(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
筒状を成し、ガスタービンのロータを回転させた燃焼ガスが通る排気流路を径方向内側に形成する外側ディフューザの径方向外側と、該外側ディフューザの径方向外側に間隔をあけて配置されている外側部材との間の外側空間と、前記排気流路との間を該外側ディフューザの端部でシールするシール装置において、
筒状の前記外側ディフューザの端部から径方向外側へ広がって前記外側部材に至る複数のシール板が互いに接して積層されている第一のシール板群及び第二のシール板群と、
前記ロータの回転軸線が延びる軸方向に、前記第一のシール板群と前記第二のシール板群とを間隔をあけて保持するスペーサと
を備えているシール装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載のシール装置の2枚のシール板は、排気車室壁又は排気室サポートと外側ディフューザとの熱膨張差を許容するために、いずれも、変形容易な薄い金属板で形成されている。このため、外側ディフューザの径方向内側及び径方向外側にそれぞれ存在するガスによりシール板が振動し易く、比較的短期間のうちにシール装置が損傷するおそれがある。
【0008】
本発明は、損傷を抑えることができるシール装置、及び、シール装置を備えているガスタービンを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の態様に係るシール装置は、筒状を成し、ガスタービンのロータを回転させた燃焼ガスが通る排気流路を径方向内側に形成する外側ディフューザの径方向外側と、該外側ディフューザの径方向外側に間隔をあけて配置されている外側部材との間の外側空間と、前記排気流路との間を該外側ディフューザの端部でシールするシール装置において、筒状の前記外側ディフューザの端部から径方向外側へ広がって前記外側部材に至る複数のシール板が互いに接して積層されている第一のシール板群又は前記第二のシール板群と、前記ロータの回転軸線が延びる軸方向に、前記第一のシール板群と前記第二のシール板群とを間隔をあけて保持するスペーサと、を備えている。
【0010】
当該シール装置は、外側空間と排気流路側とを前記第一、第二のシール板群で仕切っているので、外側空間と排気流路側との間をシールすることができる。
【0011】
当該シール装置は、排気流路側のシール板群の複数のシール板のうち、燃焼ガスに接するシール板が燃焼ガスから振動エネルギーを受けても、燃焼ガスに接するシール板に軸方向に向く面で接する他のシール板との摩擦により、振動エネルギーが吸収されて、複数のシール板の振動を軽減することができる。同様に、外部空間側のシール板群の複数のシール板のうち、空気に接するシール板が空気から振動エネルギーを受けても、空気に接するシール板に軸方向に向く面で接する他のシール板との摩擦により、振動エネルギーが吸収されて、複数のシール板の振動を軽減することができる。
【0012】
よって、当該シール装置は、各シール板群の振動を軽減することができ、振動による複数のシール板の損傷を抑えることができる。
【0013】
本発明の第二の態様に係るシール装置において、前記第一のシール板群又は前記第二のシール板群を構成する複数のシール板は、前記ロータを中心とする周方向に並んで周方向の一部を形成する複数の分割片を有して構成され、前記第一のシール板群又は前記第二のシール板群を構成する複数の前記分割片における周方向の境目の位置と、前記第一のシール板群又は前記第二のシール板群を構成する前記分割片に軸方向に向く面で接する他の分割片における周方向の境目の位置とは、周方向で異なっていてもよい。
【0014】
当該シール装置のシール板群を構成する各シール板は、いずれも、周方向に複数に分割されているため、周方向に並んでいる分割片の境目からガスが漏れ出る。しかしながら、当該シール装置は、シール板群を構成する複数のシール板を構成する複数の分割片における周方向の境目の位置と、前記シール板の前記分割片に軸方向に向く面で接する他の分割片における周方向の境目の位置とが周方向で異なっている。このため、当該シール装置は、シール板を構成する複数の分割片における周方向の境目からガスが漏れ出ても、シール板に軸方向に向く面で接する他のシール板により周方向の境目からのガス漏れを防ぐことができる。
【0015】
