特許第5869716号(P5869716)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5869716
(24)【登録日】2016年1月15日
(45)【発行日】2016年2月24日
(54)【発明の名称】異形鉄筋のねじ式鉄筋継手
(51)【国際特許分類】
   E04C 5/18 20060101AFI20160210BHJP
   E04G 21/12 20060101ALI20160210BHJP
【FI】
   E04C5/18 102
   E04G21/12 105E
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-115663(P2015-115663)
(22)【出願日】2015年6月8日
【審査請求日】2015年6月8日
(31)【優先権主張番号】特願2014-247795(P2014-247795)
(32)【優先日】2014年12月8日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239096
【氏名又は名称】株式会社トーカイ
(74)【代理人】
【識別番号】100086793
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(72)【発明者】
【氏名】▲脇▼山 廣三
(72)【発明者】
【氏名】平井 敬二
(72)【発明者】
【氏名】福田 章
【審査官】 星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5564141(JP,B2)
【文献】 特開平09−302845(JP,A)
【文献】 特開平11−071860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 5/18
E04G 21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の鉄筋を接続する鉄筋継手であって、互いに接続される一対の鉄筋の対向する端部に雄ねじ部を有し、両鉄筋の前記雄ねじ部に螺合する筒状のカプラーを備え、
前記一対の鉄筋のうち、少なくとも一方の鉄筋は、鉄筋本体の外周に突条を有する異形鉄筋であり、この異形鉄筋である前記少なくとも一方の鉄筋の前記雄ねじ部は、前記鉄筋本体よりも大径の大径部にねじ溝が形成されており、
この大径部にねじ溝を形成した前記鉄筋に、前記突条にねじ溝を形成して前記カプラーの少なくとも一部を、ねじ山とねじ溝との嵌まり合い状態で逃がし可能とする突条上ねじ部が設けられ、
前記雄ねじ部および前記突条上ねじ部の両方または前記突条上ねじ部のみに螺合して前記カプラーを押し付けるロックナットが設けられ、
前記突条上ねじ部に前記ロックナットの全体または一部が設けられている異形鉄筋のねじ式鉄筋継手。
【請求項2】
一対の鉄筋を接続する鉄筋継手であって、互いに接続される一対の鉄筋の対向する端部に雄ねじ部を有し、両鉄筋の前記雄ねじ部に螺合する筒状のカプラーを備え、
前記一対の鉄筋のうち、少なくとも一方の鉄筋は、鉄筋本体の外周に突条を有する異形鉄筋であり、この異形鉄筋である前記少なくとも一方の鉄筋の前記雄ねじ部は、前記鉄筋本体よりも大径の大径部にねじ溝が形成されており、
この大径部にねじ溝を形成した前記鉄筋に、前記突条にねじ溝を形成して前記カプラーの少なくとも一部を、ねじ山とねじ溝との嵌まり合い状態で逃がし可能とする突条上ねじ部が設けられ、
記突条上ねじ部に螺合して前記カプラーを押し付けるロックナットが設けられ、
前記突条上ねじ部に前記ロックナットの全体が設けられている異形鉄筋のねじ式鉄筋継手。
【請求項3】
請求項2に記載の異形鉄筋のねじ式鉄筋継手において、前記一対の鉄筋の両方が前記異形鉄筋であって、これら両方の鉄筋につき、前記雄ねじ部が前記大径部に形成され、かつ前記突条上ねじ部および前記ロックナットが設けられた異形鉄筋のねじ式鉄筋継手。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の異形鉄筋のねじ式鉄筋継手において、前記ロックナットは、軸方向に沿う断面において、前記突条上ねじ部のねじ山が2〜4つ噛み合う長さである異形鉄筋のねじ式鉄筋継手。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の異形鉄筋のねじ式鉄筋継手において、前記突条上ねじ部は溝底径が前記鉄筋本体の外周面よりも小径であり、前記突条上ねじ部のねじ溝底部が前記鉄筋本体に形成された異形鉄筋のねじ式鉄筋継手。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の異形鉄筋のねじ式鉄筋継手において、前記異形鉄筋が長手方向に延びるリブを有し、前記突条上ねじ部は前記リブ上にも前記ねじ溝を有する異形鉄筋のねじ式鉄筋継手。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の異形鉄筋のねじ式鉄筋継手において、前記異形鉄筋は、前記大径部の外径が前記異形鉄筋の前記突条を含む鉄筋最大外径以下である異形鉄筋のねじ式鉄筋継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄筋コンクリートに用いられる異形鉄筋のねじ式鉄筋継手に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリートにおいて、鉄筋には一般に異形鉄筋が用いられる。長尺の柱や、梁、布基礎等において、限られた長さの鉄筋を現場において連続な鉄筋とするために、各種の鉄筋継手が用いられる。鉄筋継手としては、鉄筋を所定の長さだけ重ねる重ね継手や、ガス圧接継手が一般的である。しかし、重ね継手は重なりによって配筋構造が煩雑となり、ガス圧接継手は圧接工の技量に継手の良否が左右されるという欠点がある。
そのため、特殊継手として、スリーブ内に鉄筋と共にグラウトを注入する継手が開発されている。このグラウトを注入する特殊継手は、配筋構造の簡略化の面で好ましく、実用化されているが、グラウトの硬化養生の期間が必要になり、工期が長びくという欠点がある。
【0003】
短い工期で済む特殊継手としては、ねじ式継手が提案されている(例えば、特許文献1〜3)。特許文献1には、接続強度の確保のために、鉄筋端部に拡径化部を設け、ねじ加工を施したり、別体の大径のねじ軸を鉄筋端部に摩擦圧接により接合することが記載されている。特許文献2では、ねじ筒からなるカプラーの両側にロックナットを使用することが、実施形態および従来例として記載されている(特許文献2)。特許文献3では、拡径化部の製造方法として、摩擦圧接や、過熱して圧縮する方法の他に、拡径化部の外径を制限し、かつ雄ねじ部のねじ加工を転造で行うことで、異形鉄筋のロール成型時に拡径化部まで形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−227342号公報
【特許文献2】特開平10−61107号公報
