【実施例1】
【0028】
以下、本発明の一実施例を図面により説明する。
【0029】
図1は加湿器の縦断面構成図であり、1は加湿器本体、2は図示しない水タンクから供給される水を一時的に貯える水槽部、3は下方に折り返し部分を作るようにして両端部が吊るされるとともに、下方にある水槽部2内の水に折り返し部分が水没する状態で配置された加湿フィルタである。4は加湿フィルタ3の両端部を引っ掛けるハンガー5とハンガー5に連結するワイヤー6a、6bとにより構成される連結部である。7はワイヤー6a、6bを巻き上げる駆動軸8と駆動軸8を回転させる駆動モータ9とにより構成される駆動部である。10は送風機であり、11は送風機10によって乾燥した室内空気を本体1内部に取り込む吸気口、12は吸気口11から取り込んだ室内空気を加湿フィルタ3に通過させることで加湿させ室内に排出する吹出口である。また、13は加湿フィルタ3の折り返し部分の内側に配置され、下部形状をR形状に形成した仕切り部である。
【0030】
加湿フィルタ3を構成する素材として、疎水性繊維であるポリエステルと親水性繊維であるレーヨンを混紡した不織布を使用し、加湿フィルタ3は折り曲げ自在に柔軟性を有するようにシート状に形成している。なお、加湿フィルタ3を構成する素材はこれに限らず、例えばポリエステルのみを使用した不織布やダブルラッセル編みなどの三次元編みによる生地でもよい。
【0031】
駆動軸8には2本のワイヤー6a、6bがつながれており、ワイヤー6a、6bは駆動軸8にそれぞれ逆方向に巻き付けられている。この2本のワイヤー6a、6bは駆動軸8の下方にある加湿フィルタ3の各両端部を引っ掛けるハンガー5にそれぞれ連結される。また、ワイヤー6a、6bは加湿フィルタ3が移動する距離に対して余裕を持たせた長さとなっており、これにより仕切り部13と加湿フィルタ3の間に所定の間隙が設けられることとなるので、加湿フィルタ3は仕切り部13に引っ掛かることがない。
【0032】
図2は連結部4の拡大図である。ハンガー5は、ハンガー開口部14と、ハンガー5の側部を切り欠いたフィルタ挿通口15とを有し、シート状のフィルタ材の端部をつないでループ状とした加湿フィルタ3が、フィルタ挿通口15よりスライドさせることでハンガー開口部14に挿通されるようになっている。なお、加湿フィルタ3はハンガー開口部14に挿通するだけでもよいが、ハンガー5にクリップ等を設けて加湿フィルタ3を固定するようにしてもよい。さらに、フィルタ挿通口15から加湿フィルタ3が抜け落ちないようにフィルタ挿通口15を閉塞できるようにしてもよい。
【0033】
また、ハンガー5の両端には後述するハンガー検知機構の被検知部である突起16が設けられるとともに、ハンガー5の重心である中央部にはワイヤー6を連結する。なお、突起16の設置についてはハンガー5両端のどちらか一端のみに設置でもよい。
【0034】
図3は加湿フィルタ3が移動範囲の上限まで引き上げられた状態を拡大した断面図であり、17は上昇してきたハンガー5を収容するためのハンガー受入れ部である。
【0035】
ハンガー受入れ部17は駆動部7によって引き上げられるハンガー5の移動範囲の上限に仕切り部13を挟んで計2箇所設けられる。ハンガー受入れ部17の内部には、ハンガー5が収容される受入れ口から奥方向に入り込むにつれて狭くなるように内壁にテーパーを付けている。また、ハンガー受入れ部17には、ハンガー5が収容されたことを検知するための検知部18が隣接して設けられている。さらに、ハンガー5がハンガー受入れ部17に収容されたときに、ハンガー受入れ部17からハンガー5端部の突起16を突出させるための切り欠きが設けられている。
【0036】
検知部18にはフォトセンサを採用しており、被検知部である突起16がハンガー受入れ部17に設けた切り欠きより突出して検知部18からの発光を遮ることによってハンガー5の収容の有無が検知される。
図3における破線矢印は検知部18からの発光を示したものである。なお、検知部18の検知機構についてはこの限りではなく、その他の検知機構を採用してもよい。
【0037】
この構成により、加湿フィルタ3を固定するハンガー5をワイヤー6で吊り上げるという簡単な機構によって加湿フィルタ3を移動させることができる。さらに、ハンガー受入れ部17へのハンガー5の収容についても、ハンガー受入れ部17内部のテーパー形状に沿わせることでハンガー5を引き上げる際の姿勢が傾いていても正しい姿勢に直して収容することができるので、安定した姿勢でスムーズに行うことが可能となる。
【0038】
また、突起16をハンガー5の端部に設け、ワイヤー6をハンガー5の中央部に連結したことにより、ハンガー5を検知するときにワイヤー6が検知部18に引っ掛かったり、誤作動させたりすることがないので、確実にハンガー5を検知することができる。
【0039】
