特許第5870100号(P5870100)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5870100車両基準速度を求めるための方法及びブレーキ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5870100
(24)【登録日】2016年1月15日
(45)【発行日】2016年2月24日
(54)【発明の名称】車両基準速度を求めるための方法及びブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/1761 20060101AFI20160210BHJP
【FI】
   B60T8/1761
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-517119(P2013-517119)
(86)(22)【出願日】2011年5月11日
(65)【公表番号】特表2013-533824(P2013-533824A)
(43)【公表日】2013年8月29日
(86)【国際出願番号】EP2011057606
(87)【国際公開番号】WO2012004029
(87)【国際公開日】20120112
【審査請求日】2014年1月10日
(31)【優先権主張番号】102010030984.2
(32)【優先日】2010年7月6日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】399023800
【氏名又は名称】コンティネンタル・テーベス・アクチエンゲゼルシヤフト・ウント・コンパニー・オッフェネ・ハンデルスゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100157440
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 良太
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】ロル・ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】イーリヒ・ハンス−ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】ヴェッツェル・ディルク
【審査官】 中尾 麗
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06161907(US,A)
【文献】 米国特許第05642280(US,A)
【文献】 特開昭58−152648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12−8/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンチロック制御システム(203)を有する原動機付き車両(201)のブレーキ装置内における車両基準速度(VREF)を求めるための方法であって、
原動機付き車両の一つの車輪(VR)において、スリップ制御(204)が車両基準速度(VREF)に応じて実施可能であり、及び車輪速(v)の計測の為の一つのセンサー(202)が、このスリップ制御可能な車輪(VR)に設けられている前記方法において、 第一の車輪速信号(vfilt_gradlim)が、計測された車輪速(v)のローパスフィルタリングによって形成され、
第一の車輪速信号(vfilt_gradlim)の負の傾きが、予め定められた勾配限界値(Δvmax_n/T)に制限されること、及び
第一の車輪速信号(vfilt_gradlim)が、当該車輪(VR)のスリップ制御を行うために、車輪ごとの車両基準速度(VREF,3,42,62,102,110,122,123,142)として採用されることを特徴とする方法。
【請求項2】
原動機付き車両(201)が、動力を装備したシングルトラック車両であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
減速度(aFzg)を求めるために、第一の車輪速信号(vfilt_gradlim,VREF,3,42,62,102,110,122,123,142)と比較される第二の車輪速信号(1,40,60,100,108,120,140,143)が形成されること、及び、勾配限界値(Δvmax_n/T)が求められた減速度(aFzg)に応じて適合されること、又は、勾配限界値(Δvmax_n/T)が求められた減速度(aFzg)と同じであるよう選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
第二の車輪速信号(1,40,60,100,108,120,140,143)が車輪の計測された車輪速(v)のみに基づいて形成されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
第二の車輪速信号(1,40,60,100,108,120,140)が、計測された車輪速(v)のフィルタリングされていない信号に相当すること、又は、第二の車輪速信号(143)が、第一の車輪速信号(vfilt_gradlim)のローパスフィルタリングのフィルター定数よりも小さいフィルター定数による計測された車輪速(v)のローパスフィルタリングによって形成されることを特徴とする請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
減速度(aFzg)が、時間経過(ΔT)と、これに付随する第一の車輪速信号(vfilt_gradlim,VREF,3,42,62,102,110,122,123,142)の速度差(Δv)とから求められることを特徴とする請求項3から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
時間経過(ΔT)が、第一の作動ポイント(7,9,47,103,111)及び第二の作動ポイント(8,10,48,104,112)の間の時間的間隔と、第一の作動ポイント及び第二の作動ポイントの間の第一の車輪速信号(3,42,102,110)の速度変化としての速度差(Δv)とから求められ、
その際、第一の作動ポイント(7,9,47,103,111)は、車輪(VR)の車輪不安定が検出されるときか、車輪(VR)のスリップがスリップ閾値を越えるときか、又は車輪(VR)における増圧がアンチロック制御により実施されるときに検出されることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項8】
