特許第5869934号(P5869934)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5869934
(24)【登録日】2016年1月15日
(45)【発行日】2016年2月24日
(54)【発明の名称】鍛造用金型装置
(51)【国際特許分類】
   B21J 13/03 20060101AFI20160210BHJP
   B21J 13/02 20060101ALI20160210BHJP
   B21J 1/06 20060101ALI20160210BHJP
【FI】
   B21J13/03
   B21J13/02 M
   B21J1/06 B
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-73851(P2012-73851)
(22)【出願日】2012年3月28日
(65)【公開番号】特開2013-202652(P2013-202652A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100131750
【弁理士】
【氏名又は名称】竹中 芳通
(74)【代理人】
【識別番号】100146112
【弁理士】
【氏名又は名称】亀岡 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100167335
【弁理士】
【氏名又は名称】武仲 宏典
(74)【代理人】
【識別番号】100164998
【弁理士】
【氏名又は名称】坂谷 亨
(72)【発明者】
【氏名】長田 卓
(72)【発明者】
【氏名】本田 恭英
(72)【発明者】
【氏名】荒木 重臣
(72)【発明者】
【氏名】村上 昌吾
(72)【発明者】
【氏名】小島 壮一郎
(72)【発明者】
【氏名】百田 悠介
【審査官】 石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−031285(JP,A)
【文献】 特開昭57−175039(JP,A)
【文献】 特開2003−103331(JP,A)
【文献】 実開昭51−157554(JP,U)
【文献】 実開昭59−089636(JP,U)
【文献】 米国特許第03926029(US,A)
【文献】 米国特許第04187713(US,A)
【文献】 特開2004−337935(JP,A)
【文献】 特開平11−077214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21J 13/03
B21J 1/06
B21J 13/02
B21D 37/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍛造用素材の高温鍛造に用いられる鍛造用金型装置において、上金型と下金型とを備え、
前記上下の少なくとも一方の金型について、金型の外周部に当接して該金型を、該金型を支持するダイプレートに対して着脱可能に固定し保持するダイクランプ装置を備え、
前記ダイプレートに対して固定された前記金型の外周部側から前記金型を加熱する金型外周部側ヒータを備え、
前記金型は、前記金型外周部側ヒータと前記ダイプレートとの間に位置して外方に突出する部位を有し、
前記ダイクランプ装置は、前記部位に対して前記金型外周部ヒータ側から当接し、前記金型を押圧することを特徴とする鍛造用金型装置。
【請求項2】
金型内に設けられていない金型加熱手段であって、前記ダイプレートに対して固定された金型を加熱する金型加熱手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の鍛造用金型装置。
【請求項3】
前記金型加熱手段として、金型の製品成形面と反対側の面が当接するように配置され、複数のシーズヒータが組み込まれたヒータプレートを備えたことを特徴とする請求項2記載の鍛造用金型装置。
【請求項4】
前記ヒータプレートと前記ダイプレートとの間に配置された断熱プレートを備えたことを特徴とする請求項3記載の鍛造用金型装置。
【請求項5】
