特許第5869944号(P5869944)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5869944
(24)【登録日】2016年1月15日
(45)【発行日】2016年2月24日
(54)【発明の名称】鍛造金型装置の加熱方法
(51)【国際特許分類】
   B21J 1/06 20060101AFI20160210BHJP
   B21J 13/02 20060101ALI20160210BHJP
   B21J 13/03 20060101ALI20160210BHJP
【FI】
   B21J1/06 A
   B21J13/02 M
   B21J13/03
   B21J1/06 B
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-86398(P2012-86398)
(22)【出願日】2012年4月5日
(65)【公開番号】特開2013-215746(P2013-215746A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2014年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100131750
【弁理士】
【氏名又は名称】竹中 芳通
(74)【代理人】
【識別番号】100146112
【弁理士】
【氏名又は名称】亀岡 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100167335
【弁理士】
【氏名又は名称】武仲 宏典
(74)【代理人】
【識別番号】100164998
【弁理士】
【氏名又は名称】坂谷 亨
(72)【発明者】
【氏名】長田 卓
(72)【発明者】
【氏名】本田 恭英
(72)【発明者】
【氏名】荒木 重臣
(72)【発明者】
【氏名】村上 昌吾
(72)【発明者】
【氏名】小島 壮一郎
(72)【発明者】
【氏名】百田 悠介
【審査官】 福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 実開平02−148744(JP,U)
【文献】 特開2002−096134(JP,A)
【文献】 特開平03−077736(JP,A)
【文献】 実開昭60−080028(JP,U)
【文献】 特開2003−103331(JP,A)
【文献】 特開2011−031285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21J 1/00−13/14
B21J 17/00−19/04
B21K 1/00−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上金型と下金型からなる金型と、これら上下の金型の少なくとも一方の金型を支持する金型保持手段を備え、前記金型保持手段をプレス本体に固定した後、金型を加熱して鍛造を行う鍛造金型装置の加熱方法であって、前記上下の金型の少なくとも一方の金型を予熱し、この予熱した金型を加熱された前記金型保持手段上に設置した後、前記予熱した金型を加熱手段により加熱し、前記金型の成形面を、前記金型の加熱手段とは別の加熱手段により所要の温度に加熱するようにしたものであり、
前記金型がその外周部を囲繞するダイホルダにより保持されるとともに、前記ダイホルダが前記金型保持手段に支持され、前記のダイホルダと金型保持手段とダイプレートが、タイロッドまたはボルトと、ナットからなる締結手段により、両端側または一端側に皿ばねを嵌挿して一体化されていることを特徴とする鍛造金型装置の加熱方法。
【請求項2】
上金型と下金型からなる金型と、これら上下の金型の少なくとも一方の金型を支持する金型保持手段を備え、前記金型保持手段とベースプレートとが、タイロッド又はボルトと、ナットからなる締結手段により一体化されており、前記金型保持手段をプレス本体に固定した後、金型を加熱して鍛造を行う鍛造金型装置の加熱方法であって、前記上下の金型の少なくとも一方の金型を予熱し、この予熱した金型を加熱された前記金型保持手段上に設置した後、前記予熱した金型を加熱手段により加熱し、前記金型の成形面を、前記金型の加熱手段とは別の加熱手段により所要の温度に加熱するようにするとともに、前記金型の外周部を、可撓性を有する面状ヒータまたは赤外線ヒータにより加熱するものであり、
前記金型を前記金型保持手段上に設置する際に、金型固定部が、前記金型の外周部に設けられた係合部に当接して前記ベースプレートに対して前記金型を押圧することによって該金型を着脱可能に固定し保持することを特徴とする鍛造金型装置の加熱方法。