本発明の第三の態様に係るシール装置において、前記スペーサは、前記第一のシール板群の径方向外側部と前記第二のシール板群の径方向外側部との間隔を保持する外側スペーサと、前記第一のシール板群の径方向内側部と前記第二のシール板群の径方向内側部との間隔を保持する内側スペーサと、を有してもよい。
【0016】
当該シール装置は、径方向の剛性が高まることで、径方向の座屈強度を高めることができる。
【0017】
本発明の第四の態様に係るシール装置において、前記外側スペーサには、径方向外側から径方向内側に向かって貫通するシール空気孔が形成されていてもよい。
【0018】
当該シール装置は、第一のシール板群と第二のシール板群との間にシール空気を供給することで、外側空間と排気流路側との間のシール性を高めることができる。
【0019】
本発明の第五の態様に係る外側スペーサを有する前記シール装置において、前記外側スペーサと前記内側スペーサとの間で前記第一のシール板群と前記第二のシール板群との間隔を保持する中間スペーサと、を有してもよい。
【0020】
当該シール装置は、径方向における第一のシール板群と第二のシール板群の支点スパンが短くなることで、径方向の剛性及び座屈強度をより向上させることができる。当該シール装置は、径方向における第一のシール板群と第二のシール板群の支点スパンが短くなることで、第一のシール板群と第二のシール板群の振動振幅を小さくすることができ、振動によるシール板の損傷を抑えることができる。
【0021】
本発明の第六の態様に係る中間スペーサを有する前記シール装置において、前記第一のシール板群と前記中間スペーサと前記第二のシール板群とを貫通して、前記第一のシール板群及び前記第二のシール板群を中間スペーサに密着させる連結具を備え、前記第二のシール板群に形成される前記連結具が貫通する燃焼ガス側貫通孔は、前記第二のシール板群が前記連結具に対して径方向に相対移動可能なように、前記連結具外径より大きく形成されていてもよい。
【0022】
当該シール装置は、第一のシール板群と第二のシール板群とに熱膨張差が生じても、第二のシール板群は、連結具に対して、径方向に相対移動可能であるため、連結具が傾くことを防ぐことができる。各シール板群は、連結具が傾くと連結具近傍で局部的に変形する上に、連結具の外縁にシール板群が接して損傷するおそれがある。
しかしながら、当該シール装置は、連結具の傾きを防ぐことができるので、各シール板群の損傷を防ぐことができる。
【0023】
本発明の第七の態様に係る中間スペーサを有する前記シール装置において、前記第二のシール板群の軸方向厚さは、前記中間スペーサと前記連結具のナット側座金との間に形成された軸方向隙間より小さく形成されていてもよい。
【0024】
当該シール装置は、第二のシール板群のシール板の軸方向に、前記中間スペーサと前記連結具のナット側座金の間に隙間が形成されることにより、シール板の径方向の相対移動が更に円滑になる。
【0025】
本発明の第八の態様に係るシール装置において、前記第一のシール板群の径方向外側部と前記外側スペーサと前記第二のシール板群の径方向外側部とを、前記軸方向で前記外側部材との間で挟み込んで、該外側部材に取り付ける外側取付具と、前記第一のシール板群の径方向内側部と前記内側スペーサと前記第二のシール板群の径方向内側部とを、前記軸方向で前記外側ディフューザとの間で挟み込んで、該外側ディフューザに取り付ける内側取付具と、を備え、前記内側取付具と前記外側取付具とのうちのいずれか一方の取付具は、前記第一のシール板群及び前記第二のシール板群を取付対象に対して径方向に相対移動可能に取り付けてもよい。
【0026】
外側ディフューザは、ガスタービンの運転中、燃焼ガスに接するため、外側部材との間に熱膨張差が生じることで、外側部材の径に対する外側ディフューザの径が相対変化する。当該シール装置は、一方の取付具が一方のシール板群及び他方のシール板群を取付対象に対して径方向に相対移動可能に取り付けられるので、この相対移動により、外側部材の径に対する外側ディフューザの径の相対変化を許容することができる。
【0027】
本発明の第九の態様に係るガスタービンは、前記シール装置と、前記外側ディフューザと、前記外側部材と、を備えていることを特徴とする。
【0028】
当該ガスタービンも、前記シール装置を備えているので、外側空間と排気流路側との間をシールすることができると共に、各シール板群の振動を軽減することができ、振動によるシール板の損傷を抑えることができる。
【0029】
本発明の第十の態様に係るガスタービンにおいて、前記外側部材には、前記第一のシール板群と前記第二のシール板群との間にシール空気を供給するためのシール空気路が形成さされていてもよい。
