(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記顔料成分が、前記アゾ系黒色顔料から選ばれたいずれのアゾ系黒色顔料を単独で含んでなるか、あるいは、前記アゾ系黒色顔料から選ばれたいずれのアゾ系黒色顔料に、該黒色顔料の特性を補正するための、有彩色顔料、白色顔料、他の黒色顔料及び体質顔料からなる群から選ばれた1種以上の顔料を併用してなる、黒色の着色あるいは無彩色の暗色、ないし暗色の有彩色の着色をするための請求項3に記載の着色組成物。
前記アゾ系黒色顔料と、該黒色顔料と併用する、有彩色顔料、白色顔料、他の黒色顔料あるいは体質顔料との配合比率が、コンピューター・カラーマッチングシステムを用いて最適化される方法で決定されてなる請求項4に記載の着色組成物。
前記液体分散媒体が、反応性基を有してもよい重合体、反応性基を有してもよいオリゴマー及び反応性基を有してもよい単量体から選ばれる少なくとも1種の皮膜形成材料を含んでなり、且つ、それ自体が液体であるか、あるいは更に有機溶剤及び/または水を含有する請求項3に記載の着色組成物。
前記固体分散媒体が、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ワックス、脂肪酸アミド及び脂肪酸金属石鹸から選ばれる少なくとも1種の固体分散媒体を含有する請求項3に記載の着色組成物。
塗料用、コーティング剤用、プラスチック用、繊維用、印刷インキ用、文房具用、画像記録用、及び画像表示用の少なくともいずれかに用いられる請求項3に記載の着色組成物。
物品の表面の着色、あるいは物品自体の着色により、物品を黒色ないし暗色に着色する際に、請求項3ないし9のいずれか1項に記載の着色組成物を用いることを特徴とする物品の着色方法。
前記物品が透明性基材からなり、該透明性基材を、塗装、塗付、染色、印刷、筆記、描画、インクジェット印刷、電子写真印刷、静電印刷あるいはフォトリソグラフィックプリントから選ばれたいずれかの方法により表面着色するか、あるいは混練方法または含浸方法により上記基材自体を内部着色する請求項10に記載の物品の着色方法。
物品自体に光反射性を有するものを用いるか、あるいは予め形成させた光反射性下地が設けられている物品を用い、これらの物品の表面あるいは光反射性下地の上に、前記着色組成物を用いて、塗装、塗布、貼付、溶着、重積、原液着色、捺染、浸染、印刷、筆記、描画、インクジェット印刷、電子写真印刷あるいは静電印刷することにより、赤外領域では反射性を示す着色を施す請求項10に記載の物品の着色方法。
カラーフィルター(CF)基板あるいは有機EL発光基板に形成されたブラックマトリックス(BM)を有するカラーディスプレーパネルであって、BMが請求項1に記載のアゾ系黒色顔料を含有してなるカラーディスプレーパネル。
光反射性下地が設けられている光反射性シートの上に請求項1に記載のアゾ系黒色顔料を含有してなる着色組成物を、塗装、塗布、貼付、溶着、重積、印刷、インクジェット印刷、電子写真印刷あるいは静電印刷して赤外領域では反射性を示す着色を施して、光反射性シートの上に黒色または暗彩色の赤外線透過性層を複層することを特徴とする太陽光発電モジュールのバックシートの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
一般に、顔料の電気絶縁性は、その顔料を含む塗膜の体積固有抵抗や表面抵抗を測定して評価しているが、塗膜の絶縁性は、該塗膜を形成する皮膜形成材料である高分子バインダー材料の電気絶縁性に多分に依存するため、顔料自体の電気絶縁性を正しく示しているとはいえない場合がある。また、カラーディスプレーのBMにおいては、バックライトに対する遮光性が充分にあることが要求されるため、BM塗膜中の黒色顔料の含有率をできるだけ高くして、この課題を解決しようとしている。しかし、このような顔料分の高い塗膜で、高い電気絶縁性を保証するためには、BM塗膜を構成しているバインダー材料の絶縁性に依存しているだけでは不十分であり、黒色顔料自体としても充分な絶縁性を有することが必然的に要望されてきている。
【0015】
先述した太陽電池用バックシートなどにおいても、上記したと同様の要望がある。すなわち、太陽電池用バックシートのように、多くの電子回路や導電線を被覆する用途で、黒色顔料を使用して黒色や暗彩色に着色する場合などにおいては、電気抵抗値の低い、カーボンブラック顔料や酸化チタン系黒色顔料などを使用することは好ましくない。また、経済的観点から、複数段階の高度な合成工程を必要とする引用文献3や4で提案されている縮合系顔料よりも、アゾ系顔料のような、容易に合成できる顔料を使用した技術の開発が要望されている。
【0016】
したがって、本発明の目的は、黒色顔料自体としても充分な絶縁性を示すものであり、これを用いることで可視光遮光性及び赤外線透過性の光学特性を与えることができ、カラーディスプレーのBMや太陽電池用バックシートなどの広範な用途に使用可能であり、しかも、縮合系顔料といったものよりも簡便な方法で合成できる新規なアゾ系黒色顔料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、例えば、前記したようなCFの絶縁性BMの形成や、太陽光発電パネルのバックシートの着色に、信頼性高く使用することができる黒色顔料の開発を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明に至った。より具体的には、TFTなどのアクティブ素子上にBMを形成させてもTFTが短絡による誤作動を起こすことのない、黒色顔料自体の機能として、その体積固有抵抗が少なくとも絶縁体の指標である10
8Ω・cm以上の電気抵抗特性を有するものであり、さらに、顔料としての光学的特性や着色剤としての要求性能を満足させるために、その平均粒子径を凡そ10nm〜200nmにした黒色顔料の開発に努めた結果、本発明を完成するに至った。
【0018】
すなわち、本発明は、顔料自体が高電気絶縁性を示し、これを用いることで可視光遮光性及び赤外線透過性の光学特性を与えることができるアゾ系黒色顔料であって、分子中に1個以上のアゾ基と、カップリング成分から導入された少なくとも1つの2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボン酸アミド残基とを有する分子構造をもち、顔料自体の体積固有抵抗が10
10Ω・cm以上であり、且つ、その平均粒子径が10nm〜200nmであることを特徴とする高電気絶縁性アゾ系黒色顔料を提供する。
【0019】
本発明の好ましい形態としては、前記分子構造が、少なくとも下記(1)ないし(6)の構造のいずれかを有するアゾ系黒色顔料が挙げられる。
(1)ジアゾ成分としてアミノ基を1個有する化合物(代表式:Ar−NH
2)を用い、これをジアゾ化してなるジアゾニウム塩に、カップリング成分として2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボン酸アリールアミド(HBCと略記)がアゾ・カップリングしてなる、[Ar−N=N−HBC]で示される構造
(2)ジアゾ成分としてアミノ基を2個以上有する化合物(代表式:H
2N−Ar−NH
2)を用い、これをジアゾ化してなるジアゾニウム塩に、カップリング成分として2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボン酸アリールアミド(HBCと略記)がアゾ・カップリングしてなる、[HBC−N=N−Ar−N=N−HBC]で示される構造
(3)ジアゾ成分としてアミノ基を2個以上有する化合物(代表式:H
2N−Ar−NH
2)を用い、これをジアゾ化してなるジアゾニウム塩に、カップリング成分として、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボン酸アリールアミド(HBCと略記)及び該化合物以外の他のカップリング成分(Cpと表示)がそれぞれアゾ・カップリングしてなる、[HBC−N=N−Ar−N=N−Cp]で示される構造
(4)その分子中に、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド残基(HBC−と略記)を2個以上有するカップリング成分(HBC−HBCと表示)に、ジアゾ成分としてアミノ基を1個有する化合物(Ar−NH
2と表示)を用い、これをジアゾ化してなるジアゾニウム塩をアゾ・カップリングさせてなる、[Ar−N=N−HBC−HBC−N=N−Ar]で示される構造
(5)その分子中に、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド残基(HBC−と略記)と、該化合物以外の他のカップリング成分残基(Cp−と表示)とを有するカップリング成分(HBC−Cpと表示)に、ジアゾ成分としてアミノ基を1個有する化合物(Ar−NH
2と表示)を用い、これをジアゾ化してなるジアゾニウム塩をアゾ・カップリングさせてなる、[Ar−N=N−HBC−Cp−N=N−Ar]で示される構造
(6)ジアゾ成分として1個以上のアゾ基と1個以上のアミノ基とを有する化合物(代表式:Ar−N=N−Ar−NH
2)を用い、ジアゾ化してなるジアゾニウム塩が使用され、該塩に、カップリング成分として2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボン酸アリールアミド(HBCと略記)がアゾ・カップリングしてなる、[Ar−N=N−Ar−N=N−HBC]で示される構造
【0020】
なお、上記において、アリール残基及び「Ar」は芳香族化合物及び複素環式化合物の置換基を有するあるいは有しない残基を示し、式中2個以上ある場合は同一でも、また、異なってもよい。また、式中の「Ar−N=N−」や「−N=N−Ar−N=N−」はジアゾ成分のジアゾニウム塩がカップリングした「アリールアゾ残基」を意味する。以下も同様である。
【0021】
本発明は、別の実施形態として、上記のアゾ系黒色顔料を得るためのアゾ系黒色顔料の製造方法であって、下記の(I−1)ないし(I−6)のいずれかから選ばれる合成方法を用いるアゾ系黒色顔料の合成工程(I)を有し、該合成工程(I)で合成されたアゾ系黒色顔料が粗大である場合に、下記の(II−1)又は(II−2)の方法で顔料の平均粒子径が10nm〜200nmになるように顔料を微細化する工程(II)を行うことを特徴とするアゾ系黒色顔料の製造方法を提供する。
アゾ系黒色顔料の合成工程(I)で行う顔料の合成方法;
(I−1)アミノ基を1個有する化合物(代表式:Ar−NH
2)をジアゾ化してなるジアゾニウム塩に、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボン酸アリールアミド(HBC)をアゾ・カップリングさせる合成方法
(I−2)アミノ基を2個以上有する化合物(代表式:H
2N−Ar−NH
2)をジアゾ化してなるジアゾニウム塩に、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボン酸アリールアミド(HBC)をアゾ・カップリングさせる合成方法
(I−3)アミノ基を2個以上有する化合物(代表式:H
2N−Ar−NH
2)をジアゾ化してなるジアゾニウム塩に、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボン酸アリールアミド(HBC)及び該化合物以外の他のカップリング成分(Cp)をアゾ・カップリングした構造のポリアゾ顔料の合成方法であって、アミノ基を2個以上有する化合物(代表式:H
2N−Ar−NH
2)をジアゾ化してなるジアゾニウム塩に、等モルあるいはそれ以下のカップリング成分(Cp)をアゾ・カップリングさせ、次いでカップリングされていないジアゾニウム基に上記カップリング成分(HBC)をアゾ・カップリングさせる合成方法
(I−4−1)分子中に2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド残基(HBC−)を2個以上有するカップリング成分(HBC−HBC)に、ジアゾ成分のアミノ基を1個有する化合物(Ar−NH
2)をジアゾ化してなるジアゾニウム塩をアゾ・カップリングさせる合成方法
(I−4−2)2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボン酸に、アミノ基を1個有する化合物(Ar−NH
2と表示)をジアゾ化してなるジアゾニウム塩をアゾ・カップリングさせ、次いで、得られたアゾ色素のカルボン酸をアリールポリアミンと縮合させてポリカルボアミドにする合成方法