【請求項3】
前記金型保持手段が断熱プレートとダイプレートからなり、この金型保持手段を加熱し、前記金型の成形面を鍛造直前に加熱するようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載の鍛造金型装置の加熱方法。
【請求項4】
前記金型と前記金型保持手段との間に、複数のシーズヒータが組み込まれたヒータプレートを、前記金型の製品成形面とは反対側の面が当接するように配置したことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の鍛造金型装置の加熱方法。
【請求項5】
前記金型の成形面を赤外線ヒータにより加熱することを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の鍛造金型装置の加熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、難加工性材料の熱間鍛造に使用される金型装置を加熱する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
チタン合金やNi基合金等の難加工性材料の鍛造に際しては、金型温度を鍛造素材の加熱温度と略同程度に保持し、歪速度を一定範囲内に制御して鍛造する恒温鍛造法や金型温度を鍛造素材の加熱温度に近づけると共に歪速度を制御して鍛造するホットダイフォージング方法が、難加工性金属材料を熱間精密型鍛造する方法として、適用されるようになった。
【0003】
上記の恒温鍛造やホットダイフォージングに用いられる金型構造としては、図4に示すように、熱間鍛造プレス装置71において、例えば、インダクションヒータなどの熱源72によって加熱される金型73、74は、プレス装置本体のベースプレート75、76に固定されたダイプレート(金型保持手段)77、78に取り付けられている。そして、熱源72によって加熱された金型73、74からダイプレート77、78およびプレス装置本体側への熱移動を防ぐために、金型73、74とダイプレート77、78との間には、断熱構造部材79、80が配置されている。上記難加工性材料の熱間精密型鍛造では、上下の金型は、鍛造素材の加熱温度に近い温度まで加熱されるため、成形性および操業製の観点から、金型温度を高精度にかつ効率的に制御する必要がある。金型温度を高精度に制御するためには、金型73、74のみならず、ダイプレート77、78を含めた金型装置の加熱を考慮する必要がある。
【0004】
一方、鍛造用金型を効率よく加熱する手段として、例えば、特許文献1に、対向配置された第1の金型(上金型)と第2の金型(下金型)とを、中央部にヒータを設け、かつ、一方の表面を第1の金型の鍛造面に沿った形状とし、他方の表面を第2の金型の鍛造面に沿った形状とした加熱治具を用いた加熱方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−96134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、例えば、図4に示した、熱源72を上下金型73、74の周囲に配置して前記金型を加熱する従来の金型加熱方法では、金型温度を必ずしも精度よくまた効率的に制御できないため、成形品の目標寸法制度や表面品質を実現できない場合があり、さらに目標金型温度への加熱に比較的長時間を要し、操業性の観点からも改善の余地がある。
【0007】
また、特許文献1に開示された加熱方法では、金型の鍛造面形状ごとに、すなわち鍛造製品の形状ごとに加熱治具を製作する必要があるため、煩雑であり、加熱コストの観点からも改善の余地がある。
【0008】
そこで、この発明の課題は、チタン合金やNi基合金等の難加工性材料の鍛造に際して、金型を目標加熱温度に精度よくかつ効率的に加熱するための、保持治具を含めた金型装置の加熱方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するために、この発明では以下の構成を採用したのである。
【0010】
