(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記亜湖粉層残存米炊飯フローの前記沸騰工程は、前記加熱手段への電力または通電率を、前記白米および前記無洗米の炊飯フローの前記沸騰工程より低下させていることを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
前記沸騰工程後に実行するむらし工程は、前記沸騰工程より前記加熱手段への電力または通電率を低くした第1低加熱ステップと、前記第1低加熱ステップより前記加熱手段への電力または通電率を高くした高加熱ステップと、前記高加熱ステップより前記加熱手段への電力または通電率を低くした第2低加熱ステップとを有し、
前記亜湖粉層残存米炊飯フローは、前記高加熱ステップの実行時間を、前記白米および前記無洗米の炊飯フローより長くしていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の炊飯器。
前記亜湖粉層残存米炊飯フローは、前記第1低加熱ステップの実行時間を、前記白米および前記無洗米の炊飯フローより長くする一方、第2低加熱ステップの実行時間を、前記白米および前記無洗米の炊飯フローより短くしていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の炊飯器。
前記亜湖粉層残存米炊飯フローは、前記沸騰工程前に実行する予熱工程の実行時間を、前記白米および前記無洗米の炊飯フローより長くしていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の炊飯器。
1カップ分の白米を計量可能な白米用計量カップと、白米用計量カップより容積が少なく1カップ分の無洗米を計量可能な無洗米用計量カップとを設けるとともに、前記炊飯鍋に炊飯容量に応じた加水量を示す1種の目盛を設け、亜湖粉層残存米を前記無洗米用計量カップによって計量し、前記目盛に従って水をセット可能としたことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の炊飯器。
【背景技術】
【0002】
飯米は、玄米のヌカ層と亜湖粉層を取り除いた白米が一般的であるが、この白米は一部にヌカが残っているため、洗米する必要がある。また、ヌカ層と亜湖粉層を完全に取り除き、洗米を不要とした無洗米も普及されている。
【0003】
白米と無洗米とは、精米方法の違いにより1粒の大きさが異なり、白米より無洗米の方が小さいため、同一の計量カップを用いた場合、無洗米の方が多くセットされる。そして、多くセットされた無洗米を、白米と同一の加水量で炊飯した場合には、水量が不足しているため固く炊き上がる。そのため、無洗米を炊飯可能な炊飯器は、無洗米専用の計量カップを設けたり、炊飯鍋に無洗米用の加水量を示す目盛を設ける等の方法が採用されている。
【0004】
特許文献1には、白米、無洗米および玄米を炊飯可能な炊飯器が記載されている。この炊飯器は、飯米の種類毎の炊飯フローが設けられている。各炊飯フローは、予熱工程および沸騰工程の実行時間、温度、加熱量を変更することにより、飯米の種類が異なっても、炊飯容量が同一の場合には同一の加水量で炊飯を可能としている。
【0005】
一方、近年では、ヌカ層だけを取り除いた亜湖粉層残存米が市販されている。この亜湖粉層残存米は無洗米に属し、洗米が不要である。しかし、亜湖粉層残存米は、無洗米と比較して、1粒の大きさが大きいうえ吸水性が悪い。そのため、同一の炊飯容量かつ同一の加水量で炊飯を行うと、固く炊き上がるという不都合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明では、ヌカ層だけを取り除いた亜湖粉層残存米を白米および無洗米と同様に美味しく炊き上げることが可能な炊飯器を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明の炊飯器は、炊飯鍋を配設した炊飯器本体と、前記炊飯器本体内に配設され、前記炊飯鍋を加熱する加熱手段と、前記加熱手段を制御し、洗米が必要な白米を炊き上げる白米炊飯フローと、洗米が不要な無洗米を炊き上げる無洗米炊飯フローと、洗米が不要で表面に亜湖粉層を有する亜湖粉層残存米を炊き上げる
