特許第5870108号(P5870108)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5870108
(24)【登録日】2016年1月15日
(45)【発行日】2016年2月24日
(54)【発明の名称】EMCフィルタ回路
(51)【国際特許分類】
   H03H 7/01 20060101AFI20160210BHJP
   H03H 7/09 20060101ALI20160210BHJP
   H02M 1/44 20070101ALI20160210BHJP
【FI】
   H03H7/01 Z
   H03H7/09
   H02M1/44
【請求項の数】10
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-537008(P2013-537008)
(86)(22)【出願日】2010年11月5日
(65)【公表番号】特表2014-500650(P2014-500650A)
(43)【公表日】2014年1月9日
(86)【国際出願番号】EP2010066855
(87)【国際公開番号】WO2012059132
(87)【国際公開日】20120510
【審査請求日】2013年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】504103641
【氏名又は名称】シャフナー・エーエムファウ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100157440
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 良太
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】ベック・ファビアン
【審査官】 畑中 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭64−037128(JP,U)
【文献】 特開平02−207470(JP,A)
【文献】 実開昭52−079043(JP,U)
【文献】 特開2008−078844(JP,A)
【文献】 特開2006−311365(JP,A)
【文献】 特開2000−331878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 7/01
H03H 7/09
H02M 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一側部を有する固定式の母線である電力を搬送するための導電体と、
この第一側部に対向する平坦な第一側面を有するとともに、前記導電体を少なくとも一部で包囲する導電性のハウジングと、
・前記導電体の近くにあり且つこの導電体のインピーダンスを増大させる強磁性体から成る少なくとも1つの磁気要素と、
・前記導電体と前記導電性のハウジングとの間に電気接続されたコンデンサとを有するEMCフィルタ回路であって、
・前記コンデンサが、対向している第1面と第2面とを有し、これらの各々の面が電気端子を構成し、かつ、これらの面が平坦かつ平行であり、
・前記コンデンサが、導電性のハウジングと導電体との間の所定の位置で挿入されて密接して保持される結果、前記ハウジングの平坦な第一側面と前記コンデンサーの第1面の電気端子の間と、および、前記導電体の第一側部と前記コンデンサの第2面の電気端子との間に、電気接触を形成し、
前記導電性のハウジングの両端に配置された絶縁材に保持される前記母線が、直線状に延在することを特徴とするEMCフィルタ回路。
【請求項2】
前記コンデンサが、前記第1面と第2面の間に角胴形を成す本体を有する請求項1に記載のEMCフィルタ回路。
【請求項3】
前記コンデンサーの第1面の電気端子は、前記導電性のハウジングの平坦な第一側面に直接に物理的接触し、第2面の電気端子は、前記導電体の第一側部に直接に物理的接触する請求項1に記載のEMCフィルタ回路。
【請求項4】
導電性のガスケットが、前記電気端子と前記導電体との間、及び前記電気端子と前記導電性のハウジングとの間にそれぞれ挿入されている請求項1に記載のEMCフィルタ回路。
【請求項5】
前記コンデンサは、前記導電性のハウジングと前記導電体とに圧着式に接続されている請求項1に記載のEMCフィルタ回路。
【請求項6】
第二のコンデンサを有し、
この第二のコンデンサが、対向している第1面と第2面とを有し、これらの面の各々の面が電気端子を構成し、かつ、これらの面が平坦かつ平行であり、
前記導電体が、前記第一側部に対向する第二側部を有するとともに、
前記導電性のハウジングが、前記導電体の第二側部に対向する平坦な第二側面を有し、
前記第二のコンデンサが、導電性のハウジングと導電体との間に挿入される結果、前記ハウジングの平坦な第二側面と前記第二のコンデンサーの第1面の電気端子の間、および、前記導電体の第二側部と前記第二のコンデンサの第2面の電気端子との間に、電気接触を形成する請求項1に記載のEMCフィルタ回路。
【請求項7】
前記磁気要素は、前記導電体の周りに閉磁路を形成する請求項1に記載のEMCフィルタ回路。
【請求項8】
前記フィルタ回路は、前記導電体に平行な第二の導電体と第二のコンデンサを有し、
第一側部と第二側部を有する固定式の母線である前記第二の導電体は、前記導電性のハウジングの両端面に配置された絶縁材に保持されて直線状に延在し、