第二の車輪速信号(1,40,100)が降下し、第二の車輪速信号が第一の車輪速信号(3,42,102)と交差するとき、付随する第二の作動ポイント(8,10,48,104)が検出されることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項9】
第一の車輪速信号(110)及び第二の車輪速信号(108)が、所定の時間経過(ΔTsd)の間、最大、所定の値分異なるとき、付随する第二の作動ポイント(112)が検出されることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項10】
車輪(VR)のアンチロック制御の増圧フェーズの間、勾配限界値(Δvmax_n/T)が、増圧フェーズ中における車輪(VR)での圧力上昇(ΔP)に比例する値(ΔaFzg)分高められることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
動力を装備したシングルトラック車両のブレーキ装置において実施される方法であって、スリップ制御された車輪(VR)の第一の車輪速信号を求めるための勾配限界値(Δvmax_n/T)が、スリップ制御される車輪(VR)と異なる他の車輪(HR)のブレーキライトスイッチの信号(HR−BLS)に応じて適合されることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
原動機付き車両(201)のブレーキ装置であって、アンチロック制御システムを有し、このアンチロック制御システムが、この原動機付き車両の車輪(VR)のスリップ制御(204)の為のブレーキ制御装置(203)と、スリップ制御可能なこの車輪(VR)の車輪速(v)の計測の為のセンサー(202)を有し、その際、ブレーキ制御装置(203)内においてこの車輪(VR)のスリップ制御の為の車両基準速度(VREF)が求められる前記ブレーキ装置において、
ブレーキ制御装置(203)内において、車輪ごとの車両基準速度(VREF)を求めるための請求項1から11のいずれか一項に記載の方法が実施されることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項13】
シングルトラック車両(201)のブレーキ装置であって、このブレーキ装置が、両車輪(VR)の一方においてのみ、スリップ制御が実施されるよう形成されていること、及び、このブレーキ装置が、スリップ制御可能な車輪(VR)に車輪速(v)の計測の為のセンサー(202)を有することを特徴とする請求項12に記載のブレーキ装置。
【請求項14】
シングルトラック車両(201)のブレーキ装置であって、このブレーキ装置が、両車輪(VR,HR)においてスリップ制御が実施可能であるよう形成されており、その際、両車輪に各一つの車輪速(v)の計測の為のセンサー(202)が設けられていること、両車輪(VR,HR)の各々のためのブレーキ制御装置(203)内において車輪ごとの車両基準速度(VREF)が求められること、及び、
ブレーキ制御装置(203)が、両車輪(VR,HR)の各々において、各車輪ごとの車両基準速度(VREF)に応じてスリップ制御を実施することを特徴とする請求項12に記載のブレーキ装置。
【請求項15】
電気機械的なブレーキを有する原動機付き車両のブレーキ装置において
ての車輪の車輪速に基づいて求められる包括的車両基準速度に応じての、原動機付き車両の全ての車輪のスリップ制御の為の中央ブレーキ制御装置と、
車輪ごとのブレーキ制御装置の各々のブレーキ装置の故障の際には、そのブレーキ装置に付設された車輪の為の車輪ごとの車両基準速度(VREF)が求められ、及びそのブレーキ装置に付設された車輪のスリップ制御が、車輪ごとの車両基準速度(VREF)に応じて実施される、各車輪に付設された車輪ごとのブレーキ制御装置とに特徴を有する請求項12に記載のブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載の車両基準速度を求めるための方法と、請求項10の上位概念部に記載のブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子制御部を有するアンチロック制御システム(ABS)は、市場において多数の実施例が公知である。大部分のシステムにおいては、制御に必要な情報は個々の車輪の回転の態様の計測から得られ、その際、全ての車輪回転数信号を結びつけることによって、車両速度を近似的に再現する車両基準速度が算出され、その後、この車両基準速度は、車輪スリップ及び他の制御値を求めるため、そして最終的に車輪ブレーキ内のブレーキ圧を見積もり又は制御するために採用される。
【0003】
物理的に不可能な車両速度変化が参照値形成中に入り込まないよう、例えば車両基準速度を形成する際に、その傾きを制限することもまた知られている。これについては特許文献1を参照されたい。
【0004】
ここ数十年の間に、モーターサイクルは、簡易的に装備された移動手段から、趣味的乗り物へと発展した。そして運転車の安全性も前面へと押し出されることとなった。数年前の自動車と同様、だんだんとモーターサイクルもアンチロックシステム(ABS)が装備されるようになった。例えば特許文献2から、モーターサイクルの為のロック防止装置が後置である。さらに特許文献3からは、粘着係数を求めるための方法及びモーターサイクルのロック防止されたブレーキングを行うための方法が公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願第3833212A1号明細書
【特許文献2】欧州特許第0548985B1号明細書
【特許文献3】独国特許出願第4000212A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、原動機付き車両のスリップ制御可能な車輪のアンチロック制御の為の、信頼性の高い車両基準速度を求める方法であって、コスト面で安価なブレーキ装置内においてや、ブレーキ装置の故障の場合においても実施可能である方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1に記載の方法により解決される。
【0008】