【特許文献3】特開2013−321365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鉄筋継手には、引っ張り荷重の他に、所定の圧縮荷重にも耐えることが、建築の基準として定められている。ねじ式鉄筋継手では、鉄筋の雄ねじ部とねじ筒の雌ねじ部との噛み合い部分の遊びが、圧縮荷重の要件を充足するについて問題となる。すなわち、ねじの噛み合い部分ではねじ込み作業が可能なように規定の遊び、いわゆるガタが設けられている。そのため、引っ張り荷重の負荷状態から圧縮荷重の負荷状態に変わったとき、雄ねじ部のねじ山の片方の面に押し付けられていた雌ねじ部のねじ山が、遊び分だけ移動して、雄ねじ部の隣のねじ山の反対側の面に押し付けられることになる。この遊び内での移動は自由な移動となるため、滑り量の規定を満たす上で問題となる。鉄筋径が大きくなると、前記遊びも大きくなるため、上記の課題がより大きくなる。
【0006】
この遊びの課題は、ロックナットを用いると解消できる。しかし、従来のロックナットを用いたねじ式鉄筋継手は、いずれも雄ねじ部の長さを、接続作業のためにカプラーやロックナットを逃がしておくための範囲に渡って設けている。そのため、雄ねじ部の長さが長くなる。
【0007】
鉄筋の雄ねじ部の長さが長くなると、次のような種々の課題が生じる。
ねじ式鉄筋継手を構成する異形鉄筋を、ねじ式鉄筋継手として使用せずに、一般の異形鉄筋と同様にコンクリートに埋め込む場合、雄ねじ部の長さ範囲では、異形鉄筋の特徴である節部を有しないため、コンクリートに対する定着力が弱い。そのため、上記雄ねじ部を設けた鉄筋を異形鉄筋として使用することが難しい。建築基準における異形鉄筋の規定では、鉄筋径に対する所定倍数の鉄筋長さの範囲内に、節部を幾つ必要であるかが定められている。この規定を、ロックナットの逃がし可能な長い雄ねじを持つ異形鉄筋で充足させようとすると、雄ねじ部以外の部分の節部の間隔が短くなり、コスト増に繋がる。雄ねじ部付きの異形鉄筋を一般の異形鉄筋として扱えない場合、管理上や、現場での鉄筋の保管、取り扱い上で煩雑さが生じる。
【0008】
また、前記雄ねじ部におけるカプラーやロックナット等を逃がしておくための範囲は、カプラーやロックナットのねじ戻しによって露出するが、この雄ねじ部の露出部分には節部がないため、定着力が弱いという問題が生じる。
しかも、雄ねじ部の長さが長いと、それだけねじ加工における工具、例えば転造ではダイス、切削加工ではバイトの摩耗が多くなり、この工具の摩耗よる寿命の低下は、ねじ式鉄筋継手のコスト増の大きな要因の一つとなっている。
【0009】
なお、ねじ式鉄筋継手において、配筋の現場施工における誤差を吸収する長さ調整機能を持たせるために、互いに接続する鉄筋の対向する端面を当接させずに、中間あき寸法を得るための中間余長をカプラーに設ける場合がある。中間余長は、例えば10mm程度内で設けられる。この中間あき寸法が実際にどの程度となっているかは、カプラー内に隠れる部位であるため、外部からの目視では判断できない。そのため、中間あき寸法を精度良く管理しようとすれば、鉄筋にマークを付しておいてスケールで計測するなどの煩雑な処理が必要となる。
【0010】
この発明の目的は、耐引張力および耐圧縮力上の両方の要件を充足でき、かつ施工を容易とでき、また雄ねじ部の形成が容易に行える異形鉄筋のねじ式鉄筋継手を提供することである。
この発明の他の目的は、互いに接続する一対の鉄筋の対向する端面間に施工誤差の吸収のために設ける中間あき寸法が、誤差許容範囲内となっているか否かを外部からの目視で簡単に行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の異形鉄筋のねじ式鉄筋継手は、一対の鉄筋を接続する鉄筋継手であって、互いに接続される一対の鉄筋の対向する端部に雄ねじ部を有し、両鉄筋の前記雄ねじ部に螺合する筒状のカプラーを備え、
前記一対の鉄筋のうち、少なくとも一方の鉄筋は、鉄筋本体の外周に突条を有する異形鉄筋であり、この異形鉄筋である前記少なくとも一方の鉄筋の前記雄ねじ部は、前記鉄筋本体よりも大径の大径部にねじ溝を形成してなり、
この大径部にねじ溝を形成した前記鉄筋に、前記突条にねじ溝を形成して前記カプラーの少なくとも一部を、ねじ山とねじ溝との嵌まり合い状態で逃がし可能とする突条上ねじ部が設けられ、
前記雄ねじ部および前記突条上ねじ部の両方または前記突条上ねじ部のみに螺合して前記カプラーを押し付けるロックナットが設けられ、前記突条上ねじ部に前記ロックナットの全体または一部が設けられていることを特徴とする。
【0012】
この構成によると、ロックナットを設けるため、引張力の作用時と圧縮力の作用時とで、雄ねじ部と雌ねじ部のねじ山同士の接触する面が変わらず、雄ねじ部と雌ねじ部間の遊びの問題が解消される。そのため耐引張力および耐圧縮力上の両方の要件を充足できる。 また、前記カプラーの少なくとも一部を逃がし可能とする突条上ねじ部を設けるため、逃がしを不可とする構成の場合と異なり、施工上有利となる
この逃がし可能とする部分は、ねじ形状である突条上ねじ部として設けるため、突条上ねじ部を設けずに雄ねじ部の径を大きくしてロックナットやカプラーが突条に干渉しないようにして逃がす場合とは異なり、雄ねじ部の径と突条の径との差を小さくできる。そのため、雄ねじ部を形成する大径部を、異形鉄筋の突条のロール成形時に形成することも可能で、雄ねじ部を設ける加工方法の選択範囲が広がる。これにより雄ねじ部の形成が容易となる。
なお、この発明において、いずれか片方の鉄筋は、必ずしも異形鉄筋でなくても良く、例えば丸鋼であっても良く、また特に大径部を有せずに全体が大径であっても良い。
【0017】
この発明において、前記突条上ねじ部に前記ロックナットの全体を設けても良い。
上記のように、ロックナットを設けるため、耐引張力および耐圧縮力上の両方の要件を充足できる。この場合に、ロックナットを突条上ねじ部に噛み合わせるようにした場合、突条上ねじ部は大径部の雄ねじ部に比べてロックナットに対する掛かりが少なくなるが、引張力はロックナットに作用せず、耐圧縮力は降伏点強度の半分で良い。そのため、突条上ねじ部にロックナットを設けても耐圧縮力が充足できる。
【0018】
このように突条上ねじ部にロックナットを設けるため、大径部の雄ねじ部の長さが短くて済む。突条上ねじ部の節部は、ねじ溝の形成によって実質の節高さが低くなり、一般部の節部よりも定着力が弱くなるが、ねじ溝を形成しても突条上ねじ部の実質高さは一般部の節部の高さの1/2以上となる。そのため、鉄筋径に対する所定鉄筋長さ範囲に設ける節部の個数の計算上で、突条上ねじ部の節部も一般部の節部と同様に扱え、異形鉄筋に関する建築法上の基準を充足できる。したがって、雄ねじ部を設ける鉄筋につき、ロックナットの噛み込みを可能としながら、一般の異形鉄筋と同様に扱え、管理上や、現場での鉄筋の保管、取り扱い上の煩雑さが緩和できる。
また、突条上ねじ部は、ねじ加工が必要であるが、大径部の雄ねじ部に比べて加工量が少なく、ねじ長さに対する工具摩耗は少ない。このように突条上ねじ部の加工では工具摩耗が少なく、かつ大径部の雄ねじ部の長さが前記のように短くて済むため、ねじ加工における工具の摩耗、例えば転造ではダイス、切削加工ではバイトの摩耗が少なくなり、ねじ加工における工具寿命の低下によるコスト増が抑えられる。