前記第二のコンデンサが、対向している第1面と第2面とを有し、これらの面の各々の面が電気端子を構成し、かつ、これらの面が平坦かつ平行であり、
前記導電体が、前記第一側部に対向する第二側部を有し、
前記導電性のハウジングが、前記第二の導電体の第二側部に対向する平坦な第二側面を有し、
前記第二のコンデンサが、前記導電体と前記第二の導電体との間に挿入される結果、前記第二の導電体の第一側部と前記第二のコンデンサーの第1面の電気端子の間、および、前記導電体の第二側部と前記第二のコンデンサの第2面の電気端子との間に、電気接触を形成する請求項1に記載のEMCフィルタ回路。
【請求項9】
第三のコンデンサを有し、
この第三のコンデンサが、対向している第1面と第2面とを有し、これらの面の各々の面が電気端子を構成し、かつ、これらの面が平坦かつ平行であり、
前記第三のコンデンサが、導電性のハウジングと前記第二の導電体との間に挿入される結果、前記ハウジングの平坦な第二側面と前記第三のコンデンサーの第1面の電気端子の間、および、前記第二の導電体の第二側部と前記第二のコンデンサの第2面の電気端子との間に、電気接触を形成する請求項8に記載のEMCフィルタ回路。
【請求項10】
少なくとも1つの磁気要素は、複数の前記導電体の周りに閉磁路を形成する請求項8に記載のEMCフィルタ回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明の実施の形態は、EMCフィルタ、特に独立請求項に記載の高電流用のEMCフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
フィードスルーフィルタ又はフィードスルーキャパシタのようなフィードスルー部品は、電力線路に設けられている電気部品である。当該電気部品は、ハウジング内の導電体の周りに配置された電気回路内に存在する。この導電体が、外部要素に接続するための2つの外部接点を形成するハウジングに延在する。この電気回路の当該電気部品が、コンデンサ、強磁性体又は抵抗から構成される。これらの電気部品は、多くの実施の形態では当該導電体に同軸である。
【0003】
フィードスルー部品は一般に、電力又はデータ線の伝達特性を変更するために使用される。例えばπ形フィルタを有する当該フィルタは主に、高感度機器又は雑音を発生する機器に対する電力線路の広帯域の雑音抑制用に使用される。当該フィルタ回路は主に、1つ以上の同一の容量性の部材と1つの強磁性の部材とから構成される。従来は、当該フィルタ回路のこれらの要素の同軸の配置が、高周波の減衰値を増大させる。しかしながら、当該減衰に起因して、むしろ、フィルタの挿入損失のほうが高くなりうる。このようなフィードスルー部品は、独国特許第421871号明細書、独国特許第10240084号又は独国特許第4025159号明細書から公知である。
【0004】
さらに、ほとんどのフィードスルー部品は、フィルタ回路の異なる要素と互いに接触するように導電性のガスケットと一緒に半田付けされるか又は圧着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許第421871号明細書
【特許文献2】独国特許第10240084号明細書
【特許文献3】独国特許第4025159号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の概要
本発明の課題は、より信頼でき且つより組み立てしやすいEMCフィルタを提供することにある。
【0007】
本発明の別の課題は、高い周波数帯域内で使用可能であるEMCフィルタを生産することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これらの課題は、本発明にしたがって請求項1に記載される事項によって解決される。
従属請求項は、好適な実施の形態を規定する。
【0009】
特に、これらの課題は、
・コンデンサが、対向している第1面と第2面とを有し、これらの面の各々の面が、電気端子を構成し、これらの面が、平坦であり且つ平行であり、
・前記コンデンサが、導電性のハウジングと導電体との間の所定の位置で挿入されて密接して保持される結果、前記ハウジングと前記導電体と前記コンデンサの対応する電気端子との間に電気接触を形成することを特徴とする、冒頭の独立請求項に記載の特徴を有するEMCフィルタ回路によって解決される。
【0010】
1つの利点は、平坦な複数の接続要素が、複数のコンデンサの両側に配置されているという事実から得られる。当該利益は、簡単な生産工程を圧着式に可能にする。本発明は、2線式、3線式又は4線式のEMCフィルタに対して同様に使用され得る。
【0011】
図面の簡単な説明
本発明は、例によって与えられ且つ図面によって示された一実施の形態の説明を用いてより良好に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1a】本発明のEMCフィルタの第1の実施の形態の概略図である。
図1b】本発明のEMCフィルタの側面図である。
図1c】ハウジングとコンデンサとの間の導電性のガスケットを例示する図1aの細部Iを示す。
図2】本発明のEMCフィルタの第2の実施の形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の可能な実施の形態の詳細な説明
