特許第5869232号(P5869232)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5869232
(24)【登録日】2016年1月15日
(45)【発行日】2016年2月24日
(54)【発明の名称】掘削土砂の搬出システム
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/12 20060101AFI20160210BHJP
   E21D 13/04 20060101ALI20160210BHJP
【FI】
   E21D9/12 B
   E21D13/04
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-99993(P2011-99993)
(22)【出願日】2011年4月27日
(65)【公開番号】特開2012-229590(P2012-229590A)
(43)【公開日】2012年11月22日
【審査請求日】2014年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100129067
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 能章
(72)【発明者】
【氏名】山田 紀之
(72)【発明者】
【氏名】田口 龍二
(72)【発明者】
【氏名】清野 隆太郎
(72)【発明者】
【氏名】松井 淳一
(72)【発明者】
【氏名】田中 良昭
【審査官】 越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】 特許第2620111(JP,B2)
【文献】 特開平04−136395(JP,A)
【文献】 特開平10−218332(JP,A)
【文献】 特公平03−035467(JP,B2)
【文献】 特公平04−080199(JP,B2)
【文献】 特開2006−336228(JP,A)
【文献】 実公昭48−007166(JP,Y1)
【文献】 特開平06−220872(JP,A)
【文献】 米国特許第04069760(US,A)
【文献】 特開平10−339093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 1/00−23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削領域において発生した掘削土砂を当該掘削領域から搬出する掘削土砂の搬出システムであって、
地中構造物と、
前記掘削領域から前記地中構造物に通じる竪孔と、
前記地中構造物内に設けられた土砂搬送手段と、を備え、
前記竪孔の投入口が格子状に分割されていることを特徴とする、掘削土砂の搬出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削土砂の搬出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
掘削作業に伴い発生した掘削土砂は、トラック等の運搬車両に積み込んで場外に搬出する。
運搬車両への土砂の積込は、掘削領域に運搬車両を横付けした状態で行うのが一般的である。
【0003】
また、開削工法等のように、掘削領域への運搬車両等の進入が困難な場合には、例えば、特許文献1に示すように、掘削領域の上方に仮設構台を形成し、この仮設構台上に配設された運搬車両に揚土機を介して土砂の積込作業を行う場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−42001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既設の線路Rや道路等の下方または近傍を掘削して新設構造物を構築するような場合には、掘削領域の上方への掘削土砂の搬出ルートを確保できない場合があった。
また、施工箇所が市街地や住宅地等や交通量の多い地域の場合には、掘削土砂の搬出が、周囲の交通に影響を及ぼすおそれがあった。
【0006】
このような観点から、本発明は、掘削領域や掘削領域周辺の状況に関わらず効率的に掘削土砂を搬出することを可能とした掘削土砂の搬出システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明の掘削土砂の搬出システムは、掘削領域において発生した掘削土砂を当該掘削領域から搬出する掘削土砂の搬出システムであって、地中構造物と、前記掘削領域から前記地中構造物に通じる竪孔と、前記地中構造物内に設けられた土砂搬送手段と、を備え、前記竪孔の投入口が格子状に分割されていることを特徴としている。
【0011】
