(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記吊り位置調整装置は、一端部が前記支持フレームに枢支されて伸縮可能な伸縮シリンダと、この伸縮シリンダの他端部に一端部が枢支されて、他端部が前記伸縮シリンダの一端部に前記変位方向に並んで前記支持フレームに枢支されるロッドと、を含んで構成され、
前記吊り部は、前記伸縮シリンダの他端部及び前記ロッドの一端部に設けられることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の水中施工装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態における水中施工装置の概略構成を示す。
図2は
図1のA−A断面を示す。
【0011】
尚、本実施形態では、水中に予め構築された構造物10(
図1参照)を打撃掘削する水中施工を例にとって、本発明に係る水中施工装置を説明するが、被掘削物は構造物10に限らず、また、掘削手法は打撃掘削に限らない。
【0012】
水中施工装置1は、作業台船2と、パイプケーシング把握・駆動装置3と、円筒状のパイプケーシング4と、クレーン5と、一対の昇降用ウインチ6a、6bと、水中施工ユニット7とを含んで構成される。
【0013】
作業台船2は、互いに隣り合って水面上に浮かぶ2つの台船2a、2bからなる。台船2a、2bは、それぞれが、例えば、図示しない係留索を介して、図示しない岸壁の固定用アンカに固定される。
【0014】
ここで、
図2に示すように、便宜上、台船2aを前側の台船とし、台船2bを後側の台船として、水中施工装置1の前後左右を規定して、以下説明する。
後側の台船2bは平面視で矩形形状を有しており、クレーン5が設置されている。
【0015】
前側の台船2aは平面視で矩形形状を有し、その中央部に、パイプケーシング4の水中への延出用の貫通孔8が形成されている。
前側の台船2aには、貫通孔8の大部分を上方から塞ぐように、パイプケーシング把握・駆動装置3が設置されている。
【0016】
パイプケーシング把握・駆動装置3は、その下側に位置する矩形形状のベースフレーム(図示せず)と、このベースフレームの四隅にそれぞれ設けられたスラストジャッキ(図示せず)と、これらスラストジャッキの伸縮に応じて昇降する昇降フレーム(図示せず)と、を含んで構成される。この昇降フレームには、回転筒(図示せず)が回転自在に支持されている。この回転筒の上部と前述のベースフレームとには、それぞれ、パイプケーシング4を把握するチャック装置(図示せず)が設けられている。尚、ベースフレームのチャック装置は、前述の回転筒の上部のチャック装置が把握解放状態で昇降フレームが昇降するときにパイプケーシング4を把握保持する。
【0017】
パイプケーシング把握・駆動装置3では、前述の回転筒にパイプケーシング4が挿入された状態で、前述の回転筒の上部のチャック装置によりパイプケーシング4がその外方から把握される。
【0018】
パイプケーシング把握・駆動装置3では、パイプケーシング4が前述の回転筒の上部のチャック装置により把握された状態で前述の昇降フレームを前述のスラストジャッキにより下降させることで、パイプケーシング4を水中に延出させる。
また、パイプケーシング把握・駆動装置3では、パイプケーシング4が前述の回転筒の上部のチャック装置により把握された状態で前述の昇降フレームを前述のスラストジャッキにより上昇させることで、パイプケーシング4を水中より引き上げる。
また、パイプケーシング把握・駆動装置3では、パイプケーシング4が前述の回転筒の上部のチャック装置により把握された状態でモータ(図示せず)を駆動源として前述の回転筒を回転させることにより、パイプケーシング4を回転させる。
従って、パイプケーシング把握・駆動装置3は、パイプケーシング4の水中への延出及び引き上げや、パイプケーシング4の回転を行う。
【0019】
パイプケーシング把握・駆動装置3のベースフレームには、その周縁部より外方に張り出す矩形形状の張出部9が設けられている。張出部9の前端及び後端には、それぞれ、脚部11a、11bが設けられている(後述する