【0030】
当該ガスタービンでは、第一のシール板群と第二のシール板群との間にシール空気を供給することで、外側空間と排気流路側との間のシール性を高めることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明では、外側空間と排気流路側とを第一のシール板群と第二のシール板群で仕切っているので、外側空間と排気流路側との間をシールすることができる。本発明では、各シール板群の振動を軽減することができるので、振動によるシール板の損傷を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係るガスタービンの一実施形態について、
図1〜
図8Bを参照して詳細に説明する。
【0034】
本実施形態のガスタービンは、
図1に示すように、外気を圧縮して圧縮空気を生成する圧縮機1と、燃料供給源からの燃料を圧縮空気に混合して燃焼させて燃焼ガスを生成する複数の燃焼器2と、燃焼ガスにより駆動するタービン3と、を備えている。
【0035】
タービン3は、ケーシング4と、このケーシング4内で回転するタービンロータ5とを備えている。タービンロータ5は、例えば、このタービンロータ5の回転で発電する発電機(図示されていない。)と接続されている。複数の燃焼器2は、タービンロータ5の回転軸線Arを中心として、周方向Dcに互いに等間隔でケーシング4に固定されている。なお、以下では、回転軸線Arが延びている方向を軸方向Daとし、回転軸線Arに対する径方向を単に径方向Drという。軸方向Daであって、タービン3を基準にして圧縮機1側を上流側、圧縮機1を基準にしてタービン3側を下流側という。
【0036】
タービンロータ5は、軸方向Daに並んでいる複数の段毎に回転軸線Arを中心とするロータディスク6と、周方向Dcに並んでロータディスク6に固定されている複数の動翼8と、最終段のロータディスク6に固定され軸方向Daに延びる軸部7と、を有している。軸部7は、回転軸線Arを中心として円柱状を成し、最終段のロータディスク6の下流側に設けられている。
【0037】
ケーシング4は、回転軸線Arを中心として円筒状を成し、最終段の動翼8よりも下流側に配置されている排気車室壁10と、排気車室壁10の下流側に配置されている排気室サポート11と、排気室サポート11の下流側に配置されている排気室壁12と、排気室壁12の下流側に配置されている排気ダクト13とを有している。
【0038】
排気車室壁(外側部材)10の径方向内側には、
図2に示すように、回転軸線Arを中心として円筒状の外側ディフューザ15及び内側ディフューザ16が配置されている。外側ディフューザ15は、排気車室壁10の内周面に沿って設けられている。内側ディフューザ16は、外側ディフューザ15の径方向内側に間隔をあけて配置されている。
【0039】
内側ディフューザ16の径方向内側には、タービンロータ5の軸部7を回転可能に支持する軸受け21と、この軸受け21の外周側を覆うと共にこの軸受け21を支持する軸受け箱22とが設けられている。排気車室壁10と軸受け箱22とは、外側ディフューザ15及び内側ディフューザ16を貫通するストラット23により連結されている。このストラット23は、ストラット23の延在方向に沿ってストラットカバー24で覆われている。ストラットカバー24の延在方向の一端部は外側ディフューザ15に取り付けられ、他端部は内側ディフューザ16に取り付けられている。
【0040】
排気室サポート(外側部材)11の径方向内側には、排気車室壁10の径方向内側と同様、回転軸線Arを中心として円筒状の外側ディフューザ17及び内側ディフューザ18が配置されている。外側ディフューザ17は、排気室サポート11の内周面に沿って設けられている。内側ディフューザ18は、外側ディフューザ17の径方向内側に間隔をあけて配置されている。排気室壁12は、外側ディフューザとして機能する。排気室壁12の径方向内側には、回転軸線Arを中心として円筒状の内側ディフューザ19が配置されている。
【0041】
排気車室壁10の径方向内側に配置されている外側ディフューザ15と内側ディフューザ16との間の空間、排気室サポート11の径方向内側に配置されている外側ディフューザ17と内側ディフューザ18との間の空間、外側ディフューザとして機能する排気室壁12とその内側ディフューザ19との間、さらに、排気ダクト13(
図1)の径方向内側の空間は、タービンロータ5を回転させた燃焼ガスGの排気流路28を形成する。
【0042】
