特許第5869714号(P5869714)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5869714
(24)【登録日】2016年1月15日
(45)【発行日】2016年2月24日
(54)【発明の名称】蒸気循環再生システム
(51)【国際特許分類】
   C01B 19/02 20060101AFI20160210BHJP
   B01D 1/00 20060101ALI20160210BHJP
   B01D 5/00 20060101ALI20160210BHJP
【FI】
   C01B19/02 G
   B01D1/00 Z
   B01D1/00 A
   B01D5/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-99346(P2015-99346)
(22)【出願日】2015年5月14日
【審査請求日】2015年5月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100118625
【弁理士】
【氏名又は名称】大畠 康
(74)【代理人】
【識別番号】100144200
【弁理士】
【氏名又は名称】奥西 祐之
(72)【発明者】
【氏名】田中 潤也
(72)【発明者】
【氏名】山村 正道
(72)【発明者】
【氏名】北橋 邦寛
【審査官】 塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−203655(JP,A)
【文献】 特開昭55−158110(JP,A)
【文献】 実開昭60−028001(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 15/00−23/00
B01D 1/00
B01D 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物の蒸気を液化することで液状物を生成する液化再生装置であって、配管内を流れる流体との熱交換によって前記被加熱物の蒸気を液化する液化空間と、前記液状物の形態を保つための加熱部とを有する液化再生装置と、
前記液化再生装置からの前記液状物を加熱部で加熱して蒸気を生成する蒸気化装置と、
前記液化再生装置と前記蒸気化装置とを連通して前記液化再生装置からの前記液状物を前記蒸気化装置に導く連通部と、
前記蒸気を用いて被処理物の処理を行う処理装置と、
前記処理装置で使用された前記蒸気を前記液化再生装置に戻す戻し管と、
前記液化再生装置の温度を制御する液化再生温度制御部と、
前記蒸気化装置の温度を制御する蒸気化温度制御部と、を少なくとも備え、
前記被加熱物が、常温において固体の形態で存在し、前記液化再生装置では前記蒸気及び前記液状物の形態で存在し、前記連通部では前記液状物の形態で存在し、前記蒸気化装置では前記液状物及び前記蒸気の形態で存在し、前記処理装置及び前記戻し管では前記蒸気の形態で存在する、蒸気循環再生システム。
【請求項2】
請求項1において、前記蒸気を運ぶキャリアガスが、前記蒸気化装置の上空間において配設されたループ状配管を流通することによって加熱されたあと、前記ループ状配管の下方で連通して配設されたノズルパイプの穴から蒸気化用の液状物に向けて噴出される、蒸気循環再生システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、前記液化空間が外側の仕切り板によって液化容器の上空間内に形成され、相互に連通可能に仕切る内側の仕切り板によって、前記配管内を流れる前記流体と熱交換するための空間が、前記液化空間内に形成されている、蒸気循環再生システム。
【請求項4】
請求項において、前記液化容器の前記上空間内であって前記外側の仕切り板の外方には、固体の形態での前記被加熱物を投入するための原料投入ノズルが配設されている、蒸気循環再生システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、蒸気を循環・再生して使用する蒸気循環再生システムに関する。
【背景技術】
【0002】
金属等と水素との化合物である水素化合物のガスは、半導体を製造するときに幅広く使用されている。例えば、セレン化水素は、シリコン半導体のドーピングガスとして用いられたり、カルコパイライト型化合物半導体からなる太陽電池の原料として用いられている(特許文献1,2を参照)。セレン化水素は、毒性が強いガスであるため、取り扱いが難しく、ガスの供給系や排気系に多額の安全対策費用をかける必要があり、製造設備が高コストになってしまう。
【0003】
