厳密には円弧でないためである。この理由ついては後段において詳細に説明する。
なお、上述のような固定素子60a,60bにおいて枢軸10は、このブロック体7における曲面と対峙する位置で、かつ、ブロック体7の厚み方向を貫通して設けられるものである。
【0028】
ここで、
図3(a),(b)を参照しながら、固定素子保持部9aに対する固定素子60a,60bの取付け構造について説明する。
固定素子60a,60bを構成するブロック体7を貫通して設けられる枢軸10は、固定素子保持部9aにおいて互いに対向して配される側壁に架け渡された状態で係止されている。
また、固定素子保持部9aの中空部内において枢軸10の端面が当接する領域に溝部11が形成されており、枢軸10はこの溝部11内を自在にスライド可能である。なお、この溝部11は、弁ハンドル固定部5aを弁ハンドル14の周側面上に取設した際に、固定素子60a,60bを弁ハンドル14の周側面上に近接させるように又は弁ハンドル14の周側面上から遠ざけるようにスライドさせることができるよう形成されている。また、
図3では、溝部11として有底の溝を形成する場合を例に挙げて説明しているが、この溝部11は固定素子保持部9aの肉厚部分を貫通してなる切欠き状のものでもよい。なお、厳密には
図3(a)に示すように溝部11は弁ハンドル14の円弧に対して放射状に形成されることが望ましいが、後段の
図5(a)に示すように、溝部11が互に平行に形成されていても特に問題はない。
【0029】
さらに、
図3(a),(b)に示すように、固定素子保持部9aの中空部内において、固定素子保持部9aと固定素子60a,60bの間の空隙にはスライド規制手段である弾性体12(例えば、コイルばね)が介設されており、固定素子60a,60bを固定素子保持部9aの開口部側に常時押出すという作用を有している。
そして、このような本実施の形態に係る弁ハンドル固定部5aを弁ハンドル14に取設する場合は、先の弁ハンドル固定部5aの操作部2上におけるスライド機構や、支持アーム3に設けられる伸縮機構4を利用して、弁ハンドル固定部5aを弁ハンドル14の周側面上にしっかりと押し付けて、固定素子保持部9a内に収容される弾性体12がそれ以上縮むことができない状態、すなわち、遊びの無い状態にしておく必要がある。
つまり、弁ハンドル固定部5aを弁ハンドル14に取設する場合は、弁ハンドル14の周側面から枢軸10の軸心までの距離が一定(略一定の概念も含む)に保持されている必要がある。
【0030】
次に、
図4を参照しながら固定素子60a,60bの構造についてさらに詳細に説明しつつ、固定素子60a,60bによりラチェット機能が発揮される仕組みについても説明する。
図4(a)は本発明の実施の形態に係るAタイプ固定素子の斜視図であり、(b)は本発明の実施の形態に係るAタイプ固定素子の平面図である。また、(c)は本発明の実施の形態に係るBタイプ固定素子の斜視図である。さらに、(d)は本発明の実施の形態に係るBタイプ固定素子の平面図である。なお、
図1乃至
図3に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
図4(a)〜(d)に示すように、Aタイプ固定素子60aと、Bタイプ固定素子60bは互いに鏡面対称体である。
また、
図4(b),(d)に示すように、Aタイプ固定素子60a及びBタイプ固定素子60bの曲面はいずれも、その平面図において枢軸10の軸心から曲面までの距離r1がこの曲面に沿って漸増して距離r2(ただし、r1<r2)となるように形成されるものである。
【0031】
ここで、Aタイプ固定素子60aによりラチェット機能が発揮される仕組みについて
図4(b)を参照しながら説明する。
図4(b)に示すように、Aタイプ固定素子60aの曲面(滑り止め材8)が弁ハンドル14の周側面上に接触している状態で、枢軸10が図中の符号Sで示す方向に正回動(時計回り)すると、この動作に伴って固定素子60aも弁ハンドル14の周側面上を枢軸10を基軸に時計回り方向に転動する。この時、弁ハンドル14の周側面と枢軸10の間には固定素子60aが介設されているので、枢軸10から弁ハンドル14の周側面上までの距離は、r2からr1に向かって漸減していく。これに対し、弁ハンドル14の周側面から枢軸10の軸心までの距離は、弾性体12が介設されていることで一定(略一定の概念も含む)に保たれているので、固定素子60aは弁ハンドル14の周側面上を容易に転動してしまい最終的に弁ハンドル14から離間してしまう。この結果、固定素子60aによるラチェット機能は発揮されない。(以下、このプロセスをP1とよぶ。)
他方、
図4(b)に示すように、Aタイプ固定素子60aの曲面(滑り止め材8)が弁ハンドル14の周側面上に接触している状態で、枢軸10が図中の符号Tで示す方向に逆回動(反時計回り)すると、この動作に伴って固定素子60aも弁ハンドル14の周側面上を枢軸10を基軸に反時計回り方向に転動する。この時、弁ハンドル14の周側面と枢軸10の間には固定素子60aが介設されているので、枢軸10から弁ハンドル14の周側面上までの距離は、r1からr2に向かって漸増していく。これに対し、弁ハンドル14の周側面から枢軸10の軸心までの距離は、弾性体12が介設されていることで一定(略一定の概念も含む)に保たれているので、固定素子60aは弁ハンドル14の周側面上を転動しきることができず、摩擦力により弁ハンドル14の周側面上に係止される。つまり、固定素子60aによりラチェット機能が発揮される。(以下、このプロセスをP2とよぶ。)
【0032】
