特許第5869963号(P5869963)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5869963
(24)【登録日】2016年1月15日
(45)【発行日】2016年2月24日
(54)【発明の名称】加湿器
(51)【国際特許分類】
   F24F 6/06 20060101AFI20160210BHJP
【FI】
   F24F6/06
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-124132(P2012-124132)
(22)【出願日】2012年5月31日
(65)【公開番号】特開2013-249992(P2013-249992A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2014年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109026
【氏名又は名称】ダイニチ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】阿部 利浩
【審査官】 渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−015239(JP,A)
【文献】 実開昭56−036028(JP,U)
【文献】 特開平11−351622(JP,A)
【文献】 特開2010−065853(JP,A)
【文献】 特開昭56−087489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 6/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気口から吹出口に至る送風経路を形成した本体ケースと、乾燥した空気を前記本体ケース内に吸い込む送風機と、水分を含浸させ前記送風機により吸い込んだ空気を加湿する加湿フィルタと、供給される水を一時的に貯え前記加湿フィルタを浸水させる水槽部とを備えた加湿器において、前記加湿フィルタが下方に折り返し部分を持つように前記加湿フィルタの両端部と連結される駆動部を備え、前記加湿フィルタは、この折り返し部分が前記加湿フィルタの下方にある前記水槽部の水に水没するように配置され、前記駆動部によって前記加湿フィルタの一方の端部を引き上げ、他方の端部を降下させることを交互に行うことで、前記加湿フィルタを前記水槽部内の水中に通過させることを特徴とする加湿器。
【請求項2】
前記駆動部は、1組の駆動モータと駆動軸を含み、前記駆動軸と前記加湿フィルタの両端部とを連結させる連結部を備え、前記駆動軸には前記連結部が互いに逆方向に巻き付けられており、一方の前記連結部を巻き上げると他方の前記連結部の巻き付けが緩まる構造とし、前記駆動軸の回転する方向を正逆に切替えることで前記加湿フィルタの両端部を交互に引き上げることを特徴とする請求項1記載の加湿器。
【請求項3】
前記加湿フィルタの折り返し部分の内側には、前記加湿フィルタが折り返されるためのガイドとなる仕切り部を備えたことを特徴とする請求項1または2記載の加湿器。
【請求項4】
前記仕切り部は、下部形状をR形状とするとともに、前記加湿フィルタとの間には間隙を設けて配置されることを特徴とする請求項3記載の加湿器。
【請求項5】
前記連結部は、前記加湿フィルタの両端部と連結するハンガーと、前記ハンガーと前記駆動軸とを連結するワイヤーからなり、シート状のフィルタ材の端部をつなげてループ状に成形された前記加湿フィルタが前記ハンガーに挿通されることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の加湿器。
【請求項6】
前記ハンガーは、前記加湿フィルタを挿通するハンガー開口部と、前記ハンガーの側部から前記加湿フィルタをスライドさせて前記ハンガー開口部に挿通するフィルタ挿通口を備えたことを特徴とする請求項5記載の加湿器。
【請求項7】
前記ハンガーが引き上げられる上限位置に、前記ハンガーの受入れ口をテーパー形状としたハンガー受入れ部を設けたことを特徴とする請求項5または6記載の加湿器。
【請求項8】