(I−5−1)一分子中に、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド残基(HBC−)と、該化合物以外の他のカップリング成分残基(Cp−)とを有するカップリング成分(HBC−Cp)に、アミノ基を1個有する化合物(Ar−NH
2と表示)をジアゾ化してなるジアゾニウム塩をアゾ・カップリングさせる合成方法
(I−5−2)2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボン酸及び他のカップリング成分のカルボン酸に、それぞれアミノ基を1個有する化合物(Ar−NH
2と表示)をジアゾ化してなるジアゾニウム塩をアゾ・カップリングさせ、次いで得られた両アゾ色素のカルボン酸をアリールポリアミンと縮合させてポリカルボアミドにする合成方法
(I−6)1個以上のアゾ基を有するジアゾ成分(Ar−N=N−Ar−NH
2)をジアゾ化してなるジアゾニウム塩に、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボン酸アリールアミド(HBC)をアゾ・カップリングさせる合成方法
顔料を微細化する工程(II)で行う方法;
(II−1)ボールミル、サンドミル、アトライター、横型連続媒体分散機、ニーダー、連続式一軸混練機、連続式二軸混練機、三本ロールおよびオープンロール連続混練機からなる群から選ばれたいずれかの顔料磨砕機あるいは顔料分散機を使用して行う顔料の微細化方法
(II−2)混練機中で水溶性塩、必要に応じて水溶性有機溶剤と共に顔料を混練、摩砕するソルトミリング法
【0022】
また、本発明は、別の実施形態として、上記アゾ系黒色顔料あるいは上記の製造方法によって得られたアゾ系黒色顔料を含む顔料成分を、液体分散媒体中又は固体分散媒体中に分散してなることを特徴とする着色組成物を提供する。
【0023】
また、本発明は、別の実施形態として、物品の表面の着色、あるいは物品自体の着色により、物品を黒色ないし暗色に着色する際に、上記のいずれかに記載の着色組成物を用いることを特徴とする物品の着色方法を提供する。
【0024】
また、本発明は、別の実施形態として、上記の物品の着色方法が施されていることを特徴とする着色物品を提供する。
【0025】
また、本発明は、別の実施形態として、カラーフィルター(CF)基板あるいは有機EL発光基板に形成されたブラックマトリックス(BM)を有するカラーディスプレーパネルであって、BMが、分子中に1個以上のアゾ基と、カップリング成分から導入された少なくとも1つの2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボン酸アミド残基とを有する分子構造をもち、顔料自体の体積固有抵抗が10
10Ω・cm以上であり、且つ、その平均粒子径が10nm〜200nmであるアゾ系黒色顔料を含有してなることを特徴とするカラーディスプレーパネルを提供する。
【0026】
また、本発明は、別の実施形態として、光反射性下地が設けられている光反射性シートの上に、分子中に1個以上のアゾ基と、カップリング成分から導入された少なくとも1つの2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボン酸アミド残基とを有する分子構造をもち、顔料自体の体積固有抵抗が10
10Ω・cm以上であり、且つ、その平均粒子径が10nm〜200nmである高電気絶縁性のアゾ系黒色顔料を含有してなる着色組成物を、塗装、塗布、貼付、溶着、重積、印刷、インクジェット印刷、電子写真印刷あるいは静電印刷して赤外領域では反射性を示す着色を施して、光反射性シートの上に黒色または暗彩色の赤外線透過性層を複層することを特徴とする太陽光発電モジュールのバックシートの製造方法を提供する。さらに、該製造方法が施されていることを特徴とする太陽光発電モジュールのバックシートを提供する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によって提供されるアゾ系黒色顔料は、該アゾ系黒色顔料を含む着色膜は黒色を呈し、前記したようなCFの透明性基板上では可視光範囲のバックライトの光線をほぼ完全に吸収することから、BMの形成材料として好適である。更に、充分洗浄して夾雑イオンなどの影響を除去して、該黒色顔料自体を粉体試料として測定した場合の体積固有抵抗の値が、絶縁体の指標である10
8Ω・cm以上である、凡そ10
10Ω・cm以上の高い電気抵抗特性を示すことから、TFTなどのアクティブ素子上にBMを形成する各種のCFの改良方法、例えば、BOA方式、IPS方式、COA方式、柱状スペーサーなど、CFのBMを形成する遮光性黒色膜の形成材料としても好適である。特に、本発明によって提供されるアゾ系黒色顔料は、上記した高電気絶縁性と共に、可視光の高波長領域までを吸収する光学特性を与える場合には、上記のCFの構成方式に加えて、バックライトにLEDランプを採用した液晶パネルなどに使用する形態に好適である。また、同様に、本発明のアゾ系黒色顔料は、高電気絶縁性であることから、有機ELディスプレーにおいてもBMの遮光性黒色顔料として好適に使用できる。また、本発明によって提供されるアゾ系黒色顔料は、BMを赤外線透過性の黒色着色膜にできることから、CF基板上に多層に積層する場合の位置合わせに、赤外線吸収性の点又は十字線を印字すれば、赤外線レーザーを用いての位置調整を行うことが容易にできる。
【0028】
また、本発明のアゾ系黒色顔料は赤外線を充分透過することから、該顔料を用いて形成した黒色塗膜を透過した赤外領域の光は、下地や塗装材料などに添加された白色顔料や体質顔料などによって反射され、更に黒色塗膜を再透過して放出される機能を示す。更に、本発明のアゾ系黒色顔料は電気抵抗値が高いことから、電気回路や電線を被覆する用途に好適である。例えば、太陽光発電パネルのバックシートは、この両機能を活用できる用途である。反射性下地層の上に、本発明のアゾ系黒色顔料を用いて、黒色または暗彩色の赤外線透過性層を複層で形成させたバックシートは、太陽光の熱線を反射することでパネルの温度上昇を抑制できるものになる。
【0029】
また、本発明のアゾ系黒色顔料は、その他の汎用用途においても、上記したと同様に赤外線透過性を利用して、赤外線フィルター用の色素としての利用ができる。また、本発明のアゾ系黒色顔料は、白色顔料などと複合した形態で、近年の生活環境の改善、快適化および省エネルギーの観点から、家屋や建造物などへの塗装、道路の舗装、更には船舶の甲板、外装などの塗装などの際に、直射日光による昇温防止材料として使用することができる。また、本発明のアゾ系黒色顔料は、軍装備の偽装用着色材あるいは偽造防止などにも利用することが可能である。本発明のアゾ系黒色顔料は、上記に列挙した種々の機能や用途への展開が可能であり、しかも、前記したペリレン系顔料のような複数段階の高度な合成工程を必要とする縮合系顔料に比べて、常圧、大気中で、短い工程で容易に合成できるので、その経済的観点からも、本発明のアゾ系黒色顔料を使用できることは有用である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、発明を実施するため最良の形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
本発明のアゾ系黒色顔料は、顔料自体が高電気絶縁性を示し、これを用いることで可視光遮光性及び赤外線透過性の光学特性を与えることができるものである。その特徴は、分子中に1個以上のアゾ基と、カップリング成分から導入された少なくとも1つの2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボン酸アミド残基とを有する分子構造をもち、顔料自体の体積固有抵抗が凡そ10
10Ω・cm以上であり、且つ、その平均粒子径が凡そ10nm〜200nmであることにある。本発明のアゾ系黒色顔料は、その用途にもよるが、例えば、より赤外線の高透過率を要望する場合には、平均粒子径が10nm〜50nmであることが好ましい。
【0031】
本発明のアゾ系黒色顔料は、光学的には、その化学構造から可視光領域の光を吸収し、赤外光領域の光を透過する光学特性を示し、また、物理的には顔料粒子が微細であるので、塗膜中において顔料粒子を高密度に充填させることができる。それらの効果によって、本発明のアゾ系黒色顔料は、可視光領域の光を充分に遮光することができ、しかも、顔料粒子が微細であることから、例えば、BMなどの遮光性塗膜を形成させるための着色剤組成物中において、安定に分散される。このため、公知の種々の塗布方法でBMなどの塗膜を形成するに際して、平坦で均一な塗膜を形成することのできる、低粘度、高流動性などの特性を有する塗料を与えることができる。更に、本発明のアゾ系黒色顔料は、黒色顔料自体を粉体として測定した際の体積固有抵抗が10
10Ω・cm以上の高い電気抵抗特性を示すものであることを必要とするため、製造工程においても夾雑イオンなどの影響を排除するように充分洗浄されることになる。
【0032】
アゾ系顔料が黒色を示す化学構造として、本発明者らは、分子中に少なくとも1個のアゾ基を有し、且つ、そのカップリング成分から導入された少なくとも1つの2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド残基(下記式参照)を有する化学構造を見出した。
【0033】
上記アゾ系黒色顔料の製造方法としては、分子構造中に1個以上のアゾ結合(アゾ基)をもたらす必要があるため、例えば、ジアゾ成分として、ジアゾニウム基に変わるアミノ基を1個ないし2個以上有する化合物を使用してアゾ・カップリングする方法や、カップリング成分としてカップリングポジションを少なくとも1個有する化合物を使用してアゾ・カップリングする方法、あるいは、同じ顔料構造であるが、中間体としてカルボキシル基を有するアゾ系色素を合成し、次いで、ポリアミンとアミド結合させてアゾ顔料にする方法などが挙げられる。この点について詳述する。
【0034】
本発明のアゾ系黒色顔料は、下記の(1)ないし(2g)の構造のいずれかを有するものであることが好ましい。なお、本発明では、分子中に1個のアゾ基を有するアゾ系顔料を「モノアゾ系黒色顔料」と呼び、分子中に2個以上のアゾ基を有する黒色ジスアゾ系顔料や黒色トリスアゾ系顔料などを「ポリアゾ系黒色顔料」と総称することがある。
【0035】
(1)ジアゾ成分としてアミノ基を1個有する化合物(代表式:Ar−NH
2)を用い、これをジアゾ化してなるジアゾニウム塩に、カップリング成分として、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボン酸アリールアミド(以下、HBCと略記)がアゾ・カップリングしてなる、[Ar−N=N−HBC]で示される構造のアゾ系黒色顔料。
【0036】
上記の[Ar−N=N−HBC]で示されるモノアゾ系黒色顔料の一例として、下記に、ジアゾ成分にアミノ基を1個有するベンズアニライドを用いた場合の構造の一例を挙げる。
【0037】
(2)分子中に2個以上のアゾ基を有し、少なくともその1個のアゾ基が、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボン酸アミド残基と結合している構造のポリアゾ系黒色顔料としては、使用するアゾ系顔料の中間体及び合成方法により以下の構造のポリアゾ系黒色顔料が挙げられる。それらの合成方法としては、下記のものが挙げられる。
【0038】
(2a)ジアゾ成分としてアミノ基を2個以上有する化合物(代表式:H
2N−Ar−NH
2)を用い、これをジアゾ化してなるジアゾニウム塩に、カップリング成分として、前記HBCがアゾ・カップリングしてなる、[HBC−N=N−Ar−N=N−HBC]で示される構造のアゾ系黒色顔料。
【0039】
上記した構造が[HBC−N=N−Ar−N=N−HBC]で示されるポリアゾ系黒色顔料の例として、下記に、上記の合成方法で、アミノ基を2個以上有する化合物として、ベンジジン、フェニレンジアミンあるいはジアミノベンズアニライドをそれぞれに用いた場合の構造の例を挙げる。
【0040】
(2b)ジアゾ成分としてアミノ基を2個以上有する化合物(代表式:H
2N−Ar−NH
2)を用い、これをジアゾ化してなるジアゾニウム塩に、カップリング成分として、前記HBC及び該化合物以外の他のカップリング成分(Cpと表示)がそれぞれアゾ・カップリングしてなる、[HBC−N=N−Ar−N=N−Cp]で示される構造のアゾ系黒色顔料。
【0041】
上記した構造が[HBC−N=N−Ar−N=N−Cp]で示されるポリアゾ系黒色顔料の例として、下記に、上記の合成方法で、アミノ基を2個以上有する化合物としてベンジジンあるいはフェニレンジアミンを用い、他のカップリング成分Cpとして2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸アリールアミドを用いた場合の構造の例を挙げる。
