(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記段部は逃げ面の底部側の始端から締付け方向に隣接する直立面に向かって下方に傾斜して延びる上面を有することを特徴とする請求項1に記載のいじり止め駆動穴付き締結具。
頭部に平面視多角様葉形状を形成する弧状直立面、前記多角様葉形状に外接する円弧面、この円弧面と前記弧状直立面とを繋ぐ位置にあって弧状直立面の底部付近から緩め方向に向かって上方に延びる逃げ面からなる駆動穴を有し、この駆動穴の底面に駆動レンチが駆動穴の底面まで落下するのを規制するための規制手段を配置したいじり止め駆動穴付き締結具であって、前記規制手段は平面視において、隣接する二つの弧状直立面の一方の締付け方向側小円弧部および締付け方向側部と、他方の弧状直立面の緩め方向側部および緩め方向側小円弧部との間に配置され、かつ縦断面視においては、当該締付け方向側小円弧部および締付け方向側部の底部に配置される段部であり、この段部は底面との間に段差を有するとともに、弧状直立面の締付け方向側部の底部付近に接続されていることを特徴とするいじり止め駆動穴付き締結具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ドライバー用のいじり止め機能がすり割り溝形状または十字穴形状の駆動穴に工夫を凝らすのに対して、6角レンチ用のいじり止め機能を構成しようとする場合には、緩め方向に駆動したときに6角レンチを逃がす構造を6角駆動穴に構成することが必要になる。
【0005】
そこで、この6角駆動穴の構造に着目すると、このねじ101は、図
15ないし図
18に示すようにその頭部102に取外し防止形6角形状の駆動穴103を有し、この駆動穴103には6角レンチ104が嵌合可能な平面視6角形を形成する直立面103aと、その底部を形成する底面103bとが存在している。
【0006】
このような構造において、緩み方向に6角レンチ104を逃がすためには、緩み方向に6角レンチ104を逃がす空間と、その空間に6角レンチ104を誘導するガイドが必要になる。そこで、これらの図面に課題解決案として併記するように、前記直立面103aの上方外周位に6角形状の6個の頂点を結ぶ円弧を持つ円弧面103cを形成するとともに、前記直立面103aと円弧面103cを繋ぐ位置に前記6角形状の頂点を基点として各直立面103aの底部から緩め方向に向かって上方に一定勾配で延びる逃げ面103dを各直立面103aと直交させて形成しておくことが有効な手段として考えられる。このようにすることで、逃げ面103dと円弧面103cとにより直立面103aを削り取るように逃がしスペース103eを確保することができ、逃げ面103dによって6角レンチ104をかかる逃がしスペース103eに誘導しながら駆動穴103から離脱させることが期待できる。
【0007】
しかしながら、更に考察すると、このような構造の6角駆動穴では、6角レンチ104が緩め方向に回転し始める段階では、図
19に示すように6角レンチ104の先端が底面103bに当接しており、その頂部104aが逃げ面103d上に乗り上げておらず、また逃げ面103d上に乗り上げやすい位置にもない。そのため、6角レンチ104に大きな推力が加わると、その頂部104aの先端が逃がしスペース103eに回り込む際にこの頂部104aの先端および6角レンチ104の駆動面104bの縁部104cが直立面103aの底部側の縁部103fに食込むおそれがある。そして、この食込みにより、6角レンチ104の頂部104aは逃がしスペース103eに回り込むことができず、食込みによる摩擦力により6角レンチ104の緩め方向の駆動力がいじり止めのねじ101に伝達され、このねじ101が緩んで勝手に取外されてしまったり、前述の食込み部分から直立面103aの縁部103fが潰されてしまうという問題が発生する蓋然性が高い。
【0008】
また、6角レンチ104にあっては異なる規格に基づいて製造されたものが普及していることから、時には図
20に示すようにねじ101の頭部102に成形された駆動穴103に対して適正な6角駆動レンチ104よりもわずかに小さなサイズの6角レンチ114が使用される恐れがある。この時には、そのサイズが小さい分だけ6角レンチ114の駆動面114bの縁部114cが駆動穴103の直立面103aと底面103bとの接合位置から離れることとなる。そのため、6角レンチ114が緩め方向に回転し始める段階では図