前記ハンガー受入れ部には前記ハンガーを検知する検知部を設け、前記ハンガーの端部には被検知部を設けるとともに前記被検知部と干渉しない位置において前記ハンガーと前記ワイヤーが連結されることを特徴とする請求項7記載の加湿器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内の乾燥を防止するために加湿フィルタに給水した水を気化して空気を加湿する加湿器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からの加湿器等に搭載される加湿フィルタとして、加湿フィルタが上下動自在に支持され、加湿フィルタの下端を加湿トレイ内の水に水没させる加湿姿勢と、加湿フィルタの下端を加湿トレイの水面から上昇させる乾燥姿勢とに切り替え自在としたものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−64429号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような加湿器では、加湿フィルタを水没させている箇所が加湿フィルタの一部分でしかないため、例えば経年使用によってスケール等が付着するなどで水を吸い上げる能力が低下した場合には、加湿フィルタ全体に水が行き渡らないことにより加湿性能が低下してしまっていた。
【0005】
また、加湿フィルタを水没させる範囲を大きくしようとすると加湿トレイの容積を大きくしなければならず、機器自体の大型化といった問題を生じてしまう。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためのもので、加湿トレイの容積を大きくすることなく加湿フィルタを効率よく給水、加湿させる構成とすることで、高い加湿性能を備えた加湿器の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、吸気口から吹出口に至る送風経路を形成した本体ケースと、乾燥した空気を前記本体ケース内に吸い込む送風機と、水分を含浸させ前記送風機により吸い込んだ空気を加湿する加湿フィルタと、供給される水を一時的に貯え前記加湿フィルタを浸水させる水槽部とを備えた加湿器において、前記加湿フィルタが下方に折り返し部分を持つように前記加湿フィルタの両端部と連結される駆動部を備え、前記加湿フィルタは、この折り返し部分が前記加湿フィルタの下方にある前記水槽部の水に水没するように配置され、前記駆動部によって前記加湿フィルタの一方の端部を引き上げ、他方の端部を降下させることを交互に行うことで、前記加湿フィルタを前記水槽部内の水中に通過させることを特徴とする加湿器に係わるものである。
【0008】
また、前記駆動部は、1組の駆動モータと駆動軸を含み、前記駆動軸と前記加湿フィルタの両端部とを連結させる連結部を備え、前記駆動軸には前記連結部が互いに逆方向に巻き付けられており、一方の前記連結部を巻き上げると他方の前記連結部の巻き付けが緩まる構造とし、前記駆動軸の回転する方向を正逆に切替えることで前記加湿フィルタの両端部を交互に引き上げることを特徴とする請求項1記載の加湿器に係わるものである。
【0009】
また、前記加湿フィルタの折り返し部分の内側には、前記加湿フィルタが折り返されるためのガイドとなる仕切り部を備えたことを特徴とする請求項1または2記載の加湿器に係わるものである。
【0010】
また、前記仕切り部は、下部形状をR形状とするとともに、前記加湿フィルタとの間には間隙を設けて配置されることを特徴とする請求項3記載の加湿器に係わるものである。
【0011】
また、前記連結部は、前記加湿フィルタの両端部と連結するハンガーと、前記ハンガーと前記駆動軸とを連結するワイヤーからなり、シート状のフィルタ材の端部をつなげてループ状に成形された前記加湿フィルタが前記ハンガーに挿通されることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の加湿器に係わるものである。
【0012】
また、前記ハンガーは、前記加湿フィルタを挿通するハンガー開口部と、前記ハンガーの側部から前記加湿フィルタをスライドさせて前記ハンガー開口部に挿通するフィルタ挿通口を備えたことを特徴とする請求項5記載の加湿器に係わるものである。
【0013】
また、前記ハンガーが引き上げられる上限位置に、前記ハンガーの受入れ口をテーパー形状としたハンガー受入れ部を設けたことを特徴とする請求項5または6記載の加湿器に係わるものである。
【0014】
また、前記ハンガー受入れ部には前記ハンガーを検知する検知部を設け、前記ハンガーの端部には被検知部を設けるとともに前記被検知部と干渉しない位置において前記ハンガーと前記ワイヤーが連結されることを特徴とする請求項7記載の加湿器に係わるものである。
【発明の効果】
【0015】