図1aは、本発明のEMCフィルタ回路1の第1の実施の形態の概略図であり、図1bは、本発明のEMCフィルタの側面図である。このEMCフィルタ回路1は、図示されない接続要素に接地されている導電性ハウジング2と、雑音成分が重畳されている電力を搬送するための固定式母線3とを有する。当該EMCフィルタ回路は主に、高感度機器又は雑音を発生する機器に対する電力線路の広帯域の雑音抑制用に使用される。図1aに示したように、母線3が、ハウジング2の中央に配置されていて且つ両側に延在する。この母線3を保持するため、及び、この母線3をハウジング2から絶縁するため、絶縁材22が、このハウジング2の両端部に配置されている。この絶縁材は、例えばプラスチックでもよい。
【0014】
図1bに示したように、開口部31が、図示されない端子又はその他の手段を介した外部機器に対する接続用の両端部に配置されている。ハウジング2が、カバー(図示せず)によって下部側で閉じられていて、このハウジングを、開口部を有するアイレットのような任意の外部機器に対して固定するための少なくとも1つの側方手段21を各側に有する。好ましくは、ハウジング2は、導電性の金属、例えばアルミニウムである。
【0015】
当該EMCフィルタ回路は、2つの主インダクタ4及びコンデンサ5を有する。母線3の周りに配置された当該インダクタ4は、鉄粉、センダクト等の、ギャップを有するフェライトのような強磁性材料から成る。一実施の形態では、これらのインダクタ4が、四角形の中心開口部を有する角胴形を成す。この中心開口部が、母線3を収容する。そしてこれらのインダクタ4が、当該中心の母線3のインピーダンスを増大させる。これらのインダクタンス4の数が、例示的に示されていて、本発明の当該EMCフィルタ回路1の用途に応じて選択される。
【0016】
さらに、複数のコンデンサ5がそれぞれ、対向している第1面51と第2面52とを有する。これらの面の各々が、電気端子を構成する。これらのコンデンサ5が、導電性のハウジング2と母線3との間の所定の位置で圧着式に挿入されて密接して保持される。これによって、第1面51が、この母線3に対して並置されていて、この第1面51上の対応する電気端子が、導電体に電気接触している。第2面52が、導電性のハウジング2に対して並置されていて、この第2面52上の電気端子が、この導電性のハウジング2に電気接触している。したがって、これらの面51,52が、母線3と接地された導電性のハウジング2とに直接電気接触する。当該接触を増大するため、これらの面51,52が、導電層53を有してもよい。図1cに示したように、この導電層53のほかに、電気ガスケット又はメッシュ6が、各面の電気端子と対応する表面との間に設けられている。一方で、両手段のうちの一方の導電層53又はメッシュ6を有することが可能である。コンデンサ5の数は、4つであり、事例だけによって示されていて、本発明のEMCフィルタ回路1の用途に応じて変更される。これらのコンデンサ5の容量は、好適な実施の形態では等しい。対応する電気端子に対する良好な接触を達成するため、当該面51,52が、有益な平面であり且つ平行であり、これらのコンデンサ5が、丸胴形又は角胴形を成す。この丸胴形又は角胴形が、ハウジング2内へのコンデンサ5の簡単な組み立てを保証する。こうして形成されたEMCフィルタは、二重π形回路を有するフィルタである。なお、別の実施の形態では、当該EMCフィルタは、構成されるべきT形回路又はL形回路でもよい。
【0017】
1つの利点は、本発明によるEMCフィルタの構成が、従来の技術のフィルタの公知の構成より著しく簡単であること、並びに、この設計及び特にコンデンサの両側の平坦な接続要素が、容易な製造工程を可能にすることである。インダクタンス4が、母線3に嵌合され得、絶縁材22と一緒にハウジング2内に組み立てられ得る。最終的に、コンデンサ5が、手動式に設置され得る。次いで、ハウジングが、閉じられてアイレット21又は半田付けピンによって機器上に固定される。別の利点は、電気端子が本発明のEMCフィルタ内で半田付けされる必要がないという事実から得られる。母線3とハウジング2との間のこれらのコンデンサの短い接続に起因して、当該短い接続は、高い周波数帯域で使用される。
【0018】
図2は、ハウジング3内の平行な2つの母線2を有する本発明のEMCフィルタ1の第2の実施の形態の概略図である。この場合、図1について説明したのと同じ方法で、コンデンサ5が、母線3とハウジング2との間に挿入されている。さらに、1つ以上のコンデンサ5が、平行な複数の導電体3間の所定の位置に挿入され且つ密接して保持され得る。同様に、これらのコンデンサ5が、対向している第1面51と第2面52とを有する。これらの面の各々が、電気端子を構成する。これらの面51,52は、平坦であり且つ平行である。図1について説明したように、当該電気端子と導電体3との間に導電性のガスケット又は導電性のフィルムを使用することが考えられ得る。この実施の形態では、複数のインダクタ4(左横のインダクタ)が、導電体3の周りに別々に形成され得るか又は共通のコアとして形成され得る。全ての導電体3が、(中央に示されたように)当該インダクタを貫通している。さらに、この原理が3つ以上の母線3を有するEMCフィルタに応用され得ることは当業者にとって自明である。
【符号の説明】
【0019】
1 EMCフィルタ回路
2 導電性ハウジング
21 固定手段
22 絶縁材
3 母線
31 開口部
4 インダクタ
5 コンデンサ
51 コンデンサの第1面
52 コンデンサの第2面
53 導電層
6 ガスケット、メッシュ
図1a
図1b
図1c
図2