21に示すようにその頂部114aが直立面103aに当接してしまい、逃げ面103dに乗り上げにくく、逆に言えば6角レンチ114の先端およびその駆動面114bの縁部114cが直立面103aの縁部103fに食込み易くなる。そのため、前述したと同様の問題発生を考慮しなければならない。
【0009】
本発明の目的は、上記のような考察に基いて予め6角駆動穴のような多角形駆動穴または6角様葉形状の駆動穴にいじり止め構造を採用するにあたって予想される問題を併せて解決することであり、これにより駆動工具に6角レンチのような多角形の工具またはトルクスレンチを用いる場合において、当該工具から駆動穴に緩め方向の駆動力が加わると駆動工具を駆動穴から円滑に離脱させることができるいじり止め駆動穴付き締結具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために、頭部に平面視
凸型多角形を形成する直立面、当該直立面の上方外周位にあって前記多角形の
隣接する頂点を結ぶ円弧を持つ円弧面、および前記直立面と前記円弧面を繋ぐ位置にあって各直立面の底部側から緩め方向に向かって上方に延びる逃げ面からなる駆動穴を有し、この駆動穴の底面に多角形の駆動工具の先端が駆動穴の底面まで落下するのを規制するための規制手段を設けたいじり止め駆動穴付き締結具であって、前記規制手段は隣接する二つの直立面により形成される平面視
凸型多角形状の頂角となる位置の少なくとも一つに配置される段部であり、この段部は底面との間に段差を有することを特徴としている。この構成によれば、駆動工具が駆動穴に嵌合する際に、駆動工具の先端が規制手段に当接し、駆動穴の底面まで落下するのが規制される。これにより、駆動工具の先端を逃げ面の底部側の始端よりも高い位置に配置でき、予め逃げ面上に乗り上げさせて確実に逃げ面に案内することができる。また、駆動工具の頂部の先端が直立面の縁部を乗り越えて逃げ面上に回り込むことができ、駆動工具の頂部の先端はもとより駆動面の縁部が直立面の底部側の縁部に食込みにくくなる。そのため、駆動工具の緩め方向の駆動力が駆動穴に伝達されることがなく、駆動工具による勝手な取外しを防止することができるばかりか、前記直立面の底部側の縁部が駆動工具の頂部の先端により潰されるようなことも解消される。
【0012】
また、前記駆動穴に対して適正な大きさの駆動工具であろうと、これより小さな駆動工具であろうと、その先端が確実に逃げ面に案内されるようにするために、
前記段部は逃げ面の底部側の始端から締付け方向に隣接する直立面に向かって延びる上面、中でも下降傾斜して延びる上面を有する構成であってもよい。
【0013】
さらに、駆動工具が緩め方向に回転し始める段階で、駆動工具の縁部が逃げ面と段部との接続位置を通過せずに逃げ面に乗り上がるようにするため、
前記段部は逃げ面の底部側の一部により構成されるようにしてもよい。
【0014】
その他に、駆動工具の先端の位置を逃げ面の底部側の始端よりも高くして、前述した効果と同様の効果が得られるようにするために、頭部に平面視
凸型多角形を形成する直立面、当該直立面の上方外周位にあって前記多角形の
隣接する頂点を結ぶ円弧を持つ円弧面、および前記直立面と前記円弧面を繋ぐ位置にあって各直立面の底部側から緩め方向に向かって上方に延びる逃げ面からなる駆動穴を有し、この駆動穴の底面に多角形の駆動工具の先端が駆動穴の底面まで落下するのを規制するための規制手段を設けたいじり止め駆動穴付き締結具であって、前記規制手段は隣接する二つの直立面により形成される平面視
凸型多角形状の頂角となる位置の少なくとも一つに配置され、かつ駆動穴の中心方向に延びるリブ部であってもよい。
【0015】
その上、本発明の思想は多角様葉形状の駆動穴に対しても適用でき、緩め作業時において弧状直立面を破損することがないようにするため、頭部に平面視多角様葉形状を形成する弧状直立面、前記多角様葉形状に外接する円弧面、この円弧面と前記弧状直立面とを繋ぐ位置にあって弧状直立面の底部付近から緩め方向に向かって上方に延びる逃げ面からなる駆動穴を有し、この駆動穴の底面に駆動レンチが駆動穴の底面まで落下するのを規制するための規制手段を配置したいじり止め駆動穴付き締結具であって、前記規制手段は
