(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5869916
(24)【登録日】2016年1月15日
(45)【発行日】2016年2月24日
(54)【発明の名称】光硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 75/04 20160101AFI20160210BHJP
C08L 81/02 20060101ALI20160210BHJP
C09J 181/02 20060101ALI20160210BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20160210BHJP
C08K 5/32 20060101ALI20160210BHJP
C08K 5/54 20060101ALI20160210BHJP
【FI】
C08G75/04
C08L81/02
C09J181/02
C08K5/13
C08K5/32
C08K5/54
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-47424(P2012-47424)
(22)【出願日】2012年3月2日
(65)【公開番号】特開2013-181145(P2013-181145A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2015年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中山 佑太
(72)【発明者】
【氏名】三原 英裕
【審査官】
中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−208217(JP,A)
【文献】
特開2008−184514(JP,A)
【文献】
特開2002−201230(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第01275668(EP,A1)
【文献】
特開平11−071458(JP,A)
【文献】
米国特許第06224976(US,B1)
【文献】
特開平03−269019(JP,A)
【文献】
米国特許第05358976(US,A)
【文献】
特開2012−017448(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/155239(WO,A1)
【文献】
特表平08−504879(JP,A)
【文献】
米国特許第05459173(US,A)
【文献】
特開2011−046773(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0157564(US,A1)
【文献】
特表平07−509754(JP,A)
【文献】
米国特許第05516455(US,A)
【文献】
国際公開第2010/027041(WO,A1)
【文献】
特開平11−326925(JP,A)
【文献】
特開平11−021352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 75/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)ポリエン、(2)ポリチオール、(3)光重合開始剤及び(4)ポリフェノール系酸化防止剤を含有してなる光硬化性樹脂組成物であり、(1)ポリエンが、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート及びマレイン酸ジアリルからなる群から選ばれる1種以上であり、(4)ポリフェノール系酸化防止剤が、N,N’−ヘキサメチレン−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゼンプロピオンアミド)及び1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンからなる群から選ばれる1種以上であり、(1)ポリエン中の炭素−炭素二重結合基と(2)ポリチオール中のチオール基とが、モル比で5:1〜1:5であり、(3)光重合開始剤の使用量が、ポリエンとポリチオールの合計100質量部に対して、0.001〜10質量部であり、(4)ポリフェノール系酸化防止剤の使用量が、ポリエンとポリチオールの合計100質量部に対して、0.1〜0.5質量部である光硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
(2)ポリチオールが、メルカプトカルボン酸と多価アルコールとのエステル類である請求項1記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
更に、(5)N−ニトロソアリールヒドロキシルアミン塩を含有してなる請求項1〜2のうちの1項記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
(5)N−ニトロソアリールヒドロキシルアミン塩の使用量が、ポリエンとポリチオールの合計100質量部に対して、0.00001〜1.0質量部である請求項3項記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
更に、(6)シランカップリング剤を含有してなる請求項1〜4のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
(6)シランカップリング剤の使用量が、ポリエンとポリチオールの合計100質量部に対して、0.05〜5質量部である請求項5項記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物からなる接着剤。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物を使用し、被着体を接着してなる接合体。
【請求項9】
被着体が透明基材である請求項8記載の接合体。
【請求項10】
(1)ポリエン、(3)光重合開始剤及び(4)ポリフェノール系酸化防止剤を予め混合させた後、(2)ポリチオールを混合する請求項1〜6のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物の調製方法。
【請求項11】
(1)ポリエン、(3)光重合開始剤、(4)ポリフェノール系酸化防止剤及び(5)N−ニトロソアリールヒドロキシルアミン塩を予め混合させた後、(2)ポリチオール及び(6)シランカップリング剤を混合する請求項5、又は6記載の光硬化性樹脂組成物の調製方法。
【請求項12】