このように、この構成の場合のねじ式鉄筋継手は、耐引張力および耐圧縮力上の両方の要件を充足でき、かつ大径部となる雄ねじ部の長さを短くできて、定着力確保のための節部ピッチの問題が緩和でき、雄ねじ部の加工コストの増加も抑えることができる。
【0019】
この構成の場合に、前記一対の鉄筋の両方が前記異形鉄筋であって、これら両方の鉄筋につき、前記雄ねじ部が前記大径部に形成され、かつ前記突条上ねじ部および前記ロックナットが設けられていても良い。
この発明において、いずれか片方の鉄筋は、必ずしも異形鉄筋でなくても良く、例えば丸鋼であっても良く、また特に大径部を有せずに全体が大径であっても良いが、上記のように一対の鉄筋の両方が上記のように異形鉄筋であって節上ねじ部およびロックナットを有する構成であると、この発明における、定着力確保のための突条ピッチの問題が緩和でき、雄ねじ部の加工コストの増加も抑えることができるという効果が、より一層顕著となる。
【0020】
前記突条上ねじ部に前記ロックナットの全体を設ける構成の場合、前記ロックナットは、軸方向に沿う断面において、前記突条上ねじ部のねじ山が2〜4つ噛み合う長さであっても良い。
上記のように、耐圧縮力は降伏点強度に対して1/2で済むため、ロックナットの掛かり長さは短くて済み、節上ねじ部のねじ山が2つ噛み合う長さがあれば、要求される耐圧縮力を充足することができる。余裕を見て噛み合い長さを多少増やしても良いが、ねじ山が4つよりも多く噛み合う長さになると、工具摩耗の低減によるコスト低下の効果が低くなる。
【0021】
この発明において、前記突条上ねじ部は溝底径が前記鉄筋本体の外周面よりも小径であり、前記突条上ねじ部のねじ溝底部が前記鉄筋本体に形成されていても良い。
突条上ねじ部の溝底部が前記鉄筋本体に形成されていると、そのねじ溝底部においても圧縮力を負担でき、ねじ式鉄筋継手の耐圧縮力が向上する。
【0022】
この発明において、前記異形鉄筋が長手方向に延びるリブを有し、前記突条上ねじ部は前記リブ上にも前記ねじ溝を有していても良い。
リブ付きの異形鉄筋の場合、そのリブ上にも前記突条上ねじ部が設けられることで、ねじ筒の雌ねじ部との掛かりが多くなり、ねじ式鉄筋継手の耐圧縮力が向上する。
【0023】
この発明において、前記異形鉄筋は、前記大径部の外径が前記異形鉄筋の前記突条を含む鉄筋最大外径以下であっても良い。
雄ねじ部となる大径部の外径が異形鉄筋の突条を含む鉄筋最大外径以下であると、突条いロール成形時に前記大径部が案内ローラに干渉して送りが妨げられることがなく、異形鉄筋の節部の転造時に前記大径部も成形することができる。そのため、雄ねじ部を有する鉄筋の生産性が向上する。
このように異形鉄筋の節部の転造時に前記大径部も成形する場合、別部材の雄ねじ部材を摩擦圧接等で接合する構成と異なり、前記大径部の雄ねじ部と節上ねじ部とは同じダイス等の工具で連続して加工されることになるが、その場合に、この発明における上記の工具摩耗の低減の効果が顕著となる。
【0024】
この発明において、前記各鉄筋が、素材となる鉄製の線材のロール成形により、前記節部および前記大径部が形成され、前記各雄ねじ部および前記突条上ねじ部が転造ねじであっても良い。
前記雄ねじ部を形成する大径部の形成を突条のロール成形時に行うと、加工の工程を増やすことなく大径部を形成でき、生産性が向上する。上記のようにカプラーやロックナットの逃がし部は突条上ねじ部で設けるため、前記大径部は突条との径の差を小さくでき、ロール成形が可能である。また、前記突条上ねじ部が転造ねじであると、削り加工する場合と異なり、鉄筋の断面寸法が変わらず、突条に設けながら強度を確保できる。突条上ねじ部だけでなく、前記雄ねじ部も転動ねじとすることで、これら突条上ねじ部と雄ねじ部とを纏めて形成することができ、生産性が向する。
【発明の効果】
【0025】
この発明の異形鉄筋のねじ式鉄筋継手は、一対の鉄筋を接続する鉄筋継手であって、互いに接続される一対の鉄筋の対向する端部に雄ねじ部を有し、両鉄筋の前記雄ねじ部に螺合する筒状のカプラーを備え、前記一対の鉄筋のうち、少なくとも一方の鉄筋は、鉄筋本体の外周に突条を有する異形鉄筋であり、この異形鉄筋である前記少なくとも一方の鉄筋の前記雄ねじ部は、前記鉄筋本体よりも大径の大径部にねじ溝を形成してなり、この大径部にねじ溝を形成した前記鉄筋に、前記突条にねじ溝を形成して前記カプラーの少なくとも一部を、ねじ山とねじ溝との嵌まり合い状態で逃がし可能とする突条上ねじ部が設けられ、前記雄ねじ部および前記突条上ねじ部の両方または前記突条上ねじ部のみに螺合して前記カプラーを押し付けるロックナットが設けられ、前記突条上ねじ部に前記ロックナットの全体または一部が設けられているため、耐引張力および耐圧縮力上の両方の要件を充足でき、かつ施工を容易とでき、また雄ねじ部の形成が容易に行える。
【0028】
また、前記突条上ねじ部に前記ロックナットの全体を設けた場合は、耐引張力および耐圧縮力上の両方の要件を充足できるうえ、大径部となる雄ねじ部の長さを短くできて、定着力確保のための節部ピッチの問題が緩和でき、雄ねじ部の加工コストの増加も抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1参考提案例に係る異形鉄筋のねじ式鉄筋継手の断面図である。
図2(A)は同参考提案例の、(B),(C)はこの発明の実施形態に係るねじ式鉄筋継手の適正なねじ込み量の各例を示す断面図である。
図3】同ねじ式鉄筋継手のねじ部の噛み合い部分を拡大して示す部分拡大断面図である
図4】同ねじ式鉄筋継手における雄ねじ部および突条上ねじ部の加工前後の状態を示す部分正面図である。
図5】同ねじ式鉄筋継手に用いる鉄筋のロール成形の様子を示す説明図である。
図6】同ロール成形が行われた鉄筋の雄ねじ部および突条上ねじ部の転造過程を示す説明図である。
図7】同ねじ式鉄筋継手に用いる鉄筋の各例の中間省略正面図である。
図8】同ねじ式鉄筋継手における突条の形状が異なる例を示す断面図である。
図9】同ねじ式鉄筋継手における突条の形状が異なる他の例を示す断面図である。
図10】この発明のさらに他の実施形態に係る異形鉄筋のねじ式鉄筋継手の断面図である。
図11】同ねじ式鉄筋継手における雄ねじ部および節上ねじ部の加工前後の状態を示す部分正面図である。
図12】同ねじ式鉄筋継手に用いる鉄筋のロール成形の様子を示す説明図である。
図13】同ロール成形(aa行われた鉄筋の雄ねじ部および節上ねじ部の転造過程を示す説明図である。
図14】同ねじ式鉄筋継手に用いる鉄筋の各例の中間省略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
この発明の一実施形態を図面と共に説明する。なお、図1および図2(A)に示す例は、この発明のねじ式鉄筋継手ではなく、参考提案例に係るねじ式鉄筋継手である。図1に示すように、この異形鉄筋のねじ式鉄筋継手は、一対の鉄筋1,1を接続する鉄筋継手であって、互いに接続される一対の鉄筋の対向する端部に雄ねじ部1cを有し、両鉄筋1,1の前記雄ねじ部1c,1cに渡って螺合するねじ筒であるカプラー2と、前記各雄ねじ部1c,1cにそれぞれ螺合して前記カプラー2を押し付ける一対のロックナット3,3とを備える。