請求項1に係る鍛造金型装置の加熱方法は、上金型と下金型からなる金型と、これら上下の金型の少なくとも一方の金型を支持する金型保持手段を備え、前記金型保持手段をプレス本体に固定した後、金型を加熱して鍛造を行う鍛造金型装置の加熱方法であって、前記上下の金型の少なくとも一方の金型を予熱し、この予熱した金型を加熱された前記金型保持手段上に設置した後、前記予熱した金型を加熱手段により加熱し、前記金型の成形面を、前記金型の加熱手段とは別の加熱手段により所要の温度に加熱するようにしたものであり、前記金型がその外周部を囲繞するダイホルダにより保持されるとともに、前記ダイホルダが前記金型保持手段に支持され、前記のダイホルダと金型保持手段とダイプレートが、タイロッドまたはボルトと、ナットからなる締結手段により、両端側または一端側に皿ばねを嵌挿して一体化されていることを特徴とする。
請求項2に係る鍛造金型装置の加熱方法は、上金型と下金型からなる金型と、これら上下の金型の少なくとも一方の金型を支持する金型保持手段を備え、前記金型保持手段とベースプレートとが、タイロッド又はボルトと、ナットからなる締結手段により一体化されており、前記金型保持手段をプレス本体に固定した後、金型を加熱して鍛造を行う鍛造金型装置の加熱方法であって、前記上下の金型の少なくとも一方の金型を予熱し、この予熱した金型を加熱された前記金型保持手段上に設置した後、前記予熱した金型を加熱手段により加熱し、前記金型の成形面を、前記金型の加熱手段とは別の加熱手段により所要の温度に加熱するようにするとともに、前記金型の外周部を、可撓性を有する面状ヒータまたは赤外線ヒータにより加熱するものであり、前記金型を前記金型保持手段上に設置する際に、金型固定部が、前記金型の外周部に設けられた係合部に当接して前記ベースプレートに対して前記金型を押圧することによって該金型を着脱可能に固定し保持することを特徴とする。
【0011】
請求項に係る鍛造金型装置の加熱方法は、請求項1または2において、金型保持手段が断熱プレートとダイプレートからなり、この金型保持手段を加熱し、前記金型の成形面を鍛造直前に加熱するようにしたことを特徴とする。
【0014】
請求項に係る鍛造金型装置の加熱方法は、請求項1から3のいずれかの請求項において、金型と前記金型保持手段との間に、複数のシーズヒータが組み込まれたヒータプレートを、前記金型の製品成形面とは反対側の面が当接するように配置したことを特徴とする。
【0015】
請求項に係る鍛造金型装置の加熱方法は、請求項1からのいずれかの請求項において、金型の成形面を赤外線ヒータにより加熱することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
この発明では、鍛造用素材を成形する上金型と下金型の少なくとも一方の金型を予熱し、また該金型のみならず、金型保持手段やダイホルダをも加熱し、さらに鍛造直前に金型の成形面を、所要の温度に加熱するようにしたので、チタン合金やNi基合金等の難加工性材料の鍛造に際して必要な金型温度への加熱に要する時間を従来よりも短縮でき、鍛造作業能率が向上し、加熱コストも低減する。また、前記上下の少なくとも一方の金型を金型保持手段上に設置する前に、すなわちプレスに組み込む前に、別途に予熱するようにしたので、この金型予熱中に並行して鍛造準備作業を行うことができるため、実操業性も向上する。さらに、鍛造直前の金型成形面を、金型加熱手段とは別の加熱手段を用いて加熱するため、必要な箇所を効率的に加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態の熱間鍛造用金型装置を示す説明図(断面図)である。
図2】他の実施形態の熱間鍛造用金型装置における下金型側についての説明図(断面図)である。
図3】他の実施形態の熱間鍛造用金型装置を示す上金型側についての説明図(断面図)である。
図4】従来技術の熱間鍛造用金型装置を示す説明図(断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態における鍛造用金型装置の構成を概略的に示す断面図である。
【0019】
図1において、10は上金型、20は下金型であり、この上金型10と下金型20とにより金型1が構成されている。
【0020】
まず、上金型10側について説明する。符号11は、上金型10の鍛造用素材側とは反対側の面(上金型10の裏面)が当接するように配置され、内部に形成された複数のヒータ挿入穴にシーズヒータ11aがそれぞれ挿入され、上金型10を加熱するヒータプレートである。
【0021】
符号12は、上金型10の外周部を囲繞し、この上金型10を保持するダイホルダである。鍛造に際して、加熱炉で加熱された上金型10がこのダイホルダ12の内側に嵌め入れられ、例えば図示しないピンなどを用いてダイホルダ12に固定されるという「入れ子構造」になっている。符号15は、ダイホルダ12の外周部を狭い間隔を有して囲繞し、このダイホルダ12を加熱(輻射加熱)するダイホルダ加熱用ヒータとしての赤外線ヒータである。
