(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電池の製造の際に本体部材の開口部内に蓋部材を挿入したとき、本体部材の開口部と蓋部材の周縁部とが衝突したり強く接触すると、金属粉などの異物が生じて、この異物が本体部材内に落ちて、短絡等の原因になるおそれがある。特に、本体部材の開口部のうち、開口長辺部と開口短辺部との間をそれぞれ結んで弧状に曲がる4つの開口R部と、蓋部材の周縁部のうち、これらの開口R部にそれぞれ対向する4つの蓋R部とは、挿入時に衝突などし易く、金属粉などの異物が生じ易い。
【0005】
このため、この異物の発生を防止するために、
図9及び
図10に示すように、蓋部材913の寸法は、本体部材911の開口部911hの寸法よりも若干小さく設計することが行われる。特に、蓋部材913の周縁部913fの蓋R部913rの寸法は、本体部材911の開口部911hの開口R部911rの寸法よりも小さくして、開口R部911rと蓋R部913rとが離間して配置される形態とすることがある。
【0006】
しかしながら、開口部911の肉厚t6が一様に等しく開口R部911rの肉厚t6が薄いと、溶接のためのレーザビーム等を上方から照射したときに、
図11に示すように、開口R部911rが大きく溶け込んで(
図11中、下方に溶け込んで)、溶け込みの深さが深くなり過ぎるため、開口R部911rと蓋R部913rとの接合が難しくなる場合がある。即ち、開口R部911rの一部及び蓋R部913rの一部が溶融した後に固化した溶融固化部912のうち、開口R部911rと蓋R部913とを間を繋ぐブリッジ部分の厚みtb(
図11中に矢印で示す)が薄くなりがちで、開口R部911rと蓋R部913rとの間の封止信頼性が低い。特に、開口R部911rと蓋R部913rとが大きく離間している場合には、これらの接合が難しく、これらの間の封止信頼性が低くなる。
【0007】
一方、開口R部911rが大きく溶け込むのを防ぐために、出力を小さくしてレーザビーム等を上方から照射すると、
図12に示すように、開口R部911r及び蓋R部913rのうち、レーザビーム等で溶融する部分の体積が小さくなり、開口R部911rと蓋R部913rとを溶融固化部912を介して接合できないことが生じ得る。従って、この場合も開口R部と蓋R部との間の封止信頼性が低くなる。特に、開口R部911rと蓋R部913rとが大きく離間している場合には、これらの間の封止信頼性が低くなる。
【0008】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、電池ケースを構成する本体部材と蓋部材との間の封止信頼性を、開口R部と蓋R部との間においても高くできる角型電池、及び、この角型電池の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明の一態様は、直方体状をなす金属製の電池ケース内に電極体を収容してなる角型電池であって、前記電池ケースは、一対の開口長辺部、一対の開口短辺部、及び、前記開口長辺部と前記開口短辺部との間をそれぞれ結んで弧状に曲がる4つの開口R部からなる矩形状の開口部を有する、有底角筒状の本体部材と、前記開口部内に挿入されて前記開口部を封口してなり、一対の前記開口長辺部にそれぞれ対向する一対の蓋長辺部、一対の前記開口短辺部にそれぞれ対向する一対の蓋短辺部、及び、4つの前記開口R部にそれぞれ対向する4つの蓋R部からなる蓋周縁部を有する、矩形板状の蓋部材と、を有し、
前記蓋R部の曲率半径を、それぞれ前記開口R部の曲率半径よりも大きくしてなり、前記開口部は、4つの前記開口R部の肉厚が、それぞれ一対の前記開口長辺部の肉厚よりも厚くされてなり、前記開口部の内周に前記蓋部材を支持する段差部を有し、前記蓋部材の前記蓋周縁部は、全周にわたり前記段差部に重なっており、前記本体部材の前記開口部と前記蓋部材の前記蓋周縁部とは、前記開口部内に前記蓋部材を挿入する際の前記開口部の寸法よりも、前記蓋周縁部の寸法が小さくされてなり