前記金型外周部側ヒータが赤外線ヒータであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の鍛造用金型装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン合金やNi基合金などの難加工性金属材料の高温鍛造(熱間型鍛造)に用いられる鍛造用金型装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、金型を用いてチタン合金やNi基合金などの難加工性金属材料の高温鍛造が行われるようになってきている。高温鍛造を行う鍛造プレス装置には、金型を加熱するために、従来は、例えば、上金型及び下金型のそれぞれに、複数個のヒータ挿入穴が形成され、これらの各ヒータ挿入穴に挿入された棒状のシーズヒータ(「カートリッジヒータ」とも呼ばれる)によって上金型及び下金型を加熱するようにした鍛造用金型装置が備えられている。例えば特許文献1,2には、この種の鍛造用金型装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−337935号公報(段落[0032]、図3
【特許文献2】特開平11−77214号公報(段落[0010]、図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前述した従来の鍛造用金型装置では、鍛造用素材の温度と同程度に金型を加熱して高温鍛造を行うに際し、シーズヒータが組み込まれた金型(以下、「シーズヒータ内蔵金型」ともいう)の場合、電気配線が付属しているので予熱のために加熱炉を使用することができず、予めシーズヒータ内蔵金型を加熱炉で予熱しておくことができなかった。このため、金型交換時には金型を所定温度にまで昇温させるのに時間がかかり、鍛造製品の生産性の向上を図る必要があった。また、大きさ等の異なる種々の鍛造品に対して、それぞれ、シーズヒータ内蔵金型を用意する必要があり、この点からも生産性の向上を図る必要があった。
【0005】
本発明の課題は、鍛造用素材の高温鍛造に使用される鍛造用金型装置において、鍛造製品の生産性に優れた鍛造用金型装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を講じている。
【0007】
請求項1の発明は、鍛造用素材の高温鍛造に用いられる鍛造用金型装置において、上金型と下金型とを備え、前記上下の少なくとも一方の金型について、金型の外周部に当接して該金型を、該金型を支持するダイプレートに対して着脱可能に固定し保持するダイクランプ装置を備え、前記ダイプレートに対して固定された前記金型の外周部側から前記金型を加熱する金型外周部側ヒータを備え、前記金型は、前記金型外周部側ヒータと前記ダイプレートとの間に位置して外方に突出する部位を有し、前記ダイクランプ装置は、前記部位に対して前記金型外周部ヒータ側から当接し、前記金型を押圧することを特徴とする鍛造用金型装置である。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1記載の鍛造用金型装置において、金型内に設けられていない金型加熱手段であって、前記ダイプレートに対して固定された金型を加熱する金型加熱手段を備えたことを特徴とするものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2記載の鍛造用金型装置において、前記金型加熱手段として、金型の製品成形面と反対側の面が当接するように配置され、複数のシーズヒータが組み込まれたヒータプレートを備えたことを特徴とするものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3記載の鍛造用金型装置において、前記ヒータプレートと前記ダイプレートとの間に配置された断熱プレートを備えたことを特徴とするものである。
【0012】
請求項の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の鍛造用金型装置において、前記金型外周部側ヒータが赤外線ヒータであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の鍛造用金型装置は、上下の少なくとも一方の金型について、金型の外周部に当接して該金型を、該金型を支持するダイプレートに対して着脱可能に固定し保持するダイクランプ装置を備えているので、高温の金型の着脱を短時間で、かつ容易に行うことができ、鍛造製品の生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態による鍛造用金型装置の構成を概略的に示す断面図である。
図2図1に示す鍛造用金型装置の図1と直交する方向における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図1は本発明の一実施形態による鍛造用金型装置の構成を概略的に示す断面図、図2図1に示す鍛造用金型装置の図1と直交する方向における断面図である。
【0016】
図1図2において、10は上金型、20は下金型であり、この上金型10と下金型20とにより金型1が構成されている。上金型10は、製品成形面を有するとともに、その外周部(外周面部)に上下垂直面と傾斜面とで形成される形状の係合部10aを有している。同様に、下金型20は、製品成形面を有するとともに、その外周部に上下垂直面と傾斜面とで形成される形状の係合部20aを有している。
