(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、本発明に関するパッケージ部品の接合方法の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜
図4は、本発明に関するパッケージ部品の接合方法を説明するための図である。
本発明に関するパッケージ部品の接合方法は、
図1〜
図4に示すように、はんだボール11を有するパッケージ部品1を実装基板2に接合させるパッケージ部品の接合方法であって、以下説明する膜形成工程、樹脂組成物付着工程、搭載工程、およびリフロー工程を備える方法である。
パッケージ部品1は、はんだボール11を有するパッケージ部品であり、パッケージ基板12の一方の面におけるランド13上にはんだボール11を有するものである。前記はんだボールの直径は特に限定されないが、例えば、0.1mm以上0.8mm以下であることが好ましく、0.2mm以上0.7mm以下であることがより好ましい。はんだボールの直径が前記下限未満の場合には、はんだボールが小さ過ぎるためにパッケージ部品を実装基板に接合することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、はんだボールによる接合のみでもパッケージ部品と実装基板との接合強度を確保できるため、本発明のパッケージ部品の接合方法を採用する必要はない。また、前記はんだボールのピッチは特に限定されないが、0.2mm以上1.5mm以下であることが好ましく、0.4mm以上1.3mm以下であることがより好ましい。はんだボールのピッチが前記下限未満の場合には、パッケージ部品を実装することが困難であるばかりか、熱硬化性樹脂組成物の付着量の制御が難しいため、過度の付着によるはんだボールの接合不良となりやすい傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、はんだボールによる接合のみでもパッケージ部品と実装基板との接合強度を確保できるため、パッケージ部品の接合方法を採用する必要はない。
パッケージ部品1の大きさは特に限定されないが、例えば、パッケージ部品1の一辺の長さが5mm以上30mm以下となる大きさであることが好ましい。また、パッケージ部品1あたりのはんだボールの数は特に限定されないが、例えば、200個以上1000個以下であることが好ましい。
本発明に用いるはんだは特に限定されず、公知のはんだを適宜用いることができる。また、本発明に用いるはんだの融点も特に限定されないが、通常は、130℃以上250℃以下であることが好ましい。
【0012】
膜形成工程においては、
図1に示すように、厚み(T)がはんだボールの高さ寸法(H)に対して20%以上90%以下である樹脂組成物膜3を形成する。樹脂組成物膜の厚み(T)が前記下限未満では、パッケージ部品に付着する熱硬化性樹脂組成物の付着量が不足するためにパッケージ部品と実装基板との接合強度が不十分となり、他方、前記上限を超えると、パッケージ部品に付着する熱硬化性樹脂組成物の付着量が多過ぎるために、パッケージ部品を樹脂組成物膜から引き剥がすことができないといった問題が生じるおそれがある。
樹脂組成物膜3を形成する方法は特に限定されないが、熱硬化性樹脂組成物を支持体4上に塗布することにより、
図1に示すような、樹脂組成物膜3を形成する方法を採用することができる。このような場合に用いる塗布装置としては、例えば、ロールコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、ディップコーター、バーコーター、アプリケーター、スクリーン印刷機、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、グラビアコーターが挙げられる。これらの中でも、膜厚の均一性およびチップマウント装置への適用のしやすさという観点から、ロールコーター、ダイコーターがより好ましく、ロールコーターが特に好ましい。
【0013】
樹脂組成物付着工程においては、
図2に示すように、パッケージ部品1のはんだボール11を樹脂組成物膜3中に浸漬させて、熱硬化性樹脂組成物をはんだボール11に付着させる。
パッケージ部品1のはんだボール11を樹脂組成物膜3中に浸漬させる場合には、はんだボール11が支持体4に接触するようにすることが好ましい。このようにすれば、樹脂組成物膜3の厚みが均一であるために、はんだボール11に付着する熱硬化性樹脂組成物の付着量を均一にすることができる。