本発明は、当該車輪のスリップ制御の為に、車輪ごとの車両基準速度が採用され、この車両基準速度が、この車輪のみの車輪速に基づいて求められるという思想に基づいている。車両基準速度としては、車輪速信号が使用される。この車輪速信号は、計測された車輪速のローパスフィルタリングによって、及びフィルタリングされた信号の負の傾きを勾配限界値へと制限することによって求められる。
【0009】
ここで勾配限界値は、正であるとして仮定され、これによって負の傾きの最大値を与える。
【0010】
「車輪速」とは、車輪速と直接関係のあるあらゆる全ての値である。つまり車輪回転時間や車輪回転数もそうである。
【0011】
本発明が目指すところのメリットは、車輪のアンチロック制御の為の確かな車両基準速度が、その車輪の車輪速に基づいてのみ得られることが可能であることにある。これに応じて、本発明は、車輪回転数センサーがスリップ制御可能な車輪にのみ設けられているという、安価なブレーキ装置においても使用可能である。同様に本発明は、例えば電気機械式のブレーキを有するブレーキバイワイヤ式のブレーキ装置においても、非常時対策措置として使用可能である。そこでは、車輪ごとのアンチロック制御は、車輪ごとの制御ユニットによって、一つの属する車輪速に基づいてのみ実施可能である。
【0012】
計測された車輪速信号へのノイズと短時間での車輪速変化が、車両基準速度内に入り込まないように、計測された車輪速は好ましくは強度のフィルターをかけられる。好ましくは、フィルタリングの為に、時間係数約80msから約100msの一次のローパスフィルターが使用される。
【0013】
本発明の更なる発展形に従い、車両基準速度の負の勾配を制限するための勾配限界値が、各制御の会誌に対して、所定の初期値に設定され、そしてその後、アンチロック制御中の車輪速の推移に応じて常に適合される。特に好ましくは、勾配限界値の適合の間、この所定の初期値が越えられない。負の傾きの値に対する初期値は、特に好ましくは1gの値を有する(g:重力加速度)。
【0014】
好ましくは、勾配限界値の適合の為に、第二の車輪速信号が形成され、この信号が減速度を求めるために第一の車輪速信号と比較される。求められた減速度に応じて、適合された勾配限界値が求められる。特に好ましくは、新たな勾配限界値は、求められた減速度と同じに設定される。
【0015】
本発明の有利な実施形に従い、第二の車輪速信号は、計測された車輪速のフィルタリングされていない信号から与えられる。さらなるフィルター等は、必要とされない。
【0016】
本発明の他の有利な実施形に従い、第二の車輪速信号が、計測された車輪速のローパスフィルタリングによって求められる。その際、第二の車輪速信号のローパスフィルタリングのフィルター定数は、第一の車輪速信号のローパスフィルタリングのフィルター定数よりも小さい。特に有利には、第二の車輪速信号の為のフィルター定数は、約30msから40msである。第二の車輪速信号として、弱度にフィルタリングされた車輪速信号を考慮することにより、車輪速中の振動によって減速度を求めることに対する恣意的影響が表れることが防止される。
【0017】
好ましくは減速度は、平均車両減速度であり、よって、時間経過と、これに属する第一の車輪速信号の速度差、つまり車両基準速度の速度差より求められる。
【0018】
有利な実施形では、時間経過が、第一の作動ポイントと第二の作動ポイントの間の時間的間隔と、これに付随する、第一の作動ポイントと第二の作動ポイントの間の第一の車輪速信号の速度変化としての速度差とから求められる。第一の作動ポイントは、その際、車輪の車輪不安定の検出のポイントに相当する。車輪の車輪不安定は、特に有利には、車輪のスリップがスリップ閾値を越えるか、又はアンチロック制御によってその車輪に減圧が実施されるときに検出される。第二の作動ポイントは、特に有利には、車輪不安定が基本的に落ち着くポイントである。この作動ポイントに基づいて計算された減速度は、車輪の不安定性を落ち着かせる間の平均車両減速度に相当する。付随する、適合された勾配限界値は、有利には、従前の勾配限界値よりも小さい。
【0019】
発明に従う方法の有利な実施形に従い、第二の車輪速信号が、車輪不安定が落ち着いた後に下降し、その結果、第二の車輪速信号が第一の車輪速信号と交差するとき、第一の作動ポイントに対応する第二の作動ポイントが検出される。特に有利には、第二の車輪速信号と第一の車輪速信号の当該交点が、アンチロック制御による増圧の開始基準(開始クリテリウム)である。
【0020】
上述したような第一の車輪速信号と第二の車輪速信号の適当な交点が現れないような場合、第一の作動ポイントに付随する第二の作動ポイントは、第一の車輪速信号と第二の車輪速信号が所定の時間経過の間、所定の速度値の分、最大限異なるとき検出される。特に有利には、所定の時間経過は約40msから60msの値を取る。所定の最大速度値は、有利には約3km毎時の値を取る。
【0021】
車両のアンダーブレーキを防止するために、有利には、第一の車輪速信号を制限するための勾配限界値は、車輪のアンチロック制御の増圧フェーズの間高められる。このため、勾配限界値は、増圧フェーズ中におけるその車輪の圧力上昇に比例する値分高められる。
【0022】
好ましくは、アンチロック制御は、デジタル式のアンチロック制御器中において実施される。つまり制御器は時間離散的に動作し、及び相応する値を、一定の均等な時間間隔(ループ時間)中に処理する。
【0023】
同様に、第一の車輪速信号、第二の車輪速信号および勾配限界値が、制御器の各ループ時間の後、新たに求められるのが有利である。
【0024】
本発明の発展形に従い、第二の車輪速信号及び第一の車輪速信号の交点は、ループ時間の間に第一の車輪速信号と第二の車輪速信号が同じであるか、又は、現在のループ時間と以前のループ時間の比較において、両方の信号が他方の信号よりも大きいという交替が発生したときに検出される。
【0025】
有利には、発明に係る方法は、動力を装備したシングルトラック車両のブレーキ装置中で実施され、この場合、スリップ制御される車輪、例えば前輪の第一の車輪速信号の制限の為の勾配限界値が、他の車輪、例えば後輪の為のブレーキライトスイッチの信号に応じて適合される。特に有利には、勾配限界値が、前輪のアンチロック制御の間、後輪のブレーキライトスイッチ信号が「無効」から「有効」へと変更されるとき所定の値分高められ、そして前輪のアンチロック制御の間、後輪のブレーキライトスイッチ信号が「活性」から「不活性」へと変更されるとき、所定の値だけ低められる。
【0026】
有利には、発明に従う方法は、両車輪の一方においてのみ、特に前輪においてのみスリップ制御が実施可能であるよう設計されており、そして、このスリップ制御可能な車輪に対してのみ車輪速の計測のためのセンサーが設けられているシングルトラック車両のブレーキ装置中で実施される。