亜湖粉層残存米炊飯フローと、を実行可能な制御手段とを有し、前記亜湖粉層残存米炊飯フローは、前記炊飯鍋内を沸騰させる沸騰工程の実行時間を、前記白米および前記無洗米の炊飯フローより長く構成している。
【0009】
この炊飯器は、亜湖粉層残存米を炊飯する場合、高温で加熱する沸騰工程の実行時間を、白米および無洗米を炊飯する場合と比較して長くしているため、じっくりと炊き上げることができる。その結果、吸水性が悪い亜湖粉層残存米であっても、炊き上げ状態が固くなることを防止でき、美味しく炊き上げることができる。
【0010】
この炊飯器では、前記亜湖粉層残存米炊飯フローの前記沸騰工程は、前記加熱手段への電力または通電率を、前記白米および前記無洗米の炊飯フローの前記沸騰工程より低下させている。このようにすれば、炊飯鍋からの水分の蒸発を抑えることができるため、確実に沸騰工程の実行時間を長くすることができる。
なお、沸騰工程では、加熱手段への電力または通電率を白米および無洗米の炊飯フローより低下させるが、実行時間を長くすることにより、加熱手段に供給する電力量は同等になるように構成している。これにより、飯米への加熱量を確保できる。但し、電力量を低下させるとは、前述のように投入する電力を低下させる構成、通電率を低下させる構成、電力と通電率の両方を低下させる構成がある。
【0011】
また、前記沸騰工程後に実行するむらし工程は、前記沸騰工程より前記加熱手段への電力または通電率を低くした第1低加熱ステップと、前記第1低加熱ステップより前記加熱手段への電力または通電率を高くした高加熱ステップと、前記高加熱ステップより前記加熱手段への電力または通電率を低くした第2低加熱ステップとを有し、前記亜湖粉層残存米炊飯フローは、前記高加熱ステップの実行時間を、前記白米および前記無洗米の炊飯フローより長くしている。このようにすれば、米粒間の水分を確実に放出させ、ベタ付きを防止できるとともに、炊飯鍋内での結露を確実に抑制できる。そして、この構成は、沸騰工程での加熱を抑えて実行時間を長くしたことにより実行可能なものである。即ち、沸騰工程にて白米および無洗米と同様の実行時間(加熱量)で加熱した場合、むらし工程の高加熱ステップの実行時間を長くすると、過剰加熱により焦げが生じるが、本発明の亜湖粉層残存米炊飯フローの場合、このような問題が生じることはない。
【0012】
さらに、前記亜湖粉層残存米炊飯フローは、前記むらし工程の実行時間を、前記白米および前記無洗米の炊飯フローより短くしている。このようにすれば、水分が少なくなった状態での加熱時間を短くすることができるため、炊き上げた亜湖粉層残存米の黄変を抑制できる。因みに、亜湖粉層残存米は、表面に亜湖粉層が残った状態であるため、白米および無洗米と比べて若干ではあるが黄色味を帯びている。そのため、白米および無洗米と同様にむらし工程を実行すると、白米および無洗米と比べると恰も黄変しているかのような炊き上げ状態となってしまうが、本発明の亜湖粉層残存米炊飯フローの場合、このような不都合が生じることを抑制できる。
【0013】
さらにまた、前記亜湖粉層残存米炊飯フローは、前記第1低加熱ステップの実行時間を、前記白米および前記無洗米の炊飯フローより長くする一方、第2低加熱ステップの実行時間を、前記白米および前記無洗米の炊飯フローより短くしている。このようにすれば、蒸らし不足を抑制しつつ、総炊飯時間が長くなることを抑制できる。
【0014】
そして、前記亜湖粉層残存米炊飯フローは、前記沸騰工程前に実行する予熱工程の実行時間を、前記白米および前記無洗米の炊飯フローより長くしている。このようにすれば、亜湖粉層残存米への吸水を十分に行うことができるため、一層、炊き上げ状態が固くなることを防止でき、美味しく炊き上げることができる。具体的には、亜湖粉層残存米の含水率が、白米および無洗米の含水率と同等となるように、予熱工程の実行時間を長くしている。