【0014】
搭載工程においては、
図3に示すように、熱硬化性樹脂組成物31が付着したパッケージ部品1を実装基板2の接合用ランド21上に搭載する。
実装基板2は、絶縁基材22と、絶縁基材22上に形成された接合用ランド21とを備えるものである。そして、この接合用ランド21上にパッケージ部品1など各種部品を搭載する。
搭載工程に用いる装置としては、公知のチップマウント装置を適宜用いることができる。なお、本発明においては、搭載工程の前に樹脂組成物付着工程を施す必要がある。そのため、搭載工程に用いる装置としては、部品をピックアップしてから実装基板2に搭載するまでの間に、樹脂組成物付着工程を施すことが可能な装置を用いることが好ましい。
接合用ランド21の材質としては、公知の導電性材料(銅、銀など)を適宜用いることができる。また、絶縁基材22としては、公知の絶縁基材(ガラスエポキシ基材、ポリイミド基材など)を適宜用いることができる。
【0015】
リフロー工程においては、パッケージ部品1が搭載された実装基板2を加熱することにより、はんだボール11を溶融させ、
図4に示すように、はんだボール11を実装基板の接合用ランド21に接合する。
リフロー工程に用いる装置としては、公知のリフロー炉を適宜用いることができる。
リフロー工程における加熱温度は、はんだの融点に応じて異なるために限定されないが、例えば、はんだの融点よりも10℃以上高いことが好ましく、はんだの融点よりも15℃以上高いことがより好ましい。
リフロー工程における昇温速度は、0.2℃/秒以上2.0℃/秒以下であることが好ましく、0.4℃/秒以上1.8℃/秒以下であることがより好ましい。昇温速度が前記下限未満では、はんだが溶融する前に熱硬化性樹脂組成物32が硬化してしまうおそれがあり、他方、前記上限を超えると、熱硬化性樹脂組成物32の濡れ広がりが不十分となる傾向にある。
【0016】
以上のような実施形態によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、パッケージ部品1のはんだボール11にのみ熱硬化性樹脂組成物31を付着させることができ、熱硬化性樹脂組成物31の付着量を均一にすることもできる。そのため、パッケージ部品1における熱硬化性樹脂組成物31の付着量が多過ぎるために、パッケージ部品1を樹脂組成物膜3から引き剥がすことができないといった問題が生じるおそれはなく、一方で、パッケージ部品1における熱硬化性樹脂組成物31の付着量が少な過ぎるために、パッケージ部品1と実装基板2との接合強度を確保することができないといった問題が生じるおそれはない。
また、リフロー工程での熱を利用して、
図3に示すように、パッケージ部品1のはんだボール11に付着した付着後の熱硬化性樹脂組成物31をはんだボール11に濡れ広がらせると共に、熱硬化性樹脂組成物31が濡れ広がった後には熱硬化性樹脂組成物31を硬化させて、
図4に示すような硬化後の熱硬化性樹脂組成物32とすることにより、パッケージ部品1と実装基板2との接合強度を確保することができる。
このようにして、アンダーフィル材などを用いて接合部分を補強しない場合でも、簡便な方法により、はんだボール11を有するパッケージ部品1と実装基板2との接合強度を確保することが可能となる。
【0017】
なお、前記実施形態においては、前記搭載工程前に、さらに、実装基板2の接合用ランド21上にソルダーペースト(図示せず)を印刷するソルダーペースト印刷工程を施してもよい。このような印刷工程により、はんだボール11を有するパッケージ部品1と実装基板2との接合強度をさらに向上させることができる。
このような場合に用いるソルダーペーストとしては、公知のソルダーペーストを適宜用いることができる。
【0018】
次に、本発明の熱硬化性樹脂組成物について説明する。すなわち、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、前記パッケージ部品の接合方法に用いる熱硬化性樹脂組成物であって、エポキシ樹脂と、有機酸と、チクソ剤とを含有し、かつ前記エポキシ樹脂はダイマー酸型エポキシ樹脂を含有するものである。
【0019】
本発明に用いるエポキシ樹脂は、ダイマー酸型エポキシ樹脂を含有することが必要である。ダイマー酸型エポキシ樹脂としては、エポキシ樹脂とダイマー酸との重縮合物などが挙げられ、例えば、三菱化学社製のjER872、新日鐵化学社製のYD−171、YD−172が挙げられる。熱硬化性樹脂組成物が前記ダイマー酸型エポキシ樹脂を含有しない場合には、リフロー工程において熱硬化性樹脂組成物に過度の熱履歴がかかる場合に、パッケージ部品と実装基板との接合強度を確保することができない。