排気車室壁10の径方向外側の面、排気室サポート11の径方向内側に配置されている外側ディフューザ17の径方向外側の面、及び排気室壁12の径方向外側の面には、それぞれ、断熱材26が設けられている。
【0043】
排気車室壁10の下流端部、及び排気室サポート11の上流端部には、
図3に示すように、それぞれ、シール装置30,30aが設けられている。排気車室壁10の下流端部に設けられているシール装置30は、排気車室壁10とこの排気車室壁10の径方向内側に配置されている外側ディフューザ15との間の外側空間29と、排気流路28との間をシールする装置である。排気室サポート11の上流端部に設けられているシール装置30aは、排気室サポート11と、この排気室サポート11の径方向内側に配置されている外側ディフューザ17との間の外側空間27と、排気流路28との間をシールする装置である。
【0044】
排気車室壁10の下流端部、及び排気室サポート11の上流端部に設けられている各シール装置30,30aは、基本的に同じ構成である。そこで、以下では、排気車室壁10の下流端部に設けられているシール装置30について説明する。排気室サポート11の上流端部に設けられているシール装置30aの説明を省略する。
【0045】
シール装置30は、
図4に示すように、第一のシール板群及び第二のシール板群32,33とスペーサ35,36,37を備えている。
第一のシール板群及び第二のシール板群32,33は、筒状の外側ディフューザ15の下流端部から径方向外側へ広がって排気車室壁10の下流端部に至り、軸方向Daに向く面で互いに接して積層されている2枚シール板を、それぞれ備えている。スペーサ35,36,37は、第一のシール板群32と第二のシール板群33とを軸方向Daに間隔をあけて保持する。さらに、シール装置30は、第一のシール板群32の径方向外側端部32o及び第二のシール板群33の径方向外側端部33oを排気車室壁10に取り付ける外側取付具40と、一方のシール板群32の径方向内側端部32i及び他方のシール板群33の径方向内側端部33iを外側ディフューザ15に取り付ける内側取付具45と、を備えている。
【0046】
第一のシール板群及び第二のシール板群32,33のうち、第一のシール板群32は、排気車室壁10と外側ディフューザ15との間の外側空間29中の空気と接するシール板群を成す。第二のシール板群33は、排気流路28を流れる燃焼ガスGに接するシール板群を成す。以下では、第一のシール板群32を空気側シール板群とし、第二のシール板群33を燃焼ガス側シール板群とする。
【0047】
スペーサ35,36,37は、外側スペーサ35と内側スペーサ36と中間スペーサを備える。外側スペーサ35は、燃焼ガス側シール板群33の径方向外側端部33oと空気側シール板群32の径方向外側端部32oとの間隔を保持する。内側スペーサ36は、燃焼ガス側シール板群33の径方向内側端部33iと空気側シール板群32の径方向内側端部32iとの間隔を保持する。中間スペーサは、外側スペーサ35と内側スペーサ36との間で燃焼ガス側シール板群33と空気側シール板群32との間隔を保持する。
【0048】
外側ディフューザ15の下流端部には、フランジ15fが形成されている。内側取付具45は、押え板46とボルト47を備える。押え板46は、燃焼ガス側シール板群33の径方向内側端部33iに接する。また、内側取付具45の押え板46は、燃焼ガス側シール板群33と内側スペーサ36と空気側シール板群32とを軸方向Daでフランジ15fとの間で挟み込み、燃焼ガス側シール板群33、内側スペーサ36および空気側シール板群32の軸方向Daの位置を拘束する。内側取付具45のボルト47は、燃焼ガス側シール板群33と内側スペーサ36と空気側シール板群32とを軸方向Daに貫通して、燃焼ガス側シール板群33、内側スペーサ36および空気側シール板群32の径方向Drの位置を拘束する。
【0049】
排気車室壁10の下流端部には、フランジ10fが形成されている。外側取付具40は、押え板41とボルト42を備える。押え板41は、燃焼ガス側シール板群33の径方向外側端部33oに接する。外側取付具40の押え板41は、燃焼ガス側シール板群33と外側スペーサ35と空気側シール板群32とを軸方向Daでフランジ10fとの間で挟み込み、燃焼ガス側シール板群33、外側スペーサ35および空気側シール板群32の軸方向Daの位置を拘束する。外側取付具40のボルト42は、内側取付具45のボルト47と異なり、燃焼ガス側シール板群33と外側スペーサ35と空気側シール板群32とを貫通しない。このため、この外側取付具40は、燃焼ガス側シール板群33の径方向外側端部33oと外側スペーサ35と空気側シール板群32の径方向外側端部32oの径方向Drへの相対移動を許容する。