、前記開口部と前記蓋周縁部とが全周にわたり気密に接合された溶融固化部を有する角型電池である。
【0010】
この角型電池の電池ケースは、その本体部材の開口部のうち開口R部の肉厚が、それぞれ開口長辺部の肉厚よりも厚くされている。肉厚が厚くされた開口R部は熱容量が大きいため、溶接のために蓋部材の厚み方向外側からエネルギビームが照射されたときの溶け込みの深さが深くなり過ぎるのを防止できる。一方で、開口R部の肉厚が厚いことで、開口R部及び蓋R部のうち、エネルギビームで溶融する部分の体積を十分に確保でき、溶融固化部を大きく形成できる。これにより、開口R部と蓋R部との間の封止信頼性を高くできる。従って、この角型電池では、電池ケースの本体部材と蓋部材との封止信頼性を高くできる。
更に、この角型電池では、蓋R部の曲率半径を開口R部の曲率半径よりもそれぞれ大きくしているので、開口R部と蓋R部との間に確実に隙間を設けることができ、電池の製造の際に本体部材の開口部内に蓋部材を挿入したとき、開口R部と蓋R部とが衝突などして金属粉などの異物が生じるのをより確実に防止できる。
但し、開口R部及び蓋R部の中央部分で隙間が大きくなり易いが、この角型電池では、開口R部の肉厚を厚くしているので、開口R部と蓋R部とを確実に溶接できる。従って、開口R部と蓋R部とが大きく離間しているにも拘わらず、これらの間の封止信頼性も高くできる。
【0011】
なお、溶接に用いる「エネルギビーム」としては、レーザビーム、電子ビームなどが挙げられる。また、レーザとしては、ファイバレーザなどのCWレーザや、YAGレーザなどのパルスレーザなどが挙げられる。
【0016】
また、他の態様は、直方体状をなす金属製の電池ケース内に電極体を収容してなり、前記電池ケースは、一対の開口長辺部、一対の開口短辺部、及び、前記開口長辺部と前記開口短辺部との間をそれぞれ結んで弧状に曲がる4つの開口R部からなる矩形状の開口部を有する、有底角筒状の本体部材と、前記開口部内に挿入されて前記開口部を封口してなり、一対の前記開口長辺部にそれぞれ対向する一対の蓋長辺部、一対の前記開口短辺部にそれぞれ対向する一対の蓋短辺部、及び、4つの前記開口R部にそれぞれ対向する4つの蓋R部からなる蓋周縁部を有する、矩形板状の蓋部材と、を有し、
前記蓋R部の曲率半径を、それぞれ前記開口R部の曲率半径よりも大きくしてなり、前記開口部は、4つの前記開口R部の肉厚が、それぞれ一対の前記開口長辺部の肉厚よりも厚くされてなり、前記開口部の内周に前記蓋部材を支持する段差部を有し、前記蓋部材の前記蓋周縁部は、全周にわたり前記段差部に重なっており、前記本体部材の前記開口部と前記蓋部材の前記蓋周縁部とは、前記開口部内に前記蓋部材を挿入する際の前記開口部の寸法よりも、前記蓋周縁部の寸法が小さくされてなり、かつ、前記蓋部材の厚み方向外側から照射されたエネルギビームにより、全周にわたり気密に溶接されてなる角型電池の製造方法であって、前記本体部材の前記開口部内に、この開口部の寸法よりも前記蓋周縁部の寸法が小さい前記蓋部材を挿入し、前記蓋周縁部を全周にわたり前記段差部に重ねる挿入工程と、前記蓋部材の前記厚み方向外側から前記エネルギビームを照射して、前記開口部と前記蓋周縁部とを全周にわたり溶接する溶接工程と、を備える角型電池の製造方法である。
【0017】
この角型電池の製造方法では、開口部のうち開口R部の肉厚がそれぞれ開口長辺部の肉厚よりも厚くされた本体部材を用いて、この本体部材の開口部内に蓋部材を挿入した後(挿入工程)、蓋部材の厚み方向外側からエネルギビームを照射して、開口部と蓋周縁部とを全周にわたり溶接する(溶接工程)。開口部の開口R部は、肉厚が厚く熱容量が大きいため、溶接工程でエネルギビームが照射されたときの溶け込みの深さが深くなり過ぎるのを防止できる。一方で、開口R部の肉厚が厚いために、開口R部及び蓋R部のうち、エネルギビームで溶融する部分の体積を十分に確保でき、溶融固化部を大きく形成できる。これにより、開口R部と蓋R部との間の封止信頼性を高くできる。従って、電池ケースの本体部材と蓋部材との封止信頼性を高くした電池を製造できる。