【0027】
発明に従う方法が、両車輪においてスリップ制御が実施可能であるよう設計されており、両車輪にそれぞれ、車輪速計測の為の一つのセンサーが設けられているシングルトラック車両のブレーキ装置中で実施されることも同様に有利である。好ましくは、両車輪の各々に対して所定の状況において、車輪ごとの車両基準速度が求められ、及び両車輪の各々において、各車輪ごとの車両基準速度に応じてスリップ制御が実施される。
【0028】
さらに有利には、発明に係る方法は、ブレーキバイワイヤ式のブレーキ装置中で実施される。このブレーキ装置中では、例えば非常時用ブレーキモード中に、例えば各車輪に付設された車輪ごとのブレーキ制御装置によって、各属する車輪のスリップ制御が、対応する車輪ごとの車両基準速度に応じて実施される。特に有利には、ブレーキバイワイヤ式のブレーキ装置は、電気機械式のブレーキを備えている。
【0029】
本発明は、上述した方法が実施されるブレーキ装置にも関する。
【0030】
本発明の更なる有利な実施形は、下位の請求項や、以下に記載する図面に基づく詳細な説明からも生ずる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】単一走行車線上におけるABS制御の間の例示的な信号推移
図2】突発的な摩擦値減少を伴う走行車線上におけるABS制御の間の、例示的な信号推移
図3】突発的な摩擦値増大を伴う走行車線上におけるABS制御の間の、例示的な信号推移
図4】低い又は高い摩擦値を有する走行車線上におけるABS制御の間の、例示的な信号推移
図5】二つの異なる車両基準速度に対するABS制御の開始の例示的な信号推移
図6】更なる補助的信号によるABS制御の開始の例示的な信号推移
図7】発明に従う方法の実施に適したオートバイの図
【発明を実施するための形態】
【0032】
アンチロック制御(ABS制御)の原理は、車輪の過ブレーキまたは車輪不安定が発生した時、制御される車輪のブレーキ圧を増圧することを意図する。その際これらは、大きなブレーキスリップや、高い車輪減速度を介して検出される。車輪ブレーキ圧の適当な減圧の後、及びこれにより結果として生ずる車輪の安定したスリップ領域への加速の後、車輪のブレーキ圧はこれが更なる可視的な車輪不安定へと至るまで再び段階的に高められる。このような周期的な増圧及び減圧は、車両が静止状態に至るまで、または運転者がブレーキ圧を、ロック圧レベルより下へと下げるまで繰り返される。車輪スリップの制御の為の減圧及び増圧の原理は公知である。
【0033】
変動する走行車線摩擦値においても最適な車輪圧値を見出すために、車輪スリップと車輪加速度が注意深く回析され、これによって車輪のロック傾向が検出される。その際、車輪スリップが、いわゆる車両基準速度(VREF)に基づいて計算される。というのは実際の車両速度は、高コストをかけないと計測不可能であり、またよってブレーキ制御器に対しては通常なじみが無いからである。よって、車輪不安定の精確な判定の為に、採用される車両基準速度VREFは可能な限り実際の車両速度に良く近似している必要がある。車両基準速度VREFが高すぎると、大きすぎるスリップが仮定され、場合によっては予定より早く圧力が減圧されることとなり、このことはアンダーブレーキ(ブレーキ不足)に至る可能性がある。あまりに低く仮定された車両基準速度VREFにおいては、あまりに低く計算されたスリップが、あまりに高い車輪不安定を装い、このことは車輪のオーバーブレーキング(過剰ブレーキ)を引き起こす可能性がある。
【0034】
よって、確かな車両基準速度を、唯一の車輪回転速度信号のみに基づいて形成するための方法が提案される。
【0035】
例に従い、車両基準速度の計算又は見積もりの為の方法は、動力を装備したシングルトラック車両、例えばモーターサイクルやスクーターの為の1チャンネル・アンチロックブレーキシステムの電子制御器中において実施される。ブレーキシステムの液圧的および電気的な構造にもとづき、1チャンネルによって、前輪VRのブレーキ圧のみが制御される。更に、コスト上の理由から、前輪VRの車輪回転数のみがセンサーによって把握される。車両基準速度VREFの計算および見積もりは、前輪VRのABS制御の為に行われ、よって前輪VRの回転数情報にのみ基づいて行われる。
【0036】
図1は、単一の走行車線上におけるABS制御中の例に従う信号推移を示す。信号推移に基づいて、以下に例に従う方法を説明する。前輪VRの車輪速vの時間的な挙動は、推移1により表され、推移2は(実際の)車両速度を表す。線3は、見積もられた車両基準速度VREFを再現している。推移4は、運転者によって操作されるブレーキ圧(与圧)を再現し、推移5は、制御される前輪VRの車輪ブレーキ圧Pを再現している。
【0037】
例に従い、前輪VRの車輪速1は、比較的強くフィルタリングされ、これは例えば、一次のローパスフィルター及び約80msから100msの時間定数で行われる。結果の信号vfiltは、車両速度において第一の近似としてみなされ、vfilt_n=((k−1)*T*vfilt_n−1+T*v)/(k*T)であり、またはループ時間Tによる約分によってvfilt_n=((k−1)*vfilt_n−1+v)/kであり、その際、
filt_nは、現在の制御ループにおけるフィルタリングされた車輪速であり、
filt_n−1は、前の制御ループにおけるフィルタリングされた車輪速であり、
は、現在の制御ループにおける車輪速であり、
Tは、ループ時間、特にデジタル式の、ABS制御器のループ時間(例えば10ms)であり、そして、
k*Tは、ローパスフィルターの時間定数である(例えば、80ms,つまりT=10msに対してk=8).
運転者が、ブレーキ中にあまりに高いブレーキ圧4を与えたとき、ABS制御は、制御バルブの適切な起動によって車輪ブレーキ圧5を調節する。この車輪ブレーキ圧は、車輪VRのロックを防止する。この周期的な車輪圧5のモジュレーション(調節)は、安全上の理由からしばしば短時間の所定の時間ΔT(例えば、時点24および26または28および29の間の時間間隔)の間、不安定性を伴う車輪の過ブレーキへと通じる。
【0038】
