(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の油圧制御装置は、前述するように複数のアクチュエータを備えた油圧機械、例えば建設機械で用いられており、操作、温度及び駆動状態等の作動条件は様々である。例えば、建設機械が低温環境下で使用される場合と高温環境下で使用される場合とでは、アクチュエータに供給される圧液の粘度が異なっており、操作レバーの操作量が同じであってもアクチュエータに供給される圧液の流量が異なる。そのため、低温環境に対応させるべく操作量に対して流れる流量が多くなるように切換弁を設定すると、高温環境下ではアクチュエータの動作に多くの圧液がアクチュエータに流れて衝撃を生じることがある。
【0007】
また、操作レバーからの操作信号の断線や接続不良、前記電磁比例制御弁のスティックや電線の断線や接続不良、コントローラの作動不良等が発生すると、前記操作レバーを操作しても切換弁を操作することが不可能となる。
【0008】
また、複数のアクチュエータが建設機械に設けられ、切換弁に圧力補償機構がない場合、複数の操作レバーが操作されたとき、負荷の小さいアクチュエータに流れる流量が過大となるので、負荷の小さい方の切換弁の上流に、操作の種類に応じて選択的に働く絞りを設ける必要がある。なぜなら、複数の操作レバーを操作する場合、負荷の大きさに応じて小さい負荷のアクチュエータの操作レバーの操作量を小さく調整することが求められるが、不慣れなオペレータにとってはこのような操作が困難であるという理由からである。
【0009】
そこで本発明は、作動状態に応じてアクチュエータに流れる圧液の流量を調整することができる液圧制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の液圧制御装置は、エンジン又は電動機によって駆動する液圧ポンプから吐出される圧液をアクチュエータに供給して前記アクチュエータを駆動する液圧制御装置であって、操作レバーが設けられ、前記操作レバーを操作するとその操作量に応じた圧力の出力圧を出力する操作弁と、所定の作動状態になると背圧を出力する背圧出力機構と、前記操作弁から出力される前記出力圧が第1パイロット圧として入力され且つ前記背圧が第2パイロット圧として入力され、前記第1パイロット圧と第2パイロット圧との差圧に応じた流量の圧液を前記アクチュエータに供給する流量制御弁とを備えるものである。
【0011】
本発明に従えば、所定の作動状態になると第2パイロット圧として背圧が流量制御弁に入力される。これにより、操作レバーの操作量を変えることなく第1パイロット圧と第2パイロット圧との差圧を作動状態に応じて変更することができる。つまり、操作レバーの操作量を変えることなく、作動状態に応じてアクチュエータに流れる液圧の流量を調整することができる。
【0012】
上記発明において、前記作動状態には、前記操作レバーの操作状態、前記エンジンの回転数、前記圧液の温度及び前記アクチュエータに作用する負荷のうち少なくとも1つの状態が含まれ、前記背圧出力機構は、前記作動状態に応じた圧力の背圧を出力するようになっていることが好ましい。
【0013】
上記構成に従えば、作動状態に応じた効率的な運転を実現することができる。
【0014】
上記発明において、前記流量制御弁及び前記操作弁は、複数の前記アクチュエータに対して前記アクチュエータ毎に設けられており、前記操作レバーの操作状態には、複数の前記操作弁に夫々設けられている前記操作レバーのうち少なくとも2つ以上の前記操作レバーが操作されることが含まれることが好ましい。
【0015】
上記構成に従えば、複数の操作レバーが操作されたときにいずれかの流量制御弁によってそれに対応するアクチュエータに流れる圧液の流量を調整することができる。例えば、負荷が小さいアクチュエータに流れる圧液の流量を減少させるようにすることで負荷の大きいアクチュエータにも圧液が流れるようになり、負荷の大きいアクチュエータの駆動速度の極端な低下を防ぐことができる。
【0016】
上記発明において、前記背圧出力機構は、制御装置と電磁制御弁とを有し、前記制御装置は、前記作動状態に応じた指令信号を前記電磁制御弁に出力し、前記電磁制御弁は、入力される前記指令信号に応じた圧力の前記背圧を出力するようになっていることが好ましい。
【0017】
上記構成に従えば、電磁制御弁を採用しているので、きめ細かく操作性をチューニングすることができる。更に、操作性のチューニング作業を制御装置の設定のみで行うことができるため、液圧制御装置のチューニング作業が容易になり、液圧制御装置の開発時間を短縮することができる。
【0018】
上記発明において、前記電磁制御弁は、ノーマルクローズド形の弁であることが好ましい。
【0019】
上記構成に従えば、電磁制御弁に電流が流れない不具合が生じても電磁制御弁が開口したままになることを防ぐことができ、液圧制御装置のフェイルセーフを実現することができる。
【0020】
上記発明において、入力される2つの入力圧のうち高圧の方を選択して前記流量制御弁に前記第2パイロット圧として出力する高圧選択弁を備え、前記操作弁は、前記操作レバーの操作方向に応じてその操作量に応じた圧力の第1出力圧及び第2出力圧を前記出力圧として夫々出力し、前記流量制御弁には、前記第1パイロット圧として前記第1出力圧が入力され、前記高圧選択弁には、前記第2出力圧と前記背圧とが前記入力圧として入力されるようになっていることが好ましい。
【0021】
上記構成に従えば、操作レバーを操作して第2出力圧を出力させた場合、背圧に代わって第2出力圧が第2パイロット圧として流量制御弁に入力される。これにより、第2出力圧に応じた流量の液圧を流量制御弁からアクチュエータに供給することができる。
【0022】
上記発明において、前記背圧出力機構は、前記第1出力圧を圧力源とし、前記第1出力圧を減圧して前記背圧を生成するようになっていることが好ましい。
【0023】
上記構成に従えば、操作弁の操作レバーが操作されていないときに背圧出力機構から背圧が出力されることを防ぐことができる。これにより、操作弁の操作レバーが操作されていない際に背圧出力機構が誤作動してもスプールが動くことがない。それ故、液圧制御装置のフェイルセーフを実現することができる。更に、電磁比例弁の供給圧力よりも電磁比例弁からの最高出力圧を低く設定することによって、電磁制御弁が最大開度で作動し続けても、流量制御弁をある一定の位置まで移動させてアクチュエータに圧液を供給することができる。これにより、電磁制御弁の故障によって液圧制御装置が作動しない事態を防ぐことができる。
【0024】
