特許第5869908号(P5869908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5869908
(24)【登録日】2016年1月15日
(45)【発行日】2016年2月24日
(54)【発明の名称】建築板
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20160210BHJP
【FI】
   E04F13/08 E
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-32022(P2012-32022)
(22)【出願日】2012年2月16日
(65)【公開番号】特開2013-167121(P2013-167121A)
(43)【公開日】2013年8月29日
【審査請求日】2014年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】503367376
【氏名又は名称】ケイミュー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087767
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 惠清
(74)【代理人】
【識別番号】100155745
【弁理士】
【氏名又は名称】水尻 勝久
(74)【代理人】
【識別番号】100143465
【弁理士】
【氏名又は名称】竹尾 由重
(74)【代理人】
【識別番号】100155756
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 武
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【弁理士】
【氏名又は名称】北出 英敏
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136696
【弁理士】
【氏名又は名称】時岡 恭平
(74)【代理人】
【識別番号】100162248
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 豊
(72)【発明者】
【氏名】岡本 義孝
【審査官】 津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−353299(JP,A)
【文献】 特開2008−144356(JP,A)
【文献】 実開昭58−017412(JP,U)
【文献】 特開2007−231586(JP,A)
【文献】 特開2011−056362(JP,A)
【文献】 意匠登録第1416173(JP,S)
【文献】 特開2000−352018(JP,A)
【文献】 特開2001−062390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦目地及び横目地を介して複数のタイル状凸部を配置して形成された建築板であって、
前記複数のタイル状凸部のうち全部又は一部のタイル状凸部の少なくとも一部に凹状又は凸状の曲面が形成され、
前記曲面に、下に凸又は上に凸となる複数本の曲線が平行に描画されていることを特徴とする
建築板。
【請求項2】
前記全部又は一部のタイル状凸部の中央部に前記曲面が形成され、
左端部及び右端部に平坦面が形成されていることを特徴とする
請求項1に記載の建築板。
【請求項3】
前記左端部及び前記右端部に直線が描画されていることを特徴とする
請求項2に記載の建築板。
【請求項4】
前記複数のタイル状凸部を千鳥状に配置していることを特徴とする
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の建築板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁材等の建築板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築板として、長手方向に亘り複数の通し目地を有する外装材が知られている(例えば、特許文献1参照)。そしてこの外装材は、両端の目地が長手方向に亘る一つの直線状端部を有し、かつ不規則に拡縮した目地幅を有することにより、施工時の手間や目地ずれによる違和感を低減することができるようにしたものである。
【0003】
また、建築板として、セメント系の無機質基材の表面にインク受理層を設け、このインク受理層の表面にインクジェット塗装を施して形成されるものが知られている(例えば、特許文献2参照)。そしてこの建築板は、インク受理層として、インク浸透性が異なる第一のインク受理層と第二のインク受理層とを積層して設け、かつ第二のインク受理層は第一のインク受理層の外面に部分的に設けて成ることにより、多様な意匠模様を形成することができるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−184262号公報
【特許文献2】特開2007−170014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の外装材では、施工時の手間や目地ずれによる違和感を低減することはできても、目地幅が不規則に拡縮しているため、意匠性の向上には限界がある。
【0006】