そのような車輪不安定の場合、急激に降下する車輪速1のフィルタリングされた信号vfiltがあまりに強烈に追従しないように、フィルタリングされた信号の負の勾配が、最大値Δvmaxに制限される。この最大値は、ABSブレーキの間連続的に適合される。フィルタリングされ、および勾配を制限された信号は、vfilt_gradlimと称される。第n回目の制御ループ中において、勾配を制限されたフィルタリングされた速度vfilt_gradlim_nは、よって以下の式にしたがい、フィルタリングされた車輪速vfilt_nとvfilt_n−1およびΔvmax_nの差の最大として求められる。vfilt_gradlim_n=Max(vfilt_n,(vfilt_n−1−Δvmax_n))。
【0039】
フィルタリングされた信号vfilt_nが、前のループのフィルタリングされた信号vfilt_n−1よりも小さいとき、勾配Δvmax_nだけ減少し、vfilt_gradlim_nは値vfilt_n−1−Δvmaxにセットされる。これによって安定した基準信号vfilt_gradlimが得られ、この信号は一方で、車輪速1に直接向けられ、しかし他方で、車輪VRにおいては発生するかもしれないが車両減速度としては発生しない高い負の勾配に追従しない。図1には、上述の計算方法に従い求められた車両基準速度VREFまたはvfilt_gradlimが、破線信号3で表されている。この信号は、わずかに実際の車両速度2よりも下方にある。
【0040】
信号vfilt_gradlim_nが、基準速度VREFとして、信頼可能であるよう、例に従い、長さTの各制御ループ中の制限勾配Δvmax_n/T、又はループごとの最大速度変化Δvmax_nが適切に計算される。その際、最大の速度変化Δvmax_nは、各値にセットされる。この値は、現実の車両減速度に基づいてループごとの実際の車両速度減少ΔvFzg_nよりもわずかに上方にある。つまり、Δvmax_n>ΔvFzg_nである。
【0041】
制限勾配Δvmax_n/Tの例に従う推移が図1中に信号6として表されている。
【0042】
速度変化Δvmax_nの計算は、このため例に従い以下のように行われる。ABS制御の外側または開始時では、最大限考えられる摩擦値つまり値1が存在する結果(信号6のレベル19)、車両はフルブレーキ時に重力加速度1gでもってわずかに減速されることができるということから出発している。このような仮定は、信頼性の高い見積もりの為の未だ十分な計測値が存在しないので、及び、あまりに高く見積もられた基準速度VREFに基づく車両のアンダーブレーキを防止するためには、安全のため物理的な最大限考え得る車両減速度から出発する必要があるので必要である。相応して、最大の速度変化が、Δvmax_n=1g*Tに従い計算される(その際、Tは制御のループ時間である)。
【0043】
時点24から26の車輪不安定の第一のフェーズ中、これは、車輪速1の見積もられた車両基準速度3が、最大の減速度1gでもってスリップ内へと続くということを意味している。車輪圧5の適当なモジュレーション(調節)によって、車輪VRは、再び車両速度2の方へと加速される。信号3が、あまりに低く見積もられたので、車輪速1が信号3を時点25において越え、及び上述したフィルター機能によって時点26まで再び引きあげる結果、信号1と3の新たな交点8が発生する。
【0044】
例に従い、制限勾配Δvmax_n/T(信号6)の為の新しい値20が計算される、というのは速度差Δv(値13)は時間ΔT(値14)によって割られ、時間間隔ΔTの間の平均の車両減速度に対する良好な程度を表すからである。このため、車輪不安定(作動ポイント7)が検出されたとき、車両基準速度VREF(信号3)の値11が保存されることによってΔvが計算される。信号の交差点8における車両基準速度VREFの値12が、この値11によってマイナスされ、Δvの為の値13が生じる。ΔTの計算の為に、点8の時点26によって点7の時点24がマイナスされる。ΔvとΔTによる商は、時間間隔ΔTにおける平均の車両減速度である、aFzg=Δv/ΔT。これから、現在の制限勾配Δvmax_n/TがΔvmax_n/T=aFzgに従い生じる。
【0045】
そのようにして求められた減速度20は、以前の値19よりも小さい、というのは車輪不安定の間隔14の間、減速度の増加が当該車輪VRのブレーキ状況に基づいて行われないからである。
【0046】
車両基準速度VREFをあまりに高いレベルに維持しないように、増圧フェーズ中の減速度が、例に従い再度適合される。高められた車両減速度は、車輪ブレーキ圧5が高められた時(図1の時点26および27並びに29および30)のみ期待される。よって、制限勾配6は、例に従い、圧力上昇ΔP(例えば時点27における値15)から比例的に計算される値ΔaFzgだけ高められる。つまり、Δvmax_n/T=Δvmax_n−1/T+ΔaFzgであり、その際ΔaFzg=K*ΔPである。
【0047】
ファクターKは、ブレーキの効率から生じ、そして既知として仮定される。例えば、前輪圧が3barだけ上昇したとき、モーターサイクルの減速度は0.6m/sだけ高まる。これに対して、ファクターKは、K=ΔaFzg/ΔP=0.6m/s/3bar=0.2m/s/barとなる。ファクターKの値は車両の負荷によっておよびブレーキの品質によって様々である。よって、ファクターの値を、別の上方(シングルトラック車両の負荷の状況、ブレーキディスク時の状態等)に基づき適合的に選択することは有益である。
【0048】
ブレーキ装置中に、圧力上昇ΔPを求めるためのブレーキ圧センサーが存在しない場合、値ΔPは、例にしがたいバルブ挙動を介して見積もられる。図1の例では、時間間隔18中に別の車輪不安定が行われるので、制限勾配の計算のアナログ的な進め方が、作動ポイント9および10をベースとして行われる。これは作動ポイント7および8に基づいて上述したとおりである。制限勾配6は、時点29に対して高めの値21から低めの値22へと減少され、そして時点30において再度の増圧に基づいて再び値23へと高められる。
【0049】
つまり、例に従う方法は、車輪VRのABS減圧が行われる不安定フェーズ中に、各一つの信頼性の高い新たな値をVREFの制限勾配に対して求め、そしてこれを、車輪圧5の各新たな増圧の際にわずかに高めるということを意図している。
【0050】
