【実施例1】
【0022】
実施例1は、本発明に係る物搬送ベルト100の一実施例である。
図1に示すように、本発明に係る物搬送ベルト100は、歯付きベルト102に一体的に取り付けた押動体104によって、物体106を所定方向(
図1において矢印X方向)へ押動する機能を有する。
すなわち、物搬送ベルト100は、歯付きベルト102及び別体に構成された押動体104を当該歯付きベルト102に固定することにより構成されている。
【0023】
まず歯付きベルト102を主に
図1、2及び
図5を参照して説明する。
本発明における歯付きベルト102は、柔軟性を有するリング状のベルト108の内面側112に所定の均一なピッチで同一形状に形成した台形状の歯114を有し、外面側116は平坦な背面118を有する、一般的に市販されている歯付きベルト(規格により標準化された、及び、規格化されていない特別な寸法で造られた歯付きベルトの両者を含む)である。
図5における矢印X方向を便宜的に歯付きベルト102の進行方向とした場合、歯114は進行方向前位の前側歯面122Fと後側歯
面122Bはベルト部分128から離れるにしたがって互いに近づくよう同角度で傾斜し、それら先端は背面118と平行に形成された頂面132によって接続されて台形状に形成されている。
したがって、前側歯114Fと後側歯114Bとの間には前側歯114の後側
歯面112Bと後側歯114Bの前側歯面122Fとによってベルト部分128側に近づくほど間隔が
挟まり、それら先端は背面118と平行に形成された底面134によって接続された台形状のプーリ歯受入溝136が形成されている。
【0024】
次に押動体104を主に
図3を参照して説明する。
押動体104は、歯付きベルト102に取り付けられ、当該歯付きベルト102の所定の方向への移動に伴って物体106を所定方向へ押動する機能を有する。
押動体104は、歯付きベルト102に装着(取付)するための取付部142と、この取付部142に一体化された物体106の押動部144とを有する。
押動体104は、その材質に制限は無いが、樹脂により一体成形することが好ましい。コスト低減及び軽量化のためである。しかし、樹脂に限らず金属により製作することもできる。本実施例においては樹脂により一体成型されている。
【0025】
次に取付部142を説明する。
取付部142は、押動体1
04を歯付きベルト102に固定状態に取り付ける機能を有する。固定状態とは、歯付きベルト102に対する実質的な取付位置が変化しないことをいう。換言すれば、歯付きベルト102と取付部142とが実質的に一体化された状態をいう。
取付部142は、歯付きベルト102の歯側146(内面側112)に位置する歯側挟持体148と反歯側152(外面側116)に位置する反歯側挟持体154及びそれらを歯付きベルト102の一側縁側156において連結する連結体158によって横向き門型(横向きチャンネル型)に形成され、少なくとも歯側挟持体148又は反歯側挟持体154の先端に形成され、歯付きベルト102の反連結体側162の他側端縁164を係止する係止フック166を有する。
【0026】
まず歯側挟持体148を説明する。
歯側挟持体148は、歯付きベルト102の内面側112の隣り合う歯114の間に挿入され、それら歯114によって歯付きベルト102の伸長方向の移動を規制されると共に反歯側挟持体154と共同して歯付きベルト102に対する回動を防止する機能を有する。換言すれば、歯側挟持体148は、歯付きベルト102に対してその長手方向に対し実質的に位置ずれすることはない。
歯側挟持体148は、前側歯114Fの後側歯面122Bとほぼ同角度で傾斜する前側保持面168、後側歯114Bの前側歯面122Fとほぼ同角度で傾斜する後側保持面172、及び、それらの先端を接続する歯側頂面174によって、台形状に形成されている。具体的には、前側保持面168と後側保持面172との延長線がなす角度は、前側歯114Fの後側歯面122Bと後側歯114Bの前側歯面122Fの延長線のなす角度よりも僅かに小さな角度で交わるように形成されている。後述の歯付きプーリ216への巻掛けを可能にするためである。
本実施例1において、歯側頂面174に対面する歯側背面176は円弧状に形成されているが、平面に形成することができる。換言すれば歯側挟持体148は、プーリ歯受入溝136と嵌り合うようにそれと同形状に形成されている。
したがって、押動体104が歯付きベルト102に取り付けられた場合、歯側挟持体148は前側歯114F及び後側歯114Bと一体化して歯114よりも大きな一つの押動体歯180を構成する。押動体歯180の歯の長さ(歯付きベルト102の長手方向の長さ)は通常の歯114の約3倍であり、歯の高さは、通常の歯114の高さ以上になる。