次に、Bタイプ固定素子60bによりラチェット機能が発揮される仕組みについて
図4(d)を参照しながら説明する。
図4(d)に示すように、Bタイプ固定素子60bの曲面(滑り止め材8)が弁ハンドル14の周側面上に接触している状態で、枢軸10が図中の符号Sで示す方向に正回動(時計回り)すると、この動作に伴って固定素子60bも弁ハンドル14の周側面上を枢軸10を基軸に時計回り方向に転動する。この時、弁ハンドル14の周側面と枢軸10の間には固定素子60bが介設されているので、枢軸10から弁ハンドル14の周側面上までの距離は、r1からr2に向かって漸増していく。これに対し、弁ハンドル14の周側面から枢軸10の軸心までの距離は、弾性体12が介設されていることで一定(略一定の概念も含む)に保たれているので、固定素子60bは弁ハンドル14の周側面上を転動しきることができず、摩擦力により弁ハンドル14の周側面上に係止される。つまり、固定素子60bによりラチェット機能が発揮される。(以下、このプロセスをP3とよぶ。)
他方、
図4(d)に示すように、Bタイプ固定素子60bの曲面(滑り止め材8)が弁ハンドル14の周側面上に接触している状態で、枢軸10が図中の符号Tで示す方向に逆回動(反時計回り)すると、この動作に伴って固定素子60bも弁ハンドル14の周側面上を枢軸10を基軸に反時計回り方向に転動する。この時、弁ハンドル14の周側面と枢軸10の間には固定素子60aが介設されているので、枢軸10から弁ハンドル14の周側面上までの距離は、r2からr1に向かって漸減していく。これに対し、弁ハンドル14の周側面から枢軸10の軸心までの距離は、弾性体12が介設されていることで一定(略一定の概念も含む)に保たれているので、固定素子60bは弁ハンドル14の周側面上を容易に転動してしまい最終的に弁ハンドル14から離間してしまう。この結果、固定素子60bによるラチェット機能は発揮されない。(以下、このプロセスをP4とよぶ。)
従って、Aタイプ固定素子60aは弁ハンドル固定部5aにおいて(弁ハンドル固定部5bにおいても)操作部2を逆回動させる際にラチェット機能を発揮する。
また、Bタイプ固定素子60bは弁ハンドル固定部5aにおいて(弁ハンドル固定部5bにおいても)操作部2を正回動させる際にラチェット機能を発揮する。
【0033】
固定素子60a,60bによるラチェット機能が発揮される仕組みについてさらに
図5を参照しながら詳細に説明する。
図5(a)は本発明の実施の形態に係る弁ハンドル操作補助器具を正回動させる際にラチェット機能が発揮される様子を示す概念図であり、(b)は本発明の実施の形態に係る弁ハンドル操作補助器具を逆回動させる際にラチェット機能が発揮される様子を示す概念図である。なお、
図1乃至
図4に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。また、
図5では、本実施の形態に係る弁ハンドル固定部として弁ハンドル固定部5bを用いる場合を例に挙げて説明する。
図5(a)に示すように、操作対象である弁ハンドル14に本発明の実施の形態に係る弁ハンドル固定部5bを取設して正方向に回動させると、Aタイプ固定素子60aにおいて上述のプロセスP1が起こり、Bタイプ固定素子60bにおいては上述のプロセスP3が起こる。この結果、Bタイプ固定素子60bによりラチェット機能が発揮されて、本実施の形態に係る弁ハンドル固定部5bにより(弁ハンドル固定部5aによっても)、弁ハンドル14をしっかりと係止して保持することができる。
この結果、操作部2を回動操作することで弁ハンドル14にスムースに回転力が伝達されて、スリップすることなく弁ハンドル14を正方向に回動させることができる。
また、
図5(b)に示すように、操作対象である弁ハンドル14に本発明の実施の形態に係る弁ハンドル固定部5bを取設して逆方向に回動させると、Aタイプ固定素子60aにおいて上述のプロセスP2が起こり、Bタイプ固定素子60bにおいては上述のプロセスP4が起こる。この結果、Aタイプ固定素子60aによりラチェット機能が発揮されて、本実施の形態に係る弁ハンドル固定部5bにより(弁ハンドル固定部5aによっても)、弁ハンドル14をしっかりと係止して保持することができる。
この結果、操作部2を回動操作することで弁ハンドル14にスムースに回転力が伝達されて、スリップすることなく弁ハンドル14を逆方向に回動させることができる。
【0034】
本実施の形態に係る弁ハンドル固定部5a,5bが
図3,5に示すような溝部11や弾性体12を備える理由は、径の異なる弁ハンドル14を固定部5a,5bにより保持する際に、弁ハンドル14を固定部5a,5b設けられる固定素子60a,60bのうちのなるべく多くを、その枢軸10の軸心から弁ハンドル14の周側面までの距離を一定に保ったまま、弁ハンドル14の周側面接触させるためである。
しかしながら、本実施の形態に係る弁ハンドル固定部5a,5bが
図3,5に示すような溝部11や弾性体12を備える必要は必ずしもない。
より具体的には、弾性体12を用いることに代えて下記
図6に示すような枢軸スライド規制部材を用いることによっても同様の機能を発揮させることができる。
図6(a)は本発明の実施の形態に係る弁ハンドル固定部において枢軸スライド規制部材を用いて枢軸のスライド移動を規制する様子を示す説明図であり、(b)は
図6(a)中のQ−Q線矢視断面図である。なお、
図1乃至
図5に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