上述の構成にすることにより、加湿フィルタ全体を水槽部内に水没させて給水ができるとともに、加湿フィルタの水分を含んだ部分から水面上に引き上げられると直ちに送風機からの乾燥した空気を加湿させることができるため、加湿量が低下することなく安定した加湿性能を維持できるのである。
【0016】
また、水槽部は加湿フィルタの折り返し部分のみを水没させることのできる容量で充分であるため、機器の小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の加湿器の縦断面構成図である。
図2】本発明の加湿器における連結部を拡大した概略図である。
図3】本発明の加湿器における加湿フィルタが移動上限まで引き上げられた状態を拡大した断面図である。
図4】本発明の制御部のブロック図である。
図5】本発明の加湿器における加湿フィルタの動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
好適と考える本発明の最良の形態を、本発明の作用効果を示して簡単に説明する。
【0019】
本発明の加湿器は、加湿フィルタが下方に折り返し部分を持つように駆動部に連結し、この折り返し部分が加湿フィルタの下方にある水槽部の水に水没するように配置され、この駆動部によって加湿フィルタの一方の端部を引き上げ、他方の端部を降下させることを交互に行うことで加湿フィルタを水槽部内の水中に通過させるようにしたものである。つまり、加湿フィルタの乾燥した部分が水槽部を通過することで給水が行われ、給水が終わった部分から水面上に引き上げられるのである。
【0020】
これにより、加湿フィルタの吸い上げ能力に関わらず、加湿フィルタ全体を万遍なく水没させることができるとともに、加湿フィルタの水分を含んだ部分は直ちに送風機からの乾燥空気による送風に晒されることで空気を加湿させることが可能となることから、加湿量が低下することなく安定した加湿性能を維持できるのである。
【0021】
また、駆動モータに接続される駆動軸が回転すると、加湿フィルタの両端部に連結した連結部のうちの一方が駆動軸に巻き上げられ、他方は巻き付けが緩まる構造としたものであり、1組の駆動モータと駆動軸だけで加湿フィルタの両端部を交互に引き上げが可能となることから、部品が少なくできるので機器を小型化できる。
【0022】
また、仕切り部がガイドとなることで、湿潤した加湿フィルタの折り返し面同士が貼り付くことがなくなるため、給水するために必要な折り返しの形成を維持することができる。
【0023】
また、仕切り部の下部をR形状としたことで加湿フィルタが引っ掛かりにくくなるとともに、仕切り部と加湿フィルタの間に所定の間隙を設けていることで加湿フィルタが移動する空間に余裕があるため、より引っ掛からない構造となっている。これにより、スムーズに加湿フィルタの給水、加湿動作が行われることとなる。
【0024】
また、加湿フィルタの取り付けにはハンガーを用いることで簡単に取り付けできるとともに、加湿フィルタが二重となるため加湿性能をアップさせることができる。
【0025】
また、加湿フィルタはフィルタ挿通口からハンガー開口部に挿通させるだけでハンガーに取り付けできるので、加湿フィルタを容易に交換することができる。
【0026】
また、ハンガー受入れ部の内部のテーパー形状に沿わせてハンガーを収容することにより、ハンガーを引き上げる際の姿勢が傾いていたとしても正しい姿勢に直して収容することができるので、加湿フィルタを安定した姿勢で引き上げることが可能となる。
【0027】
また、ハンガーを検知する部分とワイヤーを連結する部分とが互いに干渉しない構造であることから、ハンガーを確実に検知することができるのである。
【実施例1】
【0028】
以下、本発明の一実施例を図面により説明する。
【0029】
図1は加湿器の縦断面構成図であり、1は加湿器本体、2は図示しない水タンクから供給される水を一時的に貯える水槽部、3は下方に折り返し部分を作るようにして両端部が吊るされるとともに、下方にある水槽部2内の水に折り返し部分が水没する状態で配置された加湿フィルタである。4は加湿フィルタ3の両端部を引っ掛けるハンガー5とハンガー5に連結するワイヤー6a、6bとにより構成される連結部である。7はワイヤー6a、6bを巻き上げる駆動軸8と駆動軸8を回転させる駆動モータ9とにより構成される駆動部である。10は送風機であり、11は送風機10によって乾燥した室内空気を本体1内部に取り込む吸気口、12は吸気口11から取り込んだ室内空気を加湿フィルタ3に通過させることで加湿させ室内に排出する吹出口である。また、13は加湿フィルタ3の折り返し部分の内側に配置され、下部形状をR形状に形成した仕切り部である。