【0027】
また、歯側挟持体148の厚み(
図5において上下方向の長さ)は、歯側挟持体148がその長手方向に実質的に変形しない縦断面係数を有するように形成される。具体的には、
図5に示すように歯114の高さよりも厚みを有するように歯側背面176が円弧状に形成される。歯114のピッチ、縦断面係数及び材質を考慮すると、高さの増加によって縦断面係数を改善することができるからである。
さらに、歯側挟持体148の長さは、
図4に示すように歯付きベルト102の幅と同一に形成されている。歯側挟持体148の長さがベルト102の幅よりも長くとも押動体104の保持力には好影響はなく、却って設計上の制限が増加するからである。
したがって、歯側挟持体148がプーリ歯受入溝136に挿入された(嵌め込まれた)場合、前側保持面168は後側歯面122Bと、後側保持面172は前側歯面122Fと近接し、歯側頂面174は底面134に近接配置されるので、歯側挟持体148は歯付きベルト102に対してその伸長方向にずれることがない。
なお、歯付きプーリ216の巻き付け部分において、歯付きベルト102は円弧状になるので、前側歯面122Fと後側歯面122Bとはこの場合に前側保持面168、後側保持面172にそれぞれ密接するように形成されている。
また、歯側挟持体148の歯付きベルト102側の角部は面取りして第1斜面178に形成してある。歯側挟持体148と反歯側挟持体154を
歯付きベルト102に装着しやすくするためである。
【0028】
次に反歯側挟持体154を説明する。
反歯側挟持体154は、歯側
挟持体148と共に押動部144を歯付きベルト102に回動しないように取り付ける機能を有する。
反歯側挟持体154は、歯付きベルト102の反歯側152の平面状の背面118に面接触可能な挟持体平面179に、かつ、歯側頂面174と平行に、さらに、実質的に変形しないように形成されている。反歯側挟持体154の幅Wは、歯側頂面174の約二倍程度に形成されている。押動体104の歯付きベルト102に対する倒れ防止のためには幅Wは広い方が好ましいが、歯付きプーリ216での湾曲を考慮すると長すぎる場合は不利に作用することがあるからである。
反歯側挟持体154の長さLは、係止フック166が形成される分歯付きベルト102の幅よりも長く形成されている。
係止フック166は、挟持体平面179に対し直角をなすよう歯側
挟持体148に向けて形成された直状の短い面である。係止フック166の高さは、ベルト部分128の厚みの約二分の一であることが好ましい。高すぎるとベルト102への装着が困難になり、低すぎると係止が不十分になるからである。
係止フック166と後述の連結体158との間隔は、ベルト102の幅BWと同一又は僅かに大きく設定される。係止フック166を歯付きベルト102の他側端縁164への係止のし易さと、容易に外れることを防止するためである。反歯側挟持体154の先端は、第2斜面170に形成することが好ましい。歯付きベルト102の装着の容易化のためである。
【0029】
次に連結体158を説明する。
連結体158は、歯側
挟持体148と反歯側挟持体154とを基端部において連結し、それらが所定の間隔で平行に配置されるようにする機能を有する。
歯側
挟持体148と反歯側挟持体154は、ベルト102の厚みTに相当する長さ分離れて平行に配置されている。連結体158も歯側
挟持体148と反歯側挟持体154との平行を保つため実質的に変形しないように形成されている。具体的には、歯側
挟持体148と反歯側挟持体154との間隔は、歯付きベルト102のベルト部分128の厚みT1と同一又は僅かに大きく形成されている。連結体158を歯側
挟持体148と反歯側挟持体154と共に一体樹脂成形した場合、成型後の冷却によって連結体158が僅かに弧状になり、歯側
挟持体148と反歯側挟持体154との先端部が近づくように変形するので、歯付きベルト102への装着の容易性を考慮すると、歯側
挟持体148と反歯側挟持体154との間隔は、厚みT1よりも僅かに大きく成型することが好ましい。
したがって、歯側
挟持体148と反歯側挟持体154とはその基端部を連結体158によって連結され、側面視チャンネル型に形成されている。換言すれば、歯付きベルト102に対し、歯側
挟持体148は歯側146に、反歯側挟持体154は反歯側152に、連結体158は歯付きベルト102の一側縁側156に位置する。
また、歯側