かかる掘削土砂の搬出システムによれば、掘削領域における掘削作業で発生した掘削土砂を、竪孔から地中構造物内に落とし込んだ後、この地中構造物を介して搬出することができるため、掘削領域の周辺の状況に関わらず、土砂の搬出作業を効率的に行うことが可能となる。
【0012】
また、前記竪孔の投入口が格子状に分割されているため、掘削土砂に大きな塊や岩等が含まれていたとしても、小さい形状に分割されたうえで地中構造物内へ落とし込まれることとなり、地中構造物内に配設された土砂運搬装置の負担を軽減することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の掘削土砂の搬出システムによれば、掘削領域や掘削領域周辺の状況に関わらず効率的に掘削土砂を搬出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る掘削土砂の搬出システムの概略を示す横断面図である。
図2図1に示す掘削土砂の搬出システムの概略を示す縦断面図である。
図3】地中構造物の一部を示す横断面図である。
図4】地中構造物の一部を示す縦断面図である。
図5】排出シュートを示す図であって、(a)は横断面図、(b)は縦断面図である。
図6】(a)は竪孔を示す横断面図、(b)は竪孔と地中構造物との接合部を示す拡大横断面図、(c)は竪孔の投入口を示す平面図である。
図7】掘削土砂の搬出システムの変形例を示す概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態では、図1に示すように、既設の線路Rの下方に新設の構造物を構築する場合であって、掘削領域10が線路R下にある場合について説明する。
掘削領域10において発生した掘削土砂は、既設の線路Rの存在により上方に搬出することが困難なため、掘削土砂の搬出システム1を利用して搬出する。
【0016】
掘削土砂の搬出システム1は、図2に示すように、地中構造物20と竪孔30と土砂搬送手段40とを備えている。
【0017】
地中構造物20は、掘削領域10の下方を通過するように形成された既設のトンネル21と、トンネル21が接続する立坑22とを備えている。なお、地下構造物20の構成は限定されるものではない。例えば、トンネル21を、終端が掘削領域10の下方に位置するように形成してもよい。また、トンネル21の坑口が、山腹等に形成されている場合は立坑22を省略してもよい。
【0018】
本実施形態のトンネル21は、図3に示すように、複数のセグメント21a,21a,…を組み合わせることにより構成された円形断面のシールドトンネルである。なお、トンネル21は、山岳トンネルであってもよいし、TBMや推進工法により形成されたトンネルであってもよく、トンネル21の構成は限定されるものではない。また、トンネル21の断面形状も限定されるものではない。
【0019】
トンネル21内には、図2に示すように、土砂搬送手段40の一部であるベルトコンベア41が配設されている。
ベルトコンベア41は、少なくとも竪孔30の下から立坑22にまで延設されていて、竪孔30を介してトンネル21内に落とし込まれた掘削領域10の発生土(掘削土砂)を立坑22まで搬送する。
【0020】
ベルトコンベア41は、図3および図4に示すように、トンネル21内に設けられた構台42により支持されている。ベルトコンベア41は、竪孔30の排出口(排出シュート31)の位置においては、排出シュート31に近接するように、トンネル21の上半(トンネルスプリングラインよりも上の位置)に配置されている。
【0021】
本実施形態では、型鋼材を組み合わせることによりやぐら状の構台42をトンネル21の底面から立設させることで形成している。なお、構台42の構成は限定されるものではなく、例えば、トンネル21の壁面に固定してもよい。
【0022】
本実施形態では、図2に示すように、立坑22に近づくにつれて、ベルトコンベア41の高さ位置が低くなるように、ベルトコンベア41を配置している。
【0023】
ベルトコンベア41には、図5に示すように、竪孔30の直下において、複数のインパクトバー43がベルト41aの下面に沿って配置されている。
【0024】
インパクトバー43は、四角柱状に形成された樹脂製のブロックからなり、ベルト41aの平坦性を保つとともに、竪孔30を介して落下してきた土砂の衝撃を吸収するように構成されている。なお、インパクトバー43は、必要に応じて配設すればよい。また、インパクトバー43の配置等は適宜設定すればよい。
【0025】
また、ベルトコンベア41には、排出シュート31の周囲を囲うように、飛散防止用カバー44が設置されている。
【0026】