図3参照)。脚部11a、11bは各々が台船2aに接触している。
【0020】
前側の台船2aには、その左右両側部に、電動ウインチである昇降用ウインチ6a、6bが設置されている。
【0021】
ここで、昇降用ウインチ6a、6bより引き出されたワイヤロープ21a、21bの経路について、
図1及び
図2に加えて、
図3を用いて説明する。
図3は、
図2のB−B断面で見たワイヤロープ21aの経路の一例を示す。
尚、ワイヤロープ21a、21bの経路は互いに左右対称であるので、
図3では、ワイヤロープ21aの経路に対応するワイヤロープ21bの経路をカッコ付きの符号で示している。
【0022】
左側の昇降用ウインチ6aより右方に引き出されたワイヤロープ21aは、パイプケーシング把握・駆動装置3の左側前方に予め設置された屈曲装置22aにて前方に屈曲されて延び、台船2aの前端の上端部及び下端部にそれぞれ予め設置されたシーブ23a、24aに掛け渡されて、貫通孔8を通って、パイプケーシング把握・駆動装置3のベースフレームの張出部9の下部に予め設けられたブラケット25aに端部が固定されている。また、ワイヤロープ21aには、ブラケット25aとシーブ24aとの間に、動滑車26aを備えたフックブロック27aが設けられている。
【0023】
一方、右側の昇降用ウインチ6bより左方に引き出されたワイヤロープ21bは、パイプケーシング把握・駆動装置3の右側前方に予め設置された屈曲装置22bにて前方に屈曲されて延び、台船2aの前端の上端部及び下端部にそれぞれ予め設置されたシーブ23b、24bに掛け渡されて、貫通孔8を通って、パイプケーシング把握・駆動装置3のベースフレームの張出部9の下部に予め設けられたブラケット25bに端部が固定されている。また、ワイヤロープ21bには、ブラケット25bとシーブ24bとの間に、動滑車26bを備えたフックブロック27bが設けられている。
【0024】
フックブロック27a、27bには、水中施工ユニット7が吊り下げられる。
従って、昇降用ウインチ6a、6bは、本発明の「昇降装置」に対応して、ワイヤロープ21a、21bと、フックブロック27a、27bとを介して、水中施工ユニット7(特に、後述する支持フレーム31)を吊り下げる。
尚、
図2に示すように、台船2a上におけるワイヤロープ21a、21bの経路が、台船2aの前半分に位置していることにより、台船2aの後半分にて十分な作業スペースを確保することができる。
【0025】
次に、水中施工ユニット7の概略構成について、
図4を用いて説明する。
図4(a)は、水中施工ユニット7の側面図であり、
図4(b)は、水中施工ユニット7の平面図である。
【0026】
水中施工ユニット7は、支持フレーム31と、支持フレーム31の後部に設けられてパイプケーシング4を把持可能な水中把持装置32と、支持フレーム31の前方に位置する水中ブレーカー(水中掘削装置)33と、を含んで構成される。
【0027】
支持フレーム31は、前後方向(換言すれば、パイプケーシング4に対して外内方向)に延在し、平面視で後端部開口のコ字状を有する上フレーム31a及び下フレーム31bと、下フレーム31bの左右両側の前部、中央部、後部よりそれぞれ立設されて上フレーム31aに固定された計6つの柱部材31cと、上フレーム21aの中央部の左右両側に連結するビーム部材31dとにより構成されている。
【0028】
支持フレーム31の前側の内部には、油圧ユニット34が設置されている。油圧ユニット34は、後述する油圧シリンダ44、51、57、71、81a、81b及び油圧ブレーカー本体78に油圧を供給する。
支持フレーム31の後部では、平面視で上フレーム31aとビーム部材31dとにより区画される空間31eに、パイプケーシング4の一部を収容することができる。
【0029】
水中把持装置32は、クランプ装置35と、ブレーキ装置36とを含んで構成される。
クランプ装置35は、支持フレーム31の後端部を開閉する扉部材37を備える。
扉部材37は、後方から見て矩形形状を有する。
【0030】
扉部材37は、その右側の上下端部が、それぞれ、ヒンジ機構38を介して、上フレーム31aの右側の後端部と、下フレーム31bの右側の後端部とに取り付けられている。