挟持体148と反歯側挟持体154との先端間には歯付きベルト102の厚みT以上の間隔の挿入開口160が形成される。詳細には第1斜面178と係止フック166の先端間は歯付きベルト102の厚みT以上の距離D離れて形成されている。
従って、歯付きベルト102はそのベルト部分128を挿入開口160から歯側
挟持体148と反歯側挟持体154との間に挿入することができる。
【0030】
次に押動部144を説明する。
押動部144は、物体106を押動する機能を有する。
押動部144は、連結体158に連続して形成された連結部182及び押し部184を備えている。
【0031】
連結部182を説明する。
連結部182は、連結体158に連続して形成され押し部184を支持する機能を有する。
連結部182は、本実施例1においては連結体158と共に一枚の平板状に、かつ、樹脂により一体成形されている。
連結部182も物体106を押した場合、実質的に変形しないように構成されている。
【0032】
次に押し部184を説明する。
押し部184は、物体106を押す機能、換言すれば、物体106と接触して押動する機能を有する。
本実施例1において押し部184は、取付部142に対し逆方向に平行に延在する部分である。換言すれば、取付部142、連結体158、連結部182及び押し部184は全体としてクランク状に形成されている。
したがって、押し部184は固定体であってもよいが、本実施例1においては押し部184はローラ装置186によって回転自在に構成されている。
【0033】
次にローラ装置186を説明する。
ローラ装置186は、軸188、及び、ローラ192を含んでいる。
まず軸188を説明すると、連結部182に対し直角方向に所定の長さで突出する全体として円柱状の軸体194が形成されている。軸体194の自由端先端196は円錐形の先端斜面198に形成され、その傾斜端部202は軸体194よりも大径に形成され、軸体194との間で直角をなす係止部204を形成する。
軸体194はその先端から軸基端に向かって所定幅のスリ割り206を形成し、軸体194の先端部が縮径可能に構成されている。換言すれば、軸体194はスリ割り206によって第1軸部208と第2軸部212とに分割され、それら先端部は外力を付与した場合、弾性変形可能であって、実質的に軸体194の外径よりも実質的に小径になるまで変形可能である。
ローラ192は円筒形であって、金属製である。ローラ192の端部内面には段部214が形成され、中心部に軸受孔218が穿孔されている。
この構成により、第1軸部208と第2軸部212の先端部を互いに近づくように弾性変形させて縮径させることによりローラ192の軸受孔218にそれら第1軸部208と第2軸部212を挿入し、軸体194にローラ192を嵌合することができる。当該嵌合によって、第1軸部208と第2軸部212の変形を解除した場合、第1軸部208と第2軸部212は元の状態に戻り、通常の軸体194の外径になる。これにより。係止部204が軸188に嵌合されたローラ192の段部214を係止するのでローラ192は軸体194に回転自在に支持されると共に脱落することはない。
【0034】
押動体104を歯付きベルト102に装着する場合、歯側挟持体148を隣り合う歯114の間のプーリ歯受入溝136に相対させ、反歯側挟持体154を背面118にあてがってベルト部分128を挟み込むように押し進め、歯付きベルト102の一側縁部156が連結体158に当接するまで押し込む。これにより、係止フック166が歯付きベルト102の他側端縁164を係止し、脱落を防止する。
本実施例1においては、歯付きベルト102に押動体104が複数取り付けられるので、押動体104が所定のピッチになるよう所定位置において押動体104を前記の取り付け方法で取り付ける。
押動体104を交換する場合、歯側挟持体148及び反歯側挟持体154の先端を離すように力を付与し、結果的に連結体158を変形させることにより、係止フック166の歯付きベルト102の他側端縁164に対する係止を解除することにより取り外す。その後、新たな押動体104を前記と同様の手順で取り付ける。
【0035】
次に本物搬送ベルト100を巻き掛ける歯付きプーリ216を主に
図6乃至9を参照して説明する。
歯付きプーリ216は円盤形であって、少なくとも回転軸又は固定軸に装着するプーリ軸受孔220、及び、歯付きベルト102の歯114と噛み合うプーリ歯部222を有する。本実施例においては、さらにベルト保持板224を含んでいる。
【0036】
まずプーリ軸受孔220を説明する。
プーリ軸受孔220は、歯付きプーリ216が駆動プーリとして用いられる場合、回転軸(図示せず)が挿入されて固定され、従動プーリとして用いられる場合、ベアリングを介して固定軸に回転自在に装着される。