飛散防止用カバー44は、板材からなり、ベルトコンベア41の両側部に立設されている。飛散防止カバー44の下端部には、接触によりベルトコンベア41のベルト41aを損傷させることがないように、ゴム板が設置されている。なお、飛散防止用カバー44の構成は限定されるものではない。
【0027】
図2に示すように、立坑22は、掘削領域10から離れた位置に形成されている。
立坑22の内部には、土砂搬送手段40の一部である垂直ベルトコンベア45が配設されている。
【0028】
垂直ベルトコンベア45は、ベルトコンベア41によりトンネル21内から搬送された土砂を地上へと搬出する。
本実施形態では、立坑22の底部にベルトコンベア41と垂直ベルトコンベア45とを接続する中継ベルトコンベア46が配設されている。
【0029】
なお、土砂搬送手段40の構成は限定されるものではない。例えば、ズリトロッコによりトンネル内を搬出してもよいし、トンネル内に配管を行い、泥水圧送や泥土圧送により土砂を搬出してもよい。また、トンネル21から搬送された土砂は、立坑22の底部に設けられたズリピット47(図7参照)に投入してもよい。また、垂直ベルトコンベア45に代えて、バケットを備えたクレーン48(図7参照)等により土砂を吊り上げるものとしてもよい。また、中継ベルトコンベア46を省略してベルトコンベア41から直接垂直ベルトコンベア45に土砂を搬送する構成としてもよい。
【0030】
竪孔30は、図2に示すように、垂直に形成されており、掘削領域10から下方のトンネル21に接続している。なお、竪孔30は、掘削領域10の近傍に形成されていてもよい。また、竪孔30は、必ずしも垂直である必要はない。
【0031】
竪孔30は、図6の(a)に示すように、複数の管材32,32,…を縦方向に連続して配設することにより形成されている。
【0032】
管材32は、図6の(b)に示すように、トンネル21の上方に所定長離隔した位置まで配設されており、管材32の下端からトンネル21までの接続部33は、現場施工により形成されている。
【0033】
図5の(a)に示すように、竪孔30の下端の排出口には、排出シュート31が設置されている。
【0034】
排出シュート31は、ベルトコンベア41に近づくに従って、幅が狭まるように側面が傾斜しており、排出シュート31の開口幅はベルトコンベア41のベルト41aの幅よりも小さくなっている。
また、排出シュート31は、図5の(b)に示すように、排出シュート31において土砂が詰ることがないように、ベルトコンベア41に進行方向に延在しており、排出シュート31の長さは竪孔30の内径よりも大きくなっている。
【0035】
排出シュート31の内部には受けプレート34,34が配設されている。
受けプレート34,34は、竪孔30の下方に配設されており、ベルトコンベア41の進行方向前側の端部が低くなるように傾斜している。
本実施形態では、受けプレート34が2枚配設されているが、受けプレート34の数は限定されるものではない。
【0036】
排出シュート31には、点検窓35が形成されており、排出シュート31内の点検等が可能に構成されている。本実施形態では、点検窓35を3箇所形成するが、点検窓35の数や形状は限定されるものではない。
【0037】
竪孔30の上端部の投入口は、図6の(c)に示すように、格子状に分割されている。本実施形態では、竪孔30の上端部に格子状部材36を設置することで投入口を分割している。なお、格子状部材36の形状等は適宜設定すればよい。また、格子状部材36は必要に応じて配置すればよい。
【0038】
トンネル21坑内の竪孔30の排出口(排出シュート31)の近傍には、図示しない集塵機が配設されていて、土砂落下時に発生する粉塵を除去する。
【0039】
本実施形態の掘削土砂の搬出方法は、竪孔構築工程と、搬送工程とを備えている。
【0040】
竪孔構築工程は、掘削領域10の下方に存在するトンネル21に通じる竪孔30を形成する工程である。
【0041】
竪孔構築工程では、地盤の削孔とともに、図6の(a)に示すように、管材32,32,…を配設することで竪孔30を形成する。
本実施形態の竪孔構築工程では、リバース工法で掘削領域10からトンネル21の近傍まで掘削し、竪孔30とトンネル21との接続部33は人力により削孔するとともに現場施工により孔壁を形成する。
【0042】
リバース工法では、掘削領域10から下側に向って削孔するとともに、発生残土を泥水状にして地上に圧送する。
【0043】
搬送工程は、掘削領域10において発生した掘削土砂を、掘削領域10から搬出する工程である。
搬送工程は、落とし込み作業と、トンネル内搬送作業と、坑外搬出作業と、を備えている。
【0044】
落とし込み作業は、竪孔30を利用して、掘削領域10からトンネル21内に掘削土砂を落とし込む作業である。