扉部材37は、その左側にて、図示しない締結手段を介して、上フレーム31aの左側の後端部と、下フレーム31bの左側の後端部とに着脱可能に締結固定される。
扉部材37の四隅と、上フレーム31aの左右両側の中央部(ビーム部材31dの両端部)と、下フレーム31bの左右両側の中央部とには、それぞれ、支持フレーム31の空間31eの内方に向けて突出する計8個の突出部39が設けられている。
【0031】
ブレーキ装置36は、左右一対の半円状のブレーキシュー41a、41bと、ブレーキシュー41a、41bの各々の前端部間の距離を変更する締緩装置42と、ブレーキシュー41a、41bの各々の後端部同士を着脱可能に締結する締結部43と、を含んで構成される。
【0032】
ブレーキシュー41aは、ヒンジ機構41cにより連結された2つの円弧部材からなり、ヒンジ機構41cにて屈曲可能になっている。
同様に、ブレーキシュー41bは、ヒンジ機構41dにより連結された2つの円弧部材からなり、ヒンジ機構41dにて屈曲可能になっている。
【0033】
締緩装置42は、ビーム部材31dに設置された油圧シリンダ44の伸縮により、ブレーキシュー41a、41bの各々の前端部間の距離を変更する。
【0034】
ここで、水中把持装置32の把持状態と開放状態とについて、
図4に加えて
図5を用いて説明する。
図5は、水中把持装置32の開放状態を示す。
【0035】
水中把持装置32がパイプケーシング4を把持しているときには、
図4(b)に示すように、支持フレーム31の後端部がクランプ装置35の扉部材37により閉じられる。これにより、クランプ装置35の計8個の突出部39がパイプケーシング4を押圧する。また、ブレーキ装置36の締結部43により、ブレーキシュー41a、41bの各々の後端部同士が締結される。そして、ブレーキ装置36の締緩装置42によってブレーキシュー41a、41bの各々の前端部間の距離を狭めることにより、ブレーキシュー41a、41bがパイプケーシング4を押圧する。
【0036】
一方、水中把持装置32が開放されているときには、
図5に示すように、クランプ装置35の扉部材37が開けられて、支持フレーム31の後端部が開放される。また、ブレーキ装置36の締結部43が脱離されて、更に、ブレーキシュー41a、41bの各々の後端部が、ヒンジ機構41c、41dでの屈曲により、互いに離間される。
【0037】
図4に戻って、水中施工ユニット7は、支持フレーム31の下端部に設けられるスライドユニット45と、スライドユニット45の前部に設けられる横行ユニット46及び傾動ユニット47と、横行ユニット46の前側に取り付けられて水中ブレーカー33を昇降させる昇降ユニット48と、を更に含んで構成される。
【0038】
スライドユニット45は、左右一対の伸縮自在な油圧シリンダ51と、左右一対のスライドアーム52とを含んで構成される。
左右一対の油圧シリンダ51は、各々の後端部が、支持フレーム31の下フレーム31bの左右両側の後端部の下面にブラケットを介して固定され、各々の前端部が、左右一対のスライドアーム52の各々の後部にブラケットを介して固定されている。
左右一対のスライドアーム52は、各々が前後方向に延在して所定長さを有し、各々の前端部が、横行ユニット46の横行フレーム53の下端部にヒンジ機構54を介して揺動自在に固定されている。
【0039】
支持フレーム31の下フレーム31bの左右両側の前部及び中央部には、それぞれ、支持フレーム31に対するスライドアーム52の前進・後退をガイドするガイド部55が設けられている。ガイド部55は、スライドアーム52を支持する機能も有する。各ガイド部55には、下フレーム31bとスライドアーム52との間にて転動する車輪56が介装されている。
【0040】
スライドユニット45では、油圧シリンダ51を伸縮させることによってスライドアーム52を前進・後退させることにより、支持フレーム31に対して、横行ユニット46、傾動ユニット47、昇降ユニット48、及び水中ブレーカー33を前後方向(換言すれば、パイプケーシング4に対して外内方向)に移動させる。
【0041】