カルコパイライト型化合物半導体の他の製造方法として、セレン蒸気の雰囲気中で熱処理して製膜するセレン化法が検討されている。セレン蒸気を用いる方法は、セレン化水素を用いる方法と比較して、腐食性を持つものの、安全性が格段に改善されて取り扱い性も容易になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−153583号公報
【特許文献2】特開2013−203655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術は、使用済みの腐食性蒸気が除害処理された後に廃棄されていたため、製造コストが高いという問題を有している。
【0006】
したがって、この発明の解決すべき技術的課題は、このような腐食性蒸気をはじめとする各種の蒸気を循環・再生して使用する蒸気循環再生システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、この発明に係る蒸気循環再生システムは、
被加熱物の蒸気を液化することで液状物を生成する液化再生装置であって、配管内を流れる流体との熱交換によって前記被加熱物の蒸気を液化する液化空間と、前記液状物の形態を保つための加熱部とを有する液化再生装置と、
前記液化再生装置からの前記液状物を加熱部で加熱して蒸気を生成する蒸気化装置と、
前記液化再生装置と前記蒸気化装置とを連通して前記液化再生装置からの前記液状物を前記蒸気化装置に導く連通部と、
前記蒸気を用いて被処理物の処理を行う処理装置と、
前記処理装置で使用された前記蒸気を前記液化再生装置に戻す戻し管と、
前記液化再生装置の温度を制御する液化再生温度制御部と、
前記蒸気化装置の温度を制御する蒸気化温度制御部と、を少なくとも備え、
前記被加熱物が、常温において固体の形態で存在し、前記液化再生装置では前記蒸気及び前記液状物の形態で存在し、前記連通部では前記液状物の形態で存在し、前記蒸気化装置では前記液状物及び前記蒸気の形態で存在し、前記処理装置及び前記戻し管では前記蒸気の形態で存在することを特徴とする。
【0008】
この発明では、常温において固体の形態で存在する被加熱物が、液化再生装置や蒸気化装置や処理装置及び戻し管において、蒸気や液状物という適宜の形態に変化しながら循環するので、蒸気を循環・再生して使用することができ、製造コストを低減させることができる。
【0009】
前記蒸気を運ぶキャリアガスが、前記蒸気化装置の上空間において配設されたループ状配管を流通することによって加熱されたあと、前記ループ状配管の下方で連通して配設されたノズルパイプの穴から蒸気化用の液状物に向けて噴出されることが好ましい。このようにすれば、直線状配管よりも加熱経路が長くなるためにキャリアガスを均一な温度に加熱できるようになるとともに、キャリアガスが液状物から発生した蒸気を効率良く運ぶことができる。
【0010】
前記液化空間が外側の仕切り板によって液化容器の上空間内に形成され、相互に連通可能に仕切る内側の仕切り板によって、前記配管内を流れる前記流体と熱交換するための空間が、前記液化空間内に形成されていることが好ましい。このようにすれば、冷却経路が長くなるとともに液化空間が狭小であっても、蒸気を効率良く液化できる。
【0011】
前記液化容器の前記上空間内であって前記外側の仕切り板の外方には、固体の形態での前記被加熱物を投入するための原料投入ノズルが配設されていることが好ましい。このようにすれば、固体の形態での被加熱物が、液化空間で冷却されることなく、液化容器の下空間に溜まっている高温の液状物に供給される
【発明の効果】
【0017】
この発明の蒸気循環再生システムでは、被加熱物が、液化再生装置や蒸気化装置や処理装置及び戻し管において、蒸気や液状物という適宜の形態に変化しながら循環するので、蒸気を循環・再生して使用することができ、製造コストを低減させることができる。なお、本願での「被加熱物」は、或る原料の固体もしくは液状物もしくは蒸気の状態の総称である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】この発明の一実施形態に係る蒸気循環再生システムを示すシステム図である。
図2図1に示した蒸気循環再生システムのうち、液化再生装置及び蒸気化装置を正面から見た詳細図である。
図3図2のIII−III断面の矢視図である。
図4図2のIV−IV断面の矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
一実施形態に係る蒸気循環再生システム1を、図1乃至4を参照しながら説明するが、蒸気循環再生システム1は、腐食性蒸気を使用して化合物半導体を製造するという用途に限定されるものではない。
【0020】