【0037】
次にプーリ歯部222を説明する。
プーリ歯部222は、歯付きベルト102の歯114と噛み合って駆動力を伝達する機能を有する。
プーリ歯部222は、本実施例において、所定の第1のピッチで形成された通常歯部226と通常歯部226を間に挟んで所定の第2ピッチで形成された特殊歯部228とによって構成されている。
通常歯部226は、歯付きベルト102の歯114と密に噛み合うプーリ歯232によって構成され、所定数のプーリ歯232が連続形成される。本実施例1ではプーリ歯232が所定の第1のピッチで4個連続して形成されている。所定数連続形成するのは、所定の駆動力を歯付きベルト102へ伝達するためである。
プーリ歯232は、
図7において反時計方向に歯付きプーリが回転する場合、回転方向の前位側歯面234及び後位側歯面236及びそれらを連結する弧状の頂面238、及び底面242によって形成されている。
【0038】
したがって、歯付きベルト102が歯付きプーリ216に巻き付けられている部位においては、前位側歯面234は歯付きベルト102の後側歯面122Bと、後位側歯面236は前側歯面122Fと、頂面238は底面134と接触し、後側歯面122Bを前位側歯面234で押すことにより、歯付きベルト102に駆動力を伝達する。
特殊歯部228は、押
付体歯180を受入れることができるように形成されている。具体的には、通常のプーリ歯232の一つを削除し、特殊歯部深さDLは通常深さDNよりも深く形成されている。換言すれば、前位側歯面234よりも底面242側に彫り込んで形成された特殊歯部前位側歯面234L、及び、後位側歯面236よりも底面242側に彫り込んで形成された特殊歯部後位側歯面236L、及び特殊歯部底面242Lによって台形状の空間である特殊歯部228が形成されている。
したがって、歯付きベルト102の後側歯面122Bは歯付きプーリ216の特殊歯部前位側歯面234Lにより押動されて駆動力を伝達される。
特殊歯部228は、歯付きベルト102に取り付けた押動体104のピッチと同一のピッチ若しくは整数分の一のピッチで形成されている。これにより、押付体
歯180が特殊歯部228に必ず相対するからである。
歯付きベルト102を歯付きプーリ216に巻き掛ける場合、押付体
歯180が特殊歯部228に位置し、通常の歯114が通常歯部226の歯に噛み合うように巻き掛ける。
【0039】
次にベルト保持板224を説明する。
ベルト保持板224は、歯付きベルト102が歯付きプーリ216から外れないように案内する機能を有する。したがって、歯付きベルト102が歯付きプーリ216から外れる恐れがない場合、ベルト保持板224は設ける必要がない。
本実施例1においては、歯付きプーリ216が傾斜した軸線回りを回転するため、歯付きベルト102に対し下側に位置する側にのみのプーリ歯232の外周にリング状にベルト保持板224を配置したが、水平軸線回りを歯付きプーリ216が回転する場合、両側に配置することが好ましい。
【0040】
本実施例1に係る物搬送ベルト100は、何れか一方の歯付きプーリ216が駆動プーリ、他方が従動プーリに設定された一対の歯付きプーリ216間に張設される。
そして、歯付きベルト102の移動に伴う押動体104、したがって押動部144、具体的にはローラ192によって物体106を押して所定の方向へ搬送する。なお、物体106はガイドレール(図示せず)に案内されて所定の方向へ搬送される。
【実施例2】
【0041】
次に実施例2を
図10及び
図11を参照して説明する。
実施例2は、実施例1に係る物搬送ベルト100を硬貨選別装置244における硬貨搬送ベルト246に用いた例である。具体的には、特開2007−114978におけるチェーン232を物搬送ベルト100に置換した例である。
硬貨選別装置244は、硬貨搬送ベルト246によって搬送される硬貨248を金種別の選別部に選別する機能を有し、硬貨搬送ベルト246、ガイドレール252及び金種選別部254を含んでいる。
【0042】
硬貨搬送ベルト246は一対の歯付きプーリ216に巻き掛けられて張設され、扁平楕円形の経路を循環する。したがって、押動体104も同様に扁平楕円形の経路を循環する。
【0043】
次にガイドレール252を説明する。
ガイドレール252は、硬貨搬送ベルト246によって押動される硬貨248の下側周面256及び下面258を案内する機能を有し、下側周面256を案内する直状の周面ガイドレール262及び下面258を案内する下面ガイドレール264を含んでいる。