【0042】
(2c)その分子中に、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド残基(HBC−と略記)を2個以上有するカップリング成分(HBC−HBCと表示)に、ジアゾ成分としてアミノ基を1個有する化合物(Ar−NH
2と表示)を用い、これをジアゾ化してなるジアゾニウム塩をアゾ・カップリングさせてなる、[Ar−N=N−HBC−HBC−N=N−Ar]で示される構造のアゾ系黒色顔料。
【0043】
上記した構造が[Ar−N=N−HBC−HBC−N=N−Ar]で示されるポリアゾ系黒色顔料の例として、下記に、上記の合成方法で、フェニレンあるいはビフェニレンを介して上記残基「HBC−」が2個結合しているカップリング成分に、アミノ基を1個有する化合物としてアニリンを使用した場合の構造の例を挙げる。
【0044】
(2d)上記(2c)で説明したと同じ構造の[Ar−N=N−HBC−HBC−N=N−Ar]で示されるポリアゾ系黒色顔料であるが、その合成方法が異なるものである。すなわち、後述するような、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボン酸に、ジアゾ成分としてアミノ基を1個有する化合物(Ar−NH
2)を用い、そのジアゾニウム塩をアゾ・カップリングさせてモノアゾ色素のカルボン酸とし、次いで、得られたアゾ色素のカルボン酸をアリールポリアミンと縮合させてカルボアミド結合を形成させて合成される。
【0045】
(2e)その分子中に、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド残基(HBC−)と、該化合物以外の他のカップリング成分残基(Cp−と表示)とを有するカップリング成分(HBC−Cpと表示)に、ジアゾ成分としてアミノ基を1個有する化合物(Ar−NH
2と表示)を用い、そのジアゾニウム塩をアゾ・カップリングさせてなる、[Ar−N=N−HBC−Cp−N=N−Ar]で示される構造のアゾ系黒色顔料。
【0046】
上記した構造が[Ar−N=N−HBC−Cp−N=N−Ar]で示されるポリアゾ系黒色顔料の例として、下記に、上記の合成方法で、フェニレンあるいはビフェニレンを介して上記残基「HBC−」と、該化合物以外の他のカップリング成分である2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸アリールアミドの残基が結合しているカップリング成分に、アミノ基を1個有する化合物としてアニリンを使用した場合の構造の例を挙げる。
【0047】
(2f)上記(2e)で説明したと同じ構造の[Ar−N=N−HBC−Cp−N=N−Ar]で示されるポリアゾ系黒色顔料であるが、その合成方法が異なる。すなわち、後述するような、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボン酸及び他のカップリング成分のカルボン酸(Cp−COOH)に、それぞれジアゾ成分としてアミノ基を1個有する化合物(Ar−NH
2)を用い、そのジアゾニウム塩をアゾ・カップリングさせてそれぞれモノアゾ色素のカルボン酸とし、次いで、得られた両アゾ色素のカルボン酸をアリールポリアミンと縮合させてカルボアミド結合を形成させて合成される。
【0048】
(2g)ジアゾ成分として1個以上のアゾ基と1個以上のアミノ基とを有する化合物(代表式:Ar−N=N−Ar−NH
2)を用い、これをジアゾ化してなるジアゾニウム塩に、カップリング成分として2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボン酸アリールアミド(HBCと略記)がアゾ・カップリングしてなる、[Ar−N=N−Ar−N=N−HBC]で示される構造のアゾ系黒色顔料。
【0049】
上記した構造が[Ar−N=N−Ar−N=N−HBC]で示されるポリアゾ系黒色顔料の一例として、下記に、上記の合成方法で、上記「HBC」に、1個以上のアゾ基と1個以上のアミノ基とを有する化合物としてフェニルアゾ残基を結合するアニリンを用いてカップリングさせた場合の構造の一例を挙げる。
【0050】
次に、上記したような構造を有する本発明のアゾ系黒色顔料を合成する製造方法について説明する。本発明のアゾ系黒色顔料の製造方法は、下記のいずれかから選ばれる合成方法を用いるアゾ系黒色顔料の合成工程(I)を有し、該合成工程(I)で合成されたアゾ系黒色顔料が粗大である場合に、下記の(II−1)又は(II−2)の方法で顔料の平均粒子径が10nm〜200nmになるように顔料を微細化して顔料粒子の粒径を調整する工程(II)を行うことを特徴とする。以下に、まず、合成工程について説明する。
【0051】
本発明のアゾ系黒色顔料の合成する方法は、下記の(1)〜(4)の合成方法から選ばれる。
(1)の方法は、ジアゾ成分としてアミノ基を1個あるいは2個以上有する化合物(代表式:Ar−NH
2、H
2N−Ar−NH
2)を用い、これをジアゾ化してなるジアゾニウム塩に、あるいは、アゾ基とアミノ基を有する化合物(代表式:Ar−N=N−Ar−NH
2)を用い、これをジアゾ化してなるジアゾニウム塩に、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボン酸アリールアミド(HBC)をアゾ・カップリングさせる合成方法である。
該(1)の合成方法により得られたモノアゾ系黒色顔料あるいはポリアゾ系黒色顔料は、先に説明した[Ar−N=N−HBC]、[HBC−N=N−Ar−N=N−HBC]あるいは[Ar−N=N−Ar−N=N−HBC]で示される構造を有するものとなる。
【0052】
(2)の方法は、ジアゾ成分としてアミノ基を2個以上有する化合物(代表式:H
2N−Ar−NH
2)を用い、これをジアゾ化してなるジアゾニウム塩に、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボン酸アリールアミド(HBC)及び該化合物以外の他のカップリング成分(Cpと表示)をアゾ・カップリングした構造を有するポリアゾ系黒色顔料の合成方法である。具体的には、アミノ基を2個以上有する化合物(代表式:H
2N−Ar−NH
2)をジアゾ化してなるジアゾニウム塩に、等モルあるいはそれ以下のカップリング成分Cpをアゾ・カップリングさせ、必要に応じて、2個以上のカップリング成分Cpがカップリングしたポリアゾ顔料を分離、除去し、次いで、カップリングしていない他方のジアゾニウム基に上記カップリング成分HBCをアゾ・カップリングさせる合成方法である。
該(2)の合成方法によって得られたポリアゾ系黒色顔料は、先に説明した[HBC−N=N−Ar−N=N−Cp]で示される構造を有するものとなる。
【0053】
(3)の方法は、下記の(3−1)または(3−2)の方法である。これらの(3−1)および(3−2)の合成方法によって得られたポリアゾ系黒色顔料は、先に説明した[Ar−N=N−HBC−HBC−N=N−Ar]で示される構造を有するものとなる。
【0054】
(3−1)分子中に2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド残基(HBC−)を2個以上有するカップリング成分(HBC−HBCと表示)に、ジアゾ成分としてアミノ基を1個有する化合物(Ar−NH
2)を用い、そのジアゾニウム塩をアゾ・カップリングさせる合成方法である。
【0055】
(3−2)2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボン酸(HBC−COOHと表示)に、ジアゾ成分としてアミノ基を1個有する化合物(Ar−NH
2と表示)を用い、そのジアゾニウム塩をアゾ・カップリングさせ、次いで、アゾ色素のカルボン酸をアリールポリアミンと縮合させてポリカルボアミドにする合成方法である。
【0056】
(4)の方法は、下記の(4−1)または(4−2)の方法である。これらの(4−1)および(4−2)の合成方法によって得られたポリアゾ系黒色顔料は、先に説明した[Ar−N=N−HBC−Cp−N=N−Ar]で示される構造を有するものとなる。
【0057】
(4−1)一分子中に2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド残基(HBC−)と、該化合物以外の他のカップリング成分残基(Cp−と表示)とを有するカップリング成分(HBC−Cpと表示)に、ジアゾ成分としてアミノ基を1個有する化合物(Ar−NH
2と表示)を用い、そのジアゾニウム塩をアゾ・カップリングさせる合成方法である。
【0058】
(4−2)2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボン酸(HBC−COOHと表示)及び他のカップリング成分のカルボン酸(Cp−COOHと表示)に、ジアゾ成分としてそれぞれアミノ基を1個有する化合物(Ar−NH
2と表示)を用い、そのジアゾニウム塩をアゾ・カップリングさせ、次いで、得られた両アゾ色素のカルボン酸をアリールポリアミンと縮合させてポリカルボアミドにする合成方法である。
【0059】
上記の合成方法に使用されるカップリング成分及びジアゾ成分について説明する。
(A)カップリング成分について具体的に例示する。
(a)カップリング成分(HBC)としては、例えば、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−アニライド、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−ナフチルアミドなど及びそれらの誘導体である。誘導体としては、置換基としては、例えば、アルキル(炭素数;1〜10)基、アルコキシ(炭素数;1〜10)基、トリフルオロメチル基、ハロゲン基;ニトロ基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アミノスルホニル基、アルキルスルホアミド基、フェニルスルホアミド基、アルキルアミノスルホニル基、アニリノスルホニル基、アミノカルボニル基、ベンズアミド基、アルキルアミノカルボニル基、アニリノカルボニル基、環状ジカルボイミド基、環状ウレイレン基などが1個またはそれ以上導入されたカップリング成分である。
【0060】
具体的には、例えば、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−アニライド、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボキシ−p−アニシダイド、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボキシ−(2−メチル)−p−アニシダイド、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボキシ−N−ベンズイミダゾロン−5−アミド、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボキシ−ナフチルアミドなどが挙げられる。
【0061】
(b)カップリング成分(HBC−HBC)としては、例えばフェニレン−ビス(2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド)、ビフェニル−ビス(2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド)、ナフタレン−ビス(2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド)など及びそれらの誘導体である。誘導体の置換基としては、そのアリール基に公知の置換基、例えば、アルキル(炭素数;1〜10)基、アルコキシ(炭素数;1〜10)基、トリフルオロメチル基、ハロゲン基などが1個又はそれ以上導入されたカップリング成分である。
【0062】