平面視において、隣接する二つの弧状直立面
の一方の締付け方向側小円弧部および締付け方向側部と、他方の弧状直立面の緩め方向側部および緩め方向側小円弧部との間に配置され
、かつ縦断面視においては、当該締付け方向側小円弧部および締付け方向側部の底部に配置される段部であり、この段部は底面との間に段差を有するとともに、弧状直立面の締付け方向側部の底部付近に接続されていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
以上説明した本発明によれば、駆動工具から駆動穴に緩め方向の回転が加わっても、駆動穴に緩め方向の回転力が伝達されることを回避できるばかりか、駆動穴が潰されるようなこともなく、駆動工具を駆動穴から円滑に離脱させることができるいじり止め駆動穴付き締結具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るいじり止め駆動穴付きねじの頭部の一部を示す外観図。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係るいじり止め駆動穴付きねじの頭部の部分平面図。
【
図6】
図4のP点付近において駆動穴から離脱する6角レンチと駆動穴の直立面の縁部との関係を示す模式図。
【
図7】本発明の第1の実施形態に係るいじり止め駆動穴付きねじの駆動穴に6角レンチが離脱する時の動作状態を示す説明図。
【
図8】本発明の第1の実施形態に係るいじり止め駆動穴付きねじの駆動穴に6角レンチが嵌合する時の動作状態を示す説明図。
【
図9】本発明の第1の実施形態に係るいじり止め駆動穴付きねじの駆動穴に6角レンチが嵌合する時の動作状態を示す部分平面図。
【
図10】本発明の第2の実施形態に係るいじり止め駆動穴付きねじの頭部の一部を示す要部外観図
。
【
図11】本発明の第2の実施形態に係るいじり止め駆動穴付きねじの頭部の部分平面図。
【
図12】本発明のその他の実施形態に係るいじり止め駆動穴付きねじの頭部の部分平面図。
【
図13】本発明のもう一つの実施形態に係るいじり止め駆動穴付きねじの要部外観図。
【
図14】本発明のもう一つの実施形態に係るいじり止め駆動穴付きねじの平面図。
【
図15】従来技術に対する課題解決案に係る取外し防止形多角形穴付きねじの頭部の一部を示す外観図。
【
図16】従来技術に対する課題解決案に係る取外し防止形多角形穴付きねじの頭部の部分平面図。
【
図18】図
16の
XVIII−XVIII線断面図。
【
図19】図
18のQ点付近において駆動穴から離脱する6角レンチと駆動穴の直立面の縁部との関係を示す模式図。
【
図20】従来技術に対する課題解決案に係る取外し防止形多角形穴付きねじの駆動穴に対して適正なサイズよりも小さなサイズの6角レンチが嵌合する状態を説明する平面視動作説明図。
【
図21】6角レンチを模式化した図
20のXXI―XXI線部分拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〈第1の実施形態〉
以下、本発明の第1の実施形態に係るいじり止め駆動穴付き締結具の一例として、いじり止め6角駆動穴付きねじ(以下、いじり止めねじという)を、図面に基づき説明する。いじり止めねじ1は、
図1ないし
図4に示すようにねじ部(図示せず)に連なる頭部2を有し、この頭部2には多角形状の一例である
凸型6角形状の駆動穴3が成形されている。前記駆動穴3は、駆動工具の一例である6角レンチ4が嵌合可能な平面視
凸型6角形を形成する直立面3a、当該直立面3aの底部に連なる底面3b、前記直立面3aの上方外周位にあって前記6角形の
隣接する頂点を結ぶ円弧を持つ円弧面3c、前記直立面3aと前記円弧面3cを繋ぐ位置にあって前記6角形の頂点を基点として各直立面3aの底部付近から緩め方向に向かって上方に延びる逃げ面3dおよびこの逃げ面3dと底部付近で接続されて6角レンチ4の先端が駆動穴3の底面まで落下するのを規制する規制手段の一例である段部5から構成されている。また、前記駆動穴3には円弧面3cと逃げ面3dと段部5の後記する上面5aとにより直立面3aを削り取るように逃がしスペース3eが形成されており、この逃がしスペース3eが逃げ面3dから段部5まで延びている。この逃がしスペース3eは、6角レンチ4が緩め方向に回転すると、隣接する二つの駆動面4b,4bによりなる頂部4aの先端が回り込むのを可能にしている。