傾動ユニット47は、左右一対の伸縮自在な油圧シリンダ57からなる。
左右一対の油圧シリンダ57は、各々の下端部が、スライドアーム52の前部の上面に枢支されて、各々の上端部が、横行ユニット46の横行フレーム53の上部の背面に枢支されている。
【0042】
傾動ユニット47では、油圧シリンダ57を伸長させると、横行ユニット46、昇降ユニット48、及び水中ブレーカー33が直立状態になる。一方、油圧シリンダ57を短縮させると、横行ユニット46、昇降ユニット48、及び水中ブレーカー33が傾斜状態になる。ここで、横行ユニット46、昇降ユニット48、及び水中ブレーカー33の傾斜方向は、パイプケーシング4の延在方向と異なる方向となる。
【0043】
横行ユニット46は、正面視で矩形形状を有する横行フレーム53と、横行フレーム53の上部及び下部の前面にそれぞれ設けられて左右方向(換言すれば、パイプケーシング4に対して左右周方向)に延在する所定長さの上レール61及び下レール62と、昇降ユニット48のポスト部材63の背面の中央部及び下部より背方に張り出して横行フレーム53の上面及び下面より横行フレーム53を挟む上下一対の挟持部材63a、63bと、を含んで構成される。
【0044】
また、横行ユニット46は、横行フレーム53とポスト部材63との間で上下方向に延在して挟持部材63a、63bにより回転自在に支持される車軸64と、車軸64に取り付けられて上レール61の前面を転動する上車輪65と、車軸64に取り付けられて下レール62の前面を転動する下車輪66と、車軸64の回転駆動源である電動モータ67と、を更に含んで構成される。
ここで、上下一対の挟持部材63a、63bは、横行フレーム53に対するポスト部材63の左右方向の移動をガイドする機能を有する。また、ポスト部材63は、上下一対の挟持部材63a、63bを介して、横行フレーム53に支持される。
【0045】
横行ユニット46では、上車輪65及び下車輪66を転動させることによって、横行フレーム53に対してポスト部材63を左右方向に移動させることにより、横行フレーム53に対して、昇降ユニット48及び水中ブレーカー33を左右方向(換言すれば、パイプケーシング4に対して左右周方向)に移動させる。
【0046】
昇降ユニット48は、上下方向に延在して所定の長さを有する角管状のポスト部材63と、ポスト部材63内に設けられて下端部がポスト部材63に固定される伸縮自在な油圧シリンダ71と、油圧シリンダ71の上端部に設けられたプーリ72と、ポスト部材63の前側の上端部に設けられたプーリ73と、一端がポスト部材63の後側の上端部に固定されて、途中でプーリ72、73に掛け渡されて、他端が水中ブレーカー33のカバー部材74の上部に予め設けられたブラケット75に固定されるワイヤ76と、を含んで構成される。
【0047】
また、昇降ユニット48のポスト部材63の左右両側の中央部および下部には、それぞれ、ポスト部材63に対する水中ブレーカー33(カバー部材74)の上昇・下降をガイドするガイド部77が設けられている。
【0048】
昇降ユニット48では、油圧シリンダ71を伸長させると、プーリ72、73間の距離が短くなって、この結果、ワイヤ76によりカバー部材74が吊り下げられて、ポスト部材63に対して、水中ブレーカー33が下降する。一方、油圧シリンダ71を短縮させると、プーリ72、73間の距離が長くなって、この結果、ワイヤ76によりカバー部材74が吊り上げられて、ポスト部材63に対して、水中ブレーカー33が上昇する。従って、昇降ユニット48では、油圧シリンダ71を伸縮させることによって、ポスト部材63に対して、水中ブレーカー33を下降・上昇させることができ、ひいては、水中ブレーカー33をパイプケーシング4に沿って下降・上昇させることができる。
【0049】
水中ブレーカー33は、前面開口のコ字状の断面を有して上下方向に延在する所定長さのカバー部材74と、カバー部材74の下部に設けられる油圧ブレーカー本体78と、を含んで構成される。
油圧ブレーカー本体78は、その先端部に設けられたチゼル79を介して、被掘削物を打撃掘削する。
【0050】