【0031】
各鉄筋1は、丸軸状の鉄筋本体1aの外周面に突条1bを有する異形鉄筋である。図1の例では、突条1bは、円周方向に延びる節部1baと、長手方向に延びるリブ1bbとでなる。リブ1bbは、2本が鉄筋本体1aの180°離れた位置に設けられている。各節部1baは、全周に続く円環状である。なお、各節部1baは、リブ1bbを境に交互に半周ずつ設けられていても良い。
各鉄筋1の突条1bは、この他に図8に示すように、それぞれが螺旋状に延びて菱形の網目状を成す2方向の傾め節部1bc,1bc、および長手方向に延びるリブ1bdからなる形状であっても良い。リブ1bdは、2本が鉄筋本体1aの180°離れた位置に設けられている。傾斜突条部1bc,1bcは、リブ1bdを挟む両側の部分が互いに軸方向にずれていても良い。また突条1bは、この他に図9に示すように螺旋状に延びる形状であっても良い。
【0032】
図4に示すように、前記異形鉄筋である各鉄筋1の前記雄ねじ部1cは、鉄筋本体1aの外径D1よりも大径の外径D3を持つ大径部W1d(図4(A))に、同図(B)のようにねじ溝を形成したものである。大径部W1dは、鉄筋1の節部1baのロール成形時に形成される。雄ねじ部1cは、前記大径部W1dの全長eに渡って設けられている。この雄ねじ部1cのねじ溝に続き、前記ロックナット3および前記カプラー2の全体を螺合状態で鉄筋1の外周に逃がし可能とするための突条上ねじ部1dが、所定長さfだけ設けられている。この突条上ねじ部1dは、前記異形鉄筋からなる鉄筋1の前記雄ねじ部1c以外の部分である一般部において、前記節部1baおよびリブ1bbにねじ溝を形成したものである。突条上ねじ部1dは、節部1baおよびリブ1bbだけに形成しても良いが、この例では、ねじ溝底径D4が前記鉄筋本体1aの外径D1よりも小径であり、したがって前記突条上ねじ部1dのねじ溝底部は前記鉄筋本体1aにも形成されている。前記雄ねじ部1cと突条上ねじ部1dのねじ溝は、互いに同じ径でかつ同じリードである。これら雄ねじ部1cおよび突条上ねじ部1dのねじ溝は、転造等により加工される。
【0033】
なお、突条上ねじ部1dのねじ溝は、この例では雄ねじ部1cの断面形状と同じ形状(ただし、突条上ねじ部1dのねじ溝は円周方向の部分によっては雄ねじ部1cの断面における一部のみ)としているが、突条上ねじ部1dのねじ溝は、単にロックナット3等を逃がすことできれば良く、荷重は伝達させないので、カプラー2やロックナット3のねじ山と緩く嵌まり合う断面形状であっても良い。
【0034】
前記突条上ねじ部1dの前記所定長さfは、施工時に片方の鉄筋1に、カプラー2が鉄筋端面から突出しない位置まで、一つのロックナット3とカプラー2の全体とをねじ込んで逃がすことができる寸法とされる。そのため、前記所定長さfは、この長さfと大径部全長eを加算した寸法(e+f)が、カプラー長さb(図1参照)にロックナット長さcを加算した寸法(b+c)以上となる長さとされる。大径部全長e、カプラー長さb、およびロックナット長さcは、後述のように定められる。
【0035】
図1において、前記カプラー2は、内周の全体が雌ねじ部2aとされたねじ筒であり、鉄筋1の雄ねじ部1cに対して、鉄筋継手として要求される引張耐力が確保できるだけの締結長さaが必要である。カプラー2の雌ねじ部2aのねじ山径である内径D5は、記鉄筋1の突条1bの外径D2(節部1baを有する場合は節部1baの外径)よりも小径である。
【0036】
また、カプラー2に螺合する一対の鉄筋1,1は、端面が当接する設計であると、配筋の施工誤差を吸収できないため、カプラー2には、一対の鉄筋1,1の対向する端面間に、設定許容範囲となる中間余長dが設けられる。そのため、カプラー2の全体の長さであるカプラー長bは、
b=2*a+d
とされる。
【0037】
ロックナット3の長さcは、鉄筋継手に要求される圧縮耐力が確保できる長さとされる。ロックナット3は、次のように圧縮力を伝達する役割を持つためである。図3を参照して説明する。両側の鉄筋1,1に引張力(同図に実線の矢印で示す)が作用したときは、鉄筋1の雄ねじ部1cのねじ山におけるカプラー2側の面1caから、カプラー2の雌ねじ部2aのねじ山におけるねじ筒中心側の面2aaに引張力が伝達される。したがって、引張力は片方の鉄筋1からナット2に直接に伝達され、もう片方の鉄筋1に伝わることになり、ロックナット3の噛み合いの強度は引張力の伝達に影響しない。
【0038】
両側の鉄筋1,1に圧縮力(同図に破線の矢印で示す)が作用したときは、鉄筋1の突条上ねじ部1dのねじ山における反ねじ筒側の面1daから、ロックナット3の雌ねじ部3aのねじ山におけるねじ筒側の面3aaに圧縮力が伝達される。この伝達された圧縮力は、ロックナット3とカプラー2との接触面からカプラー2に伝わる。すなわち、圧縮力は、一方の鉄筋1から、ロックナット3、カプラー2、および他方のロックナット3を介して他方の鉄筋1に伝わる。このため、ロックナット3の長さcは、鉄筋継手に要求される圧縮耐力が確保できる長さとされる。なお、鉄筋継手に要求される圧縮耐力は、耐圧縮力は降伏点強度に比べて半分程度で足りる。そのため、ロックナット3の締結長さcは、カプラー2への締結長さdに比べて短い寸法で足りる。
【0039】
このように、鉄筋継手において、各部の必要長さが定まっており、一対の鉄筋1,1の対向する端面間に、設定許容範囲となる中間余長dが設けられるが、一対の鉄筋1,1の対向する端面間の距離が実際にどのような寸法になっているかは、カプラー2内であるために外部からは見えない。そこで、この実施形態では、前記雄ねじ部1cと突条上ねじ部1dとの間に、突条無し区間hを設け、ロックナット3の端面が突条無し区間9に位置すれば適正螺合状態になるように各部の寸法関係を設定している。なお、突条無し区間9は、円周方向や鉄筋1の外周の螺旋方向に延びる突条1bがない区間であり、軸方向の延びる突条であるリブ1bbは存在していても良い。
【0040】
前記寸法関係は、具体的には、この実施形態のように突条1bが鍔部1baとリブ1bbとでなる形状の場合、前記ロックナット3の反カプラー側の端面3bが、いずれも雄ねじ部1cの端とこの雄ねじ部1cから一つ目の前記節部1ba1との間に位置すれば、前記雄ねじ部1cがカプラー2に対して、少なくとも設定締結長さa分が螺合しかつ前記許容隙間が得られる螺合状態である適正螺合状態になるように、前記雄ねじ部1c、カプラー2、ロックナット3の各長さe,b,c、および前記中間余長dの長さの関係が設定されている。この例では、一つ目の節部1ba1と雄ねじ部1cとの間の部分が突条無し区間hとなる。図8図9の例のように、螺旋状に延びる突条1bを有する鉄筋1の場合は、突条1bが途切れるように前記突条無し区間hが設けられる。なお、前記ロックナット3の長さcは、締結長さであり、ロックナット3がその雌ねじ部の3aの一方または両方に雌ねじを有しない部分がある場合は、その部分の長さを前記長さを加えた長さがロックナット3の全体の長さとなる。
【0041】
