(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
角膜移植術を行う際には角膜開放創を伴うことがあり、眼内圧の解放による不安定さから脈絡膜出血をおこすいわゆる駆逐性出血を起こしたり、虹彩・水晶体・硝子体脱出を起こしたりする合併症を伴う。また、その不安定さにより、角膜縫合を困難にしている現状がある。
【0003】
さらに、角膜移植手術と同時に白内障手術や硝子体手術等を行う場合、移植を予定している角膜は混濁など不透明であることが多く、その状態では顕微鏡を用いても角膜の後ろにある水晶体や硝子体腔を観察することができず、白内障手術や硝子体手術を行うのが困難な場合があった。このため、二つの手術を同時に行う場合には、トレパン又はフェムトセカンドレーザ等を用いて移植者(レシピエント)の角膜を予め切除した状態で白内障手術や硝子体手術を行い、白内障手術や硝子体手術を行った後に角膜移植手術を実施している。
【0004】
ここで、一般的な白内障手術では、移植者の角膜周辺の一部を切開し、そこから器具を挿入して混濁した水晶体を水晶体嚢内から取り除いた後、水晶体嚢内に水晶体の代わりとして眼内レンズ(Intraocular lens,以下でIOLという場合もある)を挿入することで、白濁した水晶体をIOLに入れ替えることを目的とした治療を行っている。
【0005】
ところが、角膜移植手術と同時に行われる白内障手術においては、眼球から移植対象部分の角膜を切除すると、角膜切除後の開口部から房水等の内液が眼外へ漏れ出すため、水晶体を挟んで前後の圧力が異なり、水晶体の後ろにある硝子体が水晶体を前方に押し出す力がはたらき、チン小帯が脆弱であった場合には、硝子体が水晶体を前方に押し出す力によってチン小帯が断裂する確率も高く、通常の白内障手術よりもその難易度とリスクは極めて高いものとなる。
【0006】
同じく、硝子体手術は強膜より還流液や照明、眼内操作器具を出し入れする創口を用意し、硝子体腔内の硝子体切除や網膜組織への加療をおこなうことになるが、角膜開放創により硝子体腔内の圧力も一定せずに手術が安全に行われない。
【0007】
そこで、角膜移植手術と同時におこなわれる白内障手術や硝子体手術等において、これらの難易度とリスクを低減又は回避する方法として、特許文献1には、混濁角膜を打ち抜き、一時的人工角膜を角膜開口部へ装着した後、外周部に開けられた複数の縫着用小孔を利用して一時的人工角膜を眼球の強膜に縫着し、それにより眼内の透明性を確保する人工角膜が記載されている。このような方法によれば、人工角膜上に載置される手術用のコンタクトレンズのずれや、脱落を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係るオープンスカイ器具101の構成例を示す斜視図である。
【
図2】オープンスカイ器具101の構成例を示す平面図である。
【
図3】
図2に示すオープンスカイ器具101のA−A線に沿った断面図である。
【
図4】オープンスカイ器具101を眼内に装着した状態例(その1)を示す断面図である。
【
図5】オープンスカイ器具101を眼内に装着した状態例(その2)を示す平面図である。
【
図6】挿入器具300の構成例を示す組立図である。
【
図7A】角膜移植時に行う白内障手術の工程例(その1)を示す断面図である
【
図7B】角膜移植時に行う白内障手術の工程例(その2)を示す断面図である。
【
図7C】角膜移植時に行う白内障手術の工程例(その3)を示す断面図である。
【
図8A】角膜移植時に行う白内障手術の工程例(その4)を示す断面図である。
【
図8B】角膜移植時に行う白内障手術の工程例(その5)を示す断面図である。
【
図8C】角膜移植時に行う白内障手術の工程例(その6)を示す断面図である。
【
図9】本発明の第2の実施の形態に係るオープンスカイ器具102の構成例を示す平面図である。
【
図10】本発明の第3の実施の形態に係るオープンスカイ器具103の構成例を示す斜視図である。
【
図11】オープンスカイ器具103の構成例を示す平面図である。
【
図12】オープンスカイ器具103の構成例を示す側面図である。
【
図13】本発明の第4の実施の形態に係るオープンスカイ器具104の構成例を示す平面図である。