また、特許文献2に記載の建築板では、インクジェット塗装を施すので意匠性には優れているが、隣り合う建築板間の突き合わせ部分を目立ちにくくするための工夫は特に凝らされていない。
【0007】
また、建築板の板厚によっては、凹部と凸部の高低差を大きくすることが困難な場合があり、十分な凹凸感を表現することができず、この場合にも意匠性の向上に限界がある。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、上下左右に突き合わせて設置する場合に隣り合う建築板間の突き合わせ部分を目立ちにくくすることができると共に、凹凸感を強調することができ、意匠性も高めることができる建築板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る建築板は、縦目地及び横目地を介して複数のタイル状凸部を配置して形成された建築板であって、前記複数のタイル状凸部の全部又は一部のタイル状凸部の少なくとも一部に凹状又は凸状の曲面が形成され、前記曲面に、下に凸又は上に凸となる複数本の曲線が平行に描画されていることを特徴とするものである。
【0010】
前記建築板において、前記全部又は一部のタイル状凸部の中央部に前記曲面が形成され、左端部及び右端部に平坦面が形成されていることが好ましい。
【0011】
前記建築板において、前記左端部及び前記右端部に直線が描画されていることが好ましい。
【0012】
前記建築板において、前記複数のタイル状凸部を千鳥状に配置していることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の建築板を上下左右に突き合わせて設置する場合に隣り合う建築板間の突き合わせ部分を目立ちにくくすることができると共に、凹凸感を強調することができ、意匠性も高めることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る建築板の塗装後の一例を示す正面図である。
図2】本発明に係る建築板の塗装前の一例を示す正面図である。
図3図1のA−A線断面図であり、(a)は各タイル状凸部の中央部に凹状の曲面が形成された建築板、(b)は各タイル状凸部の中央部に凸状の曲面が形成された建築板である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
本発明に係る建築板1は、縦目地2及び横目地3を介して複数のタイル状凸部4を配置して形成されている。タイル状凸部4の配置方法は特に限定されるものではないが、建築板1間の突き合わせ部分をより目立ちにくくして意匠性もさらに高めることができる点で、図1図2に示すようにタイル状凸部4は千鳥状に配置することが好ましい。この場合、各タイル状凸部4は通常四辺形であり、左右のタイル状凸部4が縦目地2を介して配置され、この縦目地2が上下のタイル状凸部4の略中央に位置するように、上下のタイル状凸部4が横目地3を介して配置される。このような建築板1は、所定の金型を用いてセメント系成形材料をプレス成形した後に養生硬化させることによって製造することができる。建築板1は通常四辺形であり、この建築板1の四辺には、図示省略しているが、合決(あいじゃくり)加工や実加工等が施され、複数の建築板1を上下左右に突き合わせて設置することができるようにしてある。
【0017】
図1図2に示すものでは、各タイル状凸部4は、中央部5とその両側の左端部8及び右端部9とで構成され、左端部8、中央部5、右端部9のそれぞれの横幅の比率が約1:2:1程度であるが、これに限定されるものではない。
【0018】
各建築板1の左右両辺は、図1図2において破線Bで示すように、上下複数の縦目地2を通ることが好ましい。あるいは、各建築板1の左右両辺は、図1図2において破線Cで示すように、タイル状凸部4の中央部5とその両側の左端部8及び右端部9との境界線を通ることも好ましい。いずれの場合も、左右に隣り合う建築板1間の突き合わせ部分を目立ちにくくすることができる。また、各建築板1の上下両辺は、図1図2において破線Dで示すように、横目地3を通ることが好ましい。この場合は、上下に隣り合う建築板1間の突き合わせ部分を目立ちにくくすることができる。
【0019】
複数のタイル状凸部4のうち全部又は一部のタイル状凸部4に凹状又は凸状の曲面6が形成されている。この曲面6は、タイル状凸部4の少なくとも一部に形成されていればよく、タイル状凸部4の全体に形成されていてもよい。図1図2に示すものは、全部のタイル状凸部4に凹状の曲面6aが形成され、さらにこの凹状の曲面6aがタイル状凸部4の一部である中央部5に形成されているものである。このように、全部のタイル状凸部4の中央部5に曲面6が形成され、各タイル状凸部4の左端部8及び右端部9に平坦面10が形成されていることが好ましい。図3(a)に示すものでは、横方向(水平方向)の断面が下に凸の曲面となるような凹状の曲面6aが形成されているが、凹状の曲面6aはこれに限定されるものではない。また図3(b)に示すものでは、横方向の断面が上に凸の曲面となるような凸状の曲面6bが形成されているが、凸状の曲面6bはこれに限定されるものではない。曲面6の曲率半径(R)も特に限定されない。以下では各タイル状凸部4の中央部5に図3(a)に示すような凹状の曲面6aが形成された建築板1について説明する。
【0020】