更に、蓋R部の曲率半径を開口R部の曲率半径よりもそれぞれ大きくしているので、開口R部と蓋R部との間に確実に隙間を設けることができ、挿入工程で本体部材の開口部内に蓋部材を挿入する際に、開口R部と蓋R部とが衝突などして金属粉などの異物が生じるのをより確実に防止できる。
但し、開口R部及び蓋R部の中央部分で隙間が大きくなり易いが、開口R部の肉厚を厚くしているので、開口R部と蓋R部とを確実に溶接できる。従って、開口R部と蓋R部とが大きく離間しているにも拘わらず、これらの間の封止信頼性も高くした電池を製造できる。
【0018】
更に、上記の角型電池の製造方法であって
、前記溶接工程は、
互いに離間して配置された前記開口R部と前記蓋R部とを、これらの一部を溶融させた後に固化させた溶融固化部を介して気密に接合する工程である角型電池の製造方法とすると良い。
【0019】
この角型電池の製造方法では、挿入工程において開口R部と蓋R部とをそれぞれ互いに離間して配置するので、開口R部と蓋R部とが衝突などして金属粉などの異物が生じるのを防止できる。
一方、開口R部と蓋R部とが互いに離間して配置されると、前述のように、開口R部と蓋R部との溶接が難しく、これらの間の封止信頼性が低くなり易い。しかし、この角型電池の製造方法では、開口R部の肉厚をそれぞれ厚くしている。このため、開口R部の溶接時の溶け込み深さを抑制できる一方、開口R部の一部及び蓋R部の一部からなる溶融固化部を大きく形成できるので、開口R部と蓋R部とを確実に溶接できる。従って、開口R部と蓋R部とが互いに離間しているにも拘わらず、これらの間の封止信頼性も高くした電池を製造できる。
【0022】
更に、上記の
いずれかに記載の角型電池の製造方法であって、前記溶接工程は、一対の前記開口長辺部をそれぞれ内側に押圧して、一対の前記開口長辺部と一対の前記蓋長辺部とをそれぞれ互いに密着させた状態で、溶接を行う工程である角型電池の製造方法とすると良い。
【0023】
この角型電池の製造方法では、溶接工程において、開口長辺部をそれぞれ内側に(開口長辺部同士が互いに近づく方向に)押圧し、開口長辺部と蓋長辺部とをそれぞれ互いに密着させて、溶接を行う。これにより、開口長辺部と蓋長辺部とをより確実に溶接でき、これらの間の封止信頼性をより高くできる。
一方、このように溶接工程を行う場合には、押圧していない自由状態で開口長辺部と蓋長辺部との間に隙間を設けることができる。これにより、挿入工程において開口長辺部と蓋長辺部とが衝突などして金属粉などの異物が生じるのをより確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施形態に係るリチウムイオン二次電池の斜視図である。
【
図2】実施形態に係るリチウムイオン二次電池の縦断面図である。
【
図3】実施形態に係り、蓋部材、正極端子及び負極端子等の分解斜視図である。
【
図4】実施形態に係り、開口R部及び蓋R部の近傍を上方から見た部分拡大平面図である。
【
図5】実施形態に係り、
図4におけるA−A断面を示す部分拡大断面図である。
【
図6】実施形態に係り、本体部材の開口部とこの開口部内に挿入した蓋部材との関係を示す説明図である。
【
図7】実施形態に係り、
図6におけるB−B断面を示す説明図である。
【
図8】実施形態に係り、溶接に先立ち、開口長辺部を内側に押圧して開口長辺部と蓋長辺部とを互いに密着させた状態を示す説明図である。
【
図9】参考形態に係り、溶接前における開口R部及び蓋R部の近傍を上方から見た部分拡大平面図である。
【
図10】参考形態に係り、
図9におけるE−E断面を示す説明図である。
【