上記発明において、前記電磁制御弁から出力される前記背圧を前記第1パイロット圧及び前記第2パイロット圧のうちいずれか一方のパイロット圧として前記流量制御弁に入力する背圧切換弁、を備え、前記操作弁は、前記操作レバーの操作方向に応じて第1出力圧及び第2出力圧のいずれかを前記出力圧として出力し、前記第1出力圧は、前記第1パイロット圧として前記流量制御弁に入力され、前記第2出力圧は、前記第2パイロット圧として前記流量制御弁に入力され、前記背圧切換弁は、前記操作弁から前記第1出力圧が出力されると前記背圧を前記第2パイロット圧として前記流量制御弁に入力し、前記操作弁から前記第2出力圧が出力されると前記背圧を前記第1パイロット圧として切換え弁に入力するようになっていることが好ましい。
【0025】
上記構成に従えば、電磁制御弁から出力される背圧を背圧切換弁によって前記第1パイロット圧及び前記第2パイロット圧として流量制御弁に入力することができる。これにより、電磁制御弁を第1パイロット圧側及び第2パイロット圧側に夫々個別に設ける必要がなくなり、電磁制御弁の数を低減することができ、液圧制御装置の製造コストを低減することができる
上記発明において、前記第1出力圧及び第2出力圧のうち高い方の出力圧を減圧して前記背圧を生成するようになっていることが好ましい。
【0026】
上記構成に従えば、操作弁の操作レバーが操作されていないときに電磁制御弁から背圧が出力されることを防ぐことができる。これにより、操作弁の操作レバーが操作されていない際に電磁制御弁が誤作動してもスプールが動くことがない。それ故、液圧制御装置のフェイルセーフを実現することができる。更に、電磁制御弁が最大開度で作動し続けても、流量制御弁をある一定の位置まで移動させてアクチュエータに圧液を供給することができる。これにより、電磁制御弁の故障によって液圧制御装置が作動しない事態を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、作動条件に応じてアクチュエータに流れる液圧の流量を調整することができる。
【0028】
本発明の上記目的、他の目的、特徴、及び利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下では、前述する図面を参照しながら、本発明の第1乃至第4実施形態に係る液圧制御装置1,1A〜1C及びそれを備える油圧ショベル2の構成を説明する。なお、実施形態における方向の概念は、説明の便宜上使用するものであって、液圧制御御置1,1A〜1C及び油圧ショベル2の構造に関して、それらの構成の配置及び向き等をその方向に限定することを示唆するものではない。また、以下に説明する液圧制御装置1,1A〜1C及び油圧ショベル2の構造は、本発明の一実施形態に過ぎず、本発明は実施の形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0031】
<第1実施形態>
[油圧ショベル]
図1に示すように、建設機械である油圧ショベル2は、先端部に取り付けられたアタッチメント、例えばバケット3によって掘削や運搬等の様々な作業を行うことができるようになっている。油圧ショベル2は、クローラー等の走行装置4を有しており、走行装置4の上に旋回体5が旋回可能に載せられている。旋回体5は、後述する旋回用モータ10によって旋回駆動可能に構成されており、運転者が搭乗するための運転席5aが形成されている。
【0032】
また、旋回体5には、そこから上斜め前方に延在するブーム6が上下方向に揺動可能に設けられている。ブーム6と旋回体5とには、ブーム用シリンダ7が架設されており、ブーム用シリンダ7を伸縮させることで旋回体5に対してブーム6が揺動するようになっている。このように揺動するブーム6の先端部には、そこから下斜め前方に延在するアーム8が前後方向に揺動可能に設けられている。ブーム6とアーム8とには、アーム用シリンダ9が架設されており、アーム用シリンダ9を伸縮させることでブーム6に対してアーム8が揺動するようになっている。更に、アーム8の先端部には、前後方向に揺動可能にバケット3が設けられている。なお、詳しくは説明しないが、バケット3にもバケット用シリンダが設けられており、バケット用シリンダを伸縮させることでバケット3が前後方向に揺動するようになっている。
【0033】
このように構成される油圧ショベル2は、ブーム用シリンダ7、アーム用シリンダ9及び旋回用モータ10等のアクチュエータに圧液を供給してそれらを駆動する液圧制御装置1を備えており、後述するような作用効果を奏する。以下では、液圧制御装置1の構成について、
図2及び
図3を参照しながら説明する。
【0034】
[液圧制御装置]
液圧制御装置1は、いわゆるネガティブコントロール式の液圧制御回路で構成されており、液圧ポンプ11を備えている。液圧ポンプ11は、エンジンEに連結されており、このエンジンEが回転駆動することによって油圧を吐出するように構成されている。また、液圧ポンプ11は、斜板11aを有する可変容量型液圧ポンプが採用されており、斜板11aの角度に応じた流量で油圧を吐出するようになっている。このように構成されている液圧ポンプ11の吐出ポート11bは、主通路12に繋がっている。
【0035】
主通路12には、後述する3つのバルブユニット21,22,23が介在しており、バルブユニット21,22,23の更に下流側には、絞り24を介してタンク25が接続されている。また、主通路12には、絞り24を迂回するように絞り24の前後にリリーフ通路13が繋がれており、リリーフ通路13には、リリーフ弁14が設けられている。また、主通路12には、絞り24の上流側であって3つのバルブユニット21,22,23の下流側にネガコン通路(ネガティブコントロール通路)15が接続されている。ネガコン通路15は、液圧ポンプ11に設けられるサーボピストン機構16に繋がっており、このネガコン通路15を通じて絞り24により上昇した圧力がネガコン圧Pnとしてサーボピストン機構16に導かれるようになっている。
【0036】
サーボピストン機構16は、サーボピストン16aを有しており、サーボピストン16aは、ネガコン通路15を通じて導かれるネガコン圧Pnに応じた位置に移動するようになっている。サーボピストン16aは、液圧ポンプ11の斜板11aと連結されており、斜板11aはサーボピストン16aの位置に応じた角度に傾転するようになっている。具体的には、ネガコン圧Pnが上昇すると、斜板11aがその角度を小さくするように傾転して液圧ポンプ11の吐出流量を減少させ、ネガコン圧Pnが下降すると斜板11aがその角度を大きくするように傾転して液圧ポンプ11の吐出流量を増加させるようになっている。
【0037】