【0020】
前記ダイマー酸型エポキシ樹脂の含有量としては、熱硬化性樹脂組成物100質量%に対して、5質量%以上30質量%以下であることが好ましく、10質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。ダイマー酸型エポキシ樹脂の含有量が前記下限未満では、リフロー工程において熱硬化性樹脂組成物に過度の熱履歴がかかる場合の接合強度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、熱硬化性樹脂組成物によりはんだ接合が阻害されやすくなり、はんだボールによる接合がしにくくなる傾向にある。
【0021】
また、本発明では、前記ダイマー酸型エポキシ樹脂と、これ以外のエポキシ樹脂とを併用することが好ましい。
前記ダイマー酸型以外のエポキシ樹脂としては、公知のエポキシ樹脂を適宜用いることができる。前記ダイマー酸型以外のエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビフェニル型、ナフタレン型、クレゾールノボラック型、フェノールノボラック型、エステル型などのエポキシ樹脂が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、これらのエポキシ樹脂は、常温で液状のものを含有することが好ましく、常温で固形のものを用いる場合には、常温で液状のものと併用することが好ましい。また、これらのエポキシ樹脂の型の中でも、硬化物が落下衝撃に対し有効であり、更にはんだの融点時までにおけるリフロー処理過程において濡れ広がり性が良好という観点から、ナフタレン型、液状ビスフェノールA型、液状ビスフェノールF型、液状水添タイプのビスフェノールA型が好ましい。
【0022】
前記ダイマー酸型以外のエポキシ樹脂の含有量としては、熱硬化性樹脂組成物100質量%に対して、20質量%以上80質量%以下であることが好ましく、30質量%以上60質量%以下であることがより好ましい。エポキシ樹脂の含有量が前記下限未満では、パッケージ部品を固着させるために十分な強度が得られないため、落下衝撃に対する耐性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、熱硬化性樹脂組成物中の有機酸およびチクソ剤の含有量が減少し、エポキシ樹脂を硬化せしめる速度が遅延すると伴にリフロー過程において、パッケージ部品が位置ずれを起こし、導通不良となりやすい傾向にある。
【0023】
本発明に用いる有機酸としては、公知の有機酸を適宜用いることができる。このような有機酸の中でも、エポキシ樹脂との溶解性に優れるという観点、並びに保管中において結晶の析出が起こりにくいという観点から、アルキレン基を有する二塩基酸を用いることが好ましい。このようなアルキレン基を有する二塩基酸としては、例えば、アジピン酸、2,5−ジエチルアジピン酸、2,4−ジエチルグルタル酸、2,2−ジエチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、2−エチル−3−プロピルグルタル酸、セバシン酸が挙げられる。これらの中でも、アジピン酸が好ましい。
【0024】
前記有機酸の含有量としては、熱硬化性樹脂組成物100質量%に対して、1質量%以上25質量%以下であることが好ましく、5質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。有機酸の含有量が前記下限未満では、エポキシ樹脂を硬化せしめる速度が遅延することで硬化不良となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、熱硬化性樹脂組成物を硬化せしめてなる硬化膜の絶縁信頼性が低下する傾向にある。
【0025】
本発明に用いるチクソ剤としては、公知のチクソ剤を適宜用いることができる。このようなチクソ剤としては、例えば、脂肪酸アマイド、水添ヒマシ油が挙げられる。これらの中でも、パッケージ部品のはんだボールに熱硬化性樹脂組成物を付着させ、当該部品を接合用ランド上に搭載した際の付着性の観点から、脂肪酸アマイドが好ましい。
【0026】