図11】参考形態に係り、レーザ出力を高くして溶接したときの開口R部及び蓋R部の近傍における溶接状態を示す説明図である。
【
図12】参考形態に係り、レーザ出力を低くして溶接したときの開口R部及び蓋R部の近傍における溶接状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1及び
図2に、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池100(以下、単に電池100とも言う)を示す。また、
図3に、蓋部材113、正極端子150及び負極端子160等を示す。更に、
図4及び
図5に、電池ケース110のうち本体部材111の開口R部111r及び蓋部材113の蓋R部113rの近傍を示す。なお、以下では、電池100の厚み方向BH、幅方向CH、高さ方向DHを、
図1及び
図2に示す方向と定めて説明する。また、
図1〜
図3における上方を電池100の上側、下方を電池100の下側として説明する。
【0026】
この電池100は、ハイブリッド自動車や電気自動車等の車両や、ハンマードリル等の電池使用機器に搭載される角型の密閉型電池である。この電池100は、直方体状の電池ケース110と、この電池ケース110内に収容された扁平状捲回型の電極体120と、電池ケース110に支持された正極端子150及び負極端子160等から構成されている(
図1及び
図2参照)。また、電池ケース110内には、非水系の電解液117が保持されている。
【0027】
このうち電極体120は、その軸線(捲回軸)が電池100の幅方向CHと平行となるように横倒しにした状態で、電池ケース110内に収容されている(
図2参照)。この電極体120は、帯状の正極板121と帯状の負極板131とを帯状の2枚のセパレータ141,141を介して互いに重ねて、軸線周りに捲回し、扁平状に圧縮したものである。正極板121の幅方向の一部は、セパレータ141,141から軸線方向の一方側(
図2中、左方)に渦巻き状をなして突出しており、前述の正極端子(正極端子部材)150と接続している。また、負極板131の幅方向の一部は、セパレータ141,141から軸線方向の他方側(
図2中、右方)に渦巻き状をなして突出しており、前述の負極端子(負極端子部材)160と接続している。
【0028】
次に、電池ケース110について説明する。この電池ケース110は、金属(具体的にはアルミニウム)により形成されている。この電池ケース110は、上側のみに矩形状の開口部111hを有する有底角筒状の本体部材111と、この本体部材111の開口部111h内に挿入されて開口部111hを封口する矩形板状の蓋部材113とから構成されている(
図1及び
図2参照)。
【0029】
このうち本体部材111の矩形状の開口部111hは、一対の開口長辺部111a,111aと、一対の開口短辺部111b,111bと、これら開口長辺部111aと開口短辺部111bとの間をそれぞれ結んで弧状に曲がる4つの開口R部111r,111rとからなる(
図4及び
図5参照)。開口長辺部111a,111aの肉厚t1は、ぞれぞれ0.40mmである。また、開口短辺部111b,111bの肉厚t2も、それぞれ0.40mmである。これらに対し、開口R部111r,111rの肉厚t3は、それぞれ0.45mmであり、開口長辺部111a,111aの肉厚t1及び開口短辺部111b,111bの肉厚t2よりも厚くされている(t3>t1、かつ、t3>t2)。なお、開口R部111rの肉厚t3は、開口R部111rの中央における肉厚を指す。
【0030】
蓋部材113のうち、その長手方向(電池100の幅方向CH)の中央付近には、非復帰型の安全弁113vが設けられている(
図1〜
図3参照)。また、この安全弁113vの近傍には、電解液117を電池ケース110内に注入する際に用いられる注液孔113hが設けられており、封止部材115で気密に封止されている。また、蓋部材113のうち、その長手方向の両端近傍には、電池ケース110の内部から外部に延出する形態の正極端子(正極端子部材)150及び負極端子(負極端子部材)160がそれぞれ固設されている。