基本的に制限勾配6は、小さすぎるよりも大きすぎるよう求められるべきである。このことは、図1の例からもまたわかる。これによって車両のアンダーブレーキが確実に回避される。ABS制御は、車輪のスリップだけでなく車輪の減速度も評価するので、オーバーブレキーは以下の理由から回避されることが可能である。ブレーキをかけられた車輪VRの現実のスリップが大きすぎるとき、タイヤと走行車線の間の静止摩擦は動摩擦へと移行する。よって制御技術的にみるとポジティブフィードバック効果(自己増強効果)がロック傾向の場合生ずる。この効果は、車輪VRの極めて突然の減速に通ずる。よって車輪減速度が追加的に評価されるとき、VREFの見積もりの例に従う方法は、常に最善のブレーキポイントの十分良好な検出につながる。当該ブレーキポイントにおいて、車輪圧はその後再び減少される。オートバイはいずれにせよ、確実なライディングが保証される地面上でのみブレーキをかけられるという事実は、追加的に役に立つ。これによって、氷の上や滑りやすい雪の上に表れる極端に低い摩擦値は割愛され、例えば、極めてつるつるした地面上を下っているときのブレーキ中における、少なくとも一時的な車両の加速のような部分的にはPKW(商用自動車)において発生するような極端な効果は不可能であるということが確実となる。
【0051】
オートバイは、しばしば前輪ブレーキから独立した後輪ブレーキを備えている。そのブレーキ効率は、例えば、運転者が前輪のABS制御中に後輪におけるブレーキ圧を変更したとき、ブレーキの減速度に影響を及ぼす。よって、本発明の実施例に従い、後輪サーキットのブレーキライトスイッチ(HR−BLS信号)が後輪ブレーキの証しとして、全体の方法中に考慮される。例えば、HR−BLS信号が、前輪のABS制御中に「不活性」から「活性」へと変更される際に、車両基準速度の為の制限勾配Δvmax_n/Tは、あるパーセント値の分だけ高められるか、または、「活性」から「不活性」へと変更の際にあるパーセント値の分だけ減少される。
【0052】
図2は、その摩擦値が、ABS制御の間時点55に対して突発的にジャンプするように増加する地面上でのブレーキングに対する例に従う信号推移を簡略的に示す。前輪VRの車輪速の挙動は、推移40によって表されている。推移41は車両速度を表している。線42は、見積もられた車両基準速度VREFを再現している。推移44は、運転者によって与えられたブレーキ圧(与圧)を表し、推移45は制御される前輪VRにおける車輪ブレーキ圧を再現している。信号46は、制限勾配Δvmax_n/Tを再現している。
【0053】
摩擦値の急変更(ミュージャンプ)の結果、時点55から強烈な車輪ロック傾向が表れるこれを落ち着かせるために、車輪圧45は、時間間隔52中の運転者によって与えられるあまりに高い与圧44に対して明らかに減少される。VREFの制限勾配46が、それ以前は高い値53にあったので、車両基準速度の信号42は、時点55と57の間において急激にスリップへと推移し、そしてこれによって明らかに実際の車両速度41から離れる。しかし、時間間隔57から58中の車輪VRの加速によって、車両基準速度は再び修正される。車両基準速度42と車輪速40の交点48においては、制限勾配46に対して上述した方法に従い再び低めの値54が算出される、というのは車両減速度は、比較的長い時間間隔52中では低いのみであり、よって少ない減圧のみが車両速度(Δv)中で達成されるからである。これは、作動ポイント47と48における速度49と50の差である。つまり信号46の低い値54は、小さな商Δv/ΔTから生ずる(上述の式に従いΔvmax_n/T=aFzg=Δv/ΔT)。図2に表された例は、例に従う方法が、摩擦値の高い値から低めの値への迅速な移行に対しても、VREF勾配に対する確かな最大値を迅速に算出することを表す。これは、時点58の後、車両基準速度42がまさに平坦に降下する、つまり高いレベルに保持されることに配慮し、このことは低い走行車線摩擦値を考慮して有益である。
【0054】
図3は、摩擦値が、ABS制御の間時点70において突発的に増加する地面上におけるブレーキングに対する、例に従う信号推移を簡略的に示す。前輪VRの車輪速の時間的挙動は、推移60によって表されおり、推移61が車両速度を表す。線62は、見積もられた車両基準速度VREFを再現している。推移63は、運転者によって与えられるブレーキ圧(与圧)を、推移64は制御される前輪VRにおける車輪ブレーキ圧を再現している。信号65は、制限勾配Δvmax_n/Tを再現している。
【0055】
摩擦値の急変更(ミュージャンプ)の後、ABS制御される車輪VRのロック傾向が明らかに減少する。このことは、安定的に推移する車輪速60から見て取れる。これに対応して、車輪圧64のレベルが、時点72,73および74において運転者によって要求される与圧63に段階的に近づいている。車両減速度は、これによって増加し、そして実際の車両速度61は強烈にゼロに向かう。例に従う方法によって車輪圧ΔPの各増圧によってVREF制限勾配65もまた段階的に値67,68および69へと高められるので、車両基準速度62が車輪速60にその都度急に追随する。これによって例に従う方法は、増加する走行車線摩擦値における車両基準速度の有意義な見積もりを確実なものとする。
【0056】
図4は、車輪不安定の間のVREF制限勾配の計算の為の別の二つの例を簡略的に示す。
【0057】
図4aには、低い摩擦値上でのブレーキの間の例示的信号推移が簡略的に表されている。前輪VRの車輪速の時間的挙動は、推移100によって表され、推移101は、車両速度を表している。線102は、見積もられた車両基準速度VREFを再現している。図2において表された例に基づいて説明したのと類似して、車両基準速度102は、先ず、あまりに急にスリップへと入り、よって、実際の車両速度101からは明らかに遠ざかる。時点106の後、車両基準速度102は、フィルター機能を使って再び車輪速100によって持ち上げられる。時点106における交差した点の後、時点107に対して更なる別の信号の交差が作動ポイント104に存在する。ここで、商Δv/ΔTによって、例に従い新たなVREF制限勾配が形成される。
【0058】
このような場合、特に安定的なABS制御の理由から、少なくとも車輪速100が再び車両速度101に近づくよう、制御される車輪VRにおける圧力が推移するよう減圧される必要がある。あまりに早期に増圧が行われた場合(つまり時点106の前に行われた場合)、車輪VRはスリップのまま維持されるので、不安定性が発生する恐れがある。これは、適切なABS制御ストラテジーの設計によって回避されることが可能であるので、車両基準速度VREFを求めるための例に従う方法は、この場合にも確かな結果を提供する。同様に、時点106の近傍における走行車線の摩擦値の減少は、車輪速100が車両速度101に近づかないということに通じ得る。いずれにせよABS制御は適切な減圧により、そのような状況が少なくとも長く続いて発生しないということに従事する。
【0059】