【
図14】オープンスカイ器具104の構成例を示す側面図である。
【
図15】オープンスカイ器具104を眼内に装着した状態例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照しながら、本発明に係る実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0021】
<第1の実施の形態>
[眼科用補助具(以下、オープンスカイ器具101いう)の構成例]
本発明に係るオープンスカイ器具101は、眼科手術を伴う角膜移植時等において患者の眼内に装着されることで、角膜を切除するとき、及び角膜切除後を通して水晶体の前後の内圧バランスを良好に維持できるため、眼内から眼外への内液の漏れ出しを防止することを可能としたものである。
【0022】
図1〜
図4に示すように、第1の実施の形態に係るオープンスカイ器具101は、蓋栓部10と、複数の支持部12と、複数の足部14とを備えている。蓋栓部10は、平面的に見て円形状であって、眼球の角膜形状に沿うように湾曲したお椀型形状から構成されている。言い換えると、蓋栓部10は、眼球の角膜形状に応じて中央部位が盛り上がったドーム形状を成している。もちろん、蓋栓部10に所定の厚み及び屈折度数を付与してレンズ機能を持たせてもよい。
【0023】
複数の支持部12は、所定の長さを有する柱状体であって、その一端部が蓋栓部10の周縁部に取り付けられると共にその他端部が蓋栓部10の曲面(接線)に沿うように斜め下方に向かって延在している。本例において支持部12は、
図2に示すように、蓋栓部10の中心線Oを基準として左右対称となる位置に2個ずつ取り付けられている。
【0024】
支持部12の各々の他端部には足部14が取り付けられる。この例では、1組の支持部12を1つの足部14で受け支える形態を採る。足部14は、蓋栓部10の周方向に沿うように円弧状に形成される。この例では、2個の足部14,14が、中心線Oを基準とした左右側の位置において、例えば、支持部12間がθ1=60度の間隔となるように2個の支持部12を受け支える形態で配置され接合されている。
【0025】
図2に示す足部14の長手方向の弧の底面積S1は、
図3に示すように、支持部12の高さ方向を切る断面積S2(例えば、一番細い部分)よりも大きくなるように設定される(S1>S2)。これは支持部12の断面積よりも数倍も広い底面積の足部14で当該支持部12を受け支えるためである。
【0026】
蓋栓部10は、
図4に示すように、その開口が眼内側に向くように角膜20の内側に装着され、角膜20を切除するとき、及び、その切除後を通して外部に漏れ出そうとする内液を堰き止める機能を有する。また、蓋栓部10は、眼内に装着されると、角膜20の内面側に当接することで角膜20によって支持される。支持部12は、蓋栓部10を支持すると共に、足部14が硝子体40による水晶体38を押し出す力を受けた場合に蓋栓部10の左右方向の位置ずれを防止する機能を有する。
【0027】
足部14は、角膜切除前、オープンスカイ器具101を眼内に装着した当初においては、虹彩42(前眼房35)を回避した位置の隅角に安定した状態で当接する。角膜を切除するとき、及び、角膜切除後を通して、足部14は硝子体40から角膜20の開口部の方向へ向けて押し出される水晶体38からの内圧に対して踏ん張る(抵抗する)機能を発揮する。つまり、支持部12及び足部14は蓋栓部10にある程度の内圧が加わるまでは、専ら当該蓋栓部10を支えている。上述の踏ん張り力に抗して、内圧が徐々に増加し、ある程度の内圧が加わると、前眼房35の隅角に足部14が当接して当該蓋栓部10の左右方向への移動や回転等を阻止するようになる。
【0028】