水中施工ユニット7は、支持フレーム31の上端部に設けられる吊り位置調整装置80を更に含んで構成される。
吊り位置調整装置80は、左右一対の伸縮自在な油圧シリンダ81a、81bと、左右一対のロッド82a、82bと、を含んで構成される。
【0051】
左右一対の油圧シリンダ(伸縮シリンダ)81a、81bは、各々の下端部が、支持フレーム31の上フレーム31aの左右両側の前端部に枢支されており、各々の上端部が、左右一対のロッド82a、82bの各々の上端部に枢支されている。
左右一対のロッド82a、82bは、各々の下端部が、支持フレーム31の上フレーム31aの左右両側の中央部に枢支されている。
【0052】
左側の油圧シリンダ81aの上端部及び左側のロッド82aの上端部には、枢支部を介して、左側吊り部83aが設けられている。
右側の油圧シリンダ81bの上端部及び右側のロッド82bの上端部には、枢支部を介して、右側吊り部83bが設けられている。
【0053】
フックブロック27aのフックは、左側吊り部83aに掛けられる。また、フックブロック27bのフックは、右側吊り部83bに掛けられる。
【0054】
吊り位置調整装置80では、油圧シリンダ81a、81bを伸長させると、左側吊り部83a及び右側吊り部83bが後退する。一方、油圧シリンダ81a、81bを短縮すると、左側吊り部83a及び右側吊り部83bが前進する。
【0055】
次に、水中掘削装置の変位と吊り位置調整装置の変位との関係を
図6を用いて説明する。
図6は、水中ブレーカー33を、スライドユニット45により前進させ、傾動ユニット47により傾斜させ、かつ、昇降ユニット48により下降させた状態を示す。
【0056】
図6に示す水中施工ユニット7は、その重心が、
図4に示した水中施工ユニット7の重心よりも前方に位置する。
すなわち、水中ブレーカー33を、スライドユニット45により前進させ、傾動ユニット47により傾斜させ、かつ、昇降ユニット48により下降させることにより、水中施工ユニット7の重心位置が前方に移動する。
この重心位置の移動に応じて、吊り位置調整装置80により、左側吊り部83a及び右側吊り部83bを前方に移動させる。
【0057】
従って、スライドユニット45、傾動ユニット47、及び、昇降ユニット48は、本発明の「変位装置」に対応して、支持フレーム31に対して水中ブレーカー33を変位させる。また、吊り位置調整装置80は、スライドユニット45、傾動ユニット47、及び、昇降ユニット48による水中ブレーカー33の変位方向(前後方向)に左側吊り部83a及び右側吊り部83bの位置を調整することができる。
【0058】
次に、水中施工装置1の設置と、水中施工装置1による施工とについて、
図7〜
図10を用いて説明する。
図7〜
図9は、水中施工装置1の設置方法を示す。
図10は、水中施工装置1による施工の一例を示す。
【0059】
水中施工装置1の設置では、まず、
図7に示すように、パイプケーシング4をパイプケーシング把握・駆動装置3により把握しつつ、所定深さ分、水中に延出させて、保持する。
次に、クレーン5により、吊りビーム91及び左側吊り部83a及び右側吊り部83bを介して、水中施工ユニット7を水中に吊り下げる。
【0060】
次に、フックブロック27aのフックを左側吊り部83aに掛け、また、フックブロック27bのフックを右側吊り部83bに掛ける。そして、水中施工ユニット7を、クレーン5と、左右の昇降用ウインチ6a、6bとで、合吊りする。
次に、水中施工ユニット7をパイプケーシング4に引き寄せて、水中把持装置32を開放状態にして、支持フレーム31の後部の空間31eに、パイプケーシング4の一部を収容する。
【0061】
次に、水中把持装置32によりパイプケーシング4を把持して、
図8に示すように、クレーン5と左側吊り部83a及び右側吊り部83bとを分離する。
次に、パイプケーシング4の設置位置に作業台船2を誘導して、作業台船2を、例えば、図示しない係留索を介して、図示しない岸壁の固定用アンカに固定する。
次に、水中把持装置32を開放状態にして、パイプケーシング4をパイプケーシング把握・駆動装置3により把握しつつ、施工時の目標深さまで水中に延出させて、保持する。
【0062】