【0015】
なお、前記沸騰工程は、前記炊飯鍋内を沸騰温度まで昇温させる昇温ステップと、沸騰温度に維持する沸騰維持ステップとを有し、前記亜湖粉層残存米炊飯フローは、前記昇温ステップおよび前記沸騰維持ステップのうち少なくとも一方を、前記白米および前記無洗米の炊飯フローより長くしている。このようにすれば、吸水性が悪い亜湖粉層残存米に確実に吸水させ、白米および無洗米と同様の含水率にすることができる。そのため、炊き上げ状態が固くなることを防止でき、美味しく炊き上げることができる。
また、1カップ分の白米を計量可能な白米用計量カップと、白米用計量カップより容積が少なく1カップ分の無洗米を計量可能な無洗米用計量カップとを設けるとともに、前記炊飯鍋に炊飯容量に応じた加水量を示す1種の目盛を設け、亜湖粉層残存米を前記無洗米用計量カップによって計量し、前記目盛に従って水をセット可能としている。計量カップを飯米の種類毎に使い分ける煩わしさや、目盛の線が増えることによる見づらさを軽減できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の炊飯器では、吸水性が悪い亜湖粉層残存米を炊飯する場合、高温で加熱する沸騰工程の実行時間を、白米および無洗米を炊飯する場合と比較して長くしているため、炊き上げ状態が固くなることを防止でき、白米および無洗米と同様に美味しく炊き上げることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る実施形態の炊飯器を示す。この炊飯器は、炊飯鍋10を着脱可能に収容する炊飯器本体12と、炊飯器本体12に開閉可能に取り付けた蓋体20とを備えている。そして、本実施形態では、白米、無洗米および亜湖粉層残存米(以下「亜湖粉米」と称する。)を同一加水量で同様に美味しく炊き上げることを可能としたものである。
【0020】
炊飯鍋10は、上端を開口した有底筒状をなし、炊飯する飯米および水をセットするものである。この炊飯鍋10は、後述する誘導加熱コイル16に高周波電流を流すことにより、発生した磁界によって渦電流が流れて誘導加熱される。炊飯鍋10の内面側には炊飯容量毎の加水量(位置)を示す目盛11がパット印刷により設けられている。この目盛11は、白米、無洗米および亜湖粉米全てに共通する1種のみである。
【0021】
炊飯器本体12は、外装体の上部に開口部13が設けられ、この開口部13の下側に、炊飯鍋10の収容部を構成する内胴14と非導電性材料からなる保護枠15とが配設されている。保護枠15の外周面下部には、炊飯鍋10を誘導加熱する第1加熱手段である誘導加熱コイル16がフェライトコア17を介して配設されている。また、内胴14の外周面には、炊飯鍋10の上側を加熱する第2加熱手段である胴ヒータ18が配設されている。さらに、保護枠15には、炊飯鍋10の温度を検出するための第1温度検出手段である鍋用温度センサ19が配設されている。
【0022】
蓋体20は、炊飯器本体12に回動可能に取り付けられ、炊飯器本体12の開口部13を閉塞するものである。この蓋体20には、炊飯鍋10を臨む内面側に放熱板21が配設され、この放熱板21の上面に第3加熱手段である蓋ヒータ22が配設されている。また、放熱板21の下面には、炊飯鍋10の上端開口を密閉する内蓋23が着脱可能に配設されている。さらに、蓋体20には、炊飯鍋10内と外部とを連通する排気通路24が設けられている。さらにまた、蓋体20には、炊飯鍋10内の温度を検出する第2温度検出手段である蓋用温度センサ25が、放熱板21に接するように配設されている。なお、図中符号26は、蓋体20を開放操作するための開放操作部材である。
【0023】