図6(a),(b)に示すように、枢軸スライド規制部材13は、弁ハンドル固定部5bの開口部が形成されない側の外側面を被覆するように取設される断面コ字状で鞘状の本体13a(例えば、鋼板を折曲してなるもの)と、この本体13aにおいて溝部11と符合する位置に、枢軸10のスライドを許容又は規制するような係止溝13bを形成してなるものである。
ただし、本体13aに形成される溝部11は有底のものでなく切欠き状のものであり、このような切欠き状の溝部11から枢軸10の端部が導出されている。
また、特に図示しないが、枢軸スライド規制部材13の使用時に枢軸10により本体13aが押し上げられてその取付け位置がずれてしまうことがないように、固定素子保持部9bに枢軸スライド規制部材13を固定できるような固定手段を備えておくことが望ましい。なお、このような固定手段は特に特定されないが、リング状又はキャップ状のもので固定素子保持部9bに枢軸スライド規制部材13を固定する方法などが考えられる。
【0035】
そして、このような枢軸スライド規制部材13を用いる場合は、
図6(a)に示すように、固定素子保持部9bに枢軸スライド規制部材13を装着すること(着脱可能に固設することで)で、Aタイプ固定素子60aの枢軸10は溝部11中を遊動可能になるのに対し、Bタイプ固定素子60bの枢軸10は係止溝13bによりそのスライドが規制されることになる。
そして、この状態で図示しない操作部2(先の
図1,2を参照)を正回動させると、すなわち、
図6(a)中の符号Sで示す方向に回動させると、Aタイプ固定素子60aの枢軸10は溝部11中を遊動して固定素子60aは弁ハンドル14の周側面から離間する一方、Bタイプ固定素子60bの枢軸10は係止溝13bによりそのスライドが規制されて上述のプロセスP3が起こり、Bタイプ固定素子60bによりラチェット機能が発揮される。
なお、操作部2を逆回動する際にAタイプ固定素子60aによりラチェット機能を発揮させる場合は、Aタイプ固定素子60aの枢軸10を収容する溝部11にこの枢軸10のスライドを規制するような係止溝13bを形成するとともに、Bタイプ固定素子60bの枢軸10を収容する溝部11にはこの枢軸10を遊動させるような係止溝13bを形成すればよい。
【0036】
なお、
図6(a)では、枢軸スライド規制部材13を、弁ハンドル固定部5bに取設される固定素子60a,60bのうちの所望のタイプの固定素子の全てを弁ハンドル14の周側面上に接触させることができるように構成する場合を例に挙げている。この場合は、操作対象である弁ハンドル14の径に応じてそれぞれ別々に、なおかつ、正回動用と逆回動用とを別々に分けて、枢軸スライド規制部材13を準備する必要がある。
他方、弁ハンドル固定部5bに取設される固定素子60a,60bのうちの所望のタイプの固定素子のうちの少なくとも1つが弁ハンドル14の周側面上に接触していればよいというのであれば、径の異なる弁ハンドル14に対して用いられる枢軸スライド規制部材13を一種類のみにすることができる。ただし、この場合でも正回動用と逆回動用は別々に分けて準備する必要がある。
また、特に弁ハンドル固定部5bが、その平面図において線対称を成す場合は、枢軸スライド規制部材13の左右方向を反転させることで正回動用の枢軸スライド規制部材13と、逆回動用の枢軸スライド規制部材13を兼用できる。
なお、本実施の形態に係る弁ハンドル操作補助器具1A,1Bの使用対象である弁ハンドル14の径が1種類のみである場合は、枢軸スライド規制部材13を固定素子保持部9bの中空部内に固設しても良いし、固定素子保持部9bに形成される溝部11が枢軸スライド規制部材13の係止溝13bとしても機能するように形成しておいてもよい。
【0037】
さらに、弁ハンドル固定部5a,5bでは溝部11,弾性体12又は枢軸スライド規制部材13を備えない場合でも、固定素子60a又は固定素子60bによりによりラチェット機能を発揮させることができる。この場合、固定素子保持部9a又は固定素子保持部9bに枢軸10をスライドさせない状態で取設する必要がある。
この場合は、弁ハンドル14に弁ハンドル固定部5a又は弁ハンドル固定部5bを取設した際に、弁ハンドル14の周側面上に偶然接触することができた固定素子60a又は固定素子60bによりラチェット機能が発揮されることになる。
このような場合に固定素子60a又は固定素子60bによりラチェット機能が発揮される仕組みについては、
図4に示す場合と実質的には同じである。
つまり、
図4に示される場合は、枢軸10が溝部11をスライド可能に構成されるものの、枢軸10のスライドは弾性体12(スライド規制手段)により規制されている。これに対して、スライド規制手段としての溝部11を備えない場合は、枢軸10は固定素子保持部9a又は固定素子保持部9bにスライドしない状態で取設されるので、結果としては、枢軸10の移動が規制されている状態と同じである(以下、この状態をケース1とよぶ)。
【0038】
なお、
図3乃至
図6に示される固定素子60a,60bの曲面は純粋な円弧状でないが、下記のような構成を付加すれば固定素子60a,60bの曲面が円弧であっても目的とする機能を発揮させることができる。
より具体的には、固定素子60a,60bにおいて弁ハンドル14の周側面に接触する曲面を円弧にするとともに、枢軸10を挟んでこの円弧と対峙して形成されるブロック体7の周側面を