【0019】
前記逃げ面3dは、底部に近づくほど傾斜が緩くなる湾曲面すなわち上に向かって凹となる湾曲面からなっている。前記逃げ面3dは直立面3aと直交して直立面3aの縁部3fを形成しており、この縁部3fは逃げ面3dと同様に緩め方向に向かって上方に延びるとともに底部に近づくほど傾斜が緩くなる湾曲状となっている。この縁部3fの形状により、6角レンチ4が緩め方向に回転する時、6角レンチ4の頂部4aの先端およびその駆動面4bの縁部4cが直立面3aの縁部3fを乗越え易くなっている。
【0020】
前記直立面3aは、段部5より上方においては前述の湾曲状の縁部3fを斜辺とする略直角三角形状をなしており、6角レンチ4から締付け方向の駆動力を受ける側(
図3、
図4等における直立面3aの左半部)には底部に向かって漸減するものの伝達機能を果たす十分な受圧面を有している。また、前記直立面3aは6角レンチ4の緩め方向の駆動力を受ける側(
図3、
図4等における直立面3aの右半部)には前記逃がしスペース3eにより削り取られて伝達機能を果たさない程度まで漸減して底部近くに達する受圧面を有している。言い換えれば、前記駆動穴3は6角レンチ4の締付け方向の駆動力を受ける側ではその駆動力をいじり止めねじ1に伝達する受圧面を有する一方、6角レンチ4の緩め方向の駆動力を受ける側ではその駆動力により6角レンチ4の頂部4aを回り込ませる逃がしスペース3eを有する構成となっている。
【0021】
前記段部5は、隣接する二つの直立面3a,3aにより形成される平面視
凸型六角形状の頂角となる位置すべてにこれを埋めるように配置されている。また、この段部5は、逃げ面3dの底部側の始端から締付け方向に位置する直立面3aに向かって下方に傾斜する上面5aと、底面3bから立ち上がって両側の直立面3a,3aに接続される側面5bとを有していて、段部5の上面5aと駆動穴3の底面3bとの間には所要の段差が存在している。前記上面5aは側面5bと緩め方向側の直立面3aと逃げ面3dとの交叉位置R1まで延び、この交叉位置R1は6角レンチ4の横断面外形線に対して駆動穴3の中心に延びる方向にあるため、この交叉位置R1に6角レンチ4の縁部4cが乗り上げ、6角レンチ4が底面3bまで落下しない構成となっている。さらに、前記段部5の上面5aは円弧面3cと交叉するまで延設されており、前述の逃がしスペース3eが段部5の上方にも形成されている。しかも、前記段部5の側面5bは、
図5に示すように頭部2に成形された駆動穴3の底面3bからの立ち上がりにより、隣接する直立面3a,3aとともに12角形穴6を形成しており、この12角形穴6とほぼ同形状の12角形レンチ(図示せず)を製造しておけば、これを保守時、または緊急時の緩め工具として使用することができる。なお、前記段部5は隣接する二つの直立面3a,3aにより形成される平面視
凸型六角形状の頂角となる位置のすべてに設けられているが、これを少なくとも一つに設ける構成であればよい。
【0022】
上記いじり止めねじ1では、6角レンチ4が駆動穴3に嵌合して締付け方向に回転する時には、駆動穴3の直立面3aは6角レンチ4の駆動力を受ける側に伝達機能を果たす十分な受圧面を持っている(
図2における一点鎖線A参照)。そのため、6角レンチ4の締付け方向の駆動力が駆動穴3の直立面3aに伝達され、いじり止めねじ1の締付けを確実に行うことができる。
【0023】
一方、前記6角レンチ4が駆動穴3に嵌合して緩め方向に回転する時には、逃げ面3dが直立面3aの底部側から斜めに立ち上がっていることから、駆動穴3の直立面3aは6角レンチ4の緩め方向の駆動力を受ける側に伝達機能を果たさない程度まで漸減した受圧面を持つに過ぎない。その上に、前記駆動穴3は6角レンチ4の駆動力を受ける側に底面3b付近まで延びる逃げ面3dの上方および段部5の上面5aの上方に逃がしスペース3eを有している。そのため、6角レンチ4が緩め方向に回転し始める段階では、その駆動力によりその頂部4aが逃がしスペース3eに回り込む(