なお、オープンスカイ器具101を構成する蓋栓部10、支持部12および足部14の材料としては、例えば、紫外線吸収剤・ブタコラーゲン含有HEMA、架橋アクリルエステル共重合体、紫外線吸収剤含有アクリル−メタクリル架橋共重合体、紫外線吸収性黄色軟質アクリル樹脂、紫外線吸収性高屈折率シリコーン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、青色光吸収剤:エチルメタクリルアミド系、紫外線・青色光吸収剤含有アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂等を用いることができる。蓋栓部10、支持部12および足部14の材料は、上述した材料の中から選択して使用すれば、組み合わせ方は問わない。それぞれ同じ組み合わせの組成でも良いし、異なる組成を組み合わせても良い。なお、蓋栓部10には、手術時において水晶体等の眼内の様子が術者側から透けて見えるように透明材料を用いることが好ましい。
【0029】
[オープンスカイ器具101の寸法例]
次に、本発明に係るオープンスカイ器具101の寸法の一例について説明する。
図5は、第1の実施の形態に係るオープンスカイ器具101を眼内に装着した場合の状態を示す平面図である。
図5に示すように、角膜移植時において角膜20に形成される開口部20aの径D1は、患者の角膜20の移植対象範囲によって異なるが、一般的に例えばD1=7.5〜8.0mm、好ましくはD1=7.75mmの範囲に設定される。なお、本例では、開口部20aを平面視円形状に切り取った例について説明したが、これに限定されることはない。
【0030】
オープンスカイ器具101を構成する蓋栓部10の径D2は、角膜20に形成される開口部20aの径D1よりも大きい径に設定され、例えばD2=9.5〜10.5mmの範囲で設定される。蓋栓部10を径D2=9.5〜10.5mmの範囲に設定することにより、開口部20aの径D1よりも大きい外形とすることができるので、蓋栓部10が角膜20の内側から外側に外れてしまうことを確実に防止でき、内液が外部に漏洩してしまうことを防止できる。
【0031】
また、蓋栓部10の周縁部と開口部20aの周縁部に位置する角膜20の内面とが当接することで硝子体40による押し出し力に対して抗する力を得ることができ、水晶体38を挟む房水と硝子体40の内圧バランスを保持することができる。
【0032】
オープンスカイ器具101の外径D3は、例えばD3=10〜14mmの範囲に設定される。オープンスカイ器具101を外径D3=10〜14mmの範囲に設定することにより、オープンスカイ器具101を眼内に丁度収容することができ、眼内でのオープンスカイ器具101のずれを防止することができる。
[オープンスカイ器具101の製造方法]
次に、本発明に係るオープンスカイ器具101の製造方法の一例について説明する。なお、以下では、第1から第3の方法について説明するが、これらの製造方法に限定されるものではなく、公知の方法を適宜採用することができる。
【0033】
第1の方法としては、上述した材料の中から一つを選択し、この選択した材料から蓋栓部10、支持部12および足部14を展開した各形状を切り出し、その後、切り出した各形状の部材を立体形状に組み合わせて熱成形することによりオープンスカイ器具101を製造する。
【0034】
第2の方法としては、オープンスカイ器具101の立体形状に象った金型を製造し、その後、この製造した金型に上述した材料を射出して蓋栓部10、支持部12および足部14の各部を同時に成形することによりオープンスカイ器具101を製造する。
【0035】
第3の方法としては、上述した材料の中から一つを選択し、この選択した材料から蓋栓部10、支持部12および足部14を展開した各形状を切り出し、その後、切り出した各形状の部材を立体形状に組み合わせて接着剤で接合することによりオープンスカイ器具101を製造する。
【0036】
[挿入器具の構成例]
次に、オープンスカイ器具101を眼内に挿入する際に使用する挿入器具300の構成例について説明する。
図6は、挿入器具300の構成の一例を示している。
図6に示すように、挿入器具300は、収納管310と、押し出し部材320とを備えている。
【0037】
収納管310は、長尺状の筒体であって、先端に向かうほど開口断面積が徐々に狭くなるように構成されている。例えば、収納管310は
図6に示す開口断面形状a,b,c,d,eを有している。収納管310の先端部には、オープンスカイ器具101が眼内において円滑に展開(開放)できるように、挿入部312が形成されている。挿入部312の開口径は、角膜20に形成する開口部(