【0017】
まず、図1を参照して、下金型20側について説明する。この鍛造用金型装置の下金型側は、下金型20と、下金型20を支持するダイプレート23と、下金型20の外周部の前記係合部20aに当接して該下金型20をダイプレート23に対して着脱可能に固定し保持する金型固定手段としてのダイクランプ装置26と、ダイプレート23に対して固定された下金型20を加熱する金型加熱手段としての、下金型20の製品成形面と反対側の面が当接するように配置され、複数のシーズヒータ21aが組み込まれたヒータプレート21と、ヒータプレート21とダイプレート23との間に配置された断熱プレート22と、ダイプレート23に対して固定された下金型20の外周部側から該下金型20を加熱する金型外周部側ヒータとしての赤外線ヒータ25と、を備えている。
【0018】
本実施形態では、タイロッド24a、ナット24bなどを用いて、前記のヒータプレート21、断熱プレート22及びダイプレート23が一体に締結されており、ダイプレート23は、プレス本体(プレス機)の固定側部材60に例えばボルトなどによって固定されている。また、前記赤外線ヒータ25は、例えば、ダイプレート23に固定された図示しない支持部材によって下金型20に対して接近離反可能に支持されている。
【0019】
前記ダイクランプ装置26は、本実施形態では、ダイプレート23上に一対をなして対向配置されており、油圧シリンダ27と、油圧シリンダ27のピストンロッド27aの先端部に固定されたクランプヘッド28と、を備えている。前記油圧シリンダ27は、ダイプレート23にベースブロックを介して固定されている。前記クランプヘッド28は、先端部に下金型20の前記係合部20aに対応する形状を有し、前記係合部20aに当接し、ダイプレート23に対して下金型20を押圧するためのものである。
【0020】
つぎに、図2を参照して、上金型10側について説明する。この鍛造用金型装置の上金型側は、上金型10と、上金型10を支持するダイプレート13と、上金型10の外周部の前記係合部10aに当接して該上金型10をダイプレート13に対して着脱可能に固定し保持する金型固定手段としてのダイクランプ装置16と、ダイプレート13に対して固定された上金型10を加熱する金型加熱手段としての、上金型10の製品成形面と反対側の面が当接するように配置され、複数のシーズヒータ11aが組み込まれたヒータプレート11と、ヒータプレート11とダイプレート13との間に配置された断熱プレート12と、ダイプレート13に対して固定された上金型10の外周部側から該上金型10を加熱する金型外周部側ヒータとしての赤外線ヒータ15と、を備えている。
【0021】
本実施形態では、タイロッド14a、ナット14bなどを用いて、前記のヒータプレート11、断熱プレート12及びダイプレート13が一体に締結されており、ダイプレート13は、プレス本体の可動側部材50に例えばボルトなどによって固定されている。また、前記赤外線ヒータ15は、例えば、ダイプレート13に固定された図示しない支持部材によって上金型10に対して接近離反可能に支持されている。
【0022】
前記ダイクランプ装置16は、本実施形態では、一対をなし、ダイプレート13に対向配置して取り付けられており、油圧シリンダ17と、油圧シリンダ17のピストンロッド17aの先端部に固定されたクランプヘッド18と、を備えている。前記油圧シリンダ17は、ダイプレート13にベースブロックを介して固定されている。前記クランプヘッド18は、先端部に上金型10の前記係合部10aに対応する形状を有し、前記係合部10aに当接し、ダイプレート13に対して上金型10を押圧するためのものである。なお、図1図2では、鍛造製品を取り出すためのノックアウト機構などは図示省略している。
【0023】
前記の上下の金型10,20は、製品成形面を有して円盤状をなしており、その材質が、例えば、Ni基耐熱合金からなるものである。また、前記ヒータプレート11,21は、その材質が、例えばNi基耐熱合金からなるものである。前記ダイプレート13,23は、その材質が、例えば炭素鋼からなるものである。また、前記断熱プレート12,22は、例えば耐火れんがからなるものである。
【0024】