図4(b),(d)に示すような曲面、すなわち、枢軸の軸心からこの曲面までの距離R1(図示せず)がこの曲面に沿って漸増して距離R2(図示せず、ただし、R1<R2)となるような曲面を形成しておき、この曲面が枢軸10の回動に伴って固定素子保持部9a又は固定素子保持部9bの中空部の底面に接触するよう構成しておけばよい。ただし、この場合、上述のケース1と同様に枢軸10は固定素子保持部9a又は固定素子保持部9bにスライドしないよう取設しておく必要がある。
この場合、弁ハンドル14の周側面から固定素子保持部9a又は固定素子保持部9bの中空部の底面(断面コ字状体の折り返し部の内側面)までの距離は一定であり、この部分に固定素子60a,60bが介設されることになる。そして、枢軸10の回動に伴って固定素子60a,60bが転動する場合、その回動方向がR1からR2に向かう場合は、固定素子60a又は固定素子60bの転動が固定素子保持部9a又は固定素子保持部9bの底面との接触により停止し、結果的にラチェット機能が発揮される。
【0039】
本実施の形態に係る弁ハンドル操作補助器具1A,1Bは、以上述べたような機構を備えるだけでも支障なくその機能を発揮させることができるが、より好ましくは、Aタイプ固定素子60a又はBタイプ固定素子60bのいずれか一方がラチェット機能を発揮している時に、他方の固定素子は弁ハンドル14の周側面上に接触していないことが望ましい。
このような事情に鑑み、必要に応じて所望のタイプの固定素子のみを弁ハンドル14の周側面上に接触させることができるようにしたものが、以下に示すような、接触規制手段を備えた弁ハンドル操作補助器具である。
ここでは、その一例として、弁ハンドル固定部5bに接触規制手段を備えた場合を例に挙げて説明する。もちろん、このような接触規制手段は、弁ハンドル固定部5aにも設けることができる。
また、本願明細書では、梯子状のシンプルな構造物を用いて固定素子60a又は固定素子60bの弁ハンドル14への接触を規制する場合と、磁力を利用して固定素子60a又は固定素子60bの弁ハンドル14への接触を規制する場合のそれぞれについて説明する。
【0040】
まず、
図7を参照しながら梯子状の接触規制手段を用いて固定素子60a又は固定素子60bの弁ハンドル14への接触を規制する場合について説明する。
図7(a),(b)はともに本発明の実施の形態に係る弁ハンドル固定部において接触規制手段により所望のタイプの固定素子の弁ハンドルへの接触を規制する様子を示す説明図である。また、(c)は本発明の実施の形態に係る弁ハンドル固定部における梯子状物体の平面図である。なお、
図1乃至
図6に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
図7(c)に示すように、本実施の形態に係る接触規制手段を構成する梯子状物体15は、互に平行に配される一対の棒状体からなる本体部16,16と、この本体部16,16をつなぐように架設される複数本の連結部17と、外部から本体部16の操作を可能にするための操作用つまみ18と、により構成されるものである。
そして、このような梯子状物体15は、
図7(a),(b)に示すように、弁ハンドル固定部5aの中空部内において、開口部と平行に、かつ、開口部の伸長方向に沿ってスライド可能に取設されている。さらに、梯子状物体15に形成される操作用つまみ18の本体部16に接続されない側の端部は、固定素子保持部9bの側壁に穿設される操作用スリット19から導出されており、作業者は、操作用スリット19から導出される操作用つまみ18を挟持して梯子状物体15を所望方向に、すなわち、紙面左右方向にスライドさせることができる。
なお、
図7(a),(b)中には特に図示しないが、固定素子保持部9bの中空部内において梯子状物体15スライド可能に保持するための支持部材を設けておいてもよい。
また、
図7(a)は、図示しない操作部2(
図1,2を参照)を正回動させる場合に、Bタイプ固定素子60bによりラチェット機能を発揮させつつ、梯子状物体15により弁ハンドル14の周側面へのAタイプ固定素子60aの接触を妨げる場合を示している。
他方、
図7(b)は、図示しない操作部2(
図1,2を参照)を逆回動させる場合に、Aタイプ固定素子60aによりラチェット機能を発揮させつつ、梯子状物体15により弁ハンドル14の周側面へのBタイプ固定素子60aの接触を妨げる場合を示している。
【0041】
図7(a)に示すように、固定素子保持部9bにおいて梯子状物体15を紙面左側にスライドさせた際に、Aタイプ固定素子60aの側面に梯子状物体15の連結部17が接触して固定素子60aが跳ね上げられるように、かつ、これと同時にBタイプ固定素子60bには連結部17が接触しないように、本体部16上に連結部17を配置しておくことで、操作部2を正回動させる際にAタイプ固定素子60aを弁ハンドル14に接触させることなく、Bタイプ固定素子60bのみを弁ハンドル14に接触させて、この固定素子60bによりラチェット機能を発揮させることができる。
また、
図7(b)に示すように、固定素子保持部9bにおいて梯子状物体15を紙面右側にスライドさせた際に、Aタイプ固定素子60aに連結部17が接触しないように、かつ、Bタイプ固定素子60bの側面には梯子状物体15の連結部17が接触して固定素子60bが跳ね上げられるように、本体部16上に連結部17を配置しておくことで、操作部2を逆回動させる際にBタイプ固定素子60bを弁ハンドル14に接触させることなく、Aタイプ固定素子60aのみを弁ハンドル14に接触させて、この固定素子60aによりラチェット機能を発揮させることができる。
このように、弁ハンドル固定部5a又は弁ハンドル固定部5bに梯子状物体15を設けることで、ラチェット機能の発揮に必要な所望のタイプの固定素子のみを弁ハンドル14の周側面上に接触させることができる。