前記チクソ剤の含有量としては、熱硬化性樹脂組成物100質量%に対して、0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましく、1質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。チクソ剤の含有量が前記下限未満では、チクソ性が得られず、パッケージ部品のはんだボールを樹脂組成物膜中に浸漬した際、熱硬化性樹脂組成物が十分付着しないばかりか、接合用ランド上に搭載した際の当該部品の付着力も低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、熱硬化性樹脂組成物がはんだボール上に濡れ広がりにくくなり、硬化膜の絶縁信頼性が低下する傾向にある。
【0027】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、単官能グリシジル基含有化合物をさらに含有することが好ましい。本発明の熱硬化性樹脂組成物においては、前記エポキシ樹脂の一部の代わりに、このような単官能グリシジル基含有化合物を用いることにより、熱硬化性樹脂組成物の硬化性等の諸特性を維持しつつ、熱硬化性樹脂組成物における粘度をより好適な範囲に調整することができる。
本発明に用いる単官能グリシジル基含有化合物としては、公知の単官能グリシジル基含有化合物を適宜用いることができる。このような単官能グリシジル基含有化合物としては、例えば、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルオクチルグリシジルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノグリシジルエーテル、エトキシポリエチレングリコールモノグリシジルエーテル、ブトキシポリエチレングリコールモノグリシジルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールモノグリシジルエーテル、p−ターシャリーブチルフェニルグリシジルエーテル、sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、n−ブチルフェニルグリシジルエーテル、フェニルフェノールグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、ジブロモクレジルグリシジルエーテルが挙げられる。これらの単官能グリシジル基含有化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、これらの単官能グリシジル基含有化合物の中でも、粘度の調整のしやすさの観点から、フェニルグリシジルエーテルが特に好ましい。
【0028】
前記単官能グリシジル基含有化合物を用いる場合、その含有量としては、熱硬化性樹脂組成物100質量%に対して、5質量%以上50質量%以下であることが好ましく、10質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。単官能グリシジル基含有化合物の含有量が前記下限未満では、熱硬化性樹脂組成物の粘度を調整するという効果が得られにくい傾向にあり、他方、前記上限を超えると、熱硬化性樹脂組成物の硬化性等の諸特性が低下する傾向にある。
【0029】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂硬化剤をさらに含有することが好ましい。
本発明に用いるエポキシ樹脂硬化剤としては、適宜公知の硬化剤を用いることができ、例えば、以下のようなものを用いることができる。
潜在性硬化剤としては、例えば、ノバキュアHX−3722、HX−3721、HX−3748、HX−3088、HX−3613、HX−3921HP、HX−3941HP(旭化成エポキシ社製、商品名)が挙げられる。
脂肪族ポリアミン系硬化剤としては、例えば、フジキュアFXR−1020、FXR−1030、FXR−1050、FXR−1080(富士化成工業社製、商品名)が挙げられる。
エポキシ樹脂アミンアダクト系硬化剤としては、例えば、アミキュアPN−23、PN−F、MY−24 、VDH、UDH、PN−31、PN−40(味の素ファインテクノ
社製、商品名)、EH−3615S、EH−3293S、EH−3366S、EH−3842、EH−3670S、EH−3636AS、EH−4346S(旭電化工業社製、商品名)が挙げられる。