図1に示すように、蒸気循環再生システム1は、液化再生装置3と、蒸気化装置5と、処理装置9と、原料供給装置2と、キャリアガス(窒素ガス)や添加ガスを供給する配管と、有害物質を除去した上で系外に排出する真空ポンプと、を備える。なお、蒸気循環再生システム1においては、少なくとも蒸気や液状物21,23が流れる流路は、流体の温度を制御するための加熱及び保温の構造を備えている。また、系内は蒸気や液状物が酸化しないように、真空ポンプでエアを排気したあと窒素ガスで置換することが行われるため、本システムは真空に耐えうる構造としている。なお、系内は、図示しない圧力計によって系内の圧力がモニターされ、任意の圧力で液化及び蒸気化の制御がなされる。(本システムでの一例としては、−5乃至−10KPa程度の弱減圧下としている。)
【0021】
液化再生装置3は、処理装置9で使用されたあと処理装置9から戻ってきた使用済みの蒸気が冷却フィン37やエア配管39に接触することによって液化する働きを備えている。液化再生装置3の液化容器31は、加熱部34により、被加熱物の融点以上であり且つ蒸気が発生しないような温度に加熱されており、液化で得られた液状物21を貯留する。液化容器31における液化で得られた液状物21の液面22が低下すると、プリルと呼ばれる固形形状をした固体の被加熱物が原料供給装置2から投入されて補充される。被加熱物は、例えば、金属のセレン(Se)や非金属の硫黄(S)であり、液化容器31で液状化され、蒸気化装置5でセレン蒸気や硫黄蒸気になる。当該蒸気は、高温で腐食性を持ったいわゆる腐食性蒸気である。
【0022】
蒸気化装置5は、蒸気化用の液状物23を貯留する蒸気化容器51と、蒸気化用の液状物23の入った蒸気化容器51を加熱する加熱部54と、キャリアガスを予め加熱するキャリアガス加熱部として働くループ状配管57と、を備える。液化再生装置3の液化容器31の下部32と蒸気化装置5の蒸気化容器51の下部52とが連通部40によって連通しており、液化再生装置3における液面22と蒸気化装置5における液面24とが同じレベルになっている。蒸気化装置5の蒸気化容器51は、被加熱物の融点よりも高くて被加熱物の沸点よりも低い温度に保たれており、蒸気化用の液状物23を貯留した蒸気化容器51の液面24からは被加熱物の蒸気が発生する状態におかれている。被加熱物の蒸気は、キャリアガスと一緒に処理装置9に運ばれる。
【0023】
処理装置9は、例えば、蒸気化装置5からの蒸気を予め所定温度にさらに加熱して化合物半導体の製膜に使用されたり、蒸気化装置5からの蒸気をそのまま化合物半導体の製膜に使用されたりする。処理装置9で使用された蒸気は、戻し管11を通じて、液化再生装置3に戻される。
【0024】
処理装置9は、例えば、化合物半導体の製膜を行うための装置であり、セレン(Se)蒸気や硫黄(S)蒸気のような腐食性蒸気を使用して製膜するための装置である。セレン(Se)蒸気や硫黄(S)蒸気のような腐食性蒸気は、例えば、カルコパイライト型化合物半導体を製造するときに使用される。カルコパイライト型化合物半導体は、結晶質又は非晶質のシリコン(Si)系のものよりも高い光電変換効率を有するので、太陽光を電気エネルギーに変換する太陽電池として用いることが検討されている。処理装置9においては、添加ガスを添加するための添加ガス導入管が接続されてもよい。
【0025】
カルコパイライト構造を有する化合物半導体(Ag,Cu)(Al,In,Ga)(S,Se)の中でも、特にI族原料に銅(Cu)、III族原料にインジウム(In)およびガリウム(Ga)、並びにVI族原料に硫黄(S)およびセレン(Se)を用いたいわゆるCIGS化合物半導体と呼ばれるCu(In,Ga)(S,Se)化合物半導体は、太陽電池の光吸収に理想的なバンドギャップを実現することができ、このようなCIGS化合物半導体によるCIS系薄膜太陽電池は高い光電変換効率を備えている。
【0026】
CIS系の薄膜を形成するには、成分元素の銅,インジウム,セレンをソースとして同時に蒸着する方法等がある。さらに、銅,インジウムを個別に成膜した積層膜をセレン化水素もしくはセレン蒸気の雰囲気中で加熱することによりセレン化するというセレン化法が使用されている。
【0027】
セレン化法のうち、セレン化水素を用いる方法は、セレン化水素が有毒であるため取り扱いが難しく、ガスの供給系や排気系に多額の安全対策費用をかける必要があり、製造設備が高コストになってしまう。他方、セレン化法のうち、セレン蒸気を用いる方法は、安全性が格段に改善されるが、セレン化水素を用いる方法と比べて光電変換効率が劣ると言われている。セレン蒸気同士が、多数結合して巨大な分子状集合体を形成しやすいため、銅やインジウムの膜の中への拡散性が芳しくないことが光電変換効率を低下させることの一因と考えられている。
【0028】
液状のセレン等を蒸気化する蒸気化装置5において、液状のセレンの加熱温度を上げることにより、巨大な分子状集合体の形成が起こりにくくなるようにも思われる。しかしながら、加熱温度を上げると蒸気圧が上昇することでセレンの蒸発量が増えてセレン蒸気同士が結合する機会が増えるため、巨大な分子状集合体の形成を抑制することにはなりにくい。また、加熱温度を上げるためには、蒸気化装置5における加熱部や断熱部を高温化に対応させる必要があるので、蒸気化装置5の大型化・高コスト化を招くという問題がある。