この炊飯器において、炊飯器本体12の正面上部には、ユーザが炊飯条件を入力したり、現状の動作状態を表示するための操作パネル部27が設けられている。この操作パネル部27は、
図2に示すように、中央の液晶表示板36の周囲に、入力手段である複数のスイッチ28〜35を配設したものである。
【0024】
液晶表示板36の右側には、炊飯処理の実行スイッチである炊飯スイッチ28と、現在時刻や炊飯時刻などを変更するためのアップスイッチ29およびダウンスイッチ30と、予約炊飯の選択スイッチである予約スイッチ31とが設けられている。また、液晶表示板36の左側には、炊飯処理および保温処理や選択状態を解除(停止)するためのとりけしスイッチ32と、無洗米を選択するための無洗米スイッチ33と、メニューを選択するためのメニュースイッチ34と、保温処理の実行スイッチであるとともに保温処理のモードを選択するための保温選択スイッチ35とが設けられている。
【0025】
液晶表示板36には、予約時刻や炊飯に要する残時間などを示す数値セグメント37の周囲に、炊飯可能なメニューの選択状態を示すメニューセグメント38が設けられている。このメニューセグメント38中には、無洗米スイッチ33の操作により選択可能な無洗米表示部38aと、メニュースイッチ34の操作により選択可能な亜湖粉米表示部38bとが設けられている。また、数値セグメント37の上部には、白米の選択状態を示すとともに、炊き上がり固さ(5段階)の設定状態を示す三角形状の印表示部39が設けられている。
【0026】
また、炊飯器には、炊飯器本体12の正面側にホルダー40を介して制御基板41が配設され、この制御基板41に制御手段であるマイコン42が実装されている。このマイコン42は、
図3に示すように、操作パネル部27のスイッチ操作による入力情報と、温度センサ19,25からの入力情報に基づいて、予め設定されたプログラムに従って誘導加熱コイル16、胴ヒータ18、蓋ヒータ22を制御し、炊飯制御および保温制御を実行する。なお、
図1中、符号43は制御基板41を冷却するためのファンである。
【0027】
具体的には、マイコン42が内蔵した記憶手段であるROMには、各メニューに応じた炊飯フローが記憶されている。そして、本実施形態の炊飯フローは、白米を炊き上げるための白米炊飯フローと、無洗米を炊き上げるための無洗米炊飯フローと、亜湖粉米を炊き上げるための亜湖粉米炊飯フローとを備える。
【0028】
そのうち、白米および無洗米は、
図4(A),(B)に示す計量カップ44A,44Bによって炊飯容量を計量して炊飯鍋10にセットするとともに、炊飯鍋10の目盛11に従って加水量を調整して炊飯処理を実行する構成としている。また、亜湖粉米は、無洗米用の計量カップ44Bを使用して炊飯容量を計量し、炊飯鍋10の目盛11に従って加水量を調整して炊飯処理を実行する構成としている。即ち、本実施形態では、亜湖粉米は大別すると洗米が不要な無洗米に属するため、無洗米用の計量カップ44Bにて計量する構成としている。
【0029】
なお、計量カップ44A,44Bは、上端を開口して下端を閉塞した有底円筒状をなす。これらの上端縁には、補強用のフランジ部45A,45Bが設けられている。これらの計量カップ44A,44Bは、それぞれ内部に予め設定した量(例えば146g)の白米および無洗米を収容できる容量のものである。但し、白米と無洗米とは1粒の大きさが異なるため、白米用の計量カップ44Aは、無洗米用の計量カップ44Bより容積が大きくなるように形成されている。そのため、ユーザの誤使用を防止するために、白米専用の計量カップ44Aは、透光性を有する乳白色の樹脂により形成され、無洗米専用の計量カップ44Bは、透光性を有する薄緑色の樹脂により形成されている。
【0030】
白米、無洗米および亜湖粉米の各炊飯フロー(処理)は、
図5(A),(B),(C)および
図6に示すように、予熱工程、沸騰工程およびむらし工程を有し、各工程を順番に実行した後、保温処理に移行する。そのうち、沸騰工程は、昇温ステップと沸騰維持ステップとを有し、むらし工程は、第1低加熱ステップと高加熱ステップと第2低加熱ステップとを有する構成としている。なお、