この結果、ラチェット機能の発揮に不必要な固定素子が弁ハンドル14の周側面上に接触するのを防止できるので、本実施の形態に係る弁ハンドル操作補助器具1A,1Bの機能性を向上することができる。
なお、
図7においては梯子状物体15を直接手でスライドさせる場合を例に挙げて説明しているが、梯子状物体15を直接手でスライドさせることに代えてウォームギアを利用して梯子状物体15をスライドさせる構成としてもよい。
【0042】
次に、
図8を参照しながら磁力を利用した接触規制手段を用いて固定素子60a又は固定素子60bの弁ハンドル14への接触を規制する場合について説明する。
図8(a),(b)はともに本発明の実施の形態に係る弁ハンドル固定部において磁力を利用した接触規制手段により所望のタイプの固定素子の弁ハンドルへの接触を規制する様子を示す説明図である。なお、
図1乃至
図7に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
図8(a),(b)に示すように、磁気利用接触規制手段24は、固定素子保持部9bの中空部内において開口部側に向かって突設される支持用突起23と、この支持用突起23の左右それぞれの面に取設されて、電気を導通させることで磁力を発生させるソレノイド部21と、固定素子60a,60bの周側面上で、かつ、ソレノイド部21と対向する固定素子60a,60bの頂部近傍に固設される磁石20と、により構成されるものである。
また、
図8(a)は、図示しない操作部2(
図1,2を参照)を正回動させる場合に、Bタイプ固定素子60bによりラチェット機能を発揮させつつ、磁気利用接触規制手段24により弁ハンドル14の周側面へのAタイプ固定素子60aの接触を妨げる場合を示している。
他方、
図8(b)は、図示しない操作部2(
図1,2を参照)を逆回動させる場合に、Aタイプ固定素子60aによりラチェット機能を発揮させつつ、磁気利用接触規制手段24により弁ハンドル14の周側面へのBタイプ固定素子60bの接触を妨げる場合を示している。
【0043】
図8(a)に示すように、支持用突起23に取設されるソレノイド部21のうち、左側面に取設されるソレノイド部21に通電するとこのソレノイド部21が誘磁されて、支持用突起23の左側に配される磁石20がこのソレノイド部21に引き寄せられる。そして、これによりソレノイド部21に引き寄せられた磁石20を備えるAタイプ固定素子60aが枢軸10を基軸に正回動して跳ね上げられた状態となり、弁ハンドル14の周側面上にBタイプ固定素子60bのみが接触した状態となる。さらに、この状態で図示しない操作部2(
図1,2を参照)を正回動させることで、Bタイプ固定素子60bによりラチェット機能が発揮される。
他方、
図8(b)に示すように、支持用突起23に取設されるソレノイド部21のうち、右側面に取設されるソレノイド部21に通電するとこのソレノイド部21が誘磁されて、支持用突起23の右側に配される磁石20がこのソレノイド部21に引き寄せられる。そして、これによりソレノイド部21に引き寄せられた磁石20を備えるBタイプ固定素子60bが枢軸10を基軸に逆回動して跳ね上げられた状態となり、弁ハンドル14の周側面上にAタイプ固定素子60aみが接触した状態となる。さらに、この状態で図示しない操作部2(
図1,2を参照)を逆回動させることで、Aタイプ固定素子60aによりラチェット機能が発揮される。
いずれの場合も、ラチェット機能の発揮に不必要な固定素子が弁ハンドル14の周側面上に接触するのを防止できるので、本実施の形態に係る弁ハンドル操作補助器具1A,1Bの機能性を向上することができる。
なお、固定素子60a,60bにおけるブロック体7を鉄や磁性体により構成する場合は、固定素子60a,60bに磁石20を設けることなしに同様の効果を発揮させることができる。
【0044】
これまで、弁ハンドル固定部5a,5bに2タイプの固定素子60a,60bを同時に備えることで操作部2を正逆どちらの方向に回動させてもラチェット機能を発揮させることができる弁ハンドル操作補助器具1A,1Bについて説明してきたが、このような効果は固定素子60a,60bとは形状が異なる他の固定素子を一種類のみ備えることによっても発揮させることができる。
このような固定素子について
図9を参照しながら説明する。
図9(a)は本発明の実施の形態の変形例に係る固定素子の平面図であり、(b)は本発明の実施の形態の他の変形例に係る固定素子の平面図である。なお、
図1乃至
図3に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
図9(a)に示す変形例に係る固定素子61は、端的に説明すると、
図4(a),(b)に示す固定素子60aと、
図4(c),(d)に示す固定素子60bとを、それぞれの距離r1を有する側面で一体に結合したものに枢軸10を挿通したものである。つまり、変形例に係る固定素子61は、固定素子60aの構成と、固定素子60bの構成を同時に備えている。
このような変形例に係る固定素子61は、枢軸10を基軸に正逆どちらの方向に回動させても固定素子61の曲面と弁ハンドル14の周側面との接点が距離r1から距離r2に向かって移動することになり、ラチェット機能が発揮される。
また、このような変形例に係る固定素子61を用いる場合は、
図7,8に示すような接触規制手段を用いる必要がない。
よって、このような変形例に係る固定素子61を用いる場合は、シンプルでかつ実用性の高い弁ハンドル操作補助器具1A,1Bを提供することができる。