図7Aの開口部20c参照)の径よりも小さい径に選定される。
【0038】
押し出し部材320は、長尺状の棒状部材であって、その径が収納管310の径よりも小さい径で構成され、収納管310内に摺動自在に装着される。押し出し部材320の先端部には、オープンスカイ器具101を保持(係合)して前方に押し進めるための溝部322が形成されている。押し出し部材320の後端部には、術者が把持するための取手部324が設けられている。挿入器具300は押し出し式に限られることはなく、収納管310の内側及び押し出し部材320の外側に螺旋状を施したねじ式であってもよい。
【0039】
オープンスカイ器具101を眼内に挿入する場合、収納管310の後端側からオープンスカイ器具101を挿入し、その後、押し出し部材320を収納管310の後端側から挿入する。続けて、押し出し部材320をゆっくり前方に押し進めることで、オープンスカイ器具101が
図6に示す収納管310の開口断面形状a,b,c,d,eに規制されて、徐々にその両側から内側へ折りたたまれて押されて行く。オープンスカイ器具101が収納管310の先端に到達すると、その先端の挿入部312を介して眼内にオープンスカイ器具101が射出され、眼内で
図1に示した元の形状に展開して戻る。なお、挿入器具300には、IOL挿入用のインジェクターを使用することもできる。
【0040】
[角膜移植手術を伴う白内障手術工程例]
次に、第1の実施の形態に係るオープンスカイ器具101を使用した白内障手術を伴う角膜移植手術工程の一例について説明する。
図7A〜
図7Cおよび
図8A〜
図8Cは、白内障手術を伴う角膜移植手術時の工程例を示している。
【0041】
白内障手術を伴う角膜移植手術においては、
図7Aに示すように、まず、患者の角膜20の移植対象部位20bを決定する。続けて、患者の移植対象部位20b以外(移植対象部位の周辺部)の角膜20部分に挿入器具300等を挿入するための開口部20cを形成する。開口部20cは、周知の施術技法により弁機能が得られるように切開創をもって形成される。開口部20cの開口幅は、例えば3.0mm程度である。
【0042】
次に、
図7Bに示すように、オープンスカイ器具101が収容された挿入器具300の収納管310を開口部20cから眼内に挿入し、押し出し部材320を眼内に向けて押し出すことによりオープンスカイ器具101を角膜20の内側に挿入する。
【0043】
眼内に挿入されたオープンスカイ器具101は、
図7Cに示すように、角膜20の内側で広がり(展開し)、角膜20の内側に装着される。このとき、オープンスカイ器具101の蓋栓部10は、角膜20の内面に当接すると共に、足部14が虹彩42を回避した位置の隅角に当接する。足部14の各々は、支持部12を介して蓋栓部10を受け支えるようになる。
【0044】
次に、オープンスカイ器具101を角膜20の内側に装着したら、
図8Aに示すように、患者の角膜20から移植対象部位20bを切除する。本例によれば、移植対象部位20bを切除した場合でも、眼内の内液をオープンスカイ器具101の蓋栓部10により塞き止めることができるので、眼内の内液の漏洩を防止できる。
【0045】
また、オープンスカイ器具101の蓋栓部10が開口部20aの周辺部の角膜20によって支持されるので、移植対象部位20bを切除するとき、及び、それを切除した後も足部14によって突っ張る(踏ん張る)ことができる。これにより、角膜移植手術と同時におこなわれる白内障手術や硝子体手術等において、従来方式に比べて、患者へのリスクを軽減(低減)及び移植手術の難易度を回避できるようになる。
【0046】
次に、
図8Bに示すように、患者の角膜20から移植対象部位20bを切除できたら、一般的に行われている手術方法により、水晶体38を取り除き、その後、眼内レンズ500を眼内に挿入する。このとき、蓋栓部10が透明性を有しているので、視界性良く手術ができるようになる。眼内レンズ500の挿入が終了したら、開口部20aを介してオープンスカイ器具101を取り出し、その後、
図8Cに示すように、患者の切除した角膜20の開口部20aに、予め患者の開口部20aに合わせて切除されたドナーの角膜20dを嵌め込んで縫合処理を行う。このような一連の工程により、白内障手術等を伴う角膜移植が行われる。角膜移植は白内障手術に限られない。