また、主通路12には供給通路17が繋がっており、この供給通路17を介して吐出された油圧が各アクチュエータ7,9,10に供給される。供給通路17は、液圧ポンプ11の下流側であって3つのバルブユニット21,22,23の上流側において主通路12から分岐している。供給通路17もまたその下流側で3つに分岐しており、分岐する各々の通路部17a,17b,17cには、3つのバルブユニット21,22,23が夫々接続されている。また、3つのバルブユニット21,22,23は、タンク通路18に繋がっており、このタンク通路18を介してタンク25に繋がっている。
【0038】
これら3つのバルブユニット21,22,23のうち最も上流側にあるブーム用バルブユニット21は、ブーム用シリンダ7に流す圧液の流れる方向及び流量を制御し、最も下流側に位置するアーム用バルブユニット23は、アーム用シリンダ9に流す圧液の流れる方向及び流量を制御するようになっている。更に、2つのバルブユニット21,23の間に位置する旋回用バルブユニット22は、旋回体5を旋回させる旋回用モータ10に流す圧液の流れる方向及び流量を制御するようになっている。これら3つのバルブユニット21,22,23は、駆動するアクチュエータが異なる点を除いて同様の構成及び機能を有している。以下では、ブーム用バルブユニット21の構成について詳しく説明し、旋回用バルブユニット22及びアーム用バルブユニット23の構成については、異なる点について主に説明し、同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。また、旋回用バルブユニット22及びアーム用バルブユニット23の機能については、異なる点について主に説明し、ブーム用バルブユニット21と同一の機能については説明を省略する。
【0039】
[ブーム用バルブユニット]
ブーム用バルブユニット21は、圧液の流れる方向及びその流量を制御する切換弁26を有している。流量制御弁である切換弁26には、供給通路17、タンク通路18、第1給排通路31及び第2給排通路32が接続されている。第1給排通路31は、ブーム用シリンダ7のヘッド側7aに繋がっており、第2給排通路32は、ブーム用シリンダ7のロッド側7bに繋がっている。また、切換弁26は、スプール27を有しており、このスプール27の位置に応じて圧液の流れる方向及び流量が変わるようになっている。
【0040】
更に詳細に説明すると、スプール27は、中立位置Mから第1オフセット位置S1及び第2オフセット位置S2の方へと移動可能に構成されており、中立位置Mでは、主通路12が連通し、供給通路17、タンク通路18、第1給排通路31及び第2給排通路32が夫々遮断されている。これにより、ブーム用シリンダ7への油圧の給排が止まり、ブーム6の動きが止まるようになっている。他方、主通路12が連通することでネガコン圧Pnが高くなり、液圧ポンプ11の吐出流量が減少する。
【0041】
中立位置Mから第1オフセット位置S1の方へとスプール27を移動させると、供給通路17が第1給排通路31に繋がり、第2給排通路32がタンク通路18に繋がる。これにより、ブーム用シリンダ7のヘッド側7aに圧液が供給されてブーム用シリンダ7が伸長し、ブーム6が上方に向かって揺動する。他方、主通路12はスプール27によって絞られ、やがて遮断されるようになっている。これにより、ネガコン圧Pnが低下し、液圧ポンプ11の吐出流量が増加する。
【0042】
また、中立位置Mから第2オフセット位置S2の方へとスプール27を移動させると、供給通路17が第2給排通路32に繋がり、第1給排通路31がタンク通路18に繋がる。これにより、ブーム用シリンダ7のロッド側7bに圧液が供給されてブーム用シリンダ7が収縮し、ブーム6が下方に向かって揺動する。他方、主通路12は、スプール27によって絞られ、やがて遮断されるようになっている。これにより、ネガコン圧Pnが低下し、液圧ポンプ11の吐出流量が増加する。
【0043】
このように接続先を切換えるスプール27には、互いに抗する2つのパイロット圧P1,P2が与えられており、これら2つのパイロット圧P1、P2の差圧dpに応じた位置にスプール27が移動するようになっている。即ち、切換弁26は、2つのパイロット圧P1、P2の差圧dpに応じた方向及び流量の圧液をブーム用シリンダ7に供給するようになっている。これら2つのパイロット圧P1,P2は、第1パイロット通路34及び第2パイロット通路35を通じて導かれるようになっており、第1パイロット通路34及び第2パイロット通路35は、操作弁36に繋がっている。
【0044】
操作弁36は、操作レバー37が設けられており、操作レバー37の操作量に応じた液圧を操作レバー37の操作方向に応じた方向に出力するようになっている。即ち、操作弁36は、操作レバー37が第1方向(例えば前方)に操作されると操作レバー37の操作量に応じた第1出力圧P01を第1パイロット通路34に出力し、また操作レバー37が第2方向(例えば、後方)に操作されると操作レバー37の操作量に応じた第2出力圧P02を第2パイロット通路35に出力するようになっている。第1パイロット通路34には、そこに出力された第1出力圧P01を検出する第1圧力センサPS1が設けられ、更にその下流側に第1シャトル弁39が介在している。また、第2パイロット通路35には、そこに出力された第2出力圧P02を検出する第2圧力センサPS2が設けられ、更にその下流側に第2シャトル弁41が介在している。
【0045】
第1選択弁である第1シャトル弁39の下流側と第2シャトル弁41の上流側には、第1背圧出力機構42が設けられており、第1背圧出力機構42は、通路43を有している。通路43は、第1シャトル弁39の下流側に繋がっており、第1電磁比例制御弁44が設けられている。第1電磁比例制御弁44は、いわゆるノーマルクローズド形(正比例制御弁)であり、第1パイロット通路34から導かれた液圧(第1パイロット圧P1)を圧力源として第1背圧Pb1に調整して第2シャトル弁41に出力するようになっている。第2シャトル弁41は、第1背圧Pb1及び第2出力圧P02のうちいずれか高圧を選択し、その選択された液圧を第2パイロット圧P2としてスプール27に与えるようになっている。
【0046】
また、第2選択弁である第2シャトル弁41の下流側と第1シャトル弁39の上流側には、第2背圧出力機構45が設けられており、第2背圧出力機構45は、通路46を有している。通路46は、第2シャトル弁41の下流側に繋がっており、第2電磁比例制御弁47が設けられている。第2電磁比例制御弁47は、第2パイロット通路35から導かれた液圧(第2パイロット圧P2)を圧力源として第2背圧Pb2に調整して第1シャトル弁39に出力するようになっている。第1シャトル弁39は、第2背圧Pb2及び第1出力圧P01のうちいずれか高圧を選択し、その選択された液圧を第1パイロット圧P1としてスプール27に与えるようになっている。