図4bにおいては、高摩擦値走行車線上におけるブレーキの間の例に従う信号推移が簡略的に表されている。前輪VRの車輪速の時間的挙動は、推移108によって表されており、推移109が車両速度を表す。線110は、見積もられた車両基準速度VREFを表している。車両が、ABS制御のすでに第一の時間間隔113から114においてすでに強烈に減速されているので、車輪速108は車両基準速度110の上に増加しない。よって、これによって上述の方法では商Δv/ΔTが求められた、信号108と110の交点は存在しない。この場合、例に従い車輪速108が有る所定の時間間隔ΔTsd内で、車両基準速度110の近傍に留まっているかどうかが確認される、つまり例えば両信号108,110の差が、例えば約50msといった十分長い時間低いかどうか(例えば3km/hより小さいかどうか)確認される。時間間隔ΔTsdの経過の後、つまり時点114において、作動ポイント112が実際の車両基準速度として定義される。検出された車輪不安定(作動ポイント111)の時点113と時点114から、Δv/ΔTの商の計算が可能であり、そしてVREF制限勾配が検出されることが可能である。
【0060】
車両基準速度の推移は、車輪速のフィルタリングに依存する。よって、車両基準速度VREFと車輪速の間の交点もまた、例に従いフィルタリングによって変化することが可能であり、このことは更に、商Δv/ΔTを求めるための作動ポイントの検出の異なる結果へと通じる。
【0061】
この関係を明らかにするために、図5に二つの異なるフィルター定数の比較例が表されている。信号120は、車輪速を表す。この車輪速から、フィルタリングと勾配制限によって例に従い車両基準速度が形成される。信号122は、弱いフィルタリングの車両基準速度を示し、信号123は、強いフィルタリングの場合における車両基準速度を示している。信号121は、実際の車両速度を再現している。
【0062】
弱いフィルタリング(122)の場合の車両基準速度は、強いフィルタリング(123)の場合においてよりもより早く車輪速120に追従する。しかしこれは両方向においてそうであるので、つまり車両速度121から離れる場合においてもこれに近づく場合においてもそうであるので、ほぼ同じ結果が商を求める場合Δv/ΔTに表れる。弱いフィルタリングの場合においては、より早期に信号の交点125が時点128において生じ、強いフィルタリングの場合においては、交点126は、遅めの時点129においてようやく生じる。強いフィルタリングにおける少し延長された時間間隔ΔTは、通常、同様に少し大きくされた速度差Δvによって相殺される。
【0063】
結果が大きく異なることなく、フィルター定数は広い領域において変化することが可能であるということが示された。しかしもちろんフィルター定数をあまりに大きく選択すると、変化する摩擦値を有する状況における車両基準速度は、部分的に、実際の車両速度に良好でない追従のみを行う。よって有利には、フィルター定数の限界値として100msの値が越えられない。
【0064】
図6には、例に従う一つの信号推移が簡略的に表されており、これに基づき、例に従う方法の為に、フィルタリングされていない前輪VRの車輪速が使用されるとき、如何なる困難性が発生する可能性があるかが表されている。前輪VRの車輪速の時間的挙動は、推移140によって表されており、推移141は車両速度を表す。そして線142は、見積もられた車両基準速度VREFを再現している。
【0065】
ロック傾向が落ち着いた後、車輪速140における振動に基づいて、比較的早期の時点148における車両基準速度142と車輪速140の間の交点145に本当に低い速度レベルとなる。例が示すように、交点145の状態(Lage)は、少し恣意的に、車輪速140における強い振動によって引き起こされる。しかしながらこのような振動は、ABS制御の間、ごくわずかに発生することしかできない。車両基準速度の勾配制限の結果を再現可能なものとするために、例に従い、実際の車輪速140ではなく、弱くフィルターをかけられた車輪速143を使用することが提案される。ここで、使用されるフィルター定数は、車両基準速度の計算の為のフィルター定数より明らかに下方にあり、つまり例えば略30から40msである。
【0066】
図6にみてとれるように、弱くフィルターをかけられた車輪速143は、より遅い時点149においてかつ高い速度レベルにある交点146へと通じる。これから求められるΔv/ΔTは、車両基準速度の勾配制限の本質的により良好な結果へと通じ、これは交点145からのあまりに大きな商Δv/ΔTより良好である。車輪速の弱いフィルタリングの措置によって、ロック防止制御される車輪VRの不安定フェーズの愛大の車両減速度のエラーを含んだ計算の可能性は明らかに減少される。
【0067】
例に従い、(例えばコスト上の理由から)一つの車輪のみがロック防止制御され、したがって一つだけの車輪速センサーが設けられているオートバイのABSシステムにおける車両基準速度を求めるための方法が実施される。図7は、極めて簡略的に表現した図で、本発明に係る方法が有利には実施される例示的モーターサイクルを示す。モーターサイクル20の前輪VRには車輪回転数センサー202が設けられている。他方で後輪HRの車輪回転速度は計測されない。モーターサイクル201は、アンチロックブレーキシステムを有するブレーキ装置を備えている。このうち、ここでは極めて簡略的にブレーキ制御装置203が表されている。ブレーキ装置は、前輪VRにおいてのみABSスリップ制御が実施可能であるよう設計されている。これは図7において、ブレーキ制御装置203と前輪VRの間の破線矢印204によって簡略的に表されている。
【0068】
一つの車輪の車輪速情報のみが、ローカルの(車輪ごとの)ブレーキ制御ユニット中に存在する同様なブレーキ制御システム中において本方法を組込むこともまた有益である。例えばこれは、商用車(PKW)の少なくとも部分的に電気機械的なブレーキシステム中において考え得る、このシステムは、少なくとも二つの車輪、特に車両の各車輪に独立したブレーキ制御ユニット(WCU:ホイールコントロールユニット)が提供される。
【0069】