この実施形態において、下記2種の鉄鋼材料の場合における各部の寸法関係を例を説明する。表1は、SD390の場合の例であり、表2はSD490の場合の例である。
いずれも、ロックナット3の高さは、中間余長の関係から、
PNL=((2*(e)+(d))−(b))/2
とされている。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
この構成の異形鉄筋のねじ式鉄筋継手によると、次のように接続作業を行う。カプラー2および片方のロックナット3は、図1に一点鎖線で示すように、カプラー2の端部が鉄筋1から突出しない位置まで、いずれか片方の鉄筋1の雄ねじ部1cおよび突条上ねじ部1d上に、ねじ込んで逃がしておく。もう片方の鉄筋1には突条上ねじ部1dにロックナット3だけを螺合させておく。この状態で、両側の鉄筋1,1の端部を対向させ、カプラー2をねじ戻して両側の鉄筋1,1の雄ねじ部1c,1cに渡って螺合させる。ついで、各ロックナット3をカプラー2に対して押し付け状態になるまでねじ戻す。この状態で、両側のロックナット3,3とも、反カプラー側の端面3bが突条無し区間hに位置しているか否か(この例では、雄ねじ部1cの端とこの雄ねじ部1cから一つ目の節部1ba1との間に位置しているか否か)を確認する。すなわち、ロックナット3内に雄ねじ部1cが隠れているか、および一つ目の節部1ba1までロックナット3内に入っていないかを確認する。この場合に、両側のロックナット3の端面3bから一つ目の節部1ba1までの長さが略同一であることが望ましい。上記の条件が充足されていない場合、ロックナット3を緩め、カプラー2の位置をねじ込み位置を調整して再度ロックナット3を締め付け、上記の確認を繰り返す。
【0045】
また、この実施形態では、前記両ロックナット3の反カプラー側の端面3bが、いずれも前記突条無し区間hに位置すれば、すなわち前記雄ねじ部1cの端とこの雄ねじ部1cから一つ目の前記節部1ba1との間に位置すれば、雄ねじ部1cがカプラーに対して、少なくとも設定締結長さaが螺合しかつ前記許容隙間が得られる螺合状態である適正螺合深さになるように、各部の長さの関係が定められている。そのため、適正螺合深さであるか否かが、目視で簡単に確認できる。
図2(A)〜(C)は、いずれも適正螺合状態を示し、同図(A)は、中間の空き寸法が最も広くなっている状態、同図(C)は空き寸法が零となり両側の鉄筋1,1が突き合わせられた状態、同図(B)はその中間の状態をそれぞれ示す。同図(A)よりも雄ねじ部1cがロックナット3の端面bから突出していると、不適正な螺合状態とされる。
【0046】
この構成のねじ式鉄筋継手は、ロックナット3を設けたため、引張力の作用時と圧縮力の作用時とで、雄ねじ部1cと雌ねじ部2aのねじ山同士の接触する面が変わらず、雄ねじ部1cと雌ねじ部2a間の遊びの問題が解消される。そのため、耐引張力および耐圧縮力上の両方の要件を充足できる。施工の容易のためにカプラー2やロックナット3を逃がしておくための部分は、雄ねじ部1cに続く箇所に突条上ねじ部1dとして設けるため、雄ねじ部1cに前記逃がしておくための部分を設ける場合に比べて雄ねじ部1cを短くできる。雄ねじ部1cを短くできるため、定着力確保のための節部1baのピッチの問題が緩和でき、雄ねじ部1cの加工コストも抑えることができる。
【0047】
また、前記突条上ねじ部1dを設けて施工時に前記ロックナット3および前記カプラー2を片方の鉄筋1の外周に逃がせるようにしたため、施工が容易に行え、施工上の不利を伴うことがない。この逃がし可能とする部分は突条上ねじ部1dとして設けるため、突条上ねじ部1dを設けずに雄ねじ部1cの径を大きくしてロックナット3やカプラー2が節部1baに干渉しないようにして逃がす場合と異なり、雄ねじ部1cの径eと突条1bの径D2との差を小さくできる。そのため、雄ねじ部1cを形成する大径部w1dを異形鉄筋の節部1baのロール成形時に形成することも可能で、雄ねじ部1cを設ける加工方法の選択範囲が広がる。
【0048】
また、前記各鉄筋1,1は、素材となる鉄製の線材のロール成形により、前記節部1baおよび前記大径部w1dが形成され、前記各雄ねじ部1cおよび前記突条上ねじ部1dが転造ねじとされている。そのため、次の利点が得られる。前記雄ねじ部を形成する大径部の形成を節部のロール成形時に行うと、加工の工程を増やすことなく大径部を形成でき、生産性が向上する。上記のようにカプラーやロックナットの逃がし部は突条上ねじ部1dで設けるため、前記大径部は節部との径の差を小さくでき、ロール成形が可能である。また、前記突条上ねじ部が転造ねじであると、削り加工する場合と異なり、鉄筋の断面寸法が変わらず、節部に設けながら強度を確保できる。突条上ねじ部1dだけでなく、前記雄ねじ部も転造ねじとすることで、これら突条上ねじ部1dと雄ねじ部とを纏めて形成することができ、生産性が向する。
【0049】
図5図7は、このねじ式鉄筋継手に用いられる鉄筋1の節部1baおよび大径部W1dを転造で製造する場合の製造方法の例を示す。
図5に示すように、素材となる鉄製の丸棒状の線材W0を、成形用ロール11,11間に通すことにより、ロール成形による圧延で突条1b(節部1baおよびリブ1bb)を成形する。この成形は、線材W0を加熱しておいて、熱間で行う。成形用ロール11,11によるロール成形の過程で、大径部W1dを設ける。具体的には、成形用ロール11,11は、成形型面となる外周面に、鉄筋1の突条1bを成形する凹部(図示せず)を設けたものであるが、この成形用ロール11,11の外周面における円周方向の一部を、大径部成形用凹部11aとする。大径部成形用凹部11aの周長は、成形する大径部W1dの長さe、またはその2倍の長さとする。この成形用ロール11でロール成形すると、長さ方向の一部が大径部W1dとされ、残り長さ範囲の部分に突条1bが成形されたものとなる。
【0050】
大径部W1dは、鉄筋最大外径D2以下であるため、素材となる長尺の異形鉄筋W1のロール成形による製造時に、素材異形鉄筋W1の突条1bに接して加熱状態の素材異形鉄筋W1を案内するロール等のガイド12に拡径化部W1dが接触せず、したがって拡径化部W1dがガイド12に接することによる異形鉄筋W1の曲がりの問題を生じることなく異形鉄筋W1を製造することができる。
【0051】
このように製造された素材となる異形鉄筋W1を、大径部W1dの端で素材異形鉄筋W1を切断し、両端に大径部W1dを有する所定の長さの大径部付き異形鉄筋W1を複数本得る。なお、素材異形鉄筋W1に大径部W1dの2倍の長さの大径部を成形する場合は、その中間で切断する。
このようにして得た所定の長さの拡径部付き異形鉄筋W1は、例えば、住宅等の建物の基礎等に適用する場合、モジュール設計された建物のモジュール(例えば910mm、1000mm等)の倍数、または前記モジュールの1/2の長さの倍数とするのが良い。
【0052】
この切断された各大径部付き異形鉄筋W1の大径部W1dに、図6のように一対の転造用ロール13,13の間で、雄ねじ部1cを転造により加工し、両端に拡径した雄ねじ部1cを有する鉄筋1とする。一対の転造用ロール13,13は、同図のように互いに離れて配置されていて、拡径化部W1dが転造用ロール13,13間に位置決めされた後に、両転造用ロール13,13を矢印のように径方向に移動させて回転させながら大径部W1dに押し付ける。この転造加工時に、雄ねじ部1cが転造された後も転造用ロール13,13間に大径部付き異形鉄筋W1を送り込み、雄ねじ部1cに続く突条上ねじ部1d(図4)を転造する。