図2における二点鎖線B参照)。この時、
図6に示すように6角レンチ4の駆動面4bの縁部4cが隣接する二つの直立面3a,3a間に設けられた段部5の上面5aと逃げ面3dと直立面3aとの交叉位置R1に乗り上げ、6角レンチ4が底面3bまで落下しないので、その頂部4aの先端が段部5から浮き上がった状態となり、6角レンチ4は段部5から逃げ面3d上に確実に乗り移ることができる。また、6角レンチ4は緩め方向に回転し始めるにともない、その縁部4cが前述の交叉位置R1から直立面3aの縁部3fに沿って滑り上がり始める。この時、逃げ面3dにより形成される直立面3aの縁部3fは逃げ面3dと同様に湾曲状となって、その傾斜はその接線の傾斜から明白なように底面3bに近づくほど緩くなっている。これにより、
図7に示すように6角レンチ4の縁部4cが直立面3aの縁部3fに沿って上昇するにともない、逃がしスペース3eに確実に回り込むことができる。従って、6角レンチ4の緩め方向の駆動力、すなわち回転力が駆動穴3に伝達されることを回避でき、6角レンチ4による勝手な取外しを防止することができるばかりか、前記直立面3aの底部側の縁部3fが6角レンチ4の頂部4aの先端により潰されるようなことも解消される。
【0024】
また、規格の違い等により適正なサイズの6角レンチ4よりも小さなサイズの6角レンチ7(
図8および
図9中、一点鎖線参照)が前記駆動穴3に使用されることがあっても、そのサイズが小さい分だけ6角レンチ7の乗り上げ位置が前述の交叉位置R1から段部5の上面5aに移動するだけで、6角レンチ7の底面3bへの落下は規制され、前述した効果と同様の効果が得られる。さらに、前述の乗り上げ位置が段部5から大きく離れるサイズの6角レンチ8(
図8および
図9中、二点鎖線参照)の使用を考慮する場合には、6角レンチ8は段部5に乗り上げずに12角形穴6に落下することになる。そのため、前記段部5の底面3bの中心側への出代を6角レンチ8が緩め方向に回転しても、直立面3aに当接しない寸法に設定しておけば、このような不適切な6角レンチ8にあってはその回転が締付け方向、緩め方向のいずれの方向にも駆動穴3に伝達されないようにできる。
【0025】
なお、前記逃げ面3dは直立面3aと、また段部5の上面5aは隣接する二つの直立面3a,3aと直交するように形成されているが、図示はしないが、これらまたは逃げ面3dのみを駆動穴3の中心側に傾斜した構成とし、6角レンチ4の頂部4aの先端が逃がしスペース3eに回り込む時に逃げ面3dに当接して乗り上げるようにしてもよい。この場合、6角レンチ4が逃げ面3dを滑り上がる途中で、6角レンチ4の駆動面4bの縁部4cが前記直立面3aの縁部3fに食込むのを防止することができる。
〈第2の実施形態〉
【0026】
次に、第2の実施形態に係るいじり止めねじを図面に基づき説明する。
図10および
図11において、いじり止めねじ21はねじ部(図示せず)に連なる頭部22を有し、この頭部22には多角形状の一例である平面視
凸型6角形状の駆動穴23が成形されている。この駆動穴23の形状は、逃げ面23dとこれに連続しかつ隣接する二つの直立面により形成される平面視
凸型六角形状の頂角となる位置に配置された段部25の形状とを除いて第1の実施形態に記載の駆動穴3の形状と同一であるので、同一部分についての詳細な説明を省略
し、逃げ面23dおよび段部25について詳細に説明する。前記逃げ面23dは、直立面23aと円弧面23cを繋ぐ位置にあって前記6角形の頂点を基点として各直立面23aの底部付近から緩め方向に向かって上方に延び、かつ底部に近づくほど傾斜が緩くなる湾曲面すなわち上に向かって凹となる湾曲面からなっている。前記逃げ面23dは直立面23aと直交して直立面23aの縁部23fを形成しており、この縁部23fは逃げ面23dと同様に底部付近から緩め方向に向かって上方に延びるとともに底部に近づくほど傾斜が緩くなる湾曲状となっている。また、前記逃げ面23dは底部付近の後記する交叉位置R2から前記6角形状の一部を埋めるように延設された延設部23gを有し、その先端は前記直立面23aで形成される仮想6角形状の対角線L(