具体的には、例えばフェニレン−(1,4−)ビス(2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド)、2−クロロ−フェニレン−(1,4−)ビス(2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド)、2,5−ジクロロ−フェニレン−(1,4−)ビス(2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド)、2−メチル−フェニレン−(1,4−)ビス(2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド)、3,3’−ジクロロ−ビフェニル−(4,4’−)ビス(2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド)、ビフェニル−ビス(2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド)、ナフタレン−(1,5−)ビス(2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド)、ベンズアニライド−4,4’−ビス(2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド)などである。
【0063】
(c)カップリング成分(Cp)としては、例えば、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸アリールアミド、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸アリールアミド、2−ヒドロキシ−3−アンスラセンカルボン酸アリールアミド、2−ヒドロキシ−3−ジベンゾフランカルボン酸アリールアミド、2−ヒドロキシ−1−カルバゾールカルボン酸アリールアミド、アセトアセチックアリールアミドなど及びそれらの誘導体が挙げられる。例えば、C.I.アゾイックカップリングコンポーネント2、4、6、7、8、10、11、12、14、17、18、19、20、21、22、23、24、27、28、29、31、32、41、46、111、112、113、45、16、37、36、15、アセトアセチック−N−ベンズイミダゾロン−5−アミドなどである。
【0064】
(d)カップリング成分(HBC−Cp)としては、HBC残基のアミノ基とアミド結合するCp残基のカルボン酸として、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−3−アンスラセンカルボン酸、2−ヒドロキシ−3−ジベンゾフランカルボン酸、2−ヒドロキシ−1−カルバゾールカルボン酸などが挙げられる。例えば、フェニレン(−1)−(2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド)(−4)−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸アミド)、フェニレン(−1)−(2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド)(−4)−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸アミド)、(2−メチル−)フェニレン(−1)−(2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド)(−4)−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸アミド)、2,2’−ジメトキシジフェニレン−(1−)(2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボアミド)−(1’−)(2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸アミド)などである。
【0065】
(B)ジアゾ成分について具体的に例示する。
(a)アミノ基を1個有する化合物(代表式:Ar−NH
2)としては、例えば、アニリン、ナフチルアミン、アミノアンスラキノン、フェノキシアニリン、フェニルイミノアニリンなど及びそれらの誘導体である。誘導体の置換基としては、そのアリール基に公知の置換基、例えば、アルキル(炭素数;1〜10)基、アルコキシ(炭素数;1〜10)基、トリフルオロメチル基、ハロゲン基、ニトロ基;アリールエーテル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アミノスルホニル基、アルキルスルホアミド基、フェニルスルホアミド基、アルキルアミノスルホニル基、アニリノスルホニル基、アミノカルボニル基、アリールカルボアミド基、アルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基、;アルキルイミノ基、ヒドロキシアルキルイミノ基、ジアルキルアミノ基、ビス(ヒドロキシアルキル)アミノ基などからなる群から同一にあるいは異なる置換基が1個ないし2個以上選ばれて導入される。
【0066】
具体的には、例えばC.I.アゾイックジアゾコンポーネント5、8、9、10、20、24、32、33、34、35、36、37、41、42、43、47などが挙げられる。2−メトキシ−5−N−フェニルカルバモイル−アニリン、2’−クロロ−2−メトキシ−5−N−フェニルカルバモイル−アニリン、3’−クロロ−2−メトキシ−2’メチル−5−N−フェニルカルバモイル−アニリンなどが挙げられる。
【0067】
(b)アミノ基を2個有する化合物(代表式:H
2N−Ar−NH
2)としては、例えば、フェニレンジアミン、ジアミノビフェニル、ジアミノナフタレン、ジアミノアンスラキノン、ジアミノ−ベンゾフェノン、ジアミノピリジン、ジアミノジフェニルアミン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノベンズアニライドなど及びそれらの誘導体である。誘導体の置換基としては、そのアリール基に公知の置換基、例えば、アルキル(炭素数;1〜10)基、アルコキシ(炭素数;1〜10)基、トリフルオロメチル基、ハロゲン基などが1個又はそれ以上導入されたジアゾ成分である。
【0068】
具体的には、例えば1,4−フェニレンジアミン、2−クロロ−1,4−フェニレンジアミン、2,5−ジクロロ−1,4−フェニレンジアミン、2−クロロ−5−メチル−1,4−フェニレンジアミン、2,5−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、2−ニトロ−1,4−フェニレンジアミン;1,3−フェニレンジアミン、4−クロロ−1,3−フェニレンジアミン、4−メトキシ−1,3−フェニレンジアミン、4−ニトロ−1,3−フェニレンジアミン;4−クロロ−1,2−フェニレンジアミン、4,5−ジメチル−1,2−フェニレンジアミン、4−ニトロ−1,2−フェニレンジアミン;3,3’−ジクロロ−4,4’−ベンジジン、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ベンジジン、3,3’−ジメチル−4,4’−ベンジジン、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ベンジジン;1,5−ジアミノナフタレン1,2−ジアミノナフタレン;1,2−ジアミノアンスラキノン、1,5−ジアミノアンスラキノン;3,4−ジアミノ−ベンゾフェノン;2,6−ジアミノピリジンン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−ベンズアニライド、4,4’−ジアミノ−2、5−ジメトキシ−ベンズアニライド、4,4’−ジアミノ−2’−クロロ−2、5−ジメトキシ−ベンズアニライド、4,5’−ジアミノ−2’−クロロ−2、5−ジメトキシ−ベンズアニライドなどが挙げられる。
【0069】
(C)アゾ基を有するジアゾ成分について具体的に例示する。
アゾ基とアミノ基を1個有する化合物(代表式:Ar−N=N−Ar−NH
2)としては、例えば、(フェニルアゾ)−アニリン、(ナフチルアゾ)−アニリン、(フェニルアゾ)−ナフチルアミン、(ナフチルアゾ)−ナフチルアミンなど及びそれらの誘導体である。誘導体の置換基としては、そのアリール基に公知の置換基、例えば、アルキル(炭素数;1〜10)基、アルコキシ(炭素数;1〜10)基、トリフルオロメチル基、ハロゲン基などが1個又はそれ以上導入されたジアゾ成分である。具体的には、例えばC.I.アゾイックジアゾコンポーネント4、21、23、27、38、39、45、51などが挙げられる。
【0070】
次に、本発明のアゾ系黒色顔料の製造方法を構成する、顔料を微細化して顔料粒子の粒径を調整する工程(II)について説明する。本発明のアゾ系黒色顔料は、上記に挙げたような合成方法で得られたアゾ顔料を、その粒径が粗大である場合には、下記の(1)又は(2)のいずれかの方法で顔料の平均粒子径を凡そ10nm〜200nmに微細化することで得られる。すなわち、上記に挙げたような合成方法で得られたアゾ系黒色顔料を使用した、例えば、CFのBM塗膜などの遮光性塗膜で、バックライトの光を充分に遮光するためには、物理的にも洩光をなくする必要があり、微粒子固体である顔料を塗膜中では高密度で充填させるために顔料は微粒子にする必要がある。また、塗膜の形成に使用される顔料分散液である高濃度顔料黒色着色組成物及び黒色着色剤中でも顔料は安定に分散し、且つ、長期保存安定性も高く、更に種々の塗布方法でBMなどの塗膜を形成するに際して、均一で平坦な塗膜を形成することのできるような低粘度、高流動性などの特性が与えられなければならない。そのため顔料粒子は微細であることが望ましく、平均粒子径としては、凡そ10nm〜200nmである。
したがって、本発明のアゾ系黒色顔料は、上記した方法で合成した顔料が粗大である場合には、顔料の平均粒子径を要求された粒径に調整するために、下記に挙げるような公知の顔料微細化工程を行い、微細化顔料を製造することを要する。
【0071】
具体的には、
(1)ボールミル、サンドミル、アトライター、横型連続媒体分散機、ニーダー、連続式一軸混練機、連続式二軸混練機、三本ロール、オープンロール連続混練機などの顔料磨砕機あるいは顔料分散機を使用して微細化を行う微細化方法や、
(2)混練機中で水溶性塩、必要に応じて水溶性有機溶剤と共に混練、摩砕するソルトミリング法など公知の方法など
から選ばれた顔料微細化工程を行い、平均粒子径が凡そ10nm〜200nmとなるように調製する。更に、顔料の粒子径は、使用される用途に合わせて調整される。より赤外線の高透過率を要望する場合には、平均粒子径が凡そ10nm〜50nmの超微細顔料を調製することが好ましい。
【0072】
顔料の粒子径は、使用される用途に合わせて調整される。粒子径の調整は主に顔料の対する塩類の量比や混練時間によって制御される。高い透過率を要求するような赤外線フィルターのような用途では顔料粒子はより小さいことが望ましく、例えば、10nm〜50nmの微細顔料粒子が、更には10nm〜30nmの超微細顔料粒子の分散状態が好ましい。
【0073】
一方、可視光の遮光性を要求するCFのBMのような用途では、透過用途よりやや大きい50nm〜100nm位の方が好ましい。また、赤外線反射性を求める用途では、下地が反射性であることが好ましいが、更に顔料粒子は比較的に大きくてもよく、100nm〜200nmでも使用される。
【0074】
上記に挙げたソルトミリング法は、顔料に磨砕助剤として水溶性無機塩類粉末を、要望とする顔料の粒子径により磨砕する顔料の数倍、具体的には2〜20倍量、好ましくは3〜10倍量程度を添加し、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等の粘性のある水溶性有機溶剤を添加し、混練磨砕する。磨砕助材に用いる水溶性無機塩としては、塩化ナトリウムや硫酸ナトリウム等が使用される。磨砕後、希硫酸、水などに添加して、磨砕助剤を溶解させ、ろ過し、水洗して顔料のろ過ペースト(プレスケーキ)を得る。
【0075】
上記に記載の洗浄工程において、水洗による塩及び水溶性溶剤の洗浄に続き、更に洗浄水として電導度が50μS/cm以下、好ましくは10μS/cm以下の水、好ましくはイオン交換水、逆浸透膜浄水又は蒸留水を使用して洗浄する洗浄工程で充分洗浄し、高絶縁性の微細顔料を調製する。
【0076】
顔料懸濁液の加圧濾過機による濾過、水洗に続くイオン交換水を使用した洗浄に際して、顔料プレスケーキの洗浄程度の評価については、濾液の電導度を測定して判定するのが好ましい。濾過機の排水経路中の付着排水の混入などがあり、必ずしも正しく示していないおそれもあるが、目安として500μS/cm以下、好ましくは200μS/cm以下の値を示すまで洗浄することで顔料自体の体積固有抵抗として10
10Ω・cm以上の値が達成される。
【0077】
顔料プレスケーキは、常法により熱風乾燥して後、乾式粉砕機で粉砕したり、水中に再分散し、顔料分散液を噴霧乾燥により粉末顔料とする。粉末顔料は前記した各種の湿式分散機や混練機などにより分散して、高濃度顔料黒色着色組成物あるいは黒色着色剤とする。しかし、乾燥による顔料の再凝集を避ける工夫として、プレスケーキを、そのまま湿式分散機で分散加工したり、フラッシング方式で油性着色剤や樹脂分散着色剤に加工するなど、用途によって各種の着色剤へ加工処理がなされる。また、水中で樹脂処理して易分散性処理顔料あるいは加工顔料にすることも好ましい。