上位に置かれた走行ダイナミクス制御および車輪スリップ制御を実施するために、例に従い一つの中央ブレーキ制御ユニット(ECU:電子コントロールユニット)が組み込まれ、この制御ユニットが、すべての車輪速情報を提供する。中央のブレーキ制御ユニットECUは、エラー時でない場合に、好ましくは一つのバスシステムを介して圧力要求またはブレーキ力要求を、個々の車輪ブレーキの制御ユニットWCUへと伝送する結果、これらローカルの制御ユニットが、通常の運転状態において別々のABS制御を実施しない。中央の制御ユニット(ECU)又はデータ伝送を行うためのバスシステムが故障した場合、その付設される車輪の速度信号が使える状態であるとき、各車輪ブレーキの制御ユニット(WCU)がエラーのバックアップとしてローカル的な制御を行うことができる。このようなバックアップにおいては、各車輪ブレーキにおいてローカルのABS制御が実施される。このために必要な車両基準速度は、当該車輪の個々の車輪速に基づいてローカルの制御ユニット(WCU)内で求められる。
【0070】
例に従い、本方法は、スタッド付きタイヤを装備し、主としてオフロード条件で使用されるオートバイにおいてもまた実施される。オートバイが、2チャンネルの制御器及び二つの独立した車輪速センサーを有していたとしても、アンダーブレーキ状況を回避するために、ここでは車輪ごとの基準の速度が計算される。上述したオートバイにおいては、アンダーブレーキの問題が、特に、個々の車輪のブレーキングにおいて、ブレーキをかけられていない車輪が高すぎる車両基準速度を引き起こし、そしてABS制御される他方の車輪がこれによって低すぎるスリップレベルへと動かされることによって発生する可能性がある。よって、制御される車輪に対して独立した車両基準速度を求め、この車両基準速度が、ロック傾向がそれぞれ落ち着かせられた後、制御される車輪の振動・スリップレベル(Einschwing−Schlupfniveau)に合わせられると有益である。安全のため、例に従い、これら独立した車両基準速度が、所定の値の分だけ包括的な車両基準速度の下方に位置することがあるということが要求される。その際、包括的な車両基準速度は両車輪速から求められ、そして、ブレーキをかけられていない車輪の車輪速に主として合わせられる。
【0071】
例に従い、車両基準速度VREFを求めるための方法は、一つの制御される車輪サーキットのみを有し、及びこの一つの制御される車輪の速度を検出するための一つのセンサーのみを有するアンチロックブレーキシステム内において実施される。車輪が、減圧と圧力保持によって再び車両速度にむけて近づけて加速される制御されるという、車輪の不安定フェーズ中においては、平均の車両減速度aFzgは、第一の信号が当該車輪の車輪速の強いローパスフィルタリングと最大1gへの追加的な勾配制限によって形成され、及び、第二の信号が車輪速のいローパスフィルタリングによって勾配制限なしに形成されることによって求められる。これら両信号の交点は、車輪の不安定性が落ち着いた後、以前の車輪不安定の検出の時点における第一の信号の速度値及びこの時点自体とともに、勾配aFzg=Δv/ΔTを形成するのに、使用される。(ここでΔv=両速度の速度差であり、そしてΔT=両時点の差である。)この平均の車両減速度aFzgは、車両基準速度VREFの負の勾配を望まれる減速度の程度に制限するために採用される。その際、車両基準速度VREF自体として、第一の(強くフィルターをかけられた、及び勾配制限された)信号が使用される。
【0072】
車両基準速度VREFの勾配制限の為に採用される平均的な車両減速度aFzgは、例に従い、車輪の各不安定フェーズ中に上述した方法にしたがい求められる。
【0073】
例に従い、車両基準速度VREFの勾配制限の為に使用される平均の車両減速度aFzgは、ABS制御器によって車輪の安定フェーズ中にもらたされる各増圧パルスにおいて、増圧パルスの大きさに比例して選択されるある値だけ高められる。
【0074】
制御される車輪がオートバイの前輪であるとき、車両基準速度VREFの勾配制限の為に使用される平均の車両減速度aFzgは、スイッチ(例えばブレーキライトスイッチ等)を介して、オートバイの運転者が追加的な操作を後輪ブレーキサーキットに開始し、一方で前輪のABS制御がすでに実施されているということが検出されると、例に従い相応する値だけ高められる。
【0075】
他の実施例に従い、本方法は、二つの車輪速センサーを有する2チャンネルABSを有するオートバイ中でもまた実施される。ここでは、ブレーキをかけられ及びABS制御される各車輪に対して、独立した車両基準速度VREFが求められ、各車輪を((オフロード走行車線またはスタッド付きのタイヤを使用する際といった)特に極端な状況のもと)個々の最善として算出されるスリップレベルに制御する。
【0076】
発明に従う方法は、例に従い、例えば電気機械式のブレーキを有する複雑なバイワイヤ式のブレーキ装置中で、ローカル式のブレーキ制御器を有する任意の原動機付き車両においてもまた実施される。そのような方式のブレーキシステムは、通常運転状態においてブレーキ要求をバスシステムを介してローカルの車輪ごとのブレーキ制御器に送る中央ABS制御器を有している。中央の制御器又はバスシステムが故障した場合、付設される車輪のバックアップモードへと通じ、その際車輪ごとの車両基準速度VREFが、例に従う方法に基づき求められる。
【0077】
例に従い、アンチロック制御は、デジタル式のアンチロック制御器中で実施される。つまり、制御器は時間離散的に動作し、そして相応する値を、一定の均等な時間間隔(ループ時間)中に処理する。第二の作動ポイント8,10,48,104の検出の為に、一つの制御ループnの間に第一及び第二の車輪速信号の二つのデジタル信号が、完全に同じであるということは、たとえこれらがアナログ的にみて重なりあっているとしても、ほとんど起こらない。
【0078】
両信号がループn中において同じであるとき、
(1) VREF=v
又は、以前のループn−1以来、第二の車輪速信号が第一の車輪速信号を下回る又はこれに達するというとき、
(2) vn−1>VREFn−1及びv≦VREF
又は、以前のループn−1以来、第二の車輪速信号が第一の車輪速信号を越えるまたはこれに達するというとき、
(3) vn−1<VREFn−1及びv≧VREF
第一の車輪速信号(車両基準速度vfilt_gradlim_nまたはVREF)と第二の車輪速信号(車輪速又は弱くフィルターをかけられた車輪速v)の交点は、よって例に従い一つのループn中における検出として有効である。
【0079】
例えば第二の車輪速信号が第一の車輪速信号を「超えるように交差する」時点25における第一の交点は、上述の関係(3)に基づき検出されることができる。例えば第二の車輪速信号が、第一の車輪速信号を「下回るように交差する」時点26、つまり第二の作動ポイント8は、上述の関係(2)に基づき検出されることが可能である。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6
図7