図5および
図6の各工程の実行時間Ta〜Tcはあくまで一例であり、本発明はこれらの数値に限定されるものではない。
【0031】
具体的には、予熱工程は、飯米に水を吸収させるためのものである。この予熱工程は、誘導加熱コイル16と蓋ヒータ22とが動作され、鍋用温度センサ19による下部測定温度が約40℃を維持するように、誘導加熱コイル16をオンオフ制御(温調)する。また、予熱工程は、予め設定した時間実行されると、次の沸騰工程に移行する。
【0032】
各炊飯フローのうち、亜湖粉米炊飯フローの予熱工程の実行時間Ta3は、白米炊飯フローおよび無洗米炊飯フローの実行時間Ta1,ta2より長く設定されている。具体的には、予熱工程の実行時間Taは、白米Ta1、無洗米Ta2、亜湖粉米Ta3の順番で長くなるように構成されている。例えば、2cupの炊飯容量の飯米を炊飯する場合、白米では18分、無洗米では25分、亜湖粉米では35分、予熱工程を実行する構成としている。言い換えれば、亜湖粉米炊飯フローの予熱工程の実行時間Ta3は、白米炊飯フローに対して約2倍、無洗米炊飯フローに対して約1.4倍に設定されている。これにより、予熱工程が終了した時点で、各種飯米の含水率が同等になるように構成されている。
【0033】
沸騰工程の昇温ステップは、炊飯鍋10内を沸騰直前の温度まで昇温させ、その途中で炊飯鍋10内の炊飯容量を判別するものである。この昇温ステップは、誘導加熱コイル16をフルパワーで動作させるとともに、蓋ヒータ22を動作させ、炊飯鍋10を高加熱量(電力)で加熱する(昇温1)。そして、鍋用温度センサ19による下部測定温度が急激に上昇し始め、その測定温度が第1目標温度(例えば60℃)になると昇温1を終了し、昇温2に移行する。昇温2では、誘導加熱コイル16および蓋ヒータ22による加熱を実行しながら、炊飯鍋10内にセットした飯米の炊飯容量を判別する。この昇温2は、蓋用温度センサ25による上部測定温度が第2目標温度(例えば60℃)になると終了し、昇温3に移行する。なお、容量判別工程は、昇温2の実行時間とROMに予め記憶されたデータテーブルとに基づいて判断する。昇温3は、蓋用温度センサ25による上部測定温度が第3目標温度(例えば70℃)になると終了し、次の沸騰維持ステップに移行する。
【0034】
沸騰工程の沸騰維持ステップは、炊飯鍋10内を沸騰温度に維持して飯米を炊き上げるものである。この沸騰維持ステップは、誘導加熱コイル16をオンオフ制御するとともに、胴ヒータ18および蓋ヒータ22を動作させ、炊飯鍋10内の水がほぼ無くなるまで実行される(沸騰維持1)。沸騰維持1は、鍋用温度センサ19による下部測定温度がドライアップ温度(例えば110℃)になると終了する。この沸騰維持1が終了すると、誘導加熱コイル16の出力を抑えてオンオフ制御して加熱する沸騰維持2を実行する。そして、この沸騰維持2を予め設定した時間実行すると、再び誘導加熱コイル16の出力を上げてオンオフ制御して加熱する沸騰維持3を実行する。沸騰維持3は、鍋用温度センサ19による下部測定温度がドライアップ温度(110℃)になると終了する。これにより、炊飯鍋10内の液体状の水を無くし(ドライアップ)、炊き上げることができる。
【0035】
昇温ステップおよび沸騰維持ステップからなる沸騰工程は、誘導加熱コイル16への電力および通電率のうち少なくとも一方を低下することにより、亜湖粉米炊飯フローの実行時間Tb3が、白米および無洗米の炊飯フローの実行時間Tb1,2より長くなるように構成している。但し、実行時間Tb3を長くすることにより、誘導加熱コイル16に供給する電力量は同等になるように構成している。
【0036】