【0050】
排気車室壁10のフランジ10fの径方向外側には、
図3及び
図4に示すように、シール空気配管10aが接続されている。このフランジ10fには、シール空気配管10a内の流路と連通するシール空気流路10pが形成されている。シール空気流路10pは、シール装置30の外側スペーサ35と対向する位置で開口している。外側スペーサ35には、径方向外側から径方向内側に貫通するシール空気孔35hが形成されている。このため、本実施形態では、シール空気配管10aにシール空気Asが供給されると、シール空気Asは、フランジ10fのシール空気流路10p及び外側スペーサ35のシール空気孔35hを経て、燃焼ガス側シール板群33と空気側シール板群32との間の空間に供給される。
【0051】
燃焼ガス側シール板群33を構成する2枚のシール板31、及び空気側シール板群32を構成する2枚のシール板31は、
図5に示すように、いずれも、組立の都合上、周方向に分割されている。シール板31は、周方向Dcに並んだ複数の分割片31pで構成されている。燃焼ガス側シール板群33を構成する2枚のシール板31のうちの一のシール板31を構成する複数の分割片31pにおける周方向Dcの境目31b1の位置と、この一のシール板31に軸方向Daに向く面で接する他のシール板31を構成する分割片31pにおける周方向Dcの境目31b2の位置とは、周方向Dcで異なっている。空気側シール板群32を構成する2枚のシール板31のうちの一のシール板31を構成する複数の分割片31pにおける周方向Dcの境目31b1の位置と、この一のシール板31に軸方向Daに向く面で接する他のシール板31を構成する分割片31pにおける周方向Dcの境目31b2の位置とは、周方向Dcで異なっている。各シール板31は、その厚さ方向に、言い換えると軸方向Daに容易に変形できるよう、各シール板31は、ミリメートルオーダーの厚さを有する。
【0052】
シール装置30は、
図6に示すように、燃焼ガス側シール板群33及び空気側シール板群32をそれぞれ中間スペーサ37に密着させて、相互に連結する連結具50を備えている。この連結具50は、ボルト51と、ボルト51の軸部51aに捻じ込まれるナット52と、ボルト51のボルト頭51bに接するボルト側座金53と、ナット52に接するナット側座金54と、を有している。ボルト側座金53及びナット側座金54は、いずれも、座面及びボルト51の軸部51aが挿通される貫通孔が形成されている円板状の平座部53a,54aと、平座部53a,54aの貫通孔の縁に沿って形成されボルト51の軸部51aが挿通される筒状の鍔部53b,54bと、を有している。
【0053】
中間スペーサ37には、軸方向Daに貫通し、ボルト51の軸部51aが挿通されるボルト孔37aが形成されている。燃焼ガス側シール板群33で中間スペーサ37に対応する位置には、軸方向Daに貫通し、ナット側座金54の鍔部(連結具50の貫通部)54bが挿通される燃焼ガス側貫通孔33aが形成されている。また、空気側シール板群32で中間スペーサ37に対応する位置には、軸方向Daに貫通し、ボルト側座金53の鍔部53bが挿通される空気側貫通孔32aが形成されている。
【0054】
この連結具50を用いて、燃焼ガス側シール板群33及び空気側シール板群32をそれぞれ中間スペーサ37に密着させる際には、まず、ボルト側座金53にボルト51の軸部51aが挿通される。次に、排気車室壁10と外側ディフューザ15との間の外側空間29側から、ボルト51の軸部51aが空気側シール板群32の空気側貫通孔32a、中間スペーサ37のボルト孔37a、及び燃焼ガス側シール板群33の燃焼ガス側貫通孔33aに挿通される。次に、燃焼ガス側シール板群33から排気流路28側に突出したボルト51の軸部51aに、ナット側座金54が装着される。このナット側座金54の装着により、ナット側座金54の円筒状の鍔部54bは、燃焼ガス側シール板群33の燃焼ガス側貫通孔33aに挿通される。そして、燃焼ガス側シール板群33から排気流路28側に突出したボルト51の軸部51aにナット52が捻じ込まれる。
【0055】