図11中、二点鎖線参照)に達している。さらに、この逃げ面23dの底部側には前述の対角線L上で後記する略3角柱状の連接小段部25cが接続されており、この対角線L上にある接続位置が逃げ面23dの底部側の始端となり、また傾斜が逃げ面23dを形成する湾曲面の接線の傾斜に沿って増大し始める変化位置S2となっている。
【0027】
前記段部25は、前記逃げ面23dの延設部23gとこれに前述の対角線L上で接続される連接小段部25cとからなっており、隣接する二つの直立面3a,3aにより形成される平面視
凸型六角形状の頂角の位置すべてにこれを埋めるように配置されている。また、前記連接小段部25cは締付け方向に位置する直立面23aに向かって下方に傾斜して延びる上面25caを有しており、この連接小段部25cの上面25caと前記逃げ面23dの一部すなわち延設部23gとにより段部25の上面25aが形成されている。また、前記段部25は逃げ面23dの延設部23gと連接小段部25cとにわたって底面23bから立ち上がる側面25bを有しており、この側面25bと緩め方向に位置する直立面23aと逃げ面23dとの交叉位置R2から前記延設部23gが連接小段部25cに向かって延設される構成となっている。この段部25の上面25a、すなわち延設部23gの上面、連接小段部25cの上面25caは、それぞれ駆動穴23の底面23bとの間に所要の段差が存在している。さらに、前記側面25bは
図11に示すように第1実施形態に記載の側面5bと同様に隣接する直立面23aとともに12角形穴26を形成している。
【0028】
この構成のいじり止めねじ21の場合、6角レンチ24(
図11中、一点鎖線参照)が緩め方向に回転し始める段階で、6角レンチ24の縁部24cがすでに交叉位置R2に乗り上げているので、6角レンチ24の頂部24aの先端(下端)は段部25の上面25aから上方に浮き上がった状態にあり、6角レンチ24の頂部24aは逃がしスペース23eに容易に回り込むことができる。しかも、この時逃げ面23dと連接小段部25cとの接続位置S2、すなわち傾斜が逃げ面23dの湾曲面に対する接線の傾斜に沿って増大し始める変化位置S2は6角レンチ24の縁部24cが乗り上げる交叉位置R2よりも緩め回転方向の後方に位置している。そのため、6角レンチ24はこの変化位置S2を通過することがなく、6角レンチ24が直立面23aの縁部23fに沿って円滑に滑り上がることができ、6角レンチ24が緩め方向に回転し始める段階で、逃げ面23dから大きな抵抗を受けることがなく、6角レンチ24はより円滑に駆動穴23から離脱することができる。
【0032】
本発明の他の実施形態に係るいじり止めねじを図面に基づき説明する。
図12において、いじり止めねじ41はねじ部(図示せず)に連なる頭部42を有し、この頭部42には多角形状の一例である平面視
凸型6角形状の駆動穴43が成形されている。この駆動穴43の形状は、逃げ面43dの形状、平面視
凸型六角形状の頂角となる位置に配置された規制手段の一例であるリブ部48を除いて第1の実施形態に記載の駆動穴3の形状と同一であるので、同一部分についての詳細な説明を省略し、逃げ面43dの形状およびリブ部48について説明する。前記逃げ面43dは、直立面43aと円弧面43cとを繋ぐ位置にあって前記6角形の頂点を基点として各直立面43aの底部から緩め方向に向かって上方に延びかつ底部に近づくほど傾斜が緩くなる湾曲面すなわち上に向かって凹となる湾曲面からなっている。また、前記逃げ面43dは直立面43aと直交して直立面43aの縁部43fを形成しており、この縁部43fは逃げ面43dと同様に緩め方向に向かって上方に延びるとともに底部に近づくほど傾斜が緩くなる湾曲状となっている。この縁部43fの形状により、6角レンチ(図示せず)の頂部の先端およびその縁部が直立面43aの縁部43fを乗越え易くなっている。前記リブ部48は、頭部42に成形された駆動穴43の底面43bの中心に向かって延びる稜線を持つ3角柱状に形成されており、しかもその稜線の位置が逃げ面43dの底部側の始端よりも高い位置となっており、6角レンチが駆動穴43の底面43bまで落下するのを規制している。この場合も、6角レンチが緩め方向に回転するにともなって、6角レンチは逃げ面43dに沿って円滑に駆動穴43から離脱することができる。
【0033】