【0022】
符号14は、前記の上金型10、ヒータプレート11およびダイホルダ12を、断熱プレート13を介して支持するダイプレートである。この断熱プレート13とダイプレート14とにより上金型10用の金型保持手段が形成されている。また、50は、図示しないプレス機の昇降側部材(スライダ)に固定されたベースプレートである。タイロッド16a、ナット16b、座金16cおよび皿ばね16dを用いて、このベースプレート50に、ダイホルダ12、ヒータプレート11、断熱プレート13およびダイプレート14からなる金型装置上半部が一体に取り付けられている。
【0023】
次に、下金型20側について説明する。符号21は、下金型20の鍛造用素材側とは反対側の面(下金型20の裏面)が当接するように配置され、内部に形成された複数のヒータ挿入穴にシーズヒータ21aがそれぞれ挿入され、下金型20を加熱するヒータプレートである。
【0024】
符号22は、下金型20の外周部を囲繞し、この下金型20を保持するダイホルダである。鍛造に際して、予め加熱炉で加熱された下金型20がこのダイホルダ22の内側に嵌め入れられ、例えば図示しないピンなどを用いてダイホルダ22に固定されるという「入れ子構造」になっている。符号25は、ダイホルダ22の外周部を狭い間隔を有して囲繞し、このダイホルダ22を加熱(輻射加熱)するダイホルダ加熱用ヒータとしての赤外線ヒータである。
【0025】
符号24は、前記の下金型20、ヒータプレート21およびダイホルダ22を、断熱プレート23を介して支持するダイプレートである。この断熱プレート23とダイプレート24により下金型20用の金型保持手段24aが形成されている。また、符号60は、前記プレス機の固定側部材(ボルスタ)に固定されたベースプレートである。タイロッド26a、ナット26b、座金26cおよび皿ばね26dを用いて、このベースプレート60に、前記のダイホルダ22、ヒータプレート21、断熱プレート23およびダイプレート24からなる金型装置下半部が一体に取り付けられている。なお、図1では、鍛造製品を取り出すためのノックアウトなどは図示省略している。
【0026】
そして、この実施形態では、上下の金型10,20は、キャビティー部を有して円盤状をなしており、その材質が、例えば、Ni基超耐熱合金からなる。また、前記ヒータプレート11,21は、円盤状をなしており、例えば、Ni基の超合金からなる。前記ダイホルダ12,22は、円環状をなし、その材質が、例えば、SKD61(熱間工具鋼)からなる。前記断熱プレート13,23は、円盤状をなし、その材質が、例えば、耐熱高強度鋼板とその中に充填した窒化ケイ素やジルコニアなどのセラミックスからなる。また、前記ダイプレート14,24は、円盤状をなし、その材質が、例えば、前記ダイホルダ12,22と同様のSKD61(熱間工具鋼)からなる。
【0027】
前記のように構成される鍛造用金型装置において、上金型10および下金型20からなる金型1は、加熱炉等で所定温度に加熱して予熱されてから図示しないプレス機まで導かれて、その金型裏面がヒータプレート11,12に当接するようにしてダイホルダ12,22の内側に嵌め入れられ、例えば図示しないピンなどを用いてダイホルダ12,22に固定される。
【0028】
金型1は、ダイホルダ12,22に固定されたのち、ヒータプレート11,12により、所要の温度(鍛造すべき鍛造用素材温度の近傍温度)になるまで加熱される。金型1は、加熱により弾性変形範囲内で熱膨張し、ダイホルダ12,22とクリアランスがゼロの状態で接している。なお、赤外線ヒータ15,25により、ダイホルダ12,22、および断熱プレート13、23とダイプレート14、24からなる金型保持手段は、例えば400〜500℃の温度範囲に加熱(赤外線ヒータによる輻射加熱)されている。そして、鍛造直前に、上金型および下金型の成形面10aおよび20aが、金型加熱手段であるヒータプレート11,12とは別の、例えば、赤外線ヒータなどの加熱手段により、予め設定した所要の温度に加熱された後、難加工性金属材料であるチタン合金、Ni基合金などからなる鍛造用素材が、予め加熱炉等で所定の鍛造温度に加熱されてから、金型1にセットされる。このようにして鍛造用素材の高温鍛造が行なわれる。なお、前記金型保持手段をも加熱することにより、金型10、20の高温側から金型保持手段側への熱移動が抑制されるため、この金型保持手段の加熱は、金型10、20を所要の温度に加熱する時間の短縮に寄与することができる。
【0029】