ところで、空気側貫通孔32aの内径は、ボルト側座金53の円筒状の鍔部53bの外径と実質的に同じである。このため、ボルト側座金53の円筒状の鍔部53bが空気側シール板群32の空気側貫通孔32aに挿通されると、空気側シール板群32は、連結具50(ボルト側座金53)に対して、径方向Drに相対移動できない。一方、燃焼ガス側貫通孔33aの内径は、連結具50の外径、すなわち連結具50のナット側座金54の円筒状の鍔部54bの外径よりも十分に大きくする。これにより、ナット側座金54の円筒状の鍔部54bが燃焼ガス側シール板群33の燃焼ガス側貫通孔33aに挿通されても、燃焼ガス側シール板群33は、連結具50に対して、径方向に相対移動可能である。
【0056】
また、
図6において、空気側シール板群32の2枚のシール板31は、ボルト側座金53の平面座53aの下流側端面と、対向する中間スペーサ37の上流側端面の間の隙間に挿入される。ボルト側座金53の鍔部53bの軸方向長さ(平面座53aの下流側端面から鍔部53bの頂部までの軸方向長さ)は、空気側シール板群32の2枚のシール板31の軸方向厚さより小さい。従って、シール板31を、中間スペーサ37とボルト側座金53で形成される隙間に挿入して、連結具50のボルト51及びナット52を軸方向に締め込んだ場合、空気側シール板群32のシール板31は、連結具50に対する径方向Drの相対移動が拘束される。
【0057】
一方、燃焼ガス側シール板群33の2枚のシール板31は、ナット側座金54の平面座54aの上流側端面と対向する中間スペーサ37の下流側端面の間の隙間に挿入される。ナット側座金54の鍔部54bの軸方向長さ(平面座54aの上流側端面から鍔部54bの頂部までの軸方向長さ)は、燃焼ガス側シール板群33の2枚のシール板31の軸方向厚さより大きい。従って、連結具50のボルト51及びナット52を締め込んだ場合でも、ナット側座金54の鍔部54bの頂部が中間スペーサ37の下流側端面に接触し、ナット52の更なる締め込みは困難となる。すなわち、中間スペーサ37の下流側端面とナット側座金54の平面座54aの上流側端面の間に形成される軸方向隙間にシール板31を挿入した後、ボルト51及びナット52を締め込んだ場合でも、燃焼ガス側シール板群33のシール板31とナット側座金54の平面座54aの上流側端面との間、又はシール板31と中間スペーサ37の下流側端面との間にはわずかな隙間が生ずる。したがって、燃焼ガス側シール板群33のシール板31は、連結具50に対する径方向Drの相対移動が拘束されない。
【0058】
つまり、前述のように、空気側シール板群32は、連結具50に対して径方向Drの相対移動はできない。一方、燃焼ガス側シール板群33のシール板31は、連結具50の外径に対して十分に内径が大きい燃焼ガス側貫通孔33aを備え、中間スペーサ37とナット側座金54で形成される軸方向隙間より軸方向厚さが小さい。そのため、連結具50に対して、燃焼ガス側シール板群33は、径方向Drに相対移動可能である。
【0059】
なお、燃焼ガス側シール板群33のシール板31は、連結具50の外径に対して内径が大きい燃焼ガス側貫通孔33aを備えていれば、シール板31の軸方向厚さが、中間スペーサ37とナット側座金54で形成される軸方向隙間と同じであってもよい。すなわち、燃焼ガス側シール板群33のシール板31とナット側座金54の平面座54aの上流側端面との間、又はシール板31と中間スペーサ37の下流側端面との間に隙間が形成されていなくてもよい。
【0060】
次に、以上で説明したシール装置30の作用及び効果について説明する。
【0061】
本実施形態では、排気流路28側と、排気車室壁10と外側ディフューザ15との外側空間29とを、空気側シール板群32及び燃焼ガス側シール板群33で仕切っているので、外側空間29と排気流路28側との間をシールすることができる。
【0062】
本実施形態では、各シール板群32,33を構成する2枚のシール板31は、
図5を用いて前述したように、いずれも、組立の都合上、周方向Dcに分割されており、複数の分割片31pで構成されている。このため、1のシール板31において、周方向Dcに並んでいる分割片31pの境目31b1から空気又は燃焼ガスGが漏れ出る。しかしながら、本実施形態では、シール板群32,33を構成する2枚のシール板31のうちの一のシール板31を構成する複数の分割片31pにおける周方向Dcの境目31b1の位置と、この一のシール板31に軸方向Daに向く面で接する他のシール板31を構成する複数の分割片31pにおける周方向Dcの境目31b2の位置とは、周方向Dcで異なっている。このため、一のシール板31を構成する複数の分割片31pにおける周方向Dcの境目31b1から空気又は燃焼ガスGが漏れても、一のシール板31に軸方向Daに向く面で接する他のシール板31で空気又は燃焼ガスGがシールされ、その漏れを防ぐことができる。