【0045】
図9(b)に示す他の変形例に係る固定素子62は、端的に説明すると、
図4(a),(b)に示す固定素子60aと、
図4(c),(d)に示す固定素子60bとを、それぞれの距離r2を有する側面で一体に結合したものに枢軸10を挿通したものである。つまり、他の変形例に係る固定素子62も、固定素子60aの構成と、固定素子60bの構成を同時に備えている。
このような他の変形例に係る固定素子62では、
図9(b)の紙面右側に形成される曲面が、
図4(a),(b)に示すAタイプ固定素子60aにおける曲面に相当し、
図9(b)の紙面左側に形成される曲面が、
図4(c),(d)に示すBタイプ固定素子60bの曲面に相当する。
従って、このような他の変形例に係る固定素子62は、
図9(b)の紙面右側に形成される曲面を弁ハンドル14の周側面上に接触させて使用する場合は、固定素子62は固定素子60aとして機能し、
図9(b)の紙面左側に形成される曲面を弁ハンドル14の周側面上に接触させて使用する場合は、固定素子62は固定素子60bとして機能する。
また、弁ハンドル固定部5a,5bがこのような他の変形例に係る固定素子62を備える場合で、かつ、先の
図7,8に示すような接触規制手段を備えない場合は、弁ハンドル14の周側面上において固定素子62が固定素子60a,60bのどちらのタイプの固定素子として機能するかは確率(確率は1/2)により決まるので、不確定となる。
他方、弁ハンドル固定部5a,5bがこのような他の変形例に係る固定素子62を備える場合で、かつ、先の
図7,8に示すような接触規制手段を備える場合は、固定素子62により発揮されるラチェット機能の作用方向を意図的に選択することができる。このため、先の
図7,8に示すような接触規制手段は、弁ハンドル14の周側面に対する固定素子62の接触の向きを所望に変更するための手段でもある。
【0046】
なお、このような他の変形例に係る固定素子62を用いる場合で、かつ、先の
図7に示すような接触規制手段(梯子状物体15)を備える場合は、固定素子62を正逆どちらの方向にも傾動させることができるよう、個々の固定素子62の左右それぞれの側面近傍に一本ずつ計2本の連結部17を設けておく必要がある。
また、このような他の変形例に係る固定素子62を用いる場合で、かつ、先の
図8に示すような磁力を利用する接触規制手段を備える場合は、個々の固定素子62の間にソレノイド部21を備えた支持用突起23を配設するとともに、
図9(b)に示す固定素子62において枢軸10近傍のブロック体7の左右側面のそれぞれに磁石20を突設するように固設しておく必要がある。
【0047】
ここで、別の変形例に係る固定素子及びその制御機構について
図10乃至
図12を参照しながら説明する。
まず、
図10を参照しながら別の変形例に係る固定素子の構造について説明する。
図10(a)は本発明の実施の形態の別の変形例に係る固定素子の平面図であり、(b)は
図10(a)中のR−R線矢視断面図である。なお、
図1乃至
図9に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
図10(a),(b)に示すように、別の変形例に係る積層タイプ固定素子63は、枢軸10上に、ブロック体7の厚みを薄くしたAタイプ固定素子60aと、Bタイプ60bとが交互に積層されてなるものである。なお、このような積層タイプ固定素子63における枢軸10は、内軸体10bと、この内軸体10bの周側面上に回動自在に周設される外筒体10aとにより構成され、固定素子60a,60bはともに外筒体10aに固設されていて、個々の固定素子60a,60bはいずれも独立して内軸体10bを基軸に回動可能に構成されている。
このような、別の変形例に係る積層タイプ固定素子63は、先の
図9(a)に示す固定素子61と同様に用いることができる。
すなわち、特に図示しないが、弁ハンドル固定部5a又は弁ハンドル固定部5bが積層タイプ固定素子63を備える場合は、弁ハンドル固定部5a又は弁ハンドル固定部5bを弁ハンドル14に取設した際に、固定素子60a,60bの両方の曲面が弁ハンドル14の周側面上に接触するものの、操作部2を正回動させると、Bタイプ固定素子60bによりラチェット機能が発揮される一方で、Aタイプ固定素子60aは枢軸10を基軸に転動して弁ハンドル14から離間してしまいラチェット機能を発揮しない。他方、操作部2を逆回動させると、今度はAタイプ固定素子60aによりラチェット機能が発揮される一方で、Bタイプ固定素子60bは枢軸10を基軸に転動して弁ハンドル14から離間してしまいラチェット機能を発揮しない。
このように、
図10(a),(b)に示すような別の変形例に係る積層タイプ固定素子63を用いる場合も、
図7,8に示すような接触規制手段を用いることなしに目的とする機能を発揮させることができる。
【0048】
なお、
図10(a),(b)に示すような別の変形例に係る積層タイプ固定素子63を用いる場合は、
図7,8に示すような接触規制手段を使用することでその機能性を向上することができる。
ここで、
図7,8に示すような接触規制手段を用いるそれぞれの場合について
図11,12を参照しながらその作用機構について説明する。
まず、接触規制手段として
図7に示すような梯子状物体を用いる場合について
図11を参照しながら説明する。
図11(a)は本発明の実施の形態に係る積層タイプ固定素子と梯子状物体の位置関係を説明する概念図である。また、(b),(c)はともに本発明の実施の形態に係る積層タイプ固定素子における所望の固定素子を梯子状物体により弁ハンドルへの接触を規制する様子を示す説明図である。なお、