【0029】
そこで、蒸気化装置5で生成されたセレン蒸気をさらに加熱して、巨大な分子状集合体となったセレンを小さなサイズのものに分解(クラッキング)して改質することが検討されており、蒸気を予め所定温度にさらに加熱してもよい。
【0030】
次に、図2乃至4を参照しながら、蒸気循環再生システム1における液化再生装置3及び蒸気化装置5を詳細に説明する。
【0031】
図2は、液化再生装置3及び蒸気化装置5を正面から見た詳細図であり、図3は、図2のIII−III断面の矢視図であり、図4は、図2のIV−IV断面の矢視図である。
【0032】
液化再生装置3は、液化容器31と、加熱部34と、エア配管39と、冷却フィン37と、液化再生温度制御部(不図示)と、を有する。液化容器31は、有底の円筒形状をしており、液化で得られた液状物21や蒸気に対して耐食性を持ったオーステナイト系ステンレス鋼材から構成されている。液化容器31の下部32の外周を囲むように、セラミックファイバーヒータからなる加熱部34が配設されている。液化容器31の上部と上面と下面及び加熱部34を囲むように、断熱材38が配設されている。液化容器31の下部32の温度は、熱電対36によって測定される。液化容器31の上フランジ部を天板35で蓋することによって、液化容器31の内部空間が密閉されている。
【0033】
液化再生温度制御部によって、液化再生装置3が、被加熱物の融点(例えば、セレンは221℃、硫黄は115℃)以上の温度であって、液化で得られた液状物21からの蒸発による蒸気が発生しないような液化再生温度に制御されることにより、液化で得られた液状物21が液化容器31の下部32に貯留される。
【0034】
液化容器31の上空間33は、複数の仕切り板25で複数の液化空間27に仕切られ、液化空間27には、エア配管39及び冷却フィン37が配設されている。冷却フィン37が取り付けられたエア配管39内を、蒸気の液化の適した所定の温度に加熱したホットエアが流れることによって、液化容器31の上空間33に存在する蒸気と熱交換が行われる。ホットエアの温度は、熱電対46によって測定される。蒸気は、液化空間27の入口26から導入され、出口29から導出される過程で、冷却フィン37で冷却されることによって液化する。液化した被加熱物は、滴り落ちて、液化容器31の下部32に貯留されている液化で得られた液状物21と一体になる。
【0035】
蒸気は、液化容器31の高さ方向で中央部分での側壁に設けられた導入穴に対して気密接続された導入管41(図1に図示)から供給される。導入管41は、処理装置9に接続された戻し管11に接続されている。したがって、導入管41から液化再生装置3に供給される蒸気は、処理装置9で使用されたあと処理装置9から戻ってきた使用済みの蒸気である。
【0036】
天板35には、キャリアガスを系外に排出するためのキャリアガス排出部43が接続されている。キャリアガス排出部43からは、冷却フィン37及びエア配管39による液化で被加熱物の除去された後のキャリアガスが、図示しない水冷トラップ及びフィルタを通ることによって被加熱物が完全に除去(すなわち、除害処理)される。除害処理されたキャリアガスは、そのあと系外に排出される。
【0037】
天板35には、消費によって減量した被加熱物を補充するための原料投入ノズル45(図1に図示)が接続されている。蒸気化装置5に設けられたレベル検出部63によって蒸気化装置5の液面レベルが検出される。連通部40を通じて液化再生装置3の液化容器31の下部32及び蒸気化装置5の蒸気化容器51の下部52が連通しているため、液化再生装置3の液面22のレベルと蒸気化装置5の液面24のレベルとが同じになる。その結果、レベル検出部63によって液化再生装置3の液面レベルが検出される。蒸気化用の液状物23の液面24が低下すると、プリルと呼ばれる固形形状をした被加熱物が、原料供給装置2によって原料投入ノズル45を通じて液化再生装置3の液化容器31に投入されて補充される。
【0038】
蒸気化装置5は、蒸気化容器51と、加熱部54と、ループ状配管57と、蒸気化温度制御部(不図示)と、を有する。蒸気化容器51は、有底の円筒形状をしており、蒸気化用の液状物23や蒸気に対して耐食性を持ったオーステナイト系ステンレス鋼材から構成されている。蒸気化容器51の上空間53及び下部52を囲むように、セラミックファイバーヒータからなる加熱部54が配設されている。蒸気化容器51の上部と上面と下面及び加熱部54を囲むように、断熱材38が配設されている。蒸気化容器51の下部52の温度は、熱電対56によって測定される。蒸気化容器51の上フランジ部を天板55で蓋することによって、蒸気化容器51の内部空間が密閉されている。天板55には、蒸気化容器51に貯留されている蒸気化用の液状物23の液面レベルを検出するレベル検出部63と、後述するループ状配管57とが懸架されている。
