【実施例1】
【0020】
図1ないし
図3は、本発明の実施例1による工作機械のクーラント供給装置を説明するための図である。
【0021】
図において、1は横型マシニングセンタ(工作機械)を示している。このマシニングセンタ1は、
図3に示すように、所定間隔aをあけて並列に、かつ互いに背面同士が所定間隔bをあけて対向するように直列に配置されている。
【0022】
前記各マシニングセンタ1は、機械正面A側から見て、ベッド2の手前側に配設されたテーブル3と、前記ベッド2の奥側に立設されたコラム4と、該コラム4にサドル5を介して支持された主軸頭6と、該主軸頭6に回転自在に支持された主軸7とを備えている。
【0023】
このマシニングセンタ1では、前記テーブル3にワークWを搭載するとともに、前記主軸7に切削工具Tを装着し、ワークW及び切削工具Tを所定の加工プログラムに基づいてそれぞれX軸,Y軸,Z軸方向に相対移動させることにより前記ワークWに切削加工が施される。
【0024】
前記マシニングセンタ1は、クーラントを吐出供給することにより、ワークWと切削工具Tとの加工ポイントを冷却するとともに、発生する切り屑を落下させて回収するクーラント供給装置10を備えている。
【0025】
このクーラント供給装置10は、ワークWの加工ポイントにクーラントを吐出する吐出ノズル(クーラント吐出部)11と、前記加工ポイントに吐出供給されたクーラントを自然落下により回収するとともに貯留するクーラントタンク(クーラント貯留部)12と、該クーラントタンク12内のクーラントを後述する補助タンク15を介して前記吐出ノズル11に循環供給する搬送ポンプ(クーラント供給部)13とを備えている。
【0026】
前記クーラントタンク12は、前記ベッド2の上方に開口する開口部(不図示)内に配置され、クーラントを貯留するタンク本体12aと、該タンク本体12aに続いてコラム4の背面側に延び、ここから斜め上方に立ち上がる傾斜部12bとを有する。
【0027】
また前記クーラントタンク12内には、クーラントとともに回収された切り屑を排出するチップコンベア17が配設されている。このチップコンベア17は、複数のプーリ17a,17aに帯板状のベルト17bを巻回した構造を有する。このベルト17b上に落下した切り屑は、前記傾斜部12bの排出口12cから不図示の回収バケットに排出される。
【0028】
前記クーラントタンク12の傾斜部12bの機械背面側への突出量は最小限に抑えられており、これにより機械全体の前後長の小型化が図られている。
【0029】
また前記マシニングセンタ1は、加工能力を保持しつつ小型化を図るために、ベッド2の高さ寸法の縮小化が行われている。このベッド2の縮小化に伴ってクーラントタンク12の高さ寸法も小さくなっている。この場合、加工能力に対応したクーラント容量は確保する必要があることから、不足分を補うために、補助タンク15を備えている。この補助タンク15は、
図3に示すように、例えば横型マシニングセンタ3台に1つの割合で設置されている。なお、補助タンクの設置数は、機械数あるいはクーラントの必要容量等に応じて適宜設定することとなる。
【0030】
前記補助タンク15内には供給ポンプ18が配置されている。この供給ポンプ18は、補助タンク15内のクーラントを供給ホース18aを介して前記吐出ノズル11に供給するように構成されている。
【0031】
また前記搬送ポンプ13は、クーラントタンク12内のクーラントを搬送ホース13aを介して前記補助タンク15に搬送するように構成されている。
【0032】
そして前記クーラントタンク12及び補助タンク15は、それぞれオーバーフローしたクーラントが流入し、該流入したクーラント量に応じて容積が膨張する可変容積部20,20を備えている。
【0033】
この各可変容積部20は、略同一構造のものであり、可撓性を有する拡縮自在な袋状部材21と、該袋状部材21内に空気を供給することにより流入したクーラントを排出する空気供給部22とを有する。
【0034】
前記袋状部材21は、側面視で蛇腹状をなしており、内部は隔壁21aにより複数の貯留室21bに画成されている。各貯留室21bは互いに連通しており、上流端の貯留室21bには流入口21cが開口している。流入口21cから流入したクーラントは各貯留室21b内をジグザグ状に流れるようになっている(
図2の実線の矢印参照)。
【0035】
前記各袋状部材21の流入口21cは、前記クーラントタンク12,補助タンク15に形成されたオーバーフロー孔12d,15dに接続されている。
【0036】
前記空気供給部22は、前記袋状部材21の下流端の貯留室21bに接続された供給口22aと、該供給口22aに開閉可能に装着された蓋22bとを有する。この蓋22bを取り外して供給口22aから高圧空気を供給することにより、貯留室21b内のクーラントは流入口21cからタンク内に戻される(
図2の破線の矢印参照)。ここで、
図1は、袋状部材21の収縮状態を模式的に示しており、
図2は、袋状部材21の膨張状態を模式的に示している。
【0037】
例えば、搬送ポンプ13が何らかの原因で作動不良を起こすと、クーラントの補助タンク15への搬送が止まることから、クーラントタンク12内のクーラント液面が上昇し、クーラントがオーバーフロー孔12dから袋状部材21内に流入する。この流入により各貯留室21bは流入したクーラント量に応じた容積に膨張する。一方、供給ポンプ18が作動不良を生じた場合には、クーラントタンク12からのクーラントにより補助タンク15内の液面が上昇し、クーラントがオーバーフロー孔15dから袋状部材21内に流入する。
【0038】
このように本実施例によれば、クーラントタンク12及び補助タンク15に、オーバーフローしたクーラント量に応じて容積が膨張する可変容積部20を設けたので、前述のようにポンプ13,18が作動不良を起こした場合にも、床に溢れ出ることなくクーラントを回収することができる。これにより、全ての機械を止めてクーラントを除去するといった作業を行う必要はなく、生産性,作業性の悪化を防止できる。
【0039】
またクーラントがオーバーフローすると可変容積部20に自動的に流入するので、煩雑な故障検知システムを設ける必要はなく、コストの上昇を抑制できる。
【0040】
さらに前記可変容積部20は、オーバーフローしたクーラントが流入したときに該流入量に応じて膨張するので、通常の運転時には収縮させた状態でコンパクトに格納することができ、設置スペースが拡大することはない。
【0041】
本実施例では、前記可変容積部20を、拡縮自在な袋状部材21と、空気を供給することにより流入したクーラントを排出する空気供給部22とを有するものとしたので、オーバーフローしたクーラントをクーラントタンク12,補助タンク15に簡単に戻すことができる。この場合、工場に既設の高圧空気をそのまま利用できるので、コスト上昇を防止できる。
【0042】
またクーラントを戻すと同時に可変容積部20を収縮させて格納することができ、オーバーフロー時の復帰作業を短時間でかつ容易に行うことができる。
【0043】
なお、前記実施例では、クーラントタンクに補助タンクを設けた場合を例に説明したが、本発明は、クーラントタンクのみを設けたクーラント供給装置にも適用できる。