【0053】
なお、上記のようにロール成形する場合に、前記鉄筋継手を構成する鉄筋1は、図7(A),(B)に示すように、中間に大径部W1dが残ったものとしても良い。成形用ロール11(図5)の直径に制限があるため、成形用ロール11の周長よりも長い鉄筋1とする場合は、中間に大径部W1dが残ることになる。図6は中間に雄ねじ部1cの長さの大径部W1dを設けた例である。接続作業時にロックナット3は突条上ねじ部1dに逃がすようにするため、中間に残る大径部W1dの長さが短くて済み、大径部W1dの形成によるコンクリートへの定着力の低下が緩和される。
【0054】
また、大径化部W1dは、外周面の軸方向1か所または複数箇所に図7(B)に示すように節部1ba′を設けても良い。これにより、コンクリートへの定着力が向上する。節部1ba′は、前記成形用ロール11によるロール成形時に成形する。節部1ba′の高さは、その外径が前記節部1baの外径となる鉄筋最外径D2と同じとなる高さとしても良く、またこれよりも高くまたは低く成形しても良い。鉄筋最外径D2よりも高くする場合は、ロール成形時に支障が生じない高さとする。端部の大径化部W1dの節部1ba′は、雄ねじ部1cの転造時に押し潰されてなくなるが、大径化部W1dを真円加工してから転造を行っても良い。大径化部W1dの節部1ba′は、必ずしも設けなくても良い。また図7(B)の例は、大径化部W1dでは、ロール成形の都合上等で、リブ1bbを形成せず、かつ節部1ba′がリブ1bbの周方向位置で途切れる仕様としているが、大径化部W1dにおいても節部1ba′が全周に連続する仕様としても、リブ1bbが存在する仕様としても良い。
【0055】
なお、前記実施形態では、ねじ筒に接続する両方の鉄筋1,1を、大径部W1dに雄ねじ部1cを有し、かつ一般部に突条上ねじ部1dを有する構成したが、いずれか一方の鉄筋1は、必ずしも大径部W1dを有するものでなくても良く、例えば全体が大径の丸軸等に雄ねじ部1cを加工し、その雄ねじ部1cを長くしてロックナット3を設けるようにしても良い。
また、前記実施形態ではカプラー2の両側にロックナット3を設けたが、ロックナット3がカプラー2の片方1個でも滑り量を制御できる場合は、片方のみに設けても良い。
【0056】
図10図13は、この発明のさらに他の異形鉄筋のねじ式鉄筋継手を示す。この異形鉄筋のねじ式鉄筋継手は、一対の鉄筋1,1を接続する鉄筋継手であって、互いに接続される一対の鉄筋の対向する端部に雄ねじ部1cを有し、両鉄筋1,1の前記雄ねじ部1c,1cに螺合するねじ筒からなるカプラー2を備える。
【0057】
前記一対の鉄筋1,1のうち、少なくとも一方の鉄筋1、この実施形態では、両鉄筋1,1が、丸軸状の鉄筋本体1aの外周面に突条1bを有する。この突条1bとして、円周方向に延びる節部1baと、長手方向に延びるリブ1bbとが設けられている。リブ1bbは、2本が鉄筋本体1aの180°離れた位置に設けられている。各節部1baは、この例ではリブ1bbを境に交互に半周ずつ設けられている。なお、節部1baは、図1と共に前述した全周に続く形状や、図8と共に前述したそれぞれが螺旋状に延びる2方向の突条1b,1bによって菱形の網目状を成す形状であっても、また図9と共に前述した螺旋状に延びる形状であっても良い。
【0058】
図11に示すように、前記異形鉄筋である各鉄筋1,1の前記雄ねじ部1c,1cは、鉄筋本体1aの外径D1よりも大径の外径D3を持つ大径部W1d(図11(A))に、同図(B)のようにねじ溝を形成したものであり、このねじ溝に続き、前記節部1baおよびリブ1bbにねじ溝が形成された節上ねじ部1dが、前記異形鉄筋からなる鉄筋1の前記雄ねじ部1c,1c以外の部分である一般部に設けてある。雄ねじ部1cは、前記大径部W1dの全長L1に渡って設けられ、この大径部W1dに続く一般ねじ部の所定長さL2の範囲に前記節上ねじ部1dが形成されている。節上ねじ部1dは、この例では、ねじ溝底径D4が前記鉄筋本体1aの外径D1よりも小径であり、したがって前記節上ねじ部1dのねじ溝底部は前記鉄筋本体1aに形成されている。前記雄ねじ部1cと節上ねじ部1dのねじ溝は、互いに同じ径でかつ同じリードである。
【0059】
図10に示すように、前記カプラー2の両側において、前記節上ねじ部1dに、前記カプラー2に片面を押し付けるロックナット3が設けられている。ロックナット3は、軸方向に沿う断面において、前記節上ねじ部1dのねじ山が上下双方で2つ以上、例えば2〜4つ噛み合う長さであることが好ましい。
なお、鉄筋1の前記節上ねじ部1dを形成する前記所定長さL2(図11)は、継手接続作業時に、ロックナット3とカプラー2の全体を前記雄ねじ部1cおよび節上ねじ部1dからなるねじ部分に逃がしておけるように、カプラー2とロックナット3とを合わせた長さよりも、前記大径部全長(雄ねじ部1cの長さ)L1と前記節上ねじ部1dの所定長さL2を合わせた長さが長くなるように、前記所定長さL2を定めることが好ましい。
【0060】
前記鉄筋1の雄ねじ部1cの形成方法については、この実施形態では、図5図6と共に前述したように、またこの実施形態の場合の図を図12図13に示すように、前記大径部W1d(図11(A))を、節部1aaおよびリブ1abのロール成形時に同時に成形し、その形成された大径部W1dに雄ねじ部1cを転造により形成している。大径部W1dは、ロール成形の他に、異形鉄筋を部分的に高周波誘導加熱して圧縮力を加える拡径処理により形成しても良く、また、異形鉄筋とは別体の雄ねじ部材を摩擦圧接等により接合して雄ねじ部1c付きの鉄筋としても良い。
【0061】
前記大径部W1dに雄ねじ部1cを転造によりねじ加工する場合は、その転造時に節上ねじ部1dまで転造する。なお、雄ねじ部1cおよび節上ねじ部1dのねじ加工は、必ずしも転造でなくても良く、切削加工であっても良いが、転造による場合はねじ部の有効断面積が低下しないという利点が得られる。
【0062】
雄ねじ部1cの外径、つまり鉄筋1の前記大径部W1dの外径D3は、前記異形鉄筋である前記鉄筋1の突条1bの外径(前記節部1baおよびリブ1bbを含む鉄筋最大外径D2)以下とすることが好ましい。特に、大径部W1dを節部1baのロール成形時に成形する場合に、上記外径D2,D3の関係にすることが効果的となる。すなわち、大径部W1dの外径D3が節部1abの外径となる鉄筋最大外径D2以下であると、節部1baのロール成形時に鉄筋1を案内するロールに大径部W1dが引っ掛かることなく円滑に行える。また、ねじ加工方法の如何に係わらず、大径部W1dの外径D3が節部1baの外径となる鉄筋最大外径D3以下であると、節上ねじ部1dを、そのねじ溝の溝底が軸部1aに形成されるように加工することが容易となる。
【0063】
