(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記探索期間設定部によって設定された探索期間における前記心筋興奮の波形を探索する条件は、当該探索期間内の前記候補波形が有する最大P−P値に基づいていることを特徴とする請求項1に記載の心筋興奮波形検出装置。
前記興奮波形検出部によって検出された複数の心筋興奮の波形に基づいて当該心筋興奮が伝導される平均伝導時間を算出する平均伝導時間算出部を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の心筋興奮波形検出装置。
心房細動発生中に測定された心内心電図の予め設定された波形解析期間内に発生した波形の大きさを計測し、所定の条件に適合した波形を心筋興奮の候補波形として取得する波形取得手順と、
前記候補波形として最初に取得した波形の前記発生時から予め設定された期間を心筋興奮探索期間とし、当該心筋興奮探索期間内の最大P−P値を有する候補波形を心筋興奮の波形として検出する心筋興奮検出手順と、
前記探索期間内において前記心筋興奮の波形として検出した候補波形の前記発生時から予め設定された期間を波形検出除外期間とし、当該波形検出除外期間内において、前記心筋興奮として検出された候補波形の後に続く候補波形を心筋興奮の波形として検出しない心筋興奮除外手順と、
をコンピュータに実行させるようにしたことを特徴とする心筋興奮波形検出プログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このCFE−mean算出アルゴリズムは、心房細動中である心臓の心房内の心内心電図から心筋興奮を検出し、検出した複数の心筋興奮からその平均伝導時間を算出するものである。まず、心内心電図から所定期間内の波形データを取得し、取得した波形に対して波形の外形条件を適用して条件に適合した波形を心筋興奮の波形として検出する。次に、心筋興奮の波形を検出した後の所定期間を心筋興奮検出除外期間として設定し、この除外期間(非特許文献1ではRefractoryと称されている)に発生した心筋興奮の波形は検出を行わずに除外する。そして、除外期間の経過後に再度、上記外形条件を適用して条件に適合した波形を心筋興奮の波形として検出し、検出した心筋興奮の波形から平均伝導時間を算出する。
【0006】
しかしながら、非特許文献1に開示された心筋興奮の平均伝導時間を算出する方法では、波形の外形を適合条件としているため、例えばノイズが発生してこのノイズ波形が外形条件に適合する場合には、ノイズ波形を心筋興奮の波形として検出してしまうという不具合があった。このため、ノイズ波形を心筋興奮の波形として検出した場合、その検出後の除外期間に発生した真の心筋興奮を検出することができなかったり、あるいはノイズ波形を心筋興奮の波形として検出し、さらに心筋興奮による波形も検出して、結果的にノイズと心筋興奮とのダブルカウントとなってしまうこともあった。したがって、これでは平均伝導時間を正確に算出することができず、リエントリを発生させている部位の心臓内における存在箇所を正しく特定することができない虞があった。
【0007】
そこで、本発明は、このような課題を鑑みてなされたものであり、心筋興奮の波形の検出精度を向上させて、心筋興奮の平均伝導時間をより正確に算出する心筋興奮波形検出装置、および検出プログラムの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る第1発明の心筋興奮波形検出装置は、心房細動発生中に測定された心内心電図から、予め設定されている波形解析期間内の波形を取得する波形取得部と、
前記波形取得部によって取得された前記波形解析期間内の波形の中から、心筋に興奮が発生していることを示す心筋興奮の波形を検出するための条件を設定する波形検出条件設定部と、
前記波形検出条件設定部によって設定された条件に基づいて、前記波形解析期間内の波形の中から心筋興奮の波形を検出する興奮波形検出部と、
を備え、
前記波形検出条件設定部は、
前記心筋興奮の波形の候補波形を検出するために波形の外形に基づいた条件を設定する候補波形検出条件設定部と、