予め混合する際、混合温度が、10〜150℃である請求項10〜11のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯蔵安定性が良いポリエン・ポリチオール系の光硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエン、ポリチオール及び光重合開始剤からなるポリエン・ポリチオール系の光硬化性樹脂組成物は、塗料、接着剤及びシーラント等に使用されている(特許文献1)。光硬化性樹脂組成物は1液型であるため、使用に際して主剤と硬化剤とを混合する手間が省け、光の照射により数秒から数分の短時間で硬化するという特徴を有する。
【0003】
光硬化性樹脂組成物は、貯蔵安定性を向上するために、酸化防止剤を添加する(特許文献2)。光硬化性樹脂組成物が、ポリエンとポリチオールを単に混合、放置しても、粘度が上昇しないように、酸化防止剤を添加する。しかし、特許文献1記載の酸化防止剤は、モノフェノール系酸化防止剤であり、ポリフェノール系酸化防止剤ではない。 特許文献2記載の酸化防止剤は、ハイドロキノンであり、ポリフェノール系酸化防止剤ではない。
【0004】
ポリエン・ポリチオール系の光硬化性樹脂組成物の粘度上昇を解決する方法として、組成物の酸価を3以下にする方法が提案されている(特許文献3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭63−20255号公報
【特許文献2】特開平6−25417号公報
【特許文献3】特開平6−306172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3の方法でも貯蔵安定性が悪く、例えば40℃といった高温下でポリエンとポリチオールを単に混合し放置すると粘度が急激に上昇してしまうという課題があった。
【0007】
本発明者は、鋭意検討した結果、上記の貯蔵安定性を改善するために、ポリフェノール系酸化防止剤を使用することを見出し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(1)ポリエン、(2)ポリチオール、(3)光重合開始剤及び(4)ポリフェノール系酸化防止剤を含有してなる光硬化性樹脂組成物であり、(1)ポリエンが、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート及びマレイン酸ジアリルからなる群から選ばれる1種以上である該光硬化性樹脂組成物であり、
(4)ポリフェノール系酸化防止剤が、N,N’−ヘキサメチレン−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゼンプロピオンアミド)及び1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンからなる群から選ばれる1種以上であり、(1)ポリエン中の炭素−炭素二重結合基と(2)ポリチオール中のチオール基とが、モル比で5:1〜1:5であり、(3)光重合開始剤の使用量が、ポリエンとポリチオールの合計100質量部に対して、0.001〜10質量部であり、(4)ポリフェノール系酸化防止剤の使用量が、ポリエンとポリチオールの合計100質量部に対して、0.1〜0.5質量部である光硬化性樹脂組成物であり、(2)ポリチオールが、メルカプトカルボン酸と多価アルコールとのエステル類である該光硬化性樹脂組成物であり、更に、(5)N−ニトロソアリールヒドロキシルアミン塩を含有してなる該光硬化性樹脂組成物であり、
(5)N−ニトロソアリールヒドロキシルアミン塩の使用量が、ポリエンとポリチオールの合計100質量部に対して、0.00001〜1.0質量部である該光硬化性樹脂組成物であり、更に、(6)シランカップリング剤を含有してなる該光硬化性樹脂組成物であり、
(6)シランカップリング剤の使用量が、ポリエンとポリチオールの合計100質量部に対して、0.05〜5質量部である該光硬化性樹脂組成物であり、該光硬化性樹脂組成物からなる接着剤であり、該光硬化性樹脂組成物を使用し、被着体を接着してなる接合体であり、被着体が透明基材である該接合体であり、(1)ポリエン、(3)光重合開始剤及び(4)ポリフェノール系酸化防止剤を予め混合させた後、(2)ポリチオールを混合する該光硬化性樹脂組成物の調製方法であり、(1)ポリエン、(3)光重合開始剤、(4)ポリフェノール系酸化防止剤及び(5)N−ニトロソアリールヒドロキシルアミン塩を予め混合させた後、(2)ポリチオール及び(6)シランカップリング剤を混合する該光硬化性樹脂組成物の調製方法であ
り、予め混合する際、混合温度が、10〜150℃である該光硬化性樹脂組成物の調製方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、貯蔵安定性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に用いる(1)ポリエンとは、1分子中に2個以上の炭素−炭素二重結合を有する多官能性の化合物をいう。ポリエンとしては、アリルアルコール誘導体、(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル類、ウレタン(メタ)アクリレート及びジビニルベンゼン等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0011】
アリルアルコール誘導体としては、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、マレイン酸ジアリル、ジアリルフマレート、ジアリルアジペート、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、テトラアリルピロメリテート、グリセリンジアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル及びソルビトールジアリルエーテル等が挙げられる。
【0012】
(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル類の中で、多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4‐ブタンジオール、1,6‐ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール及びソルビトール類が挙げられる。
【0013】
これらの中では、ポリチオールとの反応性の点で、アリルアルコール誘導体が好ましく、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート及びジアリルマレエートからなる群から選ばれる1種以上がより好ましく、トリアリルイソシアヌレートが最も好ましい。
【0014】