【0047】
このように構成される2つの背圧出力機構42,45は、更に制御装置50を有しており、制御装置50は、2つの電磁比例制御弁44,47に電気的に接続されている。この制御装置50は、2つの電磁比例制御弁44,47に電流(指令信号)を流すようになっており、2つの電磁比例制御弁44,47は、この電流に応じた圧力に第1背圧Pb1及び第2背圧Pb2を調整するようになっている。
【0048】
また、制御装置50は、第1圧力センサPS1及び第2圧力センサPS2に電気的に接続されており、第1出力圧P01及び第2出力圧P02を取得するようになっている。制御装置50は、取得した第1出力圧P01及び第2出力圧P02に基づいて操作レバー37の操作状態(操作量及び操作方向)を検出し、この操作状態及び液圧制御装置1の作動条件(所定の作動状態)に応じて2つの電磁比例制御弁44,47に流す電流を決定するようになっている。この電流の決定方法の詳細については後述するが、所定の作動状態には、例えば、他のバルブユニット22,23の作動状態(即ち、他の操作レバー37の操作状態)、エンジンEの回転数、油温、及びアクチュエータに作用する負荷が含まれ、エンジンEの回転数、油温、及びアクチュエータに作用する負荷については、図示しないセンサにより検出されるようになっている。以下では、このように構成される2つの背圧出力機構42,45の機能について説明する。
【0049】
操作レバー37が操作されて第1出力圧が出力されると、この第1出力圧が第1パイロット圧P1として第1シャトル弁39の下流側に導かれる。これにより、スプール27が第1パイロット圧P1によって第1オフセット位置S1の方へと押される。また、第1パイロット圧P1は、通路43を介して第1電磁比例制御弁44に導かれ、第1電磁比例制御弁44は、この第1パイロット圧P1を圧力源として制御装置50からの指令信号に応じた第1背圧Pb1を出力する。第2シャトル弁41は、操作弁36から第2出力圧P02が出力されていないので、出力された第1背圧Pb1を第2パイロット圧P2として選択し、これがスプール27に与えられる。
【0050】
このようにスプール27に第2パイロット圧P2を与えることで、第1オフセット位置S1の方へと押されているスプール27を第2パイロット圧P2により中立位置Mの方へと押し戻すことができる。そうすると、供給通路17と第1給排通路31との間の開度が小さくなり、ブーム用シリンダ7のヘッド側7aに導かれる液圧の流量を規制することができる。なお、スプール27は、第1背圧Pb1が高ければ高いほど中立位置M側に押し戻され、押し戻される量に応じて前記開度が小さくなってブーム用シリンダ7のヘッド側7aに導かれる圧液の流量が規制される。つまり、制御装置50から第1電磁比例制御弁44に流れる電流を調整することで、操作レバー37の操作量を変えることなくブーム用シリンダ7のヘッド側7aに導かれる圧液の流量を調整することができる。また、制御装置50は、充足する作動条件に応じて第1電磁比例制御弁44に流す電流を調整してヘッド側7aに導かれる圧液の流量を調整するようになっている。
【0051】
他方、操作レバー37が操作されて第2出力圧が出力されると、この第2出力圧が第2パイロット圧P2として第2シャトル弁41の下流側に導かれる。これにより、スプール27が第2パイロット圧P2によって第2オフセット位置S2の方へと押される。また、前述の場合と同様に第2背圧出力機構45から第2背圧Pb2が出力される。第1シャトル弁39は、第2背圧Pb2を第1パイロット圧P1として選択し、これがスプール27に与えられる。これにより、第1オフセット位置S2の方へと押されているスプール27を中立位置Mの方へと押し戻すことができる。そうすると、供給通路17と第2給排通路32との間の開度が小さくなり、ブーム用シリンダ7のロッド側7bに導かれる圧液の流量を規制することができる。スプール27は、第2背圧Pb2が高ければ高いほど中立位置M側に押し戻され、押し戻される量に応じて前記開度が小さくなってブーム用シリンダ7のロッド側7bに導かれる油圧の流量が規制される。つまり、制御装置50から第2電磁比例制御弁47に流れる電流を調整することで、操作レバー37の操作量を変えることなくブーム用シリンダ7のロッド側7bに導かれる圧液の流量を調整することができる。また、制御装置50は、充足する作動条件に応じて第2電磁比例制御弁47に流す電流を調整してロッド側7bに導かれる圧液の流量を調整するようになっている。
【0052】
このような機能を有する背圧出力機構42,45では、制御装置50が予め定められた作動条件を充足するか否かを判定する。例えば、油温センサにより検出される油温が予め定められた作動条件(具体的には、第1の所定温度以上)を充足すると制御装置50が判定すると、制御装置50は電磁比例制御弁44,47に電流を流してブーム用シリンダ7に油圧を流れにくくするようになっている。なお、制御装置50から各電磁比例制御弁44,47に流される電流は、操作弁36から出力される出力圧P01,P02に応じて調整されており、出力圧P01,P02が大きい場合は流す電流を大きくして規制する流量を大きくし、出力圧P01,P02が小さい場合は流す電流を小さくして規制する流量を抑えるようになっている。このように流量を規制することで、粘度が低い高温環境下においてブーム6の起動動作時にブーム用シリンダ7に多くの圧液が供給されて生じる衝撃を緩和することができる。
【0053】
逆に、油温センサにより検出された油温が別の作動条件(具体的には、第2の所定温度(<第1の所定温度)以上)を充足しないと制御装置50が判定すると、制御装置50は、第1の所定温度を充足している場合よりも電磁比例制御弁44,47に流す電流を小さくし、ブーム用バルブユニット21からブーム用シリンダ7に圧液を流れやすくする。これにより、粘度が高い低温環境下においてブーム6の起動動作時にブーム用シリンダ7に供給される圧液が少量となりブーム6の動作にもたつきが生じることを解消することができる。
【0054】
[旋回用バルブユニット]
旋回用バルブユニット22では、第1給排通路31及び第2給排通路32が旋回用モータ10に接続されている。旋回用モータ10は、いわゆる液圧モータであり、2つのポート10a,10bを有している。旋回用モータ10は、圧液が供給されるポート10a,10bに応じて正回転及び逆回転するようになっており、第1ポート10aに第1給排通路31が接続され、第2ポート10bに第2給排通路32が接続されている。