前記波形の外形に基づいた条件で検出された前記候補波形から心筋興奮の波形を探索するための探索期間を設定する探索期間設定部と、
前記候補波形から心筋興奮の波形を検出した場合、当該検出後の予め設定された期間を、前記候補波形を心筋興奮の波形として検出しない検出除外期間として設定する検出除外期間設定部と、
を備えることを特徴とするものである。
【0009】
第1発明の心筋興奮波形検出装置によれば、心筋興奮の波形とノイズ波形との誤検出およびダブルカウントを削減させ、心筋興奮の波形の検出精度を向上させることができる。
【0010】
また、第2発明の心筋興奮波形検出装置は、第1発明の心筋興奮波形検出装置において、前記探索期間設定部によって設定された探索期間における前記心筋興奮の波形を探索する条件は、当該探索期間内の前記候補波形が有する最大P−P値に基づいていることを特徴とするものである。
【0011】
第2発明の心筋興奮波形検出装置によれば、最も近位の波形を心筋興奮の波形とするため、第1発明よりもさらに心筋興奮の波形とノイズ波形との誤検出を削減させることができ、心筋興奮の波形の検出精度を向上させることができる。
【0012】
また、第3発明の心筋興奮波形検出装置は、第1又は第2発明の心筋興奮波形検出装置において、前記探索期間設定部は、前記探索期間を前記検出除外期間よりも短く設定していることを特徴とするものである。
【0013】
第3発明の心筋興奮波形検出装置によれば、さらに心筋興奮の波形とノイズ波形との誤検出を削減させることができる。
【0014】
また、第4発明の心筋興奮波形検出装置は、第1から第3発明のいずれかの心筋興奮波形検出装置において、前記興奮波形検出部によって検出された複数の心筋興奮の波形に基づいて当該心筋興奮が伝導される平均伝導時間を算出する平均伝導時間算出部を備えることを特徴とするものである。
【0015】
第4発明の心筋興奮波形検出装置によれば、第1から第3の発明の効果に加えて、心筋興奮の平均伝導時間を正確に算出することができ、リエントリ発生部位の位置を正しく特定することができる。
【0016】
また、第5発明の心筋興奮波形検出プログラムは、心房細動発生中に測定された心内心電図の予め設定された波形解析期間内に発生した波形の大きさを計測し、所定の条件に適合した波形を心筋興奮の候補波形として取得する波形取得手順と、
前記候補波形として最初に取得した波形の前記発生時から予め設定された期間を心筋興奮探索期間とし、当該心筋興奮探索期間内の最大P−P値を有する候補波形を心筋興奮の波形として検出する心筋興奮検出手順と、
前記心筋興奮の波形として検出した候補波形の前記発生時から予め設定された期間を波形検出除外期間とし、当該波形検出除外期間内の候補波形を心筋興奮の波形として検出しない心筋興奮除外手順と、
をコンピュータに実行させるようにしたことを特徴とするものである。
【0017】
第5発明の心筋興奮波形検出プログラムによれば、心筋興奮の波形とノイズ波形との誤検出およびダブルカウントを削減させ、心筋興奮の波形の検出精度を向上させることができる。
【0018】
また、第6発明の心筋興奮波形検出プログラムは、第5発明の心筋興奮波形検出プログラムにおいて、前記波形検出除外期間の経過後に、前記心筋興奮検出手順、および前記心筋興奮除外手順を繰り返し行う手順と、
検出した複数の心筋興奮の波形に基づいて当該心筋興奮が伝導される平均伝導時間を算出する平均伝導時間算出手順と、
をコンピュータに実行させるようにしたことを特徴とするものである。
【0019】
第6発明の心筋興奮波形検出プログラムによれば、第5発明の効果に加えて、心筋興奮の平均伝導時間を正確に算出することができ、リエントリ発生部位の位置を正しく特定することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、心筋興奮の波形とノイズ波形との誤検出およびダブルカウントを抑制して心筋興奮の波形の検出精度を向上させることができる。また、心筋興奮の平均伝導時間をより正確に算出することができ、リエントリ発生部位の位置を正しく特定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る心筋興奮波形検出装置の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示す心筋興奮波形検出装置1は、測定された心内心電図波形から所定の条件に適合する波形を取得する波形取得部2と、心筋興奮の波形を検出するための諸条件を設定する波形検出条件設定部3と、波形検出条件設定部3によって設定された条件に基づいて心筋興奮の波形を検出する興奮波形検出部4と、心筋興奮が伝導される平均伝導時間を算出する平均伝導時間算出部9と、これらの各部を制御する制御部5を備えている。