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2P4MHZ、2MZA、2PZ、C11Z、C17Z、2E4MZ、2P4MZ、C11Z−CNS、2PZ−CNZ(以上、商品名)が挙げられる。
【0030】
前記エポキシ樹脂硬化剤の含有量としては、熱硬化性樹脂組成物100質量%に対して、0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以上8質量%以下であることがより好ましい。硬化剤の含有量が前記下限未満では、熱硬化性樹脂を硬化せしめる速度が遅延しやすい傾向にあり、他方、前記上限を超えると、反応性が速くなり、熱硬化性樹脂組成物の使用時間が短くなる傾向にある。
【0031】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、前記エポキシ樹脂、前記有機酸、前記チクソ剤、前記単官能グリシジル基含有化合物および前記エポキシ樹脂硬化剤以外に界面活性剤、カップリング剤、消泡剤、粉末表面処理剤、反応抑制剤、沈降防止剤などの添加剤を含有していてもよい。これらの添加剤の含有量としては、熱硬化性樹脂組成物100質量%に対して、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。添加剤の含有量が前記下限未満では、それぞれの添加剤の効果を奏しにくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、熱硬化性樹脂組成物による接合強度が低下する傾向にある。
【0032】
本発明の熱硬化性樹脂組成物においては、厚みが0.2mmの膜を形成した場合におけるタック力が2N/m
2以上14N/m
2以下であることが好ましく、4N/m
2以上12N/m
2以下であることがより好ましい。タック力が前記下限未満では、パッケージ部品をランド上に搭載した際、一時的に保持力が低下するため、リフロー工程中に位置ずれを起こしやすいばかりか、熱硬化性樹脂組成物のはんだボールへの付着量が不十分となるため、十分な接合強度が確保できなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、パッケージ部品に熱硬化性樹脂組成物を付着させる場合において、パッケージ部品を樹脂組成物膜から引き剥がすことができないといった問題が生じやすくなる。なお、タック力はJIS−Z3284に記載の方法に準拠して測定することができ、具体的には、タック力試験機(マルコ社製、商品名「TK−1」)および直径が5.1mmのテストプローブを用いて測定することができる。
【0033】
本発明の熱硬化性樹脂組成物においては、温度40℃における粘度(レオメーター粘度)が20Pa・s以上3000Pa・s以下であることが好ましい。温度40℃における粘度が20Pa・s未満では、パッケージ部品をランド上に搭載した際、一時的に保持力が低下するため、リフロー工程中に位置ずれを起こしやすいばかりか、熱硬化性樹脂組成物のはんだボールへの付着量が不十分となるため、十分な接合強度が確保できなくなる傾向にあり、他方、3000Pa・sを超えると、パッケージ部品に熱硬化性樹脂組成物を付着させる場合において、パッケージ部品を樹脂組成物膜から引き剥がすことができないといった問題が生じやすくなる。また、熱硬化性樹脂組成物のハンドリング性、および、はんだボールを有するパッケージ部品と実装基板との接合強度の観点から、温度40℃における粘度は、50Pa・s以上1000Pa・s以下であることがより好ましく、100Pa・s以上500Pa・s以下であることがより好ましい。なお、本発明における粘度は、粘弾性測定装置により測定することができる。具体的には、レオメーター(HAAKE社製、商品名「MARS−III」)を用いて、所定の条件により粘度を測定することができる。
【0034】
本発明の熱硬化性樹脂組成物においては、温度40℃からはんだの融点まで0.1℃/秒の昇温速度で昇温した場合における最低粘度が1Pa・s以下であることが好ましい。最低粘度が1Pa・sより高い場合では、はんだボールへの熱硬化性樹脂組成物の濡れ広がりが不十分となる傾向にある。また、はんだボールへの熱硬化性樹脂組成物の濡れ広がりの観点から、最低粘度が0.1Pa・s以上1Pa・s未満であることがより好ましい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物においては、温度40℃からはんだの融点まで0.1℃/秒の昇温速度で昇温した後のはんだの融点における粘度が10000Pa・s以上であることが好ましい。粘度が10000Pa・s以上であれば、熱硬化性樹脂組成物が十分に硬化していると判断できる。なお、このようにして、はんだの融点における粘度を測定する場合、粘度を安定して測定するために、熱硬化性樹脂組成物の温度を所定時間(例えば、10分間)一定に保持した後に測定してもよい。