【0055】
このように構成される旋回用バルブユニット22では、スプール27が中立位置Mに位置すると、旋回用モータ10、第1給排通路31、第2給排通路32、リリーフ弁48およびチェック弁49によって閉回路が形成される。このとき、旋回体5が慣性によって旋回することにより、旋回用モータ10にブレーキトルクが発生し、ブレーキトルクがリリーフ弁48によって調整されつつ、旋回体5の旋回が止まる。スプール27が第1オフセット位置S1に位置すると旋回用モータ10が正回転して旋回体5が旋回し、スプール27が第2オフセット位置S2に位置すると旋回用モータ10が逆回転して旋回体5が旋回するようになっている。
【0056】
また、旋回用バルブユニット22では、第1背圧出力機構42によって旋回用モータ10の第1ポート10aに流れる圧液の流量を規制し、また第2背圧出力機構45によって第2ポート10bに流れる圧液の流量を規制することができるようになっている。これにより、ブーム用シリンダ7の場合と同様に旋回用モータ10の初動動作時における衝撃及びもたつきを低減することができる。また、起動動作時に多量の圧液が旋回用モータ10に流れることを防ぐことができ、省エネルギー化を達成することができる。
【0057】
更に、旋回用バルブユニット22では、第1パイロット通路34に出力される第1出力圧P01を検出する第3圧力センサPS3が第1パイロット通路34に設けられ、第2パイロット通路35に出力される第2出力圧P02を検出する第4圧力センサPS4が第2パイロット通路35に設けられている。第3圧力センサPS3は、第1シャトル弁39の上流側に設けられ、第4圧力センサPS4は、第2シャトル弁41の上流側に設けられている。また、第3圧力センサPS3及び第4圧力センサPS4は制御装置50に電気的に接続されており、制御装置50は第3圧力センサPS3及び第4圧力センサPS4から第1出力圧P01及び第2出力圧P02を取得するようになっている。
【0058】
このように構成される旋回用バルブユニット22では、制御装置50が第3圧力センサPS3及び第4圧力センサPS4から取得する第1出力圧P01及び第2出力圧P02に基づいて操作レバー37の操作状態を検出し、この操作状態及び液圧制御装置1の作動条件に応じて2つの電磁比例制御弁44,47に流す電流を決定するようになっている。それ故、制御装置50から電磁比例制御弁44,47に夫々流れる電流を調整することで操作レバー37の操作量を変えることなく旋回用モータ10に導かれる圧液の流量を調整することができる。
【0059】
[アーム用バルブユニット]
アーム用バルブユニット23では、第1給排通路31及び第2給排通路32がアーム用シリンダ9のヘッド側9a及びロッド側9bに夫々繋がっている。アーム用シリンダ9は、そのヘッド側9aに圧液が供給されると伸長し、ロッド側9bに圧液が供給されると収縮するようになっている。
【0060】
このようにアーム用シリンダ9に接続されているアーム用バルブユニット23は、そのスプール27が中立位置Mに位置すると、アーム用シリンダ9への圧液の給排を止めてアーム8の動きを止めるようになっている。また、アーム用バルブユニット23は、スプール27が第1オフセット位置S1に位置すると、アーム用シリンダ9のヘッド側9aに圧液を供給してアーム8を後方(引く側)に揺動させ、スプール27が第2オフセット位置S2に位置すると、アーム用シリンダ9のロッド側9bに圧液を供給してアーム8を前方(押す側)に揺動させるようになっている。
【0061】
また、アーム用バルブユニット23では、第1背圧出力機構42によってアーム用シリンダ9のヘッド側9aに流れる圧液の流量を規制し、また第2背圧出力機構45によってロッド側9bに流れる圧液の流量を規制することができるようになっている。これにより、ブーム用シリンダ7の場合と同様にアーム用シリンダ9の起動動作時における衝撃及びもたつきを低減することができる。
【0062】
更に、アーム用バルブユニット23では、第1パイロット通路34にそこに出力される第1出力圧P01を検出する第5圧力センサPS5が設けられ、第2パイロット通路35にそこに出力される第2出力圧P02を検出する第6圧力センサpS6が設けられている。第5圧力センサPS5は、第1シャトル弁39の上流側に設けられ、第6圧力センサPS6は、第2シャトル弁41の上流側に設けられている。また、第5圧力センサPS5及び第6圧力センサPS6は制御装置50に電気的に接続されており、制御装置50は第5圧力センサPS5及び第6圧力センサPS6から第1出力圧P01及び第2出力圧P02を取得するようになっている。
【0063】
このように構成されるアーム用バルブユニット23では、制御装置50が第5圧力センサPS5及び第6圧力センサPS6から取得する第1出力圧P01及び第2出力圧P02に基づいて操作レバー37の操作状態を検出し、この操作状態及び液圧制御装置1の作動条件に応じて2つの電磁比例制御弁44,47に流す電流を決定するようになっている。それ故、制御装置50から電磁比例制御弁44,47に夫々流れる電流を調整することで操作レバー37の操作量を変えることなくアーム用シリンダ9に導かれる圧液の流量を調整することができる。
【0064】
[液圧制御装置の機能]
液圧制御装置1では、前述のように各バルブユニット21,22,23の操作レバー37が操作されるとそれの操作方向に応じた出力圧P01,P02が操作弁36から出力され、出力圧P01,P02に応じてスプール27が移動して各アクチュエータ7,9,10に液圧が供給されて各アクチュエータ7,9,10が作動する。操作レバー37が単独で夫々操作された場合、上述するような起動動作を除いて基本的に制御装置50から2つの電磁比例制御弁44,47に電流が流れないようになっている。即ち、各バルブユニット21,22,23では、第1背圧出力機構42及び第2背圧出力機構45による油圧の流量規制が実施されないようになっている。他方、ブーム6を上げるようにブーム用バルブユニット21の操作レバー37が操作されている間に、アーム用バルブユニット23の操作レバー37が操作された場合、以下のように機能する。
【0065】
ブーム用バルブユニット21の操作レバー37がブーム6を上げるように操作されると、その操作弁36から第1出力圧P01が出力され、この第1出力圧が第1シャトル弁39を介して第1パイロット圧P1としてスプール27に与えられる。また、アーム用バルブユニット23の操作レバー37が操作される、例えばアーム8を後方に引くように操作レバー37が操作されると、アーム用バルブユニット23の操作弁36から第1出力圧P01が出力され、この第1出力圧P01が第1シャトル弁39を介して第1パイロット圧P1としてスプール27に与えられる。このように各操作弁36から第1出力圧P01が出力されると、第1圧力センサPS1及び第5圧力センサPS5で第1出力圧と第5出力圧が検出され、制御装置50がブーム6を上げる動作とアーム8を引く動作とが同時に実行されていると判断する。