図1乃至
図10に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
図11(a)に示すように、別の変形例に係る積層タイプ固定素子63を構成する固定素子60a又は固定素子60bの弁ハンドル14への接触を、
図7に示すような梯子状物体15(ただし、
図11に示す梯子状物体15は
図7に示すものと完全に同一なものではない)を用いて規制する場合は、梯子状物体15を積層タイプ固定素子63の頂部(滑り止め材8を備える曲面と対峙する側のブロック体7の側面)近傍に配設するとともに、固定素子60aと固定素子60bとを枢軸10を中心にして左右に振り分けておいてから、その分かれ目に梯子状物体15における連結部17を収納するように配設すればよい。
【0049】
この場合、
図11(b)に示すように、梯子状物体15を紙面右側にわずかにスライドさせると、枢軸10に軸支される固定素子60aの頂部が鉛直下方側に押し下げられる。つまり、固定素子60aのみが枢軸10を基軸に正方向に回動して、固定素子60aのみが跳ね上がった状態となり、図示しない弁ハンドル14の周側面上に接触できなくなる。そして、図示しない弁ハンドル14の周側面上には固定素子60bのみが接触することになり、この固定素子60bによりラチェット機能が発揮される。
他方、
図11(c)に示すように、梯子状物体15を紙面左側にわずかにスライドさせると、今度は枢軸10に軸支される固定素子60bの頂部が鉛直下方側に押し下げられる。つまり、固定素子60bのみが枢軸10を基軸に逆方向に回動して、固定素子60bのみが跳ね上がった状態となり、図示しない弁ハンドル14の周側面上に接触できなくなる。そして、図示しない弁ハンドル14の周側面上には固定素子60aのみが接触することになり、この固定素子60aによりラチェット機能が発揮される。
従って、
図11に示すような梯子状物体15を用いることによれば、別の変形例に係る積層タイプ固定素子63を用いる場合でも、本実施の形態に係る弁ハンドル固定部5a又は弁ハンドル固定部5bの構造をシンプルにしながらその機能性を向上させることができる。
なお、
図11に示す梯子状物体15は直接手によりスライドさせてもよいし、そのスライド機構としてウォームギアを用いてもよい。
【0050】
次に、接触規制手段として
図8に示すような磁力を利用する梯子状物体を用いる場合について
図12を参照しながら説明する。
図12(a)は本発明の実施の形態に係る積層タイプ固定素子と磁気を利用した接触規制手段との位置関係を説明する概念図である。また、(b),(c)はともに本発明の実施の形態に係る積層タイプ固定素子における所望の固定素子を磁気を利用した接触規制手段により弁ハンドルへの接触を規制する様子を示す説明図である。なお、
図1乃至
図11に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
図12(a)に示すように、別の変形例に係る積層タイプ固定素子63を構成する固定素子60a又は固定素子60bの弁ハンドル14への接触を、
図8に示すような磁気利用接触規制手段24を用いて規制する場合は、積層タイプ固定素子63の左右それぞれの側面側にソレノイド部21を備えた支持用突起23を配設するとともに、積層タイプ固定素子63において、支持用突起23と対向する固定素子60aの周側面上で、かつ、固定素子60aの頂部近傍に、磁石20を突設するように固設するとともに、支持用突起23と対向する固定素子60bの周側面上で、かつ、固定素子60bの頂部近傍に、磁石20を突設するようにして固設すればよい。
【0051】
この場合、
図12(b)に示すように、支持用突起23において紙面左側に配置されるソレノイド部21に通電してソレノイド部21が誘磁されると、固定素子60aの頂部近傍に固設される磁石20がソレノイド部21に生じた磁力に引き寄せられて、固定素子60aのみが枢軸10を基軸に正回動する。この結果、積層タイプ固定素子63における固定素子60aのみが跳ね上がった状態となり、図示しない弁ハンドル14の周側面上に接触できなくなる。これにより、図示しない弁ハンドル14の周側面上には固定素子60bのみが接触することになり、この固定素子60bによりラチェット機能が発揮される。
図12(c)に示すように、支持用突起23において紙面右側に配置されるソレノイド部21に通電してソレノイド部21が誘磁されると、固定素子60bの頂部近傍に固設される磁石20がソレノイド部21に生じた磁力に引き寄せられて、固定素子60bのみが枢軸10を基軸に逆回動する。この結果、積層タイプ固定素子63における固定素子60bのみが跳ね上がった状態となり、図示しない弁ハンドル14の周側面上に接触できなくなる。これにより、図示しない弁ハンドル14の周側面上には固定素子60aのみが接触することになり、この固定素子60aによりラチェット機能が発揮される。
従って、
図12に示すような磁気利用接触規制手段24を用いる場合も、本実施の形態に係る弁ハンドル固定部5a又は弁ハンドル固定部5bの構造をシンプルにしながらその機能性を向上させることができる。
なお、
図12では磁石20と誘磁されたソレノイド部21が引き合う現象を利用して固定素子60a又は固定素子60bを跳ね上げる場合を例に挙げて説明しているが、これと同時にラチェット機能を発揮させる固定素子60b又は固定素子60aに固設される磁石20と反発するような磁力を他方のソレノイド部21に発生させて、ラチェット機能を発揮させる固定素子60b又は固定素子60aが弁ハンドル14の周側面上に接触しやすくなるように制御してもよい。この場合、本実施の形態に係る弁ハンドル操作補助器具1A,1Bの機能性を一層向上させることができる。