このように、本発明の鍛造用金型装置の加熱方法は、鍛造用素材を成形する上金型と下金型を予熱し、またこれらの金型のみならず、金型保持手段やダイホルダをも加熱し、さらに鍛造直前に金型の成形面を、所要の温度に加熱するようにしたので、金型成形面の必要な箇所を効率的に加熱することもでき、チタン合金やNi基合金等の難加工性材料の鍛造に際して必要な金型温度への加熱に要する時間を従来よりも短縮できる。また、鍛造作業能率が向上し、加熱コストも低減する。
【0030】
図2は本発明の他の実施形態における鍛造用金型装置の構成を概略的に示す断面図であり、図3図2に示した鍛造用金型装置の図2と直交する方向における断面図である。
【0031】
図2および図3において、10は上金型、20は下金型であり、この上金型10と下金型20とにより金型1が構成されている。上金型10は、製品成形面を有するとともに、その外周部に上下垂直面と傾斜面とで形成される係合部10bを有している。同様に、下金型20は、製品成形面を有するとともに、その外周部に上下垂直面と傾斜面とで形成される係合部20bを有している。
【0032】
まず、図2を参照して、下金型20側について説明する。符号23は、下金型20の製品成形面とは反対側の面(下金型20の裏面)が当接するように配置された断熱プレートであり、符号24は、断熱プレート23を介して下金型20を支持するダイプレートである。図1に示した金型装置と同様に、この断熱プレート23とダイプレート24により下金型20用の金型保持手段24aが形成されている。
【0033】
符号60は、下金型20を、前記金型保持手段24aを介して支持するベースプレートである。本実施形態における金型装置では、タイロッド16a、ナット16bなどを用いて、断熱プレート23、ダイプレート24およびベースプレート60が一体に締結されており、ベースプレート60は、プレス本体の固定側部材に例えばボルトなどによって固定されている。
【0034】
符号25は、下金型20の外周部を加熱する赤外線ヒータである。この赤外線ヒータ25は、例えば、ベースプレート60に固定された図示しない支持部材によって支持されている。なお、金型外周部加熱用のヒータとして、赤外線ヒータに代えてパッド電熱ヒータなどの可撓性を有する面状ヒータを用いるようにしてもよい。
【0035】
ベースプレート60上には、一対のダイクランプ装置26が対向配置されている。ダイクランプ装置26は、油圧シリンダ27と、油圧シリンダ27のピストンロッド27aの先端部に固定されたクランプヘッド28とを備えている。前記油圧シリンダ27は、ベースプレート60にベースブロックを介して固定されている。前記クランプヘッド28は、先端部に下金型20の前記係合部20bに対応する形状を有し、この係合部20bに当接し、ベースプレート60に対して下金型20を押圧するためのものである。この一対のダイクランプ装置26は、下金型20の外周部に当接して、この下金型20を着脱可能に固定し保持する金型固定部を構成している。
【0036】
つぎに、図3を参照して、上金型10側について説明する。符号13は、上金型10の製品成形面側とは反対側の面(上金型10の裏面)が当接するように配置された断熱プレートであり、符号14は、上金型10を断熱プレート13を介して支持するダイプレートである。この断熱プレート13とダイプレート14により上金型10用の金型保持手段14aが形成されている。
【0037】
符号30は、上金型10を、前記金型保持手段を介して支持するベースプレートである。本実施形態では、タイロッド16a、ナット16bなどを用いて、断熱プレート13、ダイプレート14およびベースプレート30が一体に締結されており、ベースプレート30は、プレス本体の昇降側(可動側)部材50に例えばボルトなどによって固定されている。
【0038】
符号15は、上金型10の外周部を加熱する赤外線ヒータである。赤外線ヒータ15は、例えば、ベースプレート30に固定された図示しない支持部材によって支持されている。
【0039】
ベースプレート30上には、下金型20側と同様に、一対のダイクランプ装置26が対向配置されている。ダイクランプ装置26は、油圧シリンダ27と、油圧シリンダ27のピストンロッド27aの先端部に固定されたクランプヘッド28とを備えている。前記油圧シリンダ27は、ダイプレート14にベースブロックを介して固定されている。前記クランプヘッド28は、先端部に上金型10の前記係合部10bに対応する形状を有し、前記係合部10bに当接し、ダイプレート14に対して上金型10を押圧するためのものである。この一対のダイクランプ装置26は、上金型10の外周部に当接して該上金型10を着脱可能に固定し保持する金型固定部を構成している。この上金型10用の一対のダイクランプ装置26と、下金型20の前記一対のダイクランプ装置26とにより、金型1の外周部に当接して該金型1を着脱可能に固定し保持する金型固定部が構成されている。なお、図2図3では、鍛造製品を取り出すためのノックアウト機構などは図示省略している。