【0035】
本発明の熱硬化性樹脂組成物においては、温度25℃におけるブルックフィールド粘度(BF粘度)が0.8×10
3mPa・s以上100×10
3mPa・s以下であることが好ましい。はんだボールを有するパッケージ部品と実装基板との接合強度の観点からは、温度25℃におけるBF粘度は、0.8×10
3mPa・s以上5×10
3mPa・s以下であることがより好ましい。
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物においては、チクソ比は、特に制限されないが、2以上4.5以下であることが好ましい。
【実施例】
【0036】
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例および比較例にて用いた材料を以下に示す。
エポキシ樹脂A:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名「EPICLON EXA−830LVP」、ADEKA社製
エポキシ樹脂B:グリシジルエステル型エポキシ樹脂、商品名「ARALDITE CY−184」、HUNTSMAN社製
エポキシ樹脂C:ダイマー酸型半固形エポキシ樹脂、商品名「jER872」、三菱化学社製
エポキシ樹脂D:ナフタレン型エポキシ樹脂、商品名「EPICLON HP−4032D」、DIC社製
単官能グリシジル基含有化合物:フェニルグリシジルエーテル、商品名「デナコール EX−141」、ナガセエレックス社製
エポキシ樹脂硬化剤:2-フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、商品名「キュアゾール2P4MHZ」、四国化成社製
チクソ剤:高級脂肪酸ポリアマイド、商品名「ターレンVA−79」、共栄社化学社製
有機酸:アジピン酸、関東電化工業社製
界面活性剤:商品名「BYK361N」、ビックケミージャパン社製
消泡剤:商品名「フローレンAC−303」、共栄社化学社製
【0037】
[実施例1]
エポキシ樹脂A40質量%、エポキシ樹脂B10質量%、エポキシ樹脂C10質量%、単官能グリシジル基含有化合物30質量%、エポキシ樹脂硬化剤1質量%、チクソ剤2質量%、有機酸5質量%、界面活性剤1質量%および消泡剤1質量%を容器に投入し、らいかい機を用いて混合して熱硬化性樹脂組成物を得た。
そして、得られた熱硬化性樹脂組成物を支持体上にアプリケーター(100μm用)にて塗布して樹脂組成物膜を得た。得られた樹脂組成物膜の厚みは0.2mmであった。
次に、チップマウント装置(YAMAHA社製、商品名「YV100Xg−F」)を用いて、BGAパッケージ(大きさ:17mm×17mm、はんだボールの高さ:0.3mm、はんだボールピッチ:0.5mm、はんだの融点:217℃、はんだの組成:96.5Sn/3Ag/0.5Cu)をピックアップし、BGAパッケージのはんだボールを得られた樹脂組成物膜中に浸漬させて、熱硬化性樹脂組成物をはんだボールに付着させた。なお、はんだボールの高さ寸法100%に対する樹脂組成物膜の厚みの比率は67%である。その後、熱硬化性樹脂組成物が付着したBGAパッケージを実装基板の接合用ランド上に搭載した。
次いで、BGAパッケージを搭載した実装基板をリフロー炉(タムラ製作所社製、商品名「TNP」)にて温度240℃に加熱することにより、はんだボールを溶融させ、BGAパッケージと実装基板とを接合した。
【0038】
[実施例2〜4]
表1に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、熱硬化性樹脂組成物を得た。また、得られた熱硬化性樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様にして、BGAパッケージと実装基板とを接合した。
【0039】
[比較例1〜6]