【0066】
なお、アーム8を前方に押すように操作レバー37が操作されるときは、アーム用バルブユニット23の操作弁36から第2出力圧P02が出力され、この第2出力圧P02が第2シャトル弁41を介して第2パイロット圧P2としてスプール27に与えられる。この際、第6圧力センサPS6で第2出力圧P02が検出され、制御装置50が第2出力圧を取得して制御装置50がブーム6を上げる動作とアーム8を前方に押す動作とが同時に実行されていると判断する。
【0067】
制御装置50は、ブーム6を上げる動作とアーム8を引く動作とが同時に実行されていると判断すると、アーム用バルブユニット23の第1電磁比例制御弁44に電流を流す。この際に流される電流は、アーム用バルブユニット23の操作レバー37の操作量に応じており、第1電磁比例制御弁44から出力される第1背圧Pb1は、操作レバー37に応じた圧力となっている。このようにして出力される第1背圧Pb1は、第2シャトル弁41を介して第2パイロット圧P2としてスプール27に与えられ、これによりアーム用バルブユニット23のスプール27が中立位置M側の方に押し戻され、アーム用シリンダ9に流れる圧液の流量を規制する。
【0068】
アーム用シリンダ9の引き動作時の負荷は、ブーム用シリンダ7の上げ動作時の負荷に比べて小さく、圧液は負荷の小さいアーム用シリンダ9に流れやすい。それ故、アーム用シリンダ9に流れる圧液の流量を規制することによって、アーム用シリンダ9に圧液が優先的に流れることを防ぎ、以下で説明するようにブーム用バルブユニット21の操作レバー37の操作量に応じた圧液がブーム用シリンダ7に流れるようにすることができる。これにより、ブーム用シリンダ7及びアーム用シリンダ9を各々に対応する操作レバー37の操作量にほぼ応じた速度で動かすことができる。
【0069】
以下では、各操作レバー37の操作量と各アクチュエータ7,9に流れる圧液の流量との関係を
図4及び
図5を参照しながら更に具体的に説明する。なお、
図4(a)、(b)及び(c)の縦軸は、ブーム用バルブユニット21の操作レバー37の操作量、ブーム用バルブユニット21のスプールに作用するパイロット圧の差圧dp、及びブーム用シリンダ7に流れる圧液の流量を夫々示し、横軸は、時間を示している。また、
図5(a)、(b)及び(c)の縦軸は、アーム用バルブユニット23の操作レバー37の操作量、アーム用バルブユニット23のスプールに作用するパイロット圧の差圧dp、及びアーム用シリンダ9に流れる油圧の流量を夫々示し、横軸は、時間を示している。
【0070】
液圧制御装置1では、ブーム用バルブユニット21の操作レバー37が
図4(a)のように一定の速度で操作方向一方(
図2で示す右側)に操作されると、ブーム用バルブユニット21の操作弁36から一定の速度で上昇する第1出力圧P01が出力される。この際、操作弁36から第2出力圧P02が出力されず、また第1背圧機構からも第1背圧Pb1が出力されない。それ故、スプール27に作用する差圧dpの絶対値が第1パイロット圧P1に対応し、
図4(c)の(イ)のように操作レバー37の操作量に応じて一様に増加する。
【0071】
同時にアーム用バルブユニット23の操作レバー37を
図5(a)のように一定速度で操作方向一方(
図2で示す右側)に操作すると、アーム用バルブユニット23の操作弁36から一定の速度で上昇する第1出力圧P01が出力されて第1パイロット圧P1としてアーム用バルブユニット23のスプール27に与えられる。例えば、第1パイロット圧P1だけがスプール27に作用する場合、第1パイロット圧P1に抗する圧力がスプール27に作用しないので、スプール27に作用する差圧dpは、
図5(a)及び(b)の実線のようにアーム用バルブユニット23の操作弁36から操作量に応じて一定の速度で増加する。そうすると、ブーム用シリンダ7の負荷に対してアーム用シリンダ9の負荷の方が小さいためにアーム用シリンダ9の方に圧液が優先的に流れる(
図4(c)及び
図5(c)の(ロ)参照)。
【0072】
液圧制御装置1では、アーム用バルブユニット23に関して、第1出力圧P01が第1シャトル弁39の下流側に導かれることで第1背圧出力機構42から第1背圧Pb1が出力されて、この第1背圧Pb1が第2パイロット圧P2としてスプール27に与えられる。第1背圧Pb1は、上述の通り、制御装置50からの電流に応じて出力されるようになっており、制御装置50は、予め定められた設定に基づいて電流を流すようになっている。本実施形態では、制御装置50からの電流は、アーム用バルブユニット23の操作レバー37の操作量に応じて設定されており、スプール27にかかる差圧dpが
図5(b)の一点鎖線のようになるように設定されている。
【0073】
このように電流を設定することで、液圧制御装置1では、ブーム用バルブユニット21及びアーム用バルブユニット23の操作レバー37を同時に操作しても、ブーム用シリンダ7及びアーム用シリンダ9に流れる圧液の流量を
図4(c)(ハ)及び
図5(c)(ハ)のように操作レバー37の操作量に対応してほぼ一定の流量配分とすることができる。
【0074】
このように機能する液圧制御装置1では、操作量に応じた流量の圧液を各アクチュエータ7,9,10に供給することができるので、操作性が向上する。また、液圧制御装置1では、第1背圧出力機構42及び第2背圧出力機構45によって各アクチュエータ7,9,10に供給する液圧の流量を規制することができる。これら第1背圧出力機構42及び第2背圧出力機構45では、制御装置50から各電磁比例制御弁44,47に流す電流に応じて規制する流量を調整することができる。それ故、第1背圧Pb1及び第2背圧Pb2の調整を制御装置50から電磁比例制御弁44,47に流す電流の設定を変えるだけで行うことができる。従って、パイロット式の制御弁を採用した場合のようなチューニング(開口面積を変更したスプールを何本も用意して、順次これを取り替えて試験を行い、最適開口面積を決定する作業)を必要とせず、液圧制御装置1の開発時間を短縮することができる。
【0075】