【0078】
顔料自体の電気抵抗特性を調べるために、粉末顔料の圧縮成型タブレットを調製し、高分子バインダーの介在していない、顔料同士が密に接触している状態での体積固有抵抗を測定した。使用量は顔料により変わるが、約1g〜1.5gの粉末顔料をアルミニウム製リング(内径3.3cm、高さ5mm、肉厚1mm)の中に盛り、手動圧縮成型機(理研精機(株)製)で200kg/cm
2まで圧縮し、厚みが凡そ2mmのタブレット状に成形した。得られた顔料のタブレットの体積固有抵抗を高抵抗率計「ハイレスタ−UP(Hiresta−UP)」(測定範囲は10
6〜10
13Ω・cm、(株)三菱化学アナリテック製)を用いて測定した。アゾ系黒色顔料を測定した結果は10
14Ω・cm以上を示し、電気絶縁性が非常に高いことを示した。
以下、上記の測定方法を「顔料タブレット電気抵抗測定法」と称する。
【0079】
塗膜の形成に使用される黒色着色剤は、黒色顔料を直接他の材料と共に充分に分散して着色剤を製造する方法と、予め黒色顔料を高濃度で充分に分散して加工顔料を含む高濃度顔料黒色着色組成物を製造し、ついで必要な材料を添加して着色剤にする方法で製造される。
【0080】
本発明のアゾ系黒色顔料は、使用に際して、黒色の着色あるいは無彩色の暗色、ないし暗色の有彩色の着色をする着色組成物であり、着色目的、用途、使用方法などにより、アゾ系黒色顔料を含む顔料成分を液体分散媒体中に含む液状の着色組成物あるいは固体分散媒体中に含む固体の着色組成物として多様な形態での使用が可能である。
【0081】
本発明のアゾ系黒色顔料は、顔料成分として、アゾ系黒色顔料単独で、あるいは、複数の顔料成分の一つとして、有彩色顔料、白色顔料、他の黒色顔料及び体質顔料などを、目的の色彩に合わせて1種または2種以上を選択し、これらと併用することもできる。アゾ系黒色顔料の色彩を補正するために本発明のアゾ系黒色顔料と併用する、有彩色顔料、白色顔料、他の黒色顔料あるいは体質顔料の配合比率は、特に限定されないが、コンピューター・カラーマッチングシステム、例えば「カラコムシステム」(大日精化工業(株))の調色システムを用いて最適化される方法で決めることも好ましい形態である。
【0082】
本発明のアゾ系黒色顔料と併用する顔料としては、公知の顔料が使用でき、特に限定されない。例えばアンスラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、インジゴ・チオインジゴ系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、フタロシアニン系顔料、インドリン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、キノフタロン顔料、ニッケルアゾ系顔料、金属錯体顔料、不溶性アゾ系顔料、高分子量アゾ系顔料、アニリンブラック系顔料などの有機顔料及び複合酸化物系顔料、酸化鉄顔料などの無機顔料から選ばれる少なくとも1種の顔料、あるいは2種以上の顔料の混合物、混晶顔料、スタッキング(積層)顔料である。
【0083】
有機顔料としては、例えば、黄色顔料では、C.I.ピグメントイエロー(PYと略記する)74、83、93、94、95、97、109、110、120、128、138、139、147、150、151、154、155、166、175、180、181、185、191等;橙色顔料では、C.I.ピグメントオレンジ(POと略記する)61、64、71、73等;赤色顔料では、C.I.ピグメントレッド(PRと略記する)4、5、23、48:2、48:4、57:1、112、122、144、146、147、150、166、170、177、184、185、202、207、214、220、221、242、254、255、264、272等;及びそれらの混晶顔料、スタッキング顔料が挙げられる。
【0084】
青色顔料では、C.I.ピグメントブルー(PBと略記する)15:1、15:2、15:3、15:4、15:5、15:6、16、17:1、60、80、アルミニウムフタロシアニンブルー等;緑色顔料では、C.I.ピグメントグリーン(PGと略記する)7、36、58、ポリ(13−16)ブロモ銅フタロシアニン、ポリ(13−16)ブロモ亜鉛フタロシアニン等;紫色顔料では、C.I.ピグメントバイオレット(PVと略記する)19、23、37など;及びそれらの混晶顔料、スタッキング顔料が挙げられる。黒色顔料としては、複合酸化物黒色顔料、ペリレンブラック顔料、アニリンブラック顔料などが挙げられる。
【0085】
本発明のアゾ系黒色顔料を着色剤として使用するに際して、特に液状顔料分散液において、アゾ系黒色顔料にアニオン性やカチオン性の顔料誘導体を添加することも好ましい。上記の顔料の合成時に、イオン性基を有するジアゾ成分やカップリング成分をアクセサリーカップリング法で導入する方法、あるいは、別に合成されたイオン性基を有する顔料誘導体を微粒子化製造工程時や顔料分散液を調製する際に添加する方法など公知の方法で行われる。顔料誘導体としては、黒色顔料誘導体の他、黄色、青色、赤色など有彩色の顔料誘導体が色調の調整なども含め適切に使用される。
【0086】
また、CFのR、G、Bの有彩色画素に使用される赤色、緑色、青色、黄色、紫色の各顔料も上記した公知の各色の顔料が使用される。画素は鮮明で高透過性が要求されることから顔料粒子は超微細であることが望ましく、平均粒子径としては、凡そ10nm〜100nm、好ましくは凡そ15nm〜50nmである。顔料を超微細化するためには前記したソルトミリング法を用い、更に黒色顔料と同様に充分に洗浄し、水洗することが好ましい。有彩色画素も、BMと共に電極と接触あるいは近接して重積する状態で形成される場合には、上記の有彩色顔料も同様に顔料自体の体積固有抵抗が10
10Ω・cm以上、好ましくは10
12Ω・cm以上の高電気抵抗特性を示すものであることが好ましい。
【0087】
CFのBMなど黒色塗膜の形成に際しては、塗布剤として液状の黒色着色剤を使用することが好ましい。液状着色剤に使用される顔料分散剤として、親顔料性、親媒性の共重合体やオリゴマー、低分子界面活性剤などが使用される。皮膜形成材料はCFのBMなどの塗膜の形成方法に従い、例えば、加熱乾燥方式、加熱硬化方式、エネルギー線硬化方式などによって適切な材料が選択して使用され、重合体、オリゴマーあるいは単量体などが選択され、組み合わされて使用される。液状着色剤であることから、顔料分散剤又は皮膜形成材料がそれ自体液状であるか、あるいは希釈媒体として有機溶剤系、水系又は水−親水性有機溶剤混合溶剤系からなる液体媒体を含有し、必要に応じて更に硬化触媒、重合触媒、レベリング剤、消泡剤などの添加剤を含有する。
【0088】
更に、上記の液状着色剤を準備するに際して、予め、使用する顔料を高濃度に分散媒体中に微分散した高濃度顔料加工品として事前に準備しておけば、それを使用して着色剤の製造を容易にすることができる。液状の高濃度顔料分散液は「ベースカラー」あるいは「ベースインク」と称され、使用されている。
【0089】
また、上記の本発明のアゾ系黒色顔料を含有してなる固体あるいは湿潤タイプの樹脂分散系着色剤は、主としてプラスチックや合成繊維の内部着色に使用される着色剤とされており、例えば、高濃度顔料分散物であるマスターパウダー、マスターバッチ、潤性マスターバッチなど、及び、全体に着色されたカラードペレットなど公知の製品形状で使用される。固体分散媒体としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ワックス、脂肪酸アミド及び脂肪酸金属石鹸などから選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0090】
本発明のアゾ系黒色顔料を液状着色剤に調製するに際しては、下記する液状材料を添加、混練して湿潤状態にして易分散性にすることも好ましい。これらの多くの場合には、顔料分散剤として、親顔料性、親媒性の共重合体が使用される。液状着色剤の顔料分散剤も同様であるが、特に両機能を分離させたグラフト共重合体やブロック共重合体が好ましい。
【0091】
塗膜形成材料としての樹脂バインダーとしては、公知の反応基を有しない非反応性での常温乾燥型あるいは反応性基を有する焼付け型の樹脂バインダー及びエネルギー線硬化性樹脂バインダーが使用される。常温乾燥型あるいは焼付け型の樹脂バインダーの具体例としては、例えば、アクリル樹脂、スチレン系(共)重合体などのビニル樹脂、アミノ樹脂変性ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリルポリオールウレタン系樹脂、可溶性ポリアミド系樹脂、可溶性ポリイミド系樹脂、可溶性ポリアミドイミド系樹脂、可溶性ポリエステルイミド系樹脂、アルキッド樹脂、アミノアルキッド系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ゴム樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、セルロースアセテート系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、ヒドロキシエチルセルロース、スチレン−マレイン酸エステル系共重合体の水溶性塩、(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体の水溶性塩、水溶性アミノアルキッド系樹脂、水溶性アミノポリエステル系樹脂及び水溶性ポリアミド系樹脂などが挙げられ、これらは単独あるいは2種以上を組み合わせて使用される。
【0092】
反応性の皮膜形成材料の有する反応性基としては、例えば、メチロール基、アルキルメチロール基、イソシアネート基、マスクッドイソシアネート基、エポキシ基などが挙げられる。また、用途によってオリゴマーや単量体を使用することもでき、さらに架橋剤を用いてもよい。架橋剤としては、例えば、メチロールメラミン系やイソシアネート系、エポキシ系架橋剤も併用される。
【0093】
紫外線(光)硬化性樹脂系、電子線硬化性樹脂系などのエネルギー線硬化性塗膜形成材料の具体例としては、例えば、光硬化性環化ゴム系樹脂、光硬化性フェノール系樹脂、光硬化性ポリアクリレート系樹脂、光硬化性ポリアミド系樹脂、光硬化性ポリイミド系樹脂など、及び不飽和ポリエステル系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリエポキシアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、ポリエーテルアクリレート系樹脂、ポリオールアクリレート系樹脂などのバインダー、あるいは、これらにさらに反応性希釈剤としてモノマーが加えられたバインダーが挙げられる。
【0094】
本発明のアゾ系黒色顔料を含む着色剤組成物を用いることで、CFや有機ELのBMとして高い遮光性が期待されることから、遮光性の基準として光学濃度(オプティカル・デンシティ:「OD値」と称する場合がある)としては、2.0以上、好ましくは3.0以上になるように設定される。それをもたらすBMの膜厚としては、通常は0.8μm〜3μmである。柱状スペーサーの機能を持たせる場合には、BMそのものを厚くする場合、BMの上に画素を重積する場合あるいは無色の樹脂膜を重積する場合などがあり、5μm〜10μmが好ましい。厚み1μm当たりのOD値としては塗布するBMの厚みにもより一概に決められないが、1.0/μm以上、好ましくは1.5/μm以上になるように設定される。膜厚が薄い場合は塗膜中の顔料分は高くすることが求められ、厚い場合は低顔料分でもよく、範囲は質量%で凡そ60〜20%、好ましくは55〜30%である。
【0095】
また、本発明のアゾ系黒色顔料を含む黒色着色剤、例えば、レジストインクやインクジェットインクなどの顔料分は凡そ5〜15%、好ましくは凡そ5%〜10%の比較的低い顔料分にして、顔料が安定に分散されて、保存安定性も高く、塗布に適する粘度が保たれ、均一な着色皮膜を形成させるようにすることが好ましい。
【0096】
CFや有機ELの膜構成によりBM塗膜に高電気抵抗が要求される場合においても、本発明のアゾ系黒色顔料は、顔料自体の体積固有抵抗が10
10Ω・cm以上の高電気絶縁性であることから、上記のような高OD値をもたらすために顔料の含有率を高めた場合においても、電気絶縁値の低い顔料に見られるような顔料に起因する電気抵抗値の低下はない。このため、本発明のアゾ系黒色顔料を使用することで、充分に高遮光性塗膜の処方の検討ができ、またCFや有機EL部品の品質も保証できる。