【0039】
蒸気化温度制御部によって、蒸気化装置5が、蒸気化用の液状物23から蒸気を発生させるのを可能にする蒸気化温度に制御されている。当該蒸気化温度を例示すると、被加熱物がセレンの場合400℃乃至500℃であり、被加熱物が硫黄の場合200℃乃至300℃である。蒸気化装置5を当該蒸気化温度に制御することにより、蒸気化容器51に貯留されている蒸気化用の液状物23の液面24からは、蒸気が発生する。
【0040】
蒸気化容器51の上空間53には、新しく導入されるキャリアガス(例えば、窒素ガス)を予め加熱する加熱手段として働くループ状配管57が配設されている。キャリアガスがループ状配管57内を流通することによって、キャリアガスが予め加熱され、別途の加熱手段を設けることが不要になる。加熱されるキャリアガスの温度は、熱電対60によって測定される。熱電対60は、支持管58の中に配設されている。予め加熱されたキャリアガスは、支持管58に連結されたループ状配管57の下部に取り付けられたノズルパイプ59から噴出して、蒸気化用の液状物23から蒸気化した蒸気と混合される。
【0041】
キャリアガスと混合された蒸気は、蒸気化容器51の高さ方向で中央部分での側壁に設けられた導出穴に対して気密接続された導出管61から導出される。したがって、蒸気化装置5で蒸気化された蒸気は、キャリアガスと一緒に、導出管61(図1に図示)を通じて、処理装置9に運ばれる。
【0042】
蒸気は、キャリアガスと一緒に処理装置9に入って、化合物半導体の製膜に使用される。処理装置9で使用された蒸気は、戻し管11を通じて、液化再生装置3の上空間33に戻される。
【0043】
上記の蒸気循環再生システム1によれば、被加熱物が、液化再生装置3や蒸気化装置5や処理装置9及び戻し管11において、蒸気や液状物21,23という適宜の形態に変化しながら循環している。したがって、蒸気を循環・再生して使用することができるので、化合物半導体等の製造コストを低減させることができる。
【0044】
なお、この発明の理解を容易にするために、具体的な構成や数字を用いて説明したが、この発明は、上述した各実施形態の具体的な構成や数字に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した内容を逸脱しない範囲で考えられる各種の変形例を含むことができる。例えば、化合物半導体のうち太陽電池を製造するときに腐食性蒸気が使用される蒸気循環再生システム1を例示したが、当該用途に限定されるものではない。例えば、蒸気循環再生システム1は、太陽電池以外の化合物半導体を製造することを始め、鋼板への蒸着メッキ層を形成することにも適用することができる。また、蒸気として、金属のセレン(Se)蒸気又は非金属の硫黄(S)蒸気を例示したが、それ以外の腐食性蒸気や腐食性の無い蒸気にも適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 蒸気循環再生システム
2 原料供給装置
3 液化再生装置
5 蒸気化装置
9 処理装置
11 戻し管
20 架台
21 液化で得られた液状物
22 液面
23 蒸気化用の液状物
24 液面
25 仕切り板
26 入口
27 液化空間
29 出口
31 液化容器
32 下部
33 上空間
34 加熱部
35 天板
36 熱電対
37 冷却フィン
38 断熱材
39 エア配管
40 連通部
41 導入管
43 キャリアガス排出部
45 原料投入ノズル
46 熱電対
51 蒸気化容器
52 下部
53 上空間
54 加熱部
55 天板
56 熱電対
57 ループ状配管
58 支持管
59 ノズルパイプ
60 熱電対
61 導出管
63 レベル検出部
【要約】
【課題】蒸気を循環・再生して使用する蒸気循環再生システムを提供する。
【解決手段】被加熱物の蒸気を液化することで液状物21を生成する液化再生装置3と、液状物を加熱して蒸気を生成する蒸気化装置5と、液化再生装置と蒸気化装置とを連通する連通部40と、蒸気を用いて被処理物の処理を行う処理装置9と、処理装置で使用された蒸気を液化再生装置に戻す戻し管11と、液化再生装置の温度を制御する液化再生温度制御部と、蒸気化装置の温度を制御する蒸気化温度制御部と、を少なくとも備え、被加熱物が、液化再生装置では蒸気及び液状物の形態で存在し、連通部では液状物の形態で存在し、蒸気化装置では液状物及び前記蒸気の形態で存在し、処理装置及び戻し管では蒸気の形態で存在する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4