【0023】
また、波形検出条件設定部3は、心筋興奮の波形の候補波形を検出するための条件を設定する候補波形検出条件設定部6と、候補波形の中から心筋興奮の波形を探索するための探索期間を設定する探索期間設定部7と、候補波形を心筋興奮の波形として検出しないための検出除外期間を設定する検出除外期間設定部8を備えている。
【0024】
また、
図1に示す15は、心房内の心内心電図が測定されている心臓を模式的に示したものであり、末梢血管から心臓カテーテル16が心房内に挿入されて、心臓カテーテル16に付設されている電極(図示せず)により心内心電図波形が取得される。取得された心内心電図波形のデータは、心臓カテーテル16を介して心筋興奮波形検出装置1に送られ、心筋興奮波形検出装置1の波形取得部2によって取得される。
【0025】
波形取得部2は、制御部5から送信される波形取得制御信号に基づいて心内心電図波形のデータを取得する。波形取得制御信号には心内心電図波形データを取得するタイミング、取得期間等の制御信号が含まれている。本発明の波形解析期間は、心内心電図波形データの取得期間の一例であり、予め設定された波形解析期間が取得期間の制御信号として制御部5から波形取得部2へ送信される。この制御信号を受信した波形取得部2は、取得タイミングから波形解析期間内の心内心電図波形データを取得する。取得された心内心電図波形データは、興奮波形検出部4へ送信されるとともに、制御部5に搭載されているRAM12に記憶保持される。
【0026】
波形検出条件設定部3は、波形取得部2によって取得された心内心電図波形データ取得期間内(例えば、波形解析期間内)の波形の中から、心筋に興奮(興奮波の電気信号)が発生していることを示す心筋興奮の波形を検出するための条件を設定する。
【0027】
波形検出条件設定部3に具備された候補波形検出条件設定部6は、心筋興奮の波形の候補波形を検出するために、波形の外形に関するデータに基づいて検出条件を設定する。例えば、波形解析期間内に存在する心内心電図波形が示す電位の横幅と縦幅に関するデータを検出条件として設定する。
図2(a)に示す波形は、取得された心内心電図波形データの一例を示すものであり、検出条件として設定される波形(電位)の横幅および縦幅は、それぞれ矢印幅d1およびh1のように定められている。具体的には、例えば、心内心電図波形の横幅d1が10msec以下、縦幅h1が0.1mV以上であることを心筋興奮の波形の候補波形を検出するための検出条件として設定する。設定された候補波形検出条件としての波形の外形に関するデータは、制御部5へ送信され制御部5に搭載されているRAM12に記憶保持される。
【0028】
候補波形検出条件としての波形の外形に関するデータは、制御部5から興奮波形検出部4へ送信される。興奮波形検出部4は、候補波形検出条件に適合する波形を、波形取得部2が取得した心内心電図波形データの中から検出し、検出した波形を心筋興奮の候補波形として決定する。
【0029】
波形検出条件設定部3に具備された探索期間設定部7は、候補波形検出条件設定部6によって設定された波形の外形に関するデータに基づく検出条件に適合し、心筋興奮の候補波形として興奮波形検出部4によって検出された心内心電図波形の中から、心筋興奮の波形を探索するために探索期間を設定する。探索期間は、ノイズ波形を心筋興奮の波形として検出する誤検出を抑制するために設定される期間である。探索期間は、検出除外期間(後述する)よりも短い期間に設定される。設定された探索期間に関するデータは制御部5に送信され、制御部5に搭載されているRAM12に記憶保持される。
【0030】