具体的には、昇温ステップでは、昇温2,3での誘導加熱コイル16への電力(火力)を低下させることにより、亜湖粉米炊飯フローの実行時間が、白米炊飯フローおよび無洗米炊飯フローの実行時間より長くなるように設定されている。例えば、白米および無洗米では約4分、亜湖粉米では約6分、昇温ステップを実行する構成としている。言い換えれば、亜湖粉米炊飯フローの昇温ステップの実行時間は、白米炊飯フローおよび無洗米炊飯フローに対して約1.4倍に設定されている。
【0037】
また、沸騰維持ステップでは、沸騰維持1,3での誘導加熱コイル16への電力(火力)を低下させることにより、亜湖粉米炊飯フローの実行時間が、白米炊飯フローおよび無洗米炊飯フローの実行時間より長くなるように設定されている。例えば、白米では約13分、無洗米では約13分、亜湖粉米では約16分、沸騰維持ステップを実行する構成としている。言い換えれば、亜湖粉米炊飯フローの昇温ステップの実行時間は、白米炊飯フローに対して約1.20倍、無洗米炊飯フローに対して約1.25倍に設定されている。なお、白米炊飯フローと無洗米炊飯フローとは、沸騰維持2の実行時間の相違分だけ異なる。
【0038】
むらし工程は、炊き上げた炊飯鍋10内の米飯を蒸らすものである。このむらし工程は、胴ヒータ18を所定の通電率となるようにオンオフ制御するとともに、蓋ヒータ22を動作させながら、誘導加熱コイル16を制御して実行される。具体的には、まず第1低加熱ステップ(むらし1)で、誘導加熱コイル16への通電を最小限まで低下させた状態で、予め設定した実行時間が経過するまで待機する。むらし1が終了すると、高加熱ステップ(2度炊き)で、誘導加熱コイル16への電力を高くしてオンオフ制御しながら、予め設定した実行時間が経過する。2度炊きが終了すると、第2低加熱ステップ(むらし2)で、誘導加熱コイル16への通電を最小限まで低下させた状態で、予め設定した実行時間が経過するまで待機する。そして、むらし2が終了すると全ての炊飯フローが終了し、保温処理に移行する。
【0039】
各炊飯フローのうち、亜湖粉米炊飯フローでは、むらし工程の実行時間Tc3が、白米炊飯フローおよび無洗米炊飯フローの実行時間Tc1,2より短くなるように設定されている。例えば、白米および無洗米では約18分、亜湖粉米では約13分、むらし工程を実行する構成としている。言い換えれば、亜湖粉米炊飯フローのむらし工程の実行時間Tc3は、白米および無洗米の炊飯フローに対して約0.75倍に設定されている。
【0040】
具体的には、むらし1の実行時間は、亜湖粉米炊飯フローが、白米および無洗米の炊飯フローより長くなるように設定されている。例えば、白米および無洗米では約2分、亜湖粉米では約6分、むらし1を実行する構成としている。言い換えれば、亜湖粉米炊飯フローのむらし1の実行時間は、白米および無洗米の炊飯フローに対して約3倍に設定されている。
【0041】
また、2度炊きの実行時間は、亜湖粉米炊飯フローが、白米および無洗米の炊飯フローより長くなるように設定されている。例えば、白米および無洗米では約1分、亜湖粉米では約2分、2度炊きを実行する構成としている。言い換えれば、亜湖粉米炊飯フローの2度炊きの実行時間は、白米および無洗米の炊飯フローに対して約2倍に設定されている。
【0042】
さらに、むらし2の実行時間は、亜湖粉米炊飯フローが、白米および無洗米の炊飯フローより短くなるように設定されている。例えば、白米および無洗米では約15分、亜湖粉米では約5分、むらし2を実行する構成としている。言い換えれば、亜湖粉米炊飯フローのむらしの実行時間は、白米および無洗米の炊飯フローに対して約0.33倍に設定されている。
【0043】
このように、本発明では、3種の飯米を2種の計量カップ44A,44Bで計量し、1種の目盛11を利用して加水量を調整する構成としている。即ち、亜湖粉米は、専用の計量カップを設けるのではなく、既存の無洗米用の計量カップ44Bを兼用する構成としているため、飯米毎に使い分ける必要がある種類が増えることはない。しかも、同一種に属する無洗米の計量カップ44Bを兼用するため、ユーザの誤使用を防止できる。また、炊飯鍋10に加水量を示す専用の目盛を設ける必要がないよって、計量カップを飯米の種類毎に使い分ける煩わしさや、目盛の線が増えることによる見づらさを軽減できる。