したがって、押動体104によって押動される硬貨248は、水平線に対して約45度傾斜している下面ガイドレール264に下面258を、かつ、下側周面256を周面ガイドレール262に案内されつつ金種選別部254を直線的に搬送される。
【0044】
周面ガイドレール262は、硬貨248の周面を案内して金種選別部254を移動させる機能を有し、本実施例2においては、全体的に下面ガイドレール264に対し直角をなす
挟幅の直状レールに形成されている。具体的に周面ガイドレール262は、所定ピッチで配置した固定周面ガイドレール266の間に配置された移動周面ガイドレール268によって直状に形成されている。しかし、下面ガイドレール264にのみ金種選別部254を配置する場合、固定周面ガイドレール266のみによって周面ガイドレール262を構成することができる。
移動周面ガイドレール268は下面ガイドレール264に対し出没可能に設けられ、下面ガイドレール264に対し上方へ突出した周面案内位置PGPに位置した場合、固定周面ガイドレール266と共に直状の周面ガイドレール262を構成し、下面ガイドレール264に対し下方へ移動した非案内位置に位置した場合、周面ガイドレール262を構成せず、一つの金種選別部254である第1硬貨落下口272を構成する。
図10において、移動周面ガイドレール268は五つ配置されるが、右端の移動周面ガイドレール268は返却用の返却落下口273であるため、左端から四つの移動周面ガイドレール268が4金種の金種選別部254である第1硬貨落下口272を構成する。
【0045】
下面ガイドレール264は、硬貨248の下面258を案内して金種選別部254を移動させる機能を有し、本実施例2においては、全体的に水平線に対し45度で傾斜する平面に形成されている。具体的には下面ガイドレール264は、所定ピッチで配置した固定下面ガイドレール274の間の第2硬貨落下口276に配置された移動下面ガイドレール278によって傾斜平面を実質的に形成している。しかし、周面ガイドレール262にのみ金種選別部254を配置する場合、固定下面ガイドレール274のみによって下面ガイドレール264を構成することができる。
移動下面ガイドレール278は下面ガイドレール264に対し出没可能に設けられ、下面ガイドレール264に対し面一の案内位置SGPに位置する場合、下面ガイドレール264を構成し、下面ガイドレール264に対し下方へ移動した非案内位置NGPに位置する場合、下面ガイドレール264を構成せず、一つの金種選別部254である第2硬貨落下口276が開口形成される。
本実施例2において、移動下面ガイドレール278は四つ配置され、移動周面ガイドレール268に対して上下方向において直列をなすように配置されている。換言すれば、硬貨248は、一つの位置において、移動周面ガイドレール268が非案内位置に移動した場合、傾斜下方へ滑り落ちて第1硬貨落下口272に選別され、移動下面ガイドレール278が非案内位置NGPに移動した場合、真下へ落下して第2硬貨落下口276に選別される。
【0046】
本実施例2においては、ユーロ硬貨の2ユーロ、1ユーロ、50セント、20セント、10セント、5セント、2セント及び1セントの、8金種の硬貨248を選別するため、八つの金種選別部254たる第1硬貨落下口272及び第2硬貨落下口276はそれぞれ所定の金種の硬貨248が選別(落下)されるように設定されている。
【0047】
次に実施例2の硬貨選別装置244の作用を説明する。
硬貨248は、前工程から一枚に分離されて硬貨選別装置244に引き渡される。
硬貨選別装置244において、当該硬貨248は押動体104、したがって、押し部184、詳細にはローラ192によって押され、その下面258を下面ガイドレール264(固定下面ガイドレール274及び移動下面ガイドレール278)によって、及び、下側周面256を周面ガイドレール262(固定周面ガイドレール266、移動周面ガイドレール268)によって案内されて硬貨選別部254を進行する。
【0048】
そして、所定の移動周面ガイドレール268が非案内位置に移動した場合、硬貨248は移動周面ガイドレール268によって下側周面256を支えられないので自重により当該非案内位置に移動した移動周面ガイドレール268が位置した部位の第1硬貨落下口272に落下して所定金種に選別される。
【0049】
移動下面ガイドレール278が非案内位置NGPに移動した場合、硬貨248は移動下面ガイドレール278によって下面258を支えられないので自重により当該非案内位置NGPに移動した移動周面ガイドレール268が位置する部位の第2硬貨落下口276に落下して所定金種に選別される。