本発明に用いる(2)ポリチオールとは、1分子中に2個以上のチオール基を有する多官能性の化合物をいう。ポリチオールとしては、メルカプトカルボン酸と多価アルコールとのエステル類、脂肪族ポリチオール類及び芳香族ポリチオール類等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0015】
メルカプトカルボン酸と多価アルコールとのエステル類の中で、メルカプトカルボン酸としては、チオグリコール酸、α‐メルカプトプロピオン酸及びβ‐メルカプトプロピオン酸等が挙げられる。
【0016】
メルカプトカルボン酸と多価アルコールとのエステル類の中で、多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4‐ブタンジオール、1,6‐ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール及びソルビトール等が挙げられる。
【0017】
脂肪族ポリチオール類及び芳香族ポリチオール類としては、エタンジチオール、プロパンジチオール、ヘキサメチレンジチオール、デカメチレンジチオール、トリレン‐2,4‐ジチオール及びキシレンジチオール等が挙げられる。
【0018】
これらの中では、臭気が少ない点で、メルカプトカルボン酸と多価アルコールとのエステル類が好ましい。メルカプトカルボン酸と多価アルコールとのエステル類としては、トリメチロールプロパン−トリス(3−メルカプトプロピオナート)が好ましい。
【0019】
本発明の光硬化性樹脂組成物において、ポリチオールを併用した場合のポリエンとポリチオールの使用割合は、ポリエン中の炭素−炭素二重結合基とポリチオール中のチオール基とが、モル比で5:1〜1:5であることが好ましく、2:1〜1:2であることがより好ましい。
【0020】
本発明に用いる(3)光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、オルソベンゾイル安息香酸メチル及び4−ベンゾイル‐4’−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン系光重合開始剤、アセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ‐2‐メチル−1−フェニルプロパン−1−オン及び2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン等のアセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル及びベンゾインイソブチルエーテル類のベンゾインエーテル系光重合開始剤、イソプロピルチオキサントンやジエチルチオキサントン等のチオキサントンアシルホスフィンオキサイド、ベンジル、カンファーキノン、アントラキノン並びにミヒラーケトン等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0021】
これらの中では、耐黄変性の点で、ベンゾインエーテル系光重合開始剤が好ましく、ベンゾインエチルエーテルがより好ましい。
【0022】
光重合開始剤の使用量は、ポリエンとポリチオールの合計100質量部に対して、0.001〜10質量部が好ましく、0.05〜5質量部がより好ましい。
【0023】
本発明に用いる(4)ポリフェノール系酸化防止剤は、フェノール構造を2個以上有するものである。ポリフェノール系酸化防止剤は、ビスフェノール系酸化防止剤やトリフェノール系酸化防止剤等を含有する。ポリフェノール系酸化防止剤としては、2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゼンプロピオンアミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、トリエチレングリコールビス[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス−[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、ビス[3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチルフェニル)ブチリックアシド]グリコールエステル等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0024】
これらの中では、ヒンダードフェノール類が好ましく、2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、N,N’−ヘキサメチレン−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゼンプロピオンアミド)及び1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンからなる群から選ばれる1種以上がより好ましく、N,N’−ヘキサメチレン−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゼンプロピオンアミド)及び1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンからなる群から選ばれる1種以上が最も好ましく、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンが更に好ましい。
【0025】
酸化防止剤の使用量は、貯蔵安定性と接着性の点で、ポリエンとポリチオールの合計100質量部に対して、0.1〜0.5質量部が好ましく、0.1〜0.3質量部がより好ましい。
【0026】
本発明は、反応速度制御の点で、(5)N−ニトロソアリールヒドロキシルアミン塩を使用しても良い。(5)N−ニトロソアリールヒドロキシルアミン塩としては、N−ニトロソフェニル・ヒドロキシルアミンのアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、ストロンチウム、アルミニウム塩、銅塩、亜鉛塩、セリウム塩、鉄塩、ニッケル塩及びコバルト塩等が挙げられる。これらの中では、N−ニトロソフェニル・ヒドロキシルアミンアンモニウム塩が好ましい。
【0027】
(5)N−ニトロソアリールヒドロキシルアミン塩の使用量は、反応速度制御と接着性の点で、ポリエンとポリチオールの合計100質量部に対して、0.00001〜1.0質量部が好ましく、0.0005〜0.01質量部がより好ましい。
【0028】
本発明は、接着性向上の点で、(6)シランカップリング剤を使用しても良い。(6)シランカップリング剤としては、ビニル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ガンマメタクロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−グリドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらの中では、接着強度向上の点で、ビニル−トリス(2−メトキシエトキシ)シランが好ましい。