また、探索期間に関するデータは、制御部5から興奮波形検出部4へ送信される。興奮波形検出部4は、探索期間内に存在している心筋興奮の候補波形の最大P−P値(波形の正の最も高い値から、負の最も高い値までの値のこと)を測定する。測定された最大P−P値に基づくデータが、心筋興奮の波形を探索する条件として設定される。具体的には、探索期間内に存在する心筋興奮の候補波形の中で最大P−P値を有する候補波形を探索することが条件として設定される。そして、興奮波形検出部4は、探索により検出された最大P−P値を有する候補波形を心筋興奮の波形として確定する。このように探索期間を設定することにより、探索期間内に複数の候補波形が存在する場合には、最大P−P値を有する候補波形のみを心筋興奮の波形として確定することができるので、ノイズ波形を心筋興奮の波形として検出する誤検出を抑制することができる。
【0031】
また、確定された心筋興奮の波形に関するデータは制御部5に送信され、制御部5に搭載されているRAM12に記憶保持される。
図2(b)は、設定された探索期間を模式的に表した図である。興奮波形検出部4によって最初に検出された心筋興奮の候補波形21のピーク(○印)22から□印23までの矢印24の期間を探索期間として設定する。この期間内に存在する最大P−P値を有する候補波形を心筋興奮の波形として確定する。
図2(b)の場合には、探索期間24内に一つの候補波形21のみが存在するため、この候補波形21が心筋興奮の波形として確定される。
【0032】
波形検出条件設定部3に具備された検出除外期間設定部8は、興奮波形検出部4によって検出された候補波形の中から心筋興奮の波形を検出した場合に、検出後の予め設定された期間を心筋興奮の検出を行わない検出除外期間として設定する。検出除外期間は、ノイズ波形を含む候補波形のダブルカウントを防止するために設けられた期間である。検出除外期間は、心臓の局所活性を行う周期を生理学的に判断して例えば50msecに設定することができる。
【0033】
設定された検出除外期間に関するデータは制御部5に送信され、制御部5に搭載されているRAM12に記憶保持される。
図2(c)は、設定された検出除外期間を模式的に表した図である。興奮波形検出部4によって確定された心筋興奮の波形25のピーク(○印)26から△印27までの矢印28の期間を検出除外期間として設定する。この期間内に存在する心筋興奮の候補波形は、解析対象から除外する。
図2(c)の場合には、検出除外期間28内に心筋興奮の波形25のみが存在し、それ以外に候補波形は存在しないので、解析除外となる対象波形も存在していない。
【0034】
なお、波形検出条件設定部3(候補波形検出条件設定部6、探索期間設定部7、検出除外期間設定部8を含む)によって設定される条件の内容は、外部から設定変更することが可能であり、波形検出条件設定部3に接続されて装備される設定条件入力手段(図示省略)によって入力変更するようにしてもよい。
【0035】
興奮波形検出部4は、波形検出条件設定部3(候補波形検出条件設定部6、探索期間設定部7、検出除外期間設定部8)によって設定された条件を満たす候補波形を、制御部5から送信される検出制御信号に基づき心筋興奮の波形として検出する。また、興奮波形検出部4は、設定された条件に基づいて、上述したような心筋興奮の候補波形を決定する機能や心筋興奮の波形を確定する機能等も有している。興奮波形検出部4によって検出、確定等された各データは制御部5に送信され、制御部5に搭載されているRAM12に記憶保持される。
【0036】
平均伝導時間算出部9は、制御部5から送信される算出制御信号に基づいて、興奮波形検出部4によって検出された複数の心筋興奮の波形のデータから、心筋興奮が伝導される平均伝導時間を算出する。心筋興奮が伝導される時間とは、検出された各心筋興奮の波形間の時間のことをいい、この時間の平均値のことを平均伝導時間としている。平均伝導時間算出部9によって算出された平均伝導時間のデータは制御部5に送信され、制御部5に搭載されているRAM12に記憶保持される。
【0037】
制御部5は、波形検出条件設定部3(候補波形検出条件設定部6、探索期間設定部7、検出除外期間設定部8)によって設定された条件に基づいて、心筋興奮波形検出装置1の各部(波形取得部2、興奮波形検出部4、平均伝導時間算出部9)を制御するものである。制御部5は、制御を司るCPU10、CPUに係る各種処理手順を実行するプログラムが保持されたROM11、CPUのワークエリアとして各部(取得部、設定部、検出部、算出部等)における各種データを格納するRAM12を備えている。