なお、前述では、ブーム用バルブユニット21及びアーム用バルブユニット23の操作レバー37が同時に操作されている場合について説明したが、ブーム6を上げるようにブーム用バルブユニット21の操作レバー37が操作されている際に旋回用バルブユニット22の操作レバー37が操作された場合も、液圧制御装置1が同様の動きをする。即ち、ブーム用バルブユニット21及び旋回用バルブユニット22の操作レバー37が同時に操作されると、旋回用モータ10に流れる油圧の流量が規制され、アーム用バルブユニット23の場合と同様の作用効果を奏する。なお、詳しい内容については、前述の記載を参照し、その説明を省略する。
【0076】
このような構成を有する液圧制御装置1では、背圧出力機構42,45の電磁比例制御弁44,47にノーマルクローズ形の弁が採用されている。それ故、制御装置50から各電磁比例制御弁44,47に電流を流すことができないという不具合が生じたり、電磁比例制御弁44,47の可動部が異物等により固着して作動不良となった場合においても、意図しない位置にスプール27が動くことがない。それ故、液圧制御装置1において、フェイルセーフが達成されている。また、背圧出力機構42,45の圧力源が操作弁36の出力圧P01,P02であるので、操作弁36の操作レバー37が操作されていない中立状態では、各電磁比例制御弁44,47が誤作動してもスプール27が動くことがない。この点でも、液圧制御装置1においてフェイルセーフが達成されている。
【0077】
更に、各電磁比例制御弁44,47は、第1及び第2パイロット圧P1,P2を圧力源としており、各々から出力する第1及び第2背圧Pb1,Pb2が第1及び第2パイロット圧P1,P2よりも低くなるように構成されている。即ち、各電磁比例制御弁44,47の最大開度が100%未満、例えば70%以下、更に好ましくは50%以下になるように構成されている。このように構成することで、電磁比例制御弁44,47の故障により最大開度で作動し続けてもスプール27を中立位置Mから各オフセット位置S1,S2の方向にある一定の位置まで移動させてアクチュエータ7,9,10に液圧を供給することができる。これにより、電磁比例制御弁44,47の故障又は制御装置50の故障によって液圧制御装置1が作動しない事態を防ぐことができる。
【0078】
<第2実施形態>
第2実施形態の液圧制御装置1Aは、第1実施形態の液圧制御装置1と構成が類似している。以下では、第2実施形態の液圧制御装置1Aの構成については、第1実施形態の液圧制御装置1と異なる点について主に説明し、同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する場合がある。後述する第3実施形態及び第4実施形態の液圧制御装置1B,1Cについても同様である。
【0079】
液圧制御装置1Aは、ポジティブコントロール方式の液圧制御回路で構成されており、主通路12Aが絞り24を介することなくタンク25に直接接続されている。また、液圧制御装置1Aでは、サーボピストン機構16にポジコン通路15Aを介して図示しないパイロットポンプが接続されており、ポジコン通路15Aに電磁弁19が介在している。
【0080】
電磁弁19は、電磁制御弁であり、図示しないパイロットポンプから吐出された液圧を電磁弁19に流れる電流に応じた圧力に減圧してポジコン圧p
pとして出力するようになっている。このようにして出力されたポジコン圧p
pは、サーボピストン機構16に導かれ、サーボピストン16aは、このポジコン圧p
pに応じた位置に移動するようになっている。これにより、斜板11aがポジコン圧p
pに応じた角度に傾転する。
【0081】
このように構成される電磁弁19は、制御装置50に接続されており、制御装置50は、各圧力センサPS1〜6から取得する出力圧に基づいて電磁弁19に流す電流を決定している。例えば、制御装置50は取得する出力圧に応じた電流、即ち出力圧が大きいとそれに応じた大きな電流を電磁弁19に流し、出力圧が小さいとそれに応じた小さな電流を電磁弁19に流すようになっている。つまり、制御装置50は、操作レバー37の操作量に応じた電流を電磁弁19に流し、その操作量に応じた流量の液圧を液圧ポンプ11から出力させるようになっている。
【0082】
このように構成される液圧制御装置1Aは、ポジティブコントロール方式の液圧制御回路を適用している点による作用効果を除いて、第1実施形態の液圧制御装置1と同様の作用効果を奏する。
【0083】
<第3実施形態>
第3実施形態の液圧制御装置1Bは、
図7に示すように3つのバルブユニット21B,22B,23Bを備えており、各バルブユニット21B,22B,23Bは、背圧出力機構60を有している。各背圧出力機構60は、第1シャトル弁39及び第2シャトル弁41に接続され、更に液圧制御装置1Bに備わるパイロットポンプ61に並列して接続されている。パイロットポンプ61は、定容量型液圧ポンプであり、背圧出力機構60に定量の圧液を供給するようになっている。
【0084】
背圧出力機構60は、
図8に示すように電磁比例制御弁62と背圧切換弁63とを有している。電磁比例制御弁62は、いわゆるノーマルクローズ形の正比例制御弁である。電磁比例制御弁62は、パイロットポンプ61の吐出圧を圧力源としており、パイロットポンプ61から吐出された圧液を減圧して背圧p
bに調整するようになっている。電磁比例制御弁62は、背圧切換弁63に接続されており、調整した背圧p
bを背圧切換弁63に出力するようになっている。
【0085】
背圧切換弁63は、スプール63aを備えており、スプール63aの位置に応じて電磁比例制御弁62から出力される圧液の流れる方向を切替えるようになっている。具体的に説明すると、背圧切換弁63は、第1シャトル弁39の入力ポートの片側及び第2シャトル弁41の入力ポートの片側に接続されており、スプール63aは、中立位置M1から第1オフセット位置S11及び第2オフセット位置S12に移動可能に構成されている。スプール63aが中立位置M1から第1オフセット位置S11の方に移動すると、電磁比例制御弁62の出力ポートと第2シャトル弁41の入力ポートの片側とが背圧切換弁63を介して接続されて背圧p
bが第2シャトル弁41の入力ポートの片側に導かれる。他方、スプール63aが中立位置M1から第2オフセット位置S12の方に移動すると、電磁比例制御弁62の出力ポートと第1シャトル弁39の入力ポートの片側とが背圧切換弁63を介して接続されて背圧p
bが第1シャトル弁39の入力ポートの片側に導かれる。そして、スプール63aが中立位置M1に戻ると、電磁比例制御弁62の出力ポートと第1シャトル弁39の入力ポートの片側及び第2シャトル弁41の入力ポートの片側との間が遮断されるようになっている。
【0086】
このように移動するスプール63aは、互いに抗する2つのパイロット圧p
3,p
4を受圧しており、2つのパイロット圧p