【0097】
BMの形成方法、及び画素の形成方法は常法に準じて行なわれる。CF基板としては、公知のガラス製CF基板、プラスチック製CF基板及び転写用又は貼付け用プラスチックフィルムが使用できる。本発明のアゾ系黒色顔料を含む着色剤組成物を使用して、これらのCF基板上に、直接に、あるいは転写又は貼り付け用のプラスチックフィルムを介在させて、フォトリソグラフィ法、レーザー・アブレーション法、インクジェトプリント法、印刷法、転写法、貼付け法などから選ばれた1種又は二種以上の形成方法で形成される。
【0098】
また、前記BMの形成されたCF基板上に、更に公知の有彩色画素形成用着色剤を使用して公知の画素形成方法により有彩色画素を形成される。例えば、フォトリソグラフィ法、レーザー・アブレーション法、インクジェトプリント法、印刷法、転写法、貼付け法などから選ばれた1種又は2種以上の形成方法で形成される。
【0099】
太陽光発電モジュールの黒色バックシートの製造は常法に準じて行なわれる。着色剤として、黒色顔料で光反射性顔料を被覆処理した顔料を使用するか、あるいは両者を混合して使用する方法、あるいは光反射性を有するシートを下地にし、本発明のアゾ系黒色顔料を含む着色剤組成物を、塗装、塗布、貼付、溶着、重積、印刷、インクジェット印刷、電子写真印刷あるいは静電印刷することにより、赤外領域では反射性を示す着色を施して、光反射性シートの上に黒色または暗彩色の赤外線透過性層を複層したことを特徴とする太陽光発電モジュールのバックシートが形成される。
【0100】
本発明において形成される、本発明の顔料自体が高絶縁性を示すアゾ系黒色顔料を含有する塗膜は、体積固有抵抗が10
12Ω・cm以上で、高絶縁性である。従って、本発明によれば、優れた電気絶縁性の黒色顔料を使用する物品、特にCF基板あるいは有機EL発光基板、および太陽光発電モジュールのバックシートなどにおいて、優れた特性の物品の提供が可能になる。LCDのCFの構成として、TFTなどの電極と実質的に高電気絶縁性であるBMあるいは画素とが接触あるいは近接して重積する状態で形成されたカラーフィルター基板あるいは有機EL発光基板、およびそれらを含むカラーディスプレーパネルの装着されたカラーディスプレー機器が高い信頼性を持って提供される。
【実施例】
【0101】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、文中、「g」又は「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。製造例1〜12は、本発明の実施例のアゾ系黒色顔料を得るための製造方法であり、得られる顔料は、いずれも本発明の実施例の黒色顔料である。なお、本発明では、アゾ・カップリングする際に使用するジアゾニウム塩を得るための出発物質であるアミノ基を1個以上有する化合物を「ジアゾ成分」と呼ぶ。
【0102】
[製造例1](「黒色顔料−1」の製造)
(1)アゾ系黒色顔料のクルード顔料の合成
常法により、4,4’−ジアミノ−2、5−ジメトキシ−ベンズアニライド(以下「ジアゾ成分−1」と称する)2.87g(0.01モル)を、氷酢酸22.6gに分散した。次いで、35%塩酸7.4g(0.071モル)と、水5.2gを加えた後、亜硝酸ナトリウム1.52g(0.022モル)を含む30%水溶液を添加し、ジアゾ化反応を行った。ジアゾ化反応の終了を確認した後、過剰の亜硝酸ナトリウムをスルファミン酸で分解し、濾過して、ジアゾ成分−1をジアゾ化してなるジアゾニウム塩溶液を調製した。
【0103】
これとは別に、2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]カルバゾール−3−カルボキシ−(2’−メチル)−p−アニシダイド(以下「カップリング成分−1」と称する)7.93g(0.02モル)を、水酸化ナトリウム1.2gが溶けたメタノール500g中に溶解した。該カップリング成分−1の溶液を0〜10℃に保ち、そこに、上記で得たジアゾニウム塩溶液を滴下して添加した。次いで、該溶液を15℃以下に保ち、酢酸ナトリウムを用いてpHを6.5〜7.0に調整して、カップリング反応を行った。反応終了後、濾過し、メタノール洗浄及び水洗を行い、顔料プレスケーキを得た。得られた顔料プレスケーキを、乾燥、粉砕してクルード顔料(粗製、粗粒子顔料)を得た。収量は10.36gであり、収率は95%であった。
【0104】
(2)微細化処理によるアゾ系黒色微粒子顔料の調製
上記(1)の合成反応によって得られたアゾ系黒色顔料のクルード顔料100部を、塩化ナトリウム粉末400部及びジエチレングリコール50部と共に加圧蓋を装着したニーダーに仕込んだ。ニーダー内に均一に湿潤された塊ができるまで予備混合し、次いで加圧釜を閉じて圧力6kg/cm
2で内容物を押さえ込みながら混練及び摩砕を行った。内容物が92〜98℃になるように温度を管理しながら、2時間混練・摩砕処理を行った。次いで得られた摩砕物を、80℃に加温した3,000部の温水中で1時間の撹拌処理を行った後、濾過及び水洗をして塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除去した。更に伝導度が2μS/cm以下のイオン交換水で、洗浄濾液の電導度が凡そ100μS/cm以下になるまで水洗し、微細化したアゾ系黒色顔料のプレスケーキを得た。得られた顔料プレスケーキを乾燥、粉砕して、アゾ系黒色顔料の微細化粉末顔料を得た。以下、これを「黒色顔料−1」と称する。
【0105】
上記で得た黒色顔料−1の平均粒子径を下記の方法で測定した。得られた黒色顔料−1の透過型電子顕微鏡写真(6万倍)を撮り、該写真から、「画像解析式粒度分布ソフトウエア、Mac−View」(マウンテック社製)を用いて粒度分布を測定した。この結果、黒色顔料−1の平均粒子径は凡そ80nmであった。この方法を「画像解析式粒度分布測定法」と称する。
【0106】
また、下記の方法で黒色顔料−1の圧縮成型タブレットを調製し、粉末顔料自体の体積固有抵抗を、前述した「顔料タブレット電気抵抗測定法」によって測定した。まず、粉末顔料(黒色顔料−1)約0.7gを、内径3.3cm、高さ5mmのアルミニウムリングの中に盛り、手動圧縮成型機で200kg/cm
2まで圧縮し、厚みが凡そ2mmのタブレットを形成した。そして、高抵抗率計ハイレスタ−UPを用いて、上記で形成した顔料のタブレットの体積固有抵抗を測定した。測定結果は10
14Ω・cm以上を示し、黒色顔料−1自体が、電気抵抗特性が非常に高いことがわかった。
【0107】
その他の製造例においても、顔料の平均粒子径は「画像解析式粒度分布測定法」により測定し、顔料自体の体積固有抵抗は「顔料タブレット電気抵抗測定法」により測定した。
【0108】
表1及び表2に、後述する製造例2−11で用いたジアゾ成分及びカップリング成分の呼称、化合物名及びその分子量をまとめて示した。
【0109】
【0110】
【0111】
[製造例2〜11](「黒色顔料−2〜−11」の製造)
(1)アゾ系黒色顔料のクルード顔料の合成
製造例1(1)と同様にして、表3の化合物を用いて、それぞれのクルード顔料を合成した。具体的には、表3の2欄に記載のジアゾ成分をジアゾ化した後、3欄に記載のカップリング成分とアゾ・カップリング反応を行った。その後、製造例1(1)と同様な後処理及び洗浄を行い、4欄に記載の「クルード顔料」をそれぞれ得た。
【0112】
【0113】
(2)微細化処理によるアゾ系黒色微粒子顔料の調製
製造例1(2)と同様の方法で微細化処理を行った。その際、製造例2〜11の(1)で得たそれぞれのクルード顔料100部に対して、塩化ナトリウム粉末のニーダーへの仕込み量をそれぞれ表4に記載の塩の使用量とした以外は同様にして微細化処理を行った。その後、後処理として、製造例1(2)と同様に、温水中に投入し、塩や可溶分を溶解、濾過し、水洗、及びイオン交換水での洗浄を行い、それぞれのアゾ系黒色顔料のプレスケーキを得た。その後、得られたプレスケーキを乾燥、粉砕して、それぞれのアゾ系黒色顔料の微細化粉末顔料を得た。得られた顔料をそれぞれ「黒色顔料−2〜−11」とした。得られた各黒色顔料の平均粒子径を測定したところ、表4に示したようにいずれも80〜90nmの範囲内にあった。また、それぞれの黒色顔料−2〜−11の体積固有抵抗を測定したところ、表4に示したようにいずれも10
14Ω・cm以上であり、顔料自体が高絶縁性を示すことが確認された。
【0114】
【0115】
[製造例12](「黒色顔料−12」の製造)
(1)アゾ系黒色顔料のクルード顔料の合成
製造例1(1)と同様の方法で、クルード顔料を作製した。ジアゾ成分−8をジアゾニウム塩としたものに、塩化亜鉛を加えて得られた4−(4−ニトロフェニル−アゾ)−2,5−ジメトキシフェニル(−1)ジアゾニウムクロライド・塩化亜鉛複塩を8.36g(0.02モル)と、カップリング成分−1を7.93g(0.02モル)用いて、製造例1(1)と同様にカップリング反応を行った。その後、濾過、水洗を行い、顔料のプレスケーキとし、これを乾燥、粉砕することによりクルード顔料を得た。収量は13.63gであり、収率は96%であった。得られたクルード顔料を「クルード顔料−12」と称する。
【0116】
(2)微細化処理によるアゾ系黒色微粒子顔料の調製
製造例1(2)と同様の方法で微細化処理を行った。その際、上記で得た100部のクルード顔料−12に対して、塩化ナトリウム粉末のニーダーへの仕込み量を400部とした以外は同様にして微細化処理を行った。その後、後処理として、製造例1(2)と同様に、温水中に投入し、塩や可溶分を溶解、濾過し、水洗及びイオン交換水での洗浄を行い、アゾ系黒色顔料のプレスケーキを得た。その後、プレスケーキを乾燥、粉砕して、アゾ系黒色顔料の微細化粉末顔料を得た。得られた顔料を「黒色顔料−12」と称する。黒色顔料−12の平均粒子径を測定したところ凡そ80nmであった。また、黒色顔料−12の体積固有抵抗を測定したところ10
14Ω・cm以上を示し、顔料自体が高絶縁性を示すことが確認された。
【0117】
[実施例1](製造例1の黒色顔料−1を含む塗膜の分光透過率の評価)
(1)黒色顔料−1を用いた黒色塗膜形成PETフィルムの調製
製造例1で得られた黒色顔料−1によって実現される光学的特性を見るために、まず、以下の方法で評価用の黒色塗膜形成ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを作製した。カルボキシル基を有するアクリル樹脂の50%キシレン−ブタノール混合溶媒溶液(酸価は10mgKOH/g)と、ブチル化メチロールメラミン樹脂の50%キシレン−ブタノール混合溶媒溶液を、80:20の比率で配合し、以下で使用するワニスを調製した(以下、これを単に「ワニス」と称す。)。また、希釈溶剤には、キシレン−ブタノールの混合溶媒(4:1)を使用した(以下、これを「希釈溶剤」と称する。)。
【0118】
黒色顔料−1を3部、ワニス24部、希釈溶剤6部及び分散メディアとしてガラスビーズ48部を分散用容器に仕込み、ペイントシェイカーで3時間分散した。その後、更にワニスを36部追加して10分間分散を続けた後、取り出して黒色の塗布液を得た。得られた塗布液中の顔料分と樹脂固形分の比率は1:10であった。上記のようにして得た黒色の塗布液を、PETフィルム上に、バーコーターを用いて塗布し、乾燥後、130℃で硬化させて黒色塗膜形成PETフィルム(以下、黒色PETフィルムと称す)を得た。形成した黒色塗膜の平均乾燥膜厚は34nmであった。
【0119】
(2)可視領域(可視部)及び近赤外領域(近赤外部)の透過率の測定
上記(1)で得られた黒色PETフィルムについて、日立分光光度計(U−4100型、日立製作所製)を用いて可視部及び近赤外部の分光透過率を測定した。表5に測定結果を示した。
【0120】
【0121】
表5の分光透過率の測定結果に示された通り、黒色顔料−1を含んでなる黒色塗膜は、可視光領域の400〜750nmの全波長領域に亘って分光透過率は0%であり、殆ど透過していないことが確認された。また、近赤外領域では、800nm付近の近赤外部で透過率が急激に上昇し、900nmの近赤外部における透過率は36%であり、更に、それより長波長側ではなだらかに上昇していることが確認された。
【0122】
(3)体積固有抵抗の測定
更に、上記(1)で得た黒色PETフィルム上の黒色塗膜について、高抵抗率計ハイレスタ−UP(Hiresta−UP)[(株)三菱化学アナリテック製]で体積固有抵抗を測定した。測定結果は10
14Ω・cm以上を示し、該黒色塗膜は絶縁性が非常に高いものであることが確認された。
【0123】
[実施例2](製造例1の黒色顔料−1を含む塗膜の光反射特性の評価)