竪孔30から落とし込まれた掘削土砂は、受けプレート34,34で落下速度が緩和された後、ベルトコンベア41に落下する。
【0045】
トンネル内搬送作業は、トンネル21内に落とし込まれた掘削土砂を立坑22まで搬送する作業である。
掘削土砂は、ベルトコンベア41により立坑22に搬送される。
【0046】
坑外搬出作業は、立坑22まで搬送された掘削土砂を、地上に排出する作業である。
立坑22から地上への搬出は、垂直ベルトコンベア45を介して行う。
【0047】
トンネル21内から搬送された掘削土砂は、中継ベルトコンベア46を解して垂直ベルトコンベア45に搬送される。
【0048】
垂直ベルトコンベア45により立坑22の底部から地上に搬出された掘削土砂は、適宜処分場等に搬送される。
なお、掘削領域10の掘り下げに伴い、竪孔30(管材32)が露出したら、露出部分を適宜撤去する。
【0049】
以上、本実施形態の掘削土砂の搬出方法および掘削土砂の搬出システム1によれば、線路R下での作業のように、既設構造物により上方が閉塞されていることにより掘削領域10から上方への掘削土砂の搬出が困難な場合であっても、掘削土砂の搬出を効率的に行うことができる。
【0050】
また、掘削領域10の周囲での作業スペースの確保が困難な場合や、周辺環境の道路事情等に関わらず、掘削土砂を搬出することができる。
また、既設のトンネル21を利用することで、地上での大型車両の走行による近隣環境への負担を軽減することができる。また、交通量の激しい道路下での施工であっても地上の交通を阻害することなく、効率的に作業を行うことができる。
【0051】
ベルトコンベア41および垂直ベルトコンベア45を利用することで、掘削土砂の搬出を継続的に効率よく行うことができる。
ベルトコンベア41には、複数のインパクトバー43,43,…が並設されているため、竪孔30から落下した掘削土砂による衝撃を、面により受けて吸収するため、ベルトコンベア41のベルト41aやキャリアローラーへの負担が軽減される。
【0052】
竪孔30の上端部には、格子状部材34が配設されているため、土砂が大きな塊のまま落下することが防止され、その結果、トンネル21内の安全性が確保される。
また、竪孔30の排出口の周囲は、飛散防止用カバー44により囲われているため、掘削土砂が飛散することが防止されている。
【0053】
竪孔30の排出口には、排出シュート31が配設されているため、受けプレート34,34により掘削土砂が直接ベルトコンベア41に落下することが防止されていて、ベルトコンベア41への負担が軽減されている。
【0054】
以上、本発明について、好適な実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の各実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
【0055】
例えば、前記実施形態では、掘削領域10が線路下の場合について説明したが、掘削領域10の周辺環境は限定されるものではない。例えば、掘削領域10が交通量の多い道路下の場合に本発明の掘削土砂の搬出方法を採用することで、地上の交通を阻害することなく作業を行うものとしてもよい。
【0056】
前記実施形態では、掘削領域10に設けられた竪孔30を介してトンネル21に掘削土砂を落とし込むこととしたが、図7に示すように、掘削領域10の近傍に設けられた立坑23を介してトンネルに掘削土砂を搬入させてもよい。
【0057】
また、前記実施形態では、リバース工法により、地上から竪孔30を形成する場合について説明したが、竪孔30の形成方法は限定されるものではない。
また、竪孔30を削孔する際の向きも限定されるものではなく、例えば、トンネル21内から上向きに削孔してもよい。
【0058】
また、前記実施形態では、既設のトンネル21に竪孔30を接続する場合について説明したが、トンネル21を新設してもよい。また、地中構造物20は、必ずしもトンネルである必要はない。
【0059】
トンネル21の使用目的や掘削領域10において構築される構造物は限定されるものではない。例えば、鉄道トンネルと駅や、道路トンネルと換気塔、水路トンネルと管理施設等であってもよい。
また、掘削領域10の上方に存在する既設構造物は線路Rに限定されるものではなく、例えば道路等であってもよい。また、掘削領域10の上方には必ずしも既設構造物が存在しなくてもよく、開放されていてもよい。
【符号の説明】
【0060】
10 掘削領域
20 地中構造物
30 竪孔
34 格子状部材
40 土砂搬送手段
41 ベルトコンベア
45 垂直ベルトコンベア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7