【0029】
(6)シランカップリング剤の使用量は、接着性の点で、ポリエンとポリチオールの合計100質量部に対して、0.05〜5質量部が好ましく、0.1〜2質量部がより好ましい。
【0030】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、硬化促進剤、染料、顔料、充填剤、チキソトロピー付与剤、可塑剤、界面活性剤、滑剤、帯電防止剤などの添加剤を加えることができる。
【0031】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、光の照射により、ポリエンとポリチオールとが重合して、例えば、数秒から数分の短時間で硬化する。光源としては、超高圧、高圧及び低圧の水銀灯や、メタルハライドランプによる紫外線等が用いられる。
【0032】
本発明は、(1)ポリエン、(3)光重合開始剤、(4)ポリフェノール系酸化防止剤、必要に応じて(5)N−ニトロソアリールヒドロキシルアミン塩を予め混合させた後、(2)ポリチオールと必要に応じて(6)シランカップリング剤を混合して光硬化性樹脂組成物を製造することが好ましい。(1)ポリエン、(3)光重合開始剤、(4)ポリフェノール系酸化防止剤、必要に応じて(5)N−ニトロソアリールヒドロキシルアミン塩を予め混合する際、混合温度は、10〜150℃が好ましく、30〜80℃がより好ましい。
【0033】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、塗料、接着剤及びシーラント等に使用できる。接着剤として使用する場合、被着体は、光を透過しやすい点で、透明ガラスや透明プラスチック等の透明基材が好ましい。
【実施例】
【0034】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。各物質の使用量の単位は質量部で示す。主な実験条件、各種物性の測定方法は次の通りである。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。特記しない限り、23℃で実施した。
【0035】
(実施例1〜5及び比較例1)
光硬化性樹脂組成物は以下の手順により調製した。各成分の配合量を表1に示す。撹拌機を備えたフラスコに、トリアリルイソシアネート、ベンゾインエチルエーテル、表1に示す酸化防止剤、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン・アルミニウム塩を仕込み、60℃で1時間撹拌した。撹拌後、30℃以下迄冷却し、トリメチロールプロパン−トリス(3−メルカプトプロピオナート)、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シランを加え、更に1時間撹拌を続けて光硬化性樹脂組成物を得た。得られた光硬化性樹脂組成物について、常温(23℃)保管における粘度の上昇率評価試験と接着試験を実施した。所定期間保管後の粘度を表2に示した。所定期間保管後の粘度上昇率を表3に示した。接着強さを表4に示した。
酸化防止剤として、以下の化合物を使用した。
【0036】
2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール
【化1】
【0037】
2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)
【化2】
【0038】
N,N’−ヘキサメチレン−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゼンプロピオンアミド)
【化3】
【0039】
1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン
【化4】
【0040】
【表1】
【0041】
〔粘度・粘度上量率〕
表1の配合量で各物質を混合して光硬化性樹脂組成物を調製した。得られた光硬化性樹脂組成物を、23℃に温度管理されたクリーンルーム内にて所定期間保管した。
所定期間保管後、温度25℃の条件下で、E型粘度計(3度コーン、コーン角度20°、10rpm)を使用し、JIS K7117に準拠し、測定を行った。測定値として、測定を開始してから2分後の値を採用した。
粘度上量率は以下に従い、測定した。
粘度上量率:A={(Vf−Vi)/Vi}×100(%)
調製直後の粘度:Vi
所定期間保管後の粘度:Vf
粘度上量率:A
【0042】
〔接着強度〕
表1の配合量で各物質を混合して光硬化性樹脂組成物を調製した。
測定条件は以下の通りである。
接着剤:測定開始より60日後のサンプルを使用した。
被着体:硼珪酸ガラス(ショット社製、商品名「テンパックス」、幅25mm×長さ25mm×厚さ2mm)
紫外線照射機:フュージョン社製ベルトコンベア式照射機
照射強度:2000mJ/cm
2×両面(表・裏)
引張試験機:インストロン4467(INSTRON社製、引張速度10mm/min)
測定環境:23℃、相対湿度50%
測定方法は以下の順序に従った。
(1)ガラスをアセトンに浸し、超音波洗浄を15分間行った。
(2)1枚のガラスに接着剤を適量滴下し、もう1枚のガラスと貼り合わせて固定した。
(3)紫外線照射機を使用し硬化させた。照射はガラスの両面より行った。
(4)硬化させた被着体を引張試験機にセットし、剪断接着強さの測定を行った。被着体3個の接着強さを測定し、平均値を算出した。
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
【表4】
【0046】
表より、以下のことを確認した。本発明の光硬化性樹脂組成物は、粘度の急激な上昇がなく、大きな粘度上昇抑制効果が得られ、接着性が良好であった。ポリフェノール系酸化防止剤は、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンがより好ましいことを確認した。酸化防止剤の使用量は、貯蔵安定性と接着性の点で、0.1〜0.3質量部がより好ましいことを確認した。ポリフェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤を使用した場合、本発明の効果が得られないことを確認した(比較例1)。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のポリフェノール系酸化防止剤を用いた光硬化性樹脂組成物は、23℃条件下で粘度の急激な上昇がなく、貯蔵安定性が良い。又、モノフェノール系酸化防止剤を用いる場合よりも、大きな粘度上昇抑制効果が得られる。そのため、製品のバラツキも少なくなることから、産業上極めて有用である。