黒色顔料−1について、白色板の反射面上における反射特性を見るために、下記のようにして評価した。実施例1(1)で得た黒色PETフィルムの形成塗膜がない裏面に白色板を当てた状態で、日立分光光度計(U−4100型、日立製作所製)を用いて可視部及び近赤外部の分光反射率を測定した。表6に測定結果を示した。
【0124】
【0125】
表6に示した結果からわかるように、黒色顔料−1を用いて作製した黒色PETフィルムの裏面に白色板を当てた白色板バックによる分光反射率(以下、白色板バックによる分光反射率と呼ぶ)は、700nm位までの領域では5〜6%の反射率しか示していなかったが、800nm〜900nmにかけての領域で反射率は急激に上昇し、更に、それよりも長波長側の近赤外領域(近赤外部)では、ほぼ90%以上の反射率を維持していることが確認された。これらのことから、白色板バックによる黒色PETフィルムの光の反射は、黒色塗膜を構成している黒色顔料粒子表面からの反射と共に、黒色塗膜を透過した光が下地の白色板で反射した光が合算されて反射光となっていると考えられ、このことが、近赤外部での分光反射率が高くなった要因であると考えられる。これらのことは、黒色顔料の光透過性をより高くし、反射性の高い下地を利用する形態とすれば、より効率よく近赤外線を反射できることを示している。なお、上記の表6において、700nm位までは反射率が0%でなく、5%の値になっているのは測定装置との関係である。
【0126】
[実施例3]
(1)実施例1と同様にして、製造例2〜12で得られた黒色顔料−2〜−12をそれぞれに用いて、黒色PETフィルムを作成した。黒色塗膜の乾燥膜厚は、それぞれ凡そ30〜40nmであった。次いで、得られた各黒色PETフィルムを用いて、実施例1と同様にして可視部(可視領域)及び近赤外部(赤外領域)の分光透過率を測定した。表7に結果を示した。表7に示したように、顔料の構造により若干の差異があるものの、黒色顔料−1を用いて作製した黒色PETフィルムと同様の傾向を示した。
【0127】
【0128】
(2)上記(1)で得られた、黒色顔料−2〜−12を用いた黒色PETフィルムを用いて、実施例2と同様にして、可視部(可視領域)及び近赤外部(赤外領域)の分光反射率(%)を測定した。表8に結果を示した。こちらも顔料の構造により若干の差異があるものの、表8に示したように、黒色顔料−1を用いて得た黒色PETフィルムと同様な傾向を示した。
【0129】
【0130】
[実施例4](CFのBMの形成)
(1)黒色顔料分散液の調製
黒色顔料−1を25部と、ベンジルメタクリレート−2−ヒドロキシエチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(モル比:60:20:20、質量平均分子量3万)の40%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMAと略)溶液(以下「アクリル共重合体溶液−1」と称する)25部と、PGMA50部とを充分に予備混合した。次いで、連続式横型媒体分散機「ダイノミルECM−パイロット 1.5リットル」(シンマルエンタープライゼス社製)で分散させ、高濃度に顔料を含有してなる黒色着色組成物を得た。以下、これを「黒色顔料分散液−1」と称する。
【0131】
(2)光硬化性黒色レジストインクの調製
上記(1)で得られた黒色顔料分散液−1を40部と、アクリル化アクリルポリオール光硬化性樹脂50%PGMA溶液(以下「アクリル化アクリルポリオール溶液」と称する)6部と、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(以下、DPEHAと略)2部と、光重合開始剤としてエタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)(「イルガキュアOXE02」、BASF社製)1部と、PGMA51部とを配合し、高速撹拌機で均一なるように十分撹拌した。その後、孔径が3μmのフィルターで濾過をし、黒色顔料−1を含む黒色レジストインクを調製した。以下、これを「光硬化性黒色レジストインク−1」と称する。
【0132】
(3)黒色塗膜の評価
上記で得た光硬化性黒色レジストインク−1を、スピンコーターにてガラス基板上に塗布し、60℃にて予備乾燥し、プリベークを行い、超高圧水銀灯を用いて400mJ/cmの光量で露光を行い、230℃、30分のポストベークを行い、厚さ3μmの黒色塗膜を得た。得られた黒色塗膜の光学的特性(分光透過率)は、表9に示したように、特に750nmまでの可視光領域で高い吸収性を示すことが確認された。
【0133】
【0134】
また、上記で得たガラス基板上の黒色塗膜の体積固有抵抗を、高抵抗率計ハイレスタ−UPを用いて測定した。測定結果は10
14Ω・cm以上であり、この黒色塗膜は高絶縁性を示すものであることを確認した。
【0135】
[実施例5](光硬化性黒色レジストインク−2〜−12の調製と評価)
実施例4と同様の方法で、黒色顔料−1に代えて、それぞれ製造例2〜12で得た黒色顔料−2〜−12を使用して黒色顔料分散液−2〜−12を調製し、次いで、これらの高濃度顔料分散液を用いて光硬化性黒色レジストインク−2〜−12をそれぞれ調製した。得られた各光硬化性黒色レジストインク−2〜−12を用い、実施例4と同様に、スピンコーターにてガラス基板上にインクを塗布し、予備乾燥の後、プリベークを行い、超高圧水銀灯を用いて露光を行い、ポストベークを行い、厚さ3μmの黒色塗膜をそれぞれ得た。得られた黒色塗膜の光学的特性(分光透過率)は、いずれも、黒色顔料−1を含む黒色塗膜と同様に可視光領域で高い吸収性を示した。また、いずれの黒色塗膜も体積固有抵抗が10
14Ω・cm以上であり、高絶縁性を示すことが確認された。
【0136】
[実施例6](BM膜の可視光領域の光吸収の最適化)
実施例5と同様の方法で、黒色顔料−6を使用して調製したBM膜の可視光領域の分光透過率は、表10に示したように、低波長側にわずか透過があることが見られた。そこで、BM膜としての可視光領域における光吸収性を最大にするために、黒色顔料−6を有彩色顔料で補色して調色し、最適化を行った。有色顔料の配合比率については、コンピューター・カラーマッチングシステムとしてカラコムシステム(大日精化工業(株))の調色システムを用いた。
【0137】
【0138】
黒色顔料−6を使用した黒色塗膜の分光透過率曲線から、調色に適する顔料として黄色顔料を使用することとした。まず、黄色顔料としてPY138を使用した以外は実施例4と同様にして、光硬化性黄色レジストインク−1を調製した。次いで、光硬化性黒色レジストインク−6と上記で得た光硬化性黄色レジストインク−1を用いて、それぞれをガラス基板上に膜厚1μmとなるように塗布膜を形成した。その後、カラコムシステムの調色システムを用いて、BM膜としての可視光領域の光吸収の最適化を行なった。これにより、黒色顔料−6とPY138の質量対比として、凡そ100:5〜25の配色比で補正されることが分かった。
【0139】
そこで、一例として光硬化性黒色レジストインク−6と光硬化性黄色レジストインク−1を、顔料分換算で質量対比が87:13となる量で配合し、「光硬化性黒色レジストインク−13」とした。得られた光硬化性黒色レジストインク−13をガラス基板上に塗布し、膜厚3μmのBM膜を形成した。該BM膜は、表11に示したように、可視光領域全般に亘って十分な吸収性を示すことを確認した。また、可視光領域の長波長側も十分吸収して遮光していることから、LED光源のバックライトを使用する方式に好適である。
【0140】
【0141】
[実施例7](アレイ基板上に絶縁性BMの形成)
ガラス基板上に、ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極からなるアレイ電極及び画素電極を起動するスイッチング能動素子を備えたアレイ基板をスピンコーターにセットし、実施例4〜6で得られた光硬化性黒色レジストインク−1〜−13をそれぞれスピンコートし、80℃で10分間プリベークを行った。その後、電気回路を被覆するBMの巾が20μmで、画素のための開口部が縦280μm、横80μmのモザイク状のパターンを有するフォトマスクを用いて、アレイ基板の塗布面にプロキシミティー露光機を使用して超高圧水銀灯で100mJ/cm
2の光量で露光を行なった。次いで、専用現像液及び専用リンスで現像及び洗浄、乾燥を行い、それぞれアレイ基板上に、厚みが凡そ3μmの高絶縁性のBMのパターンを形成させた。これをそれぞれ「絶縁性BM形成アレイ基板−1〜−13」と称する。
【0142】
[実施例8](画素パターンの形成)
(1)使用顔料の微細化処理
画素用の有彩色顔料として、PR254(ジケトピロロピロールレッド顔料)、PR177(アンスラキノン系レッド顔料)、PG36(銅フタロシアニングリーン顔料)、PB15:6(ε型銅フタロシアニンブルー顔料)、PY138(黄色顔料)及びPV23(ジオキサジンバイオレット顔料)を準備した。製造例1(2)に準じて、それぞれの顔料100部と塩化ナトリウム粉末700部とをニーダーに仕込み、微細化処理を行い、塩や可溶分を溶解、濾過し、水洗を行い、各色の有彩色顔料のプレスケーキを得た。各顔料プレスケーキ中の顔料分は35〜45%であった。プレスケーキを乾燥、粉砕して、微細化粉末顔料を得た。製造例1と同様にしてそれぞれの顔料の平均粒子径を測定したところ、凡そ25nmであった。また、それぞれの微細化粉末顔料の体積固有抵抗を測定したところ、いずれも10
14Ω・cm以上であり、これらの有彩色顔料も高絶縁性を示すことを確認した。
【0143】
(2)顔料分散液の調製
実施例4(1)と同様にして、赤色、緑色、青色、黄色、紫色の各顔料分散液を調製した。先の(1)で得た微細化したそれぞれの有彩色顔料19部に、公知の3級アミノ基を有する顔料誘導体1部を配合し、これをアクリル共重合体溶液−1を15.2部とPGMA64.8部との混合溶液に添加した。次いで、これらを充分に予備混合した後、連続式横型媒体分散機「ダイノミルECM−パイロット 1.5リットル」で分散し、各色の顔料分散液を得た。これらの各色の顔料分散液の平均粒子径を粒度測定機器N−4で測定したところ、凡そ40〜45nmであった。
【0144】
次いで、上記で得られた各有彩色の顔料分散液を用いて画素の色に調色した。赤色画素用として、PR254とPR177の顔料分散液を8:2で配合して「赤色顔料分散液−1」を得た。緑色画素用として、PG36とPY138の顔料分散液を5:5で配合して「緑色顔料分散液−1」を得た。また、青色画素用として、PB15:6とPV23の顔料分散液を8:2で配合して「青色顔料分散液−1」を得た。
【0145】
(3)画素用レジストインクの調製
上記で調色した赤色顔料分散液−1を33部、アクリル化アクリルポリオール溶液を9.2部、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)を3部、光重合開始剤として、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)](「イルガキュアOXE01」、BASF社製)を0.3部、PGMAを54.5部配合し、充分混合して赤色画素用の「赤色レジストインク−1」を調製した。
同様に、赤色顔料分散液−1に代えて、緑色顔料分散液−1、青色顔料分散液−1をそれぞれ用いて、緑色画素用の「緑色レジストインク−1」及び青色画素用の「青色レジストインク−1」を調製した。
【0146】
(4)CFのRGB画素の形成
実施例7で得た絶縁性BM形成アレイ基板−1をスピンコーターにセットし、この基板上に上記(3)で得られた赤色レジストインク−1をスピンコートし、80℃で10分間プリベークを行った。次に、このガラス基板上のインクの塗布面に、開口部が縦280μm、横80μmの赤色画素用のモザイク状のパターンのフォトマスクを用いて、プロキシミティー露光機を使用して超高圧水銀灯で100mJ/cm
2の光量で露光を行なった。次いで、現像液及びリンスで現像及び洗浄、乾燥を行い、ガラス基板上赤色のモザイク状のパターンを形成させた。続いて、上記したと同様にして、上記(1)で得られた緑色レジストインク−1を用いて緑色モザイク状のパターンを形成し、さらに、青色レジストインク−1を用いて青色モザイク状のパターンを形成し、BM及びRGB画素の形成されたCFを得た。
【0147】
さらに、上記したと同様にして、実施例7で得た絶縁性BM形成アレイ基板−2〜−13のそれぞれの上に、赤色レジストインク−1、緑色レジストインク−1及び青色レジストインク−1をそれぞれ塗布し、露光、現像、洗浄、乾燥を行って、アレイ基板上に、赤色、緑色、青色のモザイク状のパターンを形成し、BM及びRGB画素の形成されたCFを得た。