次に、養生硬化して得られた図2に示すような建築板1の表面を塗装する。塗装する色の属性(色相・明度・彩度)は特に限定されない。この塗装は、後述の曲線11や直線12を描画することを考慮すると、インクジェット印刷により行うことが好ましいが、その他の方法を使用して行ってもよい。インクジェット印刷により塗装を行う場合には、あらかじめ建築板1の表面にシーラー(プライマー)を塗布した後にインク受理層を形成する。そして、塗装するにあたっては、図1に示すように各タイル状凸部4の中央部5の曲面6に曲線11の模様を描画する。この曲線11は、図1に示すものでは、実線のような連続した曲線11であるが、破線、点線、一点鎖線、二点鎖線のような不連続な曲線11でもよい。ここで、各タイル状凸部4の中央部5に凹状の曲面6aが形成されている場合には、図1に示すように建築板1を正面から見たときに、下に凸となるような複数本の曲線11が平行に凹状の曲面6aに描画されて曲線模様が形成されていることが好ましい。また図示省略しているが、各タイル状凸部4の中央部5に凸状の曲面6bが形成されている場合には、建築板1を正面から見たときに、上に凸となるような複数本の曲線11が平行に凸状の曲面6bに描画されて曲線模様が形成されていることが好ましい。
【0021】
そして、図1において破線Bで示すように、各建築板1の左右両辺が、上下複数の縦目地2を通る場合には、複数の建築板1を左右に突き合わせて設置するときに、隣り合う建築板1間の突き合わせ部分は、縦目地2と区別がつきにくくなるので目立ちにくくすることができる。このとき縦目地2の上下に位置するタイル状凸部4の中央部5は略中央で分断されている。しかし、この中央部5の曲面6には曲線11の模様が描画されているので、複数の建築板1を左右に突き合わせて設置するときに、左右の曲線11の模様が連続しているように見えて、隣り合う建築板1間の突き合わせ部分を目立ちにくくすることができる。このような効果は、曲線11の本数を多く、各曲線11の太さを細くして緻密にするほど高く得られるものであり、この場合には質感も表現することができる。
【0022】
また、図1において破線Cで示すように、各建築板1の左右両辺が、タイル状凸部4の中央部5とその両側の左端部8及び右端部9との境界線を通る場合には、複数の建築板1を左右に突き合わせて設置するときに、隣り合う建築板1間の突き合わせ部分は、上記の境界線と区別がつきにくくなるので目立ちにくくすることができる。
【0023】
また、図1において破線Dで示すように、各建築板1の上下両辺が、横目地3を通る場合には、複数の建築板1を上下に突き合わせて設置するときに、隣り合う建築板1間の突き合わせ部分は、横目地3と区別がつきにくくなるので目立ちにくくすることができる。
【0024】
しかも、各タイル状凸部4の中央部5に形成された曲面6は三次元的であり、このような曲面6には二次元的な曲線11の模様が描画されているので、3D擬似化を表現することができるなど凹凸感を強調することができ、意匠性も高めることができる。
【0025】
さらに、各タイル状凸部4の左端部8及び右端部9の平坦面10には直線12の模様を描画することが好ましい。この直線12は、図1に示すものでは、実線のような連続した直線12であるが、破線、点線、一点鎖線、二点鎖線のような不連続な直線12でもよい。ここで、図1に示すように建築板1を正面から見たときに、複数本の直線12が横方向に平行に描画されて直線模様が形成されていることが好ましい。この場合には、三次元的な曲面6に描画された二次元的な曲線11と、二次元的な平坦面10に描画された一次元的な直線12とが相俟って、凹凸感を強調することができ、意匠性をさらに高めることができる。なお、仮にタイル状凸部4の左端部8が分断されたり右端部9が分断されたりしても(各建築板1の左右両辺が図1の破線B及びCの間を通る場合)、各タイル状凸部4の中央部5の曲面6には曲線11の模様が描画され、左端部8及び右端部9の平坦面10には直線12の模様が描画されているので、複数の建築板1を左右に突き合わせて設置するときに、左右の曲線11及び直線12の模様がそれぞれ連続しているように見えて、隣り合う建築板1間の突き合わせ部分を目立ちにくくすることができる。このような効果は、曲線11及び直線12の本数を多く、各曲線11及び直線12の太さを細くして緻密にするほど高く得られるものであり、質感も表現することができる。
【0026】
なお、本発明においては、整然とした千鳥状にタイル状凸部4を配置して形成された建築板1について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、縦横様々なサイズのタイル状凸部4を任意に配置してもよいものである。また、タイル状凸部4として、その中央部5に凹状の曲面6a、左端部8及び右端部9に平坦面10が形成されたものについて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、凸状の曲面6bが形成されていてもよい。また、凹状又は凸状の曲面6が中央部5ではなく偏って形成されていてもよい。また、タイル状凸部4の全体が凹状又は凸状に形成されていてもよく、この場合、全体が平坦面10で形成されたタイル状凸部4と組み合わせるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 建築板
2 縦目地
3 横目地
4 タイル状凸部
5 中央部
6 曲面
8 左端部
9 右端部
10 平坦面
11 曲線
12 直線
図1
図2
図3