【0047】
このように、第1の実施の形態としてのオープンスカイ器具101によれば、ドーム状の蓋栓部10を支持する4個の支持部12を備え、この支持部12の各々の他端部には、円弧状の足部14が取り付けられ、当該支持部12を受け支える形態で配置されている。
【0048】
この構成によって、オープンスカイ器具101を眼内に挿入した後、角膜20の切除前の状態において、蓋栓部10の左右の位置ずれを防止できる。しかも、角膜20を切除するとき、及びその切除後に房水等の内液の圧力が蓋栓部10に加わってくると、その内圧により当該蓋栓部10が角膜20に押し付けられた状態となって、前眼房内の密閉性を維持できるようになる。従って、角膜20を切除するとき、及び、その切除後を通して開口部20aから外部への内液の漏洩を防止できるため、眼内手術を伴う角膜移植時の難易度とリスクを低減できるようになる。
【0049】
しかも、水晶体38を挟んだ房水と硝子体40の内圧バランスを維持でき、硝子体40が水晶体38を押し上げようとする力を抑制できる。その結果、チン小帯36の断裂等を防止することができる(
図4参照)。
【0050】
また、第1の実施の形態によれば、透明性を失った角膜20の移植対象部位20bを取り除いた後も、透明かつドーム型のオープンスカイ器具101の眼内装着が維持されているので、術者がオープンスカイ器具101を通して顕微鏡で観察しながら白内障手術や硝子体手術等を行うことができる。
【0051】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態では、
図9に示すように、オープンスカイ器具102を構成する蓋栓部10に角膜の縫合の際に用いる目盛りMを設けている点において上記第1の実施の形態のオープンスカイ器具101と相違している。なお、その他のオープンスカイ器具102等の構成や機能は、上記第1の実施の形態のオープンスカイ器具101等と同様であるため、共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0052】
まず、第2の実施の形態に係るオープンスカイ器具102の構成例について説明する。
図9において、オープンスカイ器具102は、蓋栓部10と、複数の支持部12と、複数の足部14とを備えている。蓋栓部10の表面側の周縁部には、その周方向に沿って角膜を縫合する際の運針位置を示す目盛りMが一定間隔で設けられている。この例では、移植する角膜を針16で縫合することを前提としているため、目盛りMを例えばθ2=22.5°間隔で設けている。なお、目盛りMの配置間隔は、本例に限定されるものではない。目盛りMは、例えば蓋栓部10の表面を着色したり、刻印したりすることで形成できる。
【0053】
次に、第2の実施の形態に係るオープンスカイ器具102を使用した白内障手術を伴う角膜移植手術工程の一例について説明する。なお、眼内レンズ500を眼内に挿入するまでの手術工程は、第1の実施の形態で説明した
図7A〜
図7Cおよび
図8A,
図8Bの手術工程と同様であるため、詳細な説明は省略する。この例では、オープンスカイ器具102を眼内に装着すると共に
図8Cに示した眼内レンズ500の挿入が完了し、眼内にオープンスカイ器具102が残っている状態で、ドナーの角膜20dを開口部20aに嵌め込んだ状態を前提とする。
【0054】
これを前提条件にして、蓋栓部10の目盛りMを目印にして角膜20dの縫合を行う。角膜20dの縫合が完了したら、図示しない眼科用の鉗子を開口部20cから挿入し、眼内で鉗子を操作してオープンスカイ器具102を小片に刻んで眼内からオープンスカイ器具102を個分けして取り出す。このような一連の工程により、白内障手術を伴う角膜移植手術が行われる。
【0055】
このように第2の実施の形態によれば、蓋栓部10の周縁部に角膜20dを縫合する際の運針位置を示す目盛りMを設けているので、角膜移植において術者が角膜20dを縫合する際の目印とすることができる。これにより、より正確な縫合を行うことができる。
【0056】
<第3の実施の形態>
第3の実施の形態では、