前記のように構成される鍛造用金型装置において、上下の金型10,20は、加熱炉で所定温度に予熱してからプレス機まで導かれる。そして、所定の温度(例えば、下金型20の最終目標温度よりも数百度程度低い温度)に加熱されたヒータプレート21上に高温の下金型20が載置されると、一対をなすダイクランプ装置26の油圧シリンダ27のピストンロッド27aが、該下金型20の両側から下金型20に向って前進する。この前進によってクランプヘッド28は、下金型20の前記係合部20aに当接して、ダイプレート23に対して下金型20を押圧する。これにより、図1に示すように、ダイプレート23に対して前記予熱が施された下金型20を固定し保持することができる。
【0025】
一方、高温の上金型10がその裏面を、所定の温度(例えば、上金型10の最終目標温度よりも数百度程度低い温度)に加熱されたヒータプレート11に当接させた状態で位置されると、一対をなすダイクランプ装置16の油圧シリンダ17のピストンロッド17aが、該上金型10の両側から上金型10に向って前進する。この前進によってクランプヘッド18は、上金型10の前記係合部10aに当接して、ダイプレート13に対して上金型10を押圧する。これにより、図2に示すように、ダイプレート13に対して前記予熱が施された上金型10を固定し保持することができる。
【0026】
このようにして上下の金型10,20が装着されると、シーズヒータ11a及び赤外線ヒータ15の出力を調整することにより、上金型10の温度(上金型10の製品成形面温度)が最終目標温度に保持されるように温度調整するとともに、シーズヒータ21a及び赤外線ヒータ25の出力を調整することにより、下金型20の温度(下金型20の製品成形面温度)が最終目標温度に保持されるように温度調整を行う。なお、赤外線ヒータ15,25は、ガスバーナーによるガス加熱の場合とは違って、金型10,20に酸化による損傷を生じることなく、金型10,20の加熱を行なうことができる。また、断熱プレート12により、ヒータプレート11側からダイプレート13側への熱移動が防がれ、同様に、断熱プレート22により、ヒータプレート21側からダイプレート23側への熱移動が防がれる。そして、難加工性金属材料であるチタン合金、Ni基合金などからなる鍛造用素材が、加熱炉で所定温度に加熱されてから、下金型20上に載置され、この鍛造用素材の高温鍛造が行なわれる。
【0027】
このように、本実施形態による鍛造用金型装置は、上下の金型10,20の各々について、金型10(20)とは別にヒータプレート11(21)を備え、シーズヒータが組み込まれていない構造の金型(金型内に金型加熱手段が設けられていない金型)でよく、高温鍛造を行うに際し、予め金型10(20)を加熱炉で予熱することができるので、金型交換時には金型10(20)を所定温度にまで短時間で昇温させることができる。また、前記ヒータプレート11(21)や金型外周部側ヒータである赤外線ヒータ15(25)を共用することで、大きさ、厚み等の異なる複数種の鍛造製品に対して金型10(20)を交換するだけですむ。そして、金型10(20)の外周部に当接して該金型10(20)をダイプレート13(23)に対して着脱可能に固定し保持する金型固定手段16(26)を備えているので、高温の金型10,20の着脱を短時間で、かつ容易に行うことができる。よって、これらのことにより、鍛造製品の生産性の向上を図ることができる。
【0028】
なお、前記の実施形態では、図1図2に示すように、上下の金型10,20をその一例として同一の形状、大きさのものとして図示し、これに伴い、金型固定手段であるダイクランプ装置16,26のクランプヘッド18,28についても、それぞれ、同一の形状、大きさのものとして図示したが、本発明は、これに限定されるものでなく、形状、大きさが互いに異なる上下の金型を備えたものについても、当然ながら、適用可能である。
【0029】
また、前記の実施形態では、上金型10について、該金型10の外周部に当接して該金型10を、該金型10を支持するダイプレート13に対して着脱可能に固定し保持する金型固定手段であるダイクランプ装置16を備えるともに、下金型20について、該金型20の外周部に当接して該金型20を、該金型20を支持するダイプレート23に対して着脱可能に固定し保持する金型固定手段であるダイクランプ装置26を備えた構成の鍛造用金型装置について説明したが、本発明による鍛造用金型装置は、上金型10又は下金型20について、該金型の外周部に当接して該金型を、該金型を支持するダイプレートに対して着脱可能に固定し保持する金型固定手段を備えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1…金型 10…上金型 20…下金型
11,21…ヒータプレート 11a,21a…シーズヒータ
12,22…断熱プレート
13,23…ダイプレート
15,25…赤外線ヒータ
16,26…ダイクランプ装置
17,27…油圧シリンダ 17a,27a…ピストンロッド
18,28…クランプヘッド
図1
図2