【0038】
以上のような構成を有することにより、ノイズ波形の誤検出を抑制することができ、心筋興奮の波形の検出制度を向上させることができるので、正確な心筋興奮の伝導時間を測定することができ、より正しい平均伝導時間を算出することができる。また、この心筋興奮波形検出装置の機能は、リアルタイムで心筋興奮波形の解析を行う場合にも、再検討および論評等で心筋興奮波形の解析を行う場合にも有効である。
【0039】
次に、
図3に示すフローチャートに沿って心筋興奮波形検出処理の処理手順を説明する。なお、この処理手順の説明に際して、心筋興奮の波形を検出する手順を示す
図4を参照しながら説明する。
【0040】
心筋興奮波形の検出処理が開始されると、最初に、心筋興奮の波形を検出するための各パラメータの設定が行われる(ステップS101)。例えば、候補波形検出条件設定部6によって設定される、心筋興奮の波形の候補波形を検出するための波形の外形データに基づくパラメータを設定する。具体的には、波形取得部2が取得した心内心電図波形(電位)の横幅を10msec以下、縦幅を0.1mV以上として設定する。また、検出除外期間設定部8によって設定される、いずれの候補波形も心筋興奮の波形として検出しない検出除外期間(解析対象の除外期間)に関するパラメータを設定する。具体的には、検出除外期間を50msecに設定する。また、探索期間設定部7によって設定される、心筋興奮の波形を探索するための探索期間に関するパラメータを設定する。具体的には、探索期間を49msecに設定する。このとき、探索期間は、検出除外期間よりも短い時間に設定する。
【0041】
ここで、
図4に示す波形は、心房細動が発生している期間に測定された心内心電図波形から、波形取得部2によって取得された波形解析期間内の波形の一部の波形である。波形解析期間は、予め設定された期間(ここでは、5secに設定されている)であり、制御部5から波形取得部2に対して解析制御信号として送信される。波形取得部2は、この解析制御信号に基づいて5sec間の波形を取得する。
【0042】
続いて、波形取得部2によって取得された波形解析期間内に発生した心内心電図波形の中から、S101で設定した横幅(10msec以下)と縦幅(0.1mV以上)の条件に適合する波形を心筋興奮の候補波形として全て検出する(ステップS102)。なお、ステップS102は、本発明に係る波形取得手順の一例である。
図4では、心筋興奮の候補波形として破線四角形31から37に含まれている7個の波形が検出された。
【0043】
続いて、ステップS102で検出した心筋興奮の候補波形の中から心筋興奮の波形を選定する(ステップS103)。
図4において、最初に検出した候補波形(破線四角形31に含まれる波形)のP−P値を興奮波形検出部4によって測定する。次に、○印31aから探索期間(49msec)経過後の□印31bまでの期間に他の候補波形(破線四角形に含まれる波形)が存在するか探索する。
図4では、破線四角形31に含まれる候補波形以外の他の候補波形が存在しないので、破線四角形31に含まれる波形を最初の心筋興奮の波形として確定する。そして、確定した心筋興奮の波形の最初のピーク(○印31a)から検出除外期間(50msec)経過後の△印31cまでの期間を、いずれの波形も検出しない解析対象の除外期間とする。
【0044】
解析対象の除外期間が経過した後は、経過後(△印31c以後)の最初に検出した候補波形(破線四角形32に含まれる波形)のP−P値を興奮波形検出部4によって測定する。次に、○印32aから探索期間(49msec)経過後の□印32bまでの期間に他の候補波形(破線四角形に含まれる波形)が存在するか探索し、存在する場合にはその候補波形のP−P値を測定して破線四角形32に含まれる波形のP−P値と比較する。
図4では、○印32aから□印32bまでの期間に他の候補波形(破線四角形33に含まれる波形)が存在するので、そのP−P値を測定して、破線四角形32に含まれる波形のP−P値と比較する。探索期間内に複数の候補波形が存在する場合には、P−P値が最も大きい候補波形を検出し心筋興奮の波形として確定する。破線四角形32に含まれる波形のP−P値と破線四角形33に含まれる波形のP−P値とを比較すると、