【0030】
加湿フィルタ3を構成する素材として、疎水性繊維であるポリエステルと親水性繊維であるレーヨンを混紡した不織布を使用し、加湿フィルタ3は折り曲げ自在に柔軟性を有するようにシート状に形成している。なお、加湿フィルタ3を構成する素材はこれに限らず、例えばポリエステルのみを使用した不織布やダブルラッセル編みなどの三次元編みによる生地でもよい。
【0031】
駆動軸8には2本のワイヤー6a、6bがつながれており、ワイヤー6a、6bは駆動軸8にそれぞれ逆方向に巻き付けられている。この2本のワイヤー6a、6bは駆動軸8の下方にある加湿フィルタ3の各両端部を引っ掛けるハンガー5にそれぞれ連結される。また、ワイヤー6a、6bは加湿フィルタ3が移動する距離に対して余裕を持たせた長さとなっており、これにより仕切り部13と加湿フィルタ3の間に所定の間隙が設けられることとなるので、加湿フィルタ3は仕切り部13に引っ掛かることがない。
【0032】
図2は連結部4の拡大図である。ハンガー5は、ハンガー開口部14と、ハンガー5の側部を切り欠いたフィルタ挿通口15とを有し、シート状のフィルタ材の端部をつないでループ状とした加湿フィルタ3が、フィルタ挿通口15よりスライドさせることでハンガー開口部14に挿通されるようになっている。なお、加湿フィルタ3はハンガー開口部14に挿通するだけでもよいが、ハンガー5にクリップ等を設けて加湿フィルタ3を固定するようにしてもよい。さらに、フィルタ挿通口15から加湿フィルタ3が抜け落ちないようにフィルタ挿通口15を閉塞できるようにしてもよい。
【0033】
また、ハンガー5の両端には後述するハンガー検知機構の被検知部である突起16が設けられるとともに、ハンガー5の重心である中央部にはワイヤー6を連結する。なお、突起16の設置についてはハンガー5両端のどちらか一端のみに設置でもよい。
【0034】
図3は加湿フィルタ3が移動範囲の上限まで引き上げられた状態を拡大した断面図であり、17は上昇してきたハンガー5を収容するためのハンガー受入れ部である。
【0035】
ハンガー受入れ部17は駆動部7によって引き上げられるハンガー5の移動範囲の上限に仕切り部13を挟んで計2箇所設けられる。ハンガー受入れ部17の内部には、ハンガー5が収容される受入れ口から奥方向に入り込むにつれて狭くなるように内壁にテーパーを付けている。また、ハンガー受入れ部17には、ハンガー5が収容されたことを検知するための検知部18が隣接して設けられている。さらに、ハンガー5がハンガー受入れ部17に収容されたときに、ハンガー受入れ部17からハンガー5端部の突起16を突出させるための切り欠きが設けられている。
【0036】
検知部18にはフォトセンサを採用しており、被検知部である突起16がハンガー受入れ部17に設けた切り欠きより突出して検知部18からの発光を遮ることによってハンガー5の収容の有無が検知される。図3における破線矢印は検知部18からの発光を示したものである。なお、検知部18の検知機構についてはこの限りではなく、その他の検知機構を採用してもよい。
【0037】
この構成により、加湿フィルタ3を固定するハンガー5をワイヤー6で吊り上げるという簡単な機構によって加湿フィルタ3を移動させることができる。さらに、ハンガー受入れ部17へのハンガー5の収容についても、ハンガー受入れ部17内部のテーパー形状に沿わせることでハンガー5を引き上げる際の姿勢が傾いていても正しい姿勢に直して収容することができるので、安定した姿勢でスムーズに行うことが可能となる。
【0038】
また、突起16をハンガー5の端部に設け、ワイヤー6をハンガー5の中央部に連結したことにより、ハンガー5を検知するときにワイヤー6が検知部18に引っ掛かったり、誤作動させたりすることがないので、確実にハンガー5を検知することができる。
【0039】
図4は制御部の構成を示すブロック図であり、19はマイクロコンピュータ(以下、マイコンと記す)であり、このマイコン19の入力側には、運転スイッチなどの操作キーが配置された操作部20と室内の湿度を検知する湿度センサ21が接続されている。また、マイコン19の出力側には、駆動モータ9と送風機10が接続されている。
【0040】
次に、上記構成からなる動作と作用について、図4および図5を用いて説明する。
【0041】
図5は加湿フィルタの動作を説明する図である。加湿器の運転前は、図5(a)のように加湿フィルタ3は水槽部2内の水面より上にある。この状態で操作部20の運転スイッチを入れると、マイコン19により駆動モータ9が運転を始め、駆動軸8を回転させる。また、ほぼ同時に送風機10の運転も開始させる。