【0040】
そして、この実施形態における金型装置における上下の金型10、20は、製品成形面を有して円盤状をなしている。この金型10、20の材質、断熱プレート13、23、およびダイプレート14、24の材質は、図1に示した実施形態における金型装置の場合と同様である。
【0041】
上記のように構成される鍛造用金型装置において、上金型10および下金型20からなる金型1は、予め加熱炉で所定温度に加熱してからプレス機まで導かれる。そして、金型保持手段24a上に高温の下金型20が載置されると、一対をなす油圧シリンダ27のピストンロッド27aが、該下金型20の両側から下金型20に向って前進する。この前進によってクランプヘッド28は、下金型20の前記係合部20aに当接して、ベースプレート23に対して下金型20を押圧する。これにより、図2に示すように、ベースプレート23に対して前記予熱が施された下金型20を固定し保持することができる。
【0042】
一方、高温の上金型10が前記金型保持手段14aの直下に配置されると、一対をなす油圧シリンダ27のピストンロッド27aが、該上金型10の両側から上金型10に向って前進する。この前進によってクランプヘッド28は、上金型10の前記係合部10bに当接して、ベースプレート30に対して上金型10を押圧する。これにより、図3に示すように、ベースプレート30に対して前記予熱が施された上金型10を固定し保持することができる。
【0043】
このようにして金型1がプレス機に装着されると、金型1は、赤外線ヒータ15、25によって外周部側から加熱されて、所要の温度(鍛造すべき鍛造用素材温度の近傍温度)になるように、金型温度の調整が行われる。この金型加熱過程において、断熱プレート13により、上金型10側からベースプレート13側への熱移動が防がれ、同様に、断熱プレート23により、下金型側20側からベースプレート23側への熱移動が防がれる。そして金型1の製品成形面10a、20aが、前記の金型1の外周部の加熱手段15、25とは別の、赤外線ヒータなどの加熱手段により、予め設定した所要の温度(鍛造すべき鍛造用素材温度と略同一温度)に加熱された後、難加工性金属材料であるチタン合金、Ni基合金などからなる鍛造用素材が、予め加熱炉等で所定の鍛造温度に加熱されてから、金型1にセットされる。このようにして、鍛造用素材の高温鍛造が行なわれる。なお、下金型20の場合と同様に、金型外周部加熱用のヒータとして、赤外線ヒータに代えてパッド電熱ヒータなどの可撓性を有する面状ヒータを用いるようにしてもよい。
【0044】
このように、本実施形態における鍛造用金型装置は、金型1とは別に、その外周部側を加熱する赤外線ヒータまたは可撓性を有する面状ヒータを備えているため、鍛造用素材の温度と同程度に金型1を加熱して高温鍛造を行うに際し、予め金型1を加熱炉で予熱することができる。また、鍛造直前に、上金型および下金型の成形面10fおよび20fを、金型1の外周部の加熱手段とは別の加熱手段により、所要の温度に加熱するようにしたので、金型1を所定温度(鍛造すべき鍛造用素材温度と略同一温度)にまで短時間で昇温させることができる。
【0045】
なお、形状の大きい鍛造製品用の金型などに対しては、上金型10および下金型20の成形面10fおよび20fとは反対側の面を加熱する、複数のシーズヒータを組み込んだヒータプレートを、上金型10および下金型20と金型保持手段12d、22dの間にそれぞれ配置することもできる。このような金型装置に対しても、本実施形態の金型加熱方法を適用することができ、大型の鍛造製品の生産性の向上に寄与することができる。
【0046】
また、上記実施形態では、上下の金型の双方ともにそれぞれ金型保持手段やヒータプレートを設けた例を示したが、上下いずれか一方の金型にのみこれらの手段を設けるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…金型 10…上金型 20…下金型
10a、20a…上金型および下金型の成形面
11,21…ヒータプレート 11a,21a…シーズヒータ
12,22…ダイホルダ
13,23…断熱プレート
14,24…ダイプレート
14a、24a:金型保持手段(ダイホルダ)
15,25…赤外線ヒータ(ダイホルダ加熱用ヒータ)
30,40…ベースプレート
図1
図2
図3
図4