この構成の異形鉄筋のねじ式鉄筋継手によると、ロックナット3を設けるため、引張力の作用時と圧縮力の作用時とで、鉄筋1の雄ねじ部1cとカプラー2の雌ねじ部とのねじ山同士の接触する面が、公差として設けられる噛み合いの遊びδ(図3)に係わらず、変わらない。すなわち、図3と共に前述したように、ロックナット3で締め付けることで、カプラー2の雌ねじ部2aのねじ山は、鉄筋1の雄ねじ部1cのねじ山のロックナット3側の面1caに押し付けられる。また、ロックナット3の雌ねじ部3aのねじ山は、鉄筋1の節上ねじ部1dのねじ山のカプラー2側の面1daに押し付けられる。そのため、鉄筋1に作用する力が引っ張り方向と圧縮方向との間で変わっても、雄ねじ部1cとカプラー2の雌ねじ部2aとの噛み合いにおける遊びδで鉄筋1とカプラー2とが相対的にスライド移動せず、したがって耐引張力および耐圧縮力上の両方の要件を充足できる。
【0064】
ロックナット3は節上ねじ部1dに噛み合わせており、節上ねじ部1dは大径部W1dの雄ねじ部1cのカプラー2に対する掛かりに比べて掛かり代が少なくなるが、ロックナット3による噛み合い部分には引張力は作用せず、圧縮力のみが作用し、また鉄筋継手では耐圧縮力は降伏点強度の半分で良いため、節上ねじ部1dにロックナット3を設けても、耐引張力および耐圧縮力が確保できる。
【0065】
これにつき、図3を参照して説明する。両側の鉄筋1,1に引張力(同図に実線の矢印で示す)が作用したときは、鉄筋1の雄ねじ部1cのねじ山におけるカプラー2側の面1caから、カプラー2の雌ねじ部2aのねじ山におけるカプラー中心側の面2aaに引張力が伝達される。したがって、引張力は片方の鉄筋1からナット2に直接に伝達され、もう片方の鉄筋1に伝わることになり、ロックナット3の噛み合いの強度は引張力の伝達に影響しない。
【0066】
両側の鉄筋1,1に圧縮力(同図に破線の矢印で示す)が作用したときは、鉄筋1の節上ねじ部1dのねじ山における反カプラー側の面1daから、ロックナット3の雌ねじ部3aのねじ山におけるカプラー側の面3aaに圧縮力が伝達される。この伝達された圧縮力は、ロックナット3とカプラー2との接触面からカプラー2に伝わる。すなわち、圧縮力は、一方の鉄筋1から、ロックナット3、カプラー2、および他方のロックナット3を介して他方の鉄筋1に伝わる。そのため、鉄筋1の節上ねじ部1dとロックナット3とのねじの掛かり代による噛み合いの強度が、鉄筋継手としての耐圧縮力に影響する。ロックナット3による噛み合いの強度が弱いと、前記遊びδ分だけ相対移動して鉄筋1とカプラー2とがねじ面で接触することになる。
しかし鉄筋継手において、耐圧縮力は降伏点強度に比べて半分程度で足りる。そのため、鉄筋の前記節部1baに形成された節上ねじ部1dによっても、必要な耐圧縮力が得られる。前記リブ1bbを有する鉄筋1では節上ねじ部1dは前記リブ1bbにも設けられるが、節上ねじ部1dがリブ1bbにも設けられ、また節上ねじ部1dのねじ溝底部が鉄筋本体1aに形成されている場合は、より大きな掛かり代が得られて、より一層耐圧縮力が向上する。
【0067】
このようにロックナット3は節上ねじ部1dに設けるようにしたため、大径部W1dの雄ねじ部1cの長さが短くて済む。節上ねじ部1dの節部1baは、ねじ溝の形成によって実質の節高さが低くなり、一般部の節部1baよりも定着力が弱くなるが、ねじ溝を形成しても節上ねじ部1dの実質高さは一般部の節部の高さの1/2以上となる。そのため、鉄筋コンクリートに対する定着力の観点から異形鉄筋に求められる、鉄筋径に対する所定鉄筋長さ範囲に設ける節部1baの個数の計算上で、節上ねじ部1dの節部1baも一般部の節部1baと同様に扱え、異形鉄筋に関する建築法上の基準も充足できる。したがって、雄ねじ部1cを設ける鉄筋1につき、ロックナット3の噛み込みを可能としながら、一般の異形鉄筋と同様に扱え、管理上や、現場での鉄筋の保管、取り扱い上の煩雑さが緩和できる。
また、節上ねじ部1dは、ねじ加工が必要であるが、大径部W1dの雄ねじ部1cに比べて加工量が少なく、ねじ長さに対する工具摩耗が少ない。このように節上ねじ部1dの加工では工具摩耗が少なく、かつ大径部W1dの雄ねじ部1cの長さが前記のように短くて済むため、ねじ加工における工具の摩耗、例えば転造ではダイス、切削加工ではバイトの摩耗が少なくなり、ねじ加工における工具寿命の低下によるコスト増が抑えられる。ねじ式鉄筋では、ねじ加工の工具寿命がコスト増の大きな要因となるが、これを抑えてコスト低下を図ることができる。
このように、この実施形態の異形鉄筋のねじ式鉄筋継手は、耐引張力および耐圧縮力上の両方の要件を充足でき、かつ大径部W1dに形成される雄ねじ部1cの長さを短くできて、定着力確保のための節部ピッチの問題が緩和でき、雄ねじ部の加工コストの増加も抑えることができる。
【0068】
図12図14は、このねじ式鉄筋継手に用いられる鉄筋1の節部1baおよび大径部W1dを転造で製造する場合の製造方法の例を示す。
図12に示すように、素材となる鉄製の丸棒状の線材W0を、成形用ロール11,11間に通すことにより、ロール成形による圧延で突条1b(節部1baおよびリブ1bb)を成形する。この成形は、線材W0を加熱しておいて、熱間で行う。成形用ロール11,11によるロール成形の過程で、大径部W1dを設ける。具体的には、成形用ロール11,11は、成形型面となる外周面に、鉄筋1の突条1bを成形する凹部(図示せず)を設けたものであるが、この成形用ロール11,11の外周面における円周方向の一部を、大径
部成形用凹部11aとする。大径部成形用凹部11aの周長は、成形する大径部W1dの長さL1(図11参照)かまたはその2倍とする。この成形用ロール11でロール成形すると、長さ方向の一部が大径部W1dとされ、残り長さ範囲の部分に突条1bが成形されたものとなる。
【0069】
大径部W1dは、鉄筋最大外径D2以下であるため、素材となる長尺の異形鉄筋W1のロール成形による製造時に、素材異形鉄筋W1の突条1bに接して加熱状態の素材異形鉄筋W1を案内するロール等のガイド12に拡径化部W1dが接触せず、したがって拡径化部W1dがガイド12に接することによる異形鉄筋W1の曲がりの問題を生じることなく異形鉄筋W1を製造することができる。
【0070】
このように製造された素材となる異形鉄筋W1を、各大径部W1dの中間で切断し、両端に大径部W1dを有する所定の長さの大径部付き異形鉄筋W1を複数本得る。大径部W1dの長さL1を雄ねじ部1cの長さと同じとする場合は、大径部W1dの端で素材異形鉄筋W1を切断する。
このようにして得た所定の長さの拡径部付き異形鉄筋W1は、例えば、住宅等の建物の基礎等に適用する場合、モジュール設計された建物のモジュール(例えば910mm、1000mm等)の倍数、または前記モジュールの1/2の長さの倍数とするのが良い。
【0071】
この切断された各大径部付き異形鉄筋W1の大径部W1dに、図13のように一対の転造用ロール13,13の間で、雄ねじ部1cを転造により加工し、両端に拡径した雄ねじ部1cを有する鉄筋1とする。一対の転造用ロール13,13は、同図のように互いに離れて配置されていて、拡径化部W1dが転造用ロール13,13間に位置決めされた後に、両転造用ロール13,13を矢印のように径方向に移動させて回転させながら大径部W1dに押し付ける。この転造加工時に、雄ねじ部1cが転造された後も転造用ロール13,13間に大径部付き異形鉄筋W1を送り込み、雄ねじ部1cに続く節上ねじ部1d(図11)を転造する。