【0148】
[実施例9](水系IJインクによるカラーフィルターの調製)
(1)水性顔料樹脂分散液(水性カラーベース)の調製
実施例8(1)で微細化処理をした赤色、緑色、青色、黄色、紫色の各顔料のプレスケーキを、それぞれ顔料純分で20部を採り、そこに、下記に述べる水性の樹脂系顔料分散剤−2を16部加えた。そして合計100部になるようにイオン交換水を追加した。これをディゾルバーで2時間撹拌して、顔料の塊がなくなったことを確認した後、「ダイノミルECM−パイロット 1.5リットル」で分散処理を行って、各色の水性カラー(顔料分散液)を得た。この各色の水性カラーの分散顔料の平均粒子径は凡そ40〜45nmであった。なお、上記で使用した樹脂系顔料分散剤−2は、ベンジルメタクリレート−エチルメタクリレート−2−エチルヘキシルメタクリレート−2−ヒドロキシエチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(質量比;30:20:20:20:10)アンモニウム塩の水性溶液であり、その固形分は50%で、溶液の媒体として、ブチルカルビトール:イソプロパノール:水=35:35:30のものを用いたものである。
【0149】
次いで、上記で得られた各色の顔料分散液を用いて画素の色に調色した。赤色画素用として、PR254とPR177の顔料分散液を8:2で配合して、「赤色顔料分散液−2」を得た。緑色画素用として、PG36とPY138の顔料分散液を5:5で配合して、「緑色顔料分散液−2」を得た。また、青色画素用として、PB15:6とPV23の顔料分散液を8:2で配合して、「青色顔料分散液−2」を得た。
【0150】
(2)画素用IJインクの調製
上記の調色された、赤色顔料分散液−2を25部、下記に示すアクリル共重合体溶液−2を10部、ヘキサメトキシメチルメラミン50%メタノール溶液を3部、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを10部、レベリング剤を1部、消泡剤(50%溶液)を1部及びイオン交換水を50部配合した。これを十分混合し、ポアサイズ3μmのメンブランフィルターで濾過を行い、赤色画素用の「赤色IJインク−1」を調製した。得られた赤色IJインク−1の粘度は5mPa・secで、低粘度で流動性が高いインクであった。なお、上記で使用した「アクリル重合体溶液−2」は、メチルメタクリレート−エチルメタクリレート−2−エチルヘキシルメタクリレート−スチレン−2−ヒドロキシエチルメタクリレート−メタクリル酸(質量比;20:20:20:10:20:10)共重合体のアンモニウム塩水性溶液であり、その固形分は40%で、溶液の媒体として、水:n−ブタノール:イソプロピルアルコール=3:2:1のものを用いたものである。
【0151】
上記と同様にして、赤色顔料分散液−2に代えて、緑色顔料分散液−2を用いて緑色画素用の「緑色IJインク−1」、青色顔料分散液−2をそれぞれに用いて青色画素用の「青色IJインク−1」をそれぞれ調製した。
【0152】
(3)IJ印刷方式に使用する基板の調製
特開2010−66757号公報に準じて、実施例7で得られた「絶縁性BM形成アレイ基板−1」上に、IJインクで画素を形成するための穴(空孔)を形成した。基板の表面に、乾燥後のガラス基板からの全体の厚みが8μmになるように、ポジ型レジスト組成物をコーターで塗布し、50℃以下で送風乾燥した。次いで、基板の裏面からポジ型レジスト膜を紫外線露光し、次いで3%リン酸第3ソーダ水溶液で現像を行い、水洗後、リン酸の1%水溶液で中和し、水洗、乾燥を行なった。高さが凡そ8μmの隔壁に囲まれた開口部が縦280μm、横80μmの穴を有するCF基板を調製した。なお、上記で使用したポジ型レジスト組成物は、o−クロルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂に1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドを反応させて得られたエステル4部、ノボラック樹脂2部、油溶性フェノール樹脂2部、アクリル酸−ポリスチレンマクロモノマー(6:4)共重合体からなる水膨潤性樹脂2部、エチレングリコールモノメチルエーテル90部よりなる、固形分中20%の樹脂組成物である。
【0153】
(4)IJ印刷方式によるCFのRGB画素の形成
ピエゾ方式IJプリンターに、上記(2)で調製された「赤色IJインク−1」、「緑色IJインク−1」、「青色IJインク−1」をそれぞれに充填したR、G、Bの各色カートリッジを搭載させ、被記録媒体として上記(3)で調製した画素形成用穴の作成された「絶縁性BM形成アレイ基板−1」を装填した。そして、該基板の各画素の穴にIJプリンターヘッドより、R、G、Bの各色インクを吐出した。吐出されたインクは低粘度で高流動性を示し、隔壁に囲まれた穴内を均一に充満した。
【0154】
各色がプリントされた後、乾燥し、プリベークを行なった。次いで、基板の表面を紫外線照射し、ポジ型レジストからなる隔壁を光分解させ、4%リン酸三ナトリウム水溶液に浸漬して隔壁を洗浄、除去し、希酸で中和した。その後、水洗し、乾燥し、更に180℃にて焼付けを行い、塗膜を硬化させて、赤色、緑色、青色のモザイク状のパターンを形成し、絶縁性BM形成アレイ基板上にRGB画素の形成されたCFを得た。それぞれの画素の膜厚は凡そ2μmであり、形成されたCF基板上の画素膜はそれぞれ独立して混色はなく、色濃度の不均一さもなく、表面は平滑であり、鮮明なモザイクパターンの3色画素を示した。
【0155】
同様にして、「絶縁性BM形成アレイ基板−2〜−13」のそれぞれの基板にもIJインクで画素を形成するための穴(空孔)を形成した後、画素形成用の穴にIJプリンターヘッドよりR、G、Bの各色インクを吐出し、充填した。各色がプリントされて後、乾燥し、プリベーキングした。次いで、紫外線照射して隔壁を光分解させ、アルカリ性水溶液にて隔壁を除去し、中和、水洗、乾燥、180℃にて焼付け、硬化して、絶縁性BM形成アレイ基板上にRGB画素の形成された基板を、それぞれに得た。
【0156】
なお、上記実施例8及び9で得られた絶縁性BM形成アレイ基板上にRGB画素の形成された基板は、常法に従ってその上に全面オーバーコート層を塗布し、ITO透明電極膜をスパッタリング蒸着で形成し、配向膜を形成し、CF基板を製造した。更に、常法に従って対向基板、スペーサーと組み立て、液晶を装填して液晶ディスプレーを製造した。これらのCFは、合理的、経済的な、また、高精彩化、広開口性に対応できる製造方式で製造されるので、大型液晶ディスプレー用、中型のモニター液晶ディスプレー用、小型のモバイルテレビジョン用としてそれぞれ安価に提供することができる。
【0157】
[実施例10](太陽光発電モジュール用遮熱性バックシート)
(1)黒色顔料−1を15部、アクリルポリオール(水酸基価:100)酢酸ブチル溶液(固形分50%)25部、酢酸ブチル50部を十分予備混合し、分散媒体としてガラスビーズを使用した横型連続媒体分散機にて顔料を分散し、高濃度に顔料を含有してなる黒色顔料高濃度分散液を調製した。得られた黒色顔料高濃度分散液90部に、上記アクリルポリオール酢酸ブチル溶液22部、ベンゾトリアゾール系モノマー及びHALS系モノマーを共重合させたアクリルポリオール(水酸基価:100)酢酸ブチル溶液50部を加えて黒インキ化した。そしてさらに、硬化剤としてイソシアヌレート型ヘキサメチレンジイソシアネート3量体(固形分:100%、イソシアネート%:21.7%)24部を加え、充分混合し、酢酸ブチルを凡そ20部を加えて粘度を調整し、黒色コーティング液を調製した。
【0158】
(2)酸化チタン白色顔料80部、上記(1)で使用したアクリルポリオール酢酸ブチル溶液40部、酢酸ブチル20部を予備混合し、次いで横型連続媒体分散機にて分散し、白色顔料高濃度分散液を調製した。得られた白色顔料高濃度分散液140部にアクリルポリオール酢酸ブチル溶液44部を加えて白インキ化した。そしてさらに、硬化剤としてヘキサメチレンジイソシアネート3量体18部を加え、充分混合し、酢酸ブチルを凡そ40部を加えて粘度を調整し、白色コーティング液を調製した。
【0159】
(3)PET基材シート(フィルム厚:100μm)の表面に、上記(1)で調製した黒色コーティング液を塗布し、乾燥して、黒色塗膜(乾燥膜厚:5μm)を形成した。更に、裏面に、上記(2)で得た白色コーティング液を塗布し、乾燥して、白色塗膜(乾燥膜厚:5μm)を形成し、表に黒色塗膜、裏面に白色塗膜を塗布した複層PETシートを得た。以下、これを「黒色白色複層PETシート」と呼ぶ。
【0160】
(4)上記で得た黒色白色複層PETシートに、更に水蒸気バリア性およびガスバリア性を付与するために、裏面の白色塗膜面に接着剤を用いてシリカ・アルミナ蒸着ポリエステルフィルム(フィルム厚:12μm)をラミネートした。この際に使用した接着剤は、上記(1)で使用したアクリルポリオール酢酸ブチル溶液70部、ヘキサメチレンジイソシアネート3量体を15部、及び酢酸ブチル15部からなるものを用いた(以下、アクリルポリオール・ヘキサメチレンジイソシアネート系接着剤と呼ぶ)。そして、さらにその上にPET基材シート(フィルム厚:100μm)を同じ接着材を用いてラミネートして、太陽光発電モジュール用バックシート(以下、PETバックシートと呼ぶ)を作成した。
【0161】
上記で得られた黒色塗膜と白色塗膜の複層コーティングされたPETバックシートの外観は、黒色顔料−1の性質から、黒色で美観に優れたものとなった。さらに、該PETバックシートは、黒色顔料−1の光学的性質から太陽光の赤外領域の光は表面の黒色塗膜層を透過し、下地の白色層で反射されて、再度黒色層を透過して外部に放射されるので、太陽光を吸収することが少なく、優れた遮熱性を示すものであった。このような該PETバックシートは、昇温を避けたい太陽光発電モジュール用バックシートとして好適である。
【0162】
さらに、常法に従い、太陽光発電モジュールを作製した。太陽光発電セルの受光面側の表面には表面封止シートを貼り、裏面の非受光面側の保護シートとして上記の遮光性バックシートを、黒色面を受光側に向けて貼り、受光面に透明ガラス基板を装備し、これらをエチレン酢酸ビニル系樹脂からなる封止材で挟んで封じ、太陽光発電モジュールとした。得られた太陽光発電モジュールは発電効率に優れたものとなる。
【0163】
[実施例11](太陽光発電モジュール用遮熱性バックシート)
(1)黒色顔料−1を40部と、ポリエステル樹脂粉末を60部とを、ヘンシェルミキサーで混合し、粉末状着色剤を得た。次いで、得られた粉末状着色剤12.5部を、PET樹脂ペレット87.5部に配合した後、ヘンシェルミキサーで混合し、次いで2軸押出機で混練し、ペレタイザーで黒色樹脂ペレットとした。次いで、T−ダイ押出機により膜厚50μmの黒色PETフィルムを作成した。
【0164】
(2)酸化チタン顔料で混練着色した白色PETシート(膜厚:180μm)を準備した。その表面に実施例10(4)で使用したアクリルポリオール・ヘキサメチレンジイソシアネート系接着剤を塗布した後、その上から、上記(1)で得られた黒色PETフィルムを貼り付け、黒色フィルムを積層した白色PETシートを作成した。
【0165】
(3)黒色フィルムを積層した白色PETシートに、防湿性およびガスバリア性を付与するために、シートの裏面に上記(2)で使用したアクリルポリオール・ヘキサメチレンジイソシアネート系接着剤を用いて、シリカ・アルミナ蒸着ポリエステルフィルムをラミネートした。次いで、その上にPET基材シート(フィルム厚:100μm)を同じ接着材を用いてラミネートして、太陽光発電モジュール用バックシート(以下、黒色白色複層PETバックシートと呼ぶ)を作成した。
【0166】
黒色フィルムと白色PETシートを積層した、上記黒色白色複層PETバックシートの外観は、黒色で美観に優れたものとなった。さらに、黒色顔料−1の光学的性質から太陽光の赤外領域の光は表面の黒色フィルム層を透過し、下の白色PETシートで反射されて、再度黒色フィルムを透過して外部に放出されるため、太陽光を吸収することが少なく、優れた遮熱性を示すものとなった。従って、上記黒色白色複層PETバックシートは、昇温を避けたい太陽光発電モジュール用バックシートとして好適に使用できる。
【0167】
さらに、常法に従い、太陽光発電モジュールを作製した。太陽光発電セルを受光面側の表面には表面封止シートを貼り、裏面の非受光面側の保護シートとして上記の遮光性バックシートを、黒色面を受光側に向けて貼り、さらに受光面に透明ガラス基板を装備したものを、エチレン酢酸ビニル系樹脂からなる封止材で挟んで封じ、太陽光発電モジュールとした。得られた太陽光発電モジュールは発電効率に優れたものとなる。