【0063】
本実施形態では、空気側シール板群32と燃焼ガス側シール板群33との間に外部からシール空気Asを供給し、供給されたシール空気Asがこの間を加圧している。空気側シール板群32と燃焼ガス側シール板群33との間に外側空間29中の空気や排気流路28側の燃焼ガスGが流れ込むのを防ぐことができる。
【0064】
よって、本実施形態のシール装置30は、排気車室壁10と外側ディフューザ15との間の外側空間29と排気流路28側との間のシール性を高めることができる。
【0065】
ところで、ガスタービンの運転中、外側ディフューザ15は高温の燃焼ガスGに接触し、排気車室壁10は大気に接触している。このため、外側ディフューザ15と排気車室壁10とにおいては、ガスタービンの運転中、温度差により熱膨張差が生じる。この外側ディフューザ15と排気車室壁10との熱膨張差は、排気車室壁10のフランジ10fに対する外側ディフューザ15のフランジ15fの軸方向Da及び径方向Drの相対変位として現れる。
【0066】
排気車室壁10のフランジ10fに対する外側ディフューザ15のフランジ15fの軸方向Daの相対変位に対して、本実施形態のシール装置30は、軸方向Daへの変形が容易な各シール板31が軸方向Daに変形することで、軸方向Daにおけるフランジ10f,15fの相対変位を許容している。
【0067】
排気車室壁10のフランジ10fに対する外側ディフューザ15のフランジ15fの径方向Drの相対変位に対して、本実施形態のシール装置30は、各シール板群32,33の径方向外側端部32o,33o及び外側スペーサ35が排気車室壁10のフランジ10fに対して径方向Drに相対移動することで、径方向Drにおけるフランジ10f,15fの相対変位を許容している。しかしながら、本実施形態のシール装置30は、各シール板31が軸方向Daに変形し易いため、径方向Drにおけるフランジ10f,15fの相対変位が生じると、各シール板31が軸方向Daに変形して、径方向Drにおけるフランジ10f,15fの相対変位をある程度許容することになる。
【0068】
図7に示すように、外側ディフューザ15と排気車室壁10との間の外側空間29と、排気流路28側とを1枚のシール板31でシールする場合について考察する。
【0069】
排気車室壁10のフランジ10fに対して外側ディフューザ15のフランジ15fが径方向Drで近づく側に変位した場合、軸方向Daに変形容易な1枚のシール板31は、軸方向Daに変形して、その径方向外側端部31oが径方向外側に移動しないと考えられる。排気車室壁10のフランジ10fに対して外側ディフューザ15のフランジ15fが径方向Drの近づく側への変位量が大きい場合、シール板31が軸方向Daの変位のみで、フランジ10f,15fの相対変位を許容しようとすると、シール板31の軸方向Daの変形量が大きくなり、シール板31が座屈するおそれがある。
【0070】
本実施形態では、スペーサ35,36,37により、軸方向Daへの変位が容易なシール板31で構成される空気側シール板群32と、同じく、軸方向Daへの変位が容易なシール板31で構成される燃焼ガス側シール板群33との間の軸方向Daの間隔を確保することで、空気側シール板群32と燃焼ガス側シール板群33と各スペーサ35,36,37とを合わせた部材における径方向Drへの座屈強度が向上されている。本実施形態では、中間スペーサ37を設け、径方向Drにおける空気側シール板群32及び燃焼ガス側シール板群33の支点スパンを短くすることで、空気側シール板群32と燃焼ガス側シール板群33と各スペーサ35,36,37とを合わせた部材における径方向Drの座屈強度がより向上されている。この結果、本実施形態では、排気車室壁10のフランジ10fに対して外側ディフューザ15のフランジ15fが径方向Drで近づく側に変位した場合、各シール板31は座屈することなく軸方向Daの変形が抑えられて、各シール板群32,33の径方向外側端部32o,33oが径方向外側へ移動する。
【0071】
ところで、ガスタービンの運転中、空気側シール板群32は空気に接するのに対して、燃焼ガス側シール板群33は高温の燃焼ガスGに接する。このため、空気側シール板群32に対して、燃焼ガス側シール板群33の径方向Drの熱膨張量が大きくなる。従って、ガスタービンの運転中、空気側シール板群32の径方向内側端部32iからこの空気側シール板群32を貫通する空気側貫通孔32aまでの距離に対して、燃焼ガス側シール板群33の径方向内側端部33iからこの燃焼ガス側シール板群33を貫通する燃焼ガス側貫通孔33aまでの距離が長くなる。