【0031】
具体的には、これらの正極端子150及び負極端子160は、それぞれ、電池ケース110内で電極体120に接続する一方、蓋部材113を貫通して電池ケース110の外部に延出する第1端子部材151,161と、蓋部材113上に配置されて第1端子部材151,161に加締め固定されたクランク状の第2端子部材152,162とから構成されている。正極端子150及び負極端子160は、これらにバスバや圧着端子など電池外の接続端子を締結するための金属製の締結部材155,165と共に、蓋部材113の内側(ケース内側)に配置された樹脂製の第1絶縁部材157,167、及び、蓋部材113の外側(ケース外側)に配置された樹脂製の第2絶縁部材158,168を介して、蓋部材113に固定されている。
【0032】
この蓋部材113は、その肉厚t4が1.00mmであり、前述の本体部材111の肉厚t1,t2,t3のいずれよりも厚くされている(t4>t1、t4>t2,かつ、t4>t3)(
図5参照)。また、この蓋部材113の蓋周縁部113fは、一対の蓋長辺部113a,113aと、一対の蓋短辺部113b,113bと、これら蓋長辺部113aと蓋短辺部113bとの間をそれぞれ結んで弧状に曲がる4つの蓋R部113r,113rとからなる(
図4及び
図5参照)。このうち蓋長辺部113a,113aは、それぞれ本体部材111の開口長辺部111a,111aと対向している。また、蓋短辺部113b,113bは、それぞれ本体部材111の開口短辺部111b,111bと対向している。また、蓋R部113r,113rは、それぞれ本体部材111の開口R部111r,111rと対向している。
【0033】
開口長辺部111a,111aと蓋長辺部113a,113aとは、それぞれ、隙間を形成することなく互いに当接している。これに対し、開口短辺部111b,111bと蓋短辺部113b,113bとは、それぞれ、ごく小さな隙間KG2を介して互いに離間している。また、開口R部111r,111rと蓋R部113r,113rとは、それぞれ、上記の隙間KG2よりも大きな隙間KG3を介して互いに離間している。蓋R部113r,113rの曲率半径r2(
図6参照)は、それぞれ開口R部111r,111rの曲率半径r1よりも大きくされている。このため、開口R部111rと蓋R部113rとの間に確実に隙間KG3を設けることができる。
【0034】
本体部材111と蓋部材113とは、溶接により互いに接合されている。具体的には、本体部材111の開口部111hと蓋部材113の蓋周縁部113fとが、後述するように、蓋部材113の厚み方向外側から(蓋部材113の上方から)照射されたエネルギビームLS(具体的にはレーザビーム)により、全周にわたり気密に溶接されている。即ち、開口部111hと蓋周縁部113fとは、開口部111hの一部及び蓋周縁部113fの一部が一旦溶融した後に固化した平面視口字状の溶融固化部112を介して、気密に接合されている。
【0035】
以上で説明したように、この電池100の電池ケース110は、その本体部材111の開口部111hのうち開口R部111r,111rの肉厚t3が、それぞれ開口長辺部111a,111aの肉厚t1よりも厚くされている(t3>t1)。肉厚t3が厚くされた開口R部111rは熱容量が大きいため、後述するように、蓋部材113の厚み方向外側からレーザビームLSが照射されたときの溶け込みの深さが深くなり過ぎるのを防止できる。一方で、開口R部111rの肉厚t3が厚いことで、開口R部111r及び蓋R部113rのうち、レーザビームLSで溶融する部分の体積を十分に確保でき、溶融固化部112を大きく形成できる。これにより、開口R部111rと蓋R部113rとの間の封止信頼性を高くできる。従って、この電池100では、電池ケース110の本体部材111と蓋部材113との封止信頼性を高くできる。