図4からも明らかなように破線四角形33に含まれる波形のP−P値の方が破線四角形32に含まれる波形のP−P値よりも大きいので、破線四角形33に含まれる候補波形を心筋興奮の波形として確定する。複数の候補波形を比較して、最も大きいP−P値の波形を心筋興奮の波形とするのは、心内心電図波形を取得する電極(図示せず)に最も近位の心内心電図波形を心筋興奮の波形とするためである。心筋興奮の波形として確定されなかった破線四角形32に含まれる波形は、以後、心筋興奮が伝導される平均伝導時間を算出するための波形としては使用されない。そして、確定した心筋興奮の波形の最初のピーク(○印33a)から検出除外期間(50msec)経過後の△印33cまでの期間を、いずれの波形も検出しない解析対象の除外期間とする。以上の検出処理を波形解析期間が終了するまで繰り返し、心筋興奮の波形を繰り返し検出する。
【0045】
続いて、心筋興奮の波形の検出終了後に、選定した心筋興奮の波形内の−dv/dtポイントを検出する(ステップS104)。
図4では、破線で示される31d、33d、34d、36d、37dのポイントが検出される。なお、波形内の検出ポイントは、−dv/dtポイントに限定されず、dv/dtポイントを検出するようにしてもよい。
【0046】
続いて、ステップS104で検出した−dv/dtポイント間の時間、即ち、心筋興奮が伝導される伝導時間を測定し、測定した各伝導時間から平均伝導時間を算出する(ステップS105)。
図4では、ポイント31d−33d間、ポイント33d−34d間、ポイント34d−36d間、ポイント36d−37d間の時間が、それぞれ心筋興奮の伝導される伝導時間41、42、43、44として測定され、これらの伝導時間から平均伝導時間が算出される。
【0047】
次に、心房細動中の心内心電図波形(
図5(a)参照)に対して、従来の解析方法(非特許文献1に記載の解析方法)を実行して平均伝導時間を算出した結果(
図5(b)参照)と、上述した本発明の解析方法を実行して平均伝導時間を算出した結果(
図5(c)参照)について説明する。
【0048】
波形の検出条件に関する各パラメータは、横幅を10msec以下、縦幅を0.1mV以上、検出除外期間を50msec、探索期間を49msecに設定した。
【0049】
図5(b)中の符号Aと符号Bは、ノイズ波形が波形の外形の条件を満たしたため、心筋興奮の波形として検出されてしまった箇所を示している。符号Aが示すノイズ波形の後方には真の心筋興奮の波形があるが、検出除外期間の影響で、真の心筋興奮の波形が検出されていないことが確認できる。また、符号Bのノイズ波形の後方では真の心筋興奮の波形が検出されており、ノイズ波形と真の興奮波形の両方が検出(いわゆる、ダブルカウント)されていることが確認できる。
【0050】
このように、従来の解析方法に基づいて心筋興奮の波形を検出して、検出された心筋興奮の波形から平均伝導時間を算出した結果、平均伝導時間は96msecとなった。ノイズ波形と真の興奮波形の両方が検出された箇所については、波形の間隔が短く伝導時間が短いため、ノイズ波形の影響の結果、平均伝導時間が真の値より小さくなっていると推察できる。また、真の興奮波形の代わりにノイズ波形が検出された箇所についても、算出される平均伝導時間の精度に影響していると推察できる。
【0051】
一方、本発明の解析方法を実行した場合は、
図5(c)に示されるように、ノイズ波形の誤検出が大幅に低減され、検出波形のほとんどが真の心筋興奮の波形となっている。検出された心筋興奮の波形から平均伝導時間を算出した結果、平均伝導時間は112msecとなり、ノイズ波形の影響が取り除かれていることが確認できた。すなわち、従来の解析方法よりも精度良く平均伝導時間を算出できることが確認できた。
【0052】
尚、本発明の実施の形態において説明した各処理手順を、一連の手順を備えた方法の発明としても、また、一連の手順をコンピュータに実行させるためのプログラムの発明としてもよい。その場合にも上記実施形態の効果と同様の効果を得ることができる。