次に、
図9に示すように、左右の昇降用ウインチ6a、6bにより、左側吊り部83a及び右側吊り部83bを介して、水中施工ユニット7を施工時の目標深さまで吊り下げて、水中把持装置32によりパイプケーシング4を把持する。
【0063】
次に、
図10に示すように、スライドユニット45、横行ユニット46、傾動ユニット47、及び、昇降ユニット48を用いて、水中ブレーカー33の位置・姿勢決めを行って、水中ブレーカー33により、構造物10の施工部位を打撃掘削する。この位置・姿勢決め時に、支持フレーム31に対して水中ブレーカー33が変位するので、この変位方向に応じて、吊り位置調整装置80により、左側吊り部83a及び右側吊り部83bの位置を調整する。このときに、吊り位置調整装置80は、支持フレーム31の左右両側部に設けられた油圧シリンダ81a、81bを各別に作動させることにより、左側吊り部83aの位置と右側吊り部83bの位置とを各別に調整することができる。
【0064】
この後、施工場所を移動すべく、左右の昇降用ウインチ6a、6bによりワイヤロープ21a、21bを介して水中施工ユニット7を吊り上げるときには、吊り位置調整装置80により吊り荷のバランスが既に取られているので、前述の位置・姿勢決め状態を維持したままで、水中施工ユニット7を吊り上げることができる。
【0065】
本実施形態によれば、水中施工装置1は、水面上に浮かぶ作業台船2と、この作業台船2に設置される昇降用ウインチ6a、6b(昇降装置)と、昇降用ウインチ6a、6bにより水中に吊り下げられる支持フレーム31と、この支持フレーム31に支持されて水中の被掘削物を掘削する水中ブレーカー33(水中掘削装置)と、を含んで構成される。支持フレーム31は、昇降用ウインチ6a、6bによる吊り部83a、83bを有する。水中施工装置1は、支持フレーム31に対する吊り部83a、83bの位置を調整する吊り位置調整装置80を備える。これにより、支持フレーム31に対する水中ブレーカー33の重心移動時に、支持フレーム31に対する吊り部83a、83bの位置を調整することができるので、水中ブレーカー33の重心が移動したままの状態で、水中施工ユニット7を昇降させることができる。
【0066】
また本実施形態によれば、水中施工装置1は、支持フレーム31に対して水中ブレーカー33を変位させるスライドユニット45、傾動ユニット47、及び、昇降ユニット48を更に備えることにより、支持フレーム31の位置を保持したままで、水中ブレーカー33の施工対象位置を変更することができる。
【0067】
また本実施形態によれば、吊り位置調整装置80は、スライドユニット45、傾動ユニット47、及び、昇降ユニット48による水中ブレーカー33の変位方向に吊り部83a、83bの位置を調整する。これにより、施工場所を移動すべく、左右の昇降用ウインチ6a、6bによりワイヤロープ21a、21bを介して水中施工ユニット7を吊り上げるときには、吊り位置調整装置80により吊り荷のバランスが既に取られているので、直ちに水中施工ユニット7を吊り上げることができ、ひいては、施工を効率的に行うことができる。
【0068】
また本実施形態によれば、支持フレーム31は前後方向に延在し、吊り位置調整装置80は、支持フレーム31の幅方向両側部(左右両側部)にそれぞれ設けられて、左右両側部の吊り部83a、83bの位置を各別に調整する。これにより、横行ユニット46により、支持フレーム31に対して水中ブレーカー33が左右方向に移動した場合であっても、この移動に応じて、吊り位置調整装置80により、吊り荷のバランス調整を行うことができる。
【0069】
また本実施形態によれば、吊り位置調整装置80は、下端部(一端部)が支持フレーム31に枢支されて伸縮可能な油圧シリンダ81a、81b(伸縮シリンダ)と、油圧シリンダ81a、81bの上端部(他端部)に上端部(一端部)が枢支されて、下端部(他端部)が油圧シリンダ81a、81bの下端部に前後方向に並んで支持フレーム31に枢支されるロッド82a、82bと、を含んで構成されており、吊り部83a、83bは、油圧シリンダ81a、81bの上端部