【0036】
更に、この電池100では、開口R部111r,111rと蓋R部113r,113rとがそれぞれ互いに離間して配置される。特に、蓋R部113r,113rの曲率半径r2をそれぞれ開口R部111r,111rの曲率半径r1よりも大きくしているので、開口R部111rと蓋R部113rとの間に確実に隙間KG3が形成される。このため、電池100の製造の際に本体部材111の開口部111h内に蓋部材113を挿入したとき、開口R部111rと蓋R部113rとが衝突したり強く接触して、金属粉などの異物が生じるのをより確実に防止できる。
【0037】
一方、開口R部111rと蓋R部113rとが互いに離間して配置されると、これらの溶接が難しく、これらの間の封止信頼性が低くなり易い。しかし、この角型電池100では、開口R部111rの肉厚t3を厚くしている。このため、開口R部111rの溶接時の溶け込み深さを抑制できる一方、開口R部111rの一部及び蓋R部113rの一部からなる溶融固化部112を大きく形成できるので、開口R部111rと蓋R部113rとを確実に溶接できる。従って、開口R部111rと蓋R部113rとが互いに離間しているにも拘わらず、これらの間の封止信頼性も高くできる。
【0038】
次いで、上記電池100の製造方法について説明する。まず、蓋部材113と、第1端子部材151,161と、第2端子部材152,162と、締結部材155,165と、第1絶縁部材157,167と、第2絶縁部材158,168とをそれぞれ用意する。そして、これらを用いて、蓋部材113に正極端子150及び負極端子160をそれぞれ固設する(
図3参照)。
【0039】
次に、別途形成した電極体120に、正極端子150及び負極端子160をそれぞれ接続(溶接)する。また、本体部材111を用意する。そして、挿入工程において、本体部材111内に電極体120を収容すると共に、本体部材111の開口部111h内に蓋部材113を挿入する(
図6及び
図7参照)。
【0040】
その際、本体部材111の開口部111hと蓋部材113の蓋周縁部113fとの間には、全周にわたり隙間ができる。具体的には、開口長辺部111a,111aと蓋長辺部113a,113aとは、それぞれ隙間KG1を介して互いに離間して配置される。また、開口短辺部111b,111bと蓋短辺部113b,113bとは、それぞれ隙間KG2を介して互いに離間して配置される。また、開口R部111r,111rと蓋R部113r,113rとは、それぞれ隙間KG3を介して互いに離間して配置される。
【0041】
ところで、蓋部材113は本体部材111の開口部111h内に偏って配置される場合もある。例えば、開口部111hの一方の開口長辺部111aとこれに対向する蓋部材113の蓋長辺部113aとが隙間なく当接するように配置されたり、開口部111の一方の開口短辺部111bとこれに対向する蓋部材113の蓋短辺部113bとが隙間なく当接するように配置される場合である。しかし、前述のように、蓋R部113rの曲率半径r2は、開口R部111rの曲率半径r1よりも大きくされているので、このように蓋部材113が偏って配置された場合でも、開口R部111r,111rと蓋R部113r,113rとの間には、それぞれ確実に隙間KG3が形成される。従って、この挿入工程において開口R部111rと蓋R部113rとが衝突したり強く接触することを確実に防止できる。
【0042】
次に、溶接工程において、まず溶接に先立ち、本体部材111のうち一対の開口長辺部111a,111aをそれぞれ内側に押圧して、これら開口長辺部111a,111aと蓋部材113の一対の蓋長辺部113a,113aとをそれぞれ互いに密着させる(