【0044】
そして、亜湖粉米を無洗米と同じ炊飯量、同じ加水量で炊飯した場合、吸水性の違いにより炊き上がりが固くなる傾向があるが、本実施形態では、亜湖粉米専用の炊飯フローで炊き上げる構成としているため、炊飯容量や加水量を微調整して、米飯の炊き上げ固さを調整する必要がない。よって、ユーザの使用上の利便性が悪くなることを防止できる。
【0045】
具体的には、亜湖粉米の含水率が白米および無洗米の含水率と同等となるように、亜湖粉米炊飯フローは、沸騰工程前に実行する予熱工程の実行時間Ta3を白米炊飯フローおよび無洗米炊飯フローの実行時間Ta1,2より長くしている。これにより、亜湖粉米への吸水を十分に行うことができるため、炊き上げ状態が固くなることを防止でき、美味しく炊き上げることができる。
【0046】
また、亜湖粉米炊飯フローは、高温で加熱する沸騰工程の実行時間Tb3を、白米および無洗米炊飯フローの実行時間Tb1,2より長くしているため、吸水性が悪い亜湖粉米であっても、炊き上げ状態が固くなることを防止でき、美味しく炊き上げることができる。そして、沸騰工程の実行時間Tb3を長くするために、誘導加熱コイル16への電力を低下させているため、亜湖粉米に対する過剰な加熱を防ぎつつ、じっくりと炊き上げることができる。勿論、電力を低下させても、実行時間Tb3を長くしているため、電力量は同等であり、飯米への加熱量は十分確保できる。
【0047】
一方、亜湖粉米炊飯フローは、むらし工程の実行時間Tc3を、白米炊飯フローおよび無洗米炊飯フローの実行時間Tc1,2より短くしているため、炊き上げた亜湖粉米の黄変を抑制できる。即ち、亜湖粉米は、表面に亜湖粉層が残った状態であるため、白米および無洗米と比べて若干ではあるが黄色味を帯びている。そのため、白米および無洗米と同様にむらし工程を実行すると、白米および無洗米と比べると恰も黄変しているかのような炊き上げ状態となってしまうが、本発明の亜湖粉米炊飯フローの場合、このような不都合が生じることを抑制できる。
【0048】
また、むらし工程では、亜湖粉米炊飯フローは、高加熱ステップの実行時間を白米および無洗米炊飯フローより長くしているため、米粒間の水分を確実に放出させ、ベタ付きを防止できるとともに、炊飯鍋10内での結露を確実に抑制できる。そして、この構成は、沸騰工程での加熱を抑えて実行時間を長くしたことにより実行可能なものである。即ち、沸騰工程にて白米および無洗米と同様の実行時間(加熱量)で加熱した場合、高加熱ステップの実行時間を長くすると、過剰加熱により焦げが生じるが、本発明の亜湖粉米炊飯フローの場合、このような問題が生じることはない。しかも、第1低加熱ステップの実行時間を白米および無洗米炊飯フローより長くし、第2低加熱ステップの実行時間を白米および無洗米炊飯フローより短くしているため、蒸らし不足を抑制しつつ、総炊飯時間が長くなることを抑制できる。
【0049】
なお、本発明の炊飯器は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0050】
例えば、前記実施形態では、沸騰工程を構成する昇温ステップおよび沸騰維持ステップの両方の実行時間を長くしたが、一方だけを長くしてもよい。また、前記実施形態では、予熱工程の実行時間を、白米および無洗米炊飯フローより亜湖粉米炊飯フローが長くなるように設定したが、無洗米炊飯フローと同一にしてもよい。
【0051】
さらに、前記実施形態では、亜湖粉米炊飯フローを加熱手段として誘導加熱コイル16を搭載した誘導加熱方式の炊飯器に適用したが、加熱手段として伝熱性がよいアルミ材料からなる板材の内部に加熱ヒータを配設した加熱板を配設した炊飯器に適用してもよい。さらにまた、排気通路24に炊飯鍋10内と外部との連通を遮断可能なリリーフ弁を配設し、炊飯鍋10内を大気圧より高い圧力に昇圧可能な圧力炊飯器にも適用可能である。