本発明のもう一つの実施形態として、全世界で普及しているトルクス(登録商標)と称されるねじへの適用例について説明する。このいじり止めねじ51は、
図13および
図14に示すように頭部52に駆動穴53を有し、この駆動穴53は6個の弧状直立面53aにより形成される平面視6角様葉形状の基本形状(
図13中、一点鎖線参照)を有している。前記弧状直立面53aは、締付け方向側小円弧部53a1と締付け方向側部53a2と緩め方向側部53a3と緩め方向側小円弧部53a4とから構成されており、これらは滑らかに接続されている。また、前記駆動穴53は前記弧状直立面53aの底部と後記する段部55の側面55bの底部とにより囲まれる底面53b、前記6角様葉形状に外接する円弧面53c、この円弧面53cと前記弧状直立面53aとを繋ぐ位置にあって弧状直立面53aの底部付近から緩め方向に向かって上方に延びる逃げ面53d、弧状直立面53aの締付け方向側部53a2の底部付近に接続されて6角様葉形状の突部(図示せず)を備えた駆動レンチ(図示せず)が駆動穴53の底面53bまで落下するのを規制する規制手段の一例である段部55から構成されている。前記弧状直立面53aの緩め方向側小円弧部53a4および緩め方向側部53a3は前記逃げ面53dにより削り取られ、駆動レンチの緩め方向側に逃げ面53dと円弧面53cとにより形成される駆動レンチの逃がしスペース53eが形成され、駆動レンチの緩め方向の駆動力が駆動穴53に伝達できない構成となっている。また、前記弧状直立面53aの締付け方向側小円弧部53a1および締付け方向側部53a2も逃げ面53dにより削り取られるが、駆動レンチの締付け方向側には十分な受圧面を有しており、駆動レンチの駆動力が駆動穴53に伝達可能となっている。これにより、前述の6角様葉形状の基本形状は頭部52の上部側では視認できない構成となっている。さらに、
平面視において、隣接する二つの弧状直立面53a,53aの一方の締付け方向側小円弧部53a1および締付け方向側部53a2と、他方の弧状直立面53aの緩め方向側部53a3および緩め方向側小円弧部53a4との間にあって、かつ縦断面視においては、当該締付け方向側小円弧部53a1および締付け方向側部53a2の底部には前記段部55が配置されており、この段部55は底面53bから立ち上がる側面55bとこれと直交して底面53bとの間に所要の段差が存在する略3角形状の上面55aとを有し、この上面55aが逃げ面53dの底部側始端よりも高い位置となるように構成されている。
【0034】
上記いじり止めねじ51では、駆動穴53に6角様葉形状の駆動レンチが嵌合し、締付け方向の駆動力が加わると、弧状直立面53aの締付け方向側小円弧部53a1および締付け方向側部53a2が十分な受圧面を有しているため、その駆動力が駆動穴53に伝達される。そのため、いじり止めねじ51は締付け方向に回転でき、所定位置に締付けられる。
【0035】
前記駆動レンチに緩め方向の駆動力が加わると、弧状直立面53aの緩め方向小円弧部53a4および緩め方向側部53a3はその底部付近から逃げ面53dにより削り取られているため、駆動レンチの受圧面がほとんどなく、駆動レンチは逃げ面53dと円弧面53cとにより形成される逃がしスペース53eに回り込み、その先端が逃げ面53dに乗り上げる。そのため、駆動レンチに緩め方向の駆動力が加わるにともない、駆動レンチが逃げ面53dに沿って滑り上がり、その駆動力は駆動穴53に伝達されず、いじり止めねじ51の取り外しが阻止される。しかも、駆動レンチが駆動穴53に嵌合する際、その先端が段部55の上面55aに乗り上げるので、底面53bまで落下するのが規制される。そのため、駆動レンチの先端は逃げ面53dの底部側始端よりも高い位置に位置でき、駆動レンチが緩め方向に回転するにともなって確実に逃げ面53dに乗り移ることができ、緩め作業時において弧状直立面53aの緩め方向側小円弧部53a4および緩め方向側部53a3を破損するようなことが解消される。この場合、駆動穴53は6角様葉形状に限定されるものではなく、その他の多角様葉形状にも同様に適用できる。また、規制手段も段部55に限定されるものではなく、
前述のリブ部48であってもよい。
【0036】
なお、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。