【0052】
最後に、
図1,2に示す弁ハンドル操作補助器具1A,1Bにおける支持アーム3の伸縮機構4、及び、支持アーム3に取設される弁ハンドル固定部5a又は弁ハンドル固定部5bの弁ハンドル14への固定構造について
図13を参照しながら詳細に説明する。
本実施の形態に係る弁ハンドル操作補助器具1A,1Bでは、支持アーム3をその長手方向に伸縮させるための伸縮機構4を特定のものに限定する必要はなく、支持アーム3の長さを変更した後の状態を、外力が作用するような状況下においても好適に維持できるものであれば、どのような構造も利用できる。
このような支持アーム3の伸縮機構4としては、例えば、入れ子式のものや、ネジを利用した伸縮構造等を利用することができる。
また、支持アーム3の長手方向両端部に取設される弁ハンドル固定部5a又は弁ハンドル固定部5bを弁ハンドル14に固定する際の固定構造としては、例えば、クランプ機構を用いることができる。
なお、支持アーム3の伸縮機構4を利用するだけで、弁ハンドル固定部5a又は弁ハンドル固定部5bを弁ハンドル14の周側面上にしっかりと押し当てることができる場合は、必ずしもクランプ機構を備える必要はない。
さらに、支持アーム3上に取設される一対の弁ハンドル固定部5a又は弁ハンドル固定部5bを、弁ハンドル14の周側面上に押し付けながら固定するための他の構造としては、例えば、鋼製のワイヤを用いたワイヤ式伸縮機構を利用することができる。
【0053】
このようなワイヤ式伸縮機構について
図13を参照しながら説明する。
図13(a)は本発明の実施の形態に係る支持アームに利用される巻取ワイヤ式伸縮機構の平面図であり、(b)は巻取ワイヤ式伸縮機構においてワイヤ伸縮時の様子を示す断面図概念図である。また、(c)は巻取ワイヤ式伸縮機構においてワイヤ伸縮ロック時の様子を示す断面図概念図である。なお、
図1乃至
図12に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
図13(a)に示すように、ワイヤ式伸縮機構25は、ケーシングである本体部26の側面に設けられるワイヤ導出部28から左右方向に鋼製のワイヤ27がその長さを自在に調整可能に導出されるものである。
このようなワイヤ式伸縮機構25における本体部26の内部構造は、
図13(b)に示すように、本体部26の中央に立設されその一方の端部が本体部26の外に導出される内軸31と、この内軸31の外側面上に周設される外軸30と、この外軸30の周側面上に固設されてワイヤ27が巻回される巻取ドラム29と、この巻取ドラム29の下方側において外軸30の周側面上に固設されるギア32と、このギア32の下方側で本体部26の底面上に固設されるぜんまいを内包するストッパー33とにより構成されるものである。
なお、このような本体部26の巻取ドラム29にはぜんまいにより常時、巻取ドラム29にワイヤ27を巻き取ろうとするような力が作用している。
そして、このようなワイヤ式伸縮機構25では、ワイヤ導出部28から導出されるワイヤ27を所望量だけ左右方向に引き出した後、外軸30を鉛直下方側に押し下げることで、ギア32とストッパー33と噛み合って、巻取ドラム29の巻取状態を所望の状態に維持しておくことができる仕組みになっている。
【0054】
そして、このようなワイヤ式伸縮機構25の本体部26から導出されるワイヤ27のそれぞれの端部を、支持アーム3の長手方向端部近傍のそれぞれに取設される弁ハンドル固定部5a又は弁ハンドル固定部5b(ただし、この場合弁ハンドル固定部5a又は弁ハンドル固定部5bは支持アーム3上をスライド可能に取設されている)に連結しておくことで、ワイヤ式伸縮機構25により支持アーム3上に取設される一対の弁ハンドル固定部5a又は弁ハンドル固定部5bが互いに引き合っている状態を実現できる。この結果、個々の弁ハンドル固定部5a又は弁ハンドル固定部5bは弁ハンドル14の周側面上に強く押し付けられることになる。
【0055】
以上述べたように、上述のような本実施の形態に係る弁ハンドル操作補助器具(例えば、弁ハンドル操作補助器具1A,1B)によれば、異なる径を有する弁ハンドル14への装着が可能で汎用性が高く、弁ハンドル14の周側面上の複数個所を弁ハンドル固定部5a又は弁ハンドル固定部5bにより支持することができて弁ハンドル14の局所に大きな力が作用する恐れがなく、しかも、その操作部2を正逆どちらの方向に回動させる場合でも確実にラチェット機能を発揮させることができる弁ハンドル操作補助器具を提供することができる。
【解決手段】棒状の操作部2と、この操作部2上に取設されて弁ハンドル14を挟持する一対の弁ハンドル固定部5aと、を有し、この弁ハンドル固定部5aは、弁ハンドル14に接触して弁ハンドル14を保持する少なくとも1つの固定素子60a,60bと、この固定素子60a,60bを保持する固定素子保持部9aと、この固定素子保持部9aに固定素子60a,60bを回動可能に軸支する枢軸10と、を備え、固定素子60a,60bは、その側面に曲面を備えたブロック体7と、曲面を被覆する滑り止め材8と、を具備し、ブロック体7における曲面は、枢軸10の軸心から曲面までの距離r1がこの曲面に沿って漸増して距離r2(ただし、r1<r2)となることを特徴とする弁ハンドル操作補助器具1Aによる。