図4は制御部の構成を示すブロック図であり、19はマイクロコンピュータ(以下、マイコンと記す)であり、このマイコン19の入力側には、運転スイッチなどの操作キーが配置された操作部20と室内の湿度を検知する湿度センサ21が接続されている。また、マイコン19の出力側には、駆動モータ9と送風機10が接続されている。
【0040】
次に、上記構成からなる動作と作用について、
図4および
図5を用いて説明する。
【0041】
図5は加湿フィルタの動作を説明する図である。加湿器の運転前は、
図5(a)のように加湿フィルタ3は水槽部2内の水面より上にある。この状態で操作部20の運転スイッチを入れると、マイコン19により駆動モータ9が運転を始め、駆動軸8を回転させる。また、ほぼ同時に送風機10の運転も開始させる。
【0042】
駆動軸8には2本のワイヤー6a、6bが互いに逆方向に巻き付けられているので、加湿フィルタ3を上方に引き上げているワイヤー6aの巻き付けが緩まるとともに、加湿フィルタ3の下方側にあるハンガー5に連結されたワイヤー6bが駆動軸8に巻き上げられ、加湿フィルタ3は下方にある水槽部2に引っ張られる。
【0043】
図5(b)に示すように、加湿フィルタ3はワイヤー6bに引っ張られることで先端部から水槽部2の水中を通過することとなり、通過後は水面上に引き上げられる。つまり、加湿フィルタ3が水槽部2を通過する際に給水が行われるのである。
【0044】
このとき、加湿フィルタ3の折り返し部分の内側に配置された仕切り部13が加湿フィルタ3の動作におけるガイドとなる。さらに、仕切り部13の下部形状をR形状にするとともに、加湿フィルタ3を巻き上げるワイヤー6の長さに余裕を持たせているために仕切り部13と加湿フィルタ3の間に所定の間隙が設けられることとなり、加湿フィルタ3は仕切り部13に引っ掛かることがなく、スムーズに移動する。
【0045】
以上の加湿フィルタ3の動作により、加湿フィルタ3全体が水槽部2内を通過して給水が行われることとなる。
【0046】
そして、加湿フィルタ3をシート状に形成していることから、この給水機構により加湿フィルタ3の面積を大きくしても加湿フィルタ3全体に万遍なく給水させることが可能となる。
【0047】
また、加湿フィルタ3は水を吸い上げるのではなく水槽部2内を通過させるので、加湿フィルタ3を形成する素材の親水性が低くても加湿フィルタ3全体に万遍なく給水させることができるため、加湿フィルタ3を形成する素材の選択自由度が広がるのである。さらには、経年使用によってスケールが付着して吸い上げ能力の低下した加湿フィルタ3でも万遍なく給水させることが可能なのである。
【0048】
なお、加湿器の運転中は送風機10によって室内の乾燥空気を本体1内部に取り込んでいるため、水槽部2から引き上げられた加湿フィルタ3の水分を含んだ部分から直ちに空気を加湿できることとなり、この加湿空気を吹出口12から室内へ放出する。
図5(b)における白抜き矢印は室内から取り込まれた乾燥空気を示しており、黒矢印は加湿フィルタ3を通過後の加湿空気を示したものである。これにより、加湿フィルタ3の給水動作から加湿動作に至るまでの時間のロスが生じないのである。
【0049】
その後、駆動軸8に巻き上げられたワイヤー6bに連結するハンガー5がハンガー受入れ部17に収容されると、ハンガー受入れ部17に隣接する検知部18によって突起16を検知し、この検知部18からの信号に基づいてマイコン19が駆動モータ9を停止させる。駆動モータ9の停止によりワイヤー6bの巻き上げがストップするため、加湿フィルタ3は
図5(c)に示す姿勢となって静止し、給水が完了する。
【0050】
図5(c)の状態で所定時間が経過すると、送風機10の送風により加湿フィルタ3は徐々に水分を奪われて乾燥するため、再度加湿フィルタ3に給水が必要となる。マイコン19は前記した回転方向とは逆に駆動モータ9を駆動させてワイヤー6aを巻き上げ、加湿フィルタ3を再び水槽部2に通過させて給水を行い、給水が終わると加湿フィルタ3は
図5(a)と同じ姿勢となって静止することとなる。
【0051】
そして、マイコン19は前記した加湿フィルタ3の給水動作を所定時間において定期的に繰り返したり、湿度センサ21からの信号に基づいて急速に加湿が必要なときには連続的に行ったりすることで加湿運転を行う。
【0052】
なお、操作部20の運転スイッチにより加湿器の運転停止指示がなされると、マイコン19は駆動モータ9の駆動により加湿フィルタ3を水槽部2の水面から引き上げた後に静止させるとともに、送風機10をあらかじめ設定した時間だけ運転をさせて加湿フィルタ3に送風することで、加湿フィルタ3を乾燥させるようにする。
【0053】
これにより、加湿運転停止後に加湿フィルタ3に給水されることはなく、次に加湿運転を開始するまで加湿フィルタ3は乾燥した状態を維持しており、カビ・雑菌の繁殖を抑えることができる。