【0072】
連結具50に対して、空気側シール板群32と燃焼ガス側シール板群33の両方が、径方向Drに相対移動不能の場合、前述したように、燃焼ガス側シール板群33の径方向内側端部33iからこの燃焼ガス側シール板群33を貫通する燃焼ガス側貫通孔33aまでの距離が長くなる。そのため、
図8Aに示すように、連結具50は下流側に向かうに連れて径方向外側に向かう方向に傾くことになる。このように、連結具50が傾くと、燃焼ガス側シール板群33及び空気側シール板群32が連結具50近傍で局部的に変形する。また、連結具50の各座金53,54の外縁に接して、燃焼ガス側シール板群33及び空気側シール板群32が損傷するおそれがある。
【0073】
本実施形態では、
図6を用いて前述したように、燃焼ガス側シール板群33の燃焼ガス側貫通孔33aの内径を、連結具50のナット側座金54の鍔部54bの外径よりも十分に大きくして、連結具50に対して、燃焼ガス側シール板群33が径方向Drに相対移動可能にしている。このため、本実施形態では、ガスタービンの運転中、燃焼ガス側シール板群33の径方向内側端部33iからこの燃焼ガス側シール板群33を貫通する燃焼ガス側貫通孔33aまでの距離が長くなっても、この燃焼ガス側貫通孔33aに対して連結具50が相対移動することで、
図8Bに示すように、連結具50は傾かなくなる。よって、本実施形態は、連結具50の傾きによる燃焼ガス側シール板群33及び空気側シール板群32の損傷を回避することができる。
【0074】
本実施形態では、燃焼ガス側シール板群33の燃焼ガス側貫通孔33aの内径を連結具50のナット側座金54の鍔部54bの外径よりも十分に大きくしているが、逆に、空気側シール板群32の空気側貫通孔32aの内径を連結具50の貫通部の外径よりも十分に大きくしても、連結具50の傾きを抑えることができる。
【0075】
外側ディフューザ15の径方向内側に存在する燃焼ガスG、及び外側ディフューザ15の径方向外側に存在する空気により、各ガスに接触する複数のシール板31が振動することが考えられる。本実施形態では、燃焼ガス側シール板群33を2枚のシール板31で構成し、空気側シール板群32も2枚のシール板31で構成している。このため、燃焼ガス側シール板群33の2枚のシール板31のうち、燃焼ガスGに接するシール板31が燃焼ガスGから振動エネルギーを受けても、燃焼ガスGに接するシール板31に軸方向Daに向く面で接する他方のシール板31との摩擦により、振動エネルギーが吸収されて、2枚のシール板31の振動を軽減することができる。同様に、空気側シール板群32の2枚のシール板31のうち、空気に接するシール板31が空気から振動エネルギーを受けても、空気に接するシール板31に軸方向Daに向く面で接する他方のシール板31との摩擦により、振動エネルギーが吸収されて、2枚のシール板31の振動を軽減することができる。本実施形態では、中間スペーサ37を設けたことにより、径方向Drにおける空気側シール板群32及び燃焼ガス側シール板群33の支点スパンが短くなり、各シール板群32,33の振動振幅を小さくすることができる。
【0076】
本実施形態は、各シール板群32,33の振動を軽減することができ、振動によるシール板31の損傷を抑えることができる。すなわち、本実施形態は、各シール板群32,33を複数枚のシール板31で構成することで、シール板31を構成する複数の分割片31pの境目31b1からのガス漏れを防ぐと共に、振動によるシール板31の損傷を抑えている。
【0077】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付のクレームの範囲によってのみ限定される。
本実施形態では、各シール板群32,33を2枚のシール板31で構成しているが、3枚重ね以上のシール板31で構成してもよい。
【0078】
本実施形態では、排気車室壁10の下流端部に設けられているシール装置30について代表して説明したが、排気室サポート11の上流端部に設けられているシール装置30aも、排気車室壁10の下流端部に設けられているシール装置30と基本的に同様の構成であるため、本実施形態のシール装置30と同様の作用効果を得ることができる。
排気室サポート11の上流端部に設けられているシール装置30aよりも下流側に別のシール装置を設ける場合でも、本実施形態のシール装置30と同様の構成のシール装置とすることが好ましい。