【0072】
なお、上記のようにロール成形する場合に、前記鉄筋継手を構成する鉄筋1は、図14(A),(B)に示すように、中間に大径部W1dが残ったものとしても良い。成形用ロール11(図12)の直径に制限があるため、成形用ロール11の周長よりも長い鉄筋1とする場合は、中間に大径部W1dが残ることになる。図14(A)は中間に一つの雄ねじ部1cとなる大径部W1dが2つ連続した状態の鉄筋1の例であり、大径部W1dの中央で切断して雄ねじ部1cの形成に用いることができる。同図(B)は中間に雄ねじ部1cの長さの大径部W1dを設けた例である。いずれの場合も、ロックナット3は節上ねじ部1dに設けるため、中間に残る大径部W1dの長さが短くて済み、大径部W1dの形成によるコンクリートへの定着力の低下が緩和される。なお、大径化部W1dは、外周面の軸方向1か所または複数箇所に図14に示すように節部1ba′を設けることが好ましく、これにより、コンクリートへの定着力が向上する。節部1ba′は、前記成形用ロール11によるロール成形時に成形する。節部1ba′の高さは、その外径が前記節部1baの外径となる鉄筋最外径D2と同じとなる高さとしても良く、またこれよりも高くまたは低く成形しても良い。鉄筋最外径D2よりも高くする場合は、ロール成形時に支障が生じない高さとする。端部の大径化部W1dの節部1ba′は、雄ねじ部1cの転造時に押し潰されてなくなるが、大径化部W1dを真円加工してから転造を行っても良い。大径化部W1dの節部1ba′は、必ずしも設けなくても良い。また図14の例は、大径化部W1dでは、ロール成形の都合上等で、リブ1bbを形成せず、かつ節部1ba′がリブ1bbの周方向位置で途切れる仕様としているが、大径化部W1dにおいても節部1ba′が全周に連続する仕様としても、リブ1bbが存在する仕様としても良い。
【0073】
なお、前記実施形態では、カプラーに接続する両方の鉄筋1,1を、大径部W1dに雄ねじ部1cを有し、かつ一般部に節上ねじ部1dを有する構成したが、いずれか一方の鉄筋1は、必ずしも大径部W1dを有するものでなくても良く、例えば全体が大径の丸軸等に雄ねじ部1cを加工し、その雄ねじ部1cを長くしてロックナット3を設けるようにしても良い。
また、前記実施形態ではカプラー2の両側にロックナット3を設けたが、ロックナット3がカプラー2の片方1個でも滑り量を制御できる場合は、片方のみに設けても良い。
また、参考提案例に係る異形鉄筋のねじ式鉄筋継手の各例を以下に示す。
前記ロックナットは、全体が前記雄ねじ部に螺合し、前記カプラーおよびロックナットの雌ねじ部のねじ山径である内径が、前記鉄筋の前記突条外径よりも小径であり、前記突条上ねじ部は、このねじ式鉄筋継手の接続作業時に前記ロックナットの全体および少なくとも前記カプラーの一部を前記突条上ねじ部に逃がし可能な長さを有するようにしても良い。
このように、施工の容易のためにカプラーやロックナットを逃がしておくための部分を突条上ねじ部として設けた場合、雄ねじ部に前記逃がしておくための部分を設ける場合に比べて雄ねじ部を短くできる。雄ねじ部を短くできるため、定着力確保のための節部ピッチの問題が緩和でき、雄ねじ部の加工コストも抑えることができる。
この提案例において、前記一対の鉄筋の端面間に許容隙間を与える中間余長を前記カプラーに設け、前記鉄筋の前記雄ねじ部と前記突条上ねじ部との間に、前記突条のうち、円周方向または螺旋方向に延びる突条を有しない突条無し区間を設け、前記ロックナットの反カプラー側の端面が前記突条無し区間に位置すれば、前記雄ねじ部が前記カプラーに対して、少なくとも設定締結長さ分が螺合しかつ前記許容空き寸法が得られる螺合状態である適正螺合深さになるように、前記雄ねじ部、前記カプラーの全体、前記ロックナット、および前記中間余長の長さの関係が設定されていても良い。
なお、前記突条として円周方向に延びる節部を有する場合、前記ロックナットの反カプラー側の端面が前記雄ねじ部の端とこの雄ねじ部から一つ目の前記節部との間に位置すれば、前記大径部にねじ溝を形成した前記雄ねじ部が前記カプラーに対して、少なくとも設定締結長さ分が螺合しかつ前記許容隙間が得られる螺合状態である適正螺合状態になるように、前記雄ねじ部、前記カプラー、前記ロックナット、および前記中間余長の長さの関係が設定されていても良い。
カプラーに前記中間余長を設け、互いに接続する一対の鉄筋の対向端面間の許容隙間を設定しておくと、長さ調整機能が得られ、配筋の現場施工における誤差を吸収できる。鉄筋端面間の空き寸法が実際に適正範囲内になっているか否かは、カプラーに隠れて外部からは見えない。雄ねじ部のカプラーに対するねじ込み量が浅いと、必要な締結長さを得られず、またねじ込み両が深過ぎて前記中間余長を超えると、他方の鉄筋の雄ねじ部を必要深さまでねじ込むことができない。しかし、上記のようにロックナットの端面が突条無し区間に位置すれば適正螺合深さになるように各部の寸法関係を設定しておくと、カプラーの端面が雄ねじ部と突条無し区間を見るだけで良く、外部からの目視で、適正螺合状態であるか否かが簡単に判断できる。
この構成の場合に、前記一対の鉄筋の両方が前記異形鉄筋であって、前記大径部にねじ溝を形成した前記雄ねじ部を有し、かつ前記両鉄筋が前記突条上ねじ部を有し、前記両方の鉄筋とも、前記ロックナットの反カプラー側の端面が前記突条無し区間に位置すれば前記適正螺合深さになるようにしても良い。
これにより、施工上の不利を伴うことなく雄ねじ部の長さを短くできて、定着力確保のための突条のピッチの問題が緩和でき、雄ねじ部の加工コストも抑えることができるという利点が、より一層効果的に得られる。また両方の鉄筋につき、雄ねじ部がカプラーに対して適正螺合状態であるか否かが、外部からの目視で簡単に判断できる。
【符号の説明】
【0074】
1…鉄筋
1a…鉄筋本体
1b…突条
1ba…節部
1bb…リブ
1c…雄ねじ部
1d…突条上ねじ部
2…カプラー
2a…雌ねじ部
3…ロックナット
3a…雌ねじ部
h…突条無し区間
【要約】      (修正有)
【課題】耐引張力および耐圧縮力上の両方の要件を充足でき、かつ施工を容易とする異形鉄筋のネジ式鉄筋継手を提供する。
【解決手段】互いに接続される一対の鉄筋1,1の対向する端部に雄ねじ部1c,1cを有し、両雄ねじ部1c,1cに渡って螺合するカプラー2と、一対のロックナット3とを備える。各雄ねじ部1cは、鉄筋本体よりも大径の大径部にねじ溝を形成してなり、前記カプラー2のねじ山径である内径が、突条1bの外径よりも小径である。各鉄筋1,1の雄ねじ部1cに続く部分に、ロックナット3およびカプラー2を螺合状態で逃がし可能とする突条上ねじ部1dを、突条無し区間hを介して設ける。ロックナット3の端面が突条無し区間hに位置すれば、両鉄筋1,1間に許容空き寸法が得られる適正螺合深さとなるように各部の寸法関係を設定する。ロックナット3は、突条上ねじ部1dに螺合させるようにしても良い。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14