【0042】
駆動軸8には2本のワイヤー6a、6bが互いに逆方向に巻き付けられているので、加湿フィルタ3を上方に引き上げているワイヤー6aの巻き付けが緩まるとともに、加湿フィルタ3の下方側にあるハンガー5に連結されたワイヤー6bが駆動軸8に巻き上げられ、加湿フィルタ3は下方にある水槽部2に引っ張られる。
【0043】
図5(b)に示すように、加湿フィルタ3はワイヤー6bに引っ張られることで先端部から水槽部2の水中を通過することとなり、通過後は水面上に引き上げられる。つまり、加湿フィルタ3が水槽部2を通過する際に給水が行われるのである。
【0044】
このとき、加湿フィルタ3の折り返し部分の内側に配置された仕切り部13が加湿フィルタ3の動作におけるガイドとなる。さらに、仕切り部13の下部形状をR形状にするとともに、加湿フィルタ3を巻き上げるワイヤー6の長さに余裕を持たせているために仕切り部13と加湿フィルタ3の間に所定の間隙が設けられることとなり、加湿フィルタ3は仕切り部13に引っ掛かることがなく、スムーズに移動する。
【0045】
以上の加湿フィルタ3の動作により、加湿フィルタ3全体が水槽部2内を通過して給水が行われることとなる。
【0046】
そして、加湿フィルタ3をシート状に形成していることから、この給水機構により加湿フィルタ3の面積を大きくしても加湿フィルタ3全体に万遍なく給水させることが可能となる。
【0047】
また、加湿フィルタ3は水を吸い上げるのではなく水槽部2内を通過させるので、加湿フィルタ3を形成する素材の親水性が低くても加湿フィルタ3全体に万遍なく給水させることができるため、加湿フィルタ3を形成する素材の選択自由度が広がるのである。さらには、経年使用によってスケールが付着して吸い上げ能力の低下した加湿フィルタ3でも万遍なく給水させることが可能なのである。
【0048】
なお、加湿器の運転中は送風機10によって室内の乾燥空気を本体1内部に取り込んでいるため、水槽部2から引き上げられた加湿フィルタ3の水分を含んだ部分から直ちに空気を加湿できることとなり、この加湿空気を吹出口12から室内へ放出する。図5(b)における白抜き矢印は室内から取り込まれた乾燥空気を示しており、黒矢印は加湿フィルタ3を通過後の加湿空気を示したものである。これにより、加湿フィルタ3の給水動作から加湿動作に至るまでの時間のロスが生じないのである。
【0049】
その後、駆動軸8に巻き上げられたワイヤー6bに連結するハンガー5がハンガー受入れ部17に収容されると、ハンガー受入れ部17に隣接する検知部18によって突起16を検知し、この検知部18からの信号に基づいてマイコン19が駆動モータ9を停止させる。駆動モータ9の停止によりワイヤー6bの巻き上げがストップするため、加湿フィルタ3は図5(c)に示す姿勢となって静止し、給水が完了する。
【0050】
図5(c)の状態で所定時間が経過すると、送風機10の送風により加湿フィルタ3は徐々に水分を奪われて乾燥するため、再度加湿フィルタ3に給水が必要となる。マイコン19は前記した回転方向とは逆に駆動モータ9を駆動させてワイヤー6aを巻き上げ、加湿フィルタ3を再び水槽部2に通過させて給水を行い、給水が終わると加湿フィルタ3は図5(a)と同じ姿勢となって静止することとなる。
【0051】
そして、マイコン19は前記した加湿フィルタ3の給水動作を所定時間において定期的に繰り返したり、湿度センサ21からの信号に基づいて急速に加湿が必要なときには連続的に行ったりすることで加湿運転を行う。
【0052】
なお、操作部20の運転スイッチにより加湿器の運転停止指示がなされると、マイコン19は駆動モータ9の駆動により加湿フィルタ3を水槽部2の水面から引き上げた後に静止させるとともに、送風機10をあらかじめ設定した時間だけ運転をさせて加湿フィルタ3に送風することで、加湿フィルタ3を乾燥させるようにする。
【0053】
これにより、加湿運転停止後に加湿フィルタ3に給水されることはなく、次に加湿運転を開始するまで加湿フィルタ3は乾燥した状態を維持しており、カビ・雑菌の繁殖を抑えることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 本体
2 水槽部
3 加湿フィルタ
4 連結部
5 ハンガー
6 ワイヤー
7 駆動部
8 駆動軸
9 駆動モータ
10 送風機
11 吸気口
12 吹出口
13 仕切り部
14 ハンガー開口部
15 フィルタ挿通口
16 被検知部(突起)
17 ハンガー受入れ部
18 検知部
図1
図2
図3
図4
図5