3,p
4の差圧に応じた位置に移動するようになっている。これにより、背圧切換弁63は、2つのパイロット圧p
3,p
4の差圧に応じた方向に電磁比例制御弁62からの圧液を流すようになっている。
【0087】
このようにして構成されている背圧出力機構60は、操作レバー37が第1方向に操作されて操作弁36から第1出力圧P01が出力されると、この第1出力圧P01が第3パイロット圧p
3としてスプール63aに入力される。この際、操作弁36からは第1出力圧P01だけが出力されており、第4パイロット圧p
4は略ゼロである。それ故、スプール63aは、第1オフセット位置S11の方へと移動し、電磁比例制御弁62の出力ポートが背圧切換弁63を介して第2シャトル弁41の入力ポートの片側と接続される。これにより、電磁比例制御弁62から出力される背圧p
bは背圧切換弁63を介して第2シャトル弁41の入力ポートの片側に導かれる。
【0088】
第2シャトル弁41では、第2出力圧P02及び背圧p
bのいずれか高い方を選択するようになっているが、第2出力圧P02が略ゼロであるので第2シャトル弁41では背圧p
bが選択される。選択された背圧p
bは、第2パイロット圧P2として方向制御弁26のスプール27に与えられる。第1シャトル弁39では、スプール63aが第1オフセット位置S11の方へと移動することで電磁比例制御弁62の出力ポートと第1シャトル弁39の入力ポートの片側との間が遮断されるので、第1出力圧P01が選択され、第1出力圧P01が第1パイロット圧P1として方向制御弁26のスプール27に与えられる。
【0089】
他方、操作レバー37が第2方向に操作されて操作弁36から第2出力圧P02が出力された場合、第2出力圧P02が第4パイロット圧p
4としてスプール63aに導かれる。この際、第3パイロット圧p
3は略ゼロであるので、スプール63aは第2オフセット位置S12の方へと移動し、電磁比例制御弁62の出力ポートが背圧切換弁63を介して第1シャトル弁39の入力ポートの片側に接続される。接続されることで電磁比例制御弁62からの背圧p
bが背圧切換弁63を介して第1シャトル弁39の入力ポートの片側に導かれる。そして、第1シャトル弁39では背圧p
bが選択され、背圧p
bが第1パイロット圧P1として方向制御弁26のスプール27に与えられる。第2シャトル弁41では第2出力圧P02が選択され、第2出力圧P02が第2パイロット圧P2として方向制御弁26のスプール27に与えられる。
【0090】
このように背圧出力機構60では、操作弁36からの各出力圧P01,P02に抗する背圧p
bをスプール27に与えて各アクチュエータ7,9,10への液圧の流量を規制するようになっており、規制される流量は背圧p
bに応じて決まり、背圧出力機構60は、背圧p
bを調整すべく制御装置50Bを有している。
【0091】
制御装置50Bは、電磁比例制御弁62に電流を流し、流す電流を制御することによって背圧p
bを調整するようになっている。更に具体的に説明すると、制御装置50Bは、充足する作動条件に応じて電磁比例制御弁62に流す電流を制御し、充足する作動条件に応じた背圧p
bを電磁比例制御弁62から出力させるようになっている。これにより、第1実施形態の液圧制御装置1と同様に各アクチュエータ7,9,10に流れる圧液の流量を作動条件に合わせて規制することができる。
【0092】
このようにして構成される液圧制御装置1Bでは、背圧切換弁63を設けることで、背圧p
bを調圧するための電磁比例制御弁を第1パイロット圧側及び第2パイロット圧側に夫々個別に設ける必要がなくなる。これにより、各バルブユニット21B,22B,23Bにおける電磁比例制御弁62の数を低減することができ、液圧制御装置1Bの製造コストを低減することができる。
【0093】
第3実施形態の液圧制御装置1Bは、その他、第1実施形態の液圧制御装置1と同様の作用効果を奏する。
【0094】
<第4実施形態>
第4実施形態の液圧制御装置1Cは、第3実施形態の液圧制御装置1Bと構成が類似しており、電磁比例制御弁62が操作弁36から出力される出力圧P01,P02を圧力源としている点で異なっている。具体的に説明すると、
図9に示すように、液圧制御装置1Cの背圧出力機構60Cは、第3シャトル弁64を有しており、第3シャトル弁64は、操作弁36の第1出力圧P01,と第2出力圧P02のうち高圧側を、電磁比例制御弁62に供給する。
【0095】
このように構成されている液圧制御装置1Cでは、電磁比例制御弁62の圧力源が操作弁36の出力圧P01,P02であるので、操作弁36の操作レバー37が操作されていない中立状態では、電磁比例制御弁62が誤作動してもスプール27が動くことがない。この点でも、液圧制御装置1Cにおいてフェイルセーフが達成されている。
【0096】
第4実施形態の液圧制御装置1Cは、その他、第3実施形態の液圧制御装置1Bと同様の作用効果を奏する。
【0097】
<その他の形態>
第1及び第2実施形態の液圧制御装置1,1Aでは、第1背圧出力機構42及び第2背圧出力機構45の圧力源が操作弁36の出力圧P01,P02であったが、必ずしもその必要はない。例えば、操作弁36に圧液を供給するパイロットポンプを第1背圧出力機構42及び第2背圧出力機構45の入口に直接繋げて、このパイロットポンプを圧力源としてもよい。また、第1背圧出力機構42及び第2背圧出力機構45は、必ずしも2つ共に設けられている必要はなく、どちらか一方だけを備えていてもよい。更に、電磁比例制御弁44,47は、ノーマルクローズ形であることが好ましいが、ノーマルオープン形の電磁逆比例制御弁(電流を多く流れるほど、出力圧力が低下するタイプの電磁比例制御弁)であってもよい。
【0098】
また、第1乃至第4実施形態の液圧制御装置1,1A〜1Cで駆動するアクチュエータ7,9,10は、上述するものに限定されず、バケット用シリンダ、ステアリング用シリンダ、又は走行駆動用モータであってもよい。また、液圧ポンプ11は、必ずしも可変容量型のポンプである必要はなく、固定容量型のポンプであってもよい。更に、使用される圧液は、油に限定されず、水やその他の液体であってもよい。
【0099】
また、第1乃至第4実施形態の液圧制御装置1,1A〜1Cでは、ネガティブコントロール方式の液圧制御回路が適用された場合について説明したが、そのような方式の液圧制御回路に限らず、ポジティブコントロール方式の液圧制御回路に適用しても良く、スプールを用いる全てのタイプのコントロール弁を有する液圧制御回路に適用可能である。
【0100】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。