表2に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、熱硬化性樹脂組成物を得た。また、得られた熱硬化性樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様にして、BGAパッケージと実装基板とを接合した。
【0040】
<熱硬化性樹脂組成物およびパッケージ部品の接合部分の評価>
熱硬化性樹脂組成物の性能(タック力、レオメーター粘度、BF粘度、チクソ比)、パッケージ部品の搭載時の作業性、および、パッケージ部品と実装基板との接合部分の性能(抵抗値、落下衝撃回数)を以下のような方法で評価または測定した。得られた結果を表1および表2に示す。なお、比較例4および比較例6については、パッケージ部品の搭載時の作業性が不合格であったため、パッケージ部品と実装基板との接合部分の性能は測定できなかった。
(i)ブルックフィールド粘度(BF粘度)
ブルックフィールド社製の粘度計RVT型を用いて、スピンドル回転数50rpmで温度25℃における熱硬化性樹脂組成物のBF粘度を測定した。
(ii)チクソ比
ブルックフィールド社製の粘度計RVT型を用いて、スピンドル回転数5rpmで温度25℃における熱硬化性樹脂組成物のBF粘度(η5)、および、スピンドル回転数50rpmで温度25℃における熱硬化性樹脂組成物のBF粘度(η50)をそれぞれ測定した。そして、これらの測定値からチクソ比(η5/η50)を算出した。
(iii)タック力
タック力試験機(マルコ社製、商品名「TK−1」)および直径が5.1mmのテストプローブを用いて、JISZ3284に準拠し、樹脂組成物膜(厚み:0.2mm)のタック力を測定した。
(iv)レオメーター粘度
レオメーター(HAAKE社製、商品名「MARS−III」)を用いて、温度40℃か
らはんだの融点まで0.1℃/秒の昇温速度で昇温しつつ、熱硬化性樹脂組成物の粘度を測定した。得られた結果から、温度40℃における粘度、温度40℃からはんだの融点まで0.1℃/秒の昇温速度で昇温した場合における最低粘度、および、昇温後のはんだの融点における粘度を求めた。
(v)パッケージ部品の搭載時の作業性
チップマウント装置(YAMAHA社製、商品名「YV100Xg−F」)を用いて、パッケージ部品のはんだボールを樹脂組成物膜中に浸漬させた後に、樹脂組成物膜からパッケージ部品を剥がすことが可能か否かを評価した。樹脂組成物膜からパッケージ部品を剥がすことができる場合には「合格」と判定し、樹脂組成物膜からパッケージ部品を剥がすことができない場合には「不合格」と判定した。
(vi)抵抗値
デジタルマルチメーター(Agilent社製、商品名「34401A」)を用いて、パッケージ部品と実装基板との接合部分における抵抗値を測定した。なお、抵抗値が1000MΩ以上となったものについては「測定不可」と判定した。
(vii)リフロー2回後の抵抗値
熱硬化性樹脂組成物を用い、BGAパッケージを搭載した実装基板をリフロー炉(タムラ製作所社製、商品名「TNP」)にて2回連続で加熱(温度:240℃)することにより、はんだボールを溶融させ、BGAパッケージと実装基板とを接合したものを試料とした。得られた試料について、上記に記載の抵抗値の測定方法と同様の方法により、抵抗値を測定した。
(viii)落下衝撃回数
パッケージ部品を実装基板に接合したものを試料として、次にようにして落下衝撃回数を測定した。すなわち、治具に試料を固定し、導通配線(抵抗値測定用)を接続すると共に、デジタルマルチメーター(Agilent社製、商品名「34401A」)を用いて、初期抵抗値を測定した。そして、試料を高さ100cmより落下させて衝撃を与えている間の抵抗値を測定するという作業を繰り返した。落下中の抵抗値が初期抵抗値の4倍になるまでの回数を落下衝撃回数とした。また、前記抵抗値が1000MΩ以上のものについては「測定不可」と判定した。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
表1および表2に示す結果からも明らかなように、本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いた場合(実施例1〜8)には、リフロー工程を2回連続で行うような、過度の熱履歴がかかる場合でも、パッケージ部品と実装基板との接合強度を確保することができることが確認された。これに対し、ダイマー酸型エポキシ樹脂を含有しない熱硬化性樹脂組成物を用いた場合(比較例1〜7)には、リフロー2回後の抵抗値が測定不可であり、パッケージ部品と実装基板との接合が確保できないことが確認された。