図10に示すようにオープンスカイ器具103を構成する支持部12および足部14の配置や構成が第1の実施の形態のオープンスカイ器具101と相違している。なお、その他のオープンスカイ器具103の構成や機能は、上記第1の実施の形態のオープンスカイ器具101と同様であるため、共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0057】
図10〜
図12に示すように、オープンスカイ器具103は、蓋栓部10と、複数の支持部12と、複数の足部14とを備えている。複数の支持部12は、その一端部が蓋栓部10の周縁部に取り付けられている。この例では、3つの支持部12が設けられ、これら3つの支持部12間がθ3=120度の間隔となるように蓋栓部10の周縁部に配置され接合されている。足部14は、蓋栓部10の周方向に沿うように円弧状に形成され、その略中央部が支持部12の他端部に取り付けられている。この例では、1つの支持部12を1つの足部14で受け支える形態を採る。
【0058】
このように第3の実施の形態によれば、上記第1の実施の形態と同様に、オープンスカイ器具103を眼内に挿入した後、角膜20の切除前の状態において、蓋栓部10の左右の位置ずれを防止できる。さらに、角膜20を切除するとき、及び、その切除後、水晶体38を挟んだ房水と硝子体40の内圧バランスを維持でき、硝子体40が水晶体38を押し上げようとする力を抑制できる。その結果、チン小帯36の断裂等を防止することができる。
【0059】
<第4の実施の形態>
第4の実施の形態では、
図13に示すようにオープンスカイ器具104の位置ずれ防止及び視界領域の確保のための突出部32を蓋栓部30の表面部に設ける点において上記第1の実施の形態のオープンスカイ器具101と相違している。なお、その他のオープンスカイ器具104の構成や機能は、上記第1の実施の形態のオープンスカイ器具101と同様であるため、共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0060】
図13において、オープンスカイ器具104は、蓋栓部30と、複数の支持部12と、複数の足部14とを備えている。蓋栓部30は、蓋栓部本体31と、突出部32とを有している。突出部32は、
図14に示すように蓋栓部本体31の表面部から突出した段差状の平面部であって、
図15に示す角膜20に形成される開口部20aに対応した形状および大きさにより構成されている。具体的には、突出部32は、開口部20aの形状に対応して平面視円形状(
図13参照)で構成されると共に、
図15に示す径D4が開口部20aの径D1以下に選定される。また、突出部32の厚みは、角膜20の開口縁部に係合可能な厚みであれば良い。
【0061】
このように第4の実施の形態によれば、オープンスカイ器具104を眼内に装着した際に、突出部32が角膜20の開口部20aの内側に配置されることになる(
図15参照)。これにより、オープンスカイ器具104に横方向(水平方向)の力が働いた場合でも、突出部32を構成する段差部が角膜20の開口縁部に引っ掛かる(係合)ので、オープンスカイ器具104の位置ずれを確実に防止することができる。
【0062】
更に、眼内手術時、眼球内の内圧が高くなって、還流液等が染み出したような場合に、第1の実施形態では、還流液等がオープンスカイ器具104の上部外周縁部に不規則に停滞する。これに対して、第4の実施形態によれば、突出部32の外周縁部と角膜20の内周縁部とで形成される環状の溝部33に、還流液を強制排除できるようになる。これにより、第1の実施形態に比べて視界領域をより広く確保できるようになる。
【0063】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。例えば、オープンスカイ器具101,102,103,104の寸法は上記数値に限定されることはない。
オープンスカイ器具101は、角膜移植や、眼内手術を伴う角膜移植時に使用可能なものであって、眼球の内側に設けられて眼内から眼外への内液の漏洩を防止する蓋栓部10と、蓋栓部10の周縁部に一端部が取り付けられて当該蓋栓部10を支持する複数の支持部12と、支持部12の他端部に取り付けられて当該支持部12を受け支える足部14とを備えるものである。