及びロッド82a、82bの上端部に設けられる。これにより、比較的簡素な構成で、吊り部83a、83bの位置調整を行うことができる。
【0070】
また本実施形態によれば、水中施工装置1は、作業台船2に設置されるパイプケーシング把握・駆動装置3と、このパイプケーシング把握・駆動装置3により把握されて水中に延出するパイプケーシング4と、支持フレーム31に設けられてパイプケーシング把握・駆動装置3より下方のパイプケーシング4を把持可能な水中把持装置32と、を更に備える。これにより、パイプケーシング4をガイドとして水中施工ユニット7の吊り下げを行うことができるので、水中施工ユニット7を施工場所に精度よく移動させることができる。また、水中ブレーカー33による掘削時には、パイプケーシング4が反力受けとして機能するので、水中ブレーカー33用の反力受けを別途設置する必要がなく、それゆえ、施工を効率的に行うことができる。
【0071】
尚、水中施工装置1では、作業台船2から水中に延出したパイプケーシング4で掘削時に発生する反力を受けるため、掘削作業箇所がパイプケーシング4から離れるほど上記反力がより大きくなる。その場合水中施工ユニット7の水中把持装置32に偏力が作用するため昇降用ウインチ6a、6bによる吊り上げ、吊り下げがスムーズにできない固縛状態に陥るおそれがある。この点、本実施形態では吊り位置調整装置80を備えることにより、吊り位置を適時調整しながら吊り上げ、吊り下げを行うことで固縛状態を解くことができるので、正常な把持状態への復旧ができる。
【0072】
また本実施形態において、吊り位置調整装置80と支持フレーム31との間に前述の横行ユニット46と同様の構成を有する新たな横行ユニットを介装することで、支持フレーム31に対して吊り位置調整装置80を左右方向に移動させることができる。この場合には、例えば、横行ユニット46の上下を新たな横行ユニットの前後に対応させて、新たな横行フレームを支持フレーム31の上フレーム31aに取り付けた状態で、新たな横行ユニットを、横行ユニット46と同様に構成すればよい。この場合には、横行ユニット46が、本発明の「変位装置」に対応して、支持フレーム31に対して水中ブレーカー33を変位させる。また、新たな横行ユニットを有する吊り位置調整装置80が、本発明の「吊り位置調整装置」に対応して、横行ユニット46による水中ブレーカー33の変位方向に左側吊り部83a及び右側吊り部83bの位置を調整する。
【0073】
また本実施形態では、左右の昇降用ウインチ6a、6bより引き出されたワイヤロープ21a、21bについては、各々の端部がパイプケーシング把握・駆動装置3のベースフレームのブラケット25a、25bに固定されており、フックブロック27a、27bが、それぞれ、ワイヤロープ21a、21bの途中に設けられているが、ワイヤロープ21a、21bにおける荷揚げ用のフックの設置位置はこれに限らず、例えば、ワイヤロープ21a、21bの各々の端部を自由端として、各端部ごとに荷揚げ用のフックを設けてもよい。
【0074】
また本実施形態では、水中施工ユニット7を吊り下げる昇降装置として、作業台船2に設置された昇降用ウインチ6a、6bを用いて説明したが、昇降装置はこれに限らず、例えば、昇降装置として、作業台船2に設置されたクレーン5を用いてもよい。また、昇降装置として、作業台船2以外の場所に設置された昇降用ウインチ又はクレーンを用いてもよい。
【0075】
また本実施形態では、パイプケーシング4が円筒状であるが、パイプケーシング4の断面形状は円形に限らず、例えば矩形であってもよい。すなわち、パイプケーシング4は矩形筒状であってもよい。
【0076】
また本実施形態では、水中掘削装置の一例として、被掘削物を打撃掘削する水中ブレーカー33を用いて説明したが、被掘削物を掘削する水中掘削装置はこれに限らず、例えば、水中掘削装置として、切削ビットが配置されたドラムカッタ又はカッタヘッドを回転させつつ被掘削物を回転掘削する回転掘削装置や、アームの先端にバケットを有するショベルを用いてもよい。
【0077】
また本実施形態では、被掘削物として水中の構造物10を用いて説明したが、被掘削物はこれに限らず、例えば、被掘削物は、水中の地盤であってもよい。