図8参照)。その後、この状態を維持しつつ、蓋部材113の厚み方向外側から(蓋部材113の上方から)、より具体的には、蓋部材113に直交する方向に、エネルギビーム(具体的にはレーザビーム)LSを照射して、本体部材111の開口部111hと蓋部材113の蓋周縁部113fとを全周にわたり溶接する。なお、このレーザビームLSの照射には、光ファイバを媒質に用いたファイバレーザを、連続的にレーザー光を出すCWレーザ(Continuous wave laser)として用いた。これにより、開口部111hの一部及び蓋周縁部113fの一部が溶融した後に固化して平面視口字状の溶融固化部112が形成され、この溶融固化部112を介して、開口部111hと蓋周縁部113fとが全周にわたり気密に接合する。
【0043】
次に、電解液117を注液孔113hから電池ケース110内に注液し、封止部材115で注液孔113hを気密に封止する。その後、この電池100について、初充電やエージング、各種検査を行う。かくして、電池100が完成する。
【0044】
以上で説明したように、この電池100の製造方法では、開口部111hのうち開口R部111r,111rの肉厚t3がそれぞれ開口長辺部111a,111aの肉厚t1よりも厚くされた本体部材111を用いて、この本体部材111の開口部111h内に蓋部材113を挿入した後(挿入工程)、蓋部材113の厚み方向外側からレーザビームLSを照射して、開口部111hと蓋周縁部113fとを全周にわたり気密に溶接する(溶接工程)。開口部111hの開口R部111rは、肉厚t3が厚く熱容量が大きいため、溶接工程でレーザビームLSが照射されたときの溶け込みの深さが深くなり過ぎるのを防止できる。一方、開口R部111rの肉厚t3が厚いことで、開口R部111r及び蓋R部113rのうち、レーザビームLSで溶融する部分の体積を十分に確保でき、溶融固化部112を大きく形成できる。これにより、開口R部111rと蓋R部113rとの間の封止信頼性を高くできる。従って、電池ケース110の本体部材111と蓋部材113との封止信頼性を高くした電池100を製造できる。
【0045】
更に、この電池100の製造方法では、挿入工程において開口R部111r,111rと蓋R部113r,113rとをそれぞれ互いに離間して配置する。特に、蓋R部113r,113rの曲率半径r2をそれぞれ開口R部111r,111rの曲率半径r1よりも大きくしているので、開口R部111rと蓋R部113rとの間に確実に隙間KG3を設けることができる。このため、挿入時に開口R部111rと蓋R部113rとが衝突などして金属粉などの異物が生じるのをより確実に防止できる。
【0046】
一方、開口R部111rと蓋R部113rとが互いに離間して配置されると、これらの溶接がより難しく、これらの間の封止信頼性が低くなり易い。しかし、開口R部111rの肉厚t3を厚くしている。このため、開口R部111rの溶接時の溶け込み深さを抑制できる一方、開口R部111rの一部及び蓋R部113rの一部からなる溶融固化部112を大きく形成できるので、開口R部111rと蓋R部113rとを確実に溶接できる。従って、開口R部111rと蓋R部113rとが互いに離間しているにも拘わらず、これらの間の封止信頼性も高くした電池100を製造できる。
【0047】
また、この電池100の製造方法では、溶接工程において、開口長辺部111a,111aをそれぞれ内側に押圧し、開口長辺部111a,111aと蓋長辺部113a,113aとをそれぞれ互いに密着させて、溶接を行う。これにより、開口長辺部111aと蓋長辺部113aとをより確実に溶接でき、これらの間の封止信頼性をより高くできる。
一方、このように溶接工程を行う場合には、押圧していない自由状態で開口長辺部111aと蓋長辺部113aとの間に隙間KG1を設けることができる。これにより、挿入工程において開口長辺部111aと蓋長辺部113aとが衝突などして金属粉などの異